警察関係者の取材に大きな支障、菅生事件再現の危険性も、秘密保護法違憲訴訟・本人尋問、寺澤有氏の証言②
6月3日に実施された特定秘密保護法違憲訴訟の原告本人尋問で、林克明氏に続いて、警察取材のスペシャリスト・寺澤有氏が証言台に立った。林氏がおもに情報公開や官庁の直接取材を試みる際に受けた特定秘密保護法の悪影響について証言したのに対して、寺澤氏は、「潜入」を含む非公式なルートを使った取材の際に受けた悪影響について証言した。
その中で寺澤氏は、2009年、栃木県小山市で起こった強盗事件を例に特定秘密保護法の危険な一面を指摘した。これは、パチンコ店の経営者で朝鮮総連の幹部でもあった男性の豪邸に「強奪犯」が入ったものの、次々と警察に逮捕された事件である。主犯とされた人物から逮捕直後に手紙を受け取った寺澤氏は、独自の取材に着手した。
寺澤氏の証言によると逮捕された容疑者らは、ある人物から強奪の芝居をするように依頼されていたという。目的は、北朝鮮への送金がらみの税対策という理由だったらしい。
この「策略」をもちかけて来たのは、マツダと称する人物。ところがマツダは、「犯行現場」にはいたものの、姿をくらませてしまったという。寺澤氏は、証言の中でマツダについて次のように述べている。
「その方は公安警察官か,公安警察官OBか,少なくとも協力者,スパイであることは間違いないと。」
かりにマツダが本当に警察関係者であれば、ジャーナリストとして寺澤氏がマツダの行方や素性を調査する行為が特定秘密保護法に抵触する可能性が出てくる。取材活動に支障が生じるのである。
寺澤氏は、この事件に菅生事件の構図がある可能性を指摘した。菅生事件とは、1952年に日本共産党を弾圧するために公安警察が共産党員に扮して、駐在所を爆破させた自作自演の冤罪事件である。ジャーナリストの故斎藤茂男氏により明らかにされた。
寺澤氏に対する尋問の詳細は次の通りである。尋問調書中の小見出しは、編集段階で便宜上、挿入した。