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2023年04月27日 (木曜日)

読売新聞「押し紙」裁判〈1〉元店主が敗訴、不可解な裁判官の交代劇、東京地裁から大阪地裁へ野村武範裁判官が異動

4月20日、読売新聞の元店主・濱中勇さんが読売新聞社に対して大阪地裁に提起した「押し紙」裁判の判決があった。

判決内容の評価については、日を改めてわたしなりの見解を公開する。本稿では判決の結論とこの裁判を通じてわたしが抱いた違和感を記録に留めておく。ここで言う違和感とは、判決の直前にわたしが想像した最高裁事務総局の司法官僚らの黒幕のイメージである。

まず判決の結論は、濱中さんの敗訴だった。濱中さんは、「押し紙」による被害として約1億3000万円の損害賠償を請求していたが、大阪地裁はこの請求を棄却した。その一方で、濱中さんに対して読売への約1000万円の支払を命じた。補助金を返済するように求めた読売の主張をほぼ全面的に認めたのである。

つまり大阪地裁は、「押し紙」の被害を訴えた濱中さんを全面的に敗訴させ、逆に約1000万円の支払を命じたのである。

◆権力構造の歯車としての新聞業界

判決は20日の午後1時10分に大阪地裁の1007号法廷で言い渡される予定になっていた。わたしは新幹線で東京から大阪へ向かった。新大阪駅で、濱中さんの代理人・江上武幸弁護士に同行させてもらい大阪地裁へ到着した。判決の言い渡しまで時間があったので、1階のロビーで時間をつぶした。そして1時が過ぎたころに、エレベーターで10階へ上がった。【続きはデジタル鹿砦社通信】

野村武範判事の東京高裁での謎の40日、最高裁事務総局が情報公開請求を拒否、透明性に疑惑がある事務局運営の実態

今年の1月19日付けで筆者が、最高裁事務総局に対して申し立てた2件の情報公開請求を拒否する通知が到着した。通知の交付日は、3月24日である。情報公開請求の内容と通知内容は、次の通りである。

《請求A》
1、開示しないこととした司法行政文書の名称等
 野村武範判事が東京高裁に在任中(令和2年4月1日から令和2年5月10日)に、担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

2、開示しないこととした理由
1の文章は、作成又は取得していない。

《請求B》
1、開示しないこととした司法行政文書の名称等
 野村武範判事が令和2年5月11日に東京地裁に着任した後に担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

2、開示しないこととした理由
1の文章は、作成又は取得していない。

裏付けの原文

【参考記事】最高裁事務総局に対して3件の情報公開請求、産経新聞「押し紙」事件の野村武範裁判長の職務に関する疑問、東京高裁在任が40日の謎

 

◆なぜ情報公開請求を行ったのか?

なぜ筆者は、野村武範判事に関する上記2件について情報公開請求開示を行ったのか?
結論を先に言えば、それは野村武範判事に関する人事異動に常識では考えられない、不自然な事実があるからだ。あくまで筆者の主観による判断だが、珍しい、なにか特別な目的を持った恣意的な人事異動に思えたからだ。順を追って説明しよう。

次に示すのが野村判事の人事異動歴である。赤の部分に注目してほしい。

R 2. 5.11 東京地裁判事・東京簡裁判事
R 2. 4. 1 東京高裁判事・東京簡裁判事
H29. 4. 1 名古屋地裁判事・名古屋簡裁判事
H25. 4. 1 最高裁裁判所調査官(東京地裁判事・東京簡裁判事)
H22. 4. 1 東京地裁判事・東京簡裁判事
H21. 4.11 大分地家裁判事・大分簡裁判事
H18. 4. 1 大分地家裁判事補・大分簡裁判事
H16. 4. 1 検事
H16. 3. 1 最高裁総務局付(東京簡裁判事・東京地裁判事補)
H14. 4.11 函館簡裁判事・函館家地裁判事補
H13. 4. 1 函館家地裁判事補
H11. 4.11 東京地裁判事補 
■出典

検証を要するのは、東京高裁に着任したあと、東京地裁に異動するまでの期間が、40日しかない事実である。野村判事は、2020年(令和2年)4月1日に、東京高裁に着任して、同年の5月11日に東京地裁へ異動している。

東京地裁に着任した直後に、なぜか産経新聞「押し紙」裁判の裁判長に着任した。コロナウィルスの感染拡大で緊急事態宣言がだされ、東京地裁での審理がほとんど中止になった時期である。5月である。そして緊急事態宣言が空けると、野村判事は早々に裁判を結審させ、原告の元販売店主の請求を棄却する判決を下したのである。

