
■山田幹夫(フリーランス取材者・元通信社記者)
森友学園の問題では安倍首相夫人の関与、官僚の忖度(そんたく)の解明がうやむやになっている。これに類似した問題が他にも起きている。東京オリンピックの土地をめぐる疑惑である。
東京都中央区晴海5丁目は、かつてはモーターショウやビジネスショウなど、イベントや見本市が開催された場所だが、現在は国内外の豪華クルーズ客船の客船ターミナルがある。そこは、「海外の帆船などが表敬訪問した時や、南極観測船しらせが出港・帰港する時」(東京都港湾局のホームページから)にも使われる。さらにレインボーブリッジなどを一望できる晴海ふ頭公園もある。
その広大な場所で、オリンピック選手村整備を理由にした「市街地再開発事業」が進んでいる。ところが、フタをあけてみれば、都有地13.4haが129億6千万円の格安で払い下げられていた。選手村の建設事業者は三井不動産レジデンシャルを代表とする大手不動産11社による企業グループ(他にNTT年開発、新日鉄興和不動産、住友商事、住友不動産、大和ハウス工業、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産、三菱地所レジデンス)。
◇地主(東京都)が自ら土地価格を下げる異常な「再開発」
東京都は選手村の建築事業者を2016年5月に募集したが、募集期間は12日間で応募は1企業グループのみだった。競争入札とは名ばかりだった。
「再開発」の場合、地主は土地をできるだけ高く売って引っ越すか、跡地にできる超高層建築物などに入ることが多い。しかし、この晴海のケースでは、地主である東京都が極端に安く土地を手放した。民有地ならともかく、都民の共有財産である。
NPO法人区画整理・再開発対策全国連絡会議の遠藤哲人事務局長は、
「地主大損の再開発だ」
「再開発の名に値しない」
と、その異常さを指摘している。
4月末に「臨海部開発問題を考える都民連絡会」(臨海都民連。学者・専門家や都庁職員、住民運動家などが活動を続けている市民団体)がオリンピック選手村建設をめぐる疑惑検証のシンポジウムを開催した。その中で住民監査請求を5月中旬に行うことが明らかになった。このシンポジウムで浮き彫りになった要点を紹介しよう。
◇1㎡あたり9万6,700円、9割引きで払い下げの「官製談合」?
臨海都民連の市川隆夫事務局長が紹介した資料によると、東京都の基準地価は次の通りである。東京23区でそれぞれ地価が一番安いのは(1㎡当たり。2016年7月現在)、千代田区二番町12が202万円、港区高輪3-5は112万円、新宿区上落合3-20は45万8千円、下町の台東区根岸5-11は47万6千円、墨田区立花1-25は29万7千円、江東区東砂8-8は32万2千円だ。選手村用地と同じ行政区、中央区の月島3-25は116万円で、選手村用地と同じ番地の晴海5-1は95万円。少し離れた佃1-5でも77万1千円。予定地から1キロほど離れた都有地を4年前には、103万円で売却したという話もある。
ところが問題の晴海の土地は、9万6,700円である。
銀座から3キロで築地と豊洲の中間に位置し、地下鉄の駅まで徒歩10分という好条件でこの価格だから驚きだ。こんな安い土地はいくら探しても都内23区の住宅地では見つからない。
市川氏は、「近隣地の公的地価の約1割で払い下げ。利益は大手開発会社へ、都民には何も残らない、究極の官製談合」と告発している。
◇土地評価の調査報告書を情報公開請求しても「黒塗り」
選手村の建物は22棟4,000戸(14~18階)の予定で、オリンピック後に改修し、さらに50階の高層棟も2棟追加して総戸数5,950戸を売り出す計画だ。
土地の払い下げ価格の安さについて東京都は「大会終了後の分譲までの期間の長さ」「選手村仕様の住宅の改修」の2点を挙げているものの、土地評価を委託した財団法人の「価格調査報告書」は、情報開示請求で公にあった書面を黒塗りで隠していた。
