広島県府中市における読売新聞のABC部数、複数年にわたり地域全体をロック、販売会社が残紙の搬入先に

新聞社のグループ企業のひとつである販売会社が残紙の温床になっているという話は、昔からあった。わたしも、「販売会社が残紙の搬入先になっている」という話をよく耳にしてきた。
残紙の中身が「押し紙」か「積み紙」かにかかわりなく、新聞社と販売会社の商取引は、グループ内の物流になり、グループ企業全体としては残紙の被害を受けない構図がある。その結果、販売会社を対象にして、ABC部数を大幅に水増しする販売政策が横行する。グループとしては損害を被っていないから、内部告発者もなかなか現れない。
改めていうまでもなく、ABC部数を水増しする目的は、紙面広告の媒体価値を高めて、広告収入を増やすことである。また、それにより折込広告の定数も増やすことができる。
次に紹介する表は、広島県府中市における読売新聞のABC部数の変遷である。期間は2011年10月から2020年10月である。
倉敷市における朝日新聞のABC部数、もともとデタラメだった可能性、新聞購読契約書の大量偽造事件②

契約書を偽造して発行部数を水増し、それをABC部数として公表していた事件の続報である。初出は次の記事である。
■朝日新聞倉敷販売(株)の偽造契約書事件、新聞セールス団に「押し紙」か?ABC部数のかさ上げの新手口①
裁判はセールス団の敗訴で、損害賠償は認められなかったが、わたしが着目したのは、むしろABC部数を水増しする手口である。朝日新聞倉敷販売(株)に非があるにせよ、セールス団に非があるにせよ、ABC部数が大幅に水増しされていた事実は重大だ。
わたしは内部資料の裏付けを取るために、倉敷販売が担当していた倉敷市における朝日新聞のABC部数の変化を検証した。期間は約10年。2011年10月から2021年10月である。次の表は、その詳細だ。
産経新聞、はじめて100万部を下回る、3月度のABC部数
2020年3月度のABC部数が明らかになった。それによると産経新聞の販売店を対象としたABC部数が、はじめて100万部を下回った。同社の販売店部数は、99万7197部となった。コンビニ部数などを含む総部数は、約103万である。この1年で約18万部を減らしている。減部数の割合も高い。
朝日新聞は約432万部、読売新聞は約687万部となった。
詳細は次の通りである。
朝日新聞倉敷販売(株)の偽造契約書事件、新聞セールス団に「押し紙」か?ABC部数のかさ上げの新手口①

朝日新聞の販売会社である朝日新聞倉敷販売(株)〈2021年12月に閉鎖〉で、ABC部数のかさ上げ工作が行われていたことが、裁判資料(平成26年ワ第418号、既に終了)などで分かった。手口は、偽造の新聞購読契約書を大量に作成して、架空読者の新聞購読料を新聞セールス団が支払うというものである。架空読者の購読料を払うことで、「読者が実在するこを」を装い、ABC部数をかさ上げしていたのである。
「押し紙」が1部もない新聞社、熊本日日新聞社、地区単位の部数増減コントロールは見られず

