2016年08月23日 (火曜日)

放送確認書が偽造された疑惑が浮上している。

既報したように、チャンネルMnet(CJE&MJapan株式会社)の放送確認書である。疑惑の根拠は次の「ミス」である。最初に問題の書面を示そう。

まず、第1に住所の間違いである。同社の正しい住所は、「港区西新橋2-7-4」であるが、「西新橋」が欠落し、「港区2-7-4」と記している。しかも、同じ「ミス」を何度も繰り返しているのだ。もし、放送確認書をCJE&MJapanが作成したのであれば、住所を間違うはずがない。

第2のミスは、2014年5月29日付けになっている放送確認書に、5月30日と31日にCMが放送されたとする記載がある点だ。これも「偽造」の過程で発生した「ミス」の可能性が高い。[参照:上記書面の赤の①②の部分]

第3の疑問点は、ウィンドウズ貼付画面が確認できることだ。ウィンドウズ画面の右上には、常に、「-」「□」「×」のマークが表示されるが、上記の放送確認書にも、それが確認できる。これについて、アスカは次のように話している。

「弊社には各放送局から提出された1万枚を超える放送確認書がありますが、このような放送確認書は、民放もBSもCSもあわせてチャンネルMnetだけです」

さらに10桁CMコードが使われていない。

この問題で22日に、CJE&MJapanに問い合わせたところ、書面で質問を送ってほしいとのことだった。次の書面が質問状である。

 

【質問状全文】

 

2016年8月23日
CJE&MJapan 株式会社様

発信者:黒薮哲哉
連絡先:(電話)048-464-1413
(メール)xxmwg240@ybb.ne.jp

昨日、電話で問い合わせをさせていただきました黒薮です。
貴社の放送確認書について、お尋ねしたいことがあり、貴社の要望に沿って
書面で質問させていただきます。

質問は、いずれもこの質問状に添付しました放送確認書に関するものです。

、この放送確認書は、貴社が発行されたものでしょうか?

、この放送確認書に記された貴社の住所は、「東京都港区2-7-4CJビル3F」となっており、「港区」の後に「西新橋」が欠落しています。同じミスが約1年にわたり、他の放送確認書でも確認できますが、原因を教えてください。

、この放送確認書の発行日は、5月29日(①の部分)になっていますが、30日と31日に放送されたとする記述(②の部分)があります。30日と31日に放送されたCMの放送確認書が、なぜ29日に発行されたのでしょうか。不可能だと思いますが。

、10桁CMコードを使用していない理由を教えてください。

26日までに回答していただくようにお願いします。

2016年08月22日 (月曜日)

博報堂から内閣に対して請求した新聞を媒体とした「広報実施業務等」の金額が、2015年度だけで約20億3300万円に達していることが、情報公開資料によって分かった。

これらの金額が博報堂を介してそのまま新聞社や放送局に流れ込むわけではないが、日本のメディアがいかに広告代理店に依存しているかを示すデータといえるだろう。広告代理店が報道のタブーになっているゆえんにほかならない。

テレビのスポットCMを通じた広報活動関連費用に関しては、すべて黒塗りになっている。非公表である。どの放送局で放送されたのかも分からない。たとえば、次の書面だ。

今回調査した博報堂の請求書(内閣府分)には、ある特徴がみられる。請求書の発行日の欄が空白になっているのだ。

これに関しては、確実なことは言えないが、ひとつには、前年度の残予算から、内閣府が請求額を支払っている可能性がある。かりにそうだとすれば、残金の「大判振る舞い」ということにもなりかねない。当然、裏金づくりの温床になる。

また、上記の黒塗りのテレビ番組の請求書に関していえば、CMを放送した放送局が明記されていないわけだから、本当に放送したかどうかも分からない。放送したことにして、前年度の残予算から、裏金を支出する温床になる。

当然、筆者は内閣府に対して放送確認書の情報公開を申し立てることになる。

◇書類ナンバーの欠落

ちなみに博報堂が発行した請求書には、請求書ナンバーが入っていない。通常の経理システムでは、見積書から請求書までコンピュータを駆使して、共通のナンバーによって管理するはずだが、博報堂が発行した請求書は付番されていない。見積書がどうなっているのかを確認するために、筆者はこれについても内閣府に対して、見積書の情報公開も申し立てることになるだろう。

見積書なしに、後付けで請求していれば、大変な問題だ。

 

2016年08月19日 (金曜日)

 下に示す画像のは、博報堂が内閣府へ送った請求書である。博報堂が制作した5段広告で、全国71紙に掲載された「社会保障と税の一体改革(マイナンバー制度)」と題する公共広告に対する請求で、金額は2億6373万6410円である。

掲載日は、媒体によって異なるが、いずれも2015年10月中である。

掲載紙数は71紙あっても、版下は同じものを使うわけだから、上記の金額は尋常ではない。無駄な予算が新聞社と広告代理店に流れていることが分かる。

国会議員の定数を減らして、国民の参政権を縮小するよりも、先にこうした無駄づかを中止すべきだろう。

各新聞社へいくら支払われたのかを示す明細は、親切にもメディアに配慮してすべて黒塗りにしている。次に示すとおりである。なぜか書面の発行日が欠落しているが本物である。


わたしは過去にも、情報公開制度を利用して内閣府から、公共広告に関する広告代理店の請求書を入手したことがあるが、その時は、各新聞社の明細が公開されていた。たとえば次の廣告社の請求書である。

安倍内閣の下で、特定秘密保護法が運用されるようになってから、情報公開のハードルが高くなっている。言論の自由度は後退している。明細の部分を黒塗りにすることは、新聞社と広告代理店にとっては歓迎すべきことだが、国民にとっては歓迎すべきことではない。税金の使途が曖昧になるからだ。

※他の広告代理店からの請求書も含めて、政府広報予算の詳細は近々に月刊誌に掲載する予定。

2016年08月18日 (木曜日)

