2019年08月04日 (日曜日)

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」が愛知県知事の手で中止に追い込まれた。独裁政権の国が、こうした処置を講じることは、チリのピノチェト政権下の時代に見るようにめずらしくはないが、先進資本主義国といわれる国で、このような措置が講じられるのは極めてまれだ。

特定秘密保護法が成立した2013年あたりから、将来的に日本も言論表現の自由が著しく制限されるのではないかとする見方が増えていたが、いよいよそれが現実味を帯びてきた。

国際芸術祭の「表現の不自由展・その後」で、最初にクレームを付けたのは、河村たかし名古屋市長だった。当然、河村氏がどこまで芸術を理解したうえで、こうした行為に及んだかということが問題になる。

もちろん芸術の概念は固定したものではないが、河村市長は根本的なことがよく分かっていないのではないかというのが、わたしの見方だ。「芸術とは何か」という問題について、故岡本太郎が著書『自分の中に毒を持て』の中で、示唆に富むエピソードを紹介している。大事な指摘なので、引用しておこう。

先年、東京のデパートで大規模な個展を開いた。ある日、会場に行くと、番をしていた人が面白そうに、ぼくに近づいてきた。にやにや笑いながら報告するのだ。混み合った場内でもちょっと目に立つ女性が、二時間あまりもじいっと絵の前に立っていた。そのうちにポッシと、

「いやな感じ!」

 そう言って立ち去った、という。

 報告しながら、相手はぼくの反応をいたずらっぽくうかがっている。さすがの岡本太郎もギャフンとするだろう、と期待したらしい。ところがぼくは逆にすっかり嬉しくなってしまったのである。

 それで良いのだ。絵を見せた甲斐があるというものだ。その人こそすばらしい観賞者だ。

 ただ不愉快なものならば、そんなに凝視しているはずがない。ちらりと見て、顔をそむけて行ってしまう。いや、見もしないだろう。それだけ見つめたあげく、この発言。

「あら、いいわね」
「しゃれてるじゃない」
「まことに結構なお作品」

 なんて言われたら、がっかりだ。こちらは自分の生きているアカシをつき出している。人間の、本当に燃えている生命が、物として、対象になって目の前にあらわれてくれば、それは決して単にほほ笑ましいものではない。心地よく、いい感じであるはずはない。

 むしろ、いやな感じ。いやったらしく、ぐんと迫ってくるものなのだ。そうでなくてはならないととぼくは思っている。

 ぼくは『今日の芸術』という著書の中で、芸術の三原則として、次の三つの条件をあげた。

 芸術はきれいであってはいけない。うまくあってはいけない。心地よくあってはいない。それが基本原則だ、と。

河村市長は、芸術についてなにも知らないまま、「表現の不自由展・その後」に不快感を示したのである。が、河村氏は従軍慰安婦の少女像が気になって気になって仕方がなかったのだ。不快だが、印象に刻まれてしまう。はからずも芸術に接する体験をして、我慢できなくなってクレームを付けたのだ。

改めていうまでもなく、従軍慰安婦は紛れもない歴史的事実であるからこそ、多くの日本人の神経を逆なでするのだ。

が、津田監督のねらいは、むしろこのあたりにあったのではないか。事実、朝日新聞に次のようにコメントしている。

「物議を醸す企画を公立の部門でやることに意味があると考えた。成功すれば企画に悩む人の希望になれると考えたが、劇薬だった。トリエンナーレに入れることが適切だったかは考えなければいけないと思っている」

◇理不尽な要求にはNO!

