
博報堂とアスカコーポレーションの係争で、最も注目されているテーマのひとつが、CMの「間引き」疑惑である。CMの「間引き」とは、CMを放送する契約を放送局が履行せず、「放送した」と偽り、料金だけを徴収する不正行為である。
1990年代の後半に、福岡放送、北陸放送、それに静岡第一テレビでCM「間引き」が発覚して、テレビ界を揺るがした。
これを受けて民放連などが、対策に乗り出し、コンピュータを使った防止システムを導入した。コンピュータが人間の不正を監視するよになったのである。
広告主を不正から守る制度が構築されたのである。
おおまかな使用のステップは次の通りである。、①放送予定のCMに10桁のCMコードを付番する。②それをコンピュータに入力する。③CMが放送された順番に、機械が放送確認書の10桁CMコードを印字する。
2006年からは、10桁のCMコードが付番されていないCMは受け付けないのが原則になっている。
CMが放送されなかった場合は、もちろんCMコードは印字されない。災害などでCM放送が中止になりCMコードが非表示になった場合は、広告代理店が広告主に事情を説明して理解を求め、放送時間を変更してCMの放映回数を増やすなどの「ペナルティー・サービス」が実施される。
この機械によるCM「間引き」防止のシステムが導入された後、CMを放送せずに料金だけを徴収する事件は、過去のものになったと言われてきた。実際、わたしが関係者らを取材したところ、口を揃えたように、「今は、ありえない」という答えが返ってきた。
ところがアスカが自社で保有していた放送確認書を調べたところ、10桁CMコードが表示されていないCMが多量に発見されたのだ。メディア黒書でそれを確認したところ、その本数は現時点で1500件を超えている。これらのCMに対する「ペナルティー・サービス」が行われていなければ、詐欺ということになる。
◇放送確認書の住所が間違っている
しかし、10桁CMコード以前に、別の検証点も浮上してきた。そもそもアスカが博報堂を通じて受け取っていた放送確認書が、本物かどうかという点である。博報堂が偽装したものではないかという疑惑があるのだ。博報堂が取材を拒否しているので、現時点では、疑惑の域をでないが、調査すればするほど不自然な事実が出てくる。
この記事ではチャンネルMnet社の放送確認書のケースを取り上げよう。
わたしが、アスカから入手した博報堂とのメール通信の記録によると、2014年3月にチャンネルMnetが放送したはずのCMの放送確認書が、5月下旬になってもアスカに届いていなかったので、アスカの担当者が博報堂に対して原因を問い合わせた。
これに対して5月28日の17:01分に、博報堂のSHIZUKA IWAKAWAという社員から、メールで次のような回答があった。
→Mnet放送確認書に関しましては、只今局に取り寄せ中となります。
ご迷惑をお掛け致しまして申し訳ございません。
そして博報堂からアスカに対して実際に送付されたのが次の「放送確認書」である。
放送確認書の番組開始時刻と番組終了時刻を見る限り、確かに3月にCMが複数回放送されたことになっている。ところが放送確認書の発行日は、5月29日になっている。通常は翌月の初旬に発行される。10桁CMコードも入っていない。
さらにおかしなことに、放送確認書に表示された放送局・チャンネルMnetの住所が間違っているのだ。上記の放送確認書では住所は、「東京都港区2-7-4」になっているが、港区の後に「西新橋」の地名が抜けているのだ。
チャンネルMnet社ではなく、博報堂が住所を入力したから、「西新橋」を忘れた可能性はないだろうか。
つまりこの放送確認書は、チャネルMnetが作成した書類ではない疑いも若干あるのだ。わたしの手元にチャンネルMnetの放送確認書が5枚あるが、いずれも「西新橋」の地名が欠落している。
このような事実が明らかになった以上、CM「間引き」の有無だけではなく、放送確認書そのものの信憑性についても、検証する必要が生まれてきたのだ。【続】
防衛庁に対して筆者が、電通と博報堂が防衛庁に送付した各種の請求書を全部(1年分)開示するように求めた情報開示請求の決定が9月9日まで延期された。
この情報開示請求は、大手広告代理店が法外な金額を税金から支出させているとの指摘が増える状況下で、調査の必要性が高まった事情が背景にある。
この問題は、メディア黒書でも取り上げたことがある。
たとえばわたしの手元に(株)朝日広告が最高裁に対して送付した請求書の写しがある。業務の名目は、「裁判員制度広報のメディアミックス企画及び実施業務」である。これはわたしが情報公開制度を利用して入手したものである。
裁判員制度をPRすることを目的とした広告制作に関する請求だ。
総額は6億8663万7400円(2008年4月のデータ)。
◇議員数の削減よりも・・
「大手広告代理店に対する予算を5分の1ぐらいに削減すべきです。予算の無駄遣いを減らすために国会議員の数を減らして、国民の参政権を狭めるよりも、大手広告代理店に対する予算を大幅に削減すべきです」
学習塾を経営する川本芳雄(仮名)氏がいう。元広告代理店の社員である。
現役の時代に「ぼったくり」の先兵になったことに対する自責の念があるという。
防衛庁も、請求書の数が膨大なので陸・海・空を含めると1年から2年の時間が必要だと話している。通常は3カ月から半年で開示される。
博報堂事件の重要な検証点のひとつに、CMが放映されたことを証明する10桁CMコードが印字されていない多量の放送確認書が発生した原因である。
いずれも博報堂が制作したもので、その本数は1500件を超えている。
このうちの約900件は、博報堂が50%の株式を有する衛星放送局「スーパーネットワーク」で放映がスケジュールに組み込まれたCMである。(最終的な数値はまだ確定していない)。
これらのCMが「間引き」された疑惑があるのだ。とはいえ、現段階では結論が出たわけではない。あくまでも疑惑で、何か特別な事情があった可能性もある。
しかし、10桁CMコードは、CMが放送されると、コンピュータが自動的に印字される仕組みになっているので、CMコードが非表示になっていれば、原則としては、CMが放送されなかったことになる。領収書に捺印がなければ、法的な観点からは、無効な書面になるのと同じ原理である。
CMコードが非表示になっている事実について、博報堂の遠藤常二弁護士は、第2準備書面の中で「作成者の記載ミスと考えられてもCM放送の実施の有無とは無関係である」と述べている。
