2018年02月23日 (金曜日)

奈良地方検察庁の皆川剛二検察官は、2月19日、筆者と市民運動家の志岐武彦氏が連名で告発していた高市早苗前総務大臣に対する刑事告発を不起訴にする決定を下した。

筆者らが問題にしたのは、高市氏が受け取った政治資金の還付金である。

議員が代表を務める地元の政党支部などへ有権者が政治献金を行った場合、税務署で所定の手続きをすれば、寄付した金額の30%が戻ってくる。たとえば1000万円を寄付すれば、300万円が戻ってくる。

高市氏は、この制度を利用して、2009年度に「山本早苗」の名前で、総額約1620万を自分の政党支部に寄付し、還付金・約485万円を受け取った。つまり1620万を「投資資金」として運用し、485万円の還付金を受けたのだ。その結果、自分の「持ち金」を1620万から2015万円に増やした計算になる。これがマネーロンダリングと呼ばれるものだ。

しかし、租税特別措置法の41条18・1は、還付金制度の例外事項として、「その寄付をした者に特別の利益が及ぶと認められるものを除く」と定めている。筆者らは、高市氏のケースを、「寄附をした者に特別の利益が及ぶ」場合と判断して刑事告発に踏み切った。奈良地検は、告発状を受理して、調査をしていたが、最終的に不起訴にしたのである。

◇問われる職能、民間企業であれば解雇の対象

この事件を調べた志岐武彦氏が、奈良地検から「理由書」を取り寄せたところ、不起訴の事実しか記されていなかったという。つまり「理由書」は、実質的には白紙ということになる。中学校や高校の作文の授業で、白紙を提出すれば、0点である。これだけ重大な事件を調査した検察官が、白紙同然の作文しか書けないのだから驚きだ。そもそも事件を調査する職能があるのか疑問に感じる。民間企業であれば職に適正がないということで完全に解雇の対象になる。

不起訴にした理由が不明なので、断言はできないが、筆者の推測では、租税特別措置法の41条18・1に明記されている還付金制度適用の例外事項、「その寄附をした者に特別の利益が及ぶと認められるものを除く」という部分ではないかと思う。

実は、この部分の解釈をめぐっては、政治家が自分の政党支部へみずから政治献金を行い、還付金を受けても、違法行為ではないという我田引水の意見があるのだ。が、これはあくまでもひとつの意見に過ぎない。その意見がいつのまにか、法解釈となり、今回も適用された可能性が高い。自分の頭で考える習慣がないから、こんなことになるのだろう。

筆者は、ある事柄が法律に抵触するかどうかの判断は、事実関係を基準として行うべきだと思う。高市氏が、特別な利益を受けた事実があるか否かが判断基準のすべてなのだ。一般の有権者は政治献金をしても、特別な利益は得られない。1000万円寄付すれば、700万円は他人の手に渡り、300万円しか残らないのだ。財産を減らすのだ。

これに対して、政治家が1000万円を自分の政党支部に寄付すれば、1300万円になる。手持ちの金が増える。これが「寄附をした者に特別の利益が及ぶ」ケースなのだ。従って、高市氏のケースは、租税特別措置法の41条18・1の例外事項に該当するのである。

大半の政治家は、高市氏のようなことはやらない。重大な問題があると考えているからである。かりに全国会議員がそれぞれ、毎年、1000万円を自分の政党支部に寄付して還付金を受けることになれば、一議員につき300万円を還付金として税から支出することになる。この額は、フリーターの年収よりも高いだろう。

検察の腐敗は昔から問題になってきたが、これでは正義の番人の役割を果たしていない。それを放置してきたマスコミにも問題がある。

【参考記事】高市早苗総務大臣によるマネーロンダリングの手口を解説する、大臣辞任が妥当

 

2018年02月22日 (木曜日)

市民運動家の志岐武彦氏が新潟地方検察庁へ、森裕子議員(自由党)に対する新たな刑事告発を行った。告発の容疑は、政治資金収支報告書の虚偽記載(政治資金規正法違反)や公務員に対し虚偽の申立てをして証書類に不実の記載をさせた事実(公正証書原本不実記載罪)などである。さらに詐欺である。これらの法律用語を見ると難解な事件のような印象があるが、中味はいたって単純である。

結論を先に言えば志岐氏の主張は、森氏が国会議員を失職していた期間に、不正な方法で政治資金を集めていたというものである。志岐氏の告発状を解説しておこう。説得力のある内容である。

◆YMF経済研究会と新潟県参議院選挙区第1総支部。

森裕子議員が代表を務める政治資金管理団体にYMF経済研究会という組織がある。政治家が所属する組織には、地元の政党支部をはじめ、政治資金管理団体などがあり、運営上の法的な規則が微妙に異なっている。

事件の舞台は、いずれも森氏が代表を務めるYMF経済研究会と、彼女の地元である新潟県参議院選挙区第1総支部である。

政治献金の寄付先として、もっとも一般的なのは地元の政党支部である。しかし、これだけでは十分に政治献金が集まらない場合がある。そこで議員たちは、別に政治献金を集める方法を考案することがある。そこでよく使われる方法が、政治資金管理団体の設立である。森氏の場合は、YMF経済研究会がそれに該当する。

多くの政治家が政治資金団体を設立し、オフィシャルサイトを立ち上げ、全国規模ではでに政治献金を募るのである。森氏も例外ではなかった。

森氏は支援者の協力を得て2011年に、YMF経済研究会を立ち上げた。そして全国規模で政治資金を集めるようになった。YMF経済研究会の設立パーティーには、今回の告発者の志岐武彦氏(東京都在住)も参加している。