この裁判では、既報したように、裁判所が2度にわたり産経新聞社に対して和解金の支払いを提案していた。つまり判決が下れば、賠償額の大小はともかくとして元店主が勝訴する確率が高かったのだ。新聞社による「押し紙」政策の判例が、東京地裁でも誕生する公算が濃厚になっていたのである。

野村判事が執筆した判決文は、司法判断の論理が破綻していて、「請求の棄却」を前提として判決文をでっちあげたとしか解釈できない。「押し紙」の存在を認めながら、損害規模が少ないからといった理由にならない理由を根拠に、損害賠償請求を完全に棄却しているからだ。

当然、この裁判が、「報告事件」に指定されていた疑惑が浮上した。そこで調査の第一段階として、野村判事が東京高裁での40日間にどのような仕事をしたのかを具体的に知るために、筆者は情報公開請求を行ったのである。

ところが最高裁は、情報公開請求の内容に合致する文書は存在しないという理由で、不開示を決めたのである。

◆事務局の透明性に重大な問題

裁判資料は行政文書ではなく、情報公開請求の対象にならないことぐらいは、筆者も知っている。しかし、どの裁判官がどの裁判を担当しているのかを、事務局の立場で把握しておかなければ、裁判所としての機能が働かないはずだが。

が、最高裁事務総局は、該当する文書は、「作成又は取得していない。」という理由で情報公開請求を拒否したのである。

ちなみに最高裁事務総局の決定に対する不服を申し立てる制度はない。理由を説明する必要もない。問答無用、斬り捨て御免の世界になっている。

現在の最高裁事務総局には、透明さに問題があるのではないか?

2021年03月04日 (木曜日)

最高裁事務総局に対して3件の情報公開請求、産経新聞「押し紙」事件の野村武範裁判長の職務に関する疑問、東京高裁在任が40日の謎

わたしは1月19日、最高裁事務総局(中村慎事務総長)に対して3件の情報公開請求を行った。その背景を説明する前に、まず実際の請求内容を紹介しておこう。

1、野村武範判事が東京高裁に在職中(令和2年4月1日から令和2年5月10日)に、担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

2、野村武範判事が令和2年5月11日に東京地裁に着任した後に担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

3、野村武範判事の人事異動に関連する全文書

■裏付け資料

◆◆
上記「1」と「2」の記述からも判明するが、野村裁判官は東京地裁に2020年の4月1日から5月10日の40日間在職した後、東京地裁へ異動している。これだけ短期間で異動していること自体が尋常ではないうえに、東京地裁へ着任した後、産経新聞社を被告とする「押し紙」裁判の裁判長になり、敗訴が濃厚になっていた産経新聞社を完全勝訴させる判決を下した。

この判決をめぐって、「報告事件」ではないかとの疑惑が広がっている。疑惑の根拠は、前任の裁判長が、産経新聞社に対して2回にわたり和解金の支払いを提案していた事実である。当然、判決になれば、産経新聞社が敗訴する流れだった。ところが裁判が結審する直前になって裁判長の交代があり、裁判の流れが急変したのである。

当然、司法ジャーナリズムが検証しなければならない問題である。しかし、司法記者は何もしない。役割を放棄している。そこでわたしが情報公開に踏み切ったのである。

◆◆
情報公開請求に対して、2月24日付けで最高裁事務総局は、わたし宛てに3通の文書を送付した。文面はいずれも、請求資料の開示までに、「本日から2カ月程度かかる見込みです」というものである。

開示請求の「3」については、確かに時間を要する案件かも知れない。しかし、野村裁判官が東京高裁に在職した40日のあいだに、具体的にどのような職務を遂行したのかを開示するのに、2か月の時間を要するだろうか。裁判官になった後の全職務を公開しろと言っているわけではない。

民間企業であれば、半日もあればできる作業である。

◆◆
判決文をどう評価するのか、あるいは判決の結果を「報告事件」に指定された結果と判断するのか否かは、読み手によって異なる。そこでなぜわたしが野村裁判官の下した判決がおかしいと感じたかを示しておこう。次の2件の記事を参考にしてほしい。

(2020年12月14日付け)野村武範裁判長が執筆した判決文にみる論理の破綻、「押し紙」は認定するが賠償は認めない、産経新聞「押し紙」裁判の解説、判決全文を公開

(2020年1月18日付け)産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日
新聞社がらみの裁判では、不可解な判決が下されることがよくある。その結果、新聞社に関連して事件に関して言えば、半世紀にわたって問題になっている「押し紙」にも、いまだにメスが入っていない。これ自体が不自然極まりないことである。

