【報道と人権7】勝訴から一転、第2次真村訴訟の構図、喜田村弁護士ら真村さんの自宅を差し押さえ

読売新聞が筆者に対して3件の裁判を起こしたほぼ同じ時期に、読売新聞が関わった別の裁判が進行していた。原告は真村さんである。
既に述べたように、YC広川の真村久三さんが起こした地位保全裁判は、真村さんの完全勝訴であった。判決は、2007年12月に最高裁で確定した。
ところがその半年後の2008年7月、読売は、YC広川との契約期間が満了したことを理由に、同店を改廃した。契約満了による改廃であるが、販売店には家業的側面があるなどの理由から、正当な改廃を行なうには、店主側が新聞社との信頼関係を著しく破壊し、商契約の存続が困難となる状況を生み出したことを示す事実が必要とされる。
したがって、真村訴訟の判決確定後から改廃に至るまでの約半年の間に、真村さんが不祥事に該当する行為を行ったか否かが審理の対象となる。
当然、真村さんとしてはYC広川の改廃を承服できなかった。そこで再び読売に対して地位保全裁判を起こした。この裁判は第2次真村訴訟と呼ばれている。前訴が第1次真村訴訟である。
ちなみに裁判にはいくつかの形式があり、その代表的なものが仮処分の申立てと本訴である。周知のように、仮処分の申立ては緊急を要する場合に行われ、決定も短期間で下される。敗訴した側に不服があれば、本訴で争うことになる。第2次真村訴訟もこの形式をとった。真村さんは、まず仮処分を申し立て、その後、本訴を提起したのである。
この裁判でも、引き続き喜田村洋一・自由人権協会代表理事が読売の代理人として裁判闘争の先頭に立った。舞台が福岡地裁であったため、口頭弁論のたびに東京から駆けつける熱心さであった。
◆間接強制金の累積、約3600万円
仮処分の申立てにおいて福岡地裁は、真村さんの申立てを認め、その地位を保全した。裁判所は読売に対し、YC広川への新聞供給を再開するよう命じた。ところが読売は、この命令に従わなかった。その結果、裁判所は、読売に対して1日につき3万円の間接強制金(制裁金)の支払いを命じた。
その後、読売は仮処分に対して異議を申し立て、さらに福岡高裁へ抗告し、最高裁に特別抗告も行った。しかし、裁判所の決定は覆らなかった。この間、間接強制金は累積し、約3600万円に達した。
仮処分申立ての審尋と並行して、本訴の審理も進んだ。
読売は、改廃理由としてさまざまな主張を行った。第1次真村訴訟で真村さんの地位が保全されている以上、その後改廃に至るまでの約7カ月の間に、真村さんが読売に対して重大な信義違反を犯していなければ、地位は維持されると考えるのが自然である。
◆喜田村ら、黒薮が「外部メディア等と連携して・・・」
喜田村らが改廃の正当理由として主張した項目の一つに、真村さんが「外部メディア等と連携して」読売を攻撃したというものがある。福岡地裁判決には、喜田村らの主張として次の記述がある。
自称フリージャーナリストの黒藪哲也(以下、「黒藪」という。)《注:「黒藪哲也」は誤字で、正しくは、「黒薮哲哉」》は、自ら管理・運営するウェブサイト「新聞販売黒書」で、被告に対して不当な誹謗中傷を繰り返す一方、被告と対立しているという観点から、原告を支援することを明言している。原告は、前訴係争中に黒薮と知り合い、黒藪や原告弁護団と協力して、被告を攻撃する運動を展開している。
原告の関わる裁判の経過等は,直ちに「新聞販売黒書」や「My News Japan」に掲載される。また,原告は,黒藪がコーディネーターや司会を務めたシンポジウムや報告会に積極的に参加して発言もしている。
取引の一方当事者が,その相手方当事者を誹謗中傷して攻撃する運動に積極的に協力し,しかも相手方当事者の営業秘密を漏洩しながら,その契約当事者としての地位を求めたり,裁判や攻撃・中傷を止めてほしければ巨額の金銭を支払うよう求めたりすることは,一企業に対する脅迫に他ならない。このような行為は被告との信頼関係を根底から破壊するものである。
喜田村らは「被告と対立しているという観点から、原告を支援することを明言している。」と主張しているが、これは浅はかな解釈である。筆者が真村さんを支援したのは、その主張に正当性があったからにほかならない。読売の販売政策に道理がないからである。
そもそも、ジャーナリズムに中立などあり得ない。ジャーナリズムの評価は、究極のところ主張が正しいかどうかであり、その評価は将来、歴史に委ねるよりほかにない。それゆえに記録し、それを保存することが決定的に大事なのであるが、喜田村弁護士らは、このあたりの原理が分かっていない。
ちなみに筆者は、真村訴訟に関しては、少なくとも20年は検証すると当時から繰り返し公言してきた。
◆真村さんの自宅を差し押さえ
判決は2011年5月15日に言い渡された。結果は真村さんの敗訴であった。控訴審でも控訴は棄却され、その後、最高裁で判決が確定した。
これにより読売は、真村さんに対し累積した約3600万円の間接強制金の支払いを請求した。しかし、真村さんは店舗の維持や生活費にこれを充てていたため、返済不能となった。
そこで読売は、真村さんの自宅を差し押さえた。不動産仮差押命令申立書の債務者代理人弁護士として、次の面々が名を連ねている。(冒頭の写真を参照)
喜田村洋一
近藤真
掘哲郎
住野武史
塩飽梨栄
◆ジャニーズの性加害問題
なお、喜田村弁護士は評価できる仕事もしている。例えば、ジャニーズの性加害問題では被害者のために大きな役割を果たした。その詳細を記した『報道しないメディア』(岩波ブックレット)なども出版している。多くのメディア研究者とも良好な関係にあるようだ。
こうした状況を踏まえるとき、筆者には喜田村弁護士の思想の源流がどこにあるのかよく分からない。どのような信念や思想を行動規範としている人なのか、理解できない。
※なお、真村さんと読売の間接強制金をめぐる係争は、2026年に入って新たな進展があったため、近く報告する予定である。

