2026年04月09日 (木曜日)

報道を検証する際には、何を報じているかよりも、何を報じていないかに着目する必要がある。新聞研究者の故・新井直之氏が、『ジャーナリズム』(東洋経済新報社)の中で述べたこの提言を参考にして、8日の新聞報道を検証すると、ある具体的な事例が浮かび上がる。
それは4月3日に高市内閣が予備自衛官等兼業特例法案を国会に提出したニュースである。公務員が予備自衛官になるための手続きを簡素化する法案である。予備自衛官とは非常勤の自衛官のことであり、緊急時に召集される。徴兵制度への最初のステップとなる可能性も指摘されている。いわば国民を戦争に動員する制度に関わる法案である。その意味で、ニュースとしての価値は高い。
このニュースを報じたのは、筆者が調べた限りでは、しんぶん赤旗のみだった。念のためにIAでも報道の有無を確認したが、次のような答えが返ってきた。
「大手紙の確定的な記事URLや本文出典は、現時点で一般公開情報としては確認できませんでした」
しんぶん赤旗を除き、日本のメディアはこのニュースを報じていない可能性が高い。
◆「押し紙」収入の試算、中央紙だけで年間約850億円規模
日本の大手メディアが、国策を批判する視点からの報道を控える背景には、何があるのだろうか。どのような可能性が考えられるのだろうか。記者の職能が低下した結果である可能性もあるが、筆者はそれよりも、新聞社の経営に直結した別の要因があると考えている。推測の域を出ないが、新聞社が「押し紙」によって生み出す莫大な収入(独禁法違反)を黙認する国策と引き換えに、政府にとって不都合な報道を控えるという暗黙の了解が存在する可能性も否定できない。
「押し紙」とは、新聞販売店に対して、実際の読者数に予備紙(一般に約2%)を加えた適正部数を超えて配達される部数を指す。たとえば読者数が1000人の販売店であれば、予備紙は20部であり、合計1020部が適正な供給量となる。それを超える部数は、原則として「押し紙」とされる。
近年の「押し紙」裁判で明らかになった割合は、中央紙の場合、おおむね3割から5割とされている。
「押し紙」による新聞社の販売収入は、一般に想像されている以上に大きい。2025年8月時点で、中央紙(朝日・毎日・読売・産経・日経)の発行部数は約1180万部とされている。
仮に「押し紙」の割合を20%とすると、約236万部が「押し紙」。新聞1部あたりの卸価格を月額1500円(朝刊単独版と仮定)とすれば、1か月あたりの「押し紙」収入は約35億4000万円、年間では約424億8000万円に達する。
もし「押し紙」率が40%に達すれば、年間収入は約850億円規模となる。新聞社が販売店に対して、かなり高額な補助金を支給しているとはいえ、部数の水増しで紙面広告の収入も増やしているので、新聞社にとって大きな収益源となっている。
なお、この試算は控えめな前提に基づいている。朝夕刊セット版の場合、卸価格は2000円前後となり、収入規模はさらに拡大する。以上の点から、この試算が極端に誇張されているとは言えないだろう。
◆新聞社の収益構造と報道
このように、新聞社の収益構造が報道内容に影響を及ぼしている可能性は否定できない。記者が高い職能を備えていたとしても、新聞は個人の発信ではなく、企業活動の一部であるため、記者個人の見解が必ずしも紙面に反映されるとは限らない。企業として存続する以上、国策を強く批判する報道には一定の制約が生じる可能性がある。
もちろん新聞はジャーナリズムであり、表向きには「反権力」の立場を掲げている。しかし現実には、重要な局面において政府との関係性を無視できない側面もある。
一見すると逆説的だが、中国のCGTNによる日本報道の方が、日本の軍事大国化などの国策に対してより批判的な論調を示している。
参考サイト:CGTN https://japanese.cri.cn/
報道を検証する際には、何を報じているかよりも、何を報じていないかに着目する必用がある。新聞研究者の故・新井直之氏が、『ジャーナリズム』(東洋経済新報社)の中で述べたこの提言を参考にして、8日の新聞報道を検証すると、ある具体的な事例が浮上する。
それは4月3日に高市内閣が予備自衛官等兼業特例法案を国会に提出したニュースである。公務員が予備自衛官になるための手続きを簡素化する法案である。予備自衛官とは、非常勤の自衛官のことで、緊急時に召集される。徴兵制度への最初のステップである可能性が高い。いわば国民を戦争に参戦させるための法案である。
その意味でニュースとしての価値は高い。
このニュースを報じたのは、わたしが調べた限りでは、しんぶん赤旗のみだった。念のためにIAでも報道の有無を確認してみたが、次のような答えが返ってきた。
「大手紙の確定的な記事URLや本文出典は、現時点で一般公開情報としては確認できませんでした」
しんぶん赤旗を除いて、日本のメディアはこのニュースを報じていない可能性が高い。
◆「押し紙」収入の試算、中央紙だけで年間・約850億円規模
日本の大手メディアが、国策を批判する視点からの報道を控える背景になにがあるのだろうか? どのような可能性が想定できるのだろうか。記者の職能が劣化した結果である可能性もあるが、筆者は、それよりも新聞社経営に直結した客観的な別の原因があるように思う。推測の範囲をでないが、新聞社が「押し紙」により生む莫大な不正収入を黙認する国策と引き換えに、政府にとって致命的な報道は控える暗黙の了解がある可能性が高い。
「押し紙」とは、新聞販売店の「読者数+2%の予備紙」を超えた超過部数を意味する。たとえばある販売店で、読者数が1000人のケースでは、予備紙が20部。総計の1020部が合理的な部数で、それを超える部数は、原則的にすべて「押し紙」である。
最近の「押し紙」裁判で明らかになった「押し紙」の割合は、中央紙の場合は、3割から5割である。
「押し紙」による新聞社の不正な販売収入は、一般に想像されている以上に巨額である。2025年8月時点で、中央紙(朝日・毎日・読売・産経・日経)の発行部数は約1180万部とされている。
仮に「押し紙」の割合を20%とすると、約236万部が実配部数を超える新聞となる。新聞1部あたりの卸価格を月額1500円(朝刊単独版と仮定)とすれば、1か月あたりの「押し紙」販売収入は約35億4000万円、年間では約424億8000万円に達する。
もし「押し紙」率が40%に及べば、年間収入は約850億円規模となる。販売店に対して各種補助金が支出されているとはいえ、新聞社が莫大な「純利益」を得ている構図に変わりはない。
しかも、この試算は控えめな前提に基づいている。朝・夕刊セット版の場合、卸価格は2000円前後となり、収入規模はさらに膨らむ。以上の点から、筆者の試算が誇張であるとは言えないだろう。
◆新聞社の客観的な収益構造と報道
このように新聞社の客観的な収益構造が、報道内容に影響を及ぼしている可能性が高い。記者がいくら高い職能の備えていても、新聞は記者個人のブログではないので、紙面には反映されない。企業として新聞社が存続するためには、国策を徹底的に批判する視点を回避する必用がある。
もちろん新聞はジャーナリズムであるから、表向きは「反権力」の旗を掲げているが、肝心の部分では、政府と「取引」せざるを得ないのである。
ある意味ではおかしな現象だが、たとえば中国のCGTVによる日本報道の方が、自民党の国策を鋭く指摘する傾向がある。
2026年04月08日 (水曜日)

巨大メディアが権力構造の中に組み込まれて、広報やプロパガンダの役割を果たしている実態は、日本以外の西側諸国にもある。米国に本部を置く独立系メディアGrayzonenewsは、4月7日、「BBCのイラン担当・ベテラン記者が、反体制活動家であることが明らかになった」と題する記事を掲載した。
BBCのベテラン記者が、イランへの核攻撃を容認する発言を報じたことで激しい非難を浴びた後、CIAによって設立されたプロパガンダ・ネットワークを出発点としてキャリアを築いた、熱心な政権交代活動家であることが明らかになった。BBCの編集プロセスには、依然として深刻な疑問が残されている。
物議をかもした記事はゴンチェ・ハビビアザド記者が執筆してもので、4月6日に掲載された。その中に、イラン人男性とされる人物の次のコメントが掲載された。
「エネルギーインフラへの攻撃、原子爆弾の使用、あるいはイランの壊滅について——私の率直な反応としては、これらすべてに異存はない。」
3時間後、騒動が拡大する中、この引用文は突然BBCの記事から削除された。代わりに、イラン政府に対する、はるかに穏当で物議を醸しにくい批判が掲載された。この一件は、BBCの編集プロセスだけでなく、当該記事の執筆者の背景や動機についても深刻な疑問を投げかけている。
ゴンチェ・ハビビアザド記者にいついて、は次のように記述している。
「わずか27歳にして、ゴンチェ・ハビビアザドは、多くの英国人ジャーナリストが一生かけても達成できないほどの実績をすでに上げている。現場入りからわずか4年で、彼女はBBCペルシャ語版の「シニア・レポーター」という地位に昇進した。BBCの求人情報によれば、この権威ある影響力の大きい役職には、「ジャーナリズムにおける最低8〜10年の経験」が求められる。
イラン政府の公費で4年間の高等教育を受けた後、ハビビアザドは2020年にテヘラン大学を卒業し、直ちに国外の組織と関係を持つようになった。2021年10月、彼女はラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティ(RFE/RL)にインターンとして採用された。同局は、アレン・ダレスによって設立されたCIAのプロパガンダ・プロジェクトに起源を持ち、1970年代に名目上はCIAから分離している。プラハのスタジオに在籍中、彼女のLinkedInページには、ワシントンに拠点を置くペルシャ語メディアであるRFE/RL傘下の「ラジオ・ファルダ」でリモート勤務を行いながら、「『隠れた障害』に関する記事」などの調査に携わったと記されている。
RFE/RLでのインターンシップを開始したのと同じ月、ハビビアザドは、海外在住の体制変革活動家によって設立された別のメディア、マルジャンTVとも関わるようになった。その後1年半にわたり、同局およびその子会社であるマノトTVのソーシャルメディア向けコンテンツ制作に従事した。イラン人学者シャハブ・エスファンディアリーは、この放送局について、「20世紀最悪の独裁政権の一つであるパフラヴィー王朝を称賛することを使命とする親王政派ネットワーク」と評している。」■出典
◆巨大メディアの予算はどこから?
