
文部科学省が黒塗りにして情報開示した2つの資料の黒塗り部分に衝撃を受けたメディア黒書の読者から、ある情報が寄せられた。情報提供者によると、黒塗り部分に含まれているはずの見積は、インターネットで公開されているという。実際、提示してもらったアクセス先に次の資料がアップされていた。
◇1プロジェクトに3件のウエブサイト制作
わたしが問題にしてメディア黒書で公表した文部省の資料は、次の2点である。
①「学校と地域の新たな協働体制の構築のための実証研究」(約800万円)
契約書の条項は開示されているものの、それ以外の情報は、博報堂の戸田社長の名前と請求総額を除いてほぼ黒塗りになっている。
情報提供で判明した資料から幾つかの重要な事実をピックアップしてみよう。
1、このプロジェクトが平成25年6月14日に閣議決定されたものである事実。
2,「大学等が把握している日本人学生の海外留学状況」の調査結果が平成28年2月に公開される予定になっていた事実。(成果物)
3,見積が不自然な事実。(たとえば印刷・発送費だけで2900万円。ウエブサイトの制作が1500万円。グラフィック制作が1300万円。)
4,「3」で示したウエブサイトの制作費1500万円の他に文部科学省は、
同じプロジェクトの中で、博報堂プロダクツに対してもウエブサイトの制作費170万円を、(株)パズルに対しては、110万円を計上している。
同じプロジェクトに参加している3社に対して、金額の差こそあれ、それぞれウエブサイトの制作費を計上しているのである。
◇成果物の情報公開請求
現在、わたしは文部科学省が黒塗り資料を情報開示したことに対して、異議を申し立てている。ネット上でひっそりと見積を公開しているにもかかわらず、資料を黒塗りにしたわけだから、重大な隠蔽事件である。何かを隠そうとしたのか、一層この点を明確にする必要がある。
こうした観点から、このプロジェクトの成果物を情報開示するように申し立てを行った。わたしが調査した限り、海外留学を奨励するための文部科学省のウエブサイトは3件はおろか、1件も見あたらない。
さらに印刷・発送費として、具体的に何を印刷して、何を発送したのかも明らかにする必要がある。
【注】インターネット上の資料は、平成26年度、つまり前年のものである。資料が黒塗りにされているので、内閣府が公開した黒塗り資料に対応するかどうかは確認できない部分もある。ただし金額が類似しているので、類似物として公開した。

元博報堂の社員で作家の本間龍氏に、2016年5月にアスカコーポレーションが博報堂に対して起こした「15億円訴訟」の訴状を分析・評論してもらった。
執筆者:本間龍(作家)
前回は、アスカが博報堂を訴えている訴状の中で、特に不自然さが目立つタレント出演料の高騰について書いた。同じタレントが大ヒットを飛ばしたわけでもないのに翌年、または数年後に出演料が10~20%以上値上がりすることはまずないし、年間を通しての起用したタレントの全体平均価格が20%値上がりすることもありえない。当たり前だが「値上がりする要因」がなければ、自然に価格が上がることなどないのだ。
逆にタレントによっては出演料が下がる場合も当然あるし、むしろ複数年、複数回の出演でディスカウントをするのは業界の常識だ。だからこれは、博報堂側がタレント契約料を恣意的に上げて、タレント事務所側が提示している出演料との差額を収益にしていたと考えるのが妥当だろう。もちろんそうしたことは業界ではよくあるが、年間を通じて起用した全てのタレント出演料を一律に上げるというのは、どうみてもやり過ぎだ。
私はアスカとは全く関わりがないし、請求されるままに支払いを行なっていたアスカ側にも確認を怠っていたという落ち度はあると思う。しかし、広告代理店の営業経験者として、また博報堂出身者として18年の経験上ありえないことを正直に指摘する義務があると思うし、さらに言えばこれは非常に特殊な例であり、博報堂の請求全てが同じだと思われたくはないので、他の訴因のいくつかについて、是々非々で解説してみたい。
◇サラ金に対する過払い請求のようなひどさ
アスカの訴状は総額15億2800万円にのぼり、15の「過剰請求費目」に分かれている。その内容を羅列すると(100万以下略)、以下のようになる。
1 情報誌制作費 7億7900万の過剰請求
2 撮影費 2億6400万 〃
3 タレント出演料 1億6600万 〃
4 アフィリエイト 1億8700万 〃
5 通販番組制作費・編集費 1億4700万 〃
6 PR活動費 895万 〃
7 企画・メディアプランニング費 3000万 〃
8 TVCM費 5300万 〃
9 新聞広告費 1100万円 〃
10 雑誌広告費 1700万 〃
11 ラジオ広告制作費 60万 〃
12 イベント費 2400万 〃
13 テレビ放映休止後の放映料 9700万 〃
14 ホームページ制作費 1300万 〃
15 通販番組受付業務費 4200万 〃
いやはや、まるでサラ金に対する過払い請求のようなひどさで、およそ全ての業務に及んでいるのでは、とも思えるほどの幅広さだ。これでは裁判結果がどう出るにせよ、かつてあらゆる業務を任せてくれたスポンサーにここまで疑惑をもたれるのは、やはり博報堂側にも何らかの落ち度があるのではないかと思ってしまう。
◇典型的な後付けの過剰請求
訴状の中で7億円と一番金額が大きい1の「情報誌制作費」の過剰請求は2007年から2014年までの7年間に及んでいて、一応は
ア:新規ページ(lp単価10万円)
イ:リデザインページ(lp単価7万円)
ウ:リライトページ(lp単価4万円)
工:調整ページ(lp単価0円)
という制作費設定がなされていたが、以前に作成したページを切り貼りして作成しただけの「調整ページ」を「新規ページ」や「リデザインページ」として請求していた例が数多くあり、さらにはその単価もいつの間にか30%以上値上げされていたという。アスカには「ism mode」のほか「新製品Book」「イチオシBook」「make book」「futur Book」など複数の通販情報誌があったため、訴状における金額も膨大になった。
これは一件ずつ確認していく他はないが、ア~エの区分が曖昧だったとしても、事前の見積を提出して打ち合わせをしていれば整合性がとれたはずだ。しかし博報堂側がその事前見積をきちんと提出していなかったとアスカ側は主張していて、ここまで金額が肥大化している中には、相当怪しい案件があるのではないだろうか。
◇撮影費も月額300万円の上限が・・・
次に金額が大きい(2億6400万)2の「撮影費」は情報誌に掲載する素材(商品やモデル、タレント、お客様等)の撮影費であるが、こちらは月額300万円の上限を決めていたにもかかわらずそれ以上の費用が発生したり、さらには撮影がなかったものまで請求されていたという。これも1つずつ照らし合わせて検証すれば、真偽が明らかになるだろう。