YMF経済研究会の政治資金の実態について、志岐氏は告発状で次のように述べている。

「平成26年(2014年)のYMF収支報告書の個人寄付欄を見ると、392名、420件の個人寄付があり、寄付総額は1332万円であった。」

この時期は、森氏が議員を失職していた時期である。

◆2013年の落選が引き金

事件の引き金は、森氏の失職だった。2013年の参院選で森氏は落選したのである。これがすべての引き金だった。

寄付金1332万円を集めた2014年は、前述したように森氏が議員を失職していた時期である。失職している時期であっても、もちろん政治資金を集めることは認められているが、代表者が直近の国政選挙に出馬しなかった場合は、有権者が政治資金団体に寄付しても、還付金は受けられない。森氏は2015年の国政選挙では候補にもならなかった。従ってYMF経済研究会は、2015年に還付金制度の適用除外となったのである。

ちなみに還付金というのは、有権者が政治資金管理団体や政党支部などに政治献金を行った場合、所定の手続を経て、寄付額の30%を払い戻してもらう制度の下で得られるお金のことである。たとえば100万円を寄付すれば、30万円が還付金として戻ってくる。このような還付金制度が導入されている理由は、寄付者の負担を少しでも軽減して、政治参加を促すことである。

政党支部への寄付であれば、還付金の請求が認められるが、政治資金管理団体に対する寄付の場合は、既に述べたように、認められない場合があるのだ。森氏のYMF経済研究会がそれに該当した。

◆森ゆうこオフィシャル・サイトの記述

こうした事情を森氏も知っていたらしく、みずからのオフィシャル・ウエブサイトに次のような告知をだした。

「【寄付金控除を希望される皆様へ】森ゆうこへの寄付は、政治資金規正法上と租税特別措置法上、森ゆうこが長を務める政党支部「新潟県参議院選挙区第1総支部」への寄付として扱われます。

 YMFへお送り頂いた寄付金は、その手続きを代行させて頂きます。
(寄付控除を希望しない方は、今まで通りYMF経済研究会への寄付となります。)

 寄付控除をご希望の方はお申し出下さい。」

オリジナルの記述のページ

森氏は、YMF経済研究会に寄付された政治献金を、地元の新潟県参議院選挙区第1総支部への寄付として扱うことを告知して、寄付を呼びかけていたのである。

ちなみにこの告知は、森氏が国会議員に当選した後に削除された。

このあたりの背景について、志岐氏の告発状は次のように述べている。

「披告発人らは、支部の名前で寄付しても(寄付を募っても、の意味)寄付が集まらないので、『森ゆうこ』の名前を使って、YMFで寄付を集めることとし、寄付者に税還付が受けられないことを知らせず、『披告発人(森氏)への寄付は支部の寄付として扱われる』と虚偽の発信をすることで、寄付金をYMFの口座に振り込んでも税還付ができると誤解させて寄付を募ったものである。」

森氏らは、実際にYMF経済研究会に振り込まれた寄付金のうち、167名分を政党支部への寄付とみなして、新潟県参議院選挙区第1総支部の政治資金収支報告書に記載したのである。これは、虚偽記載に該当する。

◆公正証書原本不実記載罪

次に森氏らは、この167名のために還付金を交付させる手続を選挙管理委員会で行った。選挙管理委員会は、167名による寄付が、実はYMF経済研究会に対して行われた事実を知らなかったと思われる。と、いうのも新潟県参議院選挙区第1総支部の政治資金収支報告書に167名の名前と寄付金額が、虚偽記載されていたからだ。事実を知らないまま、167名分の寄付金控除の書類を交付したのである。このような方法で森氏らが、選挙管理委員会に還付金を受け取るための寄付金控除の書類を交付させたことは、公正証書原本不実記載罪にあたる。

◆還付金の財源は国民の血税

167名の寄付者は、寄付金控除の書類を税務署に提出することにより、総額で150万円の還付金を受けることができる。実際に給付金を受け取ったか否かは不明だが、問題は森氏らが不正な手段で還付金を受け取らせるための手続を行った事実である。このような行為は詐欺に該当するといっても過言ではない。

改めていうまでもなく、この150万円の財源は国民の血税である。

以上が告発状と志岐氏の取材をもとに、筆者が組み立てた事件の概要である。

◆森議員は取材拒否

念のために筆者は、2月21日、2度にわたって森裕子議員の事務所に取材を申し入れた。告発状がまだ届いていないので取材には応じないとのことだったので、筆者の手元にある告発状を事前に送付して、それを基に取材に応じるように申し入れたが、やはり取材は拒否するとのことだった。
従って森議員の主張に関しては、取材が実現すれば、紹介したい。

個人的な見解になるが、森氏がオフィシャル・サイトで行った告知によって、YMF経済研究会への献金を新潟県参議院選挙区第1総支部への献金と見なされるかどうかが、起訴・不起訴の分岐点になるのではないか。常識的には認められないだろう。他の失職した元議員らのケースについても調査する必要があるだろう。

志岐氏の告発状

 

【注釈】

告発後、公正証書原本不実記載罪については、取り下げ、修正した告発状が再提出された。次のPDFが修正後のものである。

志岐氏の告発状(修正したのも)

2018年02月20日 (火曜日)

渡邉恒雄氏が安倍首相と会食を繰り返している実態に象徴されるように、新聞関係者と政界の癒着は、もはやジャーナリズム企業の資質を問われるほど進んでいる。が、癒着の現象は、新聞発行本社サイドだけではなく、新聞販売の世界にも見られる。それが「内部告発」のかたちで外部へもれるようになった。

