
執筆者:本間龍(作家)
先週26日の日刊スポーツに、気になる記事があった。2020年東京五輪組織委の武藤敏郎事務総長が、大会ボランティアの募集を競技会場がある地方自治体にも協力要請する考えを示したというのだ。多くの会場が都外に移転した(自転車のトラック競技は静岡県伊豆市、サーフィンは千葉県一宮町等)ため、組織委で募集する大会ボランティア約8万人と、都が募集する都市ボランティア約1万人の枠組みだけでは対応しきれないとの理由なのだが、分かっていたこととはいえ、いよいよ「オリンピックをダシにした、ただ働きボランティア集め」が地方にまで波及してきた感じだ。
私は1月13日掲載の拙稿『「共謀罪とセットになった東京五輪」は辞退しかない』で、過去に例のない数のスポンサーを集めている東京五輪は資金潤沢なのだから、ボランティアは有償にすべきだと書いたが、今回は再度詳細に検証したい。
◇「カネが足りない」は嘘、内部留保へ
組織委は昨年12月の段階で、五輪総運営経費を1,8~1,6兆円と発表。都の検証委は3兆円の可能性もあるとしたが、その後様々な縮減を行いかろうじて2兆円を切る数字を作り上げた。それとて当初予想の7000億円の2,5倍近い数字であり、恐らく大会が迫れば火事場泥棒的に様々な経費が投入され、大幅膨張するに決まっているから信用などとても出来ないシロモノだ。
では支出を1,8兆円としたのに対し、収入はどうなのか。これが眉唾なのだが、スポンサー契約料やチケット売り上げで約5000億の売り上げを見込むと発表している。しかしこれはどうみても過少だ。組織委のホームページにある「大会運営に関する収入の割合」(2013年)
https://tokyo2020.jp/jp/organising-committee/marketing/
によれば、対会運営費全体のうち、ローカルスポンサーシップ(27%)とチケット売り上げ(23%)を足した50%部分が5000億に該当するようだが、組織委が集めたスポンサー契約金は現在既に42社分で3870億円(ゴールドパートナースポンサーシップ1社150億×15社、オフィシャルパートナー60億×27社を合算)を超えているはずであり、それを基準に考えれば、チケット売り上げも3600億程度を見込むはずだ。その合計は7400億円超となり、組織委の発表と違いすぎる。
もし当初予想の7300億円をベースとして考えるなら、スポンサーシップはその27%で1971億円になるが、電通が猛然とスポンサー集めに奔走した結果、当初予想の倍近いカネが集まったことになる。そして仮にスポンサーシップを現状の42社分で3800億、チケット売り上げは当初予測のままで1971億円のままだとしても、合算すれば5841億円となり、これでも組織委の発表よりも多くなる。さらにいえば、組織委と電通はゴールド・オフィシャルカテゴリーの下にもうひとつカテゴリーを作って新たなスポンサー獲得を目論んでおり、スポンサー契約料はさらに増える見込みなのだ。
それなのに組織は「カネが足りない」などといって東京都や国に財政支出を要請している。それは、彼らが今回集めたカネを全部東京五輪で使い切る気がないからだ。将来のアスリート養成のためだとか理由をつけて、相当な金額を内部留保にまわす気なのだろう。なにせ五輪は資金集めの絶好のチャンスだし、次はいつになるか分からないのだから、溜め込もうとする気は分からないでもない。しかし、それだけのカネを集めておきながら、その財務内容詳細を明らかにしていないので、どのような支出がなされているのかが不透明なのだ。この点は都の検証委でも問題となり、小池知事は組織委を都の監理下に置こうとしたが、森元首相の抵抗にあって実現していない。
◇ボランティアはただ働きの愚
さらに、カネが無いと言いながら、組織委は虎ノ門ヒルズという超一等地に事務所を持ち、年間5億円以上もの賃貸料を支払っている。会議をするなら都庁近くの方が便利なのに、わざわざ新築で賃料の高い森ビルに移ったのだ。このあたりに、JOCの金銭感覚の異常さ、「オリンピック貴族」ぶりが如実に表れている。ちなみにこの貴族達は理事35人、役員と評議員だけで43人もいる。さらに参与が12人、顧問会議はなんと170人という大所帯だ(2014年当時)。彼らに支払われる日当や交通費、会議費などの経費も巨額なのに、それを削減しようなどとは思わないらしい。
そうした自浄能力に欠けた組織が、10万人規模のボランティアをタダでこき使おうと動き出している。26日の記事は冒頭の通りだが、実はすでに昨年12月、組織委は
「東京 2020 大会に向けたボランティア戦略」なる文書でボランティア募集・に関する基本姿勢を明らかにしていた。
http://www.city-volunteer.metro.tokyo.jp/asset/img/about/strategy02.pdf
その中で、ボランティア募集の要件を、
・10日以上参加できる方
・オリンピック・パラリンピック競技に関する基本的な知識がある方
・スポーツボランティア経験をはじめとするボランティア経験がある方
・英語やその他言語のスキルを活かしたい方
などとし、費用に関しては
・大会ボランティア・都市ボランティアともに無償での活動となる
・原則として、東京までの交通費・宿泊も自己負担
と明記している。昨年7月にこの素案が示された際に、「こんなハイスペックな人材をタダで使おうというのか?」「通訳能力までタダで提供しろというのか?」などと組織委に非難が殺到したので「まだ素案の段階」として誤魔化したのだが、結局殆ど変更せず、語学部分を曖昧にして出してきたのだから噴飯モノだ。
その騒ぎの際、京都大学の西山教行教授は東京新聞への投稿で「通訳はボランティアが妥当との見解は外国語学習への無理解を示すばかりか、通訳や翻訳業の否定にも結びつきかねない」「街角での道案内ならさておき、五輪の翻訳や通訳をボランティアでまかなうことは、組織委が高度な外国語能力をまったく重視していないことの表れである」と痛烈に批判している。西山教授が見抜いたとおり、組織委の連中は語学能力を重視していないどころか、あらゆる人々の能力や善意を軽視し、タダで使おうとしているのだ。
