関東地区新聞労連役員会における意見発表について -モラル崩壊の元凶「押し紙」-
福岡・佐賀押し紙弁護団・ 江 上 武 幸 (2024年「令和6年」12月19日)
去る11月29日(金)、ワークピア横浜で開催された関東地区新聞労連の役員会で、「新聞の過去・いま・将来」をテーマに意見発表する機会を得ましたのでご報告申し上げます。
私は、6月に、第8回横浜トリエンナーレを見学しましたが、メイン会場に足を踏み入れた途端、ミサイルが空気を切り裂く音を口真似で再現した映像作品に出合い、ウクライナやパレスチナで悲惨な戦争が続いている現実に引き戻されました。
2歳の孫を連れていましたので、大量破壊兵器を用いた無差別虐殺が行われていることが信じがたい反面、世界平和への強い政治的メッセージをもったアート作品を展示している横浜市民の皆さんの懐の深さに敬意を覚えました。
横浜は、日本で一番古い新聞が発行された街であること、熊本出身の宮崎滔天と中国の革命家孫文が出会った街であること、それに日本新聞協会が運営する日本新聞博物館があることを知りました。
京浜東北線の関内駅を下車し、日本新聞博物館に立ち寄ったところ、先生方に引率された小・中学生が社会科見学にきていました。国民の知る権利・表現の自由を保障するうえで新聞の果たしている役割の大きさが一目でわかるように全国の新聞が展示されていました。
動画で見る「押し紙」回収の現場
「押し紙」の回収現場を撮影した画像を紹介しよう。新聞社は、回収されている新聞は、「押し紙」ではないと主張してきた。彼らがその根拠としてきた論理は、「販売店が発行本社から補助金を騙し取ったり、折込チラシの水増しをするために、みずから注文した新聞部数なので、自分たちには責任がない」というものである。
しかし、新聞社が「押し紙」で莫大な利益を得ている事実は重い。「押し紙」がなければ、予算編成の規模も全く異なったものになる。新聞社は「押し紙」による不正取引を認識した上で、「押し紙」政策を続けてきたのである。
「押し紙」関連資料の閲覧制限、問われる弁護士の職業倫理、黒塗り書面は墓場へ持参しろ
「押し紙」裁判を取材するなかで、わたしは裁判書面に目を通す機会に接してきた。弁護士から直接書面を入手したり、あるいは裁判所の閲覧室へ足を運んで、訴状や準備書面、それに判決などの閲覧を請求し、その内容を確認してきた。
しかし、最近は、新聞社が書面に閲覧制限をかけていることが多い。書面の一部が黒塗りになっているのだ
国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発証数の推移」から不正な販売収入を試算、年間で259億円に
インターネットのポータルサイトにニュースが溢れている。衆院選挙後の政界の動きから大谷翔平選手の活躍まで話題が尽きない。これらのニュースを、メディアリテラシーを知らない人々は、鵜呑みにしている。その情報が脳に蓄積して、個々人の価値観や世界観を形成する。人間の意識は、体内の分泌物ではないので、外かいから入ってくる情報が意識を形成する上で決定的に左右する。
その意味で、メディアを支配することは人間の意識をコントロールすることに外ならない。国家を牛耳っている層が、それを効果的に行う最良の方法は、新聞社(とテレビ局)を権力構造の歯車に組み入れることである。実際、公権力を持つ層は、新聞社に経済的な優遇措置を施すことで、新聞ジャーナリズムを世論誘導の道具に変質させている。
「押し紙」が生み出す不正な販売収入が業界全体で年間に、少なくとも932億円になる試算は、9月27日付けのメディア黒書で報じたとおりである。
■「押し紙」問題がジャーナリズムの根源的な問題である理由と構図、年間932億円の不正な販売収入、公権力によるメディアコントロールの温床に
モラル崩壊の元凶 ―押し紙― 西日本新聞押し紙訴訟判決期日決定のご報告
2024年10月15
(文責)福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士江上武幸
第1 はじめに
西日本新聞社を被告とする2つの押し紙裁判が終盤に差し掛かっています。
長崎県の西日本新聞販売店経営者(Aさん)が、2021年7月に、金3051万円の損害賠償を求めて福岡地方裁判所に提訴した押し紙裁判の判決言い渡し期日は、来る12月24日(火)午後1時15分からと決まりました。
また、2022年11月に5718万円の支払いを求めて福岡地裁に提訴した佐賀県の西日本新聞販売店主(Bさん)の裁判は証人尋問を残すだけとなっており、来春には判決言い渡しの予定です。
これら二つの裁判を通じて、私どもは西日本新聞社の押し紙の全体像をほぼ解明できたと考えております。
(注:「押し紙」一般については、グーグルやユーチューブで「押し紙」や「新聞販売店」を検索ください。様々な情報を得ることができます。個人的には、ウイキペディアの「新聞販売店」の検索をおすすめします。)
訴状を公開、毎日新聞の「押し紙」裁判、約1億2000万円を請求、前近代的な新聞の発注方法で被害が拡大
福岡・佐賀押し紙弁護団は、10月1日、毎日新聞の元店主Aさんが大阪地裁へ提起した「押し紙」裁判の訴状(9月20日付け)を公開した。
それによると請求額は、1億3823万円。その内訳は、預託金返還請求金が623万円で、販売店経営譲渡代金が1033万円、それに「押し紙」の仕入れ代金が1億2167万円である。
「押し紙」問題がジャーナリズムの根源的な問題である理由と構図、年間932億円の不正な販売収入、公権力によるメディアコントロールの温床に
読売新聞社会部(大阪)が、情報提供を呼び掛けている。インターネット上の「あなたの情報が社会を動かします」というキャッチフレーズに続いて、次のように社会部への内部告発を奨励している。