販売店の業界団体・日販協(厳密には日販協政治連盟)から、高市早苗議員ら自民党議員に政治献金が行われている問題は繰り返し報じてきたが、選挙運動に販売店が組織的に動員させられているとの告発が、メディア黒書にあった。

◇販売店が選挙応援

この販売店は、廃業を機として内情が外部へもれたようだ。情報提供者によると、この店は元々は安本浩二(仮名)氏が経営していたが、安本氏が保守系の地方議員になったのを機に、経営権を譲渡した。ところが新店主は販売店経営の素人だった。そこで安本氏が自らの人脈を使い、有能な人材を販売店へ送り込んだという。その結果、販売店が自民党の応援部隊本部のように変質してしまった。

「選挙になると立候補者のポスターを、販売店の壁に何枚も貼っていました。そして、国政、県政、市政に関わらず、従業員たちは選挙活動に動員されていました。宣伝カーの運転手は、店長の仕事でした。新聞に入るチラシは、○○党のみです。何度もチラシを折り込みます。しかも、無料です。その後、安本氏も店主も亡くなりましたが、○○党の選挙活動を支援していました。東京新聞も扱っていましたが、これでは本来売れるはずの東京新聞もさっぱり売れなかったようです」

販売店が○○党の支部のようになっていたというのだ。
ちなみにこの店では、廃業に際しても、トラブルが発生したという。

◇給料の未払いも

「この新聞店で働いている従業員のうち、ひとりを除いて廃業を知らされていませんでした。仮引継ぎの前日になって、所長に詰め寄った者がいたのですが、彼に対しても「廃業はありえない」と嘘をついていたようです。それでも次の日に廃業が明るみに出たわけですが、社員のショックは大きかったようです。未払の給料を回収できるかどうかも不明な上に、将来に対する不安もあるでしょう。使い捨ての典型です」

従業員の待遇も劣悪だったという。

「給料が払えなくなり、専業たちはバイトを始めました。毎晩パチスロをしていた店長の中田(仮名)は、パチンコ屋の店員になりました。菊池(仮名)は家のローンがあるため複数のバイトをしています。千田(仮名)は、チラシのポスティングです。星野(仮名)はスナックでのバイトです」

新聞販売の現場は、すでに秩序が崩壊しはじめている。
いよいよ「押し紙」型のビジネスモデルの責任を問われる時が近づいている。

2018年02月19日 (月曜日)

このところ携帯電話の基地局設置をめぐるトラブルが増えている。今年に入ってから、筆者のところに2件の相談があった。このうち1件は、早々に解決した。相談件数の増加は、マイクロ波の危険性が否定できなくなった証にほかならない。

マイクロ波に遺伝子毒性がある可能性については、2011年にWHOの外郭団体・国際癌研究機構がそれを認定している。日本の総務省は、マイクロ波の遺伝子毒性を否定しているが、それほど簡単に否定できるものではない。むしろ疫学調査では、両者の因果関係は明らかである。

マイクロ波の安全基準については、各国の政府レベルとそれ以外の行政区との間で大きな開きがある。その理由については後述するとして、まず、実際の規制値を紹介しよう。

日本:1000 μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)

カナダ:1000 μW/c㎡

オーストリア:900μW/c㎡

EU:0.1μW/c㎡[屋外]、0.01μW/c㎡[屋内](提言)

また、2012年に発表された著名な研究者によるバイオ・イニシアティブ報告では、次のような数値を提唱している。

バイオ・イニシアティブ報告:0.003~0.0006μW/c㎡ (1.8GHz)

数値の違いに注目してほしい。「1000」と「0.1」、あるいは「0.003~0.0006」では歴然とした違いがある。この違いは遺伝子毒性を考慮したか否かの違いと言っても過言ではないが、実は政治的な別の理由もあるようだ。

実は、国レベルで規制値を比較してみると日本だけが1000 μW/c㎡という異常に高い数値が設けられているわけではない。米国やヨーロッパでも、1000μW/c㎡、あるいは900μW/c㎡といった高い数値になっている。

これでは実質的には何の規制にもなっていないので、EUなどは独自の基準を設けているのだ。

が、1000 μW/c㎡といったレベルの高い数値には、政治的な別の理由もあるのだ。と、いうのも0.01μW/c㎡でも、通信は十分に出来るからだ。こについて、問題の所在を示唆するある研究結果が先日公表された。

◇マイクロ波の高リスクを否定

2月2日に米国立環境衛生科学研究所が進めていたマイクロ波のリスクを検証するプロジェクト(NTP、米国国家毒性プログラム)が最終報告を出した。この研究は、中間報告の段階では、マイクロ波のリスクを指摘していた。マウスを使った実験などを根拠に、マイクロ波は特に脳腫瘍と心臓の腫瘍を発症させるリスクがあると発表していたのだ。

ところが最終報告では、高いリスクがあるとは言えないと結論づけた。当然、中間報告との違いが問題になるわけだが、米国の『MICRO WAVE NEWS』によると、このプロジェクトの途中で研究員の主要人事が骨抜きにされたという。また、マイクロ波の問題は、かつては電話会社の権益がらみだったが、現在では、米国の空軍や海軍、それにアップル、グーグル、マイクロソフトなどの企業権益と関係があることも指摘している。トランプ政権の下では、ある意味では当然の結果とも言えるのだ。

政府レベルの規制値と、EUや研究機関が提唱する規制値に著しい差がある理由は、前者が将来的な軍事技術の開発や自動運転の開発などを考慮に入れているからだと言えるだろう。

ちなみに規制値が0.01μW/c㎡でも、通信は十分にできる。それにもかかわらず国家レベルでは、1000μW/c㎡などというバカの数値にしているのは、産業の育成という別の意図があるからだろう。国民の生命は第2である。

【参考記事】What Changed at NTP? 