◇「不適正な価格の是正」を東京都に求める住民監査請求へ
渋谷共同法律事務所の淵脇みどり弁護士は「再開発事業制度の濫用による巧みな脱法手法」として5月中旬に住民監査請求をする手続きを説明すると共に、「世論を広げる」重要性を強調した。
シンポジウムにはこの問題の要点を4月に報道した「日刊ゲンダイ」の記者も参加し、この事件を、
「なぜか大手メディアは沈黙する都政版森友疑惑」
と、批判した。
シンポ参加者からは、「そんなに安くなるなら私も買いたい」という声も出た。
豊洲問題では都民ファースト、情報公開の徹底を強調している小池都知事だが、この案件についてはどのように答えるのだろうか。
■添付資料。「東京都23区の基準地価の表」(臨海都民連提供)
2017年05月09日 (火曜日)

米国・日本・韓国の3国と北朝鮮の間で戦争が勃発する可能性はあるのだろうか。5月に入って、北朝鮮有事の報道はやや下火になったが、それまでは、いまにも戦争が勃発するかのような報道が氾濫していた。しかも、新聞・テレビだけではない。雑誌からインターネットメディアまでが、トランプ政権の強権的な姿勢と、北朝鮮の脅威を報じ、国民の不安を煽った。
が、結局はなにも起こらなかった。おなじような現象が以前にもあった。尖閣列島や竹島の領土問題で戦争の火ぶたが切られそうな空気がつくられた。これも結局は何も起こらなかった。冷静に考えれば、当然だ。日米にとって最大の防衛相手国・中国に戦争をしかけて最も打撃を受けるのは、日米の財界であるからだ。
大半の人は気づいていないが、これが国策プロパガンダの実態なのだ。北朝鮮や中国が日常的に行っている軍事開発についての動きを、特定の期間に大量にたれながす。その結果、それが平和を脅かす新たな動き、新たな脅威であるかのように錯覚してしまう。
◇メディアの大罪
このような世論誘導の手法はなにも軍事面に限ったことではない。メディアの現場では日常的に行われている。たとえば少年による殺人事件や傷害事件のニュースを連続して流すと、近年、非道な少年犯罪が急増しているような錯覚を誘発する。が、少年犯罪の件数がもっとも多かったのは、実は終戦まもない時期で、近年は従来に比べると激減している。相対的には減っている。情報操作ひとつで、情報を受け取る側は、少年犯罪が増えていると錯覚する。
年金の不正自給者についてのニュースを連続して流すと、不正自給が急増したような錯覚を受ける。が、こんなものは昔からあった。この機会を狙って、国会では福祉を縮小する方向性が打ち出される。この種の連携プレーは常々起きている。
本来、ジャーナリズムの役割は、このような洗脳や世論誘導を見破り、真実を知らせることなのである。その意味では、日本のジャーナリズムはほとんど機能していない。ニュースのラインアップを見ても、ほんの一部のメディアを除いて、他人のプライバシーを暴くものや、タレントの動向など、実はどうでもいい不要なニュースばかりが並んでいる。
◇戦争広告代理店
情報操作により誰が最も大きな利益を受けているのだろうか。
北朝鮮有事の報道を例にすれば、それは軍事産業を押し進める企業である。政治家が北朝鮮に対抗するために、軍事大国化の方向で動いてくれるからだ。特に米国のトランプ政権とつながった軍事産業だ。日本、韓国、フィリピンなどが、米国から武器を購入させられる構図となる。
ニュースを利用したこのような世論誘導には、しばしば広告代理店が絡んでいることがある。たとえばボスニア紛争の背景にアメリカのPR企業の策略があったことは有名だ。PR企業がメディアに、世論誘導を目的とした記事を書かせていたのである。一種のフェイク・ニュースである。
北朝鮮有事の報道の背景に、ボスニア紛争時と同類のPR企業の戦略があったかどうかは知らないが、世論誘導そのものは、国家予算を広報・宣伝費として広告代理店に投入すれば、簡単にできる。日本のマスコミはNHKに象徴されるように公権力から独立していないからだ。安倍首相と会食する仲にあるからだ。