かりに遠藤弁護士が公言しているように、博報堂か放送局がCMコードを「記載」するなど人的に操作していたとすれば、放送界を揺るがす大問題である。CM「間引き」とは、また、別次元の問題が出てくる。
◇10桁CMコードは広告主協会など6団体が開発
ちなみにCM「間引き」をコンピュータが監視するシステムは、1990年代に起こったCM「間引き」事件を受けて、広告主を被害から守るために日本広告主協会など6団体が開発したものである。これによりコンピュータが自動的にCM「間引き」を監視するシステムが構築されたのである。
そして「2006年以降は、『10桁CMコード』が付番されていないCM素材は放送しない」(『放送ジャーナル』)ことが業界のルールになったのだ。
遠藤弁護士は、こうした放送界のルールを把握せずに、CMコードの非表示の原因を「作成者の記載ミス」と書いたのかも知れないが、念のために次の質問状を送付した。放送界の問題は、極めて公益性が高いからだ。
しかも、広告主であるアスカコーポレーションが受けた損害額が、前代未聞の額になる。CM1本を50万円として試算すると、CM「間引き」が1500件で4億5000万円になる。
【公開質問状の全文】
2016年8月4日
遠藤常二郎先生
発信者:黒薮哲哉(フリーランス記者)
連絡先:電話:048-464-1413
メール:xxmwg240@ybb.ne,jp
(FAXは使っていません)
はじめてご連絡させていただきます。
わたしは、博報堂が制作したテレビCMの放送確認書に10桁のCMコードが付されていないものが多量に発見された事件などを取材している者です。
メディア関連の事件は極めて高い公共性を有しておりますので、公開質問状というかたちで問い合わせをさせていただきました。1週間以内に回答いただければ幸いです。
貴殿が作成されました博報堂を原告とする裁判(平成27年ワ30693)の第2準備書面の冒頭に次のような記述があります。
「(1)同2のうち、甲第5号証に日本民間放送連名の定める10桁のCMコードが記載されていないこと及び乙第23号証にスーパー!ドラマでCMが放送された旨の記載がなされていないことは認めるが、その余は否認する。
放送確認書は、放送を実施した媒体社の責任において発行されるものであり、媒体が、放送を実施せずに放送確認書を発行することは常識的にあり得ない。スーパー!ドラマでの放送確認書(甲5)が発行されている以上、同番組でCMが放送されていることは明白である。被告らは、甲第5号証にCMコードが記載されていないことや、乙第23号証にスーパー!ドラマに関する記載がないことを理由に甲第5号証の信用性を争っているようであるが、記載のないとは、それぞれの作成者の記載ミスと考えられてもCM放送の実施の有無とは無関係である。」
文中の最後の方に、CMコードが非表示になっていることについて、「それぞれの作成者の記載ミス」と記されていますが、それぞれの作業者は具体的にどのような手作業で放送確認書を作成されたのでしょうか。
CM10桁コードはすべてコンピュータで管理されており、人的な作業を加えてはならない、あるいは加えることが出来ないというのが常識になっているはずですが、なぜ、「作成者」の手が加わり、しかも、ミスが発生したのか、その理由を教えてください。
※赤文字は筆者
東京弁護士会がタレントで弁護士の大渕愛子氏に対して1ヶ月の業務停止処分を下した。依頼人からの着手金を不当に受け取ったことが処分の理由である。
大渕氏は、金銭トラブルが絶えず、 2014年9月には、「大渕愛子 被害者の会」が結成されている。マイニュースジャパンの記事に対しても、名誉毀損裁判を起こすなど、言論に圧力をかけ続けたスラッパーの一人である。
1ヶ月の業務停止処分は、一見すると軽い処分のように思われがちだが、想像以上に重い。大渕氏は、まず、事務所の看板を外さなければならない。さらにクライアントとの契約を一旦、解除しなければならない。
今回、東京弁護士会が下した処分は妥当だ。
ただ、懲戒請求を受けた弁護士に対して、今回のような正当な処分が下されていないケースも多い。特に弁護士会はスラッパーに対する「保護」の姿勢が顕著で、そのために訴状ビジネスが衰えることはない。
わたしは2011年1月、第2東京弁護士会に対して、自由人権協会代表理事で「人権派」の喜田村洋一弁護士を処分するように申し立てたことがある。
◇誣告罪(ぶこくざい)に類似した言動
読売がわたしに対して提起した3件の訴訟(請求額は約8000万円)のうち、最初の裁判(著作権)で、喜田村氏らが虚偽の事実を前提にわたしを提訴していた高い可能性が司法認定されたからである。刑事事件でいえば、「誣告罪(ぶこくざい)」に類似している。
懲戒請求の判定は、半年程度で下されるのが普通だが、この件では2年以上もの歳月を要し、結局、第2東京弁護士会は、わたしの申し立てを棄却した。喜田村弁護士を「救済」したのである。
しかし、わたしは第2東京弁護士会と日弁連の判断は完全に誤っていると確信している。わたしが提出した証拠書類も理解していない可能性が高い。
この一連の事件は毎年検証を繰り返し、今年で8年目になる。
■喜田村洋一弁護士が作成したとされる催告書に見る訴権の濫用、読売・江崎法務室長による著作権裁判8周年①
■報道・出版活動に大きな支障をきたしていた可能性も、読売・江崎法務室長による著作権裁判8周年②
◇著作者人格権を譲渡の怪
事件の発端は、読売の江崎法務室長が、2007年12月に、メディア黒書の記事から、読売作成の文書(販売店主に宛てたもの)を削除するようわたしに催告書を送付したことである。
わたしはそれを断り、今度は、催告書をメディア黒書に掲載した。その結果、江崎氏が、催告書は自分の著作物であると主張し、削除を求めて裁判になったのだ。
ところが裁判の中で、催告書の作成者が江崎氏ではない疑惑が浮上したのだ。調査した結果、ほとんど同じパターンの催告書が「喜田村名義」で他のメディアにも送付されていたことなどが判明。裁判所は、わたし宛ての催告書の作成者も喜田村氏である高い可能性を認定したのだ。
その結果、喜田村氏らは門前払いのかたちで敗訴した。
著作権法の著作者人格権は、他人への譲渡が認められていない。一身専属の権利であり、他人に譲渡できない。それにもかかわらず江崎氏は自分が著作権者であると偽って、裁判を起こしていたのだ。
つまり元々、提訴する権利はなかったのだ。代理人の喜田村氏はこのような事情を知っていたのだ。
『弁護士職務基本規定』の第75条は、虚偽行為を次のように禁止している。
弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