日本に限らず巨大メディアは、自国の公権力機関と水面下で癒着していることが多々ある。公権力機関にとって、世論の誘導は自分たちの政策を国民に浸透させる上で髙い利用価値があるからのほかならない。何を媒体として両者が癒着するのかは、それぞれの国で特性がある。BBCの場合は、国民から受信料を強制的に徴収するために国が作った法体系である。国際放送に関しては、政府資金も投入されている。
BBCを過信している日本人は多いが、経営の中身を再検証する必用がある。

西側メディアはほとんど報じていないが、石油取引をドル以外の通貨で行う取引が急浮上している。石油の取引は伝統的にドルで行われてきた。この慣行は「ペトロダラー体制」と呼ばれ、1970年代にアメリカとサウジアラビアの間で成立した、安全保障と石油取引に関する合意を背景に形成されたとされる。米国が軍事支援を行う見返りに、石油のドル建て決済を採用するという合意である。
石油は全世界で使用されるうえ、石油によって生まれた利益がドル建てで投資などに回される事情もあり、米国経済に大きな影響を及ぼしてきた。ところが最近、非西側諸国において、ドル以外の通貨による石油取引が徐々に広がっている。
たとえば、ロシアのシンクタンク系メディア「Russian Pivot」は、インドの状況について次のように報告している。石油や液化天然ガス(LNG)の取引の「約96%が自国通貨で行われている」というのだ。重要部分を引用しておこう。
「2026年3月、インドによるロシア産原油の輸入は日量約206万バレルに急増し、前月比でほぼ倍増、過去最高水準に迫った。この増加は、インド全体の原油輸入が減少する中で起きており、中東での供給ショックによる意図的な代替が進んでいることを示している。
インドの原油輸入のほぼ半分が通過するホルムズ海峡を経由する供給の混乱は、ニューデリーに迅速な戦略見直しを迫った。従来日量約100万バレルを供給していたイラクからの供給は途絶し、サウジアラビアやクウェートからの供給も大幅に減少した。インドの精製設備に適合するロシアのウラル原油は、最も効率的な代替として浮上した。
原油以外でも、ロシアからインドへの液化天然ガス(LNG)の直接輸出再開に向けた協議が進んでおり、エネルギー面での相互依存はさらに深まっている。ロイターによれば、最終承認を経て数週間以内に合意が成立する可能性があり、ウクライナ紛争以降初めて直接的なLNG輸入が再開される見通しである。
特筆すべきは、すでにこの貿易の約96%が自国通貨で行われている点であり、ドルに依存しない金融メカニズムへの構造的な移行が進んでいることを示している。」
最近、SNS上には石油取引の決済通貨が、ドル以外に移行しはじめているという情報がかなりあるが、一応の裏付けはある。BRICSが独自の通貨を摸索していることは、西側メディアも報じている。■出典
◆◆
米国がベネズエラやイランといったロシアや中国に近い産油国に軍事介入した背景にも、これらの国の石油をドル建ての取り引きに留めたいという思惑があった可能性が高い。高市首相が将来的に米国から石油を買うと明言したことも整合する。
ベネズエラとイランへの軍事進攻は、トランプ大統領個人の思想や信条が招いたものではない。米国財界の要望である。
写真出典:時事通信

真村訴訟に端を発した一連の事件について記述すれば、際限がない。連載「報道と人権」で7回にわたって取り上げた裁判のほかにも、さまざまな裁判が派生して起きている。
しかも、真村事件に関連したほとんどの裁判で、喜田村洋一・自由人権協会代表理事が読売の代理人として登場した。喜田村弁護士は、法廷が開かれるたびに東京から福岡へ足を運んだ。その情熱は並大抵ではない。
筆者は、護憲派の自由人権協会を代表する人物が、改憲派の読売に対して誠心誠意を尽くし、「押し紙」は一部も存在しないと繰り返す姿に違和感を覚えた。喜田村弁護士がどのような思想と心情の持ち主なのか、好奇心を刺激された。
◆◆
喜田村弁護士は、過去にどのような裁判に関わってきたのだろうか。よく知られている例としては、1980年代に問題となった薬害エイズ事件がある。これは、加熱処理をしなかった血液凝固因子製剤を治療に使用したことにより、多数のHIV感染者やエイズ患者を生み出した事件である。
非加熱製剤によるHIV感染の薬害被害は世界的に発生したが、日本では全血友病患者の約4割にあたる1800人がHIVに感染し、そのうち700人以上が死亡したといわれている。
起訴されたのは、帝京大学医学部附属病院第一内科の責任者だった安部英、ミドリ十字の代表取締役であった松下廉蔵・須山忠和・川野武彦、そして厚生省官僚だった松村明仁である。
一審判決では、ミドリ十字の3人に実刑判決が、松村明仁に執行猶予付きの有罪判決が下されたが、安部は無罪だった。安部の代理人を務めたのが、喜田村弁護士と、はやり自由人権協会の弘中淳一郎弁護士である。
弘中弁護士は、消費者金融の武富士がフリーランス・ジャーナリストに高額訴訟を起こした際にも、武富士の代理人を務めた。巷では、弘中氏を「無罪請負人」と評価する声もあるが、同時に「訴訟ビジネス」ではないかという批判もある。裁判は、武富士の敗訴だった。
喜田村弁護士や弘中弁護士は、ロス疑惑事件の三浦和義氏を無罪に導いたことでもよく知られている。事件の詳細は省略するが、三浦は、事件後に米国領サイパンで殺人罪及び殺人の共謀罪の容疑で逮捕された。その後、1981年に獄中で自殺した。この事件は、日米で見解が異なり再検証が必要なのである。
◆◆
2025年に読売が経済誌『ZAITEN』を提訴した事件でも、喜田村弁護士が読売の代理人として登場している。現在の権力機構と新聞社を巨大でグレーな資金で結び付けている「押し紙」や、読売の販売政策について、喜田村洋一・自由人権協会代表理事が、法廷どのような見解を示すのか、注目したい。ジャーナリズムは、それを記録しておくべきだろう。(終)

読売新聞が筆者に対して3件の裁判を起こしたほぼ同じ時期に、読売新聞が関わった別の裁判が進行していた。原告は真村さんである。
既に述べたように、YC広川の真村久三さんが起こした地位保全裁判は、真村さんの完全勝訴であった。判決は、2007年12月に最高裁で確定した。
ところがその半年後の2008年7月、読売は、YC広川との契約期間が満了したことを理由に、同店を改廃した。契約満了による改廃であるが、販売店には家業的側面があるなどの理由から、正当な改廃を行なうには、店主側が新聞社との信頼関係を著しく破壊し、商契約の存続が困難となる状況を生み出したことを示す事実が必要とされる。
したがって、真村訴訟の判決確定後から改廃に至るまでの約半年の間に、真村さんが不祥事に該当する行為を行ったか否かが審理の対象となる。
当然、真村さんとしてはYC広川の改廃を承服できなかった。そこで再び読売に対して地位保全裁判を起こした。この裁判は第2次真村訴訟と呼ばれている。前訴が第1次真村訴訟である。
ちなみに裁判にはいくつかの形式があり、その代表的なものが仮処分の申立てと本訴である。周知のように、仮処分の申立ては緊急を要する場合に行われ、決定も短期間で下される。敗訴した側に不服があれば、本訴で争うことになる。第2次真村訴訟もこの形式をとった。真村さんは、まず仮処分を申し立て、その後、本訴を提起したのである。
この裁判でも、引き続き喜田村洋一・自由人権協会代表理事が読売の代理人として裁判闘争の先頭に立った。舞台が福岡地裁であったため、口頭弁論のたびに東京から駆けつける熱心さであった。
◆間接強制金の累積、約3600万円
仮処分の申立てにおいて福岡地裁は、真村さんの申立てを認め、その地位を保全した。裁判所は読売に対し、YC広川への新聞供給を再開するよう命じた。ところが読売は、この命令に従わなかった。その結果、裁判所は、読売に対して1日につき3万円の間接強制金(制裁金)の支払いを命じた。
その後、読売は仮処分に対して異議を申し立て、さらに福岡高裁へ抗告し、最高裁に特別抗告も行った。しかし、裁判所の決定は覆らなかった。この間、間接強制金は累積し、約3600万円に達した。
仮処分申立ての審尋と並行して、本訴の審理も進んだ。
読売は、改廃理由としてさまざまな主張を行った。第1次真村訴訟で真村さんの地位が保全されている以上、その後改廃に至るまでの約7カ月の間に、真村さんが読売に対して重大な信義違反を犯していなければ、地位は維持されると考えるのが自然である。
◆喜田村ら、黒薮が「外部メディア等と連携して・・・」
喜田村らが改廃の正当理由として主張した項目の一つに、真村さんが「外部メディア等と連携して」読売を攻撃したというものがある。福岡地裁判決には、喜田村らの主張として次の記述がある。
自称フリージャーナリストの黒藪哲也(以下、「黒藪」という。)《注:「黒藪哲也」は誤字で、正しくは、「黒薮哲哉」》は、自ら管理・運営するウェブサイト「新聞販売黒書」で、被告に対して不当な誹謗中傷を繰り返す一方、被告と対立しているという観点から、原告を支援することを明言している。原告は、前訴係争中に黒薮と知り合い、黒藪や原告弁護団と協力して、被告を攻撃する運動を展開している。
原告の関わる裁判の経過等は,直ちに「新聞販売黒書」や「My News Japan」に掲載される。また,原告は,黒藪がコーディネーターや司会を務めたシンポジウムや報告会に積極的に参加して発言もしている。
