2019年11月29日 (金曜日)

横浜・副流煙裁判の判決が、28日、横浜地裁で下された。新谷普司裁判長は、原告の訴えを全て棄却した。訴訟費用(法廷の使用料など)も全額が原告側の負担となった。被告・藤井さんの全面勝訴である。

この裁判は、横浜市青葉区の団地マンション2階に住むAさん一家3人が、同じマンションの一階に住む藤井将登さん一家を発生源とする煙草の副流煙で、化学物質過敏症などに罹患(りかん)したとして、将登さんに対して4500万円の損害賠償を求めた事件だ。自宅の部屋(防音された音楽室)で吸った少量の煙草が、上階に住む隣人家族の化学物質過敏症などの原因になったかどうかが争われた。

◆副流煙の量
判決は、「本来、自宅内での喫煙は自由であって、多少の副流煙が外部に漏れたとしても、それが社会的相当性を逸脱するほど大量であるなどといった特段の事情がない限り、原則として違法とならない」を判断した。

裁判所が、この事件では「社会的相当性を逸脱するほど(注:副流煙が)大量であるなどといった特段の事情がない」と判断した理由は、原告・被告の住居の位置関係が真下・真上の配置ではなく、1階の被告からみると、真上のマンションの隣が原告宅だったことや、一年を通じて風向きが変化することなどである。こうした状況から考えて、副流煙が原告宅に入ることはほとんどないと判断したのだ。

◆3医師による診断書を却下
次に裁判所は、仮に微量の副流煙が原告宅に入っていたとすれば、それが原因で原告らの健康被害が発生していたかどうかを、診断書をもとに検証した。

この裁判では、原告から3人の医師による診断書が提出された。いずれも受動喫煙症や化学物質過敏症を認定した診断書で、提訴の有力な根拠である。診断書がなければ、提訴もあり得なかった。

裁判所は、原告3人が訴えている体調不良そのものについては、原因はともかくとして、それが客観的事実であることを認めた。

このうち原告A娘(最も症状が重い)のケースでは、作田医師が体調不良の原因を「受動喫煙症レベルⅣ、化学物質過敏症」と診断書に書いたが、A娘を直接診断していなかったことが認定され、必然的に「受動喫煙症レベルⅣ、化学物質過敏症」という診断も却下された。

なお、無診療による診断書の作成は、違法行為である。裁判所は、作田医師による医師法20条の違反を認定した。

【注】第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

◆日本喫煙学会の「診断基準」を判決が批判
倉田医師と作田医師は、日本禁煙学会の「受動喫煙の分類と診断基準」を元に診断書を作成した。

裁判所は、次のようにこの診断基準を批判した。

 「その基準(日本禁煙学会の『受動喫煙の分類と診断基準』)が受動喫煙自体についての客観的証拠がなくとも、患者の申告だけで受動喫煙症と診断してかまわないとしているのは、早期治療に着手するためとか、法的手段をとるための布石とするといった一種の政策目的によるものと認められる。(認定事実(4)ア)」

 つまりこの裁判のケースに即していえば、作田医師と倉田医師が訴訟目的で、「最初に結論ありき」の診断書を作成したことを裁判所が認定したのである。

◆宮田医師による診断書
原告A娘は、倉田医師、作田医師のほかに、宮田幹夫医師(元北里大学医学部教授)の診断書(病名は化学物質過敏症)も提出している。これについても裁判所は、診断書の内容を認定しなかった。判決から、核心部分を引用しておこう。

「宮田医師が原告A娘の症状の原因をタバコの副流煙であると考えているとしても、同医師が行った各種検査は、いずれもタバコの副流煙と直接むすびつくものではないから、その根拠となり得るものは原告A娘の主訴(甲38)以外には特段うかがわれず、客観的裏付けを欠いているといわざるを得ないことからしても、(認定事実(3)イ)、現に原告A娘に受動喫煙があったか否か、あるいは、仮に受動喫煙があったとしていも、原告らの健康影響との間に相当因果関係が認められるか否かは、その診断の存在のみによって認定することはできないといわざるを得ない」