作曲家の穂口雄右氏が、キャンディーズのヒット曲で自作の 「春一番」と「夏が来た !」を無断で複製されたとして、(株)ソニー・ミュージックエンタテイメント前社長で、日本レコード協会の元会長・北川直樹氏らを刑事告訴していた事件で、東京都港区の麹町警察署が捜査に着手した模様だ。関係者によると、同署は被疑者に対して、音源資料のCD現物を提出させたとのことである。

この事件は、穂口氏が実験的に着手した著作権管理に端を発している。通常、著作権に基づく楽曲使用料(テレビ、ラジオ、カラオケなどの使用やCD制作などで発生する)の徴収と配分は、JASRAC(日本著作権協会)が代行している。

ところが穂口氏は、2012年3月、みずからが著作権をもつ楽曲のうち、「春一番」と「夏が来た !」の2曲を、JASRACの管理から外して、自分で管理することにした。JASRACも穂口氏の試みを認め、広報に努めるなど全面協力した。その甲斐あって、これら2曲の使用に際しては、穂口氏から直接承諾を得る管理方法が構築されたのである。

◇ソニーだけがルール違反

実際、NHK、フジテレビ、TBSなどの放送局、ビクター、コロンビア、エイベックなどのレコード会社は、直接に穂口氏と連絡を取り、楽曲の使用許可を得ようになった。カラオケ会社やレンタルレコード店の場合は、使用料が合意に達せず、使用を取りやめたケースもあるが、少なくとも穂口氏と直接コンタクトを取って使用手続きをするルールは遵守した。

ところがソニーだけがルールを破り、使用料も支払わずに無断でCDを複製していたのだ。

告訴状によるとソニーは2014年 10月から12月ごろまでの間に、無許可で「春一番」と「夏が来た !」を収録したCD『キャンディーズ伝説』を28枚複製。1枚1万2000円で販売した。また、同じ時期に「春一番」が収録されたCD『僕のアイドル』を500枚複製して1枚2190円で販売した。

こうした著作権の踏み倒しが発覚したのは、今年2月 だった。著作権の自己管理に限界を感じた穂口氏は、この実験的試みを断念して、2曲の著作権管理をJASRACに戻したのだが、その際にJASRACから、ソニーが無許可で「春一番」と「夏が来た !」を使っていたとの報告があったのだ。

麹町警察署が動いたことで、今後の事件の進展が注目される。

2016年08月17日 (水曜日)

アスカコーポレーションは、8月16日、博報堂に対して2件目の訴訟を起こした。請求額は約47億9000万円。ウソの視聴率が記入された博報堂の番組提案書により、CMや通販番組の制作「契約」に誘導されたとして、番組提案書そのものの無効と返金を求める裁判である。

耐震強度の偽装から食品偽装まで、「偽装」が地球規模で広がっているなか、今度は視聴率の偽装による番組提案という深刻な問題が司法の場へ持ち込まれたのである。裁判所が、この視聴率偽装をどう裁くかが注目される。

裁判の中では、当然、博報堂の営業マンが偽装工作に果たした役割や、CM「間引き」疑惑も検証対象になる。

博報堂に対して約15億円を請求している前訴では、放送関係の請求は含まれていなかったが、今回提訴された訴訟では、請求対象が放送関係の不正に絞られている。法廷でCM制作の裏面などが暴露される可能性が高い。

テレビは業績不振からV字回復を遂げたが、かりに同じ騙しの手口が業界全体に広がっていれば、放送界の実態が根本から問われることになりかねない。

博報堂とアスカの間で勃発している放送関係の係争について、概略を説明しておこう。

◇放送枠を選択する唯一の指標=視聴率

CMや通販番組を制作する際の重要なプロセスに、番組企画書の提示がある。CMを制作する大前提として、広告主が放送枠を選択するわけだが、その際に重要な役割を果たすのが、番組提案書に記入された視聴率である。視聴率は広告主が番組枠を選ぶうえで、最重要視するデータなのだ。それ以外にほとんど指標がないからだ。

視聴率の0.1%の違いも、広告主は軽視しない。テレビ視聴者の絶対数が多いからだ。たとえば1000万人の視聴者がいるとすれば、その0.1%は、1万人に該当する。1%は10万人に該当する。10%で100万人になる。

博報堂はその重要なデータを改ざんして、アスカにCMや通販番組を制作するための「GOサイン」を取り付ける手口を繰り返していたのである。

訴状によると、アスカの手元に保管されていた番組提案書は49通。このうちの43通で、視聴率が改ざんされていた。改ざんされたデータが掲載された番組提案書数が全体に占める割合は87・8%だった。この数字を根拠にして、博報堂に対して過去に支払った放送関係の金額の87.9%にあたる約48億円の支払を請求したのである。

ちなみに博報堂の営業マン・清原(仮名)氏は、アスカの南部社長に番組提案書を提示して、「○」(購入)「△」(不購入)「×」(今後の条件次第で購入)のいずれかの回答を得ていた。番組提案書は、基本的にアスカに提出することはなく、なぜか清原氏が持ち帰っていた。アスカに49通しか番組提案書が残っていなかったゆえんにほかならない。

■視聴率偽装の実態(エクセル)

視聴率偽装の実態を紹介しよう。

たとえば、JNN系の「MBSドラマの光」の世帯視聴率は3.4%(ビデオリサーチ)だったが、博報堂はこれを4.0%に改ざんしている。

また、CM間引きの疑惑があるスーパーネットワーク社(CS)の「Super Drama TV」の世帯視聴率は14.3%になっている。

この放送枠に対応するビデオリサーチのデータは公表されていないので、視聴率を改ざんした確証はないが、わたしが複数のテレビ・広告関係者にその信憑性を問うたところ、共通して「あり得ない数字」という言葉が返ってきた。

同じくCSの「ディスカバリーチャンネル」では、世帯視聴率が21・9%になっている。

なお、CM「間引き」の疑惑は、CSとBSの放送局で数多く指摘されているが、不自然な視聴率の提示も、CSとBSの放送枠に集中している。数字の記入ミスの可能性もあるが、少なくとも番組提案書を見る限りは、視聴率の提示としか読み取れない。