言論表現の自由を語るとき、そこには右翼とか、左翼といった前提が入り込む余地はない。右翼にとって不快なものであっても、左翼にとって不快なものであっても、それを排除することは、言論妨害であり、言論表現の自由に反する。「反差別」のラディカルな運動を展開し、大阪でリンチ事件を起こした人々は、自分たちの理念に合わない者は法律で取り締まるべきだという論理のようだが、これは間違っている。同じように、国際芸術祭の「表現の不自由展・その後」を中止に追い込んだ人々も、間違っている。

今回の件で残念なのは、津田監督が「中止」を受け入れてしまったことだ。かりに岡本太郎が「表現の不自由展・その後」の監督を務め、今回の事態に対峙していれば、おそらく頑として中止を受け入れなかったのではないか。岡本太郎は芸術に命をかけてた人だったし、妥協を受け入れた瞬間に、岡本太郎は存在しなくなることを知っていたからだ。

不当な圧力に屈しなかった有名な事例としては、チリの軍事クーデター(1973年)で殺害されたサルバドール・アジェンデの例がある。クーデターの直前に、アジェンデはピノチェト側から海外へ亡命するための飛行機を準備する提案を受けている。ピノチェトは当初、無血クーデターを狙っていたのだ。が、アジェンデはそれを断り、ラジオで国民に向けて自分は屈服しない旨の演説を行った。

その後、大統領官邸は空爆され、アジェンデは死亡した。しかし、アジェンデが示した姿勢が、その後の反政府運動の大きな力となり、チリは民主主義を取り戻したのである。そのことは、ミゲール・リティン監督の『チリの記録』にも撮影されている。

津田監督は、理不尽な要求はあくまでも拒否し、抵抗すべきだっただろう。

2019年07月23日 (火曜日)

滋賀医科大学医学部付属病院の泌尿器科の暴走が止まらない。岡本圭生医師による前立腺癌患者に対する小線源治療を妨害しないよう仮処分命令を受けたあとも、大学病院は手術枠を減らしたり、手術の順番を待つ待機患者に「(来年以降は)附属病院泌尿器科の他の医師による治療及び経過観察を行うか、他の医療機関に紹介してもらうかを選択します」と誓約させている。

岡本メソッドの評判を落とすため、治療成績を他の大学病院と比較した文書をウェブサイトで公表したが、数字の巧みなトリックであることも判明した。こうした「岡本バッシング」と平行して泌尿器科は、4月から岡本医師とは別枠で独自の小線源治療を開始。しかし関係者の話では、7月、8月、9月の手術枠が1件も埋まらず、10月に1件だけと、患者が集まらない。泌尿器科に対する不信感が広がっているようだ。最新情報をレポートする。


【Digest】
◇仮処分後の岡本外来
◇仮処分の内容を履行ぜず
◇待機患者に突きつけられた書面
◇低リスクの患者がかかえる不安
◇事件をなかったことに
◇国立がん研究センターのプレスリリースを偽造
◇比較方法の誤り
◇民間企業の視点から事件を見ると
◇待機患者の苦しみは続く


岡本医師に割り当てられてきた小線源治療の手術枠は、週3枠。毎週火曜日に3人の患者が「執刀」を受けてきた。6月以降に手術枠に組み入れられる患者は、仮処分によって治療を受けられることになった人々。司法命令で命が繋がった患者たちである。7月2日が、手術の期間が延長されてのち、最初の手術日だった。【続きはマイニュースジャパン】

2019年07月19日 (金曜日)

ここ3カ月ほどの間に、読売新聞社、あるいは読売関係者から、読売新聞についての報道に対する抗議があったという情報提供が2件あった。このうちの一件は、新聞販売店の元従業員からの情報提供で、自身のブログで読売を批判したところ、標的にされた販売関係者がブログのサーバーに圧力をかけてきたというものである。

このブログは、読売関係者を明らかに誹謗中傷しており、抗議を受けてもいたしかたないと判断できた。削除して、謝罪するようにアドバイスした。

もう一件は、山武ジャーナルというサイトの主催者から得た情報である。同サイトで「残紙処理現場 配達されず、闇から闇に葬られる新聞残紙。折込みで届けられるはずの広報誌の行方は?」と題する記事を掲載したところ、読売の広報部長から、抗議書が送付されたというのだ。