再度、短く私の主張を記しておく。
・東京五輪は完全な商業イベントであり、その運営は巨額のスポンサー料で成される。
・全ての費用はスポンサー費で賄われ、組織委、JOC、電通などの運営陣は全員、
高額の有給スタッフである。
・それなのに、真夏の東京五輪実行の現場に立ち、消耗度が激しい現場ボランティアが全員無償というのはおかしい。
・「五輪だからボランティアは無給」などという決まりはなく、運営側が流すデマである。
・五輪までまだ3年もある段階で、既にスポンサー42社から3800億円以上の巨額資金があるのだから、無給ボランティアを使う必要はなく、全て有給とすべきである。
もちろん、世の中には五輪ボランティアを生き甲斐にして世界を回る人もいるから、それはそれで構わない。しかし、東京五輪に必要な人員はケタが全く違う。組織委が必要とする10万人を集めるためには、感動を押し売りし、善良な人々の奉仕精神を利用しなければとても集められる数字ではない。しかし、それを無償でやらせようとするのは明らかに「感動詐欺」「やる気詐欺」とも言うべきだ。今後もこの問題は追及していく。
2017年01月27日 (金曜日)

『財界にいがた』が森裕子議員(自由党)と菊田真紀子議員(民新党)の還付金問題を取りあげている。この問題は、メディア黒書でも取りあげてきたもので、森氏のケースでは、新潟地検が昨年の10月と今年の1月に筆者らの刑事告発を受理している。
同誌の報道によると、森氏は過去12年間で自身の政党支部へ、9100万円を寄付していた。また、菊田氏は、5000万円を寄付していた。
◇還付金制度を悪用
政治献金は、政治家の活動を支えるために不可欠なものである。そのために政治家は、有権者から政治献金を集める。その際、地元の政党支部に対して献金をした有権者は、ある優遇措置を受けることができる。それが「還付制度」といわれるものだ。
たとえばA議員の政党支部に100万円献金して、税務署で所定の手続きを
取れば、献金額の30%が戻ってくる。100万円を献金した場合は、30万円が戻るので、寄付者の負担は70万円に軽減される。政治資金を集めやすくするために政治家に配慮した措置である。
森氏らはこの制度を利用して、自分で自分の政党支部へ献金を行い、還付を受けていたのだ。自分で自分の政党支部へ献金したわけだから、そのお金は全部自分で使える。それに加えて、還付金も自分の懐に入る。
還付金制度は租税特別措置法の41条18・1で定められているが、例外として、「その寄付をした者に特別の利益が及ぶと認められたものを除く」と定められている。つまり森氏がやったことは違法行為である。
仮に森氏らが、還付金を受ける手続をしていたとすれば、森氏は2730万円を、菊田氏は1500万円を税金から騙し取ったことになる。

2015年度(平成27)に内閣府と博報堂の間で交わされたPR業務の契約金6700万円の内訳が不明になっている。内閣府は、「構想費」と説明しているが、請求書も存在しなければ、成果物もほとんど残っていない。このような不透明な資金が、国家予算から、支出されている事実を広告の専門家は、どう見ているのだろか。元博報堂の社員で作家の本間龍氏に執筆をお願いした。
執筆者:本間龍(作家)
このところ黒薮氏が博報堂と官庁の一連の疑惑を追及しているが、その中でも特に怪しいというか、ありえないレベルの話が内閣府と博報堂の平成27年度の「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」の契約書とそれにともなう請求の6700万円という案件だ。この金額を含め、博報堂は新聞出稿費などで総計約25億円の支払いを受けている。そもそも年初当初の6700万円という見込みがなぜ期末になると25億円になるのかも全く理解できないが、今回は大元の6700万円が広告業界でもいかにあり得ないものか、解説していく。
内閣府は黒藪氏の質問に対し、この6700万円は様々な広告展開を企画するための「構想費」であり、連日博報堂の担当が来庁し、構想立案のために博報堂側からアドバイスを受けていた「打ち合わせ費用」だと回答した。
これには私も仰天した。具体的な広告出稿やイベント実施を含まない、ただの打ち合わせによる「構想費」でそんな高額が発生するなど聞いたこともないし、絶対に有り得ないからだ。しかも、今どき単にディスカッションしていた程度で6700万円も支払ってくれるとしたら、それこそ内閣府とはなんといい加減な官庁なのか、と問題になる話だろう。
◇訳が分からない「構想費」の根拠
もちろん、年間の広告戦略を立てるために代理店とスポンサーの広報担当が複数回のミーティングを持つことはよくある。しかしそれらは大抵の場合、その後作られるCMやイベント費の中に「企画費」として含まれることが多く、単体の「構想費」として請求されることはない。その企画費にしても、大規模な市場調査などでもしない限り、せいぜい高くても500万円程度止まりのはずである。
さらに、博報堂の担当が連日内閣府を訪れて打ち合わせをしたというが、一体どれほどの人数がやってきたのか。この年を含め内閣府の博報堂に対する支払いの内訳は、明らかになっている殆どが新聞やテレビ・ラジオへの出稿費や原稿制作費で、年間20~25億円弱程度だ。しかし販促活動があるわけでないから、媒体手配以外で特に人手が必要なわけではない。だから私の経験上では、このレベルの得意先は担当営業が多くても2名、その下に媒体発注や原稿制作を管理するための派遣やアルバイトが2名程度いれば、十分業務が回る規模だ。
ということは、「構想を練るために連日打ち合わせをした」博報堂側の出席者は、もしマーケティング担当者を一人加えても、多くて3名程度だろう。その人件費を最大一人1日5万円としても、1日3名分で15万円。(もちろん、そんな高額はあり得ないが)その人員で一年365日中打ち合わせしたとしても、5475万円にしかならない。だがもちろん、打ち合わせを毎日やるはずもないのだから、こんな計算は成り立たない。よしんば博報堂の出席者を5名として、週一回打ち合わせをしたとしても、5×5万=25万、これに52週をかけても1300万円にしかならない。どだい、どう計算しても打ち合わせだけで年間6700万円という額は算出不可能なのだ。人件費で全然消化できないということは、他に余程すごい成果物があったはずである。