CSとBSに関しては、ビディオリサーチのデータが存在しないので、視聴率を偽装した確証はないが、不自然な点が多いことは間違いない。

■博報堂の番組提案書の一部

なお、博報堂の番組提案書には、大半のもので、データの出典が示されていない。これに対して、電通や東急エィジェンシーの番組提案書には、出典が示されている。

◇休止番組からも料金を徴収

博報堂にとっては、視聴率の偽装によりCMや通販番組の制作を請け負った時点で、第1目的を達成したことになる。

CMや通販 番組が完成すると、当然、放送の段取りになる。この段階から不適切な業務の手口が重層してくる。不正の手口が枝分かれする。

【休止番組やCMからの請求と転売疑惑】

まず、番組を休止にしておきながらCM料金を徴収した事実がある。朝日放送のケースで、たとえば2011年3月11日の東日本大震災の影響で、15日深夜に放送が予定されていた通販番組が休止になった。ところが休止になった番組からも、博報堂は100万円を請求している。

■裏付け資料(朝日放送)

なお、朝日放送の放送確認書は博報堂が代筆していることも判明している。通常ではあり得ないことである。どのような事情があったのか、裁判の中で検証されなければならない。

■博報堂による代筆放送確認書の例

朝日報道とおなじパターンの請求は、テレビ北海道やテレビ愛知で放送予定だった通販番組でも発生している。

■裏付け資料(テレビ北海道)

■裏付け資料(テレビ愛知)

休止になった番組枠は、当然、転売された可能性もある。テレビ局が転売したのか、博報堂が転売したかは別として、かりに「転売」されていたとすれば、転売した者は、アスカと転売先から2重の利益を上げたことになる。

休止になった番組の扱いについて、わたしは朝日放送、テレビ北海道はテレビ愛知の3放送局に尋ねてみたが回答はなかった。

テレビ局の中には、わたしの取材に対して、最初は好意的に対応していた局もあるが、結局、転売先を明かした局はない。アスカの社員からの問い合わせに対しては、「博報堂さんの承諾なしには、口外できない」と返答した局もあったという。つまり博報堂とテレビ局が口裏あわせをしている可能性があるのだ。

CMに依存したテレビジャーナリズムは、広告代理店を敵にまわすことはできないのだ。それがこの事件が報じられないゆえんである。

【ACへの振り替えで請求の例も】

ACとは、公益社団法人ACジャパン(エーシージャパン、ADVERTISING COUNCIL JAPAN)」が提供する公共広告・CMのことである。東日本大震災の際、数多くのCMがACへ切り替えられたのは周知となっている。

たとえば東日本大震災が起こった2011年3月、アスカのCMは57本が放送され、53本がACに振り替えられた。ところがACへ振り替えたことを理由に割り引かれた額は、たったの74万6000円で、1800万円の請求を受けている。本来、割り引かれなければならない額は、見積書から計算すると約458万円である。

◇後付け見積書による請求

通販番組を休止にしたり、CMをACへ振り替えた場合の料金請求は、他の請求項目と同様に、後付けの見積書で行われる。たとえば8月3日に放送されたCMの見積書は、8月31日付けで提出される。しかし、アスカは博報堂に対して、事前に見積書を提出するように指示している。

こうした方法で、休止になった通販番組までが後付けで見積もられ、実際に請求対象にもなっていた。

アスカ側も、こうした変則的な支払い方法に対して、原則的に応じてきた。その背景には、博報堂の営業マン・清原氏を過信していた事情がある。

◇CMの中抜き

偽装した視聴率でCM契約を取り付けた後のプロセスは、CM制作とCM放送である。CM制作に関しては、ここでは言及しないが、検証が不可欠であることは論を待たない。特に撮影を担当した「会社」の実態を調査する必要がある。これに関しては取材中で、後日、レポートすることになるだろう。

CM制作の次のプロセスであるCM放送に関しては、「中抜き」疑惑が浮上している。

これに関しては、まだ事実が確定しているわけではないが、そう考える根拠は十分にある。

CMの「中抜き」疑惑の典型例は、衛星放送局・スーパーネットワークの放送確認書に10桁CMコードが表示されていない事実である。CM本数にすると900本を超えている。

原則的な見方をすれば、10桁CMコードが表示されていないということは、CMが放送されていないことを意味する。10桁CMコードは、もともとCM「間引き」をコンピュータによって監視するために導入されたシステムであるからだ。

スーパーネットワークは、10桁CMコードを使わない理由として、民放連に加盟していないことを上げているが、CMコードの使用は、民放連に加盟しているか否かとは関係ない。

元々、CMコードは広告主を不正から守るためのものである。それゆえに民放連などは、2006年からCMコードの使用を義務付けている。さもなければCM営業が難しいなるだろう。

次に示すのは、衛星放送協会を取材した際のメモである。

黒薮:CMの間引き問題が出ていますが、そちらの協会の方で防止策など取られているようであれば、教えてほしいのですが。

衛星放送協会:われわれの方ではガイドラインを設けておりまして、放送確認書を発行しています。各社におかれては、そこに手を加えることはなく、きちっと放送されたものを放送確認書でスポンサー様に、あるいは広告会社様にお渡ししています。

黒薮:10桁コードに関して、民放連などはCMの10桁コードを使うように徹底しているということなんですが、そちらでも・・

衛星放送協会:こちらの方でも、10桁コードを使用するように推奨して、各加盟社を指導しています。

スーパーネットワークが加盟している日本衛星放送協会も、10桁CMコードの使用を推奨している。

CM間引きの疑惑がある衛星放送の局を取材した限り、わたしは「衛星放送協会に所属している放送局では、10桁CMコードは使用しない」という口裏合わせが行われているような印象を受けた。

一方、大手広告代理店の電通、ADK、それに東急エージェンシーは、わたしの取材に対して、衛星放送でも10桁CMコードは使っていると答えている。

◇放送確認書の偽造は技術的に可能

CMの「中抜き」と連動して考えなければならないのは、放送確認書の偽造疑惑である。

偽造の疑惑が浮上した糸口は、衛星放送局・CJE&M Japanの放送確認書に2つの重大な「ミス」が発見されたことである。

まず、第1に住所の間違いである。同社の正しい住所は、「港区西新橋2-7-4」であるが、「西新橋」を落として、「港区2-7-4」と記している。しかも、同じ「ミス」を1年間繰り返しているのだ。もし、放送確認書をCJE&M Japanが作成したのであれば、住所を間違うはずがない。