喜田村氏らは、催告書の名義を「江崎」に偽り、それを前提にわたしを提訴し、裁判所に書面を提出して、催告書の削除を求めていたのである。
こうした一連の行為がいかにデタラメであるかは、わたしの弁護団が東京地裁の判決後に発表した次の声明に現れている。
ちなみに喜田村氏に対する懲戒請求書の要点をまとめた準備書面(1)は次の通りである。
博報堂事件の重大な関心事のひとつに、アスカコーポレーションを広告主とするテレビCMが多量に「間引き」されていた疑惑がある。
CM間引きとは、広告主から料金だけを徴収して、実際にはCM放送をスキップする不正行為で、1990年代の後半に福岡放送、北陸放送、静岡第一テレビで発覚して大問題になった。そこでテレビ・広告の関係者が、再発を防止するために、コンピュータがCM「間引き」を監視するシステムを開発・導入した。
それは人的な作業を排したシステムで、コンピュータが人間の不正を監視する画期的なものだった。以後、CM「間引き」は、一切できなくなったというのが、放送界の常識となった。
◇10桁CMコードが意味するもの
CMが放送されると、自動的に10桁のCMコードが放送確認書に印字される。もちろん災害時などの緊急放送でCMが放送できなくなると、放送確認書に、10桁コードは表示されない。このCM10桁コードは、CMが放送されたか、されなかったを判定する唯一の「証明書」と言っても過言ではない。
この場合、放送できなかったCMは、他の時間帯に割り当てられる。その際、償いの意味を込めて、放送回数を増やすなどの「救済措置」が取られる。いわゆる「ペナルティー・サービス」である。
博報堂事件で問題になっているのは、CMコードのないCMが少なくとも1500件も発見されたことである。その大半は、衛星放送におけるCMに集中している。特に著しいのは、スーパーネットワーク社のケースで、現在の段階で、CMコードがないものが900件を超えている。
この問題について、スーパーネットワーク社は、CM「間引き」を否定している。と、なれば放送されたことが前提になるわけだから、当然、「ペナルティー・サービス」も行われていない。
わたしは現段階ではCM価格の調査は行っていないが、広告関係者によると少なくともCM一件につき制作費を含めて50万円ぐらいの料金が請求されるという。900件だと4億5000万円にもなる。
請求の方法は、この事件の特徴である、後付け見積書による請求である。(詳細については、ここをクリック)
◇スーパーネットワーク社とCMコード
7月13日、筆者はCMコードが非表示になった放送確認書について、スーパーネットワーク社に問い合わせた。CMコードが非表示になっている理由について、同社は、民放連に加盟していないから、使用義務はない、と答えた。
会話の意訳は次の通りである。
(最初は、取材拒否を表明した。それから博報堂と相談してから、回答すると、答えた。実際に、[おそらく相談後]先方から電話があった)
スーパーネットワーク:黒薮さんでしょうか。
黒薮:はい、わたしです。
スーパー:先ほど問い合わせがありました放送確認書の件ですが、今、社内で確認しまして、・・10桁コードがなぜないかということですが、基本的に全スポンサーに関してですが、民放連に弊社が加盟していないからです。加盟していないと、10桁コードの義務づけがないものですから、今まで全部、素材と名前で放送確認書を作成してきました。ですから最近、記載していないというよりは、今までがその通りで、10桁コードなしでの素材の確認書をお送りしていました。
黒薮:そうすると放送はされていたということですね。
スーパー:はいそうです。
黒薮:民放連に加盟していないからコードがないと。
スーパー:はい。義務づけがないものですから。ただ、スポンサー名と素材名は記載して・・
黒薮:(アスカ以外の)他社についても、やはりCMコードはないということですね。
スーパー:はい。
◇衛星放送協会の見解
民放連に加盟していない放送局は、CM10桁コードを使っていなのだろうか?この点を調査するために、わたしは、スーパーネットワーク社が加盟している衛星放送協会に問い合わせてみた。
結論を先に言えば、衛星放送協会は、ガイドラインを設けて放送確認書を発行し、そこに人的な手を加えることはなく、放送確認書をスポンサーと広告会社に提出するように指導しているとのことだった。民放連に加盟していない放送局が、CM10桁コードを使っていないということではない。
会話の意訳は次の通りである。
衛生放送協会:黒薮様のおたくでしょうか?
黒薮:はい、わたしですけど。
衛星放送協会:お電話の方をいただいておりまして。
黒薮:ちっとお尋ねしたいことがありまして。
衛星放送協会:はい。
黒薮:CMの間引き問題が出ていますが、そちらの協会の方で防止策など取られているようであれば、教えてほしいのですが。
衛星放送協会:われわれの方ではガイドラインを設けておりまして、放送確認書を発行しています。各社におかれては、そこに手を加えることはなく、きちっと放送されものを放送確認書でスポンサー様に、あるいは広告会社様にお渡ししています。
黒薮:10桁コードに関して、民放連などはCMの10桁コードを使うように徹底しているということなんですが、そちらでも・・
衛星放送協会:こちらの方でも、10桁コードを使用するように推奨して、各加盟社を指導しています。
黒薮:分かりました。この点だけを確認させていただきたかったもので。
◇電通と東急の見解
一方、CMに関する業務では中心的な位置にある広告代理店は、CM10桁ーコードに関して、どのような扱いにしているのだろうか。電通と東急エージェンシーに問い合わせてみた。
これも結論を先に言えば、両者とも衛星放送のCMに関しても、CM10桁コードは使っていると回答した。
電通との会話の意訳は次の通りである。
質問の内容:広告代理店に対して、貴社が制作する衛星報道のCMには、10桁CMコードを使っているか?
【電通】
黒薮:衛星放送のCMについて調べていますが、博報堂さんが作ったCMで、CMの10桁コードが入っていないものがたくさんあるのですが、電通さんの場合は、この10桁コードを使われていますか。他社と比較したいと思いまして。
電通:はい、基本的には使用しておりますが。
黒薮:そうですか。
電通:はい。
黒薮:衛星放送でも使われているということなんですね。
はい:BSの放送で使用しています。
【東急エージェンシ】
一方、東急エージェンシーとの会話の意訳は次の通りである。
質問の内容:広告代理店に対して、貴社が制作する衛星報道のCMには、10桁CMコードを使っているか?