取引の一方当事者が,その相手方当事者を誹謗中傷して攻撃する運動に積極的に協力し,しかも相手方当事者の営業秘密を漏洩しながら,その契約当事者としての地位を求めたり,裁判や攻撃・中傷を止めてほしければ巨額の金銭を支払うよう求めたりすることは,一企業に対する脅迫に他ならない。このような行為は被告との信頼関係を根底から破壊するものである。
喜田村らは「被告と対立しているという観点から、原告を支援することを明言している。」と主張しているが、これは浅はかな解釈である。筆者が真村さんを支援したのは、その主張に正当性があったからにほかならない。読売の販売政策に道理がないからである。
そもそも、ジャーナリズムに中立などあり得ない。ジャーナリズムの評価は、究極のところ主張が正しいかどうかであり、その評価は将来、歴史に委ねるよりほかにない。それゆえに記録し、それを保存することが決定的に大事なのであるが、喜田村弁護士らは、このあたりの原理が分かっていない。
ちなみに筆者は、真村訴訟に関しては、少なくとも20年は検証すると当時から繰り返し公言してきた。
◆真村さんの自宅を差し押さえ
判決は2011年5月15日に言い渡された。結果は真村さんの敗訴であった。控訴審でも控訴は棄却され、その後、最高裁で判決が確定した。
これにより読売は、真村さんに対し累積した約3600万円の間接強制金の支払いを請求した。しかし、真村さんは店舗の維持や生活費にこれを充てていたため、返済不能となった。
そこで読売は、真村さんの自宅を差し押さえた。不動産仮差押命令申立書の債務者代理人弁護士として、次の面々が名を連ねている。(冒頭の写真を参照)
喜田村洋一
近藤真
掘哲郎
住野武史
塩飽梨栄
◆ジャニーズの性加害問題
なお、喜田村弁護士は評価できる仕事もしている。例えば、ジャニーズの性加害問題では被害者のために大きな役割を果たした。その詳細を記した『報道しないメディア』(岩波ブックレット)なども出版している。多くのメディア研究者とも良好な関係にあるようだ。
こうした状況を踏まえるとき、筆者には喜田村弁護士の思想の源流がどこにあるのかよく分からない。どのような信念や思想を行動規範としている人なのか、理解できない。
※なお、真村さんと読売の間接強制金をめぐる係争は、2026年に入って新たな進展があったため、近く報告する予定である。

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士 江上武幸 2026年(令和8年)4月2日
NHK朝ドラの「ばけばけ」の放送が3月で終わりました。映画「国宝」の主人公役の吉沢亮が脇役で出演しているので、ファンの妻はビデオに毎日録画していました。
その録画を何気なく見ていたら、「日に日に世界が悪くなる 気のせいか そうじゃない」という歌が流れてきました。今の世相にぴったりの歌詞とメロディーに思わず耳を傾けました。この曲を作詞・作曲した佐藤さんカップルはもちろんですが、主題歌に選んだ朝ドラの制作陣に拍手を送りたいです。
以前、吉田拓郎の「落陽」(1966年作曲)の「この国ときたら 賭けるものなどないさ だからこうして漂うだけ」という歌詞と、さだまさしの「風に立つライオン」(1994年作曲)の「やはり僕たちの国は残念だけれど何か大切な処で道を間違えたようですね」という歌詞を紹介したことがあります。
「ばけばけ」は「野垂れ死ぬかもしれないね」と語りあったあと、「わからぬまま家を出て帰る場所などとうに忘れた 君とふたり歩くだけ」という歌詞が続きます。
このような歌を聞くと、アーティストはいち早くメタンガスをかぎとり、ガス爆発の危険を知らせる炭鉱のカナリアだとつくづく思います。
* 日本はこの30年で若者の夢をすっかり奪ってしまいました。非正規雇用・未婚・少子化・振り込め詐欺などの寒々とした言葉にあふれる社会になりました。その責任は戦後80年におよぶアメリカ支配を脱しきれなかった日本人の不甲斐なさにありますが、今回のイラン戦争でアメリカがいかに恐ろしい国であるかはっきりしました。
日米合同委員会によるアメリカの日本支配に服従した官僚と政治家によって、日本の政治は歪められてきました。しかし、アメリカの信頼が大きくゆらぎ始めた現在、これからは非同盟・中立の国際連帯が世界の趨勢を示す時代が来るようになると思われます。日本の若者世代が他国の若者世代と一致協力して、国際法と各国憲法の人類史的意義を確認し、揺るぎない法の支配の確立を目指して活躍されることを願っております。
司法の独立と裁判官の独立は、法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)が共に協力して堅持すべき憲法上の大原則です。
しかし、2000年代初頭の司法改革関連法案の成立以降、急速に変化した弁護士会を取り巻く状況をみると、以前のように弁護士会が司法の独立と裁判官の独立を支える役割の一端を担い続けることができるかどうか心配になってきます。
* ロースクールの導入を始めとする司法制度改革関連法案については、弁護士内部の強い反対意見にもかかわらず、最終的には裁判所・検察庁・法務省と足並みをそろえて賛成に回ることになりました。そのことは、2004年(平成16年)6月11日付の日本弁護士会連合会長梶谷剛氏の談話からも伺えます。
* 2001年の司法制度改革審議会最終意見書提出時の12人の委員の中に弁護士3名の名前があります。元広島高等裁判所長官と元名古屋高等検察庁検事長、それに元日弁連会長の中坊公平氏です。文化人からは作家の曽野綾子氏、労働界からは連合副会長の高木剛氏の名前があります。実質的な弁護士会代表の中坊弁護士についてウィキペディアでは「法科大学院や裁判員制度の導入に尽力した弁護士である。」と紹介されています。司法制度改革委員会で中坊氏が果たした役割については、住宅金融債権管理機構社長時代の15億円詐欺疑惑で告発され、最終的には大阪弁護士会を退会されていることから、おのずと推察することができます。
2002年から弁護士事務所の法人化が始まり、弁護士報酬の自由化・宣伝広告の自由化が一気に進みました。
法人化のメリットとして税負担の軽減、支店展開による業務拡大、組織化・共同化による大規模な案件への対応力の向上などがあげられていますが、節税を図ることや事業規模を拡大することが社会正義の実現と人権擁護を使命とする日本の弁護士業務にとって何故必要なのか、具体的な説明はなされていません。
日本の弁護士会には社会正義の実現と人権擁護のためならば手弁当で駆けつけて共同して事件の解決・裁判にあたる歴史と風土があります。当番弁護士、国選弁護、犯罪被害者支援、生活保護申請補助などの公益活動に限らず、四日市ぜんそく、イタイイタイ病、新潟水俣病等の公害訴訟、予防接種、B型肝炎、アスベスト被害訴訟など数え上げればきりがありません。
弁護士事務所の法人化や報酬自由化、宣伝広告の解禁が弁護士会のそれらの活動を支援することになるのか、はなはだ疑問です。
先の投稿に、「弁護士人口の大幅増大は、司法の一翼を担う弁護士会の社会的・政治的影響力の低下を目的としたものではないかという疑いがあります。」と記載しましたが、その思いは益々強くなっています。また、後述のように学部や法科大学院、司法修習時代の多額の貸与型奨学金の返済のために新人弁護士の7割が東京・大阪の大手法律事務所を中心に就職するという異常事態を目前にすると、日本の弁護士制度自体の崩壊をも視野に置いていたのではないかとの疑いすら感じるようになりました。
* ロースクールは地方の大学院を中心に74校から34校に減少しました。司法研修所29期の同窓会で任官組から法科大学院の導入は裁判官・検事の天下り先の確保がひとつの目的だったと聞いてショックを受けたことを思い出します。裁判官や検事の退職後の天下り先は公証役場くらいしかないという愚痴はよく聞いていましたが、まさか天下り先の確保のために法科大学院を設置することにしたとの発言を聞くとは驚きでした。法科大学院教授の肩書は弁護士にとっても魅力ある肩書です。法科大学院に地元弁護士会の弁護士が教授として採用されれば、法科大学院の設置に反対する弁護士会の意見はおのずと小さくならざるを得ません。弁護士が裁判官・調停員に任命される弁護士任官制度の導入によって判・検交流に反対する弁護士会の声が小さくなるのも同じです。
弁護士事務所の法人化と歩調を一にして、報酬の自由化や宣伝・広告の自由化が認められ、過払い金返還請求やB型肝炎給付金請求等の宣伝をテレビ等で見かけるようになりました。宣伝広告をしている事務所がこれらの事件の解決に尽力した事務所かどうかは知りませんが、聞いたことのない横文字の事務所名です。
ホームページにも、相談料無料・着手金無料・完全成功報酬などの文字が躍っています。多くの弁護士はこれまでどおり旧来の日弁連報酬基準を採用していますので、弁護士報酬を自由化することや宣伝・広告を自由化することが何故弁護士間の競争の促進につながるのか、市民が質の高いリーガルサービスを受けられることにつながるのか、一向に理解できません。
最近、債務整理・自己破産の相談が増えてきています。ネット広告を見て大手法律事務所に相談したが、弁護士費用だけ取られて解決しないまま辞任されてしまったがどうしたらよいだろうかという相談です。最初から近場の弁護士に何故相談しなかったのか聞いてみたところ、ネットの方が気軽に相談できるからとのことでした。