◇人間ロボットを生産する「工場」-日本の学校
日本人は極めて洗脳されやすい民族である。堀江貴文氏の『すべての教育は「洗脳」である』(光文社新書)によると、日本の場合、学校教育の本質的な目的は、社会に都合のいい人間に洗脳することなのだという。学校は、人間ロボットを多量に生産する「工場」だという。
それがどのようなロボットかといえば、目上の人の言葉をそのまま鵜呑みにするロボットである。何の疑問も感じずに、教師の言葉を信じ込む。当然、優秀なロボットは学校の成績も優秀だ。その優秀なロボットがマスコミや政界や企業で働いているのである。
こうした教育制度があるために、日本では物事の真実を見抜いて自分の意見を表明する人間は育たない。それよりも「神の言葉」を鵜呑みにする。そういう人間のほうが旧世代の企業社会では使い勝手がいいからだ。
ところがその弊害は想像以上に大きい。自分で考える力が欠落しているから、メディアによる世論誘導のえじきになってしまうのだ。このような構図には、メディア自身も気づいていない。
事実、共謀罪に関する無知などは、その最たる例だろう。

先月27日に、全国の新聞社73社に対して、筆者はある問い合わせを行った。問い合わせの内容は、内閣府が昨年、黒塗りにして開示した博報堂からの請求書(政府広告の掲載料を請求したもの)の金額明細のうち、自社に該当する部分を開示するようにお願いするものだった。
しかし、5月8日の段階でどの新聞社からも回答がない。国会予算の受取額を開示できないということらしい。
発端は、昨年の夏だった。筆者は、内閣府に対してある情報公開請求を行った。請求内容は、2015年度に広告代理店が内閣府に送付した見積書、契約書、それに請求書の3点の全部を開示するように求めたものである。
内閣府は開示に応じた。そこで開示されたものを精査したところ、内閣府が博報堂との間で交わした「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」と題するプロジェクトの契約書と請求書に次の疑問点があることが分かった。
①見積書が存在しない。
②契約書に契約額が6700万円と表示されているにもかかわらず、それ以外にも、内閣府がみずからの裁量で自由に広告を発注できる取り決めになっている。その請求総額は新聞広告だけで20億円を超えていた。しかも、驚くべきことに発注は、「口頭とメモ」で行われていた。
③請求書にコンピューター・システムによる経理処理に使われるインボイス・ナンバーが付番されていない。筆者の取材に対して博報堂は社内では付番していると回答しているが、正常な取り引きでインボイス・ナンバーをあえて外す合理的な理由はなく、会計監査とシステム監査を受けていない可能性がある。かりに収入を申告していなければ、脱税ということになる。
④請求書の書面がエクセルである。
⑤請求書に日付が入っていない。
⑥「③」から「⑤」の事実から、「手作り」の請求書と判断できる。昭和時代の「八百屋さん」の経理レベルである。信じがたいことだが、このようなものがいまだに通用しているのである。
ちなみに「手作り」の請求書は、内閣府だけではなく、農林水産省、防衛省、
文部科学省、環境省、復興庁でも使われている。常識では考えられない実態があるのだ。
次に示すPDFは、博報堂が作成した請求書の例である。1枚目の厚生労働省のものは、インボイスナンバーもロゴも入った博報堂の通常の請求書である。2枚目からが「手作り」の請求書で、農林水産省、防衛省、文部科学省、環境省、復興庁の順。いずれもインボイス・ナンバーが入っていない。書式も、おそらくはワープロである。あえてコンピューターで処理しない合理的な理由も分からない。
⑦各新聞社に博報堂から支払われた「国家予算」の額がすべて黒塗りになっている。
◇黒塗り部分は特定秘密なのか?