2018年02月16日 (金曜日)

警察、検察、公正取引委員、国会など企業や個人に対して特権をもった組織の方針が不透明きわまりない。森友学園事件で、安倍昭恵が何の取り調べも受けない異常が延々と続いている一方で、籠池泰典氏が自由を拘束され、留守になった自宅を競売にかけられようとしている。

マネーロンダリングで不正な還付金を受け取った森裕子議員(自由党)に対する刑事告発が不起訴になる一方で、鉄道でキセル乗車をして逮捕されたひともいる。こちらは建造物侵入容疑である。不正な金銭という点では、森氏の方がはるかに高額で悪質だ。

【参考記事】森裕子議員の不起訴を受けて、筆者らが新潟検察審査会に申し立て、小島健太検察官は法律をどう解釈したのか?

一体、何を基準として物事が展開しているのかまったく分からない。

公正取引委員会の「押し紙」問題に対する取り組みも不透明だ。わけが分からない。中央紙に対しては、一切タッチしないという方針があるのかも知れない。「ゆさぶり」をかけても、最終的には放置する方針があるのかも知れない。

筆者は公取委に「押し紙」の証拠を提出した販売店主を何人も知っている。古い例では、1981年に北田敬一氏(読売新聞鶴舞直売所)が、自店の「押し紙」に関する資料を提出している。これを機に、国会でも「押し紙」問題が取り上げられたのである。

その後も「押し紙」に関する資料は続々と公取委に届いている。新聞社販売局の社員も内部告発のかたちで、「押し紙」に関する資料を届けたと聞いている。公取委は多量の「押し紙」に関する資料を所有しているはずだ。

それにもかかわらず中央紙の独禁法違反を摘発しない。販売店主の自殺が社会問題になっているにもかかわらず動こうとはしない。国家公務員の義務を果たさない人々とは、彼らのことである。

◇新聞特殊指定の歪曲的な解釈

公取委の言い分は、おそらく新聞社が販売店に新聞を押し売りした確固たる証拠がない、というものだろう。証拠がないから独禁法を適用できないという主張だろう。

しかし、新聞特殊指定で意味する「押し紙」とは、「実配部数+予備紙」を超えた全新聞のことである。販売店側が過剰な新聞を仕入れることを承知していたから「押し紙」ではないという論理は成り立たない。「『残紙=予備紙』であるから、いくら残紙があっても、『押し紙』ではない」という詭弁もあるが、残紙を大量に回収している事実が確認されているわけだから、これらの新聞が予備紙としては使われていないことを意味している。従って残紙は予備紙ではなく、すべて「押し紙」である。それが特殊指定の解釈である。普通の商取引上の解釈とは区別して考えなければならない。

特殊指定を当たり前に解釈すれば、中央紙に対して独禁法を適用できるのである。

◇新聞社を揺さぶるための茶番劇

なぜ、公取委は、「押し紙」を放置するのだろうか。答えは実に簡単で、「押し紙」を取り締まらない事で、新聞の紙面を政府寄りにコントロールすることができるからだ。「押し紙」を排除すれば、新聞社の経営が破綻するか、大幅なリストラを迫られる状況があるので、それを逆手に取って、暗黙のうちに報道をコントロールしているのだ。

公取委の長は、内閣総理大臣から任命されることになっており、実態は公権力の歯車である。「押し紙」を排除して、政府のメディアコントロールのからくりを消し去るような方針はまず取らない。2006年ごろに公取委は、再版制度を撤廃する動きを見せたが、これも新聞社を揺さぶるための茶番劇だった可能性が高い。最初から再版制度を撤廃する意思などなかったのだ。筆者はそのように見ている。

新聞について論じるときに、ジャーナリズムの在り方も含め、「押し紙」問題を抜きにすることはできない。東京新聞の望月記者のような記者が次々と生まれてくる条件は存在していない。かりに新聞がジャーナリズムとして機能するようになれば、新聞社は「押し紙」問題で摘発されるだろう。

なにしろ安倍首相が「押し紙」問題を把握しているわけだから。

 

【参考記事】安倍首相は「押し紙」問題を把握している 新聞ジャーナリズム衰退の背景に構造的な問題

 

2018年02月15日 (木曜日)

日本新聞協会が公表している「新聞の発行部数と世帯数の推移」と題する資料によると、2017年10月の段階で、1世帯あたりの新聞購読部数は、0.75部となっている。2000年の段階では、1.13部であったから、この17年間で大きく落ち込んだことになる。

一方、世帯数は2000年の約4700万世帯から、約5600万へと大幅に増えている。世帯数が増えたことが、1世帯当たりの平均購読部数を減らしたという解釈もできるが、新聞購読者が減っている事実は動かない。

次に示すのは、2000年から2017年までの「新聞の発行部数と世帯数の推移」である。

「新聞の発行部数と世帯数の推移」

読者は、1世帯あたり平均して0.75部の新聞を購読しているとする新聞協会のデータを信用できるだろうか。おそらく実感として、「おかしい」と感じている人が多いのではないか。マンションやアパートの郵便受けには、まばらにしか新聞が投函されていないからだ。

