1. 今月末に筆者(黒薮)の新刊『新聞の凋落と「押し紙」』が発売に

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2017年05月10日 (水曜日)

今月末に筆者(黒薮)の新刊『新聞の凋落と「押し紙」』が発売に

今月末に筆者(黒薮)の新刊『新聞の凋落と「押し紙」』(花伝社)が発売される。これは新聞をテーマとした7冊目の本である。

この本では、「押し紙」の最新情報を紹介した。
また、新しい2つのテーマを扱った。

まず、第一に「押し紙」の正しい定義である。現在は、「新聞社が販売店に強制的に買い取りを求める新聞」という定義が普及している。しかし、公正取引委員会の見解を歴史的に調べてみると、若干異なっていることが分かった。これは「押し紙」問題に取り組んできた江上武幸弁護士らの研究の功績である。

詳しくは新刊の中で説明しているが、結論を先に言えば、「押し紙」の正しい定義は、「新聞の実配部数に予備紙を加えた部数」を超える部数である。「新聞の実配部数に予備紙を加えた部数」が販売店経営にとって真に必要な部数であり、それを超える部数は、機械的に「押し紙」と認定するのが公正取引委員会の見解だ。

従って、これまで「押し紙」裁判の争点となってきた点、つまり新聞の買い取りを新聞社が強制したか否かで、「押し紙」の有無を判断する構図は間違っている。「新聞の実配部数に予備紙を加えた部数」が経営に必要な部数で、それを超えると理由のいかんによらず、すべて機械的に「押し紙」となる。

仮に公正取引委員会が正確な「押し紙」の定義を前面に押し出せば、「押し紙」問題にメスが入るはずだが、公正取引委員会にその気はないようだ。「押し紙」は独禁法違反であるから、それを逆手に取り、新聞社に対して「押し紙」で「メスを入れるぞ!」と恫喝すれば、簡単にメディアコントロールができるからだ。こうした構図の結果、新聞の多くが「政府広報」に変質している。

その意味で「押し紙」問題は、ジャーナリズムのあり方にかかわる問題なのだ。

◇消費税の軽減税率問題と「押し紙」

新刊で扱ったもうひとつのテーマは、消費税の軽減税率問題と「押し紙」の関係である。新聞関係者は、新聞の戸別配達制度は日本の文化であるから、新聞に軽減税率を適用すべきだと主張してきたが、それは真っ赤な嘘である。

消費税が「押し紙」にも課せられて、極めて重い負担になるから、軽減税率の適用を求めているのだ。消費税が「押し紙」にも課せられる理由は、独禁法による取り締まりを逃れるために、「押し紙」が1部も存在しないという偽りのリアリティーを帳簿上で示す必要があるからだ。その結果、「押し紙」を普通の新聞と同じ扱いで経理処理することになる。

しかし、「押し紙」には、消費税を払ってくれる読者がいない。と、なれば販売店がこれを負担せざるを得ない。その負担がいかに莫大なものになるかを新刊で試算した。

なお、巻末資料に博報堂事件に関して、海外のメディアへ送ったプレスリリースの日本語原版も収録した。(花伝社・価格1500円)