◇博報堂担当者が勝手に好きなだけ新聞出稿
ところが内閣府は、その延々と打ち合わせをした成果物や証拠がほとんどないと言っているのだから、これまた驚愕する対応である。極めて当然だが、代理店側はこうした打ち合わせに際し、必ず前回の打ち合わせ内容、課題、それに対する解決策などを記した詳細なレジュメを用意して臨む。茶飲み話の会ではあるまいし、ましてや国の施策をどう国民に伝えるか、という真剣な議論の場で何のメモも取らないなどありえないし、打ち合わせ期間中には、どのような施策を打つべきかという提案も少なからず行ったはずだ。しかもこれだけの高額なら、様々な市場調査結果などを挿入した、相当分厚い企画書に仕上がっているはずである。それなのに、その成果物が一切ないというのはどうみても不自然だ。
百歩譲って途中経過の記録がなかったとしても、最終的には絶対に「今年度政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施について」等の「基本構想案」的な企画書が残るはずである。その構想案に基づいて平成27年度の新聞出稿がなされたはずだから、なおさら記録がなければおかしい。そうでないと、博報堂担当者が勝手に好きなだけ新聞出稿したということになってしまうから、これも有り得ない。
◇6700万円の請求内容詳細の開示を
このようにこの案件は「有り得ない」ことだらけなのだが、それでも民間だったら特に問題視されることはない。ここで黒藪氏や私が詳細に疑問を呈すのは、支払われているのが国民の血税だからだ。年初契約書の何倍もの金額(税金)が期末に支払われているのに、その請求書は全て黒塗りで内容が分からず、具体的な成果物も無いなどとなっては、第三者による検証を露骨に拒んでいるとしか思えない。
だから内閣府は直ちにこの6700万円の請求内容詳細を開示し、さらにその具体的成果物を明らかにすべきだ。それが出来なければ、6700万円が本当に請求されたのかという架空請求の疑いが出てくるし、金額の程度からしてちょうど良い裏金作りに使用されたのではという疑惑も生む。やましい処がないのであれば、請求見積内容と成果物を示せば良いだけの話である。もちろん、それが真にその金額にふさわしい内容かどうかの検証は行うが、まずはその開示と提出が急務であろう。
【写真】博報堂に天下りした阪本和道・内閣官房長が作成した書面の例
2017年01月26日 (木曜日)

トランプ大統領が誕生した。メディアで、トランプ現象についての解釈が飛び交っているが、この問題は複雑なようで、実は極めて単純だというのがわたしの意見だ。
結論を先に言えば、欧米から日本にいたるまで先進工業国が押し進めてきた新自由主義=構造改革と、それに連動したグローバリゼーションがもたらした弊害の解決を、有権者が極右的な政策に求めた結果にほかならない。もともと極右政党は、自国の権益を最重視するので、新自由主義やグローバリゼーションとはなじまない。
ヨーロッパにおける極右政党の台頭もまったく同じ理由による。
◇市場の急拡大とビジネス環境の変化
しかし、ビジネスは国境なき時代に入っている。企業は多国籍化して、市場も世界規模に拡大している。彼らが求めているのは、一国の市場だけではない。
国境を取り払った想像もできない世界市場をターゲットにしているのだ。安倍首相が外遊を繰り返しているのは、その現れにほかならない。
日本が軍事大国化を進めている背景にも、多国籍企業の防衛部隊を派遣する体制を構築する必要に迫られているからだ。これは財界の要請である。軍事大国化と連動するかたちで、ビジネスの舞台を世界規模に拡大しているのだ。
米国も事情は同じだ。
こうした状況の下で、トランプ大統領が企業の海外投資を規制するのは極めて難しい。政治を牛耳っているのは、実は財界である。メディアがトランプ氏をバッシングしはじめたのも、基本的にはそれが財界の意向であるからにほかならない。今、メディアによる世論誘導がかなり大がかりな規模で行われている可能性が高い。
日本で新自由主義の導入が進んでいる時期、森善郎政権が2000年4月に誕生し、たちまちメディアによるバッシングで、無能な人物のレッテルを張られ、下野させられたことがあったが、その本当の背景は、森善郎政権が新自由主義=構造改革にあまり積極的ではなかったことにある。その結果、森氏は外野へ追いやられ、それに代わって、水星の如く小泉純一郎氏が登場し、財界の要望に応えてドラスチックに新自由主義=構造改革を導入したのである。
その結果は、改めて言うまでもなく、格差社会と貧困の登場である。
◇2大政党制の悲劇
なぜ、米国の人々は新自由主義とグローバリゼーションが生み出した矛盾の解消を極右のトランプ氏に期待したのだろうか。答えは簡単で、米国の政治は保守党による2大政党制で、新自由主義=構造改革の失敗を左派の経済政策に委ねる選択肢がないからだ。たとえ左派政党が存在したとしても、ソ連の崩壊に象徴されるように、社会主義が支持される環境がない。
新自由主義の御三家といえば、レーガン、サッチャー、ピノチェトである。新自由主義が登場した時、メディアにより、それが斬新な理論のようなPRが行われ、日本では軽薄にも小沢一郎氏らが、構造改革=規制緩和を叫びはじめた。それが何を引き起こすか、メディアも小沢氏も理解していなかった。だから、小沢氏は現在は新自由主義とは一定の距離を置いているのである。本来は、その責任の重大性に鑑みて、政界を去るべきなのだが。
わたしはグローバリゼーションそのものは、必要だと思うが、その背景にある新自由主義の理論と思想は誤っていると考えている。海外投資についての国際的な規制や取り決めを構築したうえで、企業の海外進出を進めなければ、投資先の国でも大きな経済格差が広がり、結局は紛争の原因となってしまう。
まもなく誰が政治やメディアを牛耳っているのかが明らかになるだろう。