新聞協会のデータの問題点は、新聞の発行部数に「押し紙」(協会は、「積み紙」と言っている)を含んだ部数を採用していることである。データのタイトルに「発行部数」とあるから、新聞の実配部数のデータを基礎にした計算ではないことは、新聞協会も認めているが、「押し紙」が何であるかを知らない人は、「発行部数=実配部数」と受け止める。

◇「押し紙」排除を最優先に

かりに新聞の発行部数の3割が「押し紙」とすれば、新聞の実配部数は2017年の時点で、29,489,732部ということになる。これを1世帯あたりの部数にすると、0.52部。こちらの方が実態により近い。

しかし、この数字にはスポーツ紙が約336万部とコンビニなどで販売される若干の部数が含まれているので、実際に一般紙を購読している世帯は、さらに少ないと推測される。また、1世帯で複数の一般紙を購読しているケースもある。たとえば朝日と日経というように。

ちなみにスポーツ紙は、「サービス品」として無料で配達されているケースがままある。

世帯数の根拠について言えば、新聞協会のデータには、企業や役所は、新聞を多量に購入しているにもかかわらず、世帯数には含まれていない。(世帯数の裏付けは、住民基本台帳)

また、かりに「押し紙」率が30%を超えていれば、1世帯あたりの購読部数はさらに低くなる。

こうした状況を考慮すると、実際に新聞を購読している世帯は、全体の4割程度ではないかと筆者は推測する。

本来、4割の世帯が新聞を購読していれば、新聞販売店の経営は成り立つ可能性もある。絶対に不可能というわけではない。しかし、「押し紙」があるので経営が破綻する販売店が増えている。「押し紙」を排除して、補助金を増やせば、販売網は当面のあいだは維持できる。補助金を増やすことが絶対に不可欠であるが。しかし、一部の新聞社を除いて、社員の待遇を維持することを最優先して、必要な販売政策を取っていないようだ。

 

◆「押し紙」と折込広告の回収場面画の動画

参考までに「押し紙」回収の場面と、水増しされた折込広告を回収している場面を撮影した動画を紹介しておこう。新聞人は1980年代から、「押し紙」問題を繰り返し指摘されてきたが、耳を傾けないわけだから、筆者も報じ続けざるを得ないだろう。

次の3点の動画は、「押し紙」を回収している場面である。回収されている新聞が古紙でないことは、新聞がビニールで梱包されていることで分かる。毎日新聞の場合、「押し紙」率が70%を超える販売店もあった。

【動画1】

 

【動画2】

 

【動画3「今朝の毎日新聞が数時間後には只の新聞紙(古紙)になるまでの様子」

◆折込広告の破棄

「押し紙」とセットになっている折込広告も破棄される。以下の「1」と「2」は、過剰になった折込広告を段ボール箱に入れる場面である。「3」は、折込広告が入った段ボールを、トラックに積み込む場面である。

なお、「3」は、販売店から紙収集場までをカメラが追跡している。素人が撮影した動画だが、こんな場面はNHKに40年勤務しても撮影できないだろう。

【1,大量廃棄されるユニクロの折込広告】

 

【2,大量廃棄される山田養蜂場の折込広告】

 

【3,販売店から折込広告を搬出する場面】

 

◇読売に対する反論

 真村訴訟での「押し紙」政策認定については、読売はその解釈を認めていない。事実、この点に言及した『月刊Hanada』の記事(黒薮執筆)に、読売の滝鼻広報部長が抗議文を送りつけた。そこで、それに対する筆者の反論と、判決を以下に掲載しておこう。滝鼻氏が希望されるようであれば、抗議文の全文を掲載する。

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

真村裁判福岡高裁判決

2018年02月14日 (水曜日)

『文藝春秋』(3月号)が、新聞社を縁の下で支えてきた新聞販売店の惨状を克明にレポートしている。執筆者は、元大手新聞の記者で作家の幸田泉氏。タイトルは「告発ルポ・新聞販売店主はなぜ自殺したか」。華やかなイメージのあるメディア業界の最底辺を丁寧に取材して、その惨状をえぐり出している。

販売店主の自殺といえば、日経新聞の元店主が東京大手町の日経本社ビルのトイレで焼身自殺した事件が記憶に新しい。このルポでは日経新聞の店主だけではなくて、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞の店主の自殺をも取材している。販売店主の自殺はもはや珍しい事件ではなくなっているのだ。

◆諸悪の根元「押し紙」政策

その背景には、「押し紙」問題がある。たとえばルポの中で毎日新聞・南甲子園販売所の「押し紙」の実態が紹介されている。それによると、ある時期、実配部数が480部しかないのに、約1700部もの新聞が搬入されていたという。「押し紙」率が7割を超えている。

ちなみに筆者はメディア黒書で、「押し紙」率が7割を超えていた毎日新聞・販売店の例をこれまで2件紹介している。これに南甲子園販売所の悪しき例に加わる。この店の店主は、販売店経営を立て直すために弁護士を立てて毎日新聞社と交渉していたが、2017年10月に店を強制改廃されたという。

さらにこのルポは、ABC部数の「ウソ」にも言及している。いかにして虚偽の数字が捏造されるのか、そのプロセスを報告している。

改めていうまでもなく、「押し紙」と表裏関係にあるのが、折込広告の水増し問題である。特に対策が求められるのは、地方自治体などが発注する公共の折込物(たとえば広報紙や選挙公報)である。これについても千葉県印旛市の市議を取材して、広報紙を廃棄している実態を報告している。

このルポは、従来、新聞業界のタブーとされた壁を一気に崩している。元新聞記者の手でこうした内部告発が行われた意義は大きい。「押し紙」は1部も存在しないと主張してきた日本新聞協会や新聞社の「押し紙」政策を熱心にサポートしてきた弁護士は、このルポを読んで何を感じるのだろうか?

