電通、高橋まつりさん遺族と和解の陰で、下請け企業に過重労働のしわ寄せが発生中
執筆者:本間龍(作家)
1月20日、電通は自殺した高橋まつりさんの母親との和解文書に調印し、高橋さんの死因が過労死だったと正式に認めて謝罪した。電通は18項目にわたる合意文書を作成、和解金を支払い、毎年12月1日には遺族に報告することも約した。過労死を巡る合意内容としては、前例がないほど被害者遺族に配慮した内容となった。
だがもちろん、この合意は電通が自発的に行ったものではない。交渉は昨年2月から始まっていたのに、電通側が高橋さんの自殺は恋愛問題のこじれであると主張して謝罪を拒否したため、和解できなかった。それが10月の過労死認定発表を機に世論の袋だたきに会い、官邸や厚労省の徹底追及による刑事事件化で、仕方なく合意を結んだというのが実情だ。経営陣の初動の間違いが引き起こした影響はあまりにも甚大だった。
実際、先月28日には労働局によって会社としての電通と高橋さんの上司が書類送検されたが、捜査は7000人の社員全員の労働時間を1年間に渡って精査するなどまだ続いており、送検される者がさらに増えると予想されている。