東急:10桁のコードの使用ということなんですが、使用しています。
黒薮:使用されているということですね?衛星放送でも使用されているということですね。
東急:そうですね。
黒薮:ありがとうございました。
◇CMコードの使用はテレビ界の常識
CMコードの使用に関してわたしは、業界団体も含め、随分たくさんの関係者を取材したが、そこから分かったことは、テレビ界では、CMコードの使用はすでに常識になっている事実である。それゆえに、いまの時代にCMの「間引き」はあり得ないというのが、テレビ関係者の常識として定着している。
ところが今年に入って、博報堂が制作したCMが多量に「間引き」されてきた疑惑が浮上しているのである。
さらにCMコードが表示された放送確認書にも別の疑惑がかかっている。沖縄テレビ放送の放送確認書が偽装されていた疑惑である。その根拠については、裏付け資料を入手しているので、改めて詳細を報告しよう。
2016年6月度の新聞のABC部数が明らかになった。それによると中央紙(朝、読、毎、産、日)はいずれも、前年同月よりも部数を減らしている。
朝日が-26万部、読売が-13万部、毎日が-19万部、産経が-4万部、日経が-1万部となっている。
新聞部数の低落傾向には依然として歯止めがかかっていない。
6月度のABC部数は次の通りである。
朝日:6,505,026(-285,927)
読売:8,982,568(-125,510)
毎日:3,058,129(-191,799)
産経:1,565,858(-38,257)
日経:2,728,912(-10,115)
◇ABC部数は「押し紙」を含む
ちなみに実際に配達されている新聞部数(実配部数)とABC部数との間には乖離がある。ABC部数に「押し紙」が含まれているからだ。
「押し紙」とは、広義には新聞社が新聞販売店に対して供給する過剰な新聞部数を意味する。残紙ともいう。たとえば2000部しか配達していない販売店に対して3000部を搬入すれば、差異の1000部が「押し紙」である。この1000部に対しても、新聞社は卸代金を徴収する。普通の新聞とまったく同じ扱いにしているのだ。
かりにジャーナリストが「押し紙」問題で新聞社を追及しても、新聞社は自分たちは一度も「押し紙」をしたことはないと真面目な顔で反論してくる。
しかし、「押し紙」隠しの実態は、2002年に提起された真村訴訟の中で完全に暴露された。しかも、それが裁判で認定された。
■真村裁判福岡高裁判決の全文
【冒頭の画像】「押し紙」の回収場面。広告のスポンサーに対する背信行為である。
博報堂とアスカコーポレーションの係争の中で、アスカのCMが多量に「間引き」されていた疑惑の根拠を再整理しておこう。
■参考:博報堂事件の全体の構図
①日本の放送界には、コンピュータでCMが放送されたか否かを監視するシステムが定着している。これについては筆者が、日本広告主協会、民放連、それに衛星放送協会の取材によっても判明した。さらにメディア総研にも確認した。
民放連と衛星放送協会については、会員社に対してCMコードの使用を徹底する方針を取ってきた。
放送界がこのようなシステムを徹底したのは、1990年代の後半に、福岡放送、北陸報道、静岡第一テレビでCMの「間引き」事件が発生したからである。CM「間引き」を防ぐために、米国の監視システムを参考にして、CMに10桁コードを付し、コンピュータがCM「間引き」を監視するシステムを導入したのである。
②アスカが過去の放送確認書を調査したところ、CMコードがないCM本数が1500件を超えていることが分かった。これについては、メディア黒書でも調査した。詳細は、次のエクセルに示したとおりである。(数値は、まだ確定していない。)
CMコードの非表示だけで、CMが放送されていないと判断するには十分だが、次の点も一応は考慮しなければならない。
たとえばプロ野球の中継が延長されたり、災害が起こって番組が変更になった場合などに、CMが放送されないことがある。この場合はもちろんCMコードは非表示になる。
◇ペナルティ・サービス
しかし、やむなくCMを放送しなかった場合、放送局は未放送分のCMを他の時間帯に組み込んで放送するなどの処置を行う。これを「ペナルティ・サービス」と呼んでいる放送局もある。「サービス」であるから、償いの意味で、たとえば契約では1回だけの放送だったが、それを3回に増やして別の時間帯に放送するとか、視聴率がより高い時間帯へCMを割り当てるなどして、クライアントが不利益を被らないように配慮する。
アスカのケースでは、今後、CMコードが非表示になっているCMに対して、「ペナルティ・サービス」に該当する措置を、スーパーネットワークが実施しかた否かが調査対象になる。しかし、種々の書面を確認するまでもなく、スーパーネットワーク社は、「ペナルティ・サービス」を実施していない。
と、いうのも7月19日に筆者がスーパーネットワークを、電話取材した際に、同社はCMは放送したと答えているからだ。放送したのであれば、「ペナルティ・サービス」は発生しないからだ。
なお、CMが中止になった場合、広告代理店は事情をクライアントに説明しなければならないが、博報堂はそれを行っていない。CMを放送したという前提で事務処理をしているわけだから、当然のことである。
現在の放送界では、CMコードの表示をもって、CMが放送されたことを証明するシステムになっているわけだから、スーパーネットワークは、CMコードが非表示になり、しかも、「ペナルティ・サービス」を実施しなかったとすれば、架空請求を疑われても弁解のしようがない。
その金額は、億単位になる。
◇後付けの見積書で請求
なお、スーパーネットワークは、電話取材の中で、アスカ以外のCMについても、CMコードは使っていないと話している。と、すればスーパーネットワークには、CM「間引き」の温床があることになる。
衛星放送協会は事実関係を調査すべきではないか?
