1. 10月2日に『押し紙』問題の全国集会、新聞ジャーナリズムの正義と「押し紙」政策は共存できるのか?

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2016年09月19日 (月曜日)

10月2日に『押し紙』問題の全国集会、新聞ジャーナリズムの正義と「押し紙」政策は共存できるのか?

10月2日に東京・板橋区の板橋文化会館で予定されている講演会とパネルディスカッション『新聞の偽装部数「押し紙」』の開催まで2週間を切った。

「押し紙」問題と新聞ジャーナリズムの正義は共存できるのか?これはかねてから筆者が考え続けてきたテーマである。新聞批判といえば、とかく新聞紙面の批判が主流となり、たとえば『創』などのメディア関連の雑誌を過去にさかのぼって調べてみると、少なくとも1970年代ごろから、新聞の「紙面批判」が繰り返し行われてきたことが分かる。40年前の人々も新聞に絶望していたのである。

つまり新聞批判といえば、紙面批判を意味する昔からの同じパターンが繰り返されてきたのだ。記事の質を嘆き、新聞記者の職能を罵倒し、心がけを改めて不屈の精神を手に入れれば、新聞ジャーナリズムは再生できるという観念論の視点からの議論が延々と繰り返されてきたのである。

そこには新聞社のビジネスモデルの中から客観的な問題点と原因を探ろうとする科学的な姿勢は皆無だった。紙面の劣化を記者個人の能力、あるいは不見識の問題として片づけてしまう主観主義の傾向があったのだ。

◇新聞劣化の客観的な原因は?

新聞社のビジネスモデルを客観的に分析してみると、政界との癒着なくして経営自体が成り立たない状況に置かれていることが分かる。その典型的な例が、再販制度という新聞業界の既得権である。再販制度がなくなれば、新聞社と販売店の従属関係が崩壊して、テリトリー制度も消え、「押し紙」政策も出来なくなる。それは新聞社に壊滅的な打撃を与える。

そこで新聞業界は、構造改革=新自由主義の導入の前夜にあたる1980年代の後半から、国策としての再販制度撤廃の流れを先読みし、新聞販売店の業界団体を通じて、政治献金を支出するなど、政界との癒着を強めていったのだ。そして1990年代には、政治家と「共闘」して、再販制度を守るという取り返しのつかない誤った戦略に走ったのである。

その延長線上に現在の新聞に対する消費税の軽減税率を認めさせる運動も成り立っている。意外に知られていないが、新聞業界が軽減税率の導入にこだわるのは、「押し紙」にも消費税が課されるからにほかならない。

再販制度と「押し紙」問題が連動しているように、消費税の軽減税率問題と「押し紙」問題も連動しているのだ。日本新聞協会は、未だに「押し紙」の存在すら否定し、「押し紙」を「残紙」とか「積み紙」と言い換えることで、過去の、そして現在の大失策を隠している。

裁判所も「押し紙」問題をよく理解していない。と、言うよりも、新聞社と同様に権力構造の歯車に組み込まれているために、「押し紙」を取り締まろうとはしない。取り締まれば、現在の新聞社のビジネスモデルが崩壊し、ジャーナリズムを再生する土台が生まれるからだ。それは政権党にとっては、最も避けたいことなのだ。いつまでも政府の「広報部」に徹してほしいというのが本音だ。それゆえに裁判所も国会も、故意に新聞社の「押し紙」政策を放置しているのである。

「押し紙」裁判が非公開にされるゆえんにほかならない。本来、裁判の公開は、憲法で謳われているのだが。

こうした状況の下で、「押し紙」政策は失策と考えている人々が、思想信条の違いを超えて、集まるのが10月2日の全国集会である。

◇集会の詳細

【日時】10月2日(日)13:30から16:00。(開場13:00)

【会場】板橋文化会館(東武東上線・大山駅下車3分)

【プログラム】

「押し紙」についての説明。「押し紙」回収を撮影した動画を公開する。

江上武幸弁護士の講演。「真村訴訟と『押し紙』問題」
読売の「押し紙」政策を事実上認定した福岡高裁判決(2007)を弁護士みずから解説する。

 ■パネルディスカッション
江上武幸(弁護士)
小坪慎也(行橋市議)
天木直人(評論家)

司会黒薮哲哉

■入場無料

■問い合わせ:メディア黒書(048-464-1413)

【動画】「押し紙」の回収場面