訴権を口実に、裁判で口封じするようなことがあってはならない。

 

◆「押し紙」と折込広告の回収場面の動画

参考までに「押し紙」回収の場面と、水増しされた折込広告を回収している場面を撮影した動画を紹介しておこう。新聞人は1980年代から、「押し紙」問題を繰り返し指摘されてきたが、耳を傾けないわけだから、筆者も報じ続けざるを得ないだろう。

次の3点の動画は、「押し紙」を回収している場面である。回収されている新聞が古紙でないことは、新聞がビニールで梱包されていることで分かる。毎日新聞の場合、「押し紙」率が70%を超える販売店もあった。

【動画1】

 

【動画2】

 

【動画3「今朝の毎日新聞が数時間後には只の新聞紙(古紙)になるまでの様子」

◆折込広告の破棄

「押し紙」とセットになっている折込広告も破棄される。以下の「1」と「2」は、過剰になった折込広告を段ボール箱に入れる場面である。「3」は、折込広告が入った段ボールを、トラックに積み込む場面である。

なお、「3」は、販売店から紙収集場までをカメラが追跡している。素人が撮影した動画だが、こんな場面はNHKに40年勤務しても撮影できないだろう。

【1,大量廃棄されるユニクロの折込広告】

 

【2,大量廃棄される山田養蜂場の折込広告】

 

【3,販売店から折込広告を搬出する場面】

 

◇読売に対する反論

 真村訴訟での「押し紙」政策認定については、読売はその解釈を認めていない。事実、この点に言及した『月刊Hanada』の記事(黒薮執筆)に、読売の滝鼻広報部長が抗議文を送りつけた。そこで、それに対する筆者の反論と、判決を以下に掲載しておこう。滝鼻氏が希望されるようであれば、抗議文の全文を掲載する。

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

真村裁判福岡高裁判決

2018年02月13日 (火曜日)

評論の役割は、テーマとする対象に多様な角度から光を当て、状況を改善する方向性を示すことである。だから批判すべき点は、はっきりと批判しなければならない。このところ自分に向けられた批判言論を裁判所に泣きついて、押さえ込む出版関係者もいるが、批判すべき点は批判しなければ、評論の意味がない。

『創』が「新聞社の徹底研究」と題する特集を組んでいる。同誌はかなり以前から毎年、新聞社特集を組んでいる。筆者の本棚にも、10年以上前の新聞社特集、2005年4月号があるが、それ以前から新聞社特集は組まれていたように記憶している。しかし、いずれの特集号も日本の新聞ジャーナリズムの諸悪の根源である「押し紙」問題にはほとんど触れていない。さらにABC部数を実配部数と勘違いして、「ABC部数=実配部数」という間違った情報を前提として、新聞社経営の実態が論じられるなど、違和感を感じてきた。

◆プロパガンダのオンパレード

今年の新聞社特集のタイトルは、「変貌する新聞社の徹底研究」というタイトルになっている。読んでみて唖然とした。各新聞社の取り組みを、技術面や編集方針の変化という観点から報告しているだけであって、業界紙のレベルと同じだ。プロパガンダのオンパレードである。ジャーナリズム性は皆無。しかも、書き方が年表か表の記述のように単調で、極めて読みにくい。情報が羅列されているだけで、全体として一体何を主張したいのかさっぱり分からない。

「押し紙」問題についての言及はない。現在の新聞業界の諸悪の根元であり、新聞を考えるときに欠くことができない重大問題であるはずなのに、まったくこの点には言及していない。重大問題という認識がないのかも知れない。

メディアを監視する役割を担ってきた『創』が新聞社をまったく批判できなくなっているのである。特集以外の記事は、大半がそれなりに読みごたえがあるが、新聞社がテーマになると、たちまち「腰砕け」のようになってしまうのだ。

筆者は、この現象が不思議で仕方がない。なにを恐れているのかさっぱり分からない。

新聞社が「押し紙」という汚点を払拭しない限り、公権力はこの汚点を逆手に取って、メディアコントロールの道具にする。現に安倍首相も、かつて国会質問で「押し紙」問題に言及したことがあり、それがどのようなものかを把握している。しかし、「押し紙」問題にメスを入れる方向へは動かない。新聞社の汚点を棚上げにしておくほうが、メディアをコントロールしやすい構図があるからだろう。

◇「押し紙」と折込広告の回収場面の動画

参考までに「押し紙」回収の場面と、水増しされた折込広告を回収している場面を撮影した動画を紹介しておこう。新聞人は1980年代から、「押し紙」問題を繰り返し指摘されてきたが、耳を傾けないわけだから、筆者も報じ続けざるを得ないだろう。

次の3点の動画は、「押し紙」を回収している場面である。回収されている新聞が古紙でないことは、新聞がビニールで梱包されていることで分かる。毎日新聞の場合、「押し紙」率が70%を超える販売店もあった。

【動画1】

 

【動画2】

 

【動画3「今朝の毎日新聞が数時間後には只の新聞紙(古紙)になるまでの様子」

◆折込広告の破棄

「押し紙」とセットになっている折込広告も破棄される。以下の「1」と「2」は、過剰になった折込広告を段ボール箱に入れる場面である。「3」は、折込広告が入った段ボールを、トラックに積み込む場面である。