そして5の通販番組制作費・編集費(1億4700万)も月額990万円の制作費上限を決めていたにもかかわらず、それとは別に「通販番組制作費(WEB用)」「通販番組編集費(深夜考査対応用)」「通販番組編集費」などの新たな項目を承諾なしに請求されていたという。広告代理店が新たな請求項目を立てるのは良くあることだが、スポンサーの承諾を得ないなど有り得ないし、さらにいえば「深夜考査対象」編集費などというものは聞いたことがない。通販番組に対する細かい考査があるのは事実だが、昼と夜で考査内容に差があるはずもなく、これは架空の可能性が強い。
◇不自然な料金のアップ
さらに8のTV―CM費(5300万)は放映料のことだが、実はこれが一番不正が分かり易い。番組の放映料は一度決められれば常に一定であり、変動しないからだ。これは以下の3パターンに分けられている。
1)2012年5月まで990万円だった放映料(ローカル局分)が同年6月から9月まで1290万円で放映されていた。
2)2500万円のセット料金となっていた全国ネット局分の放映料が何の理由もなく、2012年6月には3000万円、同年7月から9月は3500万円へと増額していた。
3)BS・CS放送分が、2012年6月請求分から一律40%増額となっていたが、アスカはこれを了承していなかった。
1~3はどれも同じように値段が上がっているが、番組数が増えたか、CM放映回数増加していない限り、価格が自然に上がることはありえない。もし博報堂の請求書に放映料の詳細がなければ、局に提出させればすぐに分かることだ。9以降の訴訟事案については別掲する。(続く)

執筆者:本間龍(作家)
このメディア黒書では、(株)アスカと博報堂の間で3つの裁判が進行している様子を報告してきた。その内容は以下の通りだ。
①博報堂(原告)がアスカ(被告)に対して、約6億1000万円の未払金を求めるもの。東京地裁。
②アスカ(原告)が博報堂(被告)に対して約15億3000万円の過払い金の返還を求めるもの。福岡地裁。
③アスカ(原告)が博報堂(被告)に対してテレビCMなどの番組提案書の無効を求め、約47億9000万円の返還を求めるもの。福岡地裁。
②は、本来よりも高い単価で請求されていたとされる項目について返還を求めていて、それらを分類すると、
A 情報誌制作費
B 撮影費
C タレント出演料
D アフィリエイト
E 通販番組制作費・編集費
F PR活動費
など、15の項目に渡っている。そこで、今回は1600万円あまりの過払いを指摘している、Cの「タレント出演料」について検証してみた。
◇相場は30万円から50万円
アスカは通販雑誌「「ism mode」のほか,「新製品Book」「イチオシBook」「make book」「futur Book」などで毎号様々なタレントを起用していた。通常、タレントを企業のイメージキャラなどで使う場合は年間契約を結ぶが、こうした雑誌への出演料は一回ずつの単価設定になっていて、超売れっ子以外はほぼ30万円から50万円程度が相場だ。
2007年のタレント起用は全部で49名、一人あたりの平均額は約36万円となっている。例をあげるなら、さとう宗幸40万、山本モナ40万、池谷幸雄35万といったところで、妥当な金額だ。通販雑誌に載るタレントは超売れっ子である必要はないが、全く知られていないのでは親近感が湧かないからダメで、ある程度の知名度があるタレントが重宝される。そのあたりでは、30~50万円程度が契約金の相場なのだ。
◇2008年から不自然な上昇
ところが、博報堂がアスカの広告関係扱いを独占するようになった2008年以降、このタレントの金額が急上昇する。その平均を示すと、
・2008年 41万円(年間30名)1月~12月
・2009年 41万円(20名) 〃
・2010年 53万円(34名) 〃
・2011年 70万円(25名) 〃
・2012年 58万円(11名)※1月~6月まで
2009年までの契約金平均は41万円程度で推移していたのが、10年になるといきなり53万円に跳ね上がっている。そして翌年の11年には70万円とさらに上昇する。恐らく博報堂側はその理由を「以前よりもビッグネームのタレントを起用したからだ」とでも言うだろう。しかし、その言い訳の決定的な弱点は、同じタレントの単価も劇的に上昇していることだ。例えば、
・浅茅陽子 40万(07年)→65万(12年)
・山口いづみ35万(07万)→75万(11年)
・堀ちえみ 50万(09年)→75万(11年)
・浜木綿子 45万(09年)→70万(11年)
・伊藤かずえ 50万(10年)→75万(11年)
・的場浩司 60万(10年)→75万(11年)
・松重豊 50万(10年)→65万(11年)
・宍戸開 45万(10年)→70万(11年)
など、相当な人数にのぼる。
私も数多くのタレント契約を経験しているが、はっきり言ってこのクラスのタレントで契約金が翌年に20%も上昇することなど有り得ない。もちろん、旬のタレントで人気が急上昇すれば、1年で契約金が跳ね上がる人もいるが、それは希有な例で、殆どの場合金額はほぼ一定である。
例えば、09年に50万円で契約した堀ちえみ(冒頭の写真)が特に露出が増えた訳でもないのに2年後75万に上昇することなどはない。また、通常なら何回も出演しているタレントに対しては減額交渉もできたはずなのに、一人も前年(前回)から価格が下がっていないのも極めて不自然だ。07年に35万だった山口いづみが11年に75万になるなど、請求書の打ち間違いかと思うほどのおかしなレベルである。
◇上昇分の料金が博報堂に入った可能性
そもそも、このクラスのタレントの価格交渉は、「前年(例)維持」から行うもので、単価がこうも上昇しては「博報堂の仕切が悪い」ということになる。この価格上昇だけを見れば、博報堂はタレント事務所の言いなりで交渉能力がない、ということになってしまうのだ。そういう面から見ても、この価格上昇はおかしい。
さらにもう1つの疑念がある。通常博報堂や電通は、こうしたタレント契約料に「管理進行料」を20%程度上乗せする。タレントの契約金はそのまま事務所にスルーする金で、代理店はその契約管理などの手数料を別に頂戴しますよ、と言うわけだ。
しかし、このアスカに対するタレント契約金の異常な上昇を見ると、上昇分はそのまま博報堂の取り分となっていた可能性がある。そしてそこにもし管理進行料が別途加算されていれば、その収益率は途方もなく高くなるから、博報堂社内ではさぞや高い評価を得ていただろう。
ただもちろん、請求当時これがアスカの了承を得ていたのなら問題にはならない。いかに異常な価格上昇でも、それをスポンサーがOKしてくれるなら代理店はどんどん価格をつり上げる。しかし訴状では、博報堂からは殆ど事前見積がなく、そのため金額のチェックが出来なかったと記されている。その辺りは今後の裁判を通じて明らかになっていくだろう。

文部科学省から、博報堂が担当した2つのプロジェクトに関する書面を入手した。プロジェクトのタイトルは、次の通りである。()内は契約価格である。
①「学校と地域の新たな協働体制の構築のための実証研究」(約800万円)
読者には、①と②をクリックしてぜひ情報公開の実態を確認してほしい。唖然となるに違いない。契約書の条項は開示されているものの、それ以外の情報は、博報堂の戸田社長の名前と請求総額を除いてほぼ黒塗りになっている。
◇市民感覚が欠落した公務員の傲慢さ
