1. 森ゆうこ元参院議員が提訴した裁判 背景に小沢事件をめぐる最高裁事務総局の闇

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2014年01月29日 (水曜日)

森ゆうこ元参院議員が提訴した裁判 背景に小沢事件をめぐる最高裁事務総局の闇

昨年の10月2日、森ゆうこ元参院議員が、『最高裁の罠』(K&Kプレス)の著者で、ブロガーの志岐武彦氏に対して500万円の支払い(訴訟価額は820万円)を求める名誉毀損裁判を起こした。先の参院選で落選して現職を退いたとはいえ、元国会議員が一市民を提訴するのは異例だ。

が、マスコミは一切、この提訴を報じなかった。最高裁の闇が絡んだ裁判であるにもかかわらず、無視したのである。

日本ジャーナリスト会議(JCJ)のフリーランス部会は、昨年の12月18日、裁判を検証するために、文京区民センターで、訴えられた側の志岐氏から話を聞く会を開催した。参加者は約50名。志岐氏の話を通じて浮上してきたのは、恐るべき最高裁事務総局の実態である。マスコミが報道を自粛したゆえんにほかならない。

裁判の発端は、小沢一郎議員が2010年に東京第5検察審査会の議決で起訴され、最終的に無罪になった事件である。起訴直後から、小沢氏の支持者の間で起訴に対する疑問の声があがり、第5検察審査会とその上部機関である最高裁事務総局を調査する動きが広がった。その先鋒に立ったのが森氏と志岐氏(市民グループ)だった。

なお、検察審査会という組織は、「検察」という名前を付しているが、検察の組織ではなく、文字通り「検察」を「審査」する最高裁の機関である。従って森、志岐、石川が追及したのは、最高裁事務総局の謀略疑惑である。

◇東京第5検察審査会が架空だった疑惑

ある時期まで両氏は共同歩調を取っていた。志岐氏が最高裁や検察などに対する情報公開請求で入手した資料を森氏に提供し、森氏がそれを使って国会質問を展開する流れがあったのだ。

こうした中で最高裁に対するある疑惑が浮上する。第5検察審査会は架空だったのではないかという疑惑である。当然、小沢氏に対する起訴議決も、でっち上げだった可能性が浮上した。

推論の客観的根拠のひとつは、森氏が議員の職権を使って、検察審査会の審査員を選ぶPC上のクジ引きソフトを検証したところ、まったくのイカサマである事実が判明したことだ。

手動で審査員候補の名前を入力したり、削除することができ、しかも、「クジ引」の終了後は、入力や削除の跡が消える仕組みになっていたのだ。

つまり恣意的に審査員を選んだり、架空の審査員を設定できるシステムが構築されていた客観的な事実が判明したのである。しかも、検察審査会を管轄している最高裁事務総局は、このクジ引きソフトの制作に約6000万円を出費していたのである。

◇担当検察官による説明が行われていなかった疑惑 ?

また、検察審査会が議決を下す前に実施が義務付けられている検察官による事情説明が行われていなかったと推測される証拠が明らかになった。

市民グループが情報公開制度を利用して、検察に対し担当検察官の出張記録を調査したところ、議決前に第5検察審査会に出張した形跡がないことが分かったのだ。もともと第5検察審査会が架空の審査員で構成されていたと仮定すれば、担当検察官は第5検察審査会へ足を運ぶ必要がない。

他にも数々の有力な根拠が明らかになり、最高裁事務総局の信頼が失墜し始めたのである。が、事態は突然に一変する。

◇週刊朝日のスクープ

検察が第5検察審査会に「小沢は黒」と印象ずけるウソの報告書(捏造報告書)を送った事を、『週刊朝日』がスクープしたのだ。さらに検察問題を追及している八木啓代氏(歌手・作家)にも、ロシアのサーバーを通じて捏造報告書が届いたのである。

このころから森氏は、八木氏と共同で最高裁よりもむしろ検察の責任に比重を置いて、疑惑を追及するようになった。第5検察審査会に審査員は存在したが、捏造報告書に誘導されて、小沢氏に対する起訴議決が下されたとする「検察による誘導説」を強調するようになったのだ。

志岐氏には、それが問題の本質をすり替える行為に感じられた。最高裁の不正は、国家の大スキャンダルになるので、検察審査会疑惑の責任を最高裁から検察に転嫁させたと感じたらしい。

こうして両者の論争が始まり、森氏が提訴するに至ったのだ。口封じともとれる。

ちなみに森氏の訴状を読むと、一方的に志岐氏が森氏を批判したかのような印象を受けるが、実際には、森氏も志岐氏を批判している。ツイッターによる連続25回の「志岐批判」を行ったり、講演会で志岐氏の実名を上げて、持論を展開している。

裁判で検証しなければならない最大の疑問は、だれがなんの目的で捏造報告書を『週刊朝日』と八木氏に届けたのかという点だ。事件の解明はこの点にかかっている。

■参考資料:訴状=ここをクリック

■被告側準備書面(2)=ここをクリック

黒薮注:本稿は、『ジャーナリスト』(1月号)に掲載した原稿に、若干、加筆したものです。)