「押し紙」の経理処理は粉飾決算に該当しないのか? 古くて新しい疑問
意外に知られていないが「押し紙」政策には、粉飾決算が連動している疑惑がかけられてきた。しかし、国税局はこれまで、それを問題にしたことがない。15年ほど前、わたしはこれについて販売店主に尋ねたところ、
「トラブルが起きたときは、国税の●●さんに連絡を取るように、発行本社から指示を受けています」
と、いう返事が返ってきた。国税局は、「押し紙」が誘発する経理問題をごまかして来た可能性がある。
◇「あれは『押し紙』ではなく、積み紙です」
「押し紙」とは、新聞社が販売店に対して搬入する新聞のうち、過剰になって配達されないまま廃棄される新聞のことである。たとえば、実配部数(実際に配っている新聞の部数)が2000部しかないのに、3000部を搬入すると1000部が過剰になる。この1000部が「押し紙」である。
しかし、帳簿上では「押し紙」部数は、カモフラージュされる。具体的には、実配部数(実際に配達した新聞)、見本紙、さらには予備紙として経理処理される。
従って、上記の例で言えば、新聞社が新聞販売店に搬入した3000部は、すべて販売店が自分で注文した新聞ということになる。当然、3000部に対する卸代金を支払う。
それゆえに新聞社は、新聞の押し売りは絶対していないと開き直ってきたのである。過剰になっている新聞の存在を第3者から指摘されると、
「あれは『押し紙』ではなく、積み紙です」
と、詭弁(きべん)を弄する。販売店が自分で積み上げている新聞だという主張である。
裁判所もこうした詭弁を見抜けず、新聞社の「押し紙」政策にお墨付きを与えてきた。「押し紙」は独禁法に抵触するから、新聞社は絶対に「押し紙」政策の存在を認めるわけにはいかない。
そこで押し売りではないことを示す「アリバイ」を作るために、経理上のトリックが使われる。