わたしは長年、情報公開制度を利用してきたが、文部科学省は今回開示した資料で、凄まじい情報隠しを行っている。公務員の信頼を失墜させる行為である。市民感覚が欠落している。
納税者の大半は、たとえば8000万円の「税金」を使って博報堂が、日本人の海外留学を促進するためのどのような仕事をしたのかを具体的に知りたいはずだが、文部科学省はそれを全面的に隠したのである。
今後、異議を申し立て、それでも黒塗りの部分が開示されない場合は、訴訟ということになりそうだ。

公正取引委員会の新しい動きが新聞業界の水面下で噂になっている。信頼度の高いある情報筋から聞いた話によると、公正取引委員会が「押し紙」 問題でS新聞社の幹部に接触したという。もちろん現時点では、公正取引委員会に確認できているわけではないので、参考の情報でしかないが、この新聞社の実態からすればあながち噂とはいえないかも知れない。
新聞奨学生からも「押し紙」を内部告発されいる社で、公式のものか、非公式のものかは別として、公正取引委員会から何らかの接触があった可能性がある。
◇「押し紙」問題を深刻視する公取委
わたしが把握している限り、「押し紙」問題で公正取引委員会が動いたのは、今回で3度目である。最初は、1997年12月である。原因は、北國新聞が発行部数を3万部増やして、ABC部数を30万部にするために、各新聞販売店に部数負担のノルマを課したというものだった。
その際、公正取引委員会は、他の新聞社についても、類似した問題があることを指摘して、注意を喚起している。
2度目は今年の2月に朝日新聞の記者が、記者会見の場で公正取引委員会の杉本和行委員長に対して、自社の「押し紙」の実態を訴えたところ、「実態が発見できれば必要な措置をとる」と回答し、実際、その一月後に朝日新聞社に対して注意を促したのである。
そして今回のS社の件だが、公正取引委員会の動きが事実であるにせよ、根拠のない噂であるにしろ、公正取引委員会が「押し紙」問題を重大視していることだけは疑いない。たとえば知人の販売店主が「押し紙」に関する内部資料を提供した際の対応が非常によかったという。「押し紙」の証拠さえ提出すれば、取り締まると約束したという。
◇部数減の本当の原因は「押し紙」の排除
新聞の公称部数は下降の一途をたどり続けているが、その主要な原因は、新聞社にとって「押し紙」が負担になってきて、それを排除しはじめた結果というのが、販売店サイドからの情報である。新聞購読者の数そのものは、高齢者の増加に反比例するように緩やかに下降しているが、「押し紙」の排除により、部数の急減が見られると考えるのが正しい。
なぜ、新聞社にとって「押し紙」が負担になってきたのか。それは多額の補助金を支出して、販売店に「押し紙」を買い取ってもらうことで、ABC部数を恣意的にかさ上げしても、紙面広告の価格が下落の一途をたどっているからだ。
つまり補助金を出してまで「押し紙」を買い取ってもらい、ABC部数をかさ上げする意味がなくなってきたのだ。その結果、補助金と「押し紙」を同時に廃止する政策に方向転換しているのである。
改めて言うまでもなく、「押し紙」で生じる販売店の損害を補助金で相殺しなければ、販売網そのものが崩壊する。それは新聞社にとっては、致命傷だ。
しかし、それにもかかわらず「押し紙」は依然として多量に存在する。販売店(中央紙)からの最新の内部告発によると、25%から30%が「押し紙」だという。埼玉県内の1万部クラスの販売店では、4割が「押し紙」になっているという情報が動画で提供されてきた。
日本の新聞業界は大きな曲がり角にきている。新聞人たちが豪語してきた「『押し紙』は1部も存在しない」という嘘が近い将来に暴かれるはずだ。

【サマリー】 広告代理店・博報堂が内閣府に対して、2015年度、約20億円もの過剰な広告費を請求した問題で、新たな矛盾点が見つかった。そもそも政府予算は全体で22億円しかなったことが判明。資金源が不明で、粉飾決算の疑惑が浮上したのである。
メディア黒書で報じてきたように、博報堂と内閣府は2015年度に約6700万円の予算でPR活動(新聞広告やテレビCMなどの制作)の契約を結んだが、実際には、博報堂からの請求額は20億円を超えていた。電通など他の広告代理店は、契約額と請求額が一致しているが、博報堂だけが、常識ではありえない規模の過剰請求をしていた事実が明らかになっている。
■裏付けの証拠となる請求書と契約書PDF(27ページに契約額が明記されている)
当然、この約20億円は、2015年度の政府予算から支払われなくてはならない。
◇粉飾決算の疑惑
ところが政府の広報予算を調べたところ、2015年度の場合、「出版諸費」として全社の総計で22億円しかなかったことが判明した。内閣府が作成した上記のグラフが、それを示している。
つまり博報堂が請求した額は、2015年度とは別の年度の残金から支払われた疑惑が浮上したのだ。これを経理処理するためなのか、博報堂が内閣府に対して発行した請求書は日付が空欄になっている。一枚の例外もなく空欄になっている。
内閣府から得た約20億円の収入を別の年度へ紛れ込ませて、2015年度の本当の収入を隠した粉飾決算の疑いが浮上してきたのである。ジャーナリズムはこの点を今後検証すべきだろう。

【サマリー】内閣府を舞台とした博報堂の不正経理疑惑を最終的に解明する鍵を握るのは、検察などの捜査機関である。その検察から博報堂へ松田昇氏が天下りしている。果たして厳正な調査はできるのだろうか・・・
博報堂事件は2つの柱からなっている。
「アスカコーポレーションVS博報堂裁判」(第1ステージ)と、「内閣府の情報公開資料に見る博報堂の不正経理疑惑」(第2ステージ)である。第2ステージの焦点については、次の記事に詳しい。
参考記事:博報堂が内閣府に送付した契約書と請求書を分析する9つの視点
後半戦の第2ステージはこれからスタートするわけだが、懸念すべき要素がある。それは最高検察庁から退官後に博報堂に再就職(広義の天下り)している松田昇氏の存在である。
第2ステージは、内閣府における不正経理の問題が検証の対象になるわけだから、不正があれば当然、刑事事件になる。その時、天下りの存在が刑事告発の受理を妨げる懸念がある。
日本では学閥という前近代的な「制度」が依然として幅をきかせている。その結果、退官後も後輩を通じて公務に影響を及ぼす人物が重宝がられ、国家公務員が民間企業に天下ったりする。警察関係者らがパチンコ業界に天下っているのは有名な話だ。
◇三菱、読売、日清紡、巨人
博報堂に天下っている松田昇氏の経歴を博報堂DYホールディングスの有価証券報告書から抜き出してみよう。
博報堂以外にも、次のような企業への天下り歴がある。
日本無線
三菱UFJニコス
読売新聞大阪本社
日清紡ホールディングス
読売巨人軍
詳細は次の通りである。

電通を中心に動いてきた日本のメディア業界の激変を、博報堂の元社員で、『原発プロパガンダ』(岩波新書)などの著書がある本間龍氏に解説してもらった。
執筆者:本間龍(作家)