第2のミスは、2014年3月29日付けになっている放送確認書に、3月30日と31日にCMが放送されたとする記載がある点だ。これも「偽造」の過程で発生したミスの可能性が高い。

なお、この種の偽造は、IT関係者によると、技術的に十分可能だ。wordなどを使って偽造の放送確認書を制作できる。そのことをわたしは確認した。

■参考記事:博報堂事件、放送確認書そのものを何者かが偽装した疑い、確認書の発行日とCM放送日に矛盾

◇新聞部数の偽装と視聴率の偽装

以上、説明したように、視聴率の偽装に端を発する放送関係の検証点は極めて多い。視聴率の偽装により結んだCM制作契約、CMを含む番組制作と放送、後付け見積書による不正な請求。このプロセスが延々と繰り返されていた。

その中で原点にあるのが視聴率の偽装なのである。

「48億円」訴訟では、疑惑に疑惑が複合的に重なった実態が検証されることになる。

メディア黒書は、「新聞の発行部数の偽装」と並行して、「視聴率の偽装」を報じていく。

【関連記事】

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(産経新聞)津波記録誌で「怠慢」編集 岩手県大槌町、東北博報堂との契約解除

2016年08月16日 (火曜日)

  博報堂の正社員や非正規社員の職能が問われている。

たとえば今年の3月、博報堂が管理を請け負っていた「いわて県民情報交流センター」(盛岡市)で、入場者を水増しして報告していた事実が発覚している。その方法は子どもじみた幼稚なもので、アルバイトに入場者カウンターを何度も通過させるというものだった。(朝日新聞)

また、昨年、岩手県大槌町から津波記録誌の編集を請け負っていたが、「怠慢」編集を理由に契約を解除されている。記述の一部を別の記録誌からぱくっていたことも明るみにでている。(産経新聞)

さらに過去には、2009年に発覚した障害者団体向けの郵便料金の割引制度を悪用した事件で逮捕者を出している。当時、アスカに対しても、この割引制度を悪用するように話を持ちかけていた。

博報堂が上場企業(東証)だから完璧な業務を遂行して当然とまでは言わないにしても、上場企業として問題が多い。ただ、社員たちに悪意があるのかどうかは分からない。普通にやっている業務が、第3者の目には、異様に写るだけのことかも知れない。

◇他社の公式文書を勝手意にPDF化

次に紹介するのは、博報堂と係争中のアスカコーポレーションを取材して分かった職能に関するエピソードである。公式文書類の意味をよく理解していないことを示すエピソードである。

2013年9月、アスカの経理担当者がCMの放送確認書を点検していたところ、沖縄テレビのものが欠落していることに気づいた。放送確認書は、ひと月分をまとめて封筒に入れ、福岡に常駐しているスタッフが届けるシステムになっていた。その封筒を確認したところ、沖縄テレビのものがなかったのだ。

そこでメールで博報堂に問い合わせた。すると次のような答えが返ってきた。

 控えがございましたので取り急ぎPDFデータをお送りさせて頂きます

さらにPDF送付後の対処としては、

 改めて、武井・渡辺(仮名)より出力をお届けに伺いますので宜しくお願い致します。

武井・渡辺というのは、アスカで業務を行っている博報堂のスタッフである。そのスタッフがPDFをプリントアウトしたものを届けるというのだ。

本来、届けなければならないのは、放送確認書の原本である。また、他社の公式文書を勝手にPDF化したり、それを出力することも普通はやらない。やられた側としては、たまったものではない。

悪意がなくても、普通にやっていることが第三者の目には異様に写る。

◇沖縄テレビでCMは本当に放送されたのか?

ちなみに放送確認書の原本がアスカに届いていなということは、CMが放送されていない可能性もある。この点について、現在、アスカは調査中だという。

アスカにしてみれば、チャンネルMnetの放送確認書が偽造されていた疑惑を掴んでいるだけに、沖縄テレビの放送確認書の原本を手に入れるまでは、納得できないだろう。技術的に放送確認書の偽造は可能なのだ。

【参考記事】博報堂事件、放送確認書そのものを何者かが偽装した疑い、確認書の発行日とCM放送日に矛盾

 

 

 

2016年08月15日 (月曜日)

佐賀新聞社を被告とする「押し紙」裁判で、原告の元販売店主・寺崎昭博氏の弁護団は、訴状を再提出した。この裁判は、もともと6月3日に佐賀地裁へ訴状が提出されていたが、その後、原告弁護団は訴えの中身を再検討して、今回の再提出となった。

請求額は8186万円。新しい訴状では、「押し紙」の概念で新見解が示されているほか、佐賀新聞社による優越的地位濫用やABC公査の実態が記録されている。

■訴状(全文)

■「押し紙」一覧表

◇開業から改廃まで

原告の寺崎氏は、2009年4月に佐賀新聞・吉野ヶ里販売店の経営者になり、2015年12月末で廃業した。負担させられていた「押し紙」の割合は、当初は10%程度だったが、ピーク時の2012年6月には約19%に。その後、佐賀新聞社が全販売店を対象に「押し紙」を減らしたこともあり、廃業時には約14%だった。

寺崎氏は、繰り返し佐賀新聞社に対して「押し紙」を減らすように求めたが、同社は申し出には応じなかった。担当員や販売局長らを交えた面談の際には、販売局長が、「残紙があって苦しいのはわかるが、『残紙』は販売店の責任だから切ってやることはない」と発言するなど、佐賀新聞社は「押し紙」政策を改めようとはしなかった。

その結果、新聞代金の納金が遅れるようになり、販売局長から、「これ以上納金の遅れが続き、その金額が信認金を超えれば改廃になる」と告げられた。

実際、納金が遅れるようになり、寺崎氏は2015年の12月末日付で廃業に追い込まれた。

理不尽な「押し紙」制度に納得がいかなかった寺崎氏は、福岡県久留米市の江上武幸弁護士に相談した。江上武幸弁護士は、「押し紙」問題の専門家で、読売新聞社を相手取った真村訴訟では読売に勝訴している。読売による優越的地位の濫用と「押し紙」政策を認定させたのである。この判決は、2007年12月に最高裁で確定し、その後、「押し紙」問題を考える指標になっている。