法テラスの利用は出来ない代わりに、弁護料は分割払いが可能ということで債務整理の委任契約を結んでいます。弁護料の分割払いが終わってから債権者に対する支払いが始まる仕組みになっています。債権者は5社あるのに分割支払可能金額が少ないため、3社とだけ示談し残りの2社は自分で解決するように言われたという例もあります。
借りたものは返さなければならないという思い込みと、破産という言葉に抵抗感をもつ多重債務者の弱みにつけ込み、弁護士費用を得ることだけを目的に受任したとしか考えられません。
相談者が持参した債権者から取立てを依頼された弁護士法人の受任通知書にも驚かされます。写真(記事の冒頭)を掲載しておきますのでご覧ください。原色の毒々しい封書の表に「重要」・「大至急ご確認ください」・「緊急告知」といった大きな文字が書かれています。郵便配達員には配達先の住人が多重債務者であることが一目瞭然です。プライバシーの重大な侵害行為です。これまでこのような受任通知書は見たことがありません。
奨学金返済のためにキャバクラで夜のアルバイトをしているという女子大生が相談に来たことがあります。東京の法律事務所から300万円の慰謝料を請求する書面が届いたが、どのようにしたら良いかという相談です。馴染みの客から店外デートに誘われたところ、その奥さんから不貞行為の慰謝料として300万円を支払うよう請求されたというのです。書面に記載された法律事務所のホームページを見たところ、「不倫慰謝料請求徹底的に戦います。相談無料・完全成功報酬制度」と書いてありました。相談料・着手金無料の文句で顧客を誘引し、法律事務所からの請求書に驚いていくばくかの金員を払ってくれればいいし、払われなくとも裁判まではしないという考えが見え見えでした。アメリカのアンビュランスローヤーより品位に欠ける商法です。
弁護士人口が増大した結果、若手弁護士の就職先がなかなか見つからないという話を聞いています。2002年に発行された東京弁護士会所属の鈴木仁志弁護士著の「司法占領」(講談社刊)に、ロースクール在学中と司法修習期間中の学費・生活費のため、1000万もの貸与型奨学金(借金)を抱えて弁護士になる若者がいることを知り、驚きました。
私たちの時代は、裁判官・検事・弁護士志望のいずれであっても、司法修習期間中(2年間)は国から給料が支払われました。国民の税金で2年間の法律の勉強と生活ができるのですから、弁護士になって無償であるいは安い金額で社会に奉仕することは、弁護士の当然の義務だという意識がありました。
当時の弁護士の初任給は裁判官・検事の初任給より高かったように思います。私たちの世代の弁護士が裁判官・検事と対等に付き合うことができたのは、弁護士の収入が裁判官・検事よりよかったことが背景にあったことも一因ではないかと思います。
法科大学院導入後は、司法試験合格者数は大幅に増えましたが、裁判官・検事の数は横ばいのままです。このことは、法科大学院による法曹人口の増大は、初めから弁護士人口の増大が目的であったことがわかります。
弁護士人口が増大すると必然的に競争が始まります。医師の場合は、患者は自宅近所のかかりつけ病院や専門病院に入通院することになり、診療報酬も一律ですので全国的な競争はありません。
しかし、弁護士の場合はプライバシーにかかわる相談が主であることから、知り合いの弁護士が近くにいなければ遠方の法律事務所であってもそちらに相談しがちです。
相談料無料・着手金無料で相談者を獲得する事務所は、遠方からの相談の受け入れや受任体制を整えていますので、電話相談さえあれば受任までの支障はありません。
以前は、遠方からの相談は旅費・日当の問題がありますので、相談者の近くの弁護士を紹介するなどして受任をお断りしていたのですが、通信手段が発達した現在、電話やFAX、WEB、メールなどによって裁判を進めることができるようになり、遠方に出かける必要がなくなりました。そのため、以前にもまして東京・大阪・名古屋を中心とする大都市に法律事務所が集中するようになりました。
1000万円もの借金を抱えた新人弁護士に、社会正義の実現と基本的人権の保護に貢献することを求めることが、現実問題として可能でしょうか。
新人弁護士が年収1000万といわれる大手法律事務所や高額の収入が得られる見込みのある大都市の法律事務所を就職先に選ぶのは仕方がないことです。2024年の新人弁護士1203人のうち、約7割の859人が東京と大阪の事務所に就職したそうです。全国52の弁護士会のうち16の単位弁護士会は新規登録がゼロもしくは1名だったそうです。早晩、地方の単位会は消滅の運命をたどることになります。そうなればわが国の弁護士制度全体が崩壊します。
このような状況に置かれている弁護士や弁護士会が「司法の独立・裁判官の独立」に目を向けようとしても、現実には非常にむずかしいことです。
世界第2位だった経済大国日本は、非正規雇用・未婚・少子化などの寒々とした言葉があふれる国に転落してしまいました。
上から下まで何故こんなにダメな国になってしまったのか。国際法を無視し、トマホークの誤爆により児童ら170人以上を殺したアメリカの大統領に向かって「世界中に平和と繁栄をもたらせられるのはあなただけ」と媚びるような女性首相が何故誕生したのか……
日本国憲法第9条で戦争放棄と武力の行使を禁じてくれているおかげで、アメリカから参戦を求められても、日本は首の皮一枚で戦争に巻き込まれずにすんでいます。憲法前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と宣言しています。第99条は、立法・行政・司法の三権を司る為政者に対し、憲法を尊重し擁護する義務を課しています。
従って、裁判官が憲法を堅持する姿勢さえ貫くことができれば、自衛隊員がアメリカ軍の手先となって戦場に出向き、人を殺したり殺されたりすることは避けることができます。裁判官による法の支配を側面から支えるのは検事・弁護士らの仕事です。司法界の外から応援するのはジャーナリストの仕事です。
「司法の独立・裁判官の独立」を外から応援する新聞・テレビの記者や報道マンの役割は、ネット社会の到来によっても小さくなることはありません。しがらみのない若い世代の人達が、本来の使命である権力監視と批判および国民の知る権利の保障のために胸を張って仕事ができるように、一刻も早く恥ずべき押し紙をなくすよう改めて新聞社経営陣に求めます。
まとまりのない投稿になりましたが、引き続き西日本新聞押し紙訴訟および毎日新聞押し紙訴訟の行方に注目いただければ幸いです。
* 最後に、古賀茂明(元)通産官僚、前川喜平(元)文部科学事務次官、孫崎享(元)外交官、岡口基一(元)裁判官ら官僚OBの方達の活躍を祈念しています。

2009年7月、読売新聞は、筆者が『週刊新潮』(2009年6月11日号)に執筆した記事に対し、5500万円の金銭支払いを求める裁判を起こした。読売からの3件目の裁判である。
この裁判でも、やはり喜田村洋一・自由人権協会代表理事が読売の代理人として、裁判闘争の先頭に立った。
係争になった記事のタイトルは、「『新聞業界』最大のタブー『押し紙』を斬る」であった。滋賀県のポスティング会社(チラシの全戸配布業者)が、大津市など滋賀県の主要都市を対象として実施した大規模な「押し紙」実態調査の結果を紹介したものである。
それによると、読売の「押し紙」率は18.4%であった。これは他社と比較するとかなり低い数字である。しかし筆者は、全国的に見れば30〜40%はある可能性を指摘した。さらに、「押し紙」による不正収入が、一社平均(朝日、読売、毎日、産経)で年間360億円程度になるとする試算も示した。
これに対し、喜田村弁護士は訴状の中で次のように指摘した。
「本件記事は、原告らが日本全国で発行する『読売新聞』の発行部数の30%〜40%は、実際には読者に販売されない『押し紙』であり、原告らは、これにより年間約360億円もの不正な収入をあげ、これ以外にも紙面広告の収入を不正に取得していると報じるものであるから、これが原告らの社会的評価を低下させることは明らかである。」
読売は、自社には1部の「押し紙」も存在しないと主張して、高額訴訟を提起したのである。
結論を先に言えば、この3件目の裁判は読売の勝訴となった。東京地裁は385万円の支払いを筆者と新潮社に命じ、控訴審でも読売が勝訴した。
その結果、読売には1部の「押し紙」も存在しないという見解が、司法判断として示されたことになる。
◆「読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません」
実際、東京地裁で行われた尋問においても、読売は自社に「押し紙」は一部も存在しないという主張を展開した。参考までに、宮本友丘専務(当時)が「押し紙」裁判の法廷で行った証言(2010年11月16日、東京地裁)を紹介しておこう。喜田村弁護士の質問に答えるかたちで、次のように証言している。
喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。
宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。
喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。
宮本:はい。
喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。
宮本:はい。
◆同業者からの言論抑圧
