2026年04月09日 (木曜日)
「何が報じられないのか」──徴兵制度への道、予備自衛官法案が示す日本メディアの盲点

報道を検証する際には、何を報じているかよりも、何を報じていないかに着目する必要がある。新聞研究者の故・新井直之氏が、『ジャーナリズム』(東洋経済新報社)の中で述べたこの提言を参考にして、8日の新聞報道を検証すると、ある具体的な事例が浮かび上がる。
それは4月3日に高市内閣が予備自衛官等兼業特例法案を国会に提出したニュースである。公務員が予備自衛官になるための手続きを簡素化する法案である。予備自衛官とは非常勤の自衛官のことであり、緊急時に召集される。徴兵制度への最初のステップとなる可能性も指摘されている。いわば国民を戦争に動員する制度に関わる法案である。その意味で、ニュースとしての価値は高い。
このニュースを報じたのは、筆者が調べた限りでは、しんぶん赤旗のみだった。念のためにIAでも報道の有無を確認したが、次のような答えが返ってきた。
「大手紙の確定的な記事URLや本文出典は、現時点で一般公開情報としては確認できませんでした」
しんぶん赤旗を除き、日本のメディアはこのニュースを報じていない可能性が高い。
◆「押し紙」収入の試算、中央紙だけで年間約850億円規模
日本の大手メディアが、国策を批判する視点からの報道を控える背景には、何があるのだろうか。どのような可能性が考えられるのだろうか。記者の職能が低下した結果である可能性もあるが、筆者はそれよりも、新聞社の経営に直結した別の要因があると考えている。推測の域を出ないが、新聞社が「押し紙」によって生み出す莫大な収入(独禁法違反)を黙認する国策と引き換えに、政府にとって不都合な報道を控えるという暗黙の了解が存在する可能性も否定できない。
「押し紙」とは、新聞販売店に対して、実際の読者数に予備紙(一般に約2%)を加えた適正部数を超えて配達される部数を指す。たとえば読者数が1000人の販売店であれば、予備紙は20部であり、合計1020部が適正な供給量となる。それを超える部数は、原則として「押し紙」とされる。
近年の「押し紙」裁判で明らかになった割合は、中央紙の場合、おおむね3割から5割とされている。
「押し紙」による新聞社の販売収入は、一般に想像されている以上に大きい。2025年8月時点で、中央紙(朝日・毎日・読売・産経・日経)の発行部数は約1180万部とされている。
仮に「押し紙」の割合を20%とすると、約236万部が「押し紙」。新聞1部あたりの卸価格を月額1500円(朝刊単独版と仮定)とすれば、1か月あたりの「押し紙」収入は約35億4000万円、年間では約424億8000万円に達する。
もし「押し紙」率が40%に達すれば、年間収入は約850億円規模となる。新聞社が販売店に対して、かなり高額な補助金を支給しているとはいえ、部数の水増しで紙面広告の収入も増やしているので、新聞社にとって大きな収益源となっている。
なお、この試算は控えめな前提に基づいている。朝夕刊セット版の場合、卸価格は2000円前後となり、収入規模はさらに拡大する。以上の点から、この試算が極端に誇張されているとは言えないだろう。
◆新聞社の収益構造と報道
このように、新聞社の収益構造が報道内容に影響を及ぼしている可能性は否定できない。記者が高い職能を備えていたとしても、新聞は個人の発信ではなく、企業活動の一部であるため、記者個人の見解が必ずしも紙面に反映されるとは限らない。企業として存続する以上、国策を強く批判する報道には一定の制約が生じる可能性がある。
もちろん新聞はジャーナリズムであり、表向きには「反権力」の立場を掲げている。しかし現実には、重要な局面において政府との関係性を無視できない側面もある。
一見すると逆説的だが、中国のCGTNによる日本報道の方が、日本の軍事大国化などの国策に対してより批判的な論調を示している。
参考サイト:CGTN https://japanese.cri.cn/
報道を検証する際には、何を報じているかよりも、何を報じていないかに着目する必用がある。新聞研究者の故・新井直之氏が、『ジャーナリズム』(東洋経済新報社)の中で述べたこの提言を参考にして、8日の新聞報道を検証すると、ある具体的な事例が浮上する。
それは4月3日に高市内閣が予備自衛官等兼業特例法案を国会に提出したニュースである。公務員が予備自衛官になるための手続きを簡素化する法案である。予備自衛官とは、非常勤の自衛官のことで、緊急時に召集される。徴兵制度への最初のステップである可能性が高い。いわば国民を戦争に参戦させるための法案である。
その意味でニュースとしての価値は高い。
このニュースを報じたのは、わたしが調べた限りでは、しんぶん赤旗のみだった。念のためにIAでも報道の有無を確認してみたが、次のような答えが返ってきた。
「大手紙の確定的な記事URLや本文出典は、現時点で一般公開情報としては確認できませんでした」
しんぶん赤旗を除いて、日本のメディアはこのニュースを報じていない可能性が高い。
◆「押し紙」収入の試算、中央紙だけで年間・約850億円規模
日本の大手メディアが、国策を批判する視点からの報道を控える背景になにがあるのだろうか? どのような可能性が想定できるのだろうか。記者の職能が劣化した結果である可能性もあるが、筆者は、それよりも新聞社経営に直結した客観的な別の原因があるように思う。推測の範囲をでないが、新聞社が「押し紙」により生む莫大な不正収入を黙認する国策と引き換えに、政府にとって致命的な報道は控える暗黙の了解がある可能性が高い。
「押し紙」とは、新聞販売店の「読者数+2%の予備紙」を超えた超過部数を意味する。たとえばある販売店で、読者数が1000人のケースでは、予備紙が20部。総計の1020部が合理的な部数で、それを超える部数は、原則的にすべて「押し紙」である。
最近の「押し紙」裁判で明らかになった「押し紙」の割合は、中央紙の場合は、3割から5割である。
「押し紙」による新聞社の不正な販売収入は、一般に想像されている以上に巨額である。2025年8月時点で、中央紙(朝日・毎日・読売・産経・日経)の発行部数は約1180万部とされている。
仮に「押し紙」の割合を20%とすると、約236万部が実配部数を超える新聞となる。新聞1部あたりの卸価格を月額1500円(朝刊単独版と仮定)とすれば、1か月あたりの「押し紙」販売収入は約35億4000万円、年間では約424億8000万円に達する。
もし「押し紙」率が40%に及べば、年間収入は約850億円規模となる。販売店に対して各種補助金が支出されているとはいえ、新聞社が莫大な「純利益」を得ている構図に変わりはない。
しかも、この試算は控えめな前提に基づいている。朝・夕刊セット版の場合、卸価格は2000円前後となり、収入規模はさらに膨らむ。以上の点から、筆者の試算が誇張であるとは言えないだろう。
◆新聞社の客観的な収益構造と報道
このように新聞社の客観的な収益構造が、報道内容に影響を及ぼしている可能性が高い。記者がいくら高い職能の備えていても、新聞は記者個人のブログではないので、紙面には反映されない。企業として新聞社が存続するためには、国策を徹底的に批判する視点を回避する必用がある。
もちろん新聞はジャーナリズムであるから、表向きは「反権力」の旗を掲げているが、肝心の部分では、政府と「取引」せざるを得ないのである。
ある意味ではおかしな現象だが、たとえば中国のCGTVによる日本報道の方が、自民党の国策を鋭く指摘する傾向がある。