以上の事実から内閣府をはじめとして、農林水産省、防衛省、文部科学省、環境省、復興庁でも「国家予算」の流れを調査する必要がある。いつの時期からこのような杜撰なことが行われてきたのか、あるいは年間にどの程度の不透明な金がメディアに流入しているのか、などについて調査する必要がある。
ところが内閣府はどうしても、黒塗りにした箇所(各新聞社への支払い金額)を開示しない。頑なに拒否している。かりに黒塗り部分が国が定めた特定秘密であれば、ジャーナリズムの観点からして、一層金額を突き止める必要がある。そこで筆者は新聞各社に直接、受け取った「国家予算」の額を開示するように求めたのである。
筆者は現在のシステム(新聞社と内閣府の間に広告代理店を介在させることで、見積書を発行しなくても、多額の広告費を新聞社に流し込める制度)は、廃止すべきだと思う。国家予算の支出には、見積書による事前の精査が必要だろう。
黒塗りの部分が開示されない場合は、会計検査院、東京国税局、東証などに調査を求める必要があるだろう。
◇PCIの事件
ちなみに内閣府を巻き込んだ不正経理事件としては、2008年に発覚したパシフィクコンサルタンツインターナショナル(PCI)の事件がある。これは
パシフィクコンサルタンツインターナショナル(PCI)の持株会社が設立した「廃棄化学兵器処理機構」が、2004年から中国での廃棄化学兵器処理事業を内閣府から随意契約で独占したことに端を発する。受注額は2006年までの3年で約230億円にもなった。
しかし、PCIは社長が関係する下請け会社に対して、内閣府から受注した仕事を再発注していた。発注額は3億円。そのうちの約1億2000万円に仕事の実態がないとされたものである。つまり裏金疑惑だ。
さらにPCIは同機構を通じて、人件費などを水増し請求していた疑惑も指摘された。
この事件にみるように、多額の公的資金を随意契約で手にいれ、それを「財源」にして、下請けに架空の再発注をかけて裏金を作る手口が過去にあった。国家予算は、時として不正経理の温床となるのだ。
博報堂と内閣府、それに中央省庁における「国家予算」の用途を検証しなければならないゆえんにほかならない。新聞社に対する支払いが適正な額かどうかは、黒塗りの部分が開示されるまでは不明だ。
【写真】文部科学省が開示した書面

2017年4月23日、日本基督教団会館(東京・早稲田)で共謀罪に反対する集会が開かれた。「長崎県警を揺るがす男」こと竹下周志さんから集会の開催を聞き、駆けつけたという吉村正寿長崎県議会議員。
主催者が「せっかくですので、ぜひスピーチを」と求めると、吉村県議は本島等元長崎市長の言葉を引きながら感動的に共謀罪反対を訴えた。(撮影:三宅勝久、編集:寺澤有)

TBSテレビ の出身で参議院議員の杉生秀哉氏が、2月7日に日本ジャーナリスト会議などが主催した講演で、NHKについて次のように述べている。
「NHKニュースについては、国会審議もその日の主なテーマが憲法問題であっても、NHKは憲法問題は取りあげずに、どうでもいいニュースをしている。しかも、質問者の音声は放映せず、答弁者のみです。
安倍首相が余裕しゃくしゃくと答弁しているように編集されています。」
◇「押し紙」問題と電磁波問題とNHK
NHKは国策放送局と言っても過言ではない。国策に反するテーマはほとんど取りあげない。
2、3年前に、筆者は「押し紙」についての資料をNHKに提供しようとして、受け取り(郵送)を拒否されたことがある。送付そのものを拒否されたのである。これは奇妙な対応である。ある問題を報道するかどうかは、資料を精査したうえで判断するのが常識だが、NHKはそれ以前に報道するテーマと報道しないテーマを分類しているのかも知れない。