◆訴権の濫用
判決は、被告の主張を全面的に認めた内容となった。
裁判は、提訴当初から「訴権の濫用ではないか」という見方があった。 実際、日本喫煙学会が訴訟目的で、「先に結論ありき」の診断書を作成していたことや、同じ脈絡の中で、作田医師が無診療で診断書を作成した事実も認定された。虚偽の事実を前提に、提訴に走った可能性もあるのだ。

原告の山田義雄弁護士はこうした事情を知っていたのだろうか。

被告一家は、2年間も精神的な苦痛を味わった。今後、訴権の濫用で反訴するのかどうか見極めたい。

なお、法廷に原告弁護士(2人)は、姿を見せなかった。作田学医師の姿はあった。よほど判決が気になっていたのだろう。

 

※判決文は、全文を後日公開します。

 

【参考記事】禁煙ファシズム、横浜・副流煙裁判は結審、被告が最終準備書面を公開

 

折込チラシの水増し実態を、東京23区の広報紙(2019年度分)を対象に調査した結果、16の区で新聞折込がおこなわれ、そのうち12の区で水増し詐欺がおこなわれている強い疑惑が浮上した。ただし、今回の調査は予備調査なので、今後、当事者に取材を重ねることで、データの信憑性や特殊な事情がないかなど、さらに検証する必要がある。

【新聞折込を実施していない区】
次の7区では、広報紙の配布に際して、新聞折込は行われていない。

足立区、葛飾区、北区、江東区、中野区、渋谷区、台東区

【新聞折込を実施している区】
新聞折込を実施している区は、次の16区である。

荒川区、文京区、千代田区 、中央区、江戸川区 、板橋区 、目黒区、港区、練馬区、大田区 、世田谷区、品川区、新宿区、杉並区、墨田区、豊島区

【水増しが強く疑われる区】
水増しが強く疑われる区は12区あった。新聞社が新聞販売店に「押し紙」を多量に搬入している状況下では、新聞折込を実施している区のすべてで、広報紙が水増し状態になっている可能性が高いが、今回の調査で、「強く疑われる区」として区別した根拠は、次に述べる事情による。

周知のようにABC部数は、新聞社が新聞販売店に送り込んでいる新聞部数のことである。当然、この中には「押し紙」が含まれている。しかし、区ごとに「押し紙」部数を特定することは、新聞社や販売店の内部資料を入手しない限り難しい。

そこでABC部数には「押し紙」は1部も含まれていないという仮の前提に立ち、そのABC部数を超えた数量の広報紙が搬入されている実態がある区を「水増しが強く疑われる区」と定義した。たとえば次の目黒区の例である。

全体:87,000
新聞折込:74,00
ABC部数:51,971

「水増しが強く疑われる区」に該当するのは次の12区である。

荒川区、文京区、江戸川区、目黒区、港区、練馬区、大田区 、世田谷区、品川区、新宿区、杉並区、豊島区

以下、調査結果の詳細データである。

1. 足立区  該当外

2. 荒川区  『あらかわ区報』
「あらかわ区報は区の施策や区民生活情報をお知らせしています。 毎月1日、11日、21日に発行(5月11日、8月11日、1月11日号は休刊)し、 新聞折り込みで配布しています。発行日が新聞休刊日と重なった場合は、前日に配布します」

全体:64、500
新聞折込:48、300
ABC部数:38,145

【続きはウェブマガジン】

産経新聞の元店主が、産経本社を相手に起こしている「押し紙」裁判(東京地裁)の尋問が(2020年)3月10日に開かれ、証人として折込広告会社の(株)サンケイアイの社員が出廷することになった。裁判所が折込チラシの水増し行為にメスを入れる可能性が高い。

この裁判で原告の元店主は、折込チラシの水増し詐欺をしていたことを認めた上で、その責任は産経本社にあると主張している。裁判所に対して、サンケイアイの社員の証人申請を申してたところ裁判長も、

「裁判所としても確かめたいことがある」

と、言って申請を認めたという。

折込チラシの水増し問題が、法廷に持ち込まれ新聞社の社員が尋問されたケースは、佐賀新聞の例など過去にもあるが、折込広告会社の社員本人が法廷で直接尋問されたケースはない。その意味で、3月10日の尋問で、「押し紙」問題は新しい段階に入るとみて間違いない。