山武ジャーナル

山武ジャーナルの報道内容と読売からの抗議内容については、これから検証していくが、読売の主張は、簡単に言えば読売は注文部数を超えた新聞を販売店に搬入したことはないというものだ。これまでも同社が延々と繰り返してきた主張である。読売が主張する「押し紙」の定義を前提として、山武ジャーナルがいう「押し紙」は、定義に当てはまらないから、「押し紙」ではないという主張だ。

抗議書の最後には、「 なお、本抗議書の著作権(著作者人格権を含みます)は、当社に帰属しますので、WEBサイト等に掲載することはお断りします」と、記されている。(続きはウェブマガジン)

2019年07月16日 (火曜日)

横浜の副流煙裁判の本人尋問調書が公開された。尋問は6月18日に、原告(夫と妻)と、被告(藤井将登氏)の3人に対して行われた。メディア黒書は調書を入手したので、順次紹介していく。ただし、原告の名前は匿名にした。

1回目は、原告・妻に対する尋問を取りあげる。特に注目してほしいのは、被告による「反対尋問」(13ページ~)の中で、診断書の偽造疑惑を被告が追及している箇所である。

簡単に背景を説明しよう。
原告は、自分たちの娘が化学物質過敏症の罹患していることを示す診断書を提出した。それは作田学医師が作成したものである。そこには、次のように病名が記されていた。

受動喫煙症レベルⅣ、化学物質過敏症

この診断書を原告は、甲第3号証として裁判所に提出した。
ところが裁判の進行プロセスのなかで、原告は、再び作田医師が作成したとされる診断書を提出した。診断の対象患者は、やはり原告の娘だ。この診断書には、次のような病名が記されていた。(赤文字は黒薮による)

化学物質過敏症レベルⅣ、化学物質過敏症

化学物質過敏症の診断では、レベルの判定はしない。この時点で、被告はこの診断書が医師ではない人間によって作成された疑惑を抱いた。診断書は、甲46号証として提出された。そこで甲46号証の証拠説明を見ると、甲46号証は、「甲3と同一のものである」と書かれていた。

つまり甲46号証か、甲3号証のどちらかが偽造された診断書ということになる。あるいは同じ患者の診断書のフォーマットが2つ存在することになる。

ちなみに、「甲3」号証と「甲46」号証を重ねあわせて光に透かしたところ、フォント(ラインの位置など)が一致しないことも分かった。つまり「甲46」号証と「甲3」号証は、別ものである。

今回の本人尋問の中で、作田医師の診断書のフォーマットが2つ存在することが判明したのだ。しかも、それらを弁護士らにメールで電送していたのである。尋問の中で原告・妻は、診断書を病院の窓口で直接受け取ったと証言したが、山田弁護士は「原告代理人が作田医師から診療記録のデータとして、メールで受け取っているものである」(原告準備書面8)と述べている。

通常、デジタルによる診断書は、たとえ修正する場合でも、「上書き」するので、フォーマットが2つ存在することはあり得ない。

以下、尋問の確信部分である。(調書の全文は後日公開)

被告:それ(注:診断書)を手渡されたんですか。

原告:はい。正確なやつですね。受動喫煙。

被告:その場でということですね。その場で書き直していただいたんですね。

原告:その場です。もちろん,はい,その場です。

被告:ところがその書き直す前のものを作田先生がそのまま保存か何かなさって,それが残っていたのではないかといぅことですか。

原告:それはプログレスノートで弁護士さんに送られたやつは,パソコンってそうなんですけれども。

被告:弁護士さんに送られた。

原告:そうです。私は全然知らないです。弁護士にプログレスノートとかい
ろんな資料を送るときに,間違ったままのやつを送られたと思います。

被告:作田先生がメールで弁護士先生に資料を送られたんですね。

原告:送られたときに, はい。

被告:診断書のデータを送られたんですね。

原告:そうです,そうです。

被告:それが間違った病名が書かれたものであったということですね。

原告:だと思います。

被告:それを46の6号証として提出されたということですね。

原告:はい,だと思います。

 