次に紹介するケースも、やはり報道のテーマ選択に関するエピソードである。筆者は電磁波問題を取材していることもあって、電磁波問題に関した住民運動の関係者との人脈が深い。そのうちのひとりであるAさん(沖縄在住)から、東日本大震災の少し前の時期に、
「NHKが電磁波問題を取りあげてくれることになった」
と、連絡があった。ところがその後、この企画は中止になった。Aさんが理由を問い合わせたところ、東日本大震災の取材で記者が福島へ行ってしまったからというものだった。結局、電磁波問題は取材すら行われていない。
国策として無線通信網を全国に張り巡らせる方向性があるから、それに反する報道はしないということではないだろうか。
◇電通の高橋まつりさんの過労死問題
そのNHKが昨年、電通の高橋まつりさんの過労死問題を大々的に取りあげた。が、電通の長時間労働は今に始まったことではなく、昔から「不夜城」などといわれてきた。他に自殺者も出している。筆者は、「やっと報じたか」という感想を抱いたが、その後、過労死報道も国策と表裏関係にあるのではなないかという話をあちこちで耳にした。
内閣府などの広告費をめぐる経理疑惑事件で、博報堂に批判が集まっているので、電通を叩くことで博報堂を加勢したのではないかとする説である。つまり政治的な配慮のうえで、NHKは電通叩きを断行したのではないかというのだ。
もちろんこれは推論で、真相は不明だが、論理的には整合している。メディア黒書で報じてきたように、1975年ごろから博報堂は、内閣府や財務省、それに警察関係者の天下り先になっている。
この1975年という年は、児玉誉士夫氏の秘書・太刀川恒夫氏が博報堂の持ち株会社である博報堂コンサルタンツの取締役に就任した年である。戦中の「児玉機関」がかたちを変えて、広告業界に進出してきた年ともいえよう。
NHKによる電通叩きで電通の評判が落ちれば、電通のライバルで官僚たちの天下り先になっている博報堂がビジネスの機会をより多く得ることができるのは言うまでもない。たとえば一次的に電通を指名停止にしたJRA(日本中央競馬会)などは、その典型例といえる。
◇世論誘導のNHK、慎重な検証が必要
NHK報道は慎重に検証する必要がある。巧みに世論を誘導しているというのが筆者の見解である。世論誘導の前提になっているのが、公共放送としての「公正・中立」の看板である。が、中味を精査すれば、その欺瞞(ぎまん)が見えてくる。

2017年4月23日、日本基督教団会館(東京・早稲田)で共謀罪に反対する集会が開かれた。立石泰則さん(作家)は「共謀罪も治安維持法も、社会が劣化し、戦争へ向かう過程で生まれている。どちらも国民の心をしばり、ものを考えさせなくする」「戦争へ行った経営者は右も左も関係なく、『戦争は絶対にダメだ』と言う」などと話した。
関東大震災時の朝鮮人虐殺について、立石さんが父親を問い詰めたエピソードも明かされた。(撮影:三宅勝久、編集:寺澤有)

2013年10月19日、飛松五男さん(元兵庫県警警部補)が長崎市を訪れ、「警察改革」について語った。どうして、「警察改革」が失敗し続けているのか。飛松さんが考える「警察改革」とは、どのようなものか。多くの国民が耳を傾けてほしい。(編集・寺澤有)

共謀罪の危険性を最も精力的に報じている一般紙は、おそらく東京新聞である。東京新聞は、高市早苗総務大臣(自民)と森ゆうこ参議院議員のマネーロンダリングの問題も大きく報じた。
なぜ、このような報道ができるのだろうか?