メディア黒書でも繰り返し報じてきたように、「押し紙」問題は、あくまでも新聞業界内部の問題である。それゆえに新聞業界では周知の事実になっていても、業界外では、深刻な問題であるにしては認知度が低い。

ところが「押し紙」問題に折込チラシの水増し問題が絡んでくると、折込チラシのスポンサーを巻き込むので、業界内部の問題として処理することができない。問題が拡散する。その意味では、折込チラシの水増し詐欺の告発という元店主の戦略は合理的だ。

とりわけ新聞業界が消費税の軽減税率の適用を受け始めた時期だけに、新聞社の実態を再検証し、この優遇措置適用について考える格好の機会となる。

現在、メディア黒書は、折込チラシの水増し詐欺を徹底取材している。情報提供は次の窓口までお願いしたい。

【情報提供の窓口】
電話:048-464-1413
メール:xxmwg240@ybb.ne.jp

 

【参考記事】崩壊する新聞、朝日・読売が年間で約40万部減、『広報えどがわ』の水増し問題にはサンケイ広伸社が関与、選挙公報も大幅に水増

2019年11月25日 (月曜日)

横浜副流煙裁判の判決が、28日に言い渡される。詳細は次の通りである。

日時:11月28日 13:10分

場所:横浜地裁 502号法廷

だれでも傍聴できる。

この裁判は、被告の藤井将登さん宅から発生する煙草の煙で化学物質過敏症などに罹患(りかん)したとして、藤井さんの隣人・大野浩一(仮名)さん一家(原告3名)が、4500万円の損害賠償を求めて、2017年11月21日に起こしたものである。原告と被告は、同じマンション棟に住んでおり、位置関係は、被告宅が1階で、原告宅が2階である。

藤井さんは喫煙者だが、ミュージシャンという職業柄、自宅にいないことが多く、必然的に自宅での喫煙量は微量だ。しかも、自宅にいるときは、2重窓の防音構造になっている自室で仕事をしていることが多く、煙草の煙は外部へは漏れない。ヘビースモーカーでもない。室内の煙は、空気清浄機のフィルターが吸収している。

自宅の窓を開放して、大量に煙草の煙を発生させ、マナー違反で6万円の損害賠償を命じられた判例はあるが、藤井さんのように自宅でのマナーを守った喫煙で、4500万円を請求される例は初めてだ。裁判所の判断が注目される。

仮に藤井さんが敗訴した場合は、自宅での喫煙を法的に規制する道が開ける。

筆者が複数の法曹関係者を取材したところ、この裁判提起は、訴権の濫用ではないかとの声が多数あがっている。

近年、企業ではなく個人をターゲットにしたスラップ訴訟が増えており、メディア黒書は藤井さんの裁判を全面的に支援してきた。提訴から2年になり、ようやく判決を向かえるが、審理に時間を要した割に争点はいたって単純明快だ。

藤井さん側の主張は、次の最終準備書面に詳しい。

 

最終準備書面

横浜副流煙裁判の全記事

2019年11月23日 (土曜日)

前立腺癌の治療方針を決める際に説明義務違反があったとして、4人の患者が元担当医の成田准教授と、彼の上司である河内教授に対して損害賠償を求めた裁判で、21日、岡本圭生医師(現在の担当医)が証人尋問に出廷した。

デジタル鹿砦社通信によると、岡本医師から自身が開発した小線源治療・岡本メソッドについて説明があった。これは被告の成田医師ら病院側が、針生検の技能を持つ医師であれば、だれでも小線源治療は可能だと主張してきたことに対する反論である。泌尿器科の医師であれば、病院側の主張が暴論であることが分かる。

岡本医師:「私のやっている施術は、被膜ギリギリに穿刺をする、理想的な針の配置をするものです。ポジショニングからシードを置いていくのは、ミリ単位の精度を要する技術です。単純に前立腺の組織を針を刺して取ってくるのとはまったく異なる、まったく違うものです」