■真村訴訟福岡高裁判決(全文)

江上弁護士は、寺崎弁護団を結成して訴訟の準備を進め、提訴に至ったのである。

◇「残紙」=「押し紙」の新見解

訴状で弁護団は、「注文部数」、「押し紙」、それに「残紙」についての概念を新しい視点から再定義している。従来、「注文部数」とは、書面上に明記された新聞の仕入れ部数だった。その数字は、たとえ新聞社から強要されたものであっても、書面上では、販売店が自主的に注文した形式になっているので、「注文」に基づいて搬入された新聞部数が過剰になっても、「押し紙」とは見なされない。従って「残紙」と呼ばれる。裁判所も「残紙」を「押し紙」として認定してこなかった。

このような従来の見解に対して、弁護団は、「残紙」も「押し紙」に該当するとの新見解を、公正取引委員会などの文書を歴史的に検証することで示している。(訴状11ページ~)

すなわち、特殊指定にいう「注文部数」とは、販売店が新聞社に形式的に注文した部数を意味するのではなく、部数の中身に着目して「新聞購読部数」に「地区新聞公正取引協議会が定める予備紙等」を加えた販売店経営に必要な部数を「注文部数」と定義している。

 従って、この定義に反して、販売店が販売店経営に必要な部数以上の部数を注文した場合、新聞本社はその部数を供給してはならない独禁法上の義務を課せられている。

◇ABC公査の実態

訴状の中で、弁護団はABC公査についても具体的に言及している。

新聞本社の発行する紙面広告料は発行部数の多寡によって決まる。この発行部数はABC協会が発表する部数であり、各新聞本社の販売店に対する供給部数の合計であり、実際の読者の数ではない。しかし、発行部数と実際の読者の数に差がありすぎると、広告主の判断に悪影響を与えるため、ABC 協会は公表部数の信頼性を確保するために公査を実施している。

 公査は、2年に1度、新聞本社及び販売店を調査員が訪れて帳簿等を調べる方法によって実施されている。

 被告は、各販売店が大量の「残紙」を抱えているため、ABC 協会の公査で「残紙」の存在が発覚しないよう、あらかじめ販売店に対し公査に備えて「残紙」を隠ぺいする偽装工作を指示および指導している。

 具体的な隠ぺい工作の方法としては、まず、販売店ごとに定数に占める「残紙」の割合を計算するよう指示し、「残紙」の率が高い場合は、残紙率を下げるために実配数を増やすよう指示している。実配数を増やす方法としては、読者の存在を裏づけるための架空の領収書を作成したり、読者台帳等の帳票類の数字に手を加えたりする方法などを指示している。

 「公査対策用の1ヶ月分の帳票類ができあがったところで、次の月の帳票類の作業に入る前に、一度担当に確認してもらったほうが良いでしょう。」と、販売店に対し偽装工作の結果について担当のチェックを受けるよう、細部にわたる指示を行っている。

 このことも、被告が販売店に大量の「残紙」が存在する事をあらかじめ知っていたことを示すものある。

◇優越的地位の濫用

優越的地位の濫用については、単に「押し紙」の強要だけではなく、佐賀新聞社が販売店の人事にまで介入している事実(訴状9ページ)や、増紙計画を達成できなかった販売店に対して罰金を課していた事実(訴状9ページ)、さらには本来3年間に定められるはずの商契約を、非協力とみなした販売店に対しては、大幅に短縮している事実(訴状9ページ)などを指摘している。

◇「報告事件」対策

メディア黒書は、佐賀新聞の「押し紙」裁判を、裁判資料の公開も含め、随時報道していく。インターネットの利点を活用した報道を展開する。それが「報告事件」を防止する対策になる。

「報告事件」とは、最高裁事務総局が干渉する裁判を意味する。書記官に裁判の進行を報告させ、事務総局の意に添わない判決が出る可能性が浮上すると、人事権を行使して裁判官を交代させるなどの「対策」を取る。こうした「対策」がメディア企業や一般の大企業との汚職の温床になることは論をまたない。

「報告事件」の存在は、最近、複数の元裁判官らの著書により、その存在が輪郭を現しはじめている。

【写真】江上弁護士の事務所に、証拠として保存されている1週間分の「押し紙」と、それに付随する折込広告。左が江上弁護士、右が原告の寺崎氏。

 

2016年08月13日 (土曜日)

  10桁CMコードは、CMの「間引き」を防止する目的で、1999年12月から導入された。このあたりの事情について、当時の『放送ジャーナル』は、次のように報じている。

テレビCM業務の合理化と放送事故の防止を目指した、放送広告業界統一のCMコード【10桁CMコード】の運用が、昨年12月1日放送分のCM素材から正式にスタートした。

 97年、99年に発覚したCM不正取引問題を契機に、日本広告主協会(主協)が民放連や日本工区業協会(業協)に求めていた、再発防止策としての「電波重畳によるCM放送確認システム」が10桁CMコードを使用することで一本化された。

 99年2月、主協、業協、民放連、全日本シーエム放送連盟、日本テレビコマーシャル制作社連盟のCM関係5団体で構成する「共通コードプロジェクト会議」(2000年3月に日本ポストプロダクション協会が参加し6団体に)が発足。1年余りの検討の後、最終合意が昨年9月に成立し、広告主コード(4桁)と素材コード(6桁)を組み合わせ10桁のコード体系とすることが決まった。

そして同11月、業協内に「共通コード管理センター」(Code Control Center:略称CCC)が開設され、10桁CMコードの完全実施を進めていくことになったわけだ。

 同センターは業協と民放連が共同設立した任意団体で、主協・業協・民放連の3団体の合意のもと、10桁CMコードのうち、4桁の『広告主コード』の発番、管理を行い、広告主・広告会社・CM制作会社・放送会社におけるCM業務の合理的遂行に寄与することを目的としている。さらに、この「10桁コード」の各業界における普及促進活動を推進していくことになる。