以上述べたように、読売と喜田村弁護士らは筆者に対し、2008年から2009年にかけての約1年半の間に3件の裁判を起こし、約8000万円の支払いを求めたのである。筆者は、3件の裁判に巻き込まれ、仕事の計画も大幅に変更せざるを得なかった。
元々、筆者はラテンアメリカの社会運動を取材をしていたのだが、2007年に真村訴訟で読売の「押し紙」政策が認定されたのを「押し紙」取材の到達的にして、原点に戻る予定だった。当時はラテンアメリカで次々と左派政権が誕生していた時代で、ニカラグア取材を計画していた。ところが、読売から裁判攻勢をかけられ、それが実現できなくなった。
出版人である同業者からこのような仕打ちを受け、しかも、その先頭に立った人物が人権擁護団体である自由人権協会を代表する人物である事実に、筆者は強い失望を覚えた。出版労連の支援はあったが、週刊誌や月刊誌は、読売の前で沈黙してしまった。「押し紙」を報じなくなったのだ。唯一の味方は書籍出版だった。
しかし、鬱蒼とした日々に追い込まれたのは筆者だけではなかった。販売店主としての地位を保全されたはずの真村久三さんの身の上にも、新たな災難が降りかかってきたのである。そして、その先頭に立ったのがはやり喜田村弁護士らであった。
すべて記録済みなので、順を追って紹介しよう。(続く)

読売新聞の江崎徹志法務室長が筆者に対して著作権裁判を起こしてから、2週間後のことだった。筆者は自宅のポストに特別送達の通知が投函されているのを見つけた。そこで郵便局へ足を運び、封書を受け取った。封書には埼玉地裁の文字があった。開封すると、訴状が入っていた。
訴状の原告は、読売の江崎法務室長を含む読売の会社員3人で、1法人・3個人によるものだった。訴状を執筆したのは、喜田村洋一・自由人権協会代表理事である。請求額は2230万円で、この中には喜田村弁護士に対する弁護料200万円も含まれていた。最初に頭をよぎったのは、仮に敗訴すれば金銭面で破産に追い込まれるのではないかという不安だった。
◆「窃盗」という表現
読売が訴えたのは、真村裁判の福岡高裁判決が読売の「押し紙」政策を認定した後に発生したある事件について、筆者が「メディア黒書」に掲載した記事だった。
すでに述べたように、真村裁判の判例が確立した後、「押し紙」に苦しんでいたYCの店主らが、問題解決を求めて江上武幸弁護士に相談するようになった。
【連載4】で紹介したように、YC久留米文化センター前の平山春夫店主もその一人だった。平山さんの店では、江上弁護士に相談した時点で、搬入部数のおよそ50%が「押し紙」だった。
ところが、「押し紙」を排除して約3カ月後、読売は平山さんのYCを強制的に改廃した。しかもそのプロセスは強引で、江崎法務室長ら数人の読売関係者が事前連絡もなく平山さんの店を訪れ、本人の面前で改廃通知を読み上げ、契約を解除した。その後、読売ISの社員が店舗にあった折込チラシの束を搬出した。
この行為について筆者は、「メディア黒書」の記事で「これは窃盗に該当し、刑事告発の対象になり得る」と記した。
喜田村弁護士らが訴因としたのは、この「窃盗」という表現である。彼らは、折込チラシの搬出は契約解除後の行為であり、かつ平山さんの許可を得ていたため「窃盗」には該当しないと主張し、それを根拠に2230万円の金銭を求めてきたのである。
◆隠喩(メタファー)としての「窃盗」
確かに「窃盗」を文字どおりに解釈すれば、関係者の面前で行われた行為である以上、「窃盗」には該当しない。また、実際にチラシの束を運び出したのは読売新聞社の社員ではなく、読売ISの社員である。しかし筆者は、「窃盗」という言葉をレトリック(修辞法)としての隠喩(メタファー)として用いたのである。
隠喩の例としては、例えば次のようなものがある。
「あの監督は鬼だ」
「あの人は悪魔だ」
また、有名な例としては、
「踊子のように葉を差し上げた若い椰子は、私の愛を容れずに去った少女であった」(大岡昇平『野火』)
「人生は歩いている影だ」(シェイクスピア『マクベス』)
などが挙げられる。
筆者が記事の中で隠喩を用いたのは、この事件の悪質性が強いと感じたためである。突然店舗に現れた江崎法務室長が、平山さんの面前で改廃通知を読み上げたことは、平山さんに強い衝撃を与えた可能性が高い。仕事を失って動揺していたと想像できる。そのような心理状態の中で、読売ISの社員がチラシを搬出したのであれば、隠喩として「窃盗」と表現する余地はあったと考えた。筆者にとって、メディア企業が表現の問題で、このような訴訟を起こしたことは心外だった。
◆加藤裁判官と差戻審
判決は地裁・高裁ともに筆者の勝訴だった。その理由は、「メディア黒書」の記事が「窃盗」という事実を断定的に伝えること自体を主眼としていない、という点にあった。
読売は控訴したが、喜田村弁護士は控訴審の代理人から外れた。代わって登場したのは、TMI総合法律事務所の複数の弁護士である。同事務所は大手法律事務所であり、当時、元最高裁判事が少なくとも3名在籍していた(今井巧、泉徳治、才口千晴)。
人脈が影響力を持つ日本社会の現状を踏まえると、筆者は控訴審の行方に不安を覚えた。しかし控訴審は一度の口頭弁論で結審し、結果は筆者の勝訴だった。ところが読売はさらに最高裁へ上告した。
最高裁は上告を受理し、口頭弁論を開いたうえで、筆者勝訴の判決を東京地裁へ差し戻した。差戻審では加藤新太郎裁判官が担当した。この人物について調べたところ、過去に少なくとも2度、読売新聞のインタビューを受けていたことが判明した。
また、読売の社員が最高裁の各種委員会に参加していることも確認された(2012年6月時点)。
金丸文夫:裁判官の人事評価の在り方に関する研究会
桝井成生:裁判制度の運用に関する有識者懇談会、明日の裁判所を考える懇談会
こうした事情から、筆者は最高裁が読売の上告について慎重な検討を行ったのか疑問を抱いた。
差戻審の判決では、加藤新太郎裁判官は読売の訴えを認め、筆者に対して110万円の支払いを命じた。読売社と3人の社員に支払う金銭は、メディア黒書でカンパをお願いして集めた。
なお加藤裁判官は裁判官を退任した後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問などを経て、2021年に瑞宝重光章を受章している。

米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃を批判する世論が広がる中で、この戦争の原因をトランプ大統領の個人的思想に求める見方が広がっている。なかには「狂気」の結果と評する声もある。
そうした側面を完全に否定することはできないが、わたしはより経済的で個人の意思とは無関係な客観的要因が存在すると考えている。
結論から言えば、それはこれまで西側諸国が主導してきたドル中心の国際金融体制に対し、中国などが影響力を強めつつある中で、その流れを抑えたいという思惑が背景にある。イランによる核開発の阻止は、あくまでも表面上の建前である。
◆ペトロダラー体制
現在の国際金融システムは、いわゆる「ペトロダラー体制」と呼ばれる構造に一定程度依存している。
この体制は、1970年代にアメリカとサウジアラビアの間で成立した安全保障と石油取引に関する合意を背景に形成されたとされる。米国が軍事支援するみかえりに、石油の採り決済を採用する合意である。確証はないが、一部の報道によると、この取り決めの有効期間は、秘密裡に50年程度とされているという。従って現在が失効する時期である。
この仕組みにより、アメリカはドルの基軸通貨としての地位を維持し、国際金融において大きな影響力を持ってきた。石油は、全世界の国々が必要とするので、影響力も大きいのだ。しかも、石油を通じて生まれた利益が、そのままドル建ての投資へ投入される現象を生む。さらに燃料として現在の工場に極めて甚大な影響を及ぼす力を持っている。そのことはイランがホルムズ海峡を閉鎖した後の世界経済を見れば明らかである。
仮に石油取引がドル以外の通貨で広く行われるようになれば、ドル需要の低下を通じてアメリカの経済的影響力に決定的な変化が生じる可能性がある。米国としては、イラン石油を手中に収めなければ、これまでの経済上の秩序が崩壊する危機に直面しかねない。
というのも、ドル以外の石油取引を模索する動きは、すでに始まっているからだ。その先陣を切っているのが、中国、ロシア、それにBRICSである。中国とロシアはBRICSのメンバーでもある。そのブリックスにイランは2024年に加盟した。サウジアラビアもBRICSに接近している。
米国にとっては、イランの政権を根本的に変える必要はなく、「親米政権」になれば、それで十分なのだ。が、その思惑は外れて、戦争に巻き込まれてしまった。
◆ベネズエラに対する軍事介入
実は、米国によるベネズエラに対する軍事介入(2026年1月3日)の背景にも、同じ事情がある。ベネズエラは、米国による経済制裁の下で、苦境に立たされていたが、最近、中国やロシアへ急接近している。
仮にベネズエラの石油がドル以外の決済になれば、世界経済の中で米国の衰退に拍車がかかる。それを防止するために、米国はベネズエラに対して軍事侵攻して、石油を「管理」せざるを得なくなったのである。
このように、トランプによるベネズエラやイランへの軍事介入は、トランプ大統領の個人的な極右思想が引き起こしたものではない。おそらくは財界の要求である。逆説的にいえば、財界にとっては、トランプのような人物が必要だったからこそ、大統領になれたのである。
◆全米民主主義基金(NED)