裁判官として人を裁く特権はただならぬものがある。それを軽視した裁判官はジャーナリズムの検証を受ける必要があるのだ。

 ※報告事件:
最高裁事務総局の指示によって、裁判の担当書記官が進捗状況を最高裁に報告する事件。報告により最高裁事務総局が、裁判官の人事異動を行うなどして、判決の方向性をコントロールする。日本の司法の恥部である。生田暉雄弁護士(大阪高裁元判事)らが、問題視している。

【参考記事】裁判官の不可解な人事異動-木村元昭・田中哲朗の両氏、対読売の真村裁判・平山裁判・黒薮裁判で

【参考記事】田中哲郎裁判官の軌跡を検証する、電磁波裁判と読売裁判を担当して九州各地を転々、最高裁事務総局に責任はないのか?

産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日

昨年12月に判決が下された産経「押し紙」裁判(東京地裁)で、原告の販売店を敗訴させた野村武範裁判長の履歴が不自然だ。次のようになっている。

R 2. 5.11 東京地裁判事・東京簡裁判事
R 2. 4. 1 東京高裁判事・東京簡裁判事
H29. 4. 1 名古屋地裁判事・名古屋簡裁判事

■出典

名古屋地裁から東京高裁へ異動したのは、2020年4月1日。そのわずか40日後に、野村判事は東京地裁は異動して、産経「押し紙」裁判の裁判長に就任した。

野村判事は、東京高裁での40日の間に具体的にどのような仕事をして、何を理由に最高事務総局により異動させられたのか、今後の解明が必要だ。不自然な人事異動の事実を前に、「報告事件」の疑惑が浮上している。

少なくとも司法ジャーナリズムの観点からすれば、検証が必要だ。判決の結果を垂れ流すだけが、司法ジャーナリズムではないだろう。

ちなみに新聞社が被告となった事件では、過去にも不自然な事例がある。携帯電話の基地局撤去をめぐる事件でも、類似したケースがある。前者は国家によるメディアコントロールの問題と、後者も国家による電波政策の問題とかかわりを持っている。

◆◆
「報告事件」というのは、最高裁事務総局が判決の方向性を決める事件のことである。その具体的な手口は、裁判官の人事異動である。たとえばある事件で被告企業A社が敗訴する公算が強くなったにもかかわらず、最高裁事務総局がA社を勝訴させたい意向を持っている場合、事件の担当裁判官を交代させることで、判決の方向性を変えると言われている。国策がからんだ裁判に多いようだ。

事件を担当する書記官が、最高裁事務総局に審理の内容を「報告」することから、「報告事件」と呼ばれている。大阪高裁の元判事・生田輝男弁護士らが「報告事件」を問題にしてきた。このような最高裁事務総局による「操作」が事実であれば、司法界の一大汚点である。裁判そのものがペテンということになる。司法ジャーナリズムは、この点を検証しなければならない。

◆◆
産経「押し紙」裁判は、東京地裁が舞台になった。事件の担当裁判長は、複数回にわたって産経に対し、解決金を支払って和解するように提言した。そのための期日も設けた。これは判決になった場合は、産経が敗訴する可能性を示唆している。原告を敗訴させる方針であれば、わざわざ和解を提案しなくても、判決で請求を棄却させればそれですむことだからだ。

ところがコロナウィルスの感染拡大で、東京地裁が半ば閉鎖されている時期に、この事件の裁判長が交代になった。新裁判長は、野村武範判事だった。野村判事は裁判が再開されると、早々に裁判を結審して原告を完全敗訴させた。

◆◆
以下、再検証のための基礎資料を紹介しておこう。

■判決文(全文)

 

【参考記事】野村武範裁判長が執筆した判決文にみる論理の破綻、「押し紙」は認定するが賠償は認めない、産経新聞「押し紙」裁判の解説、判決全文を公開

2020年12月14日 (月曜日)

野村武範裁判長が執筆した判決文にみる論理の破綻、「押し紙」は認定するが賠償は認めない、産経新聞「押し紙」裁判の解説、判決全文を公開

筆者は、産経新聞「押し紙」裁判の判決(東京地裁、野村武範裁判長)を入手した。本稿では、判決内容を紹介しよう。また、判決文の全文を公開する。

既報したように、この裁判で東京地裁の野村裁判長は、「押し紙」による損害賠償を求めた原告(元販売店主)の請求を棄却した。筆者がこの判決を読んだ限りでは、野村裁判長が原告を敗訴させることを最初から決めていたことを伺わせる内容になっている。判決文の論理に極端な破綻がみうけられるからだ。

