1. 千葉県の広報紙『ちば県民だより』、21万部水増しの疑惑、必要な予備部数は9000部、背景に新聞社のビジネスモデル

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千葉県の広報紙『ちば県民だより』、21万部水増しの疑惑、必要な予備部数は9000部、背景に新聞社のビジネスモデル

千葉県が税金で制作して、新聞折り込みで配布する広報紙『ちば県民だより』が、大幅に水増しされている疑惑が浮上した。

筆者ら取材チームが調査したところ、『ちば県民だより』の発行総数は、187万部(2020年6月時点)だった。このうち新聞折り込みで配布することを前提に、広告代理店が新聞販売店に卸している部数は、177万9000部(2020年6月)だった。

ところが千葉県下における新聞の総発行部数は、約156万8369部である。約21万部が過剰になっている。配布されずに廃棄されていることを意味する。

新聞発行部数の内訳は次の通りである。

朝日:375,531(20年4月、ABC部数)
産経:77,239(20年4月、ABC部数)
東京:52,001(20年4月、ABC部数)
日経:121,808(20年4月、ABC部数月)
毎日:109,305(20年4月、ABC部数月)
読売:687,353(20年4月、ABC部数月)
千葉:145,150(19年1月)■出典
合計:1,568,369部

■出典:千葉県のABC部数

 

朝日、産経、東京、日経、毎日、読売の部数は、日本ABC協会が公表している公式部数である。千葉日報は、日本ABC協会の会員社ではないので、発行部数は不明だが、日経新聞の記事の中で引用されている部数を採用した。

新聞の発行部数が公表された時期と、『ちば県民だより』の折込部数調査の定点観測時点には、若干のタイムラグがあるが、新聞の発行部数は顕著な低落傾向が続いており、ここで表示した新聞発行部数が、『ちば県民だより』の折込作業の時点で増えていることはありえない。

◆◆◆
次に示すのは、千葉県が公表した『ちば県民だより』についての情報である。

1.発行している広報紙名称…ちば県民だより
2.総発行部数…187万部(2020年6月時点。予備含む)
3.ポスティングについて…ポスティングは行っておりません。
4.新聞折込枚数…約177万9千部(2020年6月号。予備含む)
5.広告代理店…株式会社キョウエイアドインターナショナル
6.印刷会社…株式会社リフコム

◆◆◆
千葉県は、水増し分は「予備部数」という見方をしているが、適切な予備部数は、新聞業界の伝統的な内部ルールによると、搬入部数の2%とされてきた。現在、このルールは廃止されているが、新聞社の自己都合でそれを行った経緯があり、社会通念からすると予備部数は2%である。自動折込機が高性能になっているので、折込媒体の破損はほとんど発生しないからだ。

その2%を基準にすると、『ちば県民だより』の適切な予備部数は、9350部ということになる。22万部もの予備部数は必要がない。

また、新聞業界には、新聞社が販売店に対して不要な部数を押し売りする「押し紙」行為が慣行化しているので、『ちば県民だより』の水増し率はさらに高い可能性が濃厚だ。

販売店に搬入される新聞のうち、少なくとも2割から3割が「押し紙」だと言われている。場合によっては、4割にも5割になるケースもある。(写真参考)

広報紙の水増しと廃棄は、全国の自治体で問題になっている。この問題の原因は、新聞社が採用してきたビジネスモデルにある。「押し紙」により販売店が被る損害を、折込媒体の水増しで相殺するビジネスモデルが温床になっている。

 

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■取材チーム:メディア黒書に対する妨害があったのを機に、複数の読者から取材協力の申し出があり、取材チームを結成した。全国の主要な自治体の広報紙を調査している。平行して情報提供も行っている。