内閣府でも天下りが明らかになっている。内閣府のナンバー2の要職にあった阪本和道元審議官が博報堂に再就職した問題である。博報堂が阪本氏を受け入れた背景は・・・。
『毎日新聞』(1月24日付け)の報道によると、「松野博一文部科学相は24日の閣議後記者会見で、組織的な天下りのあっせん問題を調べる大臣直轄の調査チームを設置したと発表した」という。
天下りはかねてから汚職の温床として問題になってきたが、放置されてきたのが実態だ。天下りを受け入れているある広告代理店のOBは、次のように話す。
「天下りした者は、再就職先へ省庁の仕事を持っていくのが常識中の常識です。さもなければ、高い報酬を払って老人を再雇用するメリットはありません」
改めていうまでもなく、天下りの実態を調査する必要があるのは、文部科学省だけではない。内閣府も調査すべきだろう。
◇博報堂へ25億円
メディア黒書で繰り返し報じてきたように、内閣府の「ナンバー2」だった審議官・阪本和道氏が2016年の1月(退官の半年後)に、博報堂に再就職していた事実が明らかになっている。メディア黒書に匿名の通報があり、公文書(「国家公務員法第106条の25第2項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の公表について」)で、筆者が事実関係を確認した。
内閣府と博報堂の間には、2012年度から不自然な取り引きが続いている。
詳細はメディア黒書で報じてきた通りである。
たとえば2015年度に内閣府と博報堂で交わされたPR活動の契約は、契約額が約6700万円だが、単価契約(各作業の単価を設定して、自由に作業量を増減できる契約)を連動させていることを根拠に、見積書も作成せずに、次々と請求書を送りつけ、最終的に内閣府が支払った額は約25億円に達している。
※単価は、6700万円の構成要素で、単価契約としては認められないとする説もある。
たとえ単価契約を根拠とした請求が正当としても、このプロジェクトの落札額は約17億円で、落札額を8億円も超過している。繰り返しになるが、見積書も存在しない。
◇電通の版下制作費、内閣府は公文書で記録せず
さらにこのプロジェクトで制作された新聞広告の版下の一部を電通が制作していることが明らかになっている。その完成した版下を博報堂に提供し、博報堂が新聞各社に版下を配信して、広告掲載料のマージンを得たことになっている。
これについて前出の広告代理店OBは次ぎのように話す。
「電通が版下を制作して、博報堂に提供し、博報堂が版下を新聞各社に配信して広告掲載料のマージンを得る構図は不自然です。版下の制作費は30万円程度で、電通に何のメリットもないからです。小さな広告代理店が版下を制作して、電通に提供することはあり得ますが、その逆はまずありえません。」
ちなみに筆者が内閣府に対して、電通に支払った版下制作費の額を示す文書を公開するように求めたところ、内閣府は不存在と返答してきた。つまり版下制作費として電通に幾ら支払ったのか、内閣府は公文書で記録していないのだ。
このように内閣府と博報堂、さらには電通との間には、極めて不自然な取り引き関係がある。
既に述べたように、このような不自然な取り引きは2012年度から始まっている。
管官房長官は、阪本元審議官と博報堂の関係を綿密に調査する必要があるのではないか。

2016年11月の新聞のABC部数が明らかになった。朝日新聞は約636万部で、前年同月比で約-27万部である。読売新聞は約900万部で、前年同月比で、-36万部だった。中央紙全体では、約82万部が減った。
新聞の凋落に歯止めがかかっていないことが明らかになった。
ABC部数の詳細は次の通りである。
朝日新聞 6,360,646(-273,799)
読売新聞 9,004,769(-363,735)
毎日新聞 3,027,684 (-176,882)
日経新聞 2,724,779(-4,241)
産経新聞 1,566,580(-1,836)
なお、ABC部数には、「押し紙」(正常な新聞販売店経営に不要な部数)が含まれており、ABC部数の減少がかならずしも、新聞の購読者が減ったことを意味しない。
ABC部数の減少を解析する場合、購読者の減少と「押し紙」の減少の両面を考慮しなければならない。

執筆者:本間龍(作家)
1月20日、電通は自殺した高橋まつりさんの母親との和解文書に調印し、高橋さんの死因が過労死だったと正式に認めて謝罪した。電通は18項目にわたる合意文書を作成、和解金を支払い、毎年12月1日には遺族に報告することも約した。過労死を巡る合意内容としては、前例がないほど被害者遺族に配慮した内容となった。
だがもちろん、この合意は電通が自発的に行ったものではない。交渉は昨年2月から始まっていたのに、電通側が高橋さんの自殺は恋愛問題のこじれであると主張して謝罪を拒否したため、和解できなかった。それが10月の過労死認定発表を機に世論の袋だたきに会い、官邸や厚労省の徹底追及による刑事事件化で、仕方なく合意を結んだというのが実情だ。経営陣の初動の間違いが引き起こした影響はあまりにも甚大だった。
実際、先月28日には労働局によって会社としての電通と高橋さんの上司が書類送検されたが、捜査は7000人の社員全員の労働時間を1年間に渡って精査するなどまだ続いており、送検される者がさらに増えると予想されている。
◇下請け企業へのしわ寄せ
電通が今まで遺族に謝罪しなかったのは、東京地検に刑事訴追を受けた際に遺族との民事裁判で謝罪していると裁判で不利になるからだが、労働局や厚生省の強行姿勢からしてもはや捜査方面の刑事訴追は避けられず、それなら遺族には謝罪して僅かでも印象を良くしたいとの計算が働いたのだろう。どこまでも計算高い連中である。
だが、電通本体がなりふり構わず労務環境改善に突っ走ることは、新たな悲劇を生む可能性がある。電通社員が仕事を出来なくなった分を、協力会社などの下請け企業が代行する仕組みになっているからだ。