これはあくまで筆者の推測になるが、経営上の汚点がないからだと思われる。改めていうまでもなく、最大の経営上の汚点は、「押し紙」である。「押し紙」は独禁法に抵触するために、公正取引委員会や経済産業省は、その気になれば、「押し紙」を取り締まることができる。新聞社を生かすことも殺すことも簡単に出来る。さじ加減ひとつなのだ。
「押し紙」で新聞社がいかに莫大な利益を上げているかを示す例を示そう。
◇「押し紙」による収入の試算
試算に使用するのは、毎日新聞の内部資料「朝刊 発証数の推移」である。2004年に外部に漏れた資料で、FLASHや財界展望で紹介された。
この資料によると、2002年10月の段階で、全国の新聞販売店に搬入される毎日新聞の部数は約395万部であった。これに対して発証数(読者に対して発行される領収書の数)は、259万部。差異の144万部が「押し紙」である。
しかし、これは15年前の数値であるから、現在はさらに「押し紙」が増えているはずだ。一種の「病気」である。
かりにこの144万部の「押し紙」が排除されたら毎日新聞は、どの程度の減収になるのだろうか。逆に言えば、この144万部の「押し紙」で毎日新聞はどの程度の利益を上げていたのだろうか。試算すると恐るべき数字が出てくる。
◇「押し紙」で年間260億円の収入
事前に明確にしておかなければならない条件は、「押し紙」144万部の内訳である。つまり144万部のうち何部が「朝・夕セット版」で、何部が「朝刊だけ」なのかを把握する必要がある。と、いうのも両者の購読料が異なっているからだ。
残念ながら「朝刊 発証数の推移」に示されたデータには、「朝・夕セット版」と「朝刊だけ」の区別がない。常識的に考えれば、少なくとも7割ぐらいは「朝・夕セット版」と推測できるが、この点についても誇張を避けるために、144万部がすべて「朝刊だけ」という前提で計算する。より安い価格をシミュレーションの数字として採用する。
「朝刊だけ」の購読料は、ひと月3007円である。その50%にあたる1503円が原価という前提にする。しかし、便宜上、端数にして1500円の卸代金を、144万部の「押し紙」に対して徴収した場合の収入を計算してみよう。それは次の式で計算できる。
1500円×144万部=21億6000万円(月額)
最小限に見積もっても、毎日新聞社全体で「押し紙」から月に21億6000万円の収益が上がっていた計算だ。これが1年になれば、1ヶ月分の収益の12倍であるから、
21億6000万円×12ヶ月=259億2000万円
と、なる。
ただ、本当にすべての「押し紙」について、集金が完了しているのかどうかは分からない。担当者の裁量である程度の免除がなされている可能性もある。しかし、「押し紙」を媒体として、巨額の資金が販売店から新聞社へ動くシステムが構築されているという点において、大きな誤りはないだろう。
◇メディアコントロールのアキレス腱
公権力が毎日新聞に言論介入するためには、「押し紙」にメスを入れると、恫喝するだけで十分だろう。このような構図は、単に毎日新聞に限ったことではなく、他の新聞社についても言える。莫大な「押し紙」をかかえる新聞社ほど、調査報道からほど遠く、政府広報に近くなる裏事情がこのあたりにあるのだ。
公権力は新聞社の「押し紙」政策を故意に放置することで、経営上の汚点を掴み、メディアをコントロールする。世論誘導や国策プロパガンダの役を担わせているのだ。その際、暗黙の口実になるのが、「押し紙」なのだ。
しかし、東京新聞に関しては、「押し紙」の噂を聞いたことがない。もともと専売店が少なく、他系統の新聞社の販売店に配達を依頼している事情もあって、「押し紙」政策が取れない事情もあるのだろう。
