2021年11月13日 (土曜日)

10月27日に本ウエブサイトで報じた和歌山県で起きている基地局問題の続報である。既報したように紛争の当事者は、楽天モバイルと鈴木(仮名・女性)さんである。

楽天は、鈴木さん宅の直近に基地局設置を計画している。「電磁波からいのちを守る全国ネット」の介入で、一旦工事は延期になったが、楽天は11月13日に着手すると告知している。

【参考記事】楽天の基地局設置をめぐるトラブル相談が年間で約70件、楽天、「弊社としては総務省の電波防護指針に従って法令遵守で設置しております」

鈴木さんは、楽天に質問状を提出した。以下、鈴木さんの質問、楽天(楽天モバイル株式会社関西営業部)の回答(11月12日付け)、筆者のコメントである。

【質問①】○○の屋上に携帯電話基地局を設置するにあたり作成された契約書には 本当に「基地局設置後に健康被害が発生した場合、直ちに基地局を撤去します」との記載はありますか?

【楽天の回答】契約書に関しましては、個別の契約行為となりますので、その内容の開示につきましては控えさせて頂きます。

【コメント】鈴木さんは、楽天と地権者の間で交わされた契約書に、第3者に健康被害が発生した場合の救済に関する条項が契約書に盛り込まれているかどうかを問い合わせた。鈴木さんによると、地権者は救済についての条項を加えるように楽天に要請している。しかし、楽天はこれについて鈴木さんに回答しなかった。

【質問②】「健康被害」とは、どのような身体症状についてでしょうか?現在のところ明確な診断基準のない「電磁波過敏症」と言われている症状も 含まれますか?また、明確な診断基準のある「化学物質過敏症」の症状が悪化した場合も、健康被害と認識していただけますか?(一般的には、化学物質過敏症を発症している患者は、電磁波による影響の感受性が強い方が多くおられます。勿論、私は 医師による診断を戴くようにするつもりでおります。)

【楽天の回答】「健康被害」とは、ある物事が原因で健康がそこなわれる事と理解しております。どのような身体症状を意味するのかについては、弊社は医学が専門ではありませんので専門の方にお問合せ戴きたく存じます。

 なお、その健康被害がどの原因により引き起こされたかを科学的、医学的に立証する必要があることは、どの症状においても共通した対応であると考えます。上記の立証プロセスを経て、電波法で定める電波防護基準値以内の電波と健康被害との因果関係が証明された場合は、その時点での監督官庁の方針等にもとづき、弊社も対応することになるかと存じます。

【コメント】楽天の見解は、健康被害を認定するためには科学的・医学的な立証が必要だというものである。「電波法で定める電波防護基準値以内の電波と健康被害との因果関係が証明された場合」にのみ、社として対応することになる」と述べている。

ちなみに日本の電波防護指針は実質的には規制にはなっていない。たとえば欧州評議会の勧告値に比べて、1万倍もゆるく設定されている。念のために、数値を表示しておこう。

日本:1000 μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)

欧州評議会:0.1μW/c㎡、(勧告値)

楽天は電磁波密度が1000 μW/c㎡以内であれば、たとえ鈴木さんが体調を崩しても、救済しないと言っているのだ。

【質問③】 〇〇町の近隣地域に設置済みの携帯電話基地局の所在地を教えて下さい。

【楽天の回答】基地局の所在地は、運営管理上の観点からも開示はしておりません。

【コメント】鈴木さんが楽天に対して同社の別の基地局の位置を聞き出そうとした背景には次のような事情がある。地権者が鈴木さんに対して、実際に基地局のそばに立って電磁波を浴び、本当に電磁波による人体影響があるかどうかを自分の人体で確認するように勧められたからである。

【質問④】(黒薮注:楽天が安全の根拠としているWHOファクトシート296は)科学的・医学的根拠は 現時点では解明されていないと言っているだけで、基地局周辺で健康被害が出ていることは認めています。

【楽天の回答】先般お渡ししましたWHOファクトシート296において、そのような記載はされていないと存じます。『電磁過敏症(EHS)の症状を電磁界ばく露(あびること)と結びつける科学的根拠はありません』と明記されております。 基地局周辺で健康被害が出ていることを認めているなどの記載もありません。電磁過敏症については、むしろ、電磁界以外のいくつかの要因を示唆する記述となっております。

【コメント】筆者は楽天に対して、WHOファクトシート296の原文(英文)を提示するように求めたが、同社は提示しなかった。15年以上前の資料なので、インターネットで検索しても見当たらなかった。そこで手元にある日本語訳をもとにして、楽天の見解の問題点を指摘する。

次に示すものが、WHOファクトシート296の「結論」の全文である。

「 EHS(黒薮注:電磁波過敏症)は、人によって異なる多様な非特異的症状が特徴です。それぞれの症状は確かに現実のものですが、それらの重症度はまちまちです。EHS は、その原因が何であれ、影響を受けている人にとっては日常生活に支障をきたす問題となり得ます。EHS には明確な診断基準がなく、EHSの症状を電磁界ばく露と結び付ける科学的根拠はありません。その上、EHS は医学的診断でもなければ、単一の医学的問題を表しているかどうかも不明です」

この結論を普通に解釈すれば、科学的・医学的な因果関係は解明されていないが、「EHS は、その原因が何であれ、影響を受けている人にとっては日常生活に支障をきたす問題となり得ます」と健康被害そのものは認めている。ところが楽天は、我田引水に「科学的根拠はありません」という部分だけを引用している。「科学的根拠」がないの意味は、現時点では発病のメカニズムが解明されていないということであって、客観的に症状が存在しないということではない。