また、岡本医師が過去に治療をおこなった患者のカルテの一部を、大学病院側が当事者の許可なく病院外の医師に郵送して、評価を求めた事件も取り上げられた。裁判の争点とは直接関係がないが、4人の被告に対する説明義務の軽視でも明らかになった病院側の法律軽視の姿勢が、ここでもクローズアップされた。朝日新聞も、19日付の電子版でこの件を取り上げている。

【参考記事】患者同意なくカルテを示す 滋賀医大、外部の医師に

 

証人尋問の詳細は、デジタル鹿砦社通信に掲載されている。次のURLでアクセスできる。

 ■デジタル鹿砦社通信

 

◆中日新聞が報道

ところで滋賀医科大で起きているこの事件は、関西ではかなり報じられている。マスコミ各社が報道してきた。この日も尋問に先立って、裁判所はメディアに対して法廷撮影を許可した。

21日の尋問については、デジタル鹿砦社通のほか、中日新聞などが報道している。中日新聞も記事の中で、岡本メソッドに言及している。

この日、岡本医師は自身の治療法について「高リスクの患者で非再発率が95・2%という突出した成績がある」と説明。熟練を要するミリ単位の治療は、未経験者にはむつかしいとした上で、説明義務違反の疑いを「患者さんの命より、組織のメンツが優先させることに深い懸念を感じます」と批判した。

◆生体手技訓練への参加・協力を拒否

この事件の背景には、日本的な組織の在り方がある。縦の人間関係を軸に動くピラミッド型の組織がいたるところに根を張っており、滋賀医科大病院もそのひとつである。大学病院内の上下関係が、事件を誘発したのだ。

医師とか研究者は、本来は実績だけで評価されるべきなのだが、上下関係の中でそれが無視されている事情があるのだ。

岡本医師は、マルタ(人間モルモット)を使った成田医師による手術の実質的な手技訓練への参加・協力を断ったために滋賀医大を追われることになったのだ。それを理由に職場を追われるのは、理不尽としかいいようがない。責任を取るべきは、成田医師と、彼の上司である河内医師なのである。ここに日本型組織の闇があるのだ。

日本社会の中に、滋賀医科大の悲劇を生む土壌がある。その土壌は戦前・戦中に比べるとかなり改善されたが、「令和」に入っても依然として残っている。これが新しい医療技術を開発するうえで大きな障害になるのは言うまでもない。

2019年11月26日、岡本医師は最後の小線源治療をおこなう。

2019年11月22日 (金曜日)

明らかな詐欺を延々と続けても、誰からも注意されない。業界団体に対策を求めると、「事務局員は何もできません」、あるいは「犯罪が確定すれば対処します」という答えが返ってきた。

取材を申し入れても拒否。これではいつまでだっても「折込チラシの水増し詐欺」問題は解決しない。事実、水面下の問題になって半世紀を超える。

新聞業界がますますブラックボックスのふたを堅く閉ざすようになっている。新聞のビジネスモデルの崩壊がカウントダウンの段階に入っていて、ジャーナリズムに対する警戒感が強まっているからだろう。

最近の新聞業界に関するデータをいくつか紹介しよう。

◆最新のABC部数

2019年10月度のABC部数は、次の通りである。()は前年同月比。

朝日:5,379,640(-384,283)
毎日:2,317,522(-328,680)
読売:7,933,596(-395,050)
日経:2,292,118(-106,044)
産経:1,363,010(-102,832)

前年同月比で、朝日と読売は約40万部減っている。毎日は、約30万部減。1年のあいだに中央紙5紙で、京都新聞社規模の新聞社が3社消えたことになる。この流れは止まらない。さらに加速するだろう。折込チラシの需要が下降線をたどっていて、「押し紙」で販売店が被る損害を、チラシの水増し詐欺だけでは相殺できなくなっているからだ。【続きはウェブマガジン】

 

2019年11月20日 (水曜日)

滋賀医科大付属病院が、(前立腺癌に対する)小線源治療のパイオニア・岡本圭生医師を職場から追放しようとしている事件で、新事実が発覚した。

大学病院が、岡本医師の患者らのカルテを、同医師や患者らの許可を得ることなく、勝手に病院外の医師へ郵送し、評価を依頼していたことが分かったのだ。目的は、岡本医師による治療成績に瑕疵(かし)を発見することにより、岡本医師を病院から追放する方針を正当化することにあったようだ。11月9日付けの朝日新聞(電子)が、このカルテ流出事件を報じた。