広告代理店の仕事は究極の家内制手工業であり、非常に多くの人手が関与している。例えば大きな企業のテレビCMプレゼンテーションともなれば、コピーライター、デザイナーが数名ずつにマーケティングプランナー、それを販促に結びつけるセールスプロモーション担当など、最低でも10人以上のチームが必要だ。その彼らが複数の案を作るとなると、企画案やプレゼンボードなども膨大な量となるが、多くの場合それらを制作するのが下請けの協力会社スタッフである。彼らは電通(博報堂も同様)社員の打ち合わせに寄り添い、あらゆる雑務をこなして業務を助けている。今、その彼らに過重な業務がのしかかっているのだ。
現在、電通は22時で全館消灯し館内での業務は一切できない。また、22時以降のメールのやり取りも自粛されているため、実質的に22時から翌日5時までが「真空時間」となっている。だが取引先企業の担当者は仕事をしているし、まさにその時間帯に不測の事態が発生する場合があるため、本来は電通社員が働いていたその時間の業務を、下請け企業の社員が代行せざるを得ない状況となっているのだ。
例えば、数日以内に放映開始されるCMの内容が、スポンサー側の事情で急遽変更になる場合がある。その決定が下されれば変更は一刻を争うから、夜中でも作業をしなければならない。他にも、新聞掲載の広告がきちんと掲載されるか、その日の紙面でスポンサーのネガティブ記事(事故や事件)と広告がかち合っていないかなどのチェックも夜中の印刷直前に行われるから、そこにも立ち会いが必要だ。CM撮影だって22時を超えて深夜になる場合が多々ある。今、そうした作業の確認業務がほとんど下請け社員に振られているのだ。
だが下請け社員はあくまで補助的なポジションだから、スポンサーと揉めたりした場合の決定権がない。当然、電通が幾らでその業務を請け負っているか分からないから、価格や予算の話もできない。スポンサーからCMで大至急ここを直せと言われても、修正費の交渉すら出来ないし、下手したら自社の持ち出しになる危険性もある。とにかく不確定要素が多くて過大なストレスになるし、何よりも時間的な部分で作業量が膨大に増加しているが、現在のところそれらのほとんどが「サービス残業」的な扱いになってしまっている。これでは、電通社員の働けなくなった分を単純に、しかもタダで下請け企業に放り投げていることになってしまう。こんな理不尽な話はない。
◇解決策はフィー方式を採用
では、そうした下請け企業の苦境を救うためにどうすればいいのか。全てを一気に解決することは出来ないが、とりあえず労働対価としてきちんと業務に見合う報酬を払うことから始めるべきだ。そのやり方としては、電通と協力会社間で拘束時間や人件費が明確になるフィー制度による支払いを義務化するのが有効だと思われる。
日本の広告業界では、一つの業務をワンパッケージとして請け負い、そこに管理進行料として利益を上乗せするコミッションベースの取引が一般的だが、欧米ではより細かく人件費や労働時間が設定されるフィー方式が殆どであり、日本でも日産をはじめ幾つかの企業が採用しているが、まだ圧倒的に少数だ。しかし、このコミッション方式こそ、長年日本の広告業界で真の労働コストをうやむやにし、過剰なサービスを生んできた現況である。
だから日本の広告業界も、これを機に全体的にフィー方式への転換を図るべきだ。業界最大手の電通が率先してスポンサーや下請け企業とフィー方式を採用すれば、費用がかなり明確となって余計なサービス労働が減少する。
もちろん、下請け企業との間でフィーによる支払い方式に転換すれば、電通の支払いが増加して収益は一時的に減少するだろう。しかし、そうしたところから改善していかなければ、結局は弱い処にしわ寄せをしただけで、根本的な解決は出来ない。電通が本気で改革をしようとするのか、厳しくウオッチを続けていく。

省庁と博報堂の取り引きの実態を調査する中で、契約書の内容と実際の業務が乖離していることが分かった。それは「成果物」の検証で判明する。
たとえばウエブサイトの構築を500万円で制作する契約を結んだとする。この場合、成果物の検証とは、制作者が完成させたウエブサイトが契約書の仕様どうりに作成されたかどうかという点である。
しかし、その成果物には非常に曖昧な要素がある。ひとつの例を挙げて説明しよう。
◇6700万円の内訳は不明
メディア黒書でたびたび取りあげている情報公開資料のひとつに、内閣府が博報堂との間で結んた平成27年度の「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」の契約書とそれにともなう請求書がある。
■政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等
契約額は約6700万円である。ただし、内閣府は、この金額のすぐ下に、「契約単価 別紙契約単価内表のとおり(消費税別)」 と記されているので、約6700万円とは、別にそれぞれの業務の単価に従って、臨機応変に増額請求できると主張している。
そこで筆者は、まず、6700万円の契約額が具体的にどのような業務に対するものであるかを説明するように内閣府に求めた。
◇国家予算を次々と支出
内閣府の説明は、6700万円は構想費に該当するというものだった。PR業務を進めるために、内閣府の職員と博報堂の職員がほとんど毎日集まって、博報堂の社員が広報戦略についてアドバイスをしていたという。
その結果、莫大な額の広告費を出費するに至ったのである。(落札価格を約8億円オーバー)しかし、これは基本的におかしな論理である。博報堂にしてみれば、なるべく多くの仕事を受注したいわけだから、内閣府が広告を多量に出稿する方向性でアドバイスをするだろう。公共事業の場合、構想を相談するのであれば、利益を受ける者とは関係がない第3社に依頼しなければおかしい。
念のために、わたしは博報堂の社員とほぼ毎日、打ち合わせを行った事実を示す記録が残っているのかを内閣府に尋ねてみた。その結果、そのようなものは何もないことが判明した。
打ち合わせを行った記録も残っていなければ、打ち合わせで何を決めたかを示す記録も残っていない。つまり、口頭の話し合いだけで、国家予算から博報堂に約25億円もの仕事を発注していたのである。
このケースでは、「成果物」に該当する構想案の実態が示されないまま、莫大な国家予算が動いているのだ。内閣府が主張する構想費を何に使ったのか、何の記録も残っていない。