「押し紙」は、新聞業界が半世紀にわたって隠し続けてきた汚点である。しかし、すべての新聞社が「押し紙」政策を経営の柱に据えてきたわけではない。例外もある。この点を把握しなければ、日本の新聞業界の実態を客観的に把握したことにはならない。
かねてからわたしは、熊本日日新聞は「押し紙」政策を採用していないと聞いてきた。1972年代に「押し紙」政策を廃止して、「自由増減」制度を導入した。「自由増減」とは、新聞販売店が自由に新聞の注文部数を増減することを認める制度である。
社会通念からすれば、これは当たり前の制度だが、大半の新聞社は販売店に対して現在も「自由増減」を認めていない。新聞社が注文部数の増減管理をしている。「メーカー」が「小売店」の注文数量を決めることは、常識ではあり得ないが、新聞業界ではそれがまかり通って来たのである。
熊本日日新聞社が「押し紙」制度を導入していないという話は真実なのか? わたしはそれを検証することにした。
◆マーカーが示す熊日と読売の著しいコントラスト
上に示す表は、熊本市の各自治体(厳密には自治体にある新聞販売店)に熊本日日新聞社が搬入した新聞の部数の変化を、時系列に入力したものである。出典は、日本ABC協会が年2回(4月と10月)に発行する『新聞発行社レポート』に掲載する区・市・郡別のABC部数である。新聞社ごとのABC部数が表示されている。
新しい方法論で「押し紙」問題を解析、兵庫県をモデルとしたABC部数の解析、朝日・読売など全6紙、地区単位の部数増減管理が多地区で、独禁法違反の疑惑

このところわたしが提唱している「押し紙」問題検証の方法論として、ABC部数の新しい解析方法がある。兵庫県全域をモデル地区として、ABC部数の変化を時系列に、しかも、新聞社(朝日、読売、毎日、産経、日経、神戸)ごとに確認してみると、ABC部数が地域単位でロックされている自治体が多数あることが判明した。地区単位で部数増減の管理が行われている疑惑が浮上した。
独禁法の新聞特殊指定に違反している疑惑がある。公正取引委員会は、少なくとも調査すべきだろう。
たとえば神戸市灘区における読売新聞のABC部数は、次のようになっている。
2017年4月 : 11,368
2017年10月: 11,368
2018年4月 : 11,368
2018年10月: 11,368
2019年4月 : 11,368
2年半にわたってABC部数は変化していない。新聞の購読者が特定の広域自治体で、2年半に渡って一部の変化もしないことなど、実際にはありえない。これは新聞社が販売店に搬入する新聞の「注文部数」を決めていることが原因である可能性(ノルマ部数、押し紙)がある。あるいは、販売店が自主的に購入する新聞部数を定数化している可能性(積み紙)もある。どちらの側に非があるにしても、これは広告主にとっては見過ごせない問題である。
本稿は、デジタル鹿砦社通信に連載した兵庫県全域をモデルケースとした新しい方法論の下で行ったABC検証の結果の報告である。以下、読者は以下に掲載した調査結果を確認する前に、次の【注意】を一読願いたい。表を理解する上で不可欠だ。
【注意】以下の表は、ABC部数を掲載している『新聞発行社レポート』の数字を、そのままエクセルに入力したものではない。数字を表示する順序を変えたのがこれらの表の大きな特徴だ。
『新聞発行社レポート』は、年に2回、4月と10月に区市郡別のABC部数を、新聞社別に公表する。しかし、これでは時系列の部数変化をひとつの表で確認することができない。確認するためには、『新聞発行社レポート』の号をまたいでデータを時系列に並べ変える必要がある。それにより特定の自治体における、新聞各社のABC部数がロックされているか否か、ロックされているとすれば、その具体的な部数や期間はどうなっているのかを確認できる。同一の新聞社におけるABC部数の変化を、地方自治体をベースにして長期に渡って追跡したのが以下の表の特徴だ。
新聞衰退論を考える ── 新聞人の知的能力に疑問、新聞社のビジネスモデルの闇、ABC部数検証・兵庫県〈3〉