同大病院が外部の医師に見せていたのは、同大病院で前立腺がんの小線源治療を行っている岡本圭生医師(59)が担当した患者のカルテ。同大病院の「事例調査検討委員会」が今年8月にまとめた報告書によると、小線源治療で合併症が発生した可能性があると考えられた20症例(21事例)のカルテのコピーを16人の外部委員の医師に送り、評価を依頼した。直腸出血や血尿などが起きた13事例が、濃厚な処置や治療を必要とする「重篤な合併症」と判断されたという。

 報告書には外部委員の名前は記載されていないが、評価を担当した複数の医師が匿名を条件に朝日新聞の取材に応じた。それらの医師によると、今年6月ごろ、患者数人分の電子カルテのコピーが個人情報を秘匿しないままの状態で郵送されてきた。外部委員が集まっての検討は行われず、他の外部委員の名前や評価内容は知らされていないという。出典

「外部委員が集まっての検討は行われず、他の外部委員の名前や評価内容は知らされていない」わけだから、岡本医師を追放するための口実づくりが目的で、「最初に結論ありき」だった可能性が高い。インシデントでもないものをインシデントとでっち上げた可能性もある。事実、大学病院は裁判で、これらの外部評価を根拠に、岡本医師による治療では過去にインシデントが発生していたと主張している。

◆◆
しかし、ここで紹介した岡本バッシングは、氷山の一角に過ぎない。このところ度を超えた事実のねつ造が始まっている。もうひとつバッシングの具体性を紹介しよう。ブラックユーモアめいた滑稽な例である。

前立腺癌の有無を調べるための検査、ぞくにいう「針生検」がある。大学病院は、この針生検ができる医師であれば、誰でも岡本医師レベルの小線源治療が可能だと主張し始めたのだ。

かりにそれが事実であれば、小線源治療を受けるために、わざわざ北海道や沖縄から滋賀医科大を受診する必要はないだろう。地元の病院でまにあう。また、岡本医師がわざわざ後継者を育てるための講座を開く必要もないはずだ。

それに裁判の被告になっている成田充弘准教授は、みずから小線源治療の手術を計画した際に、岡本医師に立ち会いを依頼した事実も明らかになっている。が、これも必要なかったはずだ。(もっとも成田医師には、針生検の治療経験すらなかった可能性もある)

ちなみに大学病院側がインシデントと主張している13の事例が、たとえ事実であっても、岡本医師が実施した手術件数は、1200件を超えているわけだから、成功率は99%を超えている。
他の医師とは比較にならない成績を残していることになる。

◆◆◆
この裁判の発端は、もともと成田医師が所属する泌尿器科が、小線源治療を希望して来院した前立腺癌患者に対し、インフォームドコンセントの際、岡本医師による小線源治療を受ける選択肢もあることを隠して、自分たちで小線源治療を実施しようと企てことである。もちろん自分たちに治療経験がないことも隠していた。患者をモルモット扱いにしていたのだ。こうした状況をみかねた岡本医師が、泌尿器科の企てを止めたことが引き金になっている。

「マルタ(731部隊のモルモット)」にされかけた患者は怒りが収まらない。患者会を結成して、大学病院に謝罪を求めた。これに対して大学病院は、事件をもみ消すと同時に、患者らに苦痛(手術後の経過観察が受けられなくなる)を味あわせるために、岡本医師の追放に乗り出したのだ。

こうした流れの中で、根拠のない岡本バッシングが始まったのである。

しかし、裁判の争点は、成田医師に説明義務違反があったかどうかという点であって、岡本医師の治療成績の評価ではない。大学病院は、争点を外すことで、逃げ切りをねらっているようだ。

 

事件の全記録は、拙著『名医の追放』(緑風出版)に詳しい。

2019年11月19日 (火曜日)

前世紀のラテンアメリカの政治を語るとき、キーワードとなっていたのが、「軍事政権」、「クーデター」、「亡命」、「ゲリラ活動」などだった。しかし、今世紀に入ってから様相が一変した。選挙により次々と左派の政権が誕生し、民族自決の流れが本格化し、これらのキーワードは過去のものとなったはずだった。