なお、「3」は、販売店から紙収集場までをカメラが追跡している。素人が撮影した動画だが、こんな場面はNHKに40年勤務しても撮影できないだろう。

【1,大量廃棄されるユニクロの折込広告】

 

【2,大量廃棄される山田養蜂場の折込広告】

 

【3,販売店から折込広告を搬出する場面】

 

◇読売に対する反論

 真村訴訟での「押し紙」政策認定については、読売はその解釈を認めていない。事実、この点に言及した『月刊Hanada』の記事(黒薮執筆)に、読売の滝鼻広報部長が抗議文を送りつけた。そこで、それに対する筆者の反論と、判決を以下に掲載しておこう。滝鼻氏が希望されるようであれば、抗議文の全文を掲載する。

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

真村裁判福岡高裁判決

2018年02月12日 (月曜日)

昨年末から今年にかけて名誉毀損裁判が続発している。橋下徹、松井一郎、、見城徹(幻冬舎)、朝日新聞・・・・。次から次に裁判が起きている。こうした現象を危惧する人々の間では、これらの裁判を広義にスラップ訴訟と呼んでいる。

しかし、厳密にいえば、スラップ訴訟とは、「公共性のある言論活動に対抗するための戦略的な訴訟」のことで、名誉毀損裁判の全てがスラップというわけではない。日本でスラップと呼ばれている裁判の中には、むしろ訴権の濫用の色合が強いものもある。

訴権の濫用やスラップの何が問題なのだろうか。

発言力を持っている「公人」が裁判提訴により、自分よりも立場の弱い個人なり団体を法廷に立たせる異常。

何の発言力も持たない個人や小企業が、報道などで名誉を毀損された場合、裁判を起こして名誉の回復を図ることは当然の権利である。裁判以外にほとんど名誉を回復する機会がないからだ。

ところが日本では、発言力や影響力のある「公人」が弱者を名誉毀損裁判の法廷に立たせるケースが増えている。こうした行為は異常の極みといえよう。

なぜ異常なのか。たとえばボクシングのモハメード・アリがアマチュアのボクサーをリングに上げて対戦し、それを審判が判定する光景を想像してほしい。こんなことは起こりえないが、 もし、起こればアリの評価は地に落ちてしまうだろう。違法行為ではないが、アリ本人はもとより、この試合に荷担した人々の品性や人間性も問われ、大問題になるだろう。著名人や大企業による名誉毀損裁判についても同じである。

言論活動が引き起こした「喧嘩」の仲裁を裁判所に御願いする異常。

出版関係者の誇りとは、言論活動で自分の言論の正当性を主張することである。それを放棄して、裁判所に「喧嘩仲裁」を委ねるのは、自分の職能に限界を感じているからだろう。さもなければ、裁判による言論抑圧が目的ではないか。確かに訴権は憲法で保障されているが、だからと言ってそれを濫用していいことにはならない。

メディア企業が他のメディア企業を裁判の土俵に上げるのは、本気でジャーナリズム活動を展開していないからではないか。商業出版社としての認識しかないのだろう。ジャーナリズムで戦うという考えが欠落している可能性が高い。思想そのものが一般の大企業のような感覚ではないかと想像する。

言論を抑圧する国策との関係

安倍政権の下で、特定秘密保護法や共謀罪など言論を抑圧するための法案が次々と成立し施行された。息苦しい時代が始まっている。こうした動きと連動して、「強者」による名誉毀損裁判の提起が増えている事実は重い。裁判を起こした者に、このあたりの認識があるのかどうかは不明だが、安倍首相との人脈や彼らの思想的な傾向から考えて、認識しているのではないかというのが筆者の推測だ。少なくとも、特定秘密保護法や共謀罪の性質ぐらいは知っているだろう。

維新の会が「反自民」よりも、「反共」であることは周知の事実である。大阪都構想に象徴されるように、自民党以上に新自由主義の政党だ。

また、次のような日経新聞のデータもある。

◎2013年3月22日/首相動静
19時18分 公邸でテレビ朝日の早河洋社長幻冬舎の見城徹社長ら。菅長官が同席。

もっともこのデータでは、何を話したのかは分からないが。

言論を抑圧する空気に対して、市民が声をあげなければ、日本は物が言えない国になってしまう。対抗する方法は、知的な「ゲリラ戦」も含め、いくらでもあるだろう。

2018年02月09日 (金曜日)

【訂正記事】

昨日(8日)付け記事で、訂正・謝罪したように、2日付けで公表した新聞各社の2017年12月度のABC部数は、裏付け資料が間違っていた。次に示す数字が、2017年度12月度のABC部数である。

それによると、読売が前月比で約10万部の減部数になったのが著しい特徴としてあげられる。このうち東京本社管内の減部数は、9万7126部である。つまり読売の場合、減部数の大半が東京本社管内で起きたことを意味している。

対前年比で見た場合、朝日は約30万部、毎日は約16万部、読売は約24万部、日経は約23万部、産経の約4万の減部数となっている。

部数内訳は次の通りである。[ ]対前月数。()対前年同月数

朝日:6,038,803[-26,432](-299,212)
毎日:2,860,202[-39,509](-162,792)
読売:8,660,824[-104,542](-240,964)
日経:2,498,347[41,792](-227,863)
産経:1,520,115[-147](-44,499)

全国の新聞のABC部数・裏付け資料

ちなみに、独禁法の新聞特殊指定によると、「押し紙」とは、「実配部数+予備紙」を超えた部数を意味する。そして梱包されたまま回収されている「押し紙」は、予備紙としては使われていないわけだから、すべて「押し紙」ということになる。