今回の記事は、兵庫県全域を対象として新聞のABC部数の欺瞞(ぎまん)を考えるシリーズの3回目である。ABC部数の中に残紙(広義の「押し紙」、あるいは「積み紙」)が含まれているために、新聞研究者が新聞業界の実態を分析したり、広告主がPR戦略を練る上で、客観的なデーターとしての使用価値がまったくないことなどを紹介してきた。連載の1回目では朝日新聞と読売新聞を、2回目では毎日新聞と産経新聞を対象に、こうした側面を検証した。
今回は、日経新聞と神戸新聞を対象にABC部数を検証する。テーマは、経済紙や地方紙のABC部数にも残紙は含まれているのだろうかという点である。それを確認した上で新聞部数のロック現象の本質を考える。結論を先に言えば、それは新聞社の販売政策なのである。あるいは新聞のビジネスモデル。
日経新聞と神戸新聞のABC部数変化を示す表を紹介する前に、筆者は読者に対して、必ず次の「注意」に目を通すようにお願いしたい。表の見方を正しく理解することがその目的だ。
【注意】この連載で紹介してきた表は、ABC部数を掲載している『新聞発行社レポート』の数字を、そのまま表に移したものではない。『新聞発行社レポート』の表をエクセルにしたものではない。数字を並べる順序を変えたのが大きな特徴だ。これは筆者が考えたABC部数の新しい解析方法にほかならない。
『新聞発行社レポート』は、年に2回、4月と10月に区市郡別のABC部数を、新聞社別に公表する。しかし、これでは時系列の部数変化をひとつの表で確認することができない。時系列の部数増減を確認するためには、『新聞発行社レポート』の号をまたいでデータを時系列に並べ変える必要がある。それにより特定の自治体における、新聞各社のABC部数がロックされているか否か、ロックされているとすれば、その具体的な中身はどうなっているのかを確認できる。同一の新聞社におけるABC部数の変化を長期に渡って追跡したのが表の特徴だ。
◆日経新聞のABC部数変化(2017年~2021年)
新聞衰退論を考える ── 新聞社が新聞の「注文部数」を決めている可能性、新聞社のビジネスモデルの闇、ABC部数検証・兵庫県〈2〉

本稿は、兵庫県をモデルとした新聞のABC部数の実態を検証するシリーズの2回目である。1回目では、朝日新聞と読売新聞を取り上げた。これらの新聞のABC部数が、多くの自治体で複数年に渡って「増減ゼロ」になっている実態を紹介した。いわゆるABC部数のロック現象である。
今回は、毎日新聞と産経新聞を取り上げる。朝日新聞や読売新聞で確認できた同じロック現象が、毎日新聞と産経新聞でも確認できるか否かを調査した。
【注意】なお、下記の2つの表は、ABC部数を掲載している『新聞発行社レポート』の数字を、そのまま表に入力したものではない。『新聞発行社レポート』は、年に2回、4月と10月に区市郡別のABC部数を、新聞社別に公表するのだが、時系列の部数変化をひとつの表で確認することはできない。時系列の部数増減を確認するためには、『新聞発行社レポート』の号をまたいでデータを時系列に並べ変える必要がある。それにより特定の自治体における、新聞各社のABC部数がロックされているか否かを確認できる。
次に示すのが、2017年4月から2021年10月までの期間における毎日新聞と産経新聞のABC部数である。着色した部分が、ロック現象である。ABC部数に1部の増減も確認できない自治体、そのABC部数、ロックの持続期間が確認できる。ロック現象は、「押し紙」(あるいは「積み紙」)の反映である可能性が高い。新聞の読者数が、長期間にわたりまったく変わらないことは、通常はあり得ないからだ。
新聞衰退論を考える ── 公称部数の表示方向を変えるだけでビジネスモデルの裏面が見えてくる ABC部数検証・兵庫県〈1〉

冒頭に示すのは、兵庫県全域における読売新聞のABC部数である。期間は2017年4月から2021年10月である。カラーのマーカーをつけた部分が、部数がロックされている箇所と、その持続期間である。言葉を変えると、読売新聞が販売店に対して販売した部数のロック実態である。
【注意】なお、冒頭の表は、ABC部数を公表している『新聞発行社レポート』の数字を、そのままエクセル表に移したものではない。『新聞発行社レポート』は、4月と10月に区市郡別のABC部数が、新聞社ごとに表示されるのだが、時系列の部数変化を確認・検証するためには、号をまたいで時系列に『新聞発行社レポート』のデータを並べてみる必要がある。それにより特定の自治体における、特定の新聞のABC部数が時系列でどう変化しいたかを確認できる。
いわばABC部数の表示方法を工夫するだけで、新聞業界のでたらめなビジネスモデルの実態が浮かび上がってくるのである。
朝日新聞のABC部数についても、同じ方法で解析した。
2022年01月15日 (土曜日)
軽減税率や「押し紙」で新聞業界が得る不正収入、年間1300億円超の試算