【質問⑤】2011年には、WHOの外郭団体である 国際がん研究機構(IARC)が、マイクロ波に発がんの可能性があることを指摘しています。

【楽天の回答】2011年5月にIARC(国際がん研究機関)が電波(無線周波数電磁界)に対する発がん性評価をおこない、携帯電話の使用について限定的な証拠があったとして、「発がん性があるかもしれない」(グループ2B)に分類したことは存じております。
   
この件について、電磁波に関するセミナーでの説明の概要は以下のとおりです。

 この分類は、携帯電話端末を頭部の近くで使用した場合の発がん性(神経膠腫。「しんけいこうしゅ」と呼び、脳腫瘍の一種)に限定的な証拠があるとして分類されたものです。この件について、WHOファクトシート193「電磁界と公衆衛生携帯電話」2ページ2014年10月)において、「研究者らは、バイアス(かたより)と誤差があるために、これらの結論の強固さは限定的であり、因果的な解釈はできないと結論しています」との記載があり、WHOは、この評価に対しては継続的な検証をおこなうとしております。

 このグループ2Bの分類は、13か国の研究グループで行われ、ひとつのグループからの報告を採用したとのことです。一方、携帯電話の普及と神経膠腫(脳腫瘍)の増加に関するアメリカ、イギリス、スウェーデン3か国の統計資料(携帯電話利用者数の増加と神経膠腫増加に相関関係があるかを示したグラフ)では、携帯電話の利用増加が神経膠腫の増加につながっているという結果になっておりません。
 この相関関係の調査結果からも、携帯電話利用者の増加と神経膠腫の増加に因果関係はなさそうであるとの見解が示されております。

なお、このグループ2Bの分類は頭部に近いところで使用される携帯電話からの電波についての研究による分類であり、携帯電話基地局からの電波については、「非常に低いばく露レベル、および今日までに集められた研究結果を考慮した結果、基地局および無線ネットワークからの弱いRF信号(電波)が健康への有害な影響を起こすという説得力のある科学的根拠はありません」(WHOファクトシート304「電磁界と公衆衛生 基地局及び無線技術」3ページ 2006年5月)と、健康への悪影響はないとの報告がなされており、現在もこの報告書の内容に変更はないとのことです。

【コメント】楽天の見解は、科学の基本である弁証法の論理を欠いている。複合汚染という視点がまったくない。 生活環境は、常に変化している。一刻も静止の状態にはならない。

マイクロ波が同じ基地局から同じ方向へ放射されても、外的な条件によって電磁波密度はめまぐるしく変化するうえに、5Gの導入が進むにつれて、周波数そのものも変更される。被曝する人間の体質もまた、化学物質による複合汚染などで常に変化する。静止の状態にはならない。

米国のケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)が登録する新しい化学物質は、1日で1万件を超えると言われている。無論、そのすべてが有害というわけではないが、当然、日常的に複合汚染を起こしている可能性が極めて高い。しかも、その汚染に電磁波の被曝が加わる。複合汚染の形は一層複雑になる。

従ってこうした環境下における人体影響も、静止の状態にはならない。常に変化する。

5Gの導入でどのような形の複合汚染が起きるかまだほとんど解明されていない。

2011年のIARCのデータを以て、基地局から放射されるマイクロ波が安全などとは言えないのである。ましてIARCは、マイクロ波の発がん性そのものは認める方向性だ。2022年から24年にかけて、評価の見直しを検討している。

従って電磁波による人体影響の評価は、科学的・医学的根拠よりも、疫学調査の結果を優先させる必要があるのだ。被害の事実の方が重い。

その疫学調査では、今世紀に入ってから、基地局周辺で癌による死亡率が高いという結果(イスラエル・ドイツ・ブラジルなど)が出ている。

と、なれば「予防原則」を優先して、基地局設置に反対している住民がいる場合は、基地局は設置すべきではない。政治の力で厳しく規制する必要がある。

2021年11月12日 (金曜日)

「報告事件」の存在を示す文書を最高裁事務総局が保管していることが判明した。

「報告事件」というのは、最高裁が下級裁判所(高裁、地裁、家裁など)に対して、審理の情況を報告させる事件のことである。それにより、国策の方向性と異なる判決が下される可能性が浮上すると、最高裁事務総局が人事権を発動して、裁判官を交代させ、国策と整合した判決を導き出す事件とされている。

しかし、その制度の詳しい実態は分かっていなかった。「報告事件」は、単なる噂なのか、それとも客観的に実在する制度なのかは、闇の中だった。

◆◆
2021年3月22日、わたしは最高裁事務総局に対して、次の内容の情報公開請求を行った。

 最高裁が下級裁判所に対して、審理の報告を求めた裁判の番号、原告、被告を示す文書。期間は、2018年4月から2021年2月。

それから7カ月、最高裁は事件番号や報告内容などを未公開にした上で、情報開示に応じた。11月8日、わたしは最高裁判所の閲覧室で、A4判用紙で15センチほどに積み上げられた書面を閲覧した。次に示すのが、開示された書面である。典型例を紹介しよう。肝心な部分である報告の内容は黒塗りにされている。

公開すると不都合な情報が含まれている可能性が高い。

 

◆◆
報告事件に指定されていたのは、国が被告、あるいは原告になっている裁判である。それ以外の事件は、開示された資料には含まれていなかった。

ただ、最高裁事務総局に対する情報公開請求制度は、公開方法に関して、不服があった場合も異議を申し立てることができない規則になっており、本当に全部を開示したのかどうかは分からない。民間企業が被告や原告になっている裁判で、「報告事件」に指定された事件がまったく存在しないという確証はない。調査の範囲を20年ぐらいに広げれば判明する可能性もある。