この倫理の破綻を捉えるためには、あらかじめ文書類における達意とは何かを理解しておかなければならない。それは単純な原理だ。

◆◆
改めていうまでもなく、判決文で最も重要なのは、誤解なく意味を伝達することである。判決全体を構成するセンテンスのひとつひとつに文法上の誤りや論理の論理の破綻がないことは言うまでもなく、同時に判決全体を通じて論理の破綻がないことも要求される。

この点を前提として判決を解説してみよう。この判決は、ある一時期においては産経による「押し紙」行為があったが、それによって生じた損害を賠償する必要はないという矛盾した論理構成になっている。

①文脈にみる論理の破綻

「押し紙」行為は独禁法違反なので、加害者は被害者に対する賠償責任を負わなければならない。ところがこの判決文ではそうはなっていない。たとえば、次の一文である。読者は、どこに論理の破綻(ごまかし)があるかに注意をはらいながら読んでほしい。

平成28年1月から5月までの期間に関しては、被告(産経)による減紙要求の拒絶がいわゆる押し紙に当たり得るとしても、原告が実際に被った負担は極めて限定的であり、原被告間で営業所の引継ぎに関する協議をする中で原告が顧客名簿の開示に応じないなどの対応をしていたとの交渉経緯があったことに照らすと、この間の本件各契約を無効とするまでの違法性があるとはいえない。

まず、この箇所で野村裁判長は、産経新聞が「押し紙」により元店主に損害を与えた事実を認定している。ところが、それを免責する理由として、「原被告間で営業所の引継ぎに関する協議をする中で、原告が顧客名簿の開示に応じないなどの対応をしていたとの交渉経緯があったこと」と述べて、賠償責任を帳消にしているのだ。

しかし、産経新聞が「押し紙」による損害を与えた事実(独禁法違反)と、それを免責する理由との間には何の整合性もない。整合性のない2つの事実を、野村裁判長は無理矢理に結びつけているのである。その結果、論理が破綻して、冷静に読めば、訳が分からない記述になっているのだ。

判決文を精読しない読者は、この箇所に注意を払うことなく、なんとなく納得してしまう危険性がある。ひとつひとつの言葉を正確に読み解いてみると、論理が破綻していることが判明する。

②判決文全体の論理の破綻
野村裁判長は、原告の元店主が訴えていた「押し紙」の被害を3期に分類して検証している。

・第1期 開業時(平成24年の開業時)
・第2期 開業から(~平成25年10月)
・第3期 廃業前(平成28年1月~7月)

野村裁判長は、全時期を通じて、原告の販売店に残紙があったことは認めている。残紙の量は、次の通りである。

■原告販売店における残紙の推移

しかし、第1期と第2期については、原告の元店主が、残紙を断ったことを示す証拠がないことを理由に、産経の賠償責任を免責した。伝統的な「押し紙」の判例に沿った判断を下したのである。

これに対して第3期については、明確に「押し紙」行為を認定している。たとえば次の記述である。

 原告の代理人弁護士は、平成28年1月15日付け書面において、被告の代理人弁護士に対し、被告が取引開始当初の960部から600部程度までの減紙に応じた際及び155部の減紙の申入れに応じた際には、このような開示(註:読者名簿の開示など)や説明は求められていないことから、前期イ(註:読者名簿の開示など)のような条件を付することなく減紙要求に応じることを求めた。しかし、被告(註:産経新聞)は減紙に応じなかった。(乙7号)

野村裁判長は、「押し紙」行為そのものは認定したのである。ところが既に述べたように、「原被告間で営業所の引継ぎに関する協議をする中で、原告が顧客名簿の開示に応じないなどの対応をしていたとの交渉経緯があったこと」を理由に、産経新聞の賠償責任を免責したのである。繰り返しになるが、「押し紙」行為の成立と、読者名簿の非開示など、元店主が説明に応じなかったことは論理上では何の関係もない。

このように判決文は、一方では「押し紙」を認定して、その一方では、いろいろと理由を設けて賠償を認めない方向性を定めるという矛盾した論理構成になっているのである。

◆◆
なお、以下は筆者の見解になるが、この裁判においては、「押し紙」の定義が間違っている。新聞社が販売店に対して買い取りを強制した部数が「押し紙」という前提になっているが、これは正確ではない。