わたしは、内閣府に「このような方法を今後も続けるのか?」と質問していみた。内閣府からは、続けるという返事が返ってきた。
◇契約書の仕様を無視
ちなみに契約書に添付されている仕様書によると、広告の年間契約段数は次
のようになっている。
○ブランケット判 70紙 各59段
○タブロイド判 1紙 76段
しかし、実際に出稿された段数は、たとえば中央4紙(朝日、読売、毎日、産経)の場合、次のようになっている。
朝日:94.5段
読売:94.5段
毎日:94.5段
産経:94.5段
契約段数を大幅に超えているのだ。若干のオーバーであれば、許容範囲だが、大幅に超過している。
また、広告の仕様は、契約により次のようになっているが、実態は異なる。
○ブランケット判
全15段×2回(内、1回は4色カラー広告)
全10段×2回(内、1回は4色カラー広告)
全7段×2回(内、1回は4色カラー広告)
全5段×2回(内、1回は4色カラー広告)
○タブロイド判
全11段×6回(内、1回は4色カラー広告)
全5段×6回(内、1回は4色カラー広告)
たとえば、ブランケット判の全15段広告についていえば、4色カラーの15段広告を1回掲載、モノクロのものを1回掲載することになっているのに、いずれもモノクロの広告で、カラーのものは掲載されていない。
10段広告は、一度も掲載されていない。7段広告は、1度掲載されているだけだ。これに対して5段広告は、13回掲載されている。さらに契約書にはない、半5段の広告が2回掲載されている。
※ただし、8月から11月にかけて四国新聞、北海道新聞、山口新聞、山梨日々新聞に掲載された「輝く女性応援会議」の広告については、段数や仕様のデータがないので、考慮に入れていない。
これらの事実から、原則的に契約書に沿った仕事をしていないことが分かる。途中で仕様を変更しても、その根拠となる書面が存在しない。表向きに契約額や仕様などを決めた上で、博報堂のアドバイスに従って、次々と後付けで国家予算を引き出してきた事実が確認できるのだ。
このような手口を内閣府と博報堂は、平成24年度(2012年度)から繰り返してきたのである。
そして2016年1月には、阪本和道審議官が、退官の半年後、博報堂に天下っている。この人物は、内閣府の時代に広報の仕事にもかかわっているので、事情を聞いてみる必要があるだろう。

執筆者:本間龍(作家)
1月17日、JRA(中央競馬会)が電通を1ヶ月の業務指名停止処分にしたと発表、翌18日には滋賀県も3ヶ月の指名停止処分を発表した。遂に電通に対する行政上のペナルティーが顕在化し始めた。
私は一連の電通事件の行き着く先は電通に対する官民企業・団体による指名停止処分にあり、最終的に東京五輪関係業務にどう影響するかが最大の焦点であると指摘し、このメディア黒書でも繰り返し書いてきた。
労務管理問題に限れば指名停止要件になっていない場合が殆どだが、犯罪の内容に関わらず書類送検されれば指名停止処分を科す内規を持つ団体や行政が、いち早く動き出した格好だ。また19日には、厚労省が電通の全社員7000人余の出退勤データを2015年11月から昨年10月の1年間に渡って捜査していると報道された。
7000人という全社員の膨大なデータを1年間という長期に渡って調べるのは極めて異例であり、さらなる書類送検に向けての捜査が続行していることが確認されたのだ。今後も送検される者が出る可能性は高く、捜査の進展によっては行政だけでなく、民間企業においても指名停止が考えられる状況になってきた。
◇JRAと滋賀県に続き注目される44の五輪ホストタウンの動き
まず1月17日、JRA(日本中央競馬会)が電通に対し1ヶ月の業務指名停止を発表した。たった1ヶ月ではあるが、JRAは国が全額出資する特殊法人であり知名度も高いため、多くのメディアが報じた。昨年の電通への発注額は約22億円と思ったよりも少ないが、ついに来るものが来たということで大きな話題になった。
さらに18日には、滋賀県も電通を3ヶ月間の指名停止処分にする予定であると発表。「滋賀県建設工事等入札参加停止基準」には「禁固刑以上の刑に当たる犯罪の容疑による書類送検」があり、該当すると3ヶ月の参加停止となる。今回はそれが適用されるのだが、実はここでさっそく五輪業務の裾野の広さを確認できる。
実は電通は滋賀県から、2020年東京五輪で参加国の選手と交流する「ホストタウン」の誘致事業を受注していた。この「ホストタウン」事業には現在既に全国44の県や市町が登録申請していているが、当然その全ての業務に電通が関わっている。
電通は五輪本体の実施業務を独占受注しているため、その関連であるホストタウンを含め、これから全国で行われる五輪本番までのあらゆる歓迎行事の実施をも優先的に受注できるのだ。それほど五輪関連の業務は裾野が広く、しかも電通の一社独占なのである。だが裏を返せば、今後捜査の進展により、最低でもホストタウンに登録申請している44の県や市町村は、電通への対応を考慮しなければならなくなるということだ。
滋賀県はそれ以外にも、今年度の観光や近江牛などの特産品PR事業なども電通に発注しているので、3ヶ月の停止処分は県の事業への影響が避けられない。また、県庁が指名停止に踏み切れば、その傘下の市町村も対応を考えることになるから裾野は広い。これは全国の都道府県全てに共通するものだ。
これらの動きを受け、五輪業務の発注元である東京都の関係者は、「捜査の進展を注視している。現時点ではまだ書類送検なので何とも言えないが、地検が起訴すれば何らかの対応を取ることになるのではないか」と語っている。
◇金の流れを握るJOCと組織委
しかし、実は東京都から五輪業務として電通に発注されている額は現在まだ約10億程度で、決して大きなものではない。五輪業務はJOCと五輪組織委員会が直接電通と一社独占契約を結び、その間でカネのやり取りがなされているからだ。