いずれにしても「報告事件」が制度として存在していることは、今回の調査で判明した。

◆◆

開示対象になった文書は次の通りである。

■開示対象文書の一覧

◆◆
参考までに、わたしが報告事件ではないかと疑っている裁判を1件紹介しておこう。

【参考記事】産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日

 

 

2021年11月11日 (木曜日)

総務省に対して、次の2件の情報公開請求を行った。

1、2019年度と2020年度に、楽天グループから貴省に対して発行された請求書

2、 2019年度と2020年度に、電話会社に提供した『電磁波と安全な暮らし』の冊数と制作費を示す資料

「1」と「2」を請求した理由を説明しておこう。

周知のように、わたしは電話会社による通信基地局の設置をめぐるトラブルを取材・報道している。その中で総務省が定めている電波防護指針(1000マイクロワット・パー・センチメートル)は極めて危険な数値で、実質的に規制にはなっていない旨を報じてきた。これに対して、電話会社は、「自分たちは総務省が定めた電波防護指針を遵守して基地局を稼働するので、絶対に安全だ」と反論する。

地方自治体も、まったく同じ見解である。たとえば基地局問題(公有地へのKDDI基地局の設置)についての埼玉県朝霞市の見解は次のようなものである。同市の「みどり公園課」大塚繁忠課長からの回答である。

電波については国が法令や指針等により規制を行っていることから、電波行政を所管する国や事業者へ確認していただくようお願いいたします。
 また、携帯電話基地局については、国が法令等において健康への予防的観点からの規制を行っており、本市としてはこれらの規制を遵守して基地局の設置が行われている限り、安全性は確保されているものと考えております。

今回の2件の情報公開請求は、電話会社と総務省、あるいは地方自治体の「取引関係」を調査するための発火点にほかならない。両者はどのような関係にあるのかを調査する。

◆◆

ちなみに楽天グループが総務省に発行した請求書を確認すれば、楽天と総務省は取り引き関係があるのか、もしあるとすれば、その中身はどうなっているのかが判明する。

また、『電磁波と安全な暮らし』は総務省が発行しているリーフレットで、一部の電話会社がかつて住民との間で、通信基地局に関するトラブルが発生した際に、住民に配布していた資料である。電話会社は、このリーフレットを使って、マイクロ波の安全性を説明する。わたしの視点からすれば、嘘の説明に等しい。

次に示すのが、電波防護指針(マイクロ波)の国際比較だ。日本の総務省が定めている基準値と比較してみよう。歴然とした差がある。

日本:1000μW/cm2

イタリア:10μW/cm2

スイス:9.5μW/cm2

欧州評議会:0.1μW/cm2(勧告値)

ちなみに通信基地局の問題は、背景に広告・CM利権がからんでいるので、新聞・テレビはほどんと報じない。

 

 

2021年11月09日 (火曜日)

沖縄県読谷村の通信基地局設置をめぐる楽天モバイルと住民の紛争で、楽天は、8日、住民の反対を押し切って、基地局設置工事を強行した。現地の住民から連絡があった。裏付けの写真も送付されてきた。

この事件の発端は、今年4月である。楽天は、沖縄県中頭郡読谷村字高志保にある賃貸マンションに基地局を設置する計画を立ち上げた。しかし、住民らがこれに反対。マンションの住民、近隣住民、村議会議員ら11名が楽天に説明を求めて話し合った結果、工事は一旦中止になった。

しかし、10月下旬に楽天は、工事の再開を通知して、11月8日に工事を再開した。

現地の垣内成子さんは、「引き続き反対運動を続ける」と話している。

【基地局問題の解説】

放射線と電磁波(両者は同じ仲間で、欧米では区別していない)には、上図が示しているようにエネルギー、あるいは周波数の違いに基づいて、さまざまな種類がある。周波数が高いものとしては、原発のガンマ線やレントゲンのエックス線がある。低いものでは、家電や送電線からもれる電磁波がある。

従来、電磁波はエネルギーが高いものについては、遺伝子を傷つけるなどの人体影響があるが、低いものについては、安全と考えられていた。ところがその後、電磁波の研究が進むにつれて、電磁波はエネルギーの大小とはかかわりなく、遺伝子毒性があるとする説が有力になった。

それに連動して欧州では、無線通信で使われるマイクロ波の規制値を厳しくする動きが顕著になった。これに対して、日本の総務省は、規制値の更新を30年以上も怠っている。

その結果、総務省の規制値と欧州の規制値の違いが歴然としてきたのである。次の数値を比較してほしい。日本の規制値は、欧州評議会の勧告値に比べて1万倍もゆるい。実質的には規制になっていない。

欧州評議会:0・1μW/m2

日本:1000μW/m2

通信基地局の設置をめぐるトラブルが発生すると電話会社は、「総務省の基準を守って操業しますから絶対に安全です」と説明する。しかし、総務省の規制値そのものが異常なのである。

総務省の公害対策は、被害が甚大になるまで動かなかった水俣病と同じパターンである。

2021年11月06日 (土曜日)

楽天モバイルが矢継ぎ早に通信基地局の設置を進めている。10月27日付けの本ウエブサイトの記事で、「電磁波からいのちを守る全国ネット」が楽天に対して工事を延期するように申し入れた(和歌山件の例)こをと伝えた。楽天はそれに従ったが、その後、新しい動きにでた。

【参考記事】楽天の基地局設置をめぐるトラブル相談が年間で約70件、楽天、「弊社としては総務省の電波防護指針に従って法令遵守で設置しております」

11月5日、楽天サイドの担当員が、基地局設置に抵抗している鈴木さん(仮名)の自宅を訪問した。鈴木さんは、この案件は「全国ネット」に一任していることを理由に、面談に応じなかった。そすると担当員は、「工事のお知らせ」と題するチラシを投函して帰っていった。また、鈴木さんへの私信も添えていた。