「押し紙」は、公権力によるメディアコントロールのアキレス腱になっている。ところが東京新聞ではそれが機能しないようだ。

2017年4月23日、日本基督教団会館(東京・早稲田)で共謀罪に反対する集会が開かれた。
ゲストスピーカーの飛松五男さん(元兵庫県警警部補)は「警察はヤワな組織ではない。共謀罪が成立すれば、監視社会になる。しかし、地方では、共謀罪がまったく話題になっていない」と危惧した。(撮影・編集:寺澤有)
【写真】正力松太郎(元特高警察の高官で後に読売新聞社長。元A級戦犯容疑者)

「共謀罪に反対する表現者たちの会」が主催する「共謀罪ナイト」が東京・新宿のトークライブハウス「ロフトプラスワン」で開かれた。
その中から足立昌勝氏(刑法学者)と安田浩一氏(ジャーナリスト)のトークを動画でおおくりする。司会は岩本太郎氏(フリーライター)、オープニングミュージックはZAKI(ミュージシャン)。
共謀罪のようなとんでもない法案が立案される背景には、政治家の劣化やジャーナリズムの衰退がある。自民党の面々、特に若い議員もこの法律の本質をよく分かっていな可能性が高い。
共謀罪ができると、犯罪計画を実行してはじめて処罰の対象とする刑法の根本原則が覆ってしまう。計画を話し合った段階で処罰の対象となる。当然、この法律を運用する警察関係者としては、計画の話し合いが行われたことを示す証拠を収集するために、日常的にスパイ活動を展開することになるだろう。
パソコン通信や電話の盗聴・傍受などあたりまえになりかねない。
しかも、共謀罪の対象になる犯罪は277件もあり、この中には名誉毀損や著作権違反なども含まれている。公権力にとって都合の悪い人間は、ほとんどだれでも合法的に排除できるようになる。その一方で、政治家と直接かかわりがある公職選挙法違反などは対象外になっている。実に変な法律なのだ。
政府はオリンピックなどを前に、日本が批准していない「国際組織犯罪対策条約」に批准するためには、共謀罪が必要と主張しているが、「国際組織犯罪対策条約」の批准条件は、テロ対策の法律を持っていることではなく、金融犯罪を取り締まる法律の方である。テロ対策については、日本の現在の法体系でも取り締まることができる。あえて共謀罪を新設する必要はない。もちろん「国際組織犯罪対策条約」にも批准できる。
それにもかかわらず自民党と公明党は、あえて共謀罪へ国会へ持ちこんできたのだ。
一部の新聞は控えめに共謀罪に反対する報道を展開しているが、連日、第1面を使って大々的に報道しなければ、共謀罪は成立してしまうだろう。
毎度のことだが、日本の新聞は、悪法が成立した後、大々的に報じるという変な特徴がある。

政府与党が、12日に共謀罪を強行採決する危険性が高まっている。日弁連や日本ペンクラブ、それにアムネスティ・インターナショナル日本などさまざまな団体が反対声明を発表して、反対運動を展開しているが、新聞・テレビはこのような動きをほとんど報じていない。問題の深刻さからすれば、連日、最重要ニューとして大々的に報じなければならないはずなのだが、報道自粛が続いている。
■日本ペンクラブの声明
自民党のパートナーである公明党に対する抗議も急速に広がっている。牧口常三郎・創価学会初代会長は治安維持法により牢獄に繋がれ獄死しているが、公明党は「平成の治安維持法」を成立させる方向で動いている。
■「現代の治安維持法」共謀罪法案を廃案に!公明党に要請ハガキを送ろう!
5月中の主要な反対運動の予定を紹介しよう。

電波政策を担当しているのは総務省である。その総務省に放送局を監督する能力はあるのだろうか?
