公共事業は諸悪の根源 ジャーナリズムでなくなった朝日 その9【後編】
◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)
まともな回答がない以上、株主総会で実際に質問するべきか、私は悩みましだ。ただ、箱島社長は、年齢制限の内規でこの期での社長退任も既定路線でした。
朝日の社長は、タスキ掛け。経済部出身者と政治部出身者の順繰りだと、週刊誌はよく伝えています。でも、この話の半分は正しくても、半分は正しくありません。平和裏に順繰り人事が行われる訳ではなく、その度ごとに、経済部、政治部の現役を巻き込み、政党の党首選顔負けの血みどろの派閥抗争になります。円満に収めるため、落ち着くところに落ち着いた結果が、タスキ掛け人事というだけなのです。
キャスティングボードを握った社会部出身の経営幹部も、社長に次ぐ地位を得て、黒幕として社内に影響力を持ち続けるのも常でした。これも雲の上の話です。
私は詳しい内幕は知る立場にはありませんが、箱島社長誕生の時、少なくともキャスティングボートを握れる立場にいた一人が、私の記事を止めた社会部長に「名古屋・編集局長を約束した」という例の社会部出身経営幹部だったのです。様々な憶測が社内を飛び交っていましたが、この幹部が、後日、実質朝日ナンバー2のテレビ局社長・会長へと上り詰めたのは事実です。
社会部、政治部にしかいなかった私と、経済部出身の箱島氏との間で、深い確執があるはずもありません。まして、名古屋が初めてで、事情を知らないはずの名古屋代表が、私に何故、「信頼回復」を求めたのか。私は箱島社長を陰で操るこの人物の隠然たる力を嗅ぎ取っていない訳ではなかったのです。
◇週刊誌への内部告発も考えたが・・
箱島社長は退任時期が迫るほど、派閥人事をさらに強く推し進めていました。退いても自分の思い通りになる経済畑の後輩をその後釜に座らせ、「会長」ポストを作って君臨。院政を敷くためと言うのが、社内のもっぱらのウワサでした。しかし、武富士問題での風当たりは強く、さすがに「会長」職を諦め、次期社長に政治畑の秋山耿太郎氏の就任が内定していました。
箱島氏は取締役にしがみつき、「取締役相談役」で残ることにはなっていました。でも社長が政治畑に代われば、社内の雰囲気は少しは変わり、この幹部の影響力もそがれるはずです。私に、派閥意識はなかったつもりです。この程度の淡い期待は、正直ありました。
実は秋山氏と私は、名古屋社会部、東京政治部で、デスク、記者の関係。政治部を去る時、親身に私を心配してくれた一人でした。河口堰の記事を止めた経過もよく知っています。めでたい社長就任の株主総会で、私が大暴れするのも忍びません。
それに、私は週刊誌に手記を発表する内部告発を何のために見送って来たか…です。前述の通り、靖国参拝、憲法改正なども口にする小泉政権全盛の中で、私が汚点を明らかにすれば、朝日の信頼感はさらに低下。ブレーキ役不在を作り出し、この国を危うくするのではないかとの危惧からでした。その状況に変化はありません。
週刊紙注視の中で行われる株主総会で、私が朝日が記事を止めた経過を発言することは、週刊誌に手記を発表することと同等です。と言うより、質問が週刊誌に面白おかしく書き立てられるくらいなら、むしろ私の思いを手記として発表する方が誤解を招かず、まだましです。
そんなこんなで、私は株主総会での質問を思い止まりました。もちろん、それが良かったことか、悪かったか。今から考えても、私には判断がつきません。ここで読者の審判を仰ぎ、ご意見を真摯に耳を傾けたいと思っています。







