電通の落日が始まっている。広告業界のガリバーと讃えられ、スポンサーの代弁者としてメディアに圧倒的な影響力を誇ってきた同社に、ここ2ヶ月ほどの間に2度も本社や支社に捜査が入り、あっという間に「ブラック企業」の烙印を押されてしまったのだ。これは恐らく創業以来、初めての危機だろう。絶対王者として君臨してきた電通に何が起きたのかを検証する。
世間的には新入社員自殺事件によって「ブラック企業」としての悪名が拡まったが、実は同社の躓きは、昨年の夏から秋にかけて大騒ぎになった「五輪エンブレム事件」から始まっていたのだと私は考えている。
事の始まりは電通にとって「とるに足らない」レベルで、いつもの通りメディアもロクに報道せずうやむやになると踏んだのだろうが、電通の権勢が及ばないネット上のSNSの個人パワーはあっという間に既存メディアを巻き込み、一度は決まった公式エンブレムと佐野研二朗というデザイナーを失墜させ、電通の思惑を葬り去った。あれが全ての始まりだったと思われる。
東京五輪は全ての業務が電通の完全独占だから、当然エンブレム選定も電通の意向が働いていた。一度は公式エンブレムに選ばれた佐野氏の選考過程の不透明さが指摘され、さらには佐野氏自身のパクリ疑惑が問題視されての辞退となったのだが、電通から出向していた槙英俊マーケティング局長と、選考で審査委員を務めた企画財務局クリエイティブディレクターの高崎卓馬氏が責任を取る形で出向を解かれ、電通に戻った。
これだけでも電通の威信は相当傷ついたはずだ。ただし、この一連の騒ぎで電通の名前がメディアに出ることはほとんど無かった。佐野氏はフリーだからとことん叩けるが、その選定に関わった電通の存在について、ほとんどのメディアはスルーしていた。
◇メディアコントロールが不能に
そしてその騒ぎの記憶がまだ完全に消えぬ今年の4月ごろパナマ文書が世界を賑わせたが、そこに「DENTSU SECURITIES INC」(英領バージン諸島)という企業名があった。電通は関連会社ではないとして否定してあまり話題にならなかったが、そのすぐ後の5月には五輪誘致の裏金疑惑が飛び出した。英ガーディアンが電通を名指しし、フランス検察が調査していると報じたのだ。
支払われた2億3千万円という巨額と、現在は存在しないペーパー会社を利用したということで裏金であったという信憑性が高く、さすがに国内メディアも大きく報道した。これに対し電通は知らぬ存ぜぬで押し通し、民放の報道番組では電通の名が伏せられ、ガーディアン紙が掲載した関係図から勝手に電通の名前を消去したり、単に「D社」と書かれたりした。
しかし、先のエンブレム問題で佐野研二郎を追い詰めたネット民はそれを見逃さず、ネット上ではメディアの弱腰が強く非難された。つまり、事の真偽はともかくとして、「電通に逆らえないメディア」「電通の名を出さないメディア」という現象が一層明らかとなり、それに対して多くの国民の間で不信感が高まっていったのだ。
そして9月末には、電通のネット関連業務における不正請求事件が発覚した。こちらも発端は英フィナンシャルタイムズの記事だったが、ウオールストリートジャーナルも追随、やはりネット上で騒ぎとなり、日経が短い記事を書くに及んで、電通は記者会見を余儀なくされた。
そして多くの国内メディアもこれを報道せざるを得なくなった。それでもまだ、各社の見出しは「不適切取引」「不適切請求」という抑えた表現で、「不正請求」と強く批判したところはなかった。しかし、度重なる失態は、確実に電通のブランドイメージを侵食し、現場の記者たちにはその傲慢な対応に批判が高まっていた。
◇過労死事件
私は多くの雑誌や放送局の記者達と接しているが、電通広報の評判はすこぶる悪い。何を聞いても不明瞭な返事しかせず、そもそも質問をしても答えない場合が多い。また、後で返答すると言いながら、いつまで経っても返事が来ない等々、多くの記者達が口を揃えて憤慨している。
これだけ次々と不祥事が起きているのに、広報には当事者意識が欠落しているというのだ。今まで長らく王者のように君臨し、都合の悪い報道は無視してきた癖から抜けられないのだろう。
それが10月7日の、新入社員の過労死が労災認定されたという記者会見報道で沸点に達する。全国紙全が記事化、民放テレビ局は第一報だけだが、ほとんど全局が報道した。さらにネット上では、自殺した女子社員と記者会見した母親の写真が猛烈な勢いで拡散した。
東大卒の女子社員だったことや、入社して僅か半年余りで自殺に追い込まれたこと、さらには自殺直前までツイッターに呟きを遺していたことなども拡散に勢いをつけた。
◇NHKの報道で決定打に
またNHKが企業の過労死問題に絡めて様々な番組でこの事件を取り上げ、急速に事件の認知度が上がっていったところで、10月14日には東京労働局が抜き打ち強制調査を実施。電通本社に整列した係官らが入館していく様子はNHKはじめ全民放で放映された。
さらに10月18日には、昨年8月に三田労基署が電通本社に対し是正勧告を出していたこと、また20日には、3年前にも男性社員が死亡して労災認定されていたとNHKが報じ、これが決定的な「後追い報道」となって民放・新聞・雑誌メディアも追随、「電通=ブラック企業」という認識が猛烈な勢いで拡散、定着するに至った。
長らくメディアを統べる王として君臨してきた電通も、これだけ次々と不祥事が暴かれてはメディアコントロールする術もなかった。まさに絶対起きるはずのない「革命」が起きたのだった。
10月14日の東京労働局による強制調査を受けた後、電通は10月18日に時間外労働時間の上限を70から65時間に引き下げると発表したのを皮切りに、なりふり構わぬ対策を講じ始めた。24日からは22時から翌朝5時までの業務禁止・全館消灯を開始。
さらに11月1日には「労働環境改革本部」を立ち上げ、11月17日には、電通の精神的支柱として長らく社員手帳に掲載してきた、第四代社長吉田秀雄氏の遺訓「電通鬼十則」を手帳から外すことを検討中と発表。また22日には、毎年札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の5都市で盛大に開催してきた「電通年賀会」も来年は中止すると発表した。
◇石井社長が官邸へ
まるで何かにせき立てられるように労務改革に邁進(表向きはそう見える)しだした理由は何かと探っていたところ、なんと電通の石井社長が官邸に呼び出されていた、というスクープ情報が飛び込んできた。
10月中旬、新入社員自殺の労災認定報道で電通パッシングの嵐が吹き始めた頃、石井直(ただし)社長が密かに官邸に呼ばれ、安倍首相から直々に注意を受けていたというのだ。そしてその中身とは、
「これまでの一連の事件によるイメージ悪化は、電通が担当している東京オリンピック業務に支障を来すおそれがあるから、これ以上の悪化を防ぎ、一刻も早く事態を終息するように」
と、いうものだったという。
傲慢さで鳴らした電通も、さすがに国の最高権力者からの厳命はただごとではないと焦ったのか、その後は前述したような改革を矢継ぎ早に実施してきた。不自然とも見える改善策の乱発にはこうした背景があったと考えれば確かに納得がいく。官邸側が労働局による強制調査情報を掴み、それによる電通のさらなるイメージ悪化がオリンピック業務にも影響すると先読みしたのは、非常に正しい予測だったと言えるだろう。
◇電通のイメージ悪化の影響は?