ちなみにスーパーネットワークは博報堂系の会社である。同社の株式の50%を博報堂が所有している。博報堂は、アスカのCMを自社系の放送局に割り当てていたのだ。しかも、その請求は、後付けの見積書などで行われていたのだから、アスカとしても、CMが本当に放送されたか否かの確認すらできない。
このあたりの事情を裁判所がどう判断するかが注目される。
東京中野区2丁目にあるマンション、「ライオンズシティ中野ファースト」にKDDIが携帯電話の基地局を設置する計画をめぐり、近隣の住民から反対の声があがっている。
6日はKDDIが住民を対象にした説明会を行う予定だという。これに対して住民側も区議に支援を求めるなど、反対運動を展開している。
マンションの屋上に基地局を設置した場合、電波の発信源となるマンションに住む住民だけではなく、電波が網羅する範囲に住む住民も電磁波の人体影響を受ける。それゆえに基地局問題は、地域社会全体の問題なのである。
最近の基地局問題の傾向として、電話会社が以前ほど強硬な姿勢を取らなくなっていることである。基地局の設置計画が中止になったり、すでに設置された場合であれば、撤去に応じるケースも増えている。
その背景には、電磁波による人体影響が否定できなくなって来た事情がある。
◇電磁波は放射線の仲間
意外に認識されていないが、電磁波は放射線の仲間である。日本では電磁波と放射線を区別して、電磁波はおおむね「安全」としているが、海外では電磁波も放射線も区別せずに「electromagnetic radiation(放射線)」という用語を使い、electromagnetic radiation全体に人体影響があるという考えが常識になってきた。
しかし、一体、なにを根拠に人体影響の有無を判断すべきなのかが次に出てくる問題になる。結論を先に言えば、それは疫学調査である。動物実験ではない。疫学調査を最優先してリスクを評価するというのが世界の常識である。
と、いうのも動物と人間では、体質も生活環境も異なるからだ。実験装置の中での実験結果が、必ずしも人間にあてはまるとは限らないからである。
こういう視点は極めて重要である。事実を把握することを原点とするジャーナリズムの視点と共通している。疫学調査により基地局周辺で体調不良を訴える人が多い事実が明らかになれば、「予防原則」を最優先して、まず、基地局の操業を停止しなければならない。医学的な根拠を探すのは、それからである。
ところが日本ではこの順序が逆転している。医学的な根拠が発見されるまでは、基地局の操業を自由にやってもいいことになっている。
◇延岡市に見るKDDI基地局の人体影響
筆者の手元に宮崎県延岡市で問題になったKDDI基地局の周辺で発生した健康被害の詳細なデータがある。頭痛、耳鳴不眠、鼻血、などである。
詳細は、次の通りである。PDFで全データを公開しよう。
また、基地局周辺における癌の疫学調査としては、次の2件を紹介しておこう。メディア黒書からの再録になる。
◇ドイツの疫学調査
事実、携帯基地局の周辺に癌患者が多いという疫学調査の結果はすでに存在する。有名な例としては、ドイツの医師たちが、93年から04年まで、特定の団体から資金提供を受けずにナイラ市で行った調査がある。対象は、調査期間中に住所を変更しなかった約1000人の通院患者。基地局は93年に設置され、その後、97年に他社の局が加わった。
これらの患者を基地局から400メートル以内のグループ(仮にA地区)と、400メートルより外(仮にB地区)に分けて比較した。
最初の5年については、癌の発症率に大きな違いがなかったが、99年から04年の5年間でA地区の住民の発癌率が、B地区に比べて3.38倍になった。しかも、発癌の年齢も低くなっている。たとえば乳癌の平均発症年齢は、A地区が50.8歳で、B地区は69.9歳だった。約20歳早い。ドイツの平均は63歳である。
◇ブラジルの疫学調査
ブラジルのベロオリゾンテ市は、ブラジル南東部、標高約 800 メートルに建設された計画都市である。人口は約240万人。
この市をモデルとして携帯電話の通信に使われるマイクロ波と癌の関係を調べる調査が行われたことがある。結果が公表されたのは、2011年5月。おりしもWHO傘下のIARC(国際がん研究機関)が、マイクロ波に発癌性(遺伝子毒性)がある可能性を認定した時期である。
調査は役所が保管している携帯基地局の位置を示すデータ、市当局が管理している癌による死亡データ、それに国勢調査のデータを横断的に解析したものである。対象データは、1996年から2006年のもの(一部に欠落がある)である。
結論を先に言えば、基地局から半径500メートルの円周内で、癌のリスクが高くなることが分かった。1万人あたりの癌による死亡数と、基地局からの距離は、次のようになっている。明らかな相関関係が浮上する。
距離 100mまで:43.42人
距離 200 mまで:40.22 人
距離 300 mまで:37.12 人
距離 400 mまで:35.80 人
距離 500 mまで:34.76 人
距離 600 mまで:33.83 人
距離 700 mまで:33.80 人
距離 800 mまで:33.49 人
距離 900 mまで:33.21人
距離 1000mまで: 32.78人
全市 :32.12 人
検証対象のエリアに複数の基地局がある場合は、最初に設置された基地局からの距離を採用した。そのために汚染源の基地局を厳密に特定できない弱点はあるが、大まかな傾向を把握していることはほぼ間違いない。
基地局から200メートル以内は極めて危険性が高い。
注:本文と動画は関係ありません。
多岐にわたる博報堂がらみの経済事件における取材対象のひとつに、CM(コマーシャル)の「間引き」疑惑がある。
※事件の全体の構図については、次の解説記事を参照に。
CM(コマーシャル)の「間引き」とは、クライアントと放送局(広告代理店を含む)が契約で取り決めたCMを、放送局が秘密裏にスキップして、料金だけを徴収する行為を指す。1997年に福岡放送でこの問題が発覚したのを皮切りに、その後、北陸放送と静岡第一テレビでもCM「間引き」事件が明らかになった。
そして今また新たなCM「間引き」事件が浮上している。疑惑の段階だが、取材を通じて、わたしは不正の確証を得ている。しかも、今回のケースは、大手広告代理店・博報堂がらみの疑惑である。
◇CM(コマーシャル)「間引き」とは
博報堂事件のCM「間引き」事件を検証する上で、前提として把握しておかなければならない点は、日本の放送界が、1990年代後半のCM「間引き」事件を教訓として取った対策の中身である。この点を深く理解することにより、今回のCM「間引き」疑惑の異常な手口が見えてくる。
結論を先に言えば、日本の放送界は、CMにCMコード(10桁から構成されている)を付けることで、コンピュータを介在させてCMが本当に放送されたか否かを認証するシステムを導入したのだ。放送確認書にコンピュータが印字したCMコードが表示されていれば、CMが放送されたことを意味する。CMコードが非表示になっていれば、CMが放送されなかったことを意味する。