◇電通と東急は衛星放送でもCMコードを使用

筆者が10桁CMコードの運用状況を調べたところ、既に10桁CMコードは定着していて、もやはCMの「間引き」はあり得ないというのが、放送関係者の共通した認識だった。唯一の例外が博報堂系の衛星放送局・スーパーネットワークだった。(他の衛星放送局は現在取材中)10桁CMコードを使わない理由を尋ねると、「民放連に加盟していないから」というものだった。

そこでスーパーネットワークが所属する衛星放送協会に問い合わせると、10桁CMコードの使用を推奨しているとのことだった。

さらに大手の広告代理店、電通、ADK、それに東急エイジェンシーに衛星放送における10桁CMコードの使用状況を問い合わせてみた。結果は、いずれの代理店も使っていると回答している。

元広告代理店の社員で塾講師のA氏も、「10桁CMコードは、広告主を保護するためのものですから、使うのが当たり前」と話している。その意味では、電通、ADK、東急エイジェンシーは、広告代理店としては、オーソドックスな業務を展開していることになる。博報堂は、業界の中では例外的な存在といえよう。

◇電通・東急と博報堂の比較

博報堂と係争中のアスカは、もともと電通と東急にPR業務を委託していた。博報堂はその後に参入して、電通と東急を撤退させたのである。

電通・東急がPR業務を行っていた時代と、博報堂が独占的にPR業務を独占した時代を比較すると興味深い事実が浮上する。それはCPOの違いである。

CPOとは、新規に商品購入する1人の顧客を獲得するために費やした販促費用のことである。たとえば新聞1部を拡販するためには、セールス員の人件費を含めると、3万円にも4万円にもなる。

博報堂が業務を独占した時代のCPOは次の通りである。

2009年   220,876円
2010年   240,643円
2011年   220,019円
2012年   432,065円
2013年   922,760円
2014年 1,139,010円
2015年 1,538,897円

一方、博報堂がPR業務を独占する前の時期はどうだったのだろうか。この点についてアスカに問い合わせてみた。アスカは、正確な数字は現段階では公表しないとしながらも、 「電通と東急の時代は7万円程度だった」と話している。

電通と東急の業務内容そのものと職能を客観的に見た場合、博報堂とは比較にならない。少なくともアスカにおけるPR活動を例に両者を比較すると、そういう見方が出来る。

ただ、公共機関に対する広告業界全体の請求規模については、本当に適正なのかを今後検証してみる必要がある。

2016年08月12日 (金曜日)

11日からメディア黒書に大量の迷惑メールが送りつけられている。11日の夜間に200件、昼間に18件程度、昨夜から12日の朝にかけて158件、すべて英文で書かれた同じ内容のものである。メールは「迷惑メール」に自動的に分類され、証拠として保管されている。

朝方に多量に送付されていることから察して、早朝に働いている新聞関係者の可能性が高い。

■裏付け資料(迷惑メールの表題)

◇過去にも攻撃

メディア黒書に対する攻撃は、今回がはじめてではない。かつて有料サイトを運営していたとき、課金システムを完全に破壊されたことがある。犯人はほぼ特定できているが、また証拠が不十分なので、現段階では公表しないが、宗教団体系のある企業である可能性が高い。

今回と同様に多量のメールで攻撃されたこともある。メールによる同種の攻撃は、知人のフリージャーナリストも受けている。海外からのメールだったそうだ。こちらは、ウエブサイトを閉鎖に追い込まれた。

「押し紙」の取材をはじめたころは、留守番電話に奇声や街の騒音、それに「もしもし、もしもし、おかしいな・・」というメッセージが、連日録音されたこともあった。さらに次のようなFAXも届いた。

「黒薮殿
お前のようなのはジャーナリストではない。
つまらぬことはするな。
いつでも堂々と相手をしていやる。
うちの会長・社長に迷惑を及ぼしたら覚悟はできているだろうかな。

依頼人        平成の仕置人」

この脅迫文は、拙著『新聞ジャーナリズムの「正義」を問う』(リム出版新社)で公開している。

◇殺人未遂事件

今回のメール攻撃の犯人は不明だ。なにしろ最近は取材が広く、「押し紙」問題から、恫喝裁判、環境問題、経済事件、覚醒剤、さらには港区で起こった毒物による殺人未遂事件も調べているので、攻撃者が誰なのかはまったく見当がつかない。

せいぜい可能な防衛策といえば、メディア黒書で入手した資料を、国内外のジャーナリストに拡散することぐらいだろう。

 

2016年08月11日 (木曜日)

故やしきたかじん氏の妻・家鋪さくら氏が、映画評論家の木村奈保子氏に対して、SNS(ソーシャルメディア)で「人格障害を伴う悪女」などと書かれ、名誉を毀損されたとして660万円のお金などを要求していた裁判が、8月4日に和解した。

木村氏に訴状が届いたのは2015年の8月中旬。百田尚樹著のノンフィクション『殉愛』に描かれた内容を反証した『殉愛の真実』(西岡研一ほか共著)が発刊された後に、木村氏は、FACEBOOK(ツイッター連動)で後者を絶賛する書評コメントを書いた。

その中の表現が名誉を毀損するものとして、総額660万円の訴状が送達されたのだ。

さくら氏は、関西の政治番組などで活躍した司会者で歌手でもある故やしきたかじん氏の後妻で、たかじん氏が亡くなる2ヶ月前に婚姻した。自身の看病物語『殉愛』を作家の百田氏に依頼した人物である。

この裁判の原告・さくら氏の代理人として登場したのは、ロス疑惑事件の三浦和義氏や薬害エイズ事件の被告・安部英氏を無罪にした辣腕、日本を代表する人権擁護団体である自由人権協会の代表理事を務める喜田村洋一弁護士である。喜田村氏は、読売の「押し紙」裁判では、読売には1部も「押し紙」は存在しないとも主張してきた。