2016年2月8日の衆議院予算委員会で、民主党の奥野総一郎議員の質問に答えるかたちで、総務省の高市早苗大臣は、次のように発言している。放送事業で不正行為が行われていた場合、総務省が「行政指導」することもありうるといのである。
どんなに放送事業者が極端なことをしても、仮にそれに対して改善をしていただきたいという要請、あくまでも行政指導というのは要請になりますけど、そういったことをしたとしても、公共の電波を使って、まったく改善されないということを繰り返した場合に、それに対して何の対応もしないということを、ここでお約束するわけにはまいりません。
そこまで極端な、電波の停止にいたるような対応を、放送局がされるとも考えてはおりませんけど、法律というのはやはり法秩序をしっかりと守ると。それで違反した場合には、罰則規定も用意されていることによって、実効性を担保すると考えておりますので。
(略)先ほどの電波の停止、私のときにするとは思いませんけれども、将来にわたってよっぽど極端な例、放送法の、それも法規範性があるものについて、何度も行政のほうから要請をしても、まったく遵守しないという場合には、その可能性がまったくないとは言えません。
やはり放送法というものをしっかりと機能させるために、電波法においてそのようなことも担保されているということでございます。
◇大阪朝日放送などが直接かかわった不正疑惑
メディア黒書で繰り返し報じてきたように、最近、テレビCMの間引き疑惑が浮上している。疑惑の根拠としては、次のような事実がある。
①放送確認書(CM放送が実施されたことを立証する書面で、CMコードを付番してコンピューターに入力しておくと、CMが放送された際、自動的に作成される。)が偽造されていた事実。これは衛星放送局・Mnetを舞台に確認されている。クライアントは、化粧品通販のアスカコーポレーションで広告代理店は博報堂である。
放送確認書の画面にwindowsの画面が張り付けてある上に、放送局の住所も間違っている。「千代田区」の後に、「西新橋」が抜けているのだ。初歩的な「偽造のミス」である。おそらくwordで作成した偽造物である。また、番組の放送日が放送確認書の発行日よりも後になっている。あり得ないことだ。詳細については、次の記事を参考にしていただきたい。
②放送確認書が代筆されていた事実。「①」で述べたように放送確認書は、コンピューターが自動的に作成する。人による不正を防止するために、自動作成システムになっているのだ。ところが、その放送確認書を博報堂が代筆していたのだ。
■博報堂が代筆した番組放送確認書、放送関係者らから「常識ではありえない」の声
③番組を放送せずに放送局が料金が徴収されていた事実。これも放送番組の間引きの一種である。このケースに該当するのは、大阪朝日放送、北海道テレビ、愛知テレビの3者である。東日本大震災の影響で、通販番組の放送が中止になったにもかかわらず、放送料金を徴収していた。
これら3局は、筆者の取材を拒否している。
■博報堂事件、テレビ北海道とテレビ愛知でも「番組休止→料金請求」が発覚、休止番組を転売の疑惑も
④2015年度の国勢調査の告知CMが放送されていない疑惑。この疑惑については、高市氏が長を務める総務省も無関係ではない。筆者が国勢調査の告知CMが放送されたことを示す放送確認書の提示を総務省に求めたところ、「放送確認書については、履行確認が終了し、処分しております」と書面で回答があった。しかし、行政文書の保存期間は5年である。
ちなみに同じ国勢調査の告知で、新聞告知については契約で決められた回数が行われていなかったことが判明している。間引きした新聞告知の予算をCMに変更したので、問題はないというのが総務省の説明だが、それを立証する放送確認書を破棄していたのだ。
ここで紹介したのは、テレビ局が直接かかわっている不正だが、広告代理店が単独でおこなったものを含めると、視聴率の偽装問題など、その範囲は際限なく広がる。放送業界がある種の無法地帯になっていると言っても過言ではない。
◇総務省に「電波」を監督する能力はない
民主党の奥野総一郎議員の質問に対して、高市大臣は電波停止をもほのめかす強い姿勢を示したが、放送の問題に広告代理店が絡んでくると何もできないようだ。自らが長を務める総務省の職員が放送確認書を廃棄する事件を起こしている問題も不問のままだ。総務省に電波を管理する資格はない。
電波は公共のものであるから、そこで問題が発生すれば、NHKも含め対策を取るのは当然のことだろう。番組内容による「処分」はあってはならないが、ビジネスに関連した不正は、厳しく対処すべきだろう。