「工事のお知らせ」は、文字どおり工事日程を通告したものだった。それによると11月13日から11月20日の予定である。楽天は、いよいよ自社のビジネスを進めるために、鈴木さんの近隣にもマイクロ波を24時間、365日、放射する基地局を所有するのである。

電波防護指針は、5Gの場合、1000マイクロワット・パー・センチメートルである。(欧州評議会の勧告値は、その1万分の1にあたる0.1)楽天のスマホを使っていない鈴木さんには、迷惑な話である。

楽天は、鈴木さんへの私信で、工事を再開することになった事情を次のように説明している。

 鈴木様のご要望にお応えできないことは申し訳なく存じますが、先般もお伝えいたしました通り、電磁波過敏症につきましては、既にWHO(世界保健機関)がファクトシート296において、『電磁波過敏症には明確な診断基準がなく、多くの研究、実験に基づいた結果として、電磁波過敏症と電磁界のばく露(あびること)との結びつきに関する科学的根拠は存在しない』と明言しております。
社といたしましては、過去、現在の様々な公衆衛生上の事案に対するWHOの研究、実績等に基づく勧告およびガイドライン等の信用性からも、現時点でWHOの見解が一番信用できる内容であるとの認識でございます。

 電磁波は周波数帯の違いはありますが、携帯基地局やご利用の携帯電話からの電波のみならず、電気が通るところ、電気を利用する機器から発生することが知られており、既に鈴木様のご自宅内のみならず、各種公共施設や商業施設、ご利用になられている自動車、公共交通機関など、いたるところで発生しており、弊社基地局からの電波だけが特別なものではないとの認識でございます。(略)

楽天は、あくまでも自社のビジネスを優先するというのである。また、鈴木さんが問題にしているのは、5Gの通信に使われるマイクロ波やミリ波なのである。さらに電磁波の周波数とはかかわりなく、電磁波に遺伝子毒性のリスクがあることを多くの研究者が指摘している。

◆◆
先の衆院選の機会に、「全国ネット」の会員の方が、各政党に電磁波問題に対する見解を求めたところ、共産党から次のような回答があった。楽天の見解との著しい対照が浮かび上がる。

〇〇様

電磁波についてお尋ねがありました。

問1、電磁波過敏症という障害というか病気を認めますか?

問2、周辺住民の健康を守るため携帯基地局の設置について規制が必要ですか?

 お尋ねの問1に関しては、今回の総選挙に当たって、発表している各分野政策のなかで、電磁波と健康についてふれた部分があります。次の通りです。

 電磁波による健康への影響について、WHO(世界保健機関)は、2007年6月、新たな環境保健基準を公表しました。各国での医学的調査を基に、平均3〜4ミリガウス(ガウスは磁界の強さの単位)以上の磁界に日常的にさらされる子どもは、もっと弱い磁界で暮らす子どもに比べ、小児白血病にかかる確率が2倍程度に高まる可能性を認めています。

予防的考え方に基づいて磁界の強さについての安全指針作り、予防のための磁界測定などの対策をとるよう各国に勧告しました。日本でも、この勧告にもとづいて、電磁波に関する環境基準を早急に設定すべきです。

そのさい、日弁連が提言したように、電力・電波を利用する側の企業を所管する総務省や経済産業省から独立した組織として「電磁波安全委員会」を設置し、中立・公平な立場から電磁波にたいする安全規制を行い、予防原則にたった暫定規制、住民協議や電磁波放出組織に関する情報公開を制度化し、取り扱うという方式は、原発事故の痛苦の教訓からも妥当です。

携帯電話用の無線基地の建設など電磁波の発生源が急増しているなかで、国民の不安にこたえるためにも、電磁波の健康への影響にかんする研究・調査を積極的にすすめるよう求めます。

(総選挙各分野政策「37.環境」の中ほどのところにあります。URLは、 https //www.jcp.or.jp/web_policy/2021/10/2021s-bunya-037.html です)

 問2については、政策にある通り、環境基準を設定し、規制することが求められています。
 もちろん電磁波の健康への影響にかんする研究・調査をすすめるこも不可欠です。
 今の状況では、基地局設置に当たって、周辺住民が不安を持つことは当然起こりえます。
 設置に先立って、住民の不安を解消し合意をえることが必要であり、それは事業者の責任です。

 回答は以上です。

 

【参考記事】楽天の基地局設置をめぐる係争、懸念されるマイクロ波の遺伝子毒性、地主が反対住民に、「損害賠償請求の検討に入った」

2021年11月05日 (金曜日)

沖縄県読谷村で起きている楽天モバイルの基地局設置をめぐる紛争は、週明けから新しい局面に入る。楽天モバイル側は、11月8日(月)に工事を再開するスケジュールを組んでいる。これに対して、垣内成子さんら女性を中心とした反対住民らは、体を張ってでも工事を阻止する構えを見せている。

既報したように、この事件の発端は、垣内さんらが住む賃貸マンションに楽天モバイルが基地局設置を計画したことである。マンションのオーナーは設置を希望している。これに対して、同マンションに住む4世帯(全8世帯)が反対している。さらにマンションの近隣住民からも、不安の声があがっているという。

電話会社と住民らの対峙で、反対派の強制排除が行われた例としては、1998年に熊本市で起きた九州セルラー(現KDDI)のケースがある。同社が基地局を設置しよとしたところ、住民らが座り込みで対抗。座り込みは4カ月続いたが、最後は九州セルラーが雇ったガードマンが、住民らを力で排除した。(写真)