キーワードが象徴する強権的な政治と表裏関係にあったのが、多国籍企業による資源の収奪だった。それゆえに新しく誕生した左派の政権は、この問題と向き合ったのである。

特にベネズエラとボリビアがその路線を急進的に進めた。

しかし、左派の流れがいま逆流している。右傾化が進んでいるのだ。その原因を大半のメディアは左派による政策の失敗と報じてきたが、これは事実なのだろうか?【続きはウェブマガジン】

2019年11月18日 (月曜日)

電磁波問題に取り組んでいる市民運動体・ガウスネットが主催する学習会「新世代の公害-5G」が、17日に東京板橋区のグリーンホールで開催された。参加者は31名。わたしも講師のひとりで、携帯電話の基地局周辺で発生している健康被害の実態を報告した。そのほかに、ガウスネットの代表である懸樋哲夫さんと、東京理科大学の元教授・渡邉建さんが講演した。

3人の講演の後に行われた質疑応答の場では、5Gによる電磁波が人体に悪影響を及ぼすリスクを知らせる報道がほとんどなく、大半の人は5Gと健康リスクを結び付けて考えるに至っていないという認識を共有した。それを前提に、どう対処するか質問を投げかけられ、わたしはメディアを抜本的に変える必要性を訴えた。

言葉を変えると、強力なジャーナリズムが不在になっているので、5Gを推進している産業界の暴走を阻止できないと回答した。報道できない背景を考察するさい、わたしは記者個人の責任よりも、産業界、政界、メディア企業が連動して成立している構造的な問題を指摘したい。

講演の中でも言及したが、5Gにより利益を得る企業や業界団体は、政界へ多額の政治献金を行っている。自民党だけではなく、旧民主党の時代には、労働組合の政治団体から民主党議員に多額の献金が行われていた。議員推薦までやっている。

つまり政界と産業界が癒着している構図があるのだ。

さらに総務省などの中央省庁から、電話会社などに多人数の元官僚が天下っている。5G利権を持つ産業界が官僚たちの退職後の再就職先になっているのだ。

ここに、5Gの推進、あるいは無線通信網の普及という国策が浮上してくる客観的な原因があるのだ。

◆◆
メディア企業のビジネスモデルにも根本的な問題がある。周知のように主要メディアのほとんど全社が、広告やCMに依存した経営体制をとっている。しかも、大口広告主が電話会社や電気メーカー、それに自動運転の開発に余念がない自動車メーカーなどで占められている事実がある。

さらに新聞社やテレビ局などメディア企業の一部は、記者クラブを通じて公権力とも親密な関係にある。安倍首相と会食を繰り返している新聞業界のドンもいた。新聞業界がこの人物を正面から批判できないところに、日本の新聞ジャーナリズムの限界があるのだ。

◆◆◆
①政治献金を通じて産業界と政界が一体化し、天下りを通じて中央省庁と産業界が癒着している実態。②広告を通じて、メディアと産業界が友好関係を維持している実態。③さらには首相とメディア企業幹部の会食を通じて、あるいは記者クラブと中央省庁のあうんの関係を通じて、メディア企業と公権力の間に情交関係が成立している実態。

ここに5Gを推進する国策が成立する客観的な原因があるのだ。しかも、そのプロパガンダは、オリンピックやラグビーのワールドカップなどに便乗することを前提としている。実は、イベントは効果的なPR戦略なのである。だからオリンピックを日本に招致したのである。

5Gの普及により高画質な画像でオリンピックを観戦できるという方向性で大衆を洗脳できれば、5Gが内包している他の問題は闇の中へ消されてしまう。スポーツはこのようにして政治利用されるのだ。

◆◆◆◆
メディア研究者の中には、日本のジャーナリズムがほとんど機能していない原因を記者個人の職能や意欲の欠落という観点から説明する人が少なくない。それゆえに記者それぞれが、東京新聞の望月記者のようになれば、ジャーナリズムは変わると主張する。