2019年07月12日 (金曜日)

大阪毎日放送(MBS)が制作した滋賀医科大学医学部附属病院で起きている前立腺癌の治療をめぐる事件をクローズアップしたドキュメントがネット上でも公開された。タイトルは、「閉じた病棟-大学病院で何が起きたのか~」。次のURLでアクセスできる。

閉じた病棟-大学病院で何が起きたのか~

 

2019年07月10日 (水曜日)

Mリンチ事件で確定した損害賠償金の支払いをめぐってトラブルが起きている。敗訴して損害賠償金の支払いを命じられた被告のうち、エルネスト金氏が、賠償金約114万円の支払いを履行していないらしい。(7月3日の時点で)。

7月3日付けのデジタル鹿砦社通信は、トラブルの経緯を次のように報じている。

6月12日、リンチ被害者M君が5名を訴えた上告について、却下の連絡が代理人の大川伸郎弁護士へあった。賠償を命じられた李普鉉氏からは「賠償金を支払いたいので口座を教えてくれ」と代理人から連絡があった。一方金良平氏からは何の連絡もないので、大川弁護士は金良平氏の代理人に「賠償金の支払い」を求める旨と、大川弁護士の銀行口座明細を記載したFAXを送付したが、7月2日現在大川弁護士には、金良平氏の代理人から何の連絡もないという。【全文】

M君を支援する会のツイッターも、昨日、次のような抗議のツィートを投稿した。

エル金こと金良平へ
確定判決に従い、速やかに貴殿が支払うべき金員をM君へ支払え。
                         支援会一同

 

◆「運動」の中でだれが賠償金を負担するのか
M君に対するリンチ事件を起こしたグループは、反差別の看板を掲げた「人権派」の人達である。横の人的つながりも、組織的つながりも広く、特にリベラル派と呼ばれる文化人らが熱心に彼らの運動を支援してきた。「のりこえネット」の辛淑玉、中沢けいといった面々である。

弁護士とのパイプも太く、 上瀧浩子氏や神原元・自由法曹団常任幹事らが、彼ら関与した裁判に直接かかわってきた。『ヘイト・スピーチとは何か』(岩波新書)の著者・師岡康子氏も同じ類である。

カウンター運動を展開してきた人びとが、エルネスト金氏ら5人を被告とする裁判を応援していたことは言うまでもない。ところがエルネスト金氏が命じられた114万円の負担には無頓着のようだ。7月3日の時点では支払が履行されていない。資金がないのか、それとも支払を履行しない方針なのだろうか。

通常、「仲間」が敗訴して賠償金が必要になった時は、カンパなどを集めて、本人の負担を軽減するものだ。わたしも読売との裁判で、敗訴して約110万円の支払いを命じられたことがあるが、1週間で約100万円のカンパが集まった。それを読売新聞に納金したのである。弁護士からの請求はなかった。


◆大半が分別のあるはずの中高年層が?

M君リンチ事件の裁判が終わって、わたしがいまも理解できないのは、カウンター運動を展開している面々のメンタリティーである。それは写真でも記録されている。「釘バット」を握って凄んでみたり、奇妙な格好をして「反核」運動のイメージダウンをはかったりしてきた。しかも、その主役の大半が年甲斐のあるべき中高年層である。

カウンター運動が住民運動や市民運動に及ぼした負の影響ははかりしれない。

フェイクニュースの種もまき散らした。その典型がM君裁判の大阪地裁判決で敗訴した日の夜、神原元・自由法曹団常任幹事や李信恵氏らが、祝杯をあげたことである。敗訴したのに、飲み屋で祝杯をあげ、その写真をツイッターで拡散したのだ。(冒頭写真)。この時点で、伝統ある自由法曹団の信用も地に堕ちた。