では、なぜ電通のイメージ悪化が「オリンピック業務に支障を来す」のか。それは、今回の一連の事件でもし社長以下関係者が逮捕されたり、会社が刑事訴追されたりすれば、電通は官庁関係業務の指名・受注停止となる恐れがあるからだ。そしてもしそうなれば、2020年東京オリンピックの業務も税金が投入される「官製業務」だから、こちらも一定期間の業務停止となる可能性がある。
そうなれば、オリンピック業務は電通の独占受注だから替えが効かず、関連業務が全て停止するという、とんでもない事態が起こりうる。博報堂や他代理店に業務を代行させようとしても、電通の業務停止期間中だけいきなり五輪業務をやれと言われて出来るはずがない。
現在42社にのぼっているオリンピックスポンサー契約は全て電通が各社と結んでいるのであり、もし関連の仕事を他社にやらせるなら、契約をやり直さなければならない。それに、仕掛かりの仕事を途中でバトンタッチするなど、現実には有り得ないだろう。また、各スポンサーのCM放映権という一番収益率の高い業務は電通に残し、カウントダウンイベントなど人手ばかりかかって儲からない業務だけを他代理店にやらせようとしても、どこも受注しないだろう。簡単に代替えなど出来ないのだ。
ただ当然ながら、今回の労働業務におけるような刑事訴追で五輪業務まで停止させられるのか、という法解釈上の問題はある。さらに、官邸が検察に圧力をかけ、軽い処分に止めるという手段もあるだろう。しかし、労働局からの書類送検はもはや決定的であり、社会的にはその時点で「法令違反企業」という負の評価が確定する。
つまり、このまま電通に業務を続行させると、「法令違反企業に世界的イベントをやらせるのか」という社会全体からの強い批判に晒され、電通と共に五輪イメージの更なる悪化が起きてしまうのだ。
安倍首相にとって、自身が先頭に立って誘致した五輪の失敗など絶対にあってはならない悪夢であり、それを回避するためには一刻も早く電通の不祥事を終息させなければならないが、自身が旗を振る「労働改革」実現のためには電通の処分を甘くすることも出来ず、相当頭を悩ますことになるだろう。
首相の懸念をよそに、事態は刻々と、しかも想像以上に悪化した。3年前にも過労死による労災認定があったこと、本社をはじめ各地の支社が何度も労働環境の是正勧告を受けていたのに無視していたことが続々と発覚し、11月7日には遂に本支社に強制捜査を受けるに及んで、電通のブランドイメージは10月中旬より遙かに悪化。現在では完全に「ブラック企業の代名詞」へと失墜した。年末に発表される「ブラック企業大賞」(過去に東電や和民などが受賞)の受賞も確実と言われるような現在の状況を、2ヶ月前に誰が予測できただろうか。
長い間、電通はメディアの「電通の不祥事は報道せず」という暗黙のルール(電通コード)によって守られてきた。しかし新入社員自殺事件の反響があまりにも大きかったのと、続けての当局による立ち入りはさすがに各社とも報道せざるを得ず、電通コードも遂に崩壊した。
◇SNSの威力
これには、電通の権勢が及ばないネット上の個人SNSが果たした役割が非常に大きい。亡くなった新入社員や告発する母親の写真が瞬時に拡散して同情と怒りを誘い、既存メディアはその勢いを無視できなかった。ここまで事態が悪化したのは、新入社員自殺事件への対応の失敗が最大の要因だったと言えるだろう。
そして、電通事件はまだ何も終わっていない。ネット関連業務不正請求事件の全容解明と発表は年末の予定だし、労働局の書類送検を受けて東京地検がどう動くかも注目される。その時、官庁関連の業務停止問題も当然クローズアップされる。電通の経営を直撃する様々な問題は、来年からが本番なのだ。

新聞労連の傘下にある新聞通信合同ユニオンは、産経新聞社、産経新聞・開発株式会社、それに産経新聞・金杉橋専売所の3者に対して、不当労働行為があったとして、11月1日に東京都労働委員会に救済の申し立てを行った。
同ユニオンによると、新聞奨学生のAさんは、2015年11月ごろ、産経開発内にある「新聞奨学会東京事務局」から学費を借り、翌16年の3月15日と16日に、奨学生研修会に参加した。その際に、Aさんは金杉橋専売所の所長と契約を交わしたが、実際に働きはじめると、パンフレットや労働契約書の内容と実際の業務が大きく乖離していた。
たとえば労働契約書では、朝刊の配達時間が午前2時30分から5時30分の3時間になっているが、実際の労働時間は、午前2時から7時半の5時間半だった。
また、ひと月の労働時間は、労働契約書では114時間だったが、実際には1ヶ月平均で166時間だった。さらに勤務先は労働契約書では、麻生専売所だったが、実際に配属されたのは金杉専売所だった。
◇読売・上村過労死事件から4半世紀
新聞奨学生の労働実態は、昔から問題視されてきて、1990年12月4日には、重労働を続けていた読売新聞の新聞奨学生・上村修一さんが、小脳出血で倒れ、搬送先の病院で死亡している。上村過労死事件と呼ばれたこの事件は、裁判になり、新聞奨学生の問題を提起するきっかけとなった。
新聞奨学生の「酷使」の背景には、新聞販売店の経営悪化がある。中央紙の中には、新聞販売店に対する補助金をカットして、支出を抑制し、帳簿上は黒字にしている社もあるが、そのしわ寄せは販売店に及び、新聞販売網が崩壊する危機に陥っている。崩壊は秒読み段階に入っている。
こうした状況の下で、従業員の中で、奨学金により販売店に縛り付けられている新聞奨学生への仕事の負担が増える傾向がある。とりわけ問題なのは、外国人の新聞奨学生に対する待遇である。今は、ベトナム人が増えているが、昔は韓国人や中国人が多かった。10年近く前、外国人の月給は5万円程度だった。
外国人奨学生はブローカーに斡旋され、来日して、東京新宿の大久保にあった「たこ部屋」に一時的に詰め込まれ、それから販売店へ住み込むのだ。人身売買とあまりかわらなった。
【参考記事】
■「新聞奨学生ブラック労働内部告発」記事の削除を要求――配達人集まらず、末期症状露呈した“ブラック育英会”