◇高額名誉毀損訴訟

一方、木村氏は、弁護人を立てずに「本人訴訟」を選んだ。言論に対する抑圧を目的とした裁判であるという評価がその根底にあるようだ。

近年、言論に対する高額名誉毀損訴訟が増えており、弁護士を立てた場合、被告は請求額に応じて着手金を支払わなければならない。敗訴すれば、損害賠償金も負担しなければならない。勝訴しても成功報酬を支払わなければならない。

そのために原告は、裁判の勝敗とは無関係に、高額訴訟を起こした時点で、相手を経済的にも、精神的に追い詰めることができる。

一方、弁護士によっては、名誉毀損裁判を恰好のビジネスと捉え、積極的に高額訴訟を奨励する者もいる。筆者は、すでに一部の弁護士による「営業活動」の実態を把握している。「営業活動」は確か禁止されているはずだが、水面下では行われているようだ。

が、日弁連はこの社会問題の解決には消極的だ。

◇光文社、毎日新聞社、宝島社・・・

結果的に木村氏は、和解にたどり着いた。しかも、謝罪文を必要としないうえに、和解金も小額だった。弁護士を依頼せずに自分で裁判に対処したことは、結果的に正しい選択肢だったといえる。

なお、さくら氏は、木村氏以外に対しても、複数の訴訟を起こしている。たとえば、たかじん氏の一番弟子、打越元久氏(歌手)に対する裁判だ。第一審の大阪地裁は、打越氏に対して300万円の支払を命じたが、第2審の大阪高裁は、さくら氏を「公人」と認定し、賠償額も100万円に減額した。

さらに、さくら氏は光文社、毎日新聞社、宝島社などを相手に、多くの名誉毀損裁判を続行中である。

ちなみに、たかじん氏の実娘が百田氏の『殉愛』で名誉を毀損されたとして幻冬舎を提訴した裁判では、7月29日、幻冬舎に対して330万円の支払いを命じた。同じくたかじん氏元マネジャーも、百田尚樹氏と出版社を訴訟中で、判決が待たれている。

◇言葉の質が低いことは暗黙の前提

ちなみに名誉毀損の成立要件は次の通りである。

「ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきものである(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決)」

この判例を基準にすれば、ツイッターやフェイスブックの書き込みで名誉毀損に該当する表現などほとんどないはずだ。もちろん、プライバシーを暴くなどの行為は別だが、相手を罵倒する言葉、たとえば「バカ」、「キチガイ」などと書き込んでも、それが真実と受け取る者はまずいないだろう。

言葉の質が低いことを暗黙の前提として、コミュニケーションをしているからだ。

名誉毀損裁判では、とかくある特定の言葉を捉えて、それが名誉毀損にあたるか否かを審理するがこれは間違っている。どのような脈絡の中で言葉が使われているのかを検証することなしに、名誉毀損に該当するか否かを判断することはできない。

その意味では、「人格障害」という表現は、昨今、橋本元大阪市長が精神科医で評論家の野田正彰氏を「人格障害」と分析したことを訴えた事件で、この表現自体が名誉毀損を構成するものではないと判決されたことは評価できる。

今回の事件では、多くの「殉愛」読者やファンサポーターなどネット民によって、さくら氏の疑惑や百田氏による出版社に対する圧力などを
指摘する声が広がり、いまなお怒りの炎が消えていない。

さくら氏が木村氏を訴えた裁判は、まったく道理がないというのが筆者の考えだ。弁護士も、訴訟を起こさないようにアドバイスすべきだった。

【参考記事】

【ツィッターによる名誉毀損の判例】歌手で作家・八木啓代氏のツィートを裁判所はどう判断したのか、裁判所作成の評価一覧を公開

2016年08月10日 (水曜日)

博報堂事件の焦点のひとつは、CMの放送確認書をめぐる諸問題である。最初に、CMが放送された際にコンピュータが自動的に出力する10桁のCMコードが放送確認書に印字されていないものが多数あることが判明した。

CMの本数にすると1500本を超えている。特に衛星放送のスーパーネットワーク社が際だっていて、メディア黒書の集計によると934本にもなる。

次ぎに、CMコードが非表示になっている放送確認書をさらに詳しく調べたところ、放送確認書そのものが偽装された可能性が極めて高いものがあることが分かった。メディア黒書が検証対象にしているのは、チャンネルMnetの放送確認書である。

まず、下記の放送確認書の①と②に注意してほしい。

■放送確認書のPDF

①は、改めて言うまでもなく放送確認書の発行日である。

次に②に注意してほしい。ここにはCMのタイトルと放送日時が明記されている。その放送日を見ると、2本のCMはいずれも5月30日となっている。

読者は、この異常に気づかないだろうか?

CMが放送された日が30日であるのに、その放送確認書は5月29日に発行されているのだ。

これでは誰がみても、偽装のミスとしか考えられない。偽装作業の中で起こった「ミス」の可能性が高い。少なくともテレビ界で普通に使われている放送確認書とは著しく異なる。

◇住所の誤り

既報したように、チャンネルMnetの放送確認書には、この他にも次のような疑問点がある。放送局の住所が間違っているのだ。放送局の住所は、「港区西新橋2-7-4CJビル」だが、放送確認書では、「西新橋」が抜けている。これも「ミス」の可能性が高い。

この住所の「ミス」は、わたしの手元にあるチャンネルMnetの全ての放送確認書で共通している。

◇実験的に制作した偽装の放送確認書

かりに「放送確認書」が偽装とすれば、社印が押されていることをどう解釈すべきなのだろうか。また、放送確認書の明細部分は、どのような性質のデータなのだろうか。

この点についてパソコンの専門家とアスカの両者を取材したところ、両者ともPC上で簡単に制作(偽装)できるとの見解を示した。

制作の工程は次の通りである。

●全体の作り方
基本ワードをベースに、レイアウトを真似して通常通り文字入力を行うだけ。

●社印の作り方
「フォトショップ」で作成する。

角丸長方形ツールで形を描き、印鑑内容の文字を入力。後は似たフォントを探す。

似たフォントを見つけたら、実際と同じぐらいまで色を薄めていく。

最後に空白部分を透かす為、PNG形式で画像を出力し、印鑑位置に配置する。

次のPDFがアスカが実験的に作成した偽装の放送確認書である。チャンネルMnetの放送確認書を模倣したものである。

■実験的に制作した偽装の放送確認書

ちなみにこうした偽装は、専門家に鑑定を依頼すれば簡単に偽装が判明する。スキャンして、それをくり抜く方法ではないので、印影が全く同じには作れないからだ。

◇「フィラー履歴」の作成法

また、放送確認書の明細部分(「フィラー履歴」と呼ばれるもの)についても次のステップで簡単に作成できることが分かった。

①Visual Studio、Eclipsなどフォーム作成ツールで新規フォームを作成。

②フォームサイズを指定し枠を作成。そのフォーム上に文字ラベル(テキスト表示)、コンボボックス(選択期間、広告主名、選択など)ボタンなど各要素を配置。

③フォーム中心にデータ領域を配置し列要素を定義する

◇テレビ界のV字回復の裏面?