わたしは、彼らが左派勢力を分断するために、デタラメな反差別運動を展開してきたのではないかと疑っている。彼らを批判する人びとには、ネットウヨのレッテルを張り、ツイッター上のリストに名前を掲載したりする。つまり健全な住民からは、全く支持されないことを繰り返してきたのだ。

それを「文化人」が支援してきた。と、いうよりも批判を控えてきた。ここにこの国の深い病理がある。

 

2019年07月08日 (月曜日)

『NONUKES』(鹿砦社)という季刊誌をご存じだろうか。2014年8月に第1号が発刊され、先月発売になった号で、20号になる。反原発の立場から編集されている雑誌で、日本の反原発運動を紹介している。一部の連載は別として、大半の記事が原発に関連したものである。しかも、マスコミが報じない領域をカバーしている。

たとえば「『子ども脱被ばく裁判』は被ばく問題の根源を問う」と題する井戸謙一弁護士へのインタビューでは、原発による低線量被曝の問題を取りあげている。低線量被曝という言葉は、あまり聞かないが、放射線や電磁波による被曝を考える上で、ひとつのキーワードである。

これは、国などが定めた規制値を守っていれば被曝による人体影響はないという考えを否定し、どんなに微量の被曝でも、人体影響を受けるリスクが存在するという考えだ。

当然、低線量被曝はありえないという考えに立つと、それを前提とした対策は取られない。報道の対象にもならない。それが今の日本の実態だ。

東京オリンピックへ向けて、福島の復興を強調するプロパガンダが活発になっているが、その裏側では、「予防原則」に基づいて、子どもに安全な環境で教育を受ける権利を保証させたり、将来的に子どもが直面する可能性のある健康リスクに対する損害を賠償させる裁判が行われている。

福島の原発事故の後、セシウム137について、大人でも90日程度で半減するという情報があふれた。しかし、福島の原発がまき散らしたセシウムは、性質が異なる。不溶性のもので、「微粒子の状態で呼吸と一緒に取り込まれれば、それが肺とか気管支に沈着すると溶けないから、ずっとそこにいる」のだという。

京都大学の河野益近教務が福島のセシウム137を調査したところ、98%が不溶性であることが判明した。「子ども脱被ばく裁判で」は、低線量の内部被曝を前提として、不溶性のセシウム137が問題になっているのである。

鹿砦社はこれまでもマスコミが取りあげない問題に光を当ててきたが、『NONUKES』も同じ路線だ。記者クラブの情報をリライトしたようなレポートは1本もない。

タイトル:『NONUKES』(鹿砦社)
版元: 鹿砦社
 価格:680円(税込み)

 

反原発の季刊誌『NONUKES』、福島のセシウム137の真実

2019年07月04日 (木曜日)

大阪毎日放送(MBS)が、6月30日の深夜(24:50)、滋賀医科大学付属病院を舞台とした事件のドキュメンタリーを放送した。「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」というタイトルで、50分にわたる長編ドキュメンタリーだ。

メディア黒書でも報じてきたように、滋賀医科大病院が実施している小線源治療は、岡本圭生医師によって開発された最先端のもので、卓越した成績を残している。転移する可能性が高い「高リスク」の癌であっても、5年後の非再発率が95%を超えている。「低リスク」と「中リスク」の場合は、ほぼ全員が完治する。岡本メソッドにより、前立腺癌は転移さえなければ、ほぼ完治できる時代になったのである。

大学病院も、岡本メソッドに特化したセンターを設ける構想を検討するなど、全面的に岡本医師を支援していた。講座を開設して、岡本メソッドの普及にも努めていた。

ところがスーパードクターとしての名を馳せた岡本医師を快く思わないグループがあった。その中心人物は、泌尿器科の科長・河内明宏教授と彼の部下の成田充弘准教授である。2人のコンビは岡本医師に負けじと、岡本医師とは別枠で小線源治療を計画。しかし、元々はダビンチ手術の専門家で小線源治療の「執刀」経験がない。