読谷村の住民らは平和的な解決を望んでおり、基地局の設置場所となるマンションの住民4人は、工事中止を求めて楽天の三木谷浩史CEO、山田善久社長、それにマンションのオーナーらに対し、次の要請文書を送付した。

 2021年10月25日付けで、楽天モバイル株式会社 指定工事会社:サンワコムシスエンジニアリング株式会社名で、沖縄県中頭郡読谷村字●●外壁に貼り出された「携帯電話基地局工事のお知らせ」は、「過半数の入居者様のご同意をいただき、下記日時にて工事を再開致しますので、お知らせ致します。」と記載されていますが、別紙のように8戸中4戸、つまり半数が建設中止を求めていますので、「過半数の同意」を前提とされている「工事」はできないことになります。

 従って、沖縄県中頭郡読谷村字●●の屋上への携帯電話基地局建設は中止されるべきです。
 また、読谷村総務課より「●●ご所有者様から『工事のお知らせ』が提出されました。』とお電話をいただきました。根拠のない数値で提出されたことになります」

沖縄県中頭郡読谷村字
201号 垣内成子
他3名
(以下、略。全文は下記PDF)

●楽天モバイルに対する申し入れ

●楽天モバイルに対する申し入れ(別紙)

◆◆

米軍基地の問題を詳しく報じてきた沖縄タイムス、琉球新報、NHKがこの問題を報道するかどうかも注目される。基地局問題は、メディア企業の広告利権が絡んでいる。また国策としての無線通信網整備方針もある。そのために権力構造の一部に組み込まれているマスコミは、なかなか報道しない傾向がある。

2021年11月04日 (木曜日)

Twitterが人間性を豹変させる珍現象が近年、水面下の社会問題になっている。分別や常識を十分にわきまえているはずの著名な弁護士や政治家が、ネット上の批判に対して逆切れして、SNS上で暴言を吐いた例は数知れない。わたしも、暴力路線を走る反差別運動の弁護士から、品性のない言葉を浴びせられたことがある。

「今夜もレイシストをやつけて酒がうまい」とか。

わたしはそのこと自体は、それほど問題視しない。匿名ではなく、実名を明かした上で、相手を批判しているからだ。言論は自由闊達であるべきだし、自分にも反論する手段があるからだ。

ところが問題は、自分の名前を隠して相手を一方的に誹謗中傷するケースだ。しかも、攻撃のターゲットとなる人のSNSをブロックしているとなると一層たちが悪い。(上写真)

最近、判明した典型的な例を紹介しよう。横浜副流煙裁判の被告の連れ合いである藤井敦子さんに対する「Rodents@derolonghi3」という匿名人物からの次のツィートである。

◆◆

藤井家の防音室の構造は知らないが、空気循環がなければ喫煙で一酸化炭素中毒になる前に窒息死。
妻の敦子氏がかなりのスモーカーズフェイスなんだが、副流煙によるものなのか?
団地の人々が藤井家からタバコの煙がでているのを目撃し噂になるくらいで、1〜2本しか吸っていないというのが疑わしい。(午前3:41 · 2021年10月25日)

顔面だけでなく部屋も物語っているな。壁のタイルもヤニで黄ばんでいる。
換気扇回してタバコ吸ってるんだろう。排気された煙は隣近所の家にまき散らされる。
白い煙が出ているという目撃証言と一致する。 (午前8:37 · 2021年10月31日)·

次の3点が藤井敦子さんがヘビースモーカで近隣に迷惑をかけているという事実を摘示している。

敦子さんを「スモーカーズフェイス」であると述べた上で、 「スモーカーズフェイス」のイラストを使いながら、それがどのようなものであるかを説明している。

また、「顔面だけでなく部屋も物語っているな。壁のタイルもヤニで黄ばんでいる」と書いている。

さらに「排気された煙は隣近所の家にまき散らされる。白い煙が出ているという目撃証言と一致する 」とまで述べている。

いずれも事実ではない。

◆◆

わたしは匿名の主が、「内弁慶」ではないかと想像する。公の場では、自分の意見を表明できない。そこでこのような陰険なかたちで攻撃を開始したのだろう。

しかし、かりに藤井さんがSNSのプロバイダーに対して、「Rodents@derolonghi3」の身元を公開するように求めて裁判を起こせば、過去の判例からすれば、藤井さんが勝訴する。身元は簡単に判明する。その後、名誉毀損裁判を起こさないまでも、少なくとも「Rodents@derolonghi3」の実名は公表できる。

わたしも含めて、藤井さんの裁判を支援したグループは、喫煙を奨励しているわけではない。分煙は常識という見解で一致している。問題にしているのは、横浜副流煙裁判の原告が根拠のない事実、あるいはフェイクサイエンスを根拠にして、藤井さん夫妻に対する金銭請求(4518万円)を起こした事実である。

藤井さんはツイッターではなく、NOTEで「Rodents@derolonghi3」さんに対する反論を展開している。次の記事である。

(1)Rodents@derolonghi3に告ぐ~デマ発言の削除要求

(2)またも会(旧メタボレっち)への糾弾

(3)横浜副流煙裁判をなかったことにしたい人びと

なお、メディア黒書は、これまでSNSの社会病理に関する記事を多数掲載してきた。次のリンクを参考にしてほしい。

■SNSの社会病理に関する全記事

 

 

2021年11月03日 (水曜日)

10月31日に投票が行われた第49回衆院選は、自公政権が過半数を大きく上回る結果となった。一方、「野党連合」は失敗に終わった。自民党総裁選をめぐるテレビによる洪水のような自民党PRを考えると、このような結果を予測したひともかなりいるのではないか。権力構造の歯車としてのマスコミが現政権の維持に一定の役割を果たしていたのだ。