なお、イランの反政府「市民運動」についても、報じられていないことがある。それは「市民運動」の活動資金が米国の全米民主主義基金(NED)から提供されている事実である。この事実は、NEDのウエブサイトで確認できる。支援額は、2025年度は200万ドル(約3億円)。
1979年のイラン・イスラム革命は、市民権と経済的繁栄という公約を果たすことができなかった。今日、選挙で選ばれていない個人や抑圧的な機関が権力を握り、治安部隊や司法機関が異議を唱える声を弾圧し、基本的な自由を制限している。宗教団体やイスラム革命防衛隊によって大部分が支配されている経済は、増加する人口、とりわけ若者のニーズを満たすのに苦慮している。近年、続く危機が広範な抗議運動を煽っているが、政権は有意義な改革を行う代わりに、弾圧を強化することで国民の不満に対応している。さらに、イランが地域内の国家および非国家の反民主主義勢力への支援を行っていることや、国内の優先課題を犠牲にして対外紛争に注力する政権に対する国民の不満が高まっていることは、国内の民主主義勢力を強化する必要性を浮き彫りにしている。
これに対し、イランの活動家たちは民主的な変革を求めて一層強く働きかけている。NEDのプログラムは、市民社会や政治活動家の能力を強化し、権威主義に対抗して民主的な未来を推進することに焦点を当てている。主な優先事項には、人権の擁護、説明責任の促進、そしてイランの活動家間の連携強化が含まれる。NEDのイラン・プログラムは、より広範な地域プログラムと統合され、民主主義の抑圧に対抗し、地域全体に及ぶイラン政権の権威主義的な影響力に対処することを目指している。
米国は、イランを空爆した後、イランの市民運動が政権を掌握すると期待していたようだが、思惑どうりにはいかなかった。

本稿は、『紙の爆弾』(2月号)に掲載した原稿に加筆したものである。米国とイラン石油の関係にも言及した。
2026年1月3日の深夜、米国陸軍デルタフォースは、ベネズエラの軍事施設などを空爆すると同時に大統領私邸を急襲し、ニコラス・マドゥロ大統領を拉致した。マドゥロは妻のシリア・フローレスとともに米国へ移送され、ニューヨーク州北部の空軍基地に到着した際には、手錠をかけられていた。麻薬密売ネットワーク「太陽のカルテル」の首領であり、麻薬・武器の密売などに関与したというのが容疑である。2020年3月の起訴から、およそ6年が経過していた。
ベネズエラのテレスール紙(1月13日付け)などによれば、警備に当たっていた兵士ら100人余りが死亡したという。この中には32人のキューバ兵が含まれていた。キューバ兵の配置はベネズエラ側の要請によるものであり、キューバがCIAによる600回を超えるとされるフィデル・カストロ暗殺計画を阻止してきた実績が評価された結果だという。だが、そうした備えも功を奏さず、マドゥロ夫妻は拘束され、米国へ連行された。米軍側に死傷者は出なかった。
ベネズエラの前外務大臣、ホルヘ・アレアサは、米国の独立系メディア「ザ・グレーゾーン」のインタビューに対し、
「我々はあらゆる事態に備えていたが、レーザー機能を無力化するなど、最新鋭の軍事テクノロジーが使われ対応できなかった」
と、完敗を認めた。米軍は軍用ヘリコプターに加え、複数のドローンも展開したとされる。音響兵器を使ったという報道もある。これは音波を利用し、人体に強い負荷を与えたり、平衡感覚を狂わせたりする兵器である。
軍事侵攻から2日後の5日には、マドゥロ大統領がニューヨークの連邦地裁に出廷した。一方ベネズエラでは、副大統領のデルシー・ロドリゲスが暫定大統領に就任した。6日には、ベネズエラの新政権と米国が、ベネズエラが3000万〜5000万バレルの石油を米国に引き渡すことに合意した。トランプ大統領はSNSに次のように投稿した。
「石油は市場で売られ、その収入はベネズエラと米軍関係者のために使われるよう、米国大統領である私が管理する!」
◆西側メディアを支援してきたUSAIDとNED
『AERA』(1月13日付)は、この事件について「マドゥロ大統領は、独裁者でベネズエラ国民の人権を侵害し、さらに国内経済を疲弊させ、800万人と言われる難民が国外へ逃がれるという事態を招いている」(執筆者:古賀茂明)と記述した。
日本は、西側諸国のメディアの影響を受けることが少なくない。たとえば国境なき記者団(RSF)は大
きな影響力を持ち、同団体が毎年公表する「報道の自由度ランキング」は、多くの人に参照されている。ランキングを疑う人は殆どいない。しかし、西側メディアの報道内容が常に政治的な利害関係と切り離された形で提示されているとは限らない。たとえば次の事実を読者はどう考えるだろうか?
2025年、トランプ大統領が米国国際開発庁(USAID)を事実上閉鎖し、メディア向けの2億6800万ドル(約402億円)の予算を凍結した際、国境なき記者団(RSF)は、「この決定を強く非難する」とする声明を発表した。その中で、はからずも西側メディアの性質が露呈したのである。声明の中に、次のような記述がある。
(UASIDによる)援助凍結が発効するとほぼ同時に、米国の援助資金を受けている世界各地の報道機関や報道支援団体が、混乱や不安、先行き不透明感を訴えてRSFに連絡を寄せ始めた」。「二〇二三年に同機関(USAID)は六二〇〇人のジャーナリストに対する研修と支援に資金を提供し、707の非国家系ニュース媒体を支援し、さらに独立系メディアの強化に取り組むメディア分野の市民社会組織二七九団体を支援した。
国境なき記者団がUSAIDから資金援助を受けているかどうかは、現時点では確認できない。しかし、USAIDの下部組織に位置づけられてきた全米民主主義基金(NED)とは極めて親密な関係にある。国境なき記者団は、自らのウェブサイトに「サポーター」としてNEDの名を記載している。
NEDは1983年に設立された米国政府系の基金で、「米国流の民主主義」の促進を掲げ、メディアや市民団体などへの支援を行ってきた。2024年度、NEDはラテンアメリカ向けとして4100万ドル(約61.5億円)を支出した。支援の理由について同基金のウェブサイトは、
「ラテンアメリカとカリブ地域では権威主義が広がりつつあり、指導者たちは民主的な制度を弱めて権力を固めている。NEDはキューバ、ニカラグア、ベネズエラのように強い権威主義体制が続く国々に特に注目している」
と、述べている。
ちなみに香港の「雨傘運動」やウイグル問題などへのNEDの関与も明らかになっている。ベネズエラでも、2025年にノーベル平和賞を受けたマリア・マチャドが率いる団体が、かつてNEDの支援を受けて活動していた。24年にマチャドは、NEDから「NED民主主義」賞を授与された。
海外ニュースを検討する際には、その背景にある支援関係にも目を向けることが重要である。日本のメディアは、報道の自由度ランキングに象徴されるように欧米の情報を重視する傾向があるからだ。
◆「太陽のカルテル」の首領であるというフェイクニュース
1月3日の軍事侵攻は、マドゥロが麻薬密売ネットワーク「太陽のカルテル」の首領であるという触れ込みで行われた。米国政府は2020年、マドゥロや複数の政府関係者の逮捕・有罪立証につながる情報に対し、報奨金を支払うと発表した。このうちマドゥロに対する報奨金は最大500万ドル。顔写真入りのポスターも制作し、罪名として「麻薬テロ共謀」「コカイン輸入の共謀」「麻薬犯罪を助長する目的での機関銃および破壊装置の使用・携行に関する共謀」などを掲げた。極悪非道な犯罪者としての扱いである。
日本の新聞・テレビは、このニュースを「米国政府の発表」として客観報道の体裁で伝えた。しかし一般の読者・視聴者は、情報源が米国政府であることで、マドゥロを「麻薬王」と受け止めた公算が高い。
実際、その影響なのか、1月3日の軍事侵攻の後、米国を批判するコメンテーターでさえ、「マドゥロにも問題はあったが」と念を押したうえで、軍事侵攻を国際法違反として批判する傾向が顕著にみられる。
ちなみに複数の人権擁護団体がベネズエラによる人権侵害を指摘する報告書を公表しているのは事実である。それがベネズエラを批判するひとつの根拠になっている。しかし、この種の報告書は、ベネズエラに限ったことではない。日本も国連人権委員会から「人質司法」などについて指摘されている。米国に関する報告書も多数ある。むしろ報告対象になっていない国の方が少ない。
マドゥロが獄中につながれた数日後、意外なことが起きた。米国が、「マドゥロが『太陽のカルテル』の首領である」とする起訴状を訂正したのだ。『ニューヨーク・タイムズ』(1月5日付け)など複数のメディアによれば、米国は「太陽のカルテル」について、客観的に実体として存在する組織ではなく、「腐敗の文化」などを指す概念の総称だとして起訴状を訂正したという。肝心要の「太陽のカルテル」が客観的に存在しないことを認めたのだ。
ちなみにSNS上には、AI加工されたマドゥロ写真や動画が散見される。米国へ移送される機中で、マドゥロが目隠しされたまま座っている写真も加工品である。「イメージ写真」という注釈が付されている場合もあるが、その点が明確に伝わるとは限らない。SNSなどで虚像が拡散している。写真や動画はいまや事実を立証するための裏付けにはならない。
マドゥロの「独裁」の下でベネズエラは混乱し、貧困が広がったという前出『AERA』の報道も検証する必用がある。『AERA』は「800万人と言われる難民が国外に逃れ」と記すが、難民と移住者、さらには国政の左傾化を嫌って亡命した人々までを「難民」として一括りにしている。加えて、ラテンアメリカに特徴的な人口移動の特殊性を考慮していない。
