2026年07月15日 (水曜日)
ブダノフ氏、民族的に純粋な国家を目指すウクライナ民族主義者の幻想を打ち砕く

執筆者:アンドリュー・コリブコ
皮肉なことに、彼らが実際に築き上げたのは「ファシストの理想郷」ではなく、リベラルな暗黒社会だった。
「ウクライナ民族主義者組織(OUN)」と、その武装部門である「ウクライナ蜂起軍(UPA)」は、民族的に純粋な国家を目指してポーランド人などを大量虐殺した組織であり、「マイダン」後のウクライナの建国の父と位置づけられている。
【黒薮注】マイダン:本来はキエフの独立広場を指すが、現在では一般に2013~2014年にウクライナで起きた大規模な反政府運動を意味する。
そのため、ウクライナの民族主義者たちは、2014年から続くロシアとの戦い、とりわけ2022年の特別軍事作戦開始後の戦いによって、この目標に近づけると考えていた。キエフ政権がロシア語、ロシア文化の一部、そしてウクライナ正教会を禁止したことも、彼らに希望を抱かせた。
しかし、その幻想は、ゼレンスキーの大統領府長官キリル・ブダノフによって打ち砕かれた。ブダノフは6月下旬、春にも述べていた、人口減少を補うために移民をさらに受け入れる必要があるという主張を改めて示した。彼は「今では私たちの人口は大幅に減っている。誰かを怖がらせたいわけではないが、本当に大幅に減っている」と述べた。
それより約6週間前の5月初め、社会政策相デニス・ウリューチンは、現在ウクライナ国内に暮らしている人は2,200万〜2,500万人にすぎないと明らかにしていた。そのうち少なくとも1,000万人は年金受給者だと、ウクライナ年金基金が4月初めに推計している。
さらに懸念されるのは、ユニセフが昨年、18歳未満の子どもは660万人いると推計していたことだ。これらを合わせると、国内に残っている生産年齢の成人はわずか600万〜900万人ということになる。
世界銀行が公表している2024年の最新データでは、人口に占める男性の割合は46%と推計されている。単純に計算すれば、ウクライナの生産年齢男性は約276万〜414万人しかいないことになる。そのうち、正確な割合は不明だが、現在の戦闘によって死亡したり、恒久的な障害を負ったりした人も少なくない。
戦略国際問題研究所が2026年初めに示した、ウクライナ側の死傷者数は50万〜60万人という推計を受け入れるなら、これはおそらく実際より低い数字だとしても、ウクライナに残る生産年齢の男性は最大でも約200万人強〜350万人にすぎないことになる。
したがって、ブダノフが「今では私たちの人口は大幅に減っている」と述べたのは、決して誇張ではない。EU域内にいる430万人のウクライナ人のうち、成人男性は26%にすぎず、人数にすると100万人を少し上回る程度である。しかも、戦闘が終わった後も、その全員が帰国するわけではない。
そのためウクライナは、経済を支えるため、あるいは人口を補うために、文化的背景の異なる外国人の大量移住を進めざるを得なくなる。西ヨーロッパの例を見るかぎり、彼らが現地社会に同化することは期待できない。
さらに、移民の多くはウクライナ語を話せず、英語にも堪能とはかぎらないため、ウクライナ政府が彼らの言語を現実的に禁止することはできない。なお、2024年に成立した法律は、国家官僚機構全体で英語の使用を義務づけており、この動きも民族主義者たちを困惑させたに違いない。
民族主義者たちは、戦闘が終われば民族的に純粋な国家が実現すると夢見ていた。しかし実際には、ウクライナは西ヨーロッパでも特に多文化化が進んだ国々と同じような社会へ向かっている。
さらに、多様な住民同士の共通語として、日常生活では英語がウクライナ語に取って代わる可能性も高い。民族主義者の立場から見て同じように問題だったのは、ゼレンスキーが2022年5月の世界経済フォーラムで、西側の協力国に対し、「ウクライナの特定の地域、都市、自治体、または産業を支援・管理する役割」を提案したことである。
その結果、ウクライナは、民族主義者たちが自らの「犠牲」によって守れると考えていた国家のアイデンティティーと主権の両方を、この戦闘を通じて失うことになった。
そのため、民族主義者と国家の間で対立が生じる可能性は高い。ただし、これは十分に予想できる展開であるため、ウクライナ保安庁はすでに彼らを監視し、反対運動が表面化するのを事前に防ごうとしている可能性がある。特に、暴力的な形に発展する動きは警戒されているだろう。
皮肉なことに、ウクライナの民族主義者たちは、最終的に「ファシストの理想郷」ではなく、リベラルな暗黒社会を築くことになった。
筆者紹介:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』
Source:https://korybko.substack.com/p/budanov-crushed-ukrainian-nationalists