そこで岡本医師の治療を希望して滋賀医科大病院にやってきた患者の一部を泌尿器科へ誘導して、成田准教授が「執刀」を担当する計画を策定したのだ。実質的には、「人間モルモット」を使った手術練習である。

こうした河内教授らの危険な計画を中止させたのが、岡本医師だった。「執刀」の前段の治療で被害を受けた患者らは、昨年の8月、河内教授と成田准教授に対して、インフォームドコンセントに不備があったとして提訴に踏み切った。裁判は現在も続いている。

事件をもみ消すために大学病院は、岡本医師による「執刀」を今年の6月30日で中止して、12月には岡本外来そのものを閉鎖し、岡本医師を解雇する。
事件をなかったことにしようとしているのだ。

岡本医師の追放に先立って、この7月からは泌尿器科で成田医師による小線源治療の「執刀」が始まったが、だれも患者は来ないらしい。関西のメディアがこの事件を断続的に報道していて、滋賀医科大病院の泌尿器科に対する不信感が高まっているからだ。

この問題は、複数の裁判や刑事事件が絡み合っていて、分かりにくい側面があるが、毎日放送のドキュメンタリーは、事件の輪郭を鮮明に浮かび上がらせている。事件の根底にあるのは、岡本医師に対するねたみと「医学村」ではないかと考えている人も多い。

◆なぜ、放送時間が深夜なのか

筆者もこの事件を取材している。その関係で、取材現場で毎日放送の取材班の姿を見ることも多かった。

ジャーナリズムの原点は、テーマに対する着眼力である。どのようなニュースに価値があるのかを見抜く力と言っても過言ではない。

毎日放送はこれまでも例外的に優れたドキュメンタリーを放送してきた。わたしが知人と一緒に調査した森ゆうこ参議院議員と高市早苗議員によるマネーロンダリング事件も、放送してもらったことがある。

ただ、滋賀医科大学病院についていえば、なぜ、このような優れたドキュメンタリーを、最も視聴率が低い日曜日の深夜に放送するのかという疑問がある。もちろん、これは記者の責任というよりも、放送局幹部の責任である。

マスコミ企業の幹部に「出世」した人々は、記者としては箸にも棒にも掛からなかったために、経営者に転身した人が多い。そのために放送の役割は娯楽であって、ジャーナリズムは二の次だと勘違いしている可能性が高い。本来は、視聴率が最も高い午後8時か9時に、重要な番組を放送すべきなのだが。

2019年07月03日 (水曜日)

五島市の第2種国立公園内で露骨な「公共事業」が進んでいる問題で、地元住民から、豊田通商と近畿大学の共同事業に関する新たな情報提供があった。

それによると、2015年7月に豊田通商はツナドリーム五島種苗センター(以下、種苗センター)を開所した。その前提となっている取り決めが、近畿大学と豊田通商が前年に締結した「水産養殖事業の覚書」である。それによると、両者はクロマグロの人工種苗量産化に取り組むという。

具体的には採卵したクロマグロの卵を孵化させ、「クロマグロ完全養殖サイクルにおける川上の機能を担い、2020年までには約30万尾の生産を目指」すのだという。孵化させたマグロを出荷するのだから、当然、種苗センターの直近に船が接岸できれば便利だ。しかし、稚魚を出荷は毎日行われるわけではない。

「年に1度でしょう。せいぜい数回です。そのためにわざわざ国立公園を埋め立てる必要があるでしょうか?既存の岸壁を使えばいいわけです」

住民によると、2015年の開所式には、豊田商事や近畿大学の関係者をはじめ、長崎県副知事、五島市長、漁協協同組合の関係者らが参加したという。

住民らは種苗センターの事業と連動して、第2種の国立公園に含まれる荒川地区で海の埋め立てや、防波堤や岸壁の整備が進められているのではないかと話している。

工費約40億円の公費の内訳は、次の通りである。

国:29.4億円
県: 9.4億円
市: 0.7億円

沖縄県辺野古の海埋め立ては報じられるが、五島の問題は完全に封印されている。

 