「実配部数(実際に配達する部数)+予備紙」を超える部数は、理由のいかんを問わずすべて「押し紙」というのが、独禁法の新聞特殊指定に忠実な定義なのである。

元々、新聞業界には、搬入部数の2%を予備紙として認め、それを超える残紙は「押し紙」とする業界内のルールがあった。ところが新聞業界は、この「2%ルール」を廃止した。その結果、残紙はすべて予備紙という詭弁がまかり通ってきたのである。たとえ残紙があっても、それはすべて予備紙であって、「押し紙」ではないということになっていたのである。この解釈が、産経の「押し紙」裁判でも採用されている。

しかし、佐賀新聞の押し紙」裁判の判決(2020年)で佐賀地裁は、販売店経営に必要としない残紙は、予備紙とは言えないとする判断を下した。この判例の観点からすれば、産経「押し紙」裁判で確認された残紙は、すべて「押し紙」なのである。

◆◆
以上の点を確認した上で、野村裁判長が認定した第1期と第2期の残紙は、本当に予備紙だったのかを再検討してみる必要がある。

言うまでなく、予備紙とは、配達する新聞が破損した場合に備えて、販売店があらかじめ購入しておく予備部数である。しかし、原告の店主の店舗からは、古紙回収業者により大量の残紙が回収されていたわけだから、予備紙としての実態はなかったことになる。と、すればこれらの残紙は、「実配部数(実際に配達する部数)+予備紙」を超えた残紙、つまり「押し紙」なのである。

◆◆
なお、野村裁判長は、「折り込み詐欺」について、折込広告の取引に産経新聞は関与していないから、公序良俗には違反しないと判断している。筆者は、残紙による損害を折込広告で相殺するビジネスモデルそのものが公序良俗に違反すると考える。そのビジネスモデルを構築したのは、新聞社にほかならない。

このような取引の仕組みが公序良俗に違反するかどうかを「イエス」か、「ノウ」で問われれば、99%の人が、「イエス」と答えるだろう。

社会通念とはそのようなものなのである。

■判決文(全文)

 

 

2014年03月12日 (水曜日)

最高裁、野村総合研究所へ「裁判員等選任手続の検証等業務」の名目で約6400万円

裁判員制度で使われた出費を検証したところ、野村総合研究所が最高裁に対して、「裁判員等選任手続の検証等業務」の名目で、約6400万円の支払を求めていたことが分かった。請求書の日付は、2009年3月31日。裁判員制度がはじまるひと月まえである。

請求書には、最高裁の受領印があり、実際に請求金額が支払われた可能性が高い。請求書のPDFは次の通りである。

■野村総合研究所の請求書PDF

◇NTTデータに2億4300万円

MEDIA KOKUSYOで既報したように、(株)NTTデータに対しては、裁判員候補者名簿管理システムの開発と保守名目で2億4300万円を支出していた事実もある。(厳密には、NTTデータが請求)。

■請求書(裁判員候補者名簿管理システムの開発)

■請求書(裁判員候補者名簿管理システム開発のアプリケーション保守)??

不自然に高い金額である。相場は700万円ぐらいである。

◇パナソニックに1億5000万円

さらに、裁判員裁判に使う法廷用IT機器のレンタル料金として、最高裁からパナソニック ソリューションズ ジャパン株式会社に、2009年度だけで、約1億5000万円が支払われていたことが分かった。厳密に言えば、最高裁が本当に支払ったかどうかは不明だが、パナソニックが発行した請求書に、最高裁の受領印があり、実際に支払われた可能性が高い。

詳細は、次に示すPDFファイルのとおりである。

■「裁判員法廷用IT機器の賃貸借」請求書(2009年4月)

請求の仕方は、ほとんどの場合、月2回に分けて行われている。たとえば2009年4月の場合は、次のようになっている。

1回目:  6,551,580円

2回目: 14,599,727円

4月の合計は、約2115万円である。

裁判員裁判が始まったのは2009年5月であるが、2月、3月、4月も、その他の月と同程度の金額が支払われている

ただ、パナソニック ソリューションズ ジャパン株式会社に対する支払いについては、最高裁が全国の地裁で使う法廷用IT機器のレンタル料金を肩代わりしている可能性もあり、最終評価するためには再検証が必要だ。請求書では、「数量・単位」が「1式」となっている。

これについて最高裁に問い合わせたところ、詳細については、答えられないとのことだった。

近々に野村総合研究所、NTTデータ、パナソニックと最高裁の取り引きについての詳細な記録の公開を請求する予定。