イラン戦争がどのようにしてペトロダラーの終焉を招くのか、日本でタブー視されている「ドルから人民元への移行」、米国のMarkt Watchが報道

イラン戦争の原因や今後予想される世界経済の方向性について、「ペトロダラー制度」の崩壊を指摘する報道が増えている。ペトロダラー制度とは、石油の取引でドルを決済通貨とする慣行であり、1974年に米国とサウジアラビアの間で始まったとされる。この取り決めの期限は公表されていないが、50年と推測する説が有力である。すなわち、2024年が一つの節目とみられている。
実際、取り決めの期限が意識されるにつれて、ドル以外の通貨への切り替えに関する動きが国際ニュースで取り上げられるようになった。その代表例として、BRICSが検討している新通貨構想がある。また、ロシアのルーブルや、中国の人民元の利用拡大も注目されている。
一方で、米軍の軍事行動と資源確保の関連性を指摘する見方もある。例えば、ベネズエラやイランへの関与に加え、2025年12月にはナイジェリアに対する空爆が行われたとする報道もある。これらはテロ組織の掃討を目的とされているが、ナイジェリアが産油国である点を踏まえると、石油資源が背景にある可能性を指摘する意見も存在する。この点については、スペインの国会でも議論されたとされる。
次に紹介するのは、「イラン戦争がどのようにしてペトロダラーの終焉を招くのか」と題する記事である。出典は MarketWatch。米国の主要な経済メディアの一つであり、親会社は News Corp である。同社は Rupert Murdoch によって率いられている。こうした議論が日本であまり紹介されない背景については、ドル支配から人民元への移行といったテーマが慎重に扱われている可能性も考えられる。
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「イラン戦争がどのようにしてペトロダラーの終焉を招くのか」出典
中東紛争がもたらす予期せぬ結果の一つとして、いわゆる「ペトロドル体制」(注:ドルによる石油取引の決済)の終焉が挙げられるかもしれない。世界各国がドルで貯蓄を行う主な理由は、エネルギー代をドルで支払っているためである。ホルムズ海峡の実質的な封鎖によって引き起こされる混乱が、主要経済国による石油取引の通貨を他通貨へと移行させることになれば、中央銀行の準備資産や世界貿易におけるドルの覇権は深刻な打撃を受けることになるだろう。
この警告は、ドイツ銀行のストラテジスト、マリカ・サチデヴァ氏が火曜日に発表した特別レポートの中で発せられたもので、その副題は「ペトロドルにとってのパーフェクト・ストーム」となっている。ドイツ銀行の米ドルに関する見解は、1月に同銀行の外国為替戦略責任者ジョージ・サラベロス氏によるレポートがスコット・ベッセント財務長官の怒りを買った際にも物議を醸していた。
ベッセント氏が当時その見解に反対していたのであれば、サチデヴァ氏が今回の最新調査で「国境を越えた商取引におけるドルの支配力は、議論の余地はあるもののペトロドルで築かれており、現時点ではその基盤は脆弱だ」と主張していることに対し、好意的に受け止める可能性は低いだろう。
サチデヴァ氏は、原油はドル建てで取引され、請求書も決済もドルで行われると指摘する。この慣行は、1974年に米国とサウジアラビアの間で結ばれた合意に遡る。同氏は、サウジアラビアが米国の安全保障の保証と引き換えに、貿易黒字をドル建て資産に投資することに合意したと記しており、それらの資産は概ね米国債であった。
エネルギー輸出国がドル準備高を積み上げるにつれ、米国は巨額かつ低コストで資金を調達できるようになった。これは、フランスの元大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタンが「法外な特権」と呼んだものである。
しかし、サチデヴァ氏は、世界は変化しており、中東で生産される石油の大部分は、現在では純輸出国となっている米国ではなく、アジアに販売されていると主張する。制裁対象となっているイランとロシアの原油(両国合わせて1日約1300万バレル、世界消費量の約14%を占める)は、サチデヴァ氏の表現を借りれば、しばらく前から「ドルレールから外れて」取引されている。彼女は、サウジアラビアが中央銀行デジタル通貨(CBDC)を用いた「プロジェクト・mBridge」のような非ドル決済の形態を試験的に導入していると指摘している。
サチデヴァ氏は、湾岸紛争の地域的な激化が、米国が提供する安全保障の傘に関する前提に疑問を投げかけ、これらの国々の一部に外貨建て資産の保有を解消させる事態を招くのではないかと懸念している。例えば、サチデヴァ氏は、ここ数週間、支払いを人民元建てにすれば海峡の安全な通過が保証されるという事例が報告されていると指摘している。
サチデヴァ氏は次のように記している。「この紛争は、ペトロドルの支配力の衰退とペトロ元(石油人民元)の始まりをもたらす重要なきっかけとして記憶されるかもしれない。」
サチデヴァ氏が挙げる副次的な要因として、世界が化石燃料への依存を減らし、国内で入手可能な燃料、再生可能エネルギー、原子力へと移行するにつれ、ドルを保有する必要性もそれに応じて減少する可能性があることが挙げられる。「防衛とエネルギーにおいて自給自足を実現した世界は、ドル準備高を削減する世界でもあるだろう。」