この考えは間違っている。メディアの堕落は記者個人の心がけの問題ではない。ビジネスモデルそのものに構造的な欠陥があるからにほかならない。

電話会社を支援して5Gの普及を推進する総務省の姿勢が露骨になっている。11月14日付け朝日新聞(電子)に次のような記事が掲載された。

政府・与党は、次世代の高速移動通信方式「5G」の普及を加速させるため、関連設備を前倒しで整備する携帯事業者やケーブルテレビ局などに対し、来年度から法人税や固定資産税を減税する方向で検討を始めた。年末にまとめる来年度の与党税制改正大綱に向けて議論を本格化させる。■出典

5Gの導入は国策である。【続きはウェブマガジン】

2019年11月15日 (金曜日)

滋賀医科大学医学部附属病院をめぐる事件の裁判は、まもなく本人尋問と証人尋問に入る。この裁判は、泌尿器科の河内明宏医師と成田充弘医師に対して4人の患者が説明義務違反を理由に、損害賠償を求めたものである。

請求額は原告1人につき110万円。この額から察して、実質的な損害を回復するための訴訟というよりも、成田医師と河内医師が原告らに対しておこなった医療に対する責任を司法認定させることが目的である可能性が高い。

既報したように、この事件の発端は、本来は岡本医師が担当するはずだった患者を成田医師らが、みずからの外来に誘導して、小線源治療を実地しようと企てたことである。しかし、小線源治療が未経験の成田医師が治療を担当するまでもなく、滋賀医科大付属病院には、小線源治療に関しては、この分野のパイオニアで卓越した治療実績を持つ岡本圭生医師がいて、1200件(現時点)を超える治療を行ってきた事実がある。

当然、成田医師らは、インフォームドコンセントの際に、患者らに対して岡本医師の治療を受ける選択肢もあることを告げる必要があった。成田医師はそれをしなかったばかりか、手術の前段で不要な医療措置を行い、その結果、標準的な小線源治療を受けられなくなった患者や、元々、小線源治療は適用除外だった患者などが続出したのである。

たとえば原告のAさんは、手術の前段でホルモン療法(一種の抗がん剤治療)を1年にわたって受けさせられた。その結果、前立腺そのものが委縮してしまい、手術を受けるためには、前立腺がある程度まで元の状態に回復するのを待たなけばならなかった。そのうえ手術後の放射線治療が不可欠となった。

原告らは大学病院当局に対して、説明と謝罪を求めたが、塩田学長らはそれを拒否した。そして岡本医師を大学病院から追放することで、事件のもみ消しに走ったのである。そこで2018年8月、4人の被害患者らが提訴に及んだのだ。

なお、この裁判は、岡本医師による小線源治療を妨害しないように求めた仮処分申し立てとは別件だ。

尋問のスケジュールは次の通りである。

【11月21日(木)】
午前 10時半から12時:岡本圭生(医師)証人

【11月29日(金)】
13時10分~14時半:河野直明(医師)証人
14時半~15時半:塩田浩平(学長)証人
15時半~16時半:松末吉隆(院長)証人

【12月17日 火曜日】
10時~10時半:A原告
10時~11時:B原告
11時~11時半:C原告
11時半~12時:D原告
13時半~14時50分:河内明宏(医師)被告
14時50分~16時10分:成田充弘(医師)被告

※法廷は、いずれも大津地裁

【参考書籍】
事件の全容は、拙著『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』緑風出版)に詳しい。(右上写真)

【参考記事】
また、裁判の提訴については、朝日新聞の次の記事に詳しい。

 「医師、未経験の治療だと説明せず」 がん患者ら提訴へ

2019年11月14日 (木曜日)

佐賀新聞社の原正則販売局員(当時)が、2015年2月、新聞販売店主の集まりで、「ABC公査対策」について講義していたことが分かった。

ABC公査というのは、新聞の発行部数を調査している日本ABC協会が、新聞販売店に対して抜き打ち的に行う部数調査のことである。新聞発行本社は、定期的に日本ABC協会へ新聞の発行部数を申告するのだが、その申告部数と販売店に実際に搬入している部数に乖離がないか、あるいは申告部数と販売店が実際に配達している部数(実配部数)に乖離がないかを調査するのが目的だ。