ラテンアメリカ諸国は大半が公用語をスペイン語とし、文化的共通性も大きいため、域内移住の壁はかなり低い。たとえばメキシコの場合、人口1億3250万人(出典:国連、2025年)に対し、海外に滞在している人は約1200万人(出典:メキシコ政府)とされ、人口の約一割に当たる。コロンビアやペルーもほぼ同程度の割合である。これに対してベネズエラは約3割である。高い数値であることは事実だが、内戦時や経済制裁を課された状況下では、普通に起こり得る数字である。
また、ベネズエラの経済が混乱した最大の原因は、マドゥロによる独裁ではなく、主要産業である原油の価格暴落と、それに続く米国による経済制裁にある。原油価格が暴落した引き金は、2007年ごろから米国で「シェール革命」と呼ばれる新たな採掘方法が普及したことだ。これにより米国内の石油生産量は激増した。しかも当時、OPECは市場安定のための減産調整を行わなかった。さらに世界経済の減速によって需要も減っていた。こうした要因が重なり、原油価格は暴落したのである。
その影響は、マドゥロが大統領に就任した2013年ごろから顕著に現れ始めた。ベネズエラは世界有数の産油国であり、従来から経済を石油に依存してきた。ゆえに石油価格の下落の影響を直接的に受けたのである。加えて米国は、ベネズエラ国債およびベネズエラ企業債の取引を禁止し、ベネズエラ政府による資金調達を妨害した。さらに国営石油会社との取引を禁止するなど、次々に経済制裁を課した。ベネズエラ経済が混乱した原因は、西側メディアが報じてきたような、マドゥロの独裁でも失策ではない。
実際、ベネズエラ経済はその後、回復に向かった。GDP成長率は、2022年が8・0%、23年が4・0%、24年が8・5%を記録した。国民1人当たりGDPも、2020年には3722ドルまで落ち込んだものの、その後は回復して、2023年には4925ドルに達した。(国連のデータ)米国は「シェール革命」の影響と経済制裁によってベネズエラ経済の破綻を見込んでいたようだが、ベネズエラは逆に米国から自立する方向へ歩み始めたのである。
それとは逆に、今度は米国側にとって不安材料が生まれた。ベネズエラと親密な関係にある中国やロシアなどが、ドル以外の通貨による国際商取引の決済を検討し始めたのである。BRICS諸国も同様の方向性で動き始めた。従来のドル支配に風穴が開き始めたのだ。
国際的な石油取引は、長年にわたり米ドル建てで行われるのが主流であった。その背景には、1970年代に形成された米国とサウジアラビアの戦略的関係がある。米国が安全保障面でサウジアラビアを支援する一方、サウジアラビアは原油取引や外貨準備においてドルを重視する姿勢をとり、これが国際石油市場でドル建て取引が定着する一因となった。これは米国経済にとって資金調達面での利点をもたらしてきた。ドルによる投資を呼び込むからである。石油のドル決算は、想像以上に米国に利益をもたらしてきたのだ。
仮に非西側諸国がドル以外の通貨による決済を模索する動きを加速させ、その波が石油取引にまで本格的に及んだ場合、ドルの優位性は低下し、米国経済に中長期的な影響を与えかねない。完全にドル決済がなくなることはないにしても、ドル支配が浸食されていくリスクは免れない。
さらに石油取引で米国と戦略的関係を続けてきたサウジアラビアも、BRICSに加わろうとしている。米国にとって不安材料は尽きない。その反映なのか、トランプ大統領はベネズエラのロドリゲス暫定大統領に対し、ロシアや中国との関係を断つよう助言したとされる。が、ロシア・中国にその意思はない。
◆イランにおける米国の石油利権
ちなみに時期列は前後するが、2026年2月に米国とイスラエルが産油国イランへの空爆に踏み切った背景にも石油をめぐる利害関係がある。その米国にとって、イランはサウジアラビア以上に非西側諸国との関係が深い。現に非西側メディアによると、イラン政府は、石油タンカーがホルムズ海峡を通過するための許可を下す条件として、「石油の人民元決済」を提示しているという。これは米国に対する圧力だ。
ちなみにイランは2024年からBRICSの公式メンバーになっている。
石油利権をめぐる米国とベネズエラの関係と、同じく米国とイランの関係は、実は同じ構図である可能性が高い。さらに日本の高市政権と米国でアラスカの石油開発を進める提案の背景にも、世界の石油を制する者が世界経済を制するという考えがあるようだ。
1月9日、トランプ大統領は石油大手の幹部らをホワイトハウスに招いた。会合にはシェブロン、エクソンモービルなどの多国籍企業が参加した。トランプはこの場で、ベネズエラへの投資を呼びかけた。
◆多国籍企業の権益と軍事侵攻
米国によるラテンアメリカへの介入は、ベネズエラに限った話ではない。これまでも、国益や多国籍企業の保護を目的に、「裏庭」への軍事侵攻や軍事支援、CIAによるクーデター工作などを繰り返してきた。
戦後の主要な介入としては、たとえば1954年のグアテマラのクーデターがある。米国メリーランド大学が公開するデータによれば、米国のUFCO(ユナイテッド・フルーツ・カンパニー)は、グアテマラ全土の42%を所有していたという。農地の大半がUFCOの支配下にあった。その一方で、人口の約90%は土地を持たない農民であった。当時のグアテマラ政府は農地改革に着手したが、UFCOの農地に手を付けた途端、CIAがクーデターを起こしたのだ。
一九七三年のチリでも、多国籍企業と治安部隊との関係が露呈した。70年、チリでは社会主義を目指す左派のアジェンデ政権が、選挙によって成立した。アジェンデは米国の鉱山会社などを国有化した。これに対して米国はクーデターを起こし、軍事政権を敷いた。アジェンデ大統領は死亡した。
1979年には、ニカラグア革命で成立したサンディニスタ政権に対して介入を開始した。革命前のニカラグアは、米国の傀儡であるソモサ家の独裁下にあった。ソモサ家は、コーヒー産業をはじめとしてニカラグアの経済から政治までを牛耳っていた。傀儡を失った米国は、隣国ホンジュラスを拠点化し、反政府ゲリラを組織して、革命政権の打倒に乗り出したのである。
さらに、米国は1983年にグラナダ、89年にはパナマに軍事介入した。その後は、露骨な介入は亡くなったが、米国の関与が疑われているクーデターが、ベネズエラ(未遂)やホンジュラスなどで起きている。NEDも活動を強めて、2018年にはニカラグアで市民運動体と政府の間で衝突が起きる事態となった。クーデターの未遂説もある。
こうした状況の下、米国は2026年1月、米国は、ベネズエラで再び大がかりな軍事介入を断行したのである。
ベネズエラの暫定大統領に就任したロドリゲスは、1969年生まれの弁護士である。7歳のとき、社会運動家だった父親が獄中で拷問死したことが、その後の人生に影響を与えたとされる。マドゥロは消えたがベネズエラ政府は、そのまま残った。政府が掲げてきたシモン・ボリバールの民族自決主義も維持されている。米国はベネズエラに介入したが、基本的には何も変わっていない。かつてのような、「植民地化」はできなくなっている。それが社会進歩の証である。
海外派兵の背景には、どのような政治的・経済的要因があるのか。遠く離れた南半球で起きた事件を契機として、台湾をめぐり緊張が高まる東アジアでも検討する必要がある。また、メディアが果たす負の役割についても考察が求められる。

2007年12月、真村訴訟の勝訴が最高裁で確定した。それに伴い読売新聞の「押し紙」政策が崩壊する兆しが現れた。すでに述べたように、福岡県久留米地区にある3店のYCが、江上武幸弁護士を通じて「押し紙」排除に成功したのである。
店主としての地位を保全された真村さんにも新たな動きに直面した。読売は、それまで「死に店」扱いにしていたYC広川の経営を正常化する方向へ動きはじめた。
同時に、筆者(黒薮)に対する裁判攻勢を開始したのである。その先頭に立ったのが、喜田村洋一・自由人権協会代表理事だった。
発端は、読売の販売局が真村さんに対して、販売店の定期訪問を再開する旨を通知したことだった。しかし、真村さんは読売に対する不信感があり、念のために江上弁護士を通じて読売に内容証明郵便で、読売の真意を確認してもらった。
これに対して読売の江崎徹志法務室長は、次のように回答した。
前略 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。
2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。当社販売局として、通常の訪店です。
江崎氏の文書を入手したわたしは、メディア黒書(当時は、新聞販売黒書)でそれを公開した。何の悪意もなかった。真村訴訟の中の重要な事実であり、客観的な事実を、客観的な裏付けに基づいて公表するジャーナリズムの原則を忠実に貫いただけである。
ところが江崎氏は、メディア黒書からこの文書を削除するように求めて、筆者に対して催告書を送付してきたのである。催告書の内容は、筆者がメディア黒書に掲載した江崎法務室長の文書は、著作権法でいう著作物に該当するので、筆者には公表権がないとしたうえで、それを削除するように求めてきたのである。次の文面である。
冠省 貴殿が主宰するサイト「新聞販売黒書」に2007年12月21日付けでアップされた「読売がYC広川の訪店を再開」と題する記事には、真村氏の代理人である江上武幸弁護士に対する私の回答書の本文が全文掲載されています。
