2020年05月04日 (月曜日)

4月16日付けの『しんぶん赤旗』が「5G人体影響調べよ 本村氏『国民に不安の声』」と題する記事を掲載している。
日本共産党の本村伸子議員は7日の衆院総務委員会で、電波法改定案をめぐり、5G(第5世代移動通信システム)のエリア拡大の考え方、料金値上げや基地局増加に伴う人体への影響など検証すべきだとただしました。■出典
国会質問は、ウェブサイトで視聴することができる。そこで早々に、視聴してみた。
内容は期待に反して、とんでもないものだった。5Gの推進にストップをかけるための追及というよりも、むしろ国の電波政策を容認する方向性で質問が行われたことに違和感を感じた。質問自体が茶番劇にように感じられた。
本村議員が質問して、それに総務省が答えるかたちで総務省の立場をPRするパターンになっているのだ。たとえば、5Gに使われる電磁波による長期の人体影響について本村氏が質問して、総務省が電波防護指針に従って運用するので安全性に問題はないと答弁する場面がある。(2:23:30秒~)
本村議員は答弁に納得して、反論も追及もしなかった。
日本の電波防護指針は、1000μW/cm2.である。これに対してたとえばEUは、0・01μW/cm2. (室内)である。なぜ、これだけ大きな差があるのかといえば、総務省の電波防護指針が1990年代以前の古いデータを基に設定されていて、最近の研究で分かってきた電磁波のもつ遺伝子毒性などはまったく考慮に入れていないからにほかならない。
たとえば、アメリカの国立環境衛生科学研究所のNTP(米国国家毒性プログラム)の最終報告は、2018年にマイクロ波と癌の関係は明白と結論づけている。マウスを使って実験で、心臓の腫瘍のリスクなどを指摘している。
ちなみに無線通信は、EUの0・01μW/cm2. でも十分に可能だ。それにもかかわらず日本の総務省が1000μW/cm2.といった基準値にしているのは、おそらく電磁波の軍事産業への転用を想定しているからである。たとえば、次の記事である。
筑波大学システム情報系の嶋村耕平助教と同プラズマ研究センターの假家強准教授らによる研究グループは2020年4月、マイクロ波を用いたワイヤレス給電によってロケットの推力を生成し、この時の総合推進効率を詳細に測定したと発表した。■出典
◆◆
電磁波問題についての共産党のスタンスがよく分からない。たとえば吉良よし子議員も2014年4月に、国会質問の場で不通話地区への基地局設置を求める質問を行っている。かと思えば、紙智子議員は、それ以前の時期は、電磁波問題に警鐘を鳴らしていた。
質問者でありながら、5Gの何が問題なのかをよく理解していないのではないか?
5Gは大企業の権益がかかった巨大ビジネスである。住民の健康を犠牲にした巨大プロジェクトである。その野望を支援するようであれば、野党の意味がまったくないのである。
共産党が小沢一郎氏と共闘することもおかしな話だが、電磁波問題で5G推進派に加勢するのもどうかしている。方向性が間違っているのではないか。

