博報堂が内閣府や防衛省に発行している怪しげな請求書、エクセルやワードで作成の可能性、あずさ監査法人と東証は調査を

内閣府や一部の省庁が博報堂に発注したPR業務には、不可解な点がまま見受けられる。社会通念から逸脱していて、その中にはブラックユーモアを伴うものもある。国家事業であるから大問題だ。
博報堂が発行している請求書もそのひとつの例である。内閣府に対して同社が発行している請求書が、エクセルで作成されているとしか思えないことは、繰り返し報じてきたが、それよりも杜撰で、失笑をかう請求書が防衛省で使われている。
次に示すのがその実物だ。
環境省が博報堂へ支払った「12億円プロジェクト」の見積明細の開示を要求、契約額を途中で1億円上積み

環境省から博報堂へクールビスのプロジェクトなどで支払われた約12億の明細を公開するように、筆者は環境省に申し入れた。環境省は、「検討する」と回答した。
筆者は昨年、環境省に対して博報堂から環境省へ送付されたすべての契約書、見積書、それに請求書を情報開示するように手続を行った。
これに対して環境省は、5件のプロジェクトに関連した契約書・見積書・請求書を提出した。このうちクールビスのプロジェクトに関して、成果物を開示させるなどして検証作業を行った。その中で、成果物と請求額に整合性がない疑いが浮上した。少なくとも筆者は、そんな印象を受けた。
その理由のひとつは、成果物を示した実施報告書の一部に記述のパクリがあったからだ。複数ある異なるプロジェクトの実施報告書の記述に、まったく同じ記述が見受けられるのだ。それぞれのプロジェクトの担当者が、自分の言葉で書いた文章でないことは明らかだ。
以下に示すように、2つのページの赤枠で囲んだ部分以外が、パクリの箇所である。このページでは、4分の3がパクリである。
■パクリ箇所の実物(赤枠以外が全部パクリ)
こうした事情から、筆者は見積もり明細を調べる必要を感じ、(注:明細は開示されなかった)環境省に申し入れたのである。見積もり明細を開示しなかった理由について、環境省は次のように述べている。
環境省からは博報堂へクールビスで12億円、報告書の一部記述をパクリ、自民党政権下で国家予算の無駄遣いが止まらない

環境省が2015年度に博報堂に発注したクールビス関連の事業は、少なくとも総額で約12億円になることが、情報公開で入手した資料によって分かった。主要なものは次の通りである。
①平成27年度CO2テクノロジーアセスメント推進事業委託業務
約9900万円
②平成27年度CO2削減アクション推進事業委託業務
2億2500万円
③平成27年低酸素社会づくり推進事業委託業務
8億6300万円
①から③のテーマから察し、分割して発注する必要があるのかも疑問だ。具体的にこれらの国家予算をどのような用途に使ったのかもよく分からない。見積書の明細を、環境省が開示しなかったからだ。
②と③の実施報告書の冒頭にある「業務の目的」の記述は、約7割がまったく同じだ。どちらかの文章をコピーして貼り付けた可能性が高い。読者には下記の2つのPDFでそれを確認してほしい。筆者が赤枠を付けた部分だけが、記述が異なる部分で、それ以外は一字一句同じである。
他の箇所についても調査が必要だ。
【動画解説】博報堂を通じて「血税」を新聞社やテレビ局に湯水のように流し込む仕組み

博報堂を通じて国会予算を新聞社やテレビ局に湯水のように流し込む仕組みを解説した動画を制作した。この動画は、『週刊金曜日』(2月24日号)に掲載した「裁量は内閣府次第、政府広報費の杜撰な使い道」をベースにしたものである。
内閣委員会の議員58名に博報堂関連の資料を提供、メディア企業に巨額な国家予算注入の恐るべきシステムの裏付け

博報堂を通じて巨額の国家予算をメディア企業へ流し込むカラクリを暴いた『週刊金曜日』(2月24日)の記事、「裁量は内閣府次第、政府広報費の杜撰な使い道」(黒薮執筆)のコピーを、1日、内閣委員会の国会議員58名に送付した。
日本の場合、欧米に比べて議員定数が少ないので、議員ひとりあたりの仕事の量が多く、積極的に国会質問を依頼しない限り、大問題が放置されてしまう可能性が高い。こうした配慮から、今回の記事送付に至った。
書き手の側は単に記事を執筆するだけではなく、資料の配布、講演、訴訟など、PRの舞台を自分で準備する必要がある。
記事に添付した手紙は次の通りである。
法知識に乏しい筆者を騙した内閣府の手口を記録する、なぜか博報堂を擁護