しかし、上記の回答書は特定の個人に宛てたものであり、未公表の著作物ですので、これを公表する権利は、著作者である私が専有しています(著作権法18条1項)。 貴殿が、この回答書を上記サイトにアップしてその内容を公表したことは、私が上記回答書について有する公表権を侵害する行為であり、民事上も刑事上も違法な行為です。
そして、このような違法行為に対して、著作権者である私は、差止請求権を有しています(同法112条1項)ので、貴殿に対し、本書面到達日3日以内に上記記事から私の回答を削除するように催告します。
貴殿がこの催告に従わない場合は、相応の法的手段を採ることとなりますので、この旨を付言します。
江崎法務室長が催告書に中で削除を求めた文書を再度引用しておこう。
前略 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。
2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。当社販売局として、通常の訪店です。
江崎法務室長は、このメモ書き程度の文書が著作権法の著作物に該当するというのである。それゆえに削除しろと通知してきたのだ。しかし、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)である。どう考えても江崎氏による通知文書は、著作権法の著作物には該当しない。単なるメモ、あるいは通知である。
当然、筆者はメディア黒書から該当文書を削除することを断った。さらに奇妙な内容の催告書を「怪文書」としてメディア黒書で公開した。内容があまりにも支離滅裂だったので、公表することで幅広く意見を募りたいと考えたのである。
これに対して江崎法務室長は、喜田村弁護士を代理人に立てて、催告書の削除を求めて仮処分を申し立ててきたのである。だが、なぜか元の通知文書の削除は求めてこなかった。催告書のみを削除するように求めてきたのである。その理由というのが、催告書は江崎氏の著作物なので、筆者には公表権がないというものだった。催告書の場合は、通知文書とは異なり著作物に該当する可能性もあった。
◆提訴までの流れ
以上の流れを整理すると次のようになる。
1 江崎法務室長が、真村さんに販売店の定期訪問の再開を通知した。
2 その通知文書を筆者がメディア黒書に掲載した。
3 江崎法務室長が通知文書の削除を求めて、内容証明で催告書を送付してきた。
4 筆者が催告書をメディア黒書に掲載した。
5 江崎法務室長が催告書の削除を求めて仮処分を申し立てた。催告書は江崎法務室長の著作物であるから、筆者には公表権はないという主張である。
◆著作者を「江崎」に偽って裁判提起
仮処分は江崎氏の勝訴だった。そこで筆者は、福岡の「押し紙」弁護団の支援を得て、東京地裁で本訴に踏み切った。
本訴は筆者の勝訴だった。知財高裁も最高裁の筆者の勝訴だった。
地裁・高裁を通じた審理の中で、大変な事実が明るみにでた。それが喜田村弁護士らが敗訴した意外な原因である。
判決の中で裁判所は、催告書には、「江崎徹志」の名前が付してあったが、実際に執筆したのは、喜田村弁護士か彼の事務所スタッフの可能性が極めて高いと判断したのだ。つまり催告書の著作権者を「江崎」に偽って裁判を起こした高い可能性を認定したのだ。端的に言えば、虚偽の事実を根拠として裁判を起こしたといる。
ちなみに著作権は大別して著作者人格権と著作者財産権に分かれる。著作者人格権は、「著作者の人格価値を保護しようとする権利」(知的財産用語辞典)である。だれが著作物の制作者であるかを明確化することで、著作者の名誉を守る。従って
著作者の人格価値は、他人に譲渡できない。
これに対して著作者財産権は、著作物から発生する財産に関する事項で、他人に譲渡することができる。
裁判所は、喜田村弁護士らが、催告書の著作者を「江崎」に偽って裁判を起こした高い可能性を認定したのである。
その根拠は複数あるが、たとえば喜田村弁護士が他者に送付していた催告書と筆者に「江崎名義」で送付した催告書のフォントや構成が瓜二つだったことである。また、本人尋問で江崎氏が、催告書を作成する際に使ったワープロソフトを覚えていないと供述したことである。さらに江崎氏の法律知識と催告書の内容が整合しないと判断されたことなどである。
従って、裁判所が催告書が著作物か否かを判断するまでもなく、喜田村弁護士らの訴えを退けたのである。その悪質性は、記録するに値する。
だが、喜田村らによる裁判攻勢はこれだけでではなかった。

真村訴訟の最大の意義は、日本で最大規模の新聞社である読売新聞社が続けてきた「押し紙」政策の存在を認定したことである。すでに述べたように、この裁判は販売店の地位保全裁判であるが、裁判所は判決の中で、読売による「押し紙」政策の客観的な存在を認定したうえで、過剰な新聞が日常的に販売店に残っていた原因は読売にあると判断し、それが正当な改廃理由に該当しないと結論づけたのである。
読売にしてみれば、裁判所が真村さんの地位を保全したことよりも、自社の「押し紙」政策の存在が認定されたことの方が、痛手は大きかったと推測される。
さらに、「押し紙」政策は読売新聞社に限ったことではなく、日本の新聞社の大半が行っている悪行である。それゆえ、真村訴訟の影響は業界全体に波及した。
参考までに、「押し紙」により新聞業界がどれほど莫大な利益を上げているかを示す試算を紹介しよう。尋常な額の不正ではない。公権力機関がこの点に着目すれば、メディアコントロールの温床にもなり得る。「押し紙」は独禁法違反である。
◆試算1
2025年8月時点で、中央紙(朝日・毎日・読売・産経・日経)の発行部数は約1180万部とされている。仮に「押し紙」の割合を20%とすると、約236万部が「押し紙」という計算になる。新聞1部あたりの卸価格を月額1500円(朝刊単独版と仮定)とすれば、1か月あたりの「押し紙」販売収入は約35億4000万円、年間では約424億8000万円に達する。次の計算式である。
1500円(新聞の卸価格)×236万部(「押し紙」部数)=35億4000万円(月額)
35億4000万円(月額)×12か月=424億8000万円
仮に「押し紙」率が40%であれば、年間収入は約850億円規模となる。
しかも、この試算は控えめな前提に基づいている。朝夕刊セット版の場合、卸価格は2000円前後となり、収入規模はさらに膨らむ。「押し紙」率についても、最近の「押し紙」裁判では40%から50%に達している例が少なくない。以上の点から、この試算が誇張されているとはいえない。
もちろん、「押し紙」収入に匹敵する補助金が販売店へキックバックされているケースもある。しかし、たとえそうであっても、水増し部数により紙面広告の価格が相対的に高くなるため、「押し紙」によって新聞社が得る利益は莫大なものとなる。販売店側も、新聞の搬入部数に準じた折込広告が割り当てられるという原則があるため、折込広告収入が増え、必ずしも損害を受けるとは限らない。
※新聞部数が激減した2000年ごろからは、補助金の未払いなどもあり、「押し紙」による被害が増えている。
◆試算2
別の試算も紹介しよう。
2004年、毎日新聞社の記者が、社長室から1通の内部資料を持ち出した。「朝刊・発証数の推移」と題する内部資料である。この資料には、毎日新聞の部数内訳が記録されていた。
それによると、2002年10月時点における毎日新聞の公式部数は3,953,466部である。これに対して、新聞販売店が読者に発行した領収書の数(発証数)は2,509,139枚である。差異にあたる約144万部が、1日あたり全国で発生していた毎日新聞の「押し紙」であったと推測できる。
※厳密に言えば、販売店に搬入される新聞の2%は予備紙であり、「押し紙」の定義には含まれない。しかし数字が小さいため、ここでは詳細には踏み込まない。
「押し紙」1部の卸代金を1500円として試算すると、「押し紙」による販売収入は月額で21億6000万円になる。年間では約259億円となる。次の計算式である。
1500円(新聞の卸価格)×144万部(「押し紙」部数)=21億6000万円(月額)
21億6000万円(月額)×12か月=259億2000万円
公正取引委員会が毎日新聞社にメスを入れれば、同社は年間で約259億円の販売収入を失うことになる。もっとも、「押し紙」を買い取るために販売店へ支出する補助金が相当額にのぼるとしても、部数の水増しによって紙面広告の価値も水増しされるため、不正な利益の額は尋常ではない。
参考までに裏付け資料も紹介しよう。
◆人権派弁護士が
真村訴訟で司法が読売の「押し紙」にメスを入れた影響は大きかった。真村さんの代理人を務めた江上武幸弁護士のもとには、次々と「押し紙」に関する相談が持ち込まれるようになった。
たとえば、YC久留米文化センター前(久留米市)、YC大牟田明治(大牟田市)、YC大牟田中央(大牟田市)の3店は、江上弁護士を通じて読売新聞社と「押し紙」の減紙交渉を行い、「押し紙」の排除に成功した。
「押し紙」を排除する直前の部数内訳は次の通りである。
YC久留米文化センター前
総部数:2010部
押し紙:997部
YC大牟田明治
総部数:2400部
押し紙:920部
YC大牟田中央
総部数:2520部
押し紙:900部
しかし読売は、喜田村洋一・自由人権協会代表理事を前面に立て、裁判攻勢に乗り出してくる。