2016年度9月度のABC部数が明らかになった。朝日新聞は前年同月比で約35万部減、読売新聞は約16万部減、さらに毎日新聞は約19万部減である。3社あわせて70万部の減部数である。
これは中堅規模の地方紙2社分の部数に該当する。新聞の没落に歯止めがかかっていない実態を示している。
朝日新聞 6,433,159(-348,120)
毎日新聞 3,049,397(-188,808)
読売新聞 8,942,131(-160,267)
日経新聞 2,725,261(-6,284)
産経新聞 1,568,848(-31,339)
しかし、ABC部数には、「押し紙」(広義の残紙)が含まれているので、ABC部数が実際に配達されている新聞部数を示しているわけではない。わたしが新聞販売店を取材した限りでは、これだけ大きな規模で部数が激減していながら、なお、「押し紙」が搬入部数の2割も3割もある販売店が複数存在する。
これらの「押し紙」を排除すれば、新聞社の販売収入はさらに減る。それにともない紙面広告の媒体価値も低下していく。販売収入と広告収入という新聞社経営の2本柱があやうくなってきたのである。
ネットメディアとの世代交代が顕著になってきたといえよう。
2016年11月22日 (火曜日)

東京都板橋区の小豆沢で起きているNTTドコモの携帯電話の基地局設置をめぐるトラブルは、住民たちの撤去要求にもかかわらず、すでに稼働しているようだ。住民側がNTTドコモに基地局の稼働を確認したという。
今後、訴訟が起こされる可能性もある。
既報したように、基地局の設置に最も強く反対しているのは、基地局が設置されたビルの直近にある高齢者マンションの住民らである。このマンションは板橋区の福祉施設で、住民の大半は経済的にはあまり恵まれない人々である。
マイクロ波を遮るシールドクロスを購入しようにも、その資金がない。
今後、1日24時間、人生の幕を閉じる日まで、基地局直近からマイクロ波に被曝することになる。
反対運動を進めようにも、高齢による体力の衰えが大きな障害になっている。つまりNTTドコモの強引なやりかたに対して、正面から対峙できない弱者なのだ。働きざかりの人々が反対運動を展開するのとは状況が異なる。
たしかに、この地域には携帯電話が通じにくい場所があり、そこの住む住民の一部は、基地局の稼働を歓迎しているという複雑な事情もある。
だからと言って人命にかかわるリスクがある携帯電話・基地局を、十分な話し合いを経ることなしに、一方的に稼働させてもいいという論理にはならない。これではエコノミック・アニマルである。近くには、高齢者住宅だけではなく、児童施設もあり、基地局の稼働により、不特定多数の人々がマイクロ波を被曝することになるからだ。
その影響が、10年後、あるいは20年後にどう浮上するのか、誰も分からない。影響が表れても、マイクロ波との因果関係を立証できるとは限らない。
◇東京でも裁判の提訴を
わたしが携帯基地局の取材をはじめたのは、2005年だった。そのころ埼玉県朝霞市にあるわたしの自宅マンションの屋上に、NTTドコモとKDDIが基地局を設置する計画が浮上した。わたしは最上階に住んでいるので、自分の頭上に天井を隔てて、基地局が設置される計画が提示されたのだ。
この計画は、住民の反対で中止になったが、NTTドコモは、その後、近くにある埼玉土建労働組合のビルに基地局を設置した。埼玉土建は、アスベスト問題に取り組んでいて、公害には理解があるのかと思ったが、電磁波問題にはまったくの無知だった。
当時、基地局の撤去を求める裁判は、九州を中心に多発していた。九州は水俣病など、深刻な公害を経験しており、公害の恐ろしさ、生命の尊さを知り尽くした弁護士がいたからだ。彼らが「予防原則」に基づいた運動の先頭に立ったのである。
実際、最初の3件の裁判も水俣病の発生地、熊本県で起こされた。
わたしが基地局問題の取材をはじめたころは、国会議員の間にも、電磁波問題を取り上げる議員が複数いた。たとえば共産党の紙智子議員は、そのひとりである。ところがその後、紙氏は電磁波問題には一切タッチしなくなった。彼女のウエブサイトから、電磁波についての記述が消えた。
そして同じく共産党の吉良よし子議員が、2014年4月、携帯電話の不通話地区を解消するために、基地局設置に国から補助金を支出することを求める国会質問を行ったのである。
なぜ、共産党が電磁波問題に対する見解を一変させたのかは不明だが、おそらく基地局設置に反対すると、若い世代の票が獲得できなくなるからだ。日本の議員は、実はこの程度なのだ。共産党がおおむね素晴らしい政策を持ちながら、創立から90年を過ぎても、政権が取れないゆえんではないだろうか。
国会で電磁波問題が取り上げられなくなったことで、電話会社の態度はどんどん横暴になっていく。住民パワーがあれば、自ら身を引くようになった一方、相手がパワーのない弱者だと判断すると、実に強引に基地局を稼働させる。
わたしは今後、住民が訴訟を起こすことで注意を喚起し、電磁波問題を国民に知らせていくことも大切ではないかと思う。
泣き寝入りはいけない。原告募集には協力したい。
◇携帯電話のマイクロ波とガンの関係
携帯電話の通信に使われるマイクロ波が人体に及ぼす影響は、研究が進むにつれて徐々に明らかになってきた。
つい最近も米国政府が取り組んでいるNTP(National Toxicology Program、毒物研究事業)で、携帯電話のマイクロ波にラットを被曝させたところ、オスのみに腫瘍が発生することが判明した。
■携帯電話のマイクロ波とラットの発癌に正の相関が見つかる、米国政府のNTPが実験結果を公表
2011年5月には、WHOの外郭団体である世界ガン研究機構がマイクロ波に発ガン性の可能性があることを認定した。
マイクロ波を含む電磁波による人体影響が問題になりはじめたのは、1980年代に入ってからである。小児白血病と低周波電磁波の因果関係が、疫学的に立証されたのを皮切りに、調査や研究が進んで、現在ではガンマ線やX線はいうまでもなく、全ての電磁波(広義の放射線)が人体に悪影響を及ぼすとする説が有力になっている。
◇電磁波とはなにか?