つまり、一番大きなカネの流れはJOCと組織委が握っているのであり、そこが今回の問題を受けてコンプライアンスを発揮できるのか、という問題になる。しかし組織委は各省庁からの寄せ集めに過ぎないので、電通からの出向組がいなければ全く仕事にならない。そうなると、たとえ一ヶ月の業務停止でも甚大な被害を被るだろうから、なんとか指名停止にせず、スルーして逃げ切ろうとするだろう。
しかし五輪組織委のいい加減さは、開催費用算出のでたらめぶりを見れば明らかである。当初7000億程度と言っていた開催費用が現在は2兆円規模に膨れあがったのに、誰も謝罪もしなければ責任も取らない。エンブレム選定も電通が最初から佐野研二郎氏に決めようとしたが盗作騒ぎでひっくり返ったのは、まだ記憶に新しい。
さらに財務内容も非常に不透明であり、小池都知事は昨年7月に組織委に対し、都の監理団体になるよう要請したが、森会長らの強い反対に遭い進展していない。このような不透明でいい加減な組織が3千億円以上にのぼるスポンサー料の管理を独占し、その運用を電通だけに任せている現状は極めて異常だ。
もし組織委が電通に対し受注停止などの措置を取らないようなら、国会などの場でその是非を議論し、問題のありかを国民に明らかにしていく必要がある。これこそが五輪・電通問題の本丸だからだ。

内閣府と広告代理店の契約形態は、どう変化したのだろうか? かつては契約書に則した手続を踏んでいたが、博報堂との取り引きが始まった後、疑惑だらけの現在の方式になったことが判明した。
内閣府と広告代理店の間で交わされている新聞の政府広告の契約書を検証する作業の一端として、古い契約書の形態を調べたところ、かなり前から請求額を後付けで増やせる構図になっていることが分かった。これは内閣府の裁量により、広告代理店を通じて新聞社に支払う「広告掲載料」を、自由にコントロールできることを意味する。
あえて広告出稿についての年間計画を公表することもなく、内閣府の裁量に委ねることで、新聞社を飼い慣らすための有力な道具としても機能する。
たとえば平成20年(2008年)4月1日に内閣府と電通の間で交わされた契約書を見てみよう。
契約書の最大の特徴は、契約額が単価で表示されていることである。このケースでは、1段当たりの契約額が約200万円(1,995,000円)となっている。契約期間は、「平成20年4月1日から平成21年3月31日」。
つまり契約期間の1年間に限定して、1段当たり200万円の広告を出稿するという契約である。段数の総数は、広告のスペースや掲載頻度によって異なってくる。出稿数が多ければ、広告代理店と新聞社の収入も、それに連動して増えていく仕組みになっている。
この方式の下では、あらかじめ出稿する広告のプランが示されていないわけだから、内閣府の裁量により、メディア側に流れ込む広告収入が大きく左右される。メディアコントロールの手口という観点からすれば、問題がある制度だが、しかし、法的な汚点はない。
◇契約書にない不思議な業務方式
これに対して現在、内閣府と博報堂の間で交わされている契約では、上記の平成27年度を例にすると、契約額が約6700万円に設定されており、先に紹介した昔のケースのように、単価契約にはなっていない。それにもかかわらず内閣府の裁量で、次々と広告の発注が行われ、その額は20億円を超えている。契約書内容に沿わないことをやっているのだ。
しかも、わたしが取材したところ、内閣府の職員の「口頭とメモ」による指示だけで、見積書も取らないまま、莫大な額の国家予算を引き出し、博報堂に支払っているのである。
契約額の約6700万円が何を根拠にした額なのかという点に関して、内閣府は、「構想費」と説明しているが、その内訳は不明だ。社会通念からして、構想費であれば5万円から10万円程度だろう。金銭感覚そのものが狂っている。
国家予算が極めて安易に引き出されて、博報堂を通じてメディア企業へ流れているのである。
【写真】博報堂の戸田裕一社長

博報堂とアスカコーポレーションの係争のなかで、最も注目を集めているのが、テレビ視聴率の改ざん問題と、博報堂が放送確認書を代筆していた問題である。前者について言えば博報堂は、担当者が「番組提供枠購入のための指標として、視聴率データを取得するために、当時最適と思われる条件を設定してデータを入手した」と主張している。
また、後者については、放送局側が放送確認書を発行しない取り扱いとなっていたために、博報堂みずからが代筆したと主張している。これらの争点について、元博報堂の営業マン・作家の本間龍氏はどう考えているのだろうか。
執筆者:本間龍(作家)
昨年12月22日付けの記事で(株)アスカと博報堂の媒体費関連訴訟について検証した。これらは制作関係費の訴訟(約15億円)とは別に、総額で約42億円にもなる巨額訴訟であり、博報堂がこれだけ巨額の訴訟を起こされた例は、かつてないと思われる。内容的には
A)視聴率偽装による不正請求
B)放送しなかった番組、CMの不正請求
に大別され、主に(A)について22日付け記事で検証した。スポンサー番組選定のために提出していた視聴率の多くが改ざんされていたというもので、かなり明確な証拠が残っている。この部分に関しても少々補足しておきたい。
弁護士が確認した数字(ビデオリサーチ社提出)を元にした視聴率偽装の告発に対し、博報堂側は答弁書で、『担当者は番組提供枠購入のための指標として、視聴率データを取得するために、当時最適と思われる条件を設定してデータを入手した』と主張している。しかし博報堂の営業が得意先に提出する番組視聴率は、ビデオリサーチ社から提供された数字を加工せずそのまま提出するだけであるから、この記述は明らかにおかしい。
◇博報堂、条件を設定して視聴率データを入手の怪
博報堂の論法がもし通用する場面があるとしたら、それは平均ではなく時間を細かく見た瞬間視聴率や、年齢・性差・嗜好などを加味して視聴率内容を詳しく分析した場合のみだ。しかし博報堂がアスカに渡していた資料は、各番組の平均視聴率や年代別視聴率が記載されたごく一般的な媒体資料で、詳細な分析が加味されたものではなかった。
「条件を設定してデータを入手」する必要などない、ごく普通の種類のものだったのだ。