新聞人は、新聞社と販売店が話し合って決めた注文部数を超えた部数が「押し紙」であり、従って「押し紙」は存在しないと主張してきたが、これは新聞特殊指定の解釈の誤りである。特殊指定は、優越的地位の濫用を防止するために、「押し紙」についての特殊な定義を設けているのである。

繰り返しになるが「実配部数+予備紙」を超えた部数はすべて「押し紙」である。そして回収されている新聞は、予備紙としては使われていないのだから、残紙はすべて「押し紙」である。極めて単純な話なのだ。単純な話をわざわざ複雑にしてごまかしているのが、新聞人なのである。

12月度のABC部数は次の通りである。念を押すまでもなく、ABC部数は、公称の部数であって、実配部数ではない。減部数分が「押し紙」だった可能性もある。もちろん実配部数が減った可能性もある。

◇会食組に新聞人も

なお、昨年の年末、12月26日に安倍晋三首相と会食したマスコミ関係者は次の面々だ。新聞人も2名含まれている。

小田尚(読売)、粕谷賢之(日テレ)、島田敏男(NHK)、曽我豪(朝日)、田崎史郎(時事)、石川一郎(BSジャパン)

これでは「押し紙」問題は解決しない。

◇「押し紙」と折込広告の回収場面の動画

参考までに「押し紙」回収の場面と、水増しされた折込広告を回収している場面を撮影した動画を紹介しておこう。新聞人は1980年代から、「押し紙」問題を繰り返し指摘されてきたが、耳を傾けないわけだから、筆者も報じ続けざるを得ないだろう。

次の3点の動画は、「押し紙」を回収している場面である。回収されている新聞が古紙でないことは、新聞がビニールで梱包されていることで分かる。毎日新聞の場合、「押し紙」率が70%を超える販売店もあった。

【動画1】

 

【動画2】

 

【動画3「今朝の毎日新聞が数時間後には只の新聞紙(古紙)になるまでの様子」

◆折込広告の破棄

「押し紙」とセットになっている折込広告も破棄される。以下の「1」と「2」は、過剰になった折込広告を段ボール箱に入れる場面である。「3」は、折込広告が入った段ボールを、トラックに積み込む場面である。

なお、「3」は、販売店から紙収集場までをカメラが追跡している。素人が撮影した動画だが、こんな場面はNHKに40年勤務しても撮影できないだろう。

【1,大量廃棄されるユニクロの折込広告】

 

【2,大量廃棄される山田養蜂場の折込広告】

 

【3,販売店から折込広告を搬出する場面】

 

◇読売に対する反論

 真村訴訟での「押し紙」政策認定については、読売はその解釈を認めていない。事実、この点に言及した『月刊Hanada』の記事(黒薮執筆)に、読売の滝鼻広報部長が抗議文を送りつけた。そこで、それに対する筆者の反論と、判決を以下に掲載しておこう。滝鼻氏が希望されるようであれば、抗議文の全文を掲載する。

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

真村裁判福岡高裁判決

2018年02月08日 (木曜日)

【謝罪と訂正】

2月2日付けの記事に誤りがありました。同日付の記事で紹介したABC部数は、2016年12月時点のものでした。記事を取り消すと同時に、朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、日経新聞社、産経新聞社、ならびに読者の皆様にお詫びを申し上げます。

2017年12月度のABC部数については、明日のメディア黒書で公表します。

ABC部数に関する資料は、毎月、国立国会図書館で入手しております。資料を請求する際に、「2017年」と記入するところを誤って「2016年」と記入したことが、今回のミスの原因でした。

重ねてお詫びを申し上げます。

2018年02月07日 (水曜日)

(本日発売の『紙の爆弾』より転載)

東京都知事の小池百合子氏といえば、先の衆院選で飛び入り参加のように舞台へ駆け上がり、スポットライトと喝采を浴びたあと、せりふを間違えた役者のように、舞台裏へ遁走した。現在、「希望の党」の支持率は1%程度。解党の危機にある。国民はなぜいとも簡単に騙されるのかという問を突き付けたのである。

その小池知事がまだ人気者だった時期に打ち出した奇抜な都民向けサービスがある。白熱灯を2個持参すれば、それをLED1個と無料交換するというものだ。ただし1人に付き1製品。7月10日に都庁で行われた「LED電球交換開始セレモニー」では、自ら舞台にしゃしゃり出て、ゲストのピコ太郎を都民役に仕立て、電球を交換する手順などを実演してみせた。この日から東京都のLED普及キャンペーンが始まったのである。

なお、青色LEDの用途は広く、照明器具のほか、パイロットランプ、パソコンやスマホのバックライトなどに使われている。100円ショップでもLED製品を販売している。青い光を放つにもかかわらず、蛍光塗料で励起(れいき)させてると白くみえる。

2014年に日本人の三人の科学者が青色LEDの開発でノーベル賞を受けていたことや、小池人気が上昇中であった事情もあずかってか、このLEDキャンペーンは、都民からも歓迎されたようだ。しかし、一方では、疑問視する見方も出ていた。「小池は科学には無知ではないか?」との声があったのだ。

私もそう感じたひとりだった。というのも、青色LED開発を理由とする日本研究者らのノーベル賞受賞と同じ2014年、青色LEDによる生体への深刻な影響を示唆する2つの論文が発表されていたからだ。いずれも英国の権威ある科学誌、『Scientific Reports』に掲載された。(続きは『紙の爆弾』で)