CMが放送されないケースの原因として考えられるのは、たとえばプロ野球中継の延長である。たとえば災害が発生して、特別番組が放送されたときである。
コンピュータが故障してCMコードが非表示になるケースも考え得るが、通常、コンピュータにはバックアップのシステムがあるので、データそのものが消えてしまうことは、まずあり得ない。
放送界が、人力による作業を排除したCMコードを導入した結果、CM「間引き」が再び問題になることはなかった。この分野では、コンピュータが人間の不正を監視するようになったのである。
◇ISCI(イスキー)
CMコードの導入プロセスについて、『日経新聞』(1999年5月17日付け)は、次のように述べている。
日本広告主協会(理事長・福原義春資生堂会長)が日本民間放送連盟(会長・氏家斉一郎日本テレビ放送網社長)に「ISCI(イスキー)」と呼ばれるシステムの導入を強力に働きかけている。
ISCIは米国で七〇年に考案された仕組み。米国広告業協会が広告主ごとに割り当てたコードを一元管理する。
日経が報じたように、「ISCI(イスキー)」が、日本のCMコードの原点だったのである。
繰り返して強調するまでもなく、現在、日本の放送界が使っているCMコードに、人工的な手を加えることはできない。これは放送関係者の間では常識となっている。もちろん、CMにCMコードを付す業務形態が定着している。
事実、民間放送局をまとめる民放連は、CMコードが付されていないCMは受付けないよう会員社に徹底しているし、衛星放送協会も会員社に対してCMコードの使用を促して、CM「間引き」の防止を徹底している。
CMコードは、人的な操作ができないから、CM「間引き」の監視システムとして機能しているのだ。それはテレビ業界では常識として認識されているのである。
◇コンピュータがCMを監視するシステム
ところが今年に入ってから博報堂が仲介したアスカコーポレーションのCMが大量に「間引き」されていた疑惑が浮上しているのだ。そう判断できる根拠は、放送確認書に肝心のCMコードが表示されていないものが多数見つかったことである。本当に放送されていなければ、アスカは架空請求を受けたことになる。
CMコードが非表示になっている件数は、メディア黒書の統計では次の通りである。(だしし暫定の数値で、変更になる可能性もある)
このうちもっとも件数が多いのは、スーパーネットワークである。この放送局は、博報堂と深い関係にある。同社の株式の50%を博報堂が所有している。
しかも、2014年9月に至っては、一気に100本のCMでCMコードが欠落している。
念のためにスーパーネットワークに対して、その理由を質問したところ、「民放連に加盟していないから」という答えが返ってきた。
しかし、スーパーネットワークは、民放連と同様にCMコードの使用を会員社に徹底させている衛星放送協会に所属している。従って、「民放連に加盟していないから」CMコードは使わないという説明はおかしい。
◇博報堂・遠藤常二弁護士のCMコードに関する見解は誤り
CMコードが非表示になっている理由について、博報堂の遠藤常二弁護士は、もっとおかしな主張をしている。CMコードの「作成者の記載ミス」だというのだ。原告準備書面(2)から、そのくだりを紹介しておこう。赤文字の部分に注意してほしい。
(1)同2のうち、甲第5号証に日本民間放送連名の定める10桁のCMコードが記載されていないこと及び乙第23号証にスーパー!ドラマでCMが放送された旨の記載がなされていないことは認めるが、その余は否認する。
放送確認書は、放送を実施した媒体社の責任において発行されるものであり、媒体が、放送を実施せずに放送確認書を発行することは常識的にあり得ない。スーパー!ドラマでの放送確認書(甲5)が発行されている以上、同番組でCMが放送されていることは明白である。被告らは、甲第5号証にCMコードが記載されていないことや、乙第23号証にスーパー!ドラマに関する記載がないことを理由に甲第5号証の信用性を争っているようであるが、記載のないことは、それぞれの作成者の記載ミスと考えられてもCM放送の実施の有無とは無関係である。
遠藤弁護士は、CMコードが何かをまったく理解していないのではないか。CMコードをコンピュータを介さずに作成していたとすれば、これは別の大問題である。
◇日本経済新聞の記事
参考までにCMコードの導入プロセスを報じた『日経新聞』の記事を紹介しておこう。
日本広告主協会(理事長・福原義春資生堂会長)が日本民間放送連盟(会長・氏家斉一郎日本テレビ放送網社長)に「ISCI(イスキー)」と呼ばれるシステムの導入を強力に働きかけている。
ISCIは米国で七〇年に考案された仕組み。米国広告業協会が広告主ごとに割り当てたコードを一元管理する。CM画像のいわばすき間に、このコードを使った記録データをつけて放映する。CMが放映されたかどうかの確認に利用できるほか、広告の費用対効果を探る関連データの活用、CMの制作から放映に至るまでの作業ミスの減少に役立てるのが狙いだ。
九七年六月に福岡放送(FBS)によるCM未放送事件が発覚したことを契機に、広告主協会ではISCIの研究を開始した。九八年十一月には広告主協会が日本版ISCIの導入検討会議の開催を民放連や日本広告業協会など関連四団体に要請。これまで四回にわたり同会議が開かれた。
二月の会議では広告主協会が日本版ISCIのたたき台を提案したが、三月に静岡第一テレビのCM未放映事件が発覚。広告主協会側では「静岡の事件をきっかけに関係者に早期導入を働きかけたい。民放連や広告業協会も前向きに考えていると理解している」(同協会電波委員会の若林覚委員長=サントリー宣伝事業部長)と導入ムードの盛り上がりに期待をかける。
広告主協会側には「第三者機関が確認できるISCIの仕組みは米国から欧州にも広がり、いわばグローバルスタンード」という認識がある。第三者機関としては番組の視聴率調査会社やCM関連情報のデータベース会社のような中立的な組織が適しており、ISCIの導入によってCM関連の新しい調査ビジネスの道も開けるとしている。

メディア黒書で断続的に取り上げている博報堂事件とは何か?こんな問い合わせが読者から寄せられた。そこで本稿では、事件の輪郭を説明しておこう。輪郭が分かれば、これは極めて単純な経済事件であることが分かる。
結論を先に言えば事件の中身は、博報堂が後付けの見積書によってアスカコーポレーションに提示した業務内容(もちろん金銭を含む)に実在しなかったり、消化不良になっている項目が多数含まれている疑惑である。枝葉末節はあるにしろ、事件の中心はこの部分にほかならない。
もちろん現在の段階では、疑惑である。確定ではない。
◇テーマは多岐に渡るが柱はひとつ
わたしの手元に今年の5月に、アスカが博報堂に対して起した過払金返済訴訟で、裁判所に提出した「過剰請求費」一覧表がある。博報堂が過剰請求していたとアスカが主張している具体的な項目である。全部で15項目にもなる。
1、情報誌制作費
2、撮影費
3、タレント出演料
4、アフィリエイト
5、通販番組制作費・編集費
6、PR活動費
