1. 横浜副流煙事件、刑事告発のプレスリリース全文公開、診断書の悪用に警鐘

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2021年03月30日 (火曜日)

横浜副流煙事件、刑事告発のプレスリリース全文公開、診断書の悪用に警鐘

日本禁煙学会の作田学理事長を東京地検特捜部へ告発するに先だって、告発人7名のうち4名は、29日の午後、厚生労働省記者クラブで会見を開いた。その最に配布したプレスリリースは、次の通りである。

■写真説明:「化学物質過敏症レベルⅣ 化学物質過敏症」と同じ病名が2度記されている。また、化学物質過敏症では、レベル判定は行わない。この診断書とは別の診断書も存在する。そこには、「受動喫煙症レベルⅣ、化学物質過敏症」と記されている。しかし、受動喫煙症という病名は、世界標準の疾病分類であるICD10コードには存在しない。

 

【プレスリリース全文】

わたしたち7名の告発人は、3月29日の午後、東京地検特捜部へ日本禁煙学会・作田学理事長に対する告発状を提出します。事件の概要は次の通りです。

■事件の概要
この事件は、煙草の副流煙をめぐる隣人トラブルを発端としたものです。

2017年11月21日、A娘とその両親は、同じマンションの下階に住む藤井将登が吸う煙草の煙で「受動喫煙症」などに罹患したとして、喫煙の禁止と約4500万円の損害賠償を求める裁判を横浜地裁へ提訴しました。被告にされた藤井将登はミュージシャンで、自宅マンション(1階)の一室を仕事部屋にあてていました。その部屋は音が外部にもれない密封構造になっていて、煙草の副流煙も外部へはもれません。しかも、藤井将登は仕事柄、自宅にいないことが多く、自宅で仕事をする際も喫煙量は、煙草2,3本程度に限定されていました。

A娘らは、藤井将登と同じマンションの2階に住んでいます。ただし藤井宅の真上ではありません。真上マンションの隣に位置する住居です。つまり原告と被告の位置関係は、1階と2階を45度ぐらいの直線で結んだイメージになります。

この高額訴訟の根拠となったのが、A娘とその両親のために作田医師が作成した3通の診断書でした。特に審理の中心になったのは、A娘の診断書でした。作田氏は、A娘を直接診察せず、「受動喫煙症」という病名を付した診断書を交付しました。

ちなみに裁判の中で、A娘の父親に約25年の喫煙歴があったことも判明しました。
一審の横浜地裁判決は、2019年11月28日に言い渡されました。藤井将登の完全勝訴でした。原告の訴えは、体調不良という事実認定を除いて、なに一つ認定されませんでした。

それとは逆に藤井側の主要な訴えがほぼ認められました。しかも裁判所は、作田医師による診断書の作成行為を医師法20条違反と認定しました。また、日本禁煙学会の受動喫煙症の診断基準そのものが政策目的(煙草裁判の提訴)である可能性を指摘しました。

二審の東京高裁判決では、提訴の根拠になった作田医師作成の診断書が、意見書としか認められないと判断しました。

■刑事告発に踏み切った理由
この刑事告発には、社会的に重要な2つの意味があります。
まず第一に、この刑事告発は、医療関係者にとっても、患者にとっても真実の記録でなくてはならない診断書を、作田医師が診察をしていないのに診察したかのようにして、虚偽の内容で作成したことに対する責任追及の意味を持ちます。作田医師は、A娘の診断書を交付するにあたり、本人を直接診察せずに、「受動喫煙症」などと診断・記載しました。(医師法20条違反)。この診断書を根拠にA娘とその両親は、自分たちの隣人・藤井将登に対して、煙草の副流煙で「受動喫煙症」になったとして4500万円を請求する訴訟を起こしました。

しかし、作田医師が交付した診断書の内容は、診察をしないという医師法違反の行為により作成されただけでなく、みずからが理事長を務めている日本禁煙学会が推進している喫煙撲滅運動の政策目的に合わせて作成された、医学的な根拠を欠くものであったといわざるを得ません。「受動喫煙症」という病名は、世界標準の疾病分類であるICD10コードには存在しません。実際、A娘らが起こした訴訟は、一審も二審も棄却されました。

診断書が原因でこのような事件に至ったわけですから、それは同時に医療そのもの、とりわけ診断書に対する社会的信用を大きく失墜させるものです。日々真摯に医療に向き合っている大多数の医師に対する背信行為にほかなりません。厳しく断罪されるべきものです。

かりに非常識な診断書を作成した作田医師の責任が問われないとすれば、全国の医療機関で同じような診断書の悪用、都合の良い診断書を医師に書いてもらって、不当な賠償請求を行うことが横行する危険性があります。この事件は、医療関係者にとっても国民にとっても、看過できないものです。

第2に、わたしたちは、作田医師が作成した問題の診断書が、A娘とその両親が藤井将登に対して起こした高額訴訟に悪用されたことを問題視しています。

既に述べたように、この裁判はA娘らの敗訴で、しかも、原審である横浜地裁は、作田医師による医師法20条違反を、控訴審である東京高裁は、作田医師が交付した診断書は、診断書としては認められないと認定しました。

わたしたちは、近年社会問題になっている弱者に対するスラップ裁判の再発防止という観点から、作田医師の責任を明確にする意味で刑事告発に踏み切りました。

■添付資料
1、告発状
2、横浜副流煙裁判の横浜地裁判決
3、横浜副流煙裁判の東京高裁判決
4、原告家族の診断書(甲1・2・3号証)
5、原告娘の診断書(甲3号証)と同一日付の異なる診断書(甲46号証の6)
6、横浜市から開示された行政文書(横浜市が無診察による不正な診療報酬請求と認めて、  医療機関から診療報酬を返還させたことを示す文書)
7、日本赤十字医療センターに対する疑義照会
8、日本禁煙学会および横浜副流煙裁判に関する情報

■告発人
・藤井敦子(英語講師)
・岡本圭生(医師・医学博士)
・安江博(理学博士)
・石岡淑道(藤井さんを支援する会代表)
・酒井久男(藤井さんを支援する会副代表)
・黒薮哲哉(フリーランス記者)
・他1名