現在、テレビの視聴率データとして国内で公式に認められているのはビデオリサーチ社の数字のみであり、もしこれに「最適と思われる条件を設定」をして数字をいじったりすれば、基本となる数値の信頼性がなくなってしまう。つまり、もし仮に博報堂側の言い分通りだとしたら、同社は得意先に対し常に恣意的に「最適と思われる条件を設定」した視聴率を提示していることになってしまうのだから、これはありえない。このあたりの答弁書記述は、広告業界に疎い裁判官を惑わす書き方で非常に不誠実だと感じる。
そこでこの部分に関する検証方法としては、アスカ側が提出している番組視聴率資料と同じ時期のものを博報堂にも提出させれば良いだろう。作為しなければ、同じビデオリサーチ社の数字であるからコンマ0,1まで当然同じデータになるはずである。
しかしそうなれば、訴状にある時期のデータだけがなぜコンマ刻みで数字に差異が生じているのかを博報堂は説明しなければならなくなる。また逆に、アスカ側が用意した資料の数字(ビデオリサーチ社提供の数字)と違いが生じたら、それこそ博報堂がデータを作為的に操作していた証拠となるし、なぜそうなるのか説明が必要になる。
つまり、この検証方法を実施すれば、どちらの結果が出るにせよ、博報堂の弁明は苦しくなるのだ。
◇放送局が放送確認書を発行しないことはあり得ない
さらに(B)の過剰請求(未放送分の請求)であるが、こちらはCM放送確認書が不明確で、CM放送が確認できていない分だ。放送確認書に本来はあるはずの10ケタCMコードが無かったり、放送確認書自体を博報堂が代筆していたものが平成22年6月以降、合計で1億円以上にのぼっている。これに対し博報堂は、代筆していた分は通販番組で、放送局側が放送確認書を発行しない取り扱いとなっていたため、放送局に代わって発行したと答弁している。
確かに、BSなどで放映されている通販番組の多くは制作会社の持ち込みで、テレビ局は放送枠を貸すだけの形になっているから、それらには10ケタコード付きの放送確認書が出ないという場合はあるが、放送局が放送確認書自体を発行しないというのは聞いたことがない。
通販番組内とはいえ、そのテレビ局でCMが放映されたことを局が確認しなければ、スポンサーはどうやってCM放送の有無を確認すればよいのか。この部分の答弁記述もおかしい。これはテレビ局に直接真偽を確かめるべきだろう。
さらに、平成23年3月11日に発生した東日本大震災後、放送中止にしたはずのテレビCM196本分1124万円が不当に請求されたとアスカは主張している。アスカ側は、3・11以降の放送中止分はスポンサー原因によるものではなく、テレビ各局のCM放送自粛であるから、この分は請求が発生しないはずなのに博報堂に請求されていたとしている。
これに対し博報堂は、3月15日以降の番組差し替えはスポンサー原因扱いとなるため広告料が発生することを説明したところ、アスカ側もそれを了承したと述べていて、主張が真っ向から食い違っている。ここは前述の視聴率偽装や放送確認書のような仕組みの問題ではないので、どちらの主張が真実なのか、判断が難しいところだ。
◇営業としての経験則に照らしてみれば・・・・
それにしても、こうした問題が発生する前まで、博報堂は約10年に渡ってアスカと取引し、蜜月期間を築いていた。特に2007年以降は電通九州や地場の代理店を排除し、博報堂が全ての広告宣伝業務を一社で独占受注していたのだが、その背景には、アスカの社長と博報堂担当者の、強い個人的信頼関係があったという。そのため、事実上博報堂の見積や請求書はほぼノーチェックで通用していた。
しかしその間、契約していたタレントの出演費は年率で10%以上ずつ上昇し、パンフレット制作費も同様に高騰していった。そしてさらに、視聴率の偽装やCM未放送分請求などの疑惑が発生した。
■参考記事:博報堂がアスカに請求したタレント出演料の異常、「 契約金が翌年に20%も上昇することなど有り得ない」
営業としての経験則に照らしてみれば、数年で出演費や制作費が20%以上も上昇することなどありえないから、博報堂の担当者が長年の独占受注とスポンサー側のノーチェックに便乗し、どんどん営業収益(儲け)をかさ上げしていった様子が浮かび上がる。裁判で結論が出るとは言え、筆者にはこれらが全てアスカ側の被害妄想とは、到底思えない。
かつて蜜月期間を持った得意先に対し、独占状態を良いことに営業収益を過度に肥大させていった博報堂の姿勢は、厳しく検証されるべきだ。だがOBとしては、これが会社主導ではなく、一担当者による度を超した逸脱行為だったと思いたい。だから近々始まる裁判を傍聴し、博報堂がこの疑惑にどう答えるか注視し、引き続き報告する。
2017年01月17日 (火曜日)

東京都目黒区の女性が、化学物質過敏症の人々が集う場を設置した。この女性は、自宅のフローリングのフロアマニキュア剥離作業が原因で、強度の化学物質過敏症になり、離職(元銀行員)を余儀なくされた。作業中に多量の化学物質に被曝したのが原因である。
その際、自宅で飼っていた猫も、血を吐くなどの異変に見舞われた。この猫の名前に由来して、集いの場は、「はなちゃんカフェ」と名づけられた。
一般的にはあまり知られていないが、人体にダメージを与える量の化学物質に被曝すると、化学物質過敏症になるリスクが生じる。たとえば、1995年の地下鉄サリン事件の際に、サリンに被曝したひとの中には、化学物質過敏症になって、現在も苦しんでいる人々がいるという。
一旦、化学物質過敏症になると、電磁波にも過敏になる。その原因は分からないが、事実として、筆者が取材してきた電磁波過敏症の人々の中には、発症前に化学物質過敏症になっていた人も少なくない。
われわれの身の回りでは、刻々と化学物質が増えている。米国のケミカルアブストラクトサービスが付番する新しい化学物質は、年間で100万件にもなるという。これらの化学物質が相互作用でどのような人体影響を及ぼすかは、ほとんど分かっていない。化学物質による被曝は、他人事ではなくなってきたのである。
「はなちゃんカフェ」に参加する資格があるのは、病院で化学物質過敏症と診断された人と、その家族である。カフェには、化学物質過敏症や電磁波過敏症に関する100冊を超える図書も揃っている。入会は無料。
詳細は、次のウエブサイトで。