ABC公査が正しく行われていれば、新聞販売店の「押し紙」の実態が明らかになる。ところが多くの新聞社が、「押し紙」を隠すために、「ABC公査対策」を取ってきた。佐賀新聞社もその例外ではないことが、今回、判明したのである。

原販売局員は、講義の際に「ABCの公査にあたり」と題する文書を店主らに配布していた。

◆架空の読者をPC上に設定

資料「ABCの公査にあたり」 によると、「押し紙」を隠す方法として、次の段取りが教示されている。

【1】客観的に残紙(広義の「押し紙」)の実態を把握する。この作業は、原則として新聞の搬入部数から実配部数を差し引けば、導きだすことができる。ただし、 資料「ABCの公査にあたり」では、「押し紙」という言葉の代わりに「予備紙」という言葉を使っている。佐賀新聞社が、残紙はすべて予備紙という「詭弁」で理論武装しているからにほかならない。

【2】予備紙が多ければ、それを実配部数に偽る対策が必要悪として浮上する。これについて、資料は次のように述べている。

 予備紙率が高ければ実配部数に調整が必要かと思われます。調整の理由としては、ABC部数は透明性の高さが問われ、佐賀新聞部数の信頼度に繋がるからです。

予備紙(押し紙)が多ければ、佐賀新聞の信頼度が落ちるので、「押し紙」を隠すことで、信頼度を高める必要があると言っているのだ。

【3】「押し紙」隠しの具体的な方法は、まず最初に、実際に使っている帳簿類をコピーすることである。

なお、念のための注釈しておくが、ここで説明している一連の作業は、販売店の帳簿を管理しているコンピューター上の作業を意味している可能性が極めて高い。佐賀新聞の店主がそれを証言しているうえに、新聞業界はコンピュータによる管理の時代に入っているからだ。

従って、帳簿類のコピーとは、コンピュータ上のデータのバックアップという意味である。

なぜ、バックアップを取る作業が不可欠なのだろうか。答えは簡単で、ABC協会に提示する改ざんした帳簿類が完成した後、帳簿を通常の状態へ戻す必要があるからだ。実際、これについて資料は次のように述べている。

 (略)帳票をコピーすることが大切です。コピーした帳票が、自店の通常使用している帳票にします。(ママ)

 通常使用している帳票に、(黒薮注:架空の読者の意味)調整部数(読者)を挿入し、(略)実際の部数(動き)の増減(読者)を記入することで、設定した自然な予備紙率の帳票になります。

架空の読者を帳簿に挿入するように指示しているのである。架空の読者とは、たとえば過去の読者である。あるいは全く架空の人物である。「安倍栄作」とか、「星野哲治」とか、「冬柴大作」とか・・・。昔は、ABC公査を受ける販売店が判明すると、総出でこうした改ざん作業をやっていたのである。

◆デュプロ(株)と同じ手口

「ABC公査対策」対策は昔からあった。最近、毎日新聞の元店主が、同店のコンピューターの管理をしていたデュプロ(株)の社員から、その手口の詳細を聞き出し、それを録音することに成功している。次の記事を参考にしてほしい。佐賀新聞の「ABC公査対策」とほぼ同じ手口であることが判明する。

【参考記事】新聞「ABC部数」はこうして改ざんされる――実行者が手口を証言、本社販売局の指示でcが偽の領収書を発行、入金一覧表なども偽造し数字を整合させる

◆「チラシの水増し詐欺」

周知のようにABC部数は、紙面広告の価格を決めたり、折込広告の発注枚数を決める際の参考資料になる。特に公共機関が発行する広報紙を新聞折込のかたちで配布する場合、ABC部数に準じて発注枚数が決定される。

その結果、ABC部数に「押し紙」が混じっていると、広報紙が水増しの状態になる。従って「チラシの水増し詐欺」になる。

「チラシの水増し詐欺」がなくなって最も困るのは、新聞発行本社である。販売店から受け取る詐欺の「上納金」(形式上は、新聞の卸代金)が受け取れなくなるからだ。

◆「何も答えません」

念のために佐賀新聞の販売局に繰り返し取材を申し入れたが、「係争中に付き、何も答えません」とのことだった。