そもそも電磁波とは何だろうか。最低限必要な範囲で、電磁波の正体を説明しておこう。
電磁波の「電」とは電気のことである。その電気が空間に放たれたものが電波である。しかし、電気や電波には、その影響が及ぶ領域がある。炎に手を近づけていくと、熱を感じる領域があるように、電気や電波にも、影響が及ぶ範囲がある。この領域を「電場」という。
電波は、われわれの生活に利便性をもたらした。携帯電話やスマホはその典型と言えよう。通信の革命と言っても過言ではない。が、その背景にある負の側面、あるいは「闇」の部分は、マスコミによってすっかり隠されている。
マスコミの大口広告主である電気・通信業界の権益がからんでいるからである。
電波による交信で絶対に欠くことができないものがある。それはアンテナである。電波は
アンテナから発せられ、アンテナで受け止められる。それゆえに携帯電話の普及には、携帯基地局の設置が絶対的に必要になるのだが、この基地局が住民と電話会社のトラブルのもとになっているのだ。
次に電磁波の「磁」について考えてみよう。「磁」は何を意味するのだろうか。「磁」とは磁気、あるいは磁場を意味する。磁石が鉄を引き寄せることは周知であるが、その際に働く吸引力が「磁気」で、磁気が及ぶ範囲のことを「磁場」という。
電流が流れると、その周りには「電(場)」と「磁(場)」が発生する。電磁波とは、電気によって生じる「電場」と「磁場」を伴った波のことである。電波の形状と性質をより厳密に描写した言葉ということになる。
ちなみに単純に電磁波=電波と理解しても許容範囲である。枝葉末節にこだわりすぎて、物事を複雑に解釈すると、かえって電磁波問題を理解する妨げになりかねない。
電磁波問題とは、人体が電磁波(電波)を被曝し続けたときに生じる被害を公害の観点か
ら指摘することである。広義に捉えれば、電磁波による人体影響だけではなく、生態系への影響も電磁波問題の範疇に入る。
電磁波問題の検証作業には1年、2年、あるいは5年、20年という長い歳月を要する。短期間の電磁波被曝では影響が現れなくても、長期にわたる被曝により影響が現れる場合もあるからだ。携帯電話の普及が始まったのち、長い歳月を経て、ようやく基地局の危険性が指摘されるようになったのも、安全性の検証には、長期の被曝による人体影響を調べる必要があったからである。
電磁波はエネルギーが低いものでは、家電機器などから漏れる「低周波電磁波」がある。また高いものでは、レントゲンのエックス線や原発のガンマ線など、さまざまな種類がある。従来は、ガンマ線やエックス線などエネルギーが高いものについては、遺伝子に対する毒性があると考えられてきたが、既に述べたように、最近では全ての電磁波に毒性があるという見解が主流になってきた。
このあたりの事情について、電磁波研究の第一人者である荻野晃也氏は、『携帯電話基地局の真実』の中で次のように述べている。
これらの電磁波のうちで、原爆の被爆者・被曝者などの研究から、「電離放射線(黒薮注:電離放射線とは、ガンマ線やX線を指す。詳しくは後述する。)が特に発癌の危険性が高い」と思われてきたのです。ところが、最近の研究の進展で「電磁波全体が危険な可能性」があり、「共通した遺伝的毒性を示す」と考えられるようになってきたのが、現在の「電磁波問題」の本質だといってよいでしょう。
また、北里大学の名誉教授・宮田幹夫氏らがまとめた『生体と電磁波』にも、次のような記述がある。
エックス線もガンマ線も電磁波である。人工の電磁波に比べてエネルギーが非常に大きいため、物質への浸透性が強く、生体へのダメージも非常に大きい。しかし、極低周波から超高周波まで、人工電磁波も生体へのダメージは大きく、身近にある場合は障害を生じる。放射線と電磁波はメカニズムが異なるが、同じように体内にフリーラジカルを生産し、DNAを破損してがんの原因を作る点では、同じような環境汚染源としてみることができる。
広島と長崎に投下された原爆の影響で、癌や白血病が増えたこともあって、かねてからガンマ線と癌の関係は定説となってきたが、実はマイクロ波など他の種類の電磁波でも、遺伝子に対する見解が変化してきたのである。
◇電磁波の分類
既に述べたように電磁波には、ガンマ線、X線、マイクロ波など様々な種類があるが、これらは何を基準に分類されているのだろうか。結論を先に言えば、それは電波の波打ちの頻度である。1秒間に打つ波の頻度、つまり周波数の違いにより、電磁波は分類され、ヘルツという単位で分類される。
波打ちの頻度が多ければ多いほど、周波数が高いことになる。少なければ少ないほど周波数が低いことになる。
たとえば電力会社が供給する電気の周波数は、東日本で50ヘルツ(一秒に50回)、西日本では60ヘルツ(一秒に60回)である。一方、携帯電話(第3世代)の周波数は、2000MHz(メガヘルツ)である。これは一秒間に20億回の波打ちが発生することを意味している。この領域の電磁波は、マイクロ波という呼び方で分類されている。
さらにガンマ線の周波数は、「10の19乗」から「23乗ヘルツ」にもなる。
従来から、ガンマ線やX線など極めて周波数の高い電磁波は、電離放射線と呼ばれている。「エネルギーが高く、分子や原子を構成する電子を『バラバラに離してしまう(「電離」といいます)』」(荻野晃也著、『携帯電話基地局の真実』)電離作用を伴うからだ。それが遺伝子を傷つけたりする。
これに対して、赤外線、マイクロ波、低周波電磁波など、ガンマ線やX線に比べるとはるかにエネルギーが低い電磁波は、電離作用を伴わないので非電離放射線と呼ばれる。
現在、電離放射線に遺伝子に対する毒性があることを否定する研究者はいない。それはすでに定説となっている。
これに対してマイクロ波など非電離放射線の毒性については論争がある。既に述べたように、すべての種類の電磁波が人体に悪影響を及ぼすという考えが有力になってきたものの、現在の時点では論争に決着が着いているわけではない。
従って「予防原則」に基づいて、危険性を想定した対策を取っておかなければ、後に、取り返しがつかない悲劇を生む可能性がある。
次に示すのが電磁波の分類図である。
携帯電話に使われているのは、マイクロ波と呼ばれる領域の電磁波である。たとえば広く普及している第3世代携帯電話の周波数は、2000メガヘルツである。これは1秒間に20億回の周波が観測されることを意味する。電子レンジは、約25億回。とてつもない波の動きが熱エネルギーを発生させる。
こうした高周波の電磁波を携帯電話の受話器から直接に、あるいは携帯基地局の周辺で長期に渡って浴び続けたとき、人体影響が生じるリスクがないのかを考えるのが、俗にいう携帯電話の電磁波問題である。従って、パナウエーブ(白装束集団)の考えとはまったく性格が異なる科学である。