【参考記事】不信感を募らせる長崎県五島の住民ら、「豊田通商と近畿大学のための公共事業」との声も、公費40億円を投入

2019年07月01日 (月曜日)

先日、1年ぶりに郵貯銀行の残高を調べたところ、随分多くの読者からカンパをいただいていたことが分かりました。中には毎月、定期的に送金してくださっている読者もいました。寄付をいただいた場合は、すぐにお礼を申し上げるのが最低の礼儀ですが、日常的に使っている銀行ではないので、長いあいだ気づきませんでした。連絡先が不明な読者もおられます。お詫びすると共に、改めて感謝の気持ちを表明します。

ジャーナリズムのモデルには、大別して、広告に依存したもの、購読料に依存したもの、読者からの寄付に依存したものがあります。広告に依存したモデルでは、広告主の意向が記事に反映することがままあります。従って電磁波問題や化学物質による環境汚染などは報道の対象外になります。購読料に依存したモデルでは、大事な情報を共有できる読者が限定されるという欠点があります。価値の高い情報に対しては対価を支払うべきだという考えもありますが、日本ではそこまで高い意識は育っていません。ただし、株式投資に関する情報など、お金儲けに関する情報であれば、高い対価を支払う人も少なくありません。

米国や韓国などでいま台頭しているのが、読者の支援によって財源を確保して、ジャーナリズムを展開するスタイルです。日本でもこの種のモデルは広がりつつありますが、十分な取材体制を構築するまでには至っていないのが実態です。メディア黒書も読者の支援に依存したジャーナリズムを目指していますが、現在のところ主要な財源は、書籍の代筆による収入です。副業で財源を支えるスタイルです。

2019年06月29日 (土曜日)

「電磁波からいのちを守る全国ネット」が6月22日に、東京の板橋グリーンホール(板橋区)で開いた荻野晃也氏の講演、「生活の中にひそむ電磁波被曝による身体への影響」のYouTube動画が完成した。世界的に電磁波の危険性が指摘されている中で、日本のメディアはほとんど電磁波問題を報じない。それどころか5G技術や自動運転を推進する立場の報道を続けている。

荻野氏は、1980年代に日本ではじめて電磁波問題を紹介した研究者(理学博士)である。米国のスリーマイル島原発事故の調査で渡米した際、送電線の超低周波電磁波と小児白血病の関係が指摘されていることを知り、日本でも電磁波問題に警鐘を鳴らし始めた。

「原発の放射線は危険だが、電磁波は安全」という誤解が広がっているが、放射線の仲間はすべて危険と考えるのが世界の常識となっている。(収録時間:95分)

※質疑応答編も近々に公開

 

2019年06月28日 (金曜日)

滋賀医科大学医学部付属病院が、国立がん研究センターが公表したプレスリリースを改ざんして、6月11日に、同病院のウェブサイトに掲載していたことが分かった。

この資料は、国立がん研究センターが公表した時点では、1ページに満たない短い資料だった。ところが滋賀医科大は、これに約2ページ分の情報を複数の資料から抜粋して再構成し、3ページに編集した。そして、これら全部が国立がん研究センターによるプレスリリースであるかのように装って掲載したのである。

何が目的でこのような大がかりな改ざん行為に及んだのだろうか。既報したように、滋賀医科大病院は、岡本圭生医師による高度な小線源治療(前立腺癌が対象)を年内で中止して、岡本医師を病院から追放しようとしている。それを正当化するためには岡本メソッドが、他の癌治療と比較して、継続するだけのメリットがないという世論を形成することが必要になる。そこで権威のある国立がん研究センターのロゴが入ったプレスリリースを改ざんして、自分たちの目的に沿った内容にしたである。