選挙の後には、かならず何件かの選挙違反が摘発されるのが通例だ。そこで意外に知られていないが、今後、考えなければならない「不正選挙」の手口を紹介しよう。今回の衆院選とは関係がないが、不正工作を考える格好の題材となる。

◆選挙人名簿と住民基本台帳が特定候補者の手に

真鶴は、神奈川県の太平洋岸の町である。人口、7000人。志賀直哉が短編小説『真鶴』で、陸と海の光景を、「沖へ沖へ低く延びている三浦半島が遠く薄暮の中に光った水平線から宙に浮かんでみられた」と描写している。

この真鶴町で、先月、議会制民主主義の信用を失墜させる「不正選挙」の手口が明らかになった。日本では選挙が公正に行われていると信じて疑わない人々を面食らわせる事件が発覚したのである。事件を告発した元真鶴町議の森敦彦氏が言う。

「選挙管理委員会の実態を公にするために告発に踏み切りました」

森氏によると、少なくとも2度にわたり選挙人名簿や住民基本台帳が町役場から外部へ流失した。それが選挙の道具として使われていた。

森氏が説明した不正選挙の手口は、真鶴町だけに限ったことなのか。それとも水面下で広域に広がっているのか。どのような経緯で書類が流出して、どう使われたのか。わたしは事件の深層に迫った。続きはデジタル鹿砦社通信】

2021年11月02日 (火曜日)

携帯電話の通信基地局の設置をめぐるトラブルが後を断たない。10月30日に沖縄県中頭郡読谷村字高志保の垣内成子さんから、「電磁波からいのちを守る全国ネット」に相談があった。

トラブルの対象になっているのは、垣内さんが住んでいる賃貸マンションに設置を計画している基地局である。電話会社は楽天モバイル。

楽天が住民に対して、11月8日から30日の予定で基地局を設置する旨の告知をおこなったのを受けて、垣内さんから「全国ネット」に相談があった。

◆三木谷CEOや総務大臣に内容証明で抗議

この事件の発端は、今年4月である。楽天は、垣内さんが住む賃貸マンションに基地局を設置する方向で動きはじめた。しかし、住民らがこれに反対。マンションの住民、近隣住民、村議会議員ら11名が楽天に説明を求めて話し合った結果、工事は一旦中止になった。

その後、垣内さんらは7月に、楽天の三木谷浩史CEOと山田喜久社長宛に「基地局建設中止を求める要求書」を送付した。また、総務大臣にも「高志保地区に建設予定の携帯電話基地局に関する要望書」を送付した。

さらに9月には、読谷村議会に対して「携帯電話基地局設置に関する条例の制定を求める陳情」を提出した。その際、238筆の署名を添えた。

こうして一時は、楽天の計画を阻止した。

しかし楽天は、10月の末になって再び設置工事を進める方向で動き始めた。そして11月8日に工事を開始する旨を告知したのである。

◆ミリ派による人体影響、高リスク

通信基地局の仕様は、わたしが現地の住民運動から得た資料によると次の通りである。

周波数:1.7GHz(アンテナは3本、4G仕様)
               ※ただし設計上は3.7GHz・28GHz

電波放射距離:半径600m~1Km

読者に注目してほしいのは、「28GHz」の部分である。これは極めて高い周波数(ミリ波に近い)の使用を意味している。周波数が高ければ高いほど危険度が増すという法則はないが、そのような傾向があることは否定できない。また、ミリ派による人体影響に関する研究の結論はまだ確定していない。ほとんど進んでいないのが実態だ。ミリ派の使用を想定した基地局を設置することは、「見切り発車」のリスクを秘めている。

◆「近隣住民には説明する必要がない」

11月1日、わたしは楽天の現地担当者である鈴木開登氏に電話で事情を問い合わせた。その結果、楽天の言い分は次の通りである。

①総務省の電波防護指針を守っていれば安全だ。

②健康被害がでた場合は、楽天として対応を検討する。

③賃貸マンションに基地局を設置する場合は、近隣住民には説明する必要がない。

④11月8日から予定どおりに工事をはじめる。工事の告知は、1週間前に行った。

このうち③は、問題発言である。賃貸マンションの場合は、オーナーの考えを優先して基地局を設置してもいいと言っているのである。近隣住民のことは考慮していない。

わたしは、楽天本社も鈴木開登氏と同じ見解なのかを問い合わせるために広報部宛にメールを送付した。「事実関係に間違いがある場合は、至急にご連絡ください。明日中(2日)に連絡をいただけない場合は、鈴木様の話を事実と解釈します」と伝えた。

【参考記事】楽天の基地局設置をめぐる係争、懸念されるマイクロ波の遺伝子毒性、地主が反対住民に、「損害賠償請求の検討に入った」

【参考記事】危険極まりない総務省の電波防護指針、背景に電波利権企業との親密な関係

新聞崩壊が急速に進んでいる。1995年から2021年8月までの中央紙の発行部数(新聞販売店へ搬入された部数)の変化を調べたところ、この約26年のあいだに1000万部ほど新聞の部数が減ったことが分かった。これは発行部数が約40万部の東京新聞社が25社消えたに等しい。中央紙は、坂を転げ落ちるよう衰退している。

特に2015年ごろから、発行部数は激減している。かつて「読売1000万部」、「朝日800万部」などと言われていたが、今年8月の時点で、朝日新聞は約460万部、読売新聞は約700万部に落ち込んでいる。毎日新聞と日経新聞は、200万部を切り、産経新聞はまもなく100万部のラインを割り込む可能性が濃厚になっている。次に示すのは、中央紙の5年ごとの部数(日本ABC協会が発表する新聞の公称部数)と、2021年8月の部数である。