新聞業界は、軽減税率の適用や「押し紙」でどの程度の不正収入を得ているのか。試算した結果、年間1300億円を超える可能性があることが分かった。
・・・・・・・・・・・・
『文化通信』の報道によると、日本新聞協会の税制に関するプロジェクトチーム(税制PT)は昨年の1月25日、自民・公明の税調会長に、税制改正要望書を提出した。その中身は、軽減税率の恒久化、適用範囲を即売新聞、書籍、雑誌、電子新聞へ拡大することなどである。骨子は次の通りだ。
「残紙」世界一の都市、大阪府堺市、読売・朝日・毎日・産経のABC部数にみる異常、複数年に渡って1部の増減もなし、新聞の注文方法に独禁法違反の疑惑

ABC部数は、日本ABC協会が定期的に公表する出版物の公称部数である。広告営業や折込定数(販売店に搬入する折込広告の部数)を決める際に使われる。従ってABC部数は、読者数を反映したものでなければ意味がない。
たとえば〇〇新聞社のABC部数が50万部で、実際の読者数が30万部では、両者の間に20万部の差異があり、広告主を欺く温床になる。紙面広告の媒体価値をごまかしたり、折込定数の設定を攪乱する原因になる。
このところABC部数と読者数に著しい乖離がある疑惑が浮上している。その推測の根拠となるのが、ABC部数が複数年に渡って1部の増減もない自治体の存在である。つまりABC部数がロックされた状態になっているのだ。常識的に考えて、広域にわたる地区で、新聞の読者数が何年にも渡ってまったく同じという状態はありえない。まして現代は新聞離れの時代である。
筆者の調査では、東京都、大阪府、広島県、香川県、長崎県などでこの現象が確認できた。調査はまだ始まったばかりなので、今後、調査が進むとさらにロック現象が観察される自治体が増える可能性が高い。
2021年12月14日 (火曜日)
千葉県の選挙公報を水増し・大量廃棄、2019年の参院選で約10万部、NHK党の大野富生市議が調査

新聞・広告関係者が新聞に折り折り込んで配布する広報紙や選挙公報を水増し発注させて、不正な折込手数料を得ている実態が、水面下の問題になっている。この詐欺的な手口は、何の制裁を受けることもなく続いてきた。新聞・広告関係者は、「知らぬ」「感知していない」で押し通りしてきた。
千葉県流山市の大野富生議員(NHK党)は、この問題について千葉県全域を対象に調査した。千葉県選挙管理委員会に対して情報公開請求を行ったのだ。請求した資料は、2019年7月21日に施行された参議院通常選挙の際に、千葉県選挙管理委員会が委託した選挙公報の新聞折り込み部数(委託部数)である。
請求を受けて千葉県は、折込委託部数が1,769,824部だったとする資料を公開した。ここから不正疑惑が深まった。
と、いうのも同じ時期の千葉県のABC部数は、1,562,908部しかなかったからだ。新聞折り込みを行っていない四街道市(22,515部)と白井市(13,737部)のABC部数を除くと、1,526,656部しかない。
ちなみにABC部数は新聞社が販売店に搬入している部数である。この部数に、千葉日報(ABC協会の非会員)の公称部数、約145,000部を加えると、千葉県下における新聞部数は、総計で1,671,656部ということになる。
以上のデータをまとめたのが次の表である。【続きはデジタル鹿砦社通信】