当然、長期にわたる科学的な観測が不可欠になる。たとえば10歳でスマホを使い始めた子供が、30歳になったとき、あるいは40歳に、さらには老齢に達したとき、電磁波被曝による負の影響を受けていないか、というような長期の問題なのだ。
◇安全基準
長期にわたる被曝を前提としているのか、電磁波問題に敏感な欧米では、地方自治体が独自に電磁波強度の基準を設定している。そのうちのいくつかを、日本の総務省が定めている基準値と比較してみよう。対象は1800メガヘルツの基地局である。
日本:1000μW/cm2
イタリア:10μW/cm2
スイス:6.6μW/cm2
EU:0.1μW/cm2(提言値)
ザルツブルグ市:0.0001 μW/cm2(室内目標値)
この数値を見ただけで、総務省がいかに電話会社のビジネスに貢献しているかが明らかになる。数値の大きな差異から異常な実態と言っても過言ではない。ちなみにザルツブルグ市の値でも、通信は可能だ。
◇携帯電話基地局の周辺で奇形
携帯電話の基地局が設置された後、直近の場所に次々と奇形植物が出現したという報告が複数ある。
そのうち筆者が直接取材した長野県木曽町で撮影した写真(奇形のヒマワリ=地元住民が撮影。奇形のナスビ=黒薮が撮影)ものを紹介しよう。
電柱の上に基地局を設置した後、設置場所の畑や近くの民家の庭で奇形植物が表れた。同じ現象が毎年続き、基地局が撤去された後、出現しなくなったので、原因が基地局のマイクロ波だった可能性が高い。
【参考資料】

【サマリー】博報堂事件の第2ステージ(公共機関に対する博報堂の不正疑惑)で重点的に調べる項目を、内閣府から入手した次の書類を例に明らかにしておこう。現時点では検証を必要とする異常が9項目ある。これらの項目は、現在、博報堂と取引をしている民間企業に対して、注意を喚起するメディア黒書の報道目的とも合致している。
例として紹介するのは、次資料のである。
■2015年度分の博報堂から内閣府に対するPR活動に関する請求書
2015年度の内閣府と博報堂の年間契約額は、約6700万円である。(資料の27ページ参照)これに対して請求額の総計は、約20億3478万円である。約20億円の過剰請求となっている。しかも、過剰になった請求分の支出の根拠となる見積書などの紙面は一切存在しない。
この事実を前提に、資料の特徴を手短に解説してみよう。
◇9項目の疑問点
① 請求書に日付がない。もっとも、内閣府の受領印は各月ごとに押されているが、本当に受領直後に刻印したものであるという保証はない。と、いうのも2016年度分の請求書を入手した際に、新聞広告に対する請求書が1枚もなかったので、内閣府の職員に事情を問い合わせたところ、新聞広告の請求書は、年度末にまとめて送られてくるという説明を受けたからだ。これが慣行になっているとすれば、2015年度も年度末にまとめて請求書を受け取った可能性が高い。
当然、受領印は各月の請求書ごとに日付けを変えて刻印した疑いがある。少なくとも2016年度の処理方法が慣行であれば、受領印の日付けを変更した可能性がある。
② 請求書に管理ナンバーが刻印されていない。これはシステム監査を受けていない証である。小企業は別として、一定の規模を持つ企業であれば、通常は見積書の段階から管理ナンバーを付番して、コンピュータで経理書類の管理をおこなう。
博報堂は東証一部上場の博報堂DYホールディングスの主要な子会社である。それにもかかわらず、このような請求が長期間に渡って行われ、会計監査もシステム監査もなされていない可能性もある。これは大きな問題で、東芝の粉飾決算の事件同様に、東証や監査法人の責任問題に発展する可能性がある。
③ 断言はできないが、上記当該の請求書は民間企業に出しているドットプリンタ出力ではないようだ。エクセルやワードのレーザー出力である可能性が高い。民間企業に出している請求書とは書式や紙質、それにフォントが明らかに異なる。
④ テレビCMの放送内容と請求価格が全て墨塗りにされている。これはあまりにも不自然だ。新聞広告に関しては、個々の新聞社に対する請求額は、黒塗りになっているが、少なくとも総額は公開されている。ところがテレビCMの場合は、総額も隠されている。
⑤内閣府に対する2015年度のPR関連事業の契約件数は、博報堂以外の広告代理店を含めると、全部で32件あるのだが、このうち博報堂との契約だけが、契約額と請求書の額が大きく異なっている。異常と評価できる。その差異は、すでに述べたように約20億円である。
博報堂以外の広告代理店との取引に異常がないということは、契約金額を大幅に上回って支出することが、内閣府の取引慣例ではない証である。博報堂のケースだけが特異なのだ。
⑥博報堂は基本契約書の多数の条項にも違反している。第1条と2条は、仕様書に基づいた業務を行い、その対価を支払うことを規定しているのだが、対価が20億円も過剰になっている。また、第10条、第11条、第12条は検品や請求を規定に従って速やかに進めることを明記した条項だが、請求書そのものが年度末に提出されていた高い可能性があるわけだから、これらの条項にも反している。
⑦ 請求を裏付ける契約書や見積書が存在しない。契約書については形の上では存在するが、請求金額が契約金額を約20億円上回っているわけだから、契約内容がまったく反映されていないことにある。支出の根拠にはならない。実質的には、契約書は存在しないと考えるのが妥当だ。
⑧ 請求内容そのものにも、架空や不正請求の疑いのある。たとえば2015年3月10日に岩手日報、河北新報、福島民友、福島民報の4紙に掲載した「東日本大震災から被災地の復興に向けて」と題する広告は、7段のスペースであるにもかかわらず15段(全面)のスペースで請求している。他にも同じケースがないか、調査する必要がある。
民間の広告価格の相場から考えて異常に高額な新聞広告の価格である。また版下制作費(新聞広告デザイン撮影、費用)に民間企業への請求と比べて異常に高額なものがある。
⑨博報堂は、疑惑だらけの広告料金の請求行為を過去に日本郵便でも行っており、総務省のガバナンス調査委員会が調査を行った。そして報告書が公表された。それを受けて、総務省から博報堂の取引先だった日本郵便へ改善命令が下された。さらにアスカコーポレーションとの取引(博報堂事件の第1ステージ)の中でも、同じトラブルが発生して、アスカが約63億円の大型訴訟を起こしている。
日本郵便への契約書のない請求が問題化して、朝日新聞などが報道したにもかかわらず、博報堂は敢えて民間や内閣府に対して全く同様の請求を繰り返している。それは何故なのか、当然、郵政事件の再調査と再検証が不可欠になる。
⑩防衛省や他の省庁でも不自然な請求事例が発見されている。博報堂は公金と日本国民を喰いものにしている疑惑がある。