滋賀医科大医学部付属病院の事件で、原告が控訴を断念した。4月28日、弁護団長の井戸謙一弁護士は、「控訴断念についての声明」を発表した。
それによると判決そのものは不当としながらも、原告が高齢であることなどを考慮して、控訴を断念するに至った。しかし、原告が主張してきた事実関係はほぼ認定されたことや、最終的には、50人もの前立腺がん患者の命を救ったことも大きな成果として評価している。
以下、声明文である。 (PDFはここから)
2020年4月28日
控訴断念についての声明
滋賀医大小線源治療説明義務違反事件弁護団
弁護団長 井 戸 謙 一
1 本日、滋賀医大小線源治療説明義務違反事件の原告の皆さんは、大津地裁が本年4月14日に言い渡した判決(以下「本件判決」)に対する控訴を断念することを決定されました。
1 本件判決は、具体的な事実関係については原告らの主張を概ね認めながら、結論としては原告らの請求を棄却する不当なものでした。
具体的に指摘すれば、本件判決は、被告らが主張した「治療ユニット」の実態がなかったことを認め、被告K教授が岡本医師作成名義文書を偽造したことを「岡本医師の意思に基づいて作成されたものではない」という表現で認め、被告N准教授がカルテに「自分が未経験であることを説明した旨」虚偽の記載をしたことも認めました。
そして、N准教授の供述態度を、仮定的な言い回しながら、訴訟戦略に影響されていて真摯に事実を述べる姿勢に欠けるものと非難しました。また、小線源治療における泌尿器科医師の役割を矮小化したK放射線科医師の証言内容を認めませんでした。
その上で本件判決は、原告ら4名のうち、2名の関係で被告らの説明義務違反を認めながら、損害を否定して請求を棄却し、残りの2名については説明義務違反を認めず、請求を棄却しました。
この結論になったのは、①医師の患者に対する説明義務の範囲を狭く解釈し、②被告らの説明義務違反が意図的ではなかったと誤って判断し、③自分が初心者医師のモルモットにされる一歩手前だったことを知った患者の怒りや恐怖を正当に評価しなかったことが原因です。
3 私たちは、裁判所のこれらの判断は不当なものであり、上級審で是正されるべきものであると考えます。
しかし、提訴からの1年8か月、全力でこの裁判に取組んでこられた原告の方々、及び原告の方々を支え、励まし、支援してこられた患者会の皆さま方は、いずれも高齢であって、疲労が激しく、また控訴した場合の勝訴の展望も明確ではないこと、本件判決は、結論においては敗訴であるものの、判決理由中には、原告側の主張を認め、被告らを断罪した部分が随所にあること、また関連する仮処分事件の勝訴によって50人もの前立腺がん患者の方々を岡本メソッドで救うという成果を挙げることができたこと等から、原告の皆さんは、本件判決に対し、控訴を断念するという決断に至ったものです。
4 この裁判で明らかになったのは、「患者の最善の利益のために行動すべきこと」を定めたヘルシンキ宣言に背馳する日本の医療界の古い体質であり、良心的な医師及び患者の方々がその犠牲になることでした。
幸い、この事件は大きく報道され、多くの人々の知るところとなりました。医療関係者のみならず、広く社会一般においてこの事件を教訓としていただき、日本の医療界の改善のための力にしていただくことを期待いたします。
以上

作田学医師による医師法20条違反(患者を診察せずに診断を作成)問題で、作田氏が3月末まで所属していた日本赤十字社医療センターは、作田氏が行った無診察行為で請求した保険による診療報酬を返金したことが分かった。
既報したようにこの件は、横浜副流煙裁判の原告A娘を作田氏が直接診察せずに診断書を作成した行為が、医師法20条違反に認定(横浜地裁判決)されたことが発端だ。判決を受けて、被告・藤井将登さんの妻・敦子さんは、日赤に事実関係の調査を申し入れた。日赤は、書面で調査を約束した。
3月末で作田医師は退職したが、日赤はその理由を公表しなかった。これに対して藤井さんは、書面で調査結果を公表するように求めた。日赤は、社会的に世論の高まりがあれば、書面にすることを検討する旨を回答していた。
4月30日に、藤井さんは4回目の申し入れを行った。交渉の中で日赤は、改めて調査結果を書面にしない旨を藤井さんに伝えた。
次の音声録音は、4回目の交渉記録である。
2020年04月29日 (水曜日)

4月22日付けのメディア黒書で、「新聞人が東京・豊島区の広報紙を大量廃棄、水増し率が43%、折込定数がABC部数を大幅に超過」と題する記事を掲載した。
これはタイトルのとおり、東京都豊島区が発行する『広報としま』の水増し問題を取り上げたものである。『広報としま』は、新聞折り込み(朝日、読売、毎日、産経、日経、東京)のかたちで配布されている。 ところがこれら6紙のABC部数の総合計が43,722部しかないのに、76、500部の『広報としま』を販売店へ卸していることが判明したのである。水増し率:43%である。
◆◆
水増しと断定できる根拠になっているのは、新聞の発行部数を示すABC部数と『広報としま』の卸部数の間に大きな乖離があるからだ。
わたしは、裏付けを強化するために複数の広告代理店が公表している折込定数(適正な折込部数を示す数値)を調べてみた。
たとえば広告代理店・朝日オリコミである。朝日オリコミが提示している豊島区の折込定数は45,800部である。前出のABC部数の集計時期とは1年のタイムラグがあるが、やはり『広報としま』の卸部数76,500との差異が、30,000部を超えている。
大幅に水増しされていることが裏付けられる。次に示すのが裏付け資料である。
物流交流センター(株)が定めた折込定数でも、豊島区は45,250部である。やはり30,000部以上の乖離がある。
◆◆◆
新聞販売店の経営が悪化して、より多くの折込媒体を受注したい心情は分かるが、このような手口が明るみになると、広告主が折込媒体をPR戦略に組み込むことを控えるようになるのではないか。破滅を招く。
新聞販売店が折込媒体の水増し行為に走らざるを得ない背景に、新聞社の「押し紙」を前提としたビジネスモデルがあることは明白だが、区の広報紙を廃棄して手数料を徴収している事実は重い。