省庁などいわゆる「役所」に対して情報公開請求を申し立てると、役所がどのような情報を隠したがっているかが分かる。
内閣府が筆者の情報公開請求に対して開示をかたくなに拒否している情報がある。それは電通が制作した新聞広告の版下価格だ。
メディア黒書で報じてきたように、政府の新聞広告の中には、電通が版下を制作して、それを博報堂へ譲り、博報堂が新聞各社に版下を配信してマージンを得ているものが複数ある。まったくあり得ないことではない(「制作代理店」と「媒体代理店」)が、これ自体に多少疑問がある。
もともと広告代理店の収益は、広告のマージンが大部分を占めるので、電通にとって版下を博報堂へ提供することは、納得がいかないシステムのはずだ。だが、内閣府はこのような方法を採用している。ちなみに版下制作費は、推定で30万円から100万円程度である。
当然、次のような疑惑が浮上する。新聞社への版下配信は、実はそれを制作した電通が行っていて、広告掲載料のマージンも得ている。電通は何の不利益も被っていない。その一方で、博報堂からも、広告掲載料として莫大な国家予算が支払されている。2重支払いの疑惑である。
このような疑惑が浮上する背景には、次のような事情がある。
①情報公開資料を、真っ黒にして、情報隠しをしている。
②博報堂が内閣府へ送付した請求書が、エクセルで作成されたものだった。通常はあり得ない。社の公式の請求書が使用される。
③請求書に日付が付されていない。これは会計システムに則して会計処理が行われていない証拠である。
④博報堂と内閣府の間で交わされた契約書に明記されたPR業務のうち、実際には履行されなかったものが含まれている。(フェイスブックやツイッターのコンテンツ制作)
⑤総務省、文部科学省、環境省などでも、博報堂がからんだ経理の疑惑がある。たとえば文部科学省は、9ページのホームページ制作に2100万円を支出している。
⑥地方自治体のレベルでも、博報堂の業務が問題になったことがある。(盛岡市、大槌町、横浜市、志布志市など)
⑦民間企業との間でも問題を起こしている。
⑧過去に国会で繰り返し、博報堂の経理問題が取りあげられている。
博報堂事件の取材開始から1年、民間企業から省庁まで腐敗の構図が輪郭を現わす

「折込広告の水増し詐欺を受けている疑惑があるので、相談に乗ってもらえないでしょうか」
ちょうど1年前、わたしは1本の電話を受けた。電話をかけてきたのは、福岡市に本社がある化粧品の通販会社・アスカコーポレーションの社員だった。折込広告の水増し問題は、新聞社による「押し紙」と共に、わたしのライフワークだったので、すぐに承知して資料を送付してもらった。
送付されてきた資料を検証したところ疑惑があったので、取材することを想定して、まず、最初のステップとして、資料の提供者が信用できるかどうかを直接確認するために、福岡市まで足を運んだ。
博報堂事件の取材をはじめてまもなく1年をむかえる。当初は予想しなかった大事件の様相を強めている。今、事件の輪郭が鮮明になってきた。
アスカコーポレーションを訪問して、事情を聞いた。その中で同社が受けた被害は、折込広告に関する疑惑に留まらないことが分かった。テレビCMを約1500本も間引かれていた強い疑惑があることなども分かった。CMが放送されたことを証明する放送確認書に、放送の完了を証明するコードが欠落しているものが多量にあるのだ。
さらにワードで作成した偽造の放送確認書の存在も判明した。
博報堂は、電通や東急エィジェンシーなどを追い出して、2008年から、同社のPR業務を独占してきたのである。
博報堂を通じた内閣府からの新聞・テレビへの資金提供システム、本日発売の『週刊金曜日』が報道

本日発売の『週刊金曜日』が、筆者(黒薮)が執筆したルポを掲載している。タイトルは、「裁量は内閣府次第、政府広報費の杜撰な使い道」、サブタイトルは「見積書もなく口頭とメモだけで博報堂に業務を発注」である。
改めて言うまでもなく、このルポは、筆者が取材している博報堂と内閣府の広報業務を通じたずさんな国家予算の使い方に疑問を呈したものである。内閣府から、博報堂を通じて、新聞社やテレビ局に、湯水のように国家予算を流し込む恐るべきシステムが、2012年ごろから構築されていることを暴露したルポである。
その役割を果たしていたのが、電通ではなく、博報堂だった。ブランドがある電通よりも、業界2位の博報堂の方が、このようなダーティーな役には適任だったということだろうか。ある種の盲点になっていた。
このルポでは触れていないが、最近、総務省が博報堂へ発注した国勢調査の公共広告(新聞)についても重大な疑惑が浮上している。契約では述べ25本の広告出稿が取り決められていたが、博報堂はこのうちの13本を「間引き」して、料金だけは契約どうりに徴収していたのだ。こうした不正行為が国勢調査の結果にも重大な影響を及ぼしたことは間違いない。
さらに文科省と環境省でも、博報堂との間に国家予算の使い方に関して疑惑が持ち上がっている。たとえばたった9ページのウエブサイトが2100万円(文部科学省)等・・・。
博報堂、環境省のクールビスでも国家予算の使途に疑問符、新聞広告では読売と日経を優遇①