7、企画・メディアプランニング費等
8、TV-CM費
9、新聞広告費
10、雑誌広告費
11、ラジオ番組制作費
12、イベント費
13、テレビ放映中止後の放映料
14、ホームページ制作費
15、通販番組受付業務費
このほかにも、アスカはテレビCMを「間引き」されていたとして、提訴を検討しているようだ。さらに視聴率の偽装事件もある。これについても、アスカが詐欺で提訴する可能性が高い。
◇前代未聞の後付け見積書
「1」から「15」の項目で、問題になっているのは、博報堂の請求方法である。通常、業務を発注するときは、事前に見積もりを提示し、作業内容やそれに対する経費を協議する。合意に達すると、実際に業務を行う。そして請求書が発行され、それに対する報酬が支払われる。
ところが博報堂はこのようなプロセスを踏んでいなかった。常識では考えられないことであるが、業務(たとえば情報誌の制作、CMの制作)が終わってから、形式ばかりの見積書を提示して、それをそのまま請求していたのである。
たとえば次の見積書を見てほしい。これは2011年にアスカが福島で被災地を支援するために行った「FUKUSHIMA×ASKA Shining Hope Tree」と題するボランティア活動に対して博報堂が発行した見積書である。
イベントは2011年12月20日から25日の6日間だった。当然、見積書は、イベントが始まる前の時期に提出されなければおかしい。準備期間もあるので、おそらくは10月の下旬か11月初旬には、見積書を提示しなければならない。
ところが上記の「御見積書」の右上にある書面発行の日付は、12月31日になっている。つまりイベントが終わってから、イベントの見積書を提出しているのだ。
「御見積書」の赤文字の部分が典型的な後付けの見積もり(請求)項目である。暴風・積雪対策として80万円。斜面調整のために100万円。もちろん赤文字以外の項目もすべて後付けである。
ちなみに上場企業の経理としては珍しく、博報堂の見積書には書面の整理番号が入っていない。
この種の後付け「御見積書」が、多量にあるのだ。アスカは、博報堂に対して、事前に見積書を提出するように申し入れ、一時的に、「事前御見積書」と題する書面が提出されたことがあるが、全体からすればほんの一部である。
「事前御見積書」という言葉そのものがおかしい。見積書は、常に「事前」が大前提になるからだ。下の書面が、「事前御見積書」の例だが、この書類の発行日に注意してほしい。書類の名称だけは「事前御見積書」に訂正されているが、書類の発行日はやはり「後付け」の7月31日になっている。この事実ひとつを見ても、いかに博報堂の「社員」に緊張感が欠落しているかが、推測できるのだ。
裁判では、請求項目の中身に実態があったのか、それとも架空だったのかが検証される。見積書が後付けになっているから、こうした疑義が生じたのである。
なぜ、後付け見積書をベースとした取引が延々と続いてきたのかは、今後、取材する必要があるが、これまでの取材から察すると、博報堂の広告マンの特殊で想像を超えた戦略にあったようだ。このあたりは、おそらく裁判で予想される清原氏とアスカ・南部社長の尋問の中で、検証されるだろう。
この両者の尋問なくして、裁判は成り立たない。2人が裁判のキーパーソンなのである。
◇電通を撤退させた「辣腕」
この経済事件では、無断広告や視聴率の偽装も問題になっている。これらの事件は、事件の柱である後付け見積書による架空請求疑惑とどのような関係があるのだろうか?
まず、無断広告事件との関連を説明しよう。この事件は、京都きもの友禅と旅行代理店H.I.Sの広告が、両クライアントの了解を得ないまま、アスカの通販情報誌に掲載されていたというものだ。両クライアントは、自社の広告が掲載されていたことにすら気づかなかった。
この怪事件の背景には、広告代理店相互の競争があったようだ。もともとアスカには、電通、博報堂、それに東急エィジェンシーの3社が出入りして、自社の優位性を誇示しながら、業務を進めていたという。表向きは同業者の仲間意識があっても、企業活動である以上、クライアントは実績によって評価を下すので、心の中では互いがライバルである場合が多い。
博報堂の広告マンに清原氏(仮名)という「辣腕」がいた。清原氏は、通販誌に掲載する広告のクライアントを探し出した。それが京都きもの友禅とH.I.Sだった。両者に無断で広告を掲載して、自分の実績にしていたのである。
こうした清原氏の「実績」もあってか、博報堂は電通と東急エィジェンシーを撤退させ、業務を独占するようになったのだ。アスカにとっては、悲劇の始まりだった。もちろん京都きもの友禅と旅行代理店H.I.Sから、広告料は支払われていない。
この事件は、博報堂による偽りの実績による業務独占という観点から、位置づけることができるのである。他社はアスカから撤退したのだ。
■博報堂の広告マンに電通も歯が立たずに撤退、京都きもの友禅とHISを巻き込んだ奇妙な「広告事件」
◇視聴率の偽装=営業の道具
さらに視聴率の偽装問題は、テレビCMや通販番組を提案する際に、より高い料金で交渉することを可能にした。視聴率は、料金設定を行う上で極めて大事な意味を持つ。
それはちょうど新聞のABC部数の大小に応じて、公共広告の価格が設定されるのと同じ原理である。
高い視聴率を提示することで、博報堂はCMや通販番組の交渉を有利に進めたと推測されるのである。こうして制作されたCMが、後付け見積書により、「間引き」されていた可能性があるのだ。
しかし、繰り返しになるが、事件の根底にあるのは、後付け見積書の中身の問題である。実態があったのか無かったのか。架空だったのか、実在したのか。この点が裁判で争われるのだ。
これまでの記事は次のURLで読める。

新聞関係者が「賭けゴルフ」をやっているとの内部告発があった。「賭けゴルフ」の主催者は、新聞社の系統ごとに新聞販売店主で構成する「店主会」である。ほとんどの店主会は、「○○県□□地区▽▽会」などと呼ばれている。
○○の部分には県名が、□□の部分には地区名が、▽▽の部分には新聞社名が入る。たとえば千葉北部朝日会というように。(注:千葉北部朝日会が賭けゴルフを主催したという意味ではない。店主会の呼び方のパターンの例としてあげた。)
次に示すのが「賭けゴルフ」の主催者が準備した用紙である。
「新ベリア方式」というのは、ハンディの付け方の一方法である。野球賭博でも知られるようになったハンディを「賭けゴルフ」でもつけている。
会費は3000円となっており、単なるゴルフコンペではなく、「賭けゴルフ」であることが分かる。
実は○○新聞の販売関係者が「賭けゴルフ」をやっているという通報は、3年ほど前から断続的に寄せられていた。しかし、裏付けがまったくなかったので、記事にはしなかった。
ところがこのたび主催者が準備した用紙を入手した。黒マジックで塗りつぶした箇所には、販売店主の名前が入っている。内部告発者の説明によると、新聞社販売局の担当員も参加しているという。
店主の中には、「賭けゴルフ」に不本意な人もいるようだが、「村八分」にされることを警戒して参加するらしい。新聞社から睨まれると販売店を廃業に追い込まれるリスクが高くなるからだ。