【『紙の爆弾』(3月号)より転載】
近年、反ヘイトの市民運動に顕著に現れているように、住民の行動規範や道徳観を条例を制定することなどで、「矯正・指導」する現象がみられる。禁煙、あるいは分煙をめぐる市民運動にも同じ傾向がある。オリンピックと連動した禁煙キャンペーン。その中で、自宅内での喫煙禁止を求める裁判も起きたが、禁煙ファシズムの野望は砕かれた。
昨年の11月28日、横浜地裁は、日本における禁煙学の権威で日本赤十字社医療センターの医師、作田学博士に痛手となる判決を下した。博士にとっては、頭を拳で殴られたような感覚だったに違いない。
午後1時10分、入廷してきた3人の裁判官が着席し、新谷晋司裁判長が判決を読み上げた。
「1、原告らの請求をいずれも棄却する。2、訴訟費用は原告らの負担とする。」
満席になった法廷に拍手が起こった。裁判官が退廷すると、傍聴席の前のほうにいた一人の女性が立ち上がり、法廷の後方にいた一人の老紳士を指さし、
「作田、恥を知れ!」
と、一括した。自宅で煙草を吸って裁判にかけられ、4500万円を請求された藤井将登さんの妻・敦子さんだった。
作田博士は、藤井将登さんを訴えた原告3人のために「受動喫煙症」、「化学物質過敏症」などの病名を付した診断書を作成していた。後に判決を精読して分かったことだが、横浜地裁は作田医師が医師法20条に違反したことを認定していた。医師法20条違反は患者を直接診察せずに診断書を作成する行為を禁じている。
◆◆◆
裁判の発端は横浜市青葉区の団地で起きた煙草の副流煙をめぐる隣人トラブルである。この団地のマンション1階に住んでいる藤井将登さんは作曲、編曲、演奏などを行うミュージシャンである。仕事の関係で、外出していることが多いが、自宅にいるときも、たいてい防音構造になった部屋で仕事している。藤井さんは、外国製の煙草を吸っていた。とはいえヘビースモーカーではない。1日の喫煙本数も数本程度である。煙草の煙は、部屋が防音構造になっている関係で、逃げ場がなく、空気清浄機を使って処理していた。そもそも煙が外部に流出する状態ではなかった。
ところが2016年、藤井さんの煙草の副流煙で病気になったと訴える隣人が現れたのである。苦情を申し立てたのは、右隣の住民でも、左隣の住民でもない。また、真上のマンションの住民でもない。真上のマンションの隣のマンションに住む池内さん一家だった。藤井さん宅から発生する煙草の煙で、夫の池内康夫さん、妻の敏子さん、娘の香織さんの一家3人が体調を崩しているので、喫煙を止めてほしいという。団地の管理組合T氏の仲介で話し合いをもったが埒が明かなかった。
藤井さんは、池内敏子さんを立ち会わせてある実験をしてみた。自宅の換気扇の下で煙草を吸い、それが池内家へ届いているかを調べてみたのである。しかし、池内さんは、煙草の匂いを感知できなかった。また、一定期間、自宅での喫煙を控えてみた。そのうえで池内さんに、煙草の匂いの有無を聞いたところ、匂うと答えた。この時点で藤井さんは、匂いの原因は自分ではないことを確信した。ちなみに原告は、非喫煙者である藤井敦子さんも喫煙者よばわりしていた。
2017年4月、藤井将登さんは、一通の通知書を配達証明で受け取った。差出人は、弁護士の山田義雄氏だった。山田弁護士は、将登さんに対して自部での「喫煙は一切控えていただきたい」と