※5年ごとのデータは、各年度の1月~6月の販売店へ搬入された部数の平均。2021年8月のデータは、平均ではなくこの月のABC部数。

この1年間に限っていえば、朝日新聞と読売新聞も約5万部を減らしている。毎日新聞は約10万部を、日経新聞は約21万部を、産経新聞は約15万部をそれぞれ減らした。この速度で新聞離れが進めば、新聞社経営は、さらに多角化を進めない限り破綻する。

少しでも経営を好転させるために、新聞人らは文部科学省と連携して、NIE(学校の学習教材に新聞を使う運動)を進めている。2020年度から実施されている小・中・高等学校の学習指導要領には、新聞の使用が明記されている。

しかし、新聞記事そのものがインターネットで配信されており、あえて「紙」にする理由に説得性はない。新聞社と文部科学省との癒着関係が、教育内容を歪めたり、新聞を世論誘導の道具に変質させかねないという批判も出ている。【続きはデジタル鹿砦社通信】

2021年10月28日 (木曜日)

新聞販売に関する資料「沢田資料」をわたしが管理することになった。

中身は、1980年代から2000年ごろにかけた時期に、沢田治氏が収集した新聞販売に関する資料である。沢田治氏は、「押し紙」問題をはじめて告発した人で、特に1980年代前半に新聞販売問題についての国会質問を舞台裏で準備したことで知られている。

国会質問は、総計15回に渡って行われた。共産党、公明党、社会党が超党派で新聞販売の問題を追及した。その段取りをしたのが沢田氏だった。

沢田氏は、新聞販売問題から「引退」した2005年ごろに、河北仙販労働組合に「沢田資料」の保管を依頼した。同労組が沢田氏と歩調を共にしていたからである。

◆◆

10月27日に、特大の段ボール箱が2つ、河北仙販(河北新報の販売会社)の労働組合から送られてきた。

ひと月ほど前に、わたしは沢田氏から手紙を受け取った。河北仙販の労働組合が本社ビルの売却により移転することになり、「沢田資料」の今後の扱いについて相談してきたという。そこで沢田氏が、わたしに「沢田資料」を引き継ぐ意思があるかどうかを確認してきたのである。もちろん引き受けた。

◆◆

「沢田資料」の中には、新聞問題を特集した雑誌なども交じっていた。たとえば、『月刊現代』(1990年1月)は、「いま大新聞を疑う」という特集を組んでいる。内橋克人、山本夏彦、黒田清、本田康春といった当時の識者が寄稿している。読んでみて苦笑した。現在の新聞批判とまったく同じことを言っているのだ。

「新聞は、いつの間にか本当に憶病なジャーナリズムになってしまっている」(黒田)

「日本のマスメディアを代表する朝日、毎日、読売は、まるで符節を合わせたように、捏造、誤報、虚報を連発した」(本田)

 「最近のマスコミ状況を見ていて強く感じるのは、新聞の論説が非常に微妙な立場に立ちはじめているのではないか、ということです」(内橋)

若干の例外はあるにしても、新聞を批判する視点は、この30年のあいだまったく変化していないのである。ほとんど脱皮していない。記者に職能がないから、新聞ジャーナリズムが機能しなくなったとする視点である。

詳しく調べたわけではないが、わたしが手短に調査した範囲では、1960年代や70年代の新聞批判もほぼ同じ視点だった。記者の職能不足をジャーナリズムが衰退した原因としてきたのである。

◆◆
しかし、同じ視点の新聞批判を半世紀繰り返しても、新聞の紙面は改善されていない。むしろ悪くなっている。同じ批判が世代から世代へと伝わり、延々と繰り返してきたのである。天才的な個人(記者)が登場すれば、それで問題は解決すると言わんばかりの思考体系だ。

このような類型化された思考に陥ってしまった究極の原因を特定するのに深い考察はいらない。新聞が堕落した背景を探る際に、その原因を新聞社経営の客観的な汚点の中に発見する作業を怠ってきたからである。ジャーナリズムが成り立つ条件を、記者の職能としか考えなかった誤まりである。もっと究極的に言えば、唯物論の考え方が浸透する社会的条件がまだ整っていなかったからにほかならない。

エンゲルスの言葉を借りて、それを現代に蘇らせるとすれば、「彼らの時代が彼らに課した限界を乗り越えることができなったのである」(『空想より科学へ』、岩波文庫)。限界とは、無意識のうちに染み付いている思考体系-観念論のことである。

その結果、先人らは個々の諸問題を独立した現象として捉えてしまい、全体の関連性の中で、新聞が権力構造に組み込まれメディアコントロールの道具になっている実態を把握することが出来なかったのである。

◆◆
おそらく唯一の例外的な評論家は、新井直之氏だった。新井氏は、公権力によるメディアコントロールの手口として、メディア企業の経営部門への介入を早くから指摘していた。それはたとえば、戦前・戦中の政府が新聞用紙を統制することで、言論をコントロールした原理を例としてあげれば十分である。

今日でも同じ原理が働いていて、公権力による新聞に対する消費税率の軽減措置、再販制度の維持、「押し紙」放置などの「国策」が採用されている。従って、これらの問題にメスを入れない限り、新聞ジャーナリズムは再生できない。

◆◆
「沢田資料」には、「押し紙」の写真も含まれている。それをみると2000年ごろには、「押し紙」回収がひとつの一大産業として成り立っていたことが分かる。(上写真・UEDA

「沢田資料」をデジタル化して、インターネットで公開することも検討している。資料の紛失を防止する対策も必要だ。

 

2021年10月27日 (水曜日)

わたしの手元に1通の告知チラシがある。携帯電話の基地局設置工事を告知した4A版のチラシである。

 皆様方には、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
 この度、下記予定にて楽天モバイルの通信設備工事を実施いたします。
 作業期間中は何かとご迷惑・ご不便をおかげいたしますが何卒ご理解・ご協力を頂きますようお願い申し上げます。(略)