「不正が行われている」「おかしい」「被害にあっている」こうした情報が、重大な問題を報道するきっかけになります。読売新聞は情報提供や内部告発をもとに取材します。具体的な情報をお持ちの方はお寄せください。情報提供者の秘密は必ず守ります。
モラル崩壊の元凶-押し紙- 毎日新聞押し紙裁判提訴のお知らせ
福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士 江上武幸(文責)
2024年(令和6年)9月20日
兵庫県で毎日新聞販売店を経営してきたA氏を原告とする1億3823万円の支払いを求める押し紙裁判を大阪地裁に提訴しました。
請求金額の内訳は、預託金返還請求金が623万円、販売店経営譲渡代金が1033万円、押し紙仕入れ代金が1億2167万円です。
読売大阪が「押し紙」裁判の元原告の預金口座を差し押さえ、新聞人らが反撃、約1300万円の金銭支払を求める
読売新聞の元販売店主が読売新聞大阪本社に対して起こした「押し紙」裁判のその後の経緯を報告しておこう。新しい展開があった。
既報したように、この「押し紙」裁判は、大阪地裁でも大阪高裁でも読売新聞が勝訴したが、大阪地裁は読売による独禁法(新聞特殊指定)違反を部分的に認めた。その意味で、元店主が敗訴したとはいえ、画期的な認定が誕生した。高裁が、この認定を取り消したとはいえ、判例集でも公開され、「押し紙」問題の解決に向けた一歩となった。
しかし、読売は、元店主に対して新たな動きに出た。8月1日付けで、元店主の預金口座を差し押さえて、約1300万円(延滞損害金などを含む)のお金を支払うように求めてきたのだ。
北國新聞社に対する「押し紙」の排除勧告、原文の全面公開
新聞業界の「押し紙」問題の本質を考える上で欠くことのできない公文書の原文を公開しておこう。この文書は、公正取引委員会が1997年(平成9年)12月22日付けで、北國新聞に対して交付した「押し紙」の排除勧告書である。
この事件を契機として、公正取引委員会と日本新聞協会(新聞取引協議会)は、「押し紙」問題解決へむけた話し合いを始めた。そして約2年後の1999年に、独禁法の新聞特殊指定の改訂というかたちで決着した。
ところが不思議なことに改訂された新聞特殊指定は、「押し紙」問題の解決への道を開くどころが、逆に「押し紙」をより簡単に強要できる内容となっていた。実際、その後、「押し紙」率が50%を超えるケースが、「押し紙」裁判の中で判明するようになった。
本稿で紹介するのは、この問題(新聞業界の「1999年問題」)の発端となった公文書である。事件の概要については、下記のURLからアクセスできる。
―モラル崩壊の元凶、「押し紙」― 西日本新聞・押し紙訴訟の報告
福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士・江上武幸(文責)
去る7月2日、西日本新聞販売店を経営していたAさんが、押し紙の仕入代金3051万円の損害賠償を求めた福岡地裁の裁判で、被告の担当員と販売部長の証人尋問が実施されました。双方の最終準備書の提出を待って、早ければ年内に判決が言い渡される見込みです。
押し紙は、新聞社が販売店に対し経営に必要のない部数を仕入れさせることをいいます。販売店への売上を増やすと同時に、紙面広告料の単価を吊り上げるためABC部数の水増しを目的とする独禁法で禁止された違法な商法で
す。
押し紙は、1955年(昭和30年)の独占禁止法の新聞特殊指定で禁止されてから約70年になります。このような長い歴史があり、国会でも再三質問に取り上げられてきたにもかかわらず、なぜ押し紙はなくならないのか、公正取引委員会や検察はなぜそれを取り締まろうとしないのか、押し紙訴訟に見られる裁判官の奇怪な人事異動の背景にはなにが隠されているのか、といった問題については、マスコミ関係者、フリージャーナリスト、新聞労連、独禁法研究者、公正取引委員会関係者、司法関係者など多方面の関係者、研究者・学者らによって更に解明が進められることが求められます。
新聞の発行部数は1997年(平成9年)の5376万部をピークに、2023年(令和5年)10月には2859万部と半世紀で約46%も減少しています。新聞販売店も2004年(平成16年)の2万1064店舗から、2023年(令和5年)の1万3373店舗と大きく減っています。
このまま推移すれば、10数年後には紙の新聞はなくなるだろうと予想されており、現在進行中の裁判の経過や背景事情について、時期を失せず皆様にお知らせすることはますます重要性を増しています。
西日本新聞「押し紙」裁判、証人尋問で残紙部数を把握した機密資料の存在を認める、担当員「私が作りました」
長崎県の元販売店主が2021年に起こした西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、7月2日の午後、福岡地裁で行われた。この中で証人として出廷した西日本新聞社の担当員は、原告弁護士の質問に答えるかたちで、同社が管轄する長崎県全域の販売店の残紙の実態を示す機密資料が存在することを認めた。
すでに佐賀県下の販売店については2016年に、この種の資料が存在することが、メディア黒書への内部告発で明らかになっていた。今回の尋問により、長崎県についても、同種の資料を西日本新聞社が内部で作成していた事実が分かったのだ。
既に暴露されている「佐賀県の資料」によると、西日本新聞社は、8月3日に販売店からの新聞の注文部数を確認し、その後、6日に販売店に新聞を搬入していた。しかし、搬入部数が注文部数を超えていた。
たとえば3日の注文部数が2000部で、6日の搬入部数が2200部であれば、差異の200部が残紙ということになる。たとえば次のように。