具体的な手口は、上のユーチューブで紹介している。滋賀医科大病院に問い合わせた際の音声も、そのまま収録した。

◇がんセンターの資料は1ページ目だけ

フリーランス記者の田所敏夫さんらが、この改ざんについて、国立がん研究センターへ問い合わせたところ、右資料の赤枠内のみが同センターが発表した部分であることが判明した。2ページと3ページは偽造である。

国立がん研究センターは、元々のプレスリリースと改ざん部分の区別について、田所さんに対し、次のように文書で回答している。

「お問い合わせにつきまして、担当部署に確認いたしました。
当センターの情報は、1ページ目の当センターロゴから前立腺がんの表まで、そして、1ページ目の用語の説明のみでございます。以上、ご報告いたします。」

つまり約2ページ分を滋賀医科大病院が我田引水に「編集」して、元々のプレスリリースを含む3ページの資料に編集し、あたかもそれが国立がん研究センターが発表したものであるかのように装って、病院のウェブサイトに掲載したのである。

改ざんされた資料の全容は次のURLでアクセスできる。1ページにみたない上記のオリジナルと比較してほしい。

改ざんされたプレスリリース

◇何が加筆・編集されたのか?

滋賀医科大学病院が改ざん・編集により印象操作を企てたのは、前立腺癌に対する4つの治療法における5年後の非再発率である。それによると次のような成績になっている。

・ロボット支援前立腺全摘除術(弘前大学):97.6%
・外照射放射線治療(群馬大):97.6%
・小線源治療(滋賀医大):95.2%
・重粒子線(放射線医学総合研究所病院):不明
・小線源治療(京都府立医大):94.9%

これらのデータを見る限りでは、滋賀医科大学の小線源治療(岡本メソッド)にはまったく優位性がないことになる。それどころかロボット支援前立腺全摘除術か外照射放射線治療を受けた方が、岡本メソッドを受けるよりも5年後の非再発率が高いことになる。当然、岡本メソッドの中止と岡本医師の追放はやむを得ないという世論が形成されかねない。おそらく滋賀医科大の塩田浩平学長は、それが目的でこのような誤解を与える記述の掲載を許可したのである。

◇データのトリック

これらのデータには、専門家でなければ見破れない巧みなトリックが隠されている。端的に言えば、基準が異なるものを比較しているのだ。比較するのであれば、比較の基準が同じでなければならない。滋賀医科大病院は、その基本的な学術上のルールすらも無視しているのだ。

周知のように前立腺癌の検診は、血液を調べるPSA検査により行われる。PSAの数値が4.0 ng/mLを超えると前立腺癌の疑いがあり、精密検査で癌を発症しているかどうかを確定する。

意外に知られていないが、実はこのPSA検査は、前立腺癌の治療を受けた後の経過観察でも行われる。

施術方法のいかんを問わず、治療を受けた患者のPSA値は下降線をたどり、横ばいになるのだが、再発すると再上昇に転じる。この原理を応用して、医師は、PSA値の変化を観察することで、癌が再発したかたどうかを判断するのである。

この点を前提にしたうえで、データの改ざんについて説明する前に、前立腺癌の治療法についてもあらかじめ言及しておかなくてはならない。前立腺癌の治療では、ホルモン療法と呼ばれるホルモンを投与する療法により、施術前に癌を委縮させる方法が適用されることがままある。癌を小さくしたうえで、施術するのだ。

ホルモン治療が効力を発揮した場合、PSA値は下降する。そしてホルモン治療が終わった後も、1年から2年ぐらいの期間はその効用が維持されるので、PSAは上昇しない。
滋賀医科大が提示した他の医療機関のデータは、ホルモン治療の効用が持続している期間を含めた非再発率なのである。

とりわけ、弘前大学のデータにいたっては、論文の中でも、経過観察の期間が30カ月であることを明記している。それにもかかわらず都合のよいデータだけを提示して、あたかもロボット支援前立腺全摘除術と岡本メッソドでは、大きな違いがないような印象操作を行っているのである。