だれがこのような「ミス」の連続としか思えない放送確認書を制作したのか、現段階では、断定できないが、CMを仲介した博報堂に代理店としての責任があることは間違いない。

このような放送確認書が認められるとすれば、1990年代に問題になったCM「間引き」が再び社会問題化するだろう。あるいは水面下で再発している可能性もある。テレビ界は、せっかくV字回復を遂げたにもかかわらず、これからその中身の検証を迫られることになる。

2016年08月09日 (火曜日)

博報堂とアスカコーポレーションの係争で、重要テーマとなっているのが、CMが放送された証となる放送確認書の解釈と偽装(あるいはミス)疑惑である。

この記事の前篇は→博報堂事件、住所を間違った「にせもの」放送確認書の疑惑が浮上

前篇では、チャンネルMnetの放送確認書に記された同放送局の住所が間違っている事実や、3月に放送したCMの放送確認書が2ヶ月もの時間を経たあと、5月末にようやく発行されている事実など、不自然な点を指摘した。

これに対して読者から反応があった。

チャンネルMnetの放送確認書の実物をPFDで公開したところ、匿名の読者から、ある指摘が寄せられた。放送確認書の本記欄の部分、つまりCMの放送時間帯などを記したセクションが、パソコン画面の張り付け、つまり印字ではなく、パソコン上の画像ではないかという指摘である。

本来、放送確認書は印字が原則である。

◇「×」「-」「□」のPC記号が放送確認書の紙面に

疑惑の根拠となるのが、本記欄の右上のマークである。パソコン画面に特有の「×」「-」「□」のマークが確認できる。(次のPDFの中で、→をつけた部分である)

■裏付けの箇所①

■裏付けの箇所②

つまり本記欄の部分と、それ以外の部分が別々に作成され、後に合成された疑惑があるとの指摘である。

もちろん全放送局が放送確認書を作成にするに際して、同じ書式で同じ方法
を採用しているとは限らないので、放送確認書の作成方法だけを理由に、放送確認書そのものが不正と決めつけるわけではない。しかし、少なくともテレビ界が採用してきた放送確認書の作成プロセスと比較すると、かなり変則的だ。

「普通」の放送確認書は、書面全体が印字される。たとえば次に示すTBSテレビの放送確認書のように。

■TBSテレビの「普通」の放送確認書

本記欄のどこにもパソコン画面に特有の「×」「-」「□」のマークは入っていない。

◇電通、ADK、東急エイジェンシーはCMコードを使用

しかし、繰り返しになるが、どのような書式の放送確認書を発行しようが、基本的には放送局の自由である。問題は、10桁のCMコードを付番してコンピューターによりCM「間引き」を監視する「普通」のシステムを採用していない放送局は、広告主の獲得が難しくなる。

自社のCMが「間引き」されるリスクを覚悟で、CMの番組提案書にサインする広告主などいないからだ。例外があるとすれば、視聴率が極めて高い場合ぐらいだろう。

もともと10桁のCMコードは、民放連や広告主協会が中心になって広告主をCM「間引き」から守るために開発したシステムなのである。あくまでも広告主を保護するためにシステムなのだ。

当然、広告主は、新しいシステムが導入された後、CMコードを所有している。衛星放送の場合も含めてCMにCMコードを付番する。CMコードの付番を忘れているCMは受け付けないことが業界の基本原則になっている。

事実、わたしが電通、ADK、それに東急エイジェンシーに衛星放送におけるCMコードの使用の有無を確認したところ、全社とも、使用すると返事している。付番してあるのを確認するという意味だろう。

◇最高検察庁刑事部長・松田昇氏と博報堂の関係

博報堂がかかわったCMで10桁CMコードがない放送確認書が1500本を超えている事実は重大だ。ジャーナリズムによる検証はいうまでもなく、電波を管理する総務省も調査すべきだろう。

わたしは放送番組の内容を理由に「停波」するのは、言論の自由の観点から誤りだと考えているが、巨額の金銭がからんだ経営上の不正行為が明らかになった場合、「停波」も視野に入れて、再発防止策を取るべきだと考えている。
メディア企業だけを、免責にすべきではない。

「メディアへの権力の介入は許さない」

と、いうメディア関係者の主張は誤っている。経済事件を防止するのは、国の役割である。

ところが、博報堂には松田昇氏(最高検察庁刑事部長)が退官後に再就職(広義の天下り)している。博報堂事件は、放送確認書に関する疑惑はもとより、アスカの通販情報誌を制作する際の過去データの流用問題など、さまざまな疑惑を孕んでいるのだからが、当然、刑事事件になる可能性がある。

その時、「後輩」への影響力がある松田昇氏の存在が真相解明の障害にならないのか?

なお、松田氏は、退官後に博報堂以外の企業も転々としており、どのような役割を果たしてきたのかを検証する必要があるだろう。

■裏付け資料(有価証券報告書)

そもそもメディア企業が検察関係者を受け入れること自体が、世界の常識から著しく逸脱しているのだ。おおよそ考えられないことである。

なお、チャンネルMnet側の言い分については、現在、知人の記者が調査しているので、準備ができ次第に紹介したい。

【情報提供窓口】

情報提供は、℡048-464-1413[メディア黒書]まで。