内閣府、文部科学省、総務省に続いて、環境省でも、博報堂による国家予算の使途が不透明な実態が分かった。約8億6000万円のプロジェクトで、博報堂は新聞広告はどのように出稿したのか?何が疑惑なのか?総論を紹介する。
クールビズとは、環境庁が進める地球温暖化防止やCO2削減のプロジェクトの総称である。その環境庁と博報堂の親密な関係は有名だ。たとえば、2007年6月8日に、民主党の末松義規議員が、環境省から博報堂へ3年間で約90億円もの国家予算が、環境関連プロジェクトに支出されていた事実を国会で追及したことがある。
その後も、自民党の竹本直一議員が、東日本大震災からの復興プロジェクトに関して、博報堂に対し除染関係の業務で約9億6000万円が計上された事実を国会で指摘した。
環境省と博報堂は、どのような国家予算の「食い方」をしているのか?
昨年、筆者は環境庁に対して博報堂との取引実態を示す各種の契約書、見積書、請求書を情報公開請求した。今年に入って、プロジェクトの「成果物」についても、情報公開を請求した。これに応じて環境省が開示した資料の中に何件ものクールビス関連のプロジェクトに関する書面があった。そのうちのひとつを本稿で紹介しよう。
プロジェクトのタイトル:「平成27年度低炭素社会づくり推進事業委託業務」
契約金:862,852,000円
博報堂と内閣府に対する国会質問、過去にも共産・吉井英勝氏ら6議員が、その後の改善は見られず

内閣府と博報堂のPR戦略に関する種々の疑惑などを指摘した国会質問が、これまで度々繰り返されていたことが分かった。以下で紹介するのは、筆者が調査したものである。綿密に調べれば、さらに増える可能性もある。
しかし、国会質問で指摘され問題点は、ほとんど改善されていない。博報堂や内閣府は、その後も延々と疑惑まみれの業務を続けている。
筆者が調査したところ、国会での追及は2005年から始まり、最も新しい国会質問は、竹本直一議員(自民)によるもので、これは博報堂が福島で除染作業に関する業務を請け負っている疑問を質問したものである。
質問者を政党別にみると、民主党が3人、共産党が2人、自民党が1人。超党派で広告代理店のありかたに疑問を呈してきたことが分かる。
次に示すのは、各議員の議事録の関連部である。
博報堂、制作していないフェイスブックとツイッターのコンテンツの制作費を内閣府から請求の疑惑

2月17日付けのメディア黒書で、国勢調査の公共広告(新聞による告知)を、広告代理店・博報堂が「間引き」していた問題を報じたが、内閣府が2015年度に博報堂に対して発注したPR事業でも、同種の「間引き」が行われていた疑惑が浮上した。
【参考記事】博報堂による6億円事業、H27年度国勢調査の新聞広告の間引き、架空請求の決定的な証拠
2015年4月1日、内閣府と博報堂は「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」と題するPRプロジェクトの契約を交わした。この契約には、約6700万円の構想費が含まれている。
筆者が、この構想費の「成果物」の開示を情報公開請求したところ、16日に次のような連絡が書面であった。
本件についても、基本的に「成果物」として開示できるものは無いとお話させていただいておりましたが、あらためて業務内容を整理確認し、「成果物」として次の2点を開示します。
a 仕様書3ページ(1)政府ブランコンセプト~②WEB戦略(ウ)に該当する「動画」2本(18歳選挙)
b仕様書3ページ(1)政府ブランコンセプト~②WEB戦略(オ)に該当するニュースレター21本
つまり構想費の中味とは、内閣府に対するアドバイスや提案に加えて、2本の動画(各30秒)と、ニュースレター21本(プレスリレース)ということになる。
ところが契約書の「仕様書」によると、上記の「成果物」に加えてフェイスブックやツイッター等のコンテンツを作成することになっている。これらのコンテンツを博報堂が制作していれば、その「成果物」が記録として保存されていないことはおおよそあり得ないだろう。
念のために、「仕様書」から該当部分を引用しておこう。裏付けの証拠は、上記の仕様書(PDF)。
(エ)フェイスブックやツイッター等のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)について、効果的な運用方法を提案するとともに、訴求力の高いコンテンツを作成すること。
博報堂による6億円事業、H27年度国勢調査の新聞広告の間引き、架空請求の決定的な証拠

総務省が博報堂に対して2015年(平成27年) に発注した「平成27年国勢調査の広報に関する総合企画」が、請負契約書で定められた仕様に則して履行されていなかったことが分かった。
筆者が問題にしているのは、国勢調査をPRするための新聞広告に関する業務である。契約書によると、博報堂は中央紙5紙(朝日、読売、毎日、産経、日経)にそれぞれ5回、述べ25回、新聞広告を掲載することになっていた。しかし、実際には12回しか掲載していない。これについては、博報堂も認めている。