工事の期間は10月16日から10月23日となっている。

◆◆
鈴木芳子(仮名、和歌山県)さんがこの告知チラシを受け取ったのは、10月9日だった。工事の開始まで1週間しかなかった。そこでインターネットで「電磁波からいのちを守る全国ネット」の相談窓口をみつけて連絡したのである。

事情を聞いてみると電磁波に対する感受性が強い体質だという。とりわけ交通事故にあって後遺症が現れたあとに、それが顕著になっている。家電の電磁波にも体が反応するという。

楽天が基地局設置を計画しているのは、鈴木さんの住居の至近距離にある2階建てビルの屋上である。基地局が稼働すると、自宅は電磁波の放射を受ける。当然、体調を悪化させるおそれがあった。

「全国ネット」は、鈴木さんから裏付け資料を送付して もらい、事実関係を確認した後、楽天モバイルに対して、工事を延期するように申し入れた。幸いに楽天モバイルは、それを受け入れて、工事を延期した。

◆◆

その後、わたしは楽天モバイルに対して、次の質問状を送った。

楽天モバイル:池内健太様
       廣瀬昇蔵様
         広報部

 先日、和歌山県●●●の基地局設置をめぐるトラブルで、工事延期を申し入れました「電磁波からいのちを守る全国ネット」の運営委員・黒薮哲哉です。まず、当方の申し入れを承諾していただきましたことに感謝を申し上げます。

 鈴木芳子さんが、当会の会員であり、現在体調がおもわしくないので、今後はわたしが貴社の窓口として対応させていただきます。よろしくお願いします。

 連絡は、わたし宛てにお願いします。

 まず、貴社との話し合いの大前提として、次の点を教えて下さい。

1、貴社が設置を計画しておられる基地局の周波数と出力

2、マイクロ波を照射する範囲を表示した地図

3、貴社が鈴木さんに提供されたWHOファクトシートの英語版(原板)

4、貴社が鈴木さんに提供された『電波と安全な暮らし』(総務省制作)の貴社への搬入部数。(2020年度の実数)。

 以上、1週間以内にご回答ください。1から4の基本データを入手したうえで、マイクロ波の安全性に関する質問をさせていただきます。

【連絡先】埼玉県朝霞市岡3丁目●●  黒薮哲哉

 電話:048-464-1413

メール:xxmwg240@ybb.ne.jp

◆◆

楽天モバイルからは期限通り10月26日に回答があった。回答してきたのは、楽天モバイルの関西営業部・関西営業4課の池内健太(ヴァイスセクションマネージャー)氏だった。池内氏は、次のように回答した。

質問「1」貴社が設置を計画しておられる基地局の周波数と出力

回答:今回の計画局の周波数帯は1.7GHz帯です。 出力に関しましては機器仕様に関するものなので公開は控えさせていただきます。

質問「2」マイクロ波を照射する範囲を表示した地図

回答:弊社計画に関するものですので地図等の開示は控えさせていただきます。

質問「3」貴社が鈴木さんに提供されたWHOファクトシートの英語版(原板)

回答:総務省のホームページをご確認ください。

質問「4」貴社が鈴木さんに提供された『電波と安全な暮らし』(総務省制作)の貴社への搬入部数。(2020年度の実数)。

回答:総務省ホームページから必要時にダウンロードしています。

 なお、弊社としては個別の事案であり、今後のご質問に対するご返信は控えさせて頂く所存でございますので宜しくお願い申し上げます。

形式的には回答したことになるが、実質的に楽天モバイルが公表した情報は、基地局の周波数だけだった。出力は未公開。電波を放射する範囲も未公開。鈴木さんに配布したWHOのファクトシート(注:304、大久保千代治訳) の英語原文も提示しなかった。

質問「4」に至っては、質問と回答が正確に噛み合っていない。質問は、『電波と安全な暮らし』の受け取り冊数である。鈴木さんに手渡し冊子が、コピーしたものかどうかを質問したわけではない。

◆◆
そこでわたしは再度、池内氏に確認のメールを送った。回答と併せて紹介しておこう。

【再質問】「1」と「2」について:貴社の見解は、基地局が放射する電磁波に関する情報は開示せず、たとえ住民が不安を感じていても、情報を隠したまま自社のビジネスを優先して基地局を設置・操業するという方針だと解釈させていただきます。健康被害が発生しても、電波防護指針を守っているので、責任を取るつもりはないとう解釈になると思います。

回答:弊社としては総務省の電波防護指針に従って法令遵守で設置しております。貴殿の仰られている「情報を隠したまま自社のビジネスを優先して基地局を設置・操業するという方針」、「健康被害が発生しても、電波防護指針を守っているので、責任を取るつもりはない」は貴殿の解釈であり弊社の見解ではございませんのでここに明示させていただきます。
 尚、貴殿から質問にはすでに回答させて頂いております。

【再質問】「3」:当該のURLをお知らせください。

 回答:以前の回答通りです。

【再質問】「4」:『電波と安全な暮らし』に関しては、わたしが総務省に対して情報公開請求を実施して確認します。

 回答:以前の回答通りです

なお、楽天モバイルの基地局設置に関する相談は、昨年秋から優に70件を超えている。その大半は、解決している。

【参考記事】楽天の基地局設置をめぐる係争、懸念されるマイクロ波の遺伝子毒性、地主が反対住民に、「損害賠償請求の検討に入った」

 

【注】トラブル相談・対策に一切料金は発生しません。相談の際は、トラブルを起こしている電話会社名と正確な設置場所を必ずお知らせください