販売店と新聞社の格差は激しく、深夜に新聞社の担当員から新人店主の夫妻が宴会に呼び出され、煮魚の残飯を食わされたという話が九州にある。
新聞販売の世界には、前近代的な人間関係がそのまま残っている。こうした状況の下で、「賭けゴルフ」も当たり前になっているのだ。

2011年3月11日に東北地方に襲いかかった大惨事の後、ボランティアの人々が、北から南から続々と被災地へ向かった。
その中で、ビジネスに視線を光らせるメディア企業があった。電通の最大のライバル、福岡では、電通を撤退させたこともある博報堂である。
◇メディアを巻き込んだ前代未聞の経済事件
博報堂とアスカコーポレーションの係争にみる経済事件では、メディア黒書が指摘してきたように博報堂によるさまざまな「不正」が発覚している。
たとえば通販情報誌を制作する際の博報堂による過去データの流用である。博報堂かテレビ局によるCMや通販番組の「間引き」疑惑である。博報堂がタレント料金が不自然に高くつり上げた疑惑である。さらには、次に紹介するイベントをめぐる「臨時」請求の件も見逃すわけにはいかない。
一見、さまざまな事件が交錯して複雑に感じられるこの経済事件であるが、根底にあるものは単純明快だ。後付けの「御見積書」により博報堂が請求対象にした膨大な業務が正しく実施されていたのかという点である。さらに架空請求や水増し請求はなかったのかという検証点である。
これらの点が裁判の争点になることはほぼ間違いない。司法判断とは別に、筆者は、不正の事実を複数つかんでいる。
◇福島でのクリスマスイベント
2011年12月20日から25日の6日間、JR福島駅の東口駅前広場で「FUKUSHIMA×ASKA Shining Hope Tree」と題するイベントが行われた。これはアスカが被災地支援事業としてスポンサーになって支援したものである。これについては、博報堂のコンベンション・スペース事業部の柳澤博之氏も次のような報告書を書いている。
JR福島駅東口駅前広場周辺では、毎年地元商工会議所が主導する実行委員会により街頭イルミネーションイベント「星に願いを・・★」キャンペーンが実施されてきた。しかし、昨年は東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故の影響により、実施が危ぶまれる状況であった。
一方で、福岡県に本社を置く化粧品会社アスカコーポレーションは、震災発生直後より物資の提供を行うなど被災地支援に力を入れており、その活動の一環として、年末にクリスマスイルミネーションを提供したいという意向を持っていた。
美しいイルミネーションを見た被災地の方々が、その一瞬だけでもつらい現状を忘れて笑顔になれる。そんな機会を提供することで、被害者の「こころの復興」を支えたいという意図である。そして、東北地方でイルミネーション設置の適地を探し中、福島駅前のイルミネーションイベントの窮状を知り、特別協賛として参加することになった。
アスカコーポレーションは、前年の2010年に福岡市内で大規模なイルミネーションイベントに特別協賛して成功させた実績があり、今回はその時に購入した電飾資材の一部を活用して、福島県内最大級となる高さ約13mのクリスマスツリー型イルミネーションを制作するという計画である。
柳澤氏も述べているように、福島のイベントは、「福岡市内で大規模なイルミネーションイベントに特別協賛して成功させた」際に「購入した電飾資材の一部を活用して、福島県内最大級となる高さ約13mのクリスマスツリー型イルミネーションを制作するという計画である」。
電飾資材はすでにアスカが所有していたので、経費はかなり節約できる見通しだった。ところがイベントが終わった後の12月31日付けの後付け「御見積書」を見て、アスカの社員たちは唖然となった。
◇後付の見積書に「約○○円」の「約」を連発
後付けの「御見積書」の請求項目の中に、「暴風対策」「積雪対策」などを理由に、臨時の請求が次々と追加されていたのだ。後付けの「御見積書」そのものがおかしな手続きであるのに、それに加えて、これもまた後付けの臨時の請求が書き加えられていたのだ。赤文字で次のように記されていた。
※暴風対策・積雪対策のためフレーム強化を行い、追加費用約80万円が発生しました。
※設置面に傾斜があったため安全性担保のため傾斜調整・土台調整を実施し、追加費用約100万円が発生しました。
※20日のプレゼント配布数増への緊急対応、23日分追加対応のため保管・アッセンブル・配布費用として追加費用約40万円が発生致しました。
※23日分追加分対応のため緊急の印刷費用として追加費用約5万円が発生しました。
※20日のプレゼント配布数増への緊急対応として追加費用約5万円が発生致しました。
追加請求は総計で230万円になる。内訳は次の通りだ。
暴風対策積雪対策追加費用:80万
傾斜調整土台調整追加費用:100万
商品追加費用:40万
追加印刷費用:5万
警備追加費用:5万
読者は、追加費用の前に付けてある「約」という言葉に違和感を感じないだろうか。「約80万円」、「約100万円」、「約40万円」、「約5万円」、「約5万円」。
通常、見積書に表示される金額に「約」という表現はあり得ない。明細な金額を相手に伝えるのが原則だ。
しかも、「約」を付した金額が、合計請求額に加算されているのだ。
◇「強風・大雪の日はありませんでした」
公的資金による復興事業は別にして、個人や民間企業の多くは、福島の復興支援を無償で行ってきた。アスカによる支援も例外ではない。ところが博報堂は、その支援事業により1250万円の利益を上げている。
しかも、この中には、「暴風対策積雪対策追加費用」や傾斜調整土台調整追加費用」など、本当に必要だったのかを検証しなければならない臨時の請求も含まれているのだ。
こうした実態について、福島でのイベントを企画し、現地入りしたアスカの社員が言う。
「博報堂の後だし見積書からすると12月13日から施工を開始して、26日にイルミネーションを撤収したことになっています。その当時の天気を調べていただくとわかりますが、気温はかなり低かったのですが、雪や風はパラつく程度でした。わたしが現場に入った時も多少雪が降った程度です。13日~26日まで、雪マークの日はありましたが、強風・大雪の日はありませんでした。
しかも、この福島のイベントは、前年福岡の大濠公園で使用したイルミネーション機材を流用することで安くできることを前提に、高くても1000万以内という話が博報堂の営業マンと南部社長の間で行われたと聞きました。
もちろん、復興支援のイベントなので、南部社長の気持ちを受けて、『利は一切取らない』という話になっていたと推測します。ところが博報堂は実際には、暴風や積雪などを理由に250万円を追加請求してきました」
この件についても、取材を拒否している博報堂側の言い分は不明だ。
メディア黒書は、常に反論を歓迎する。
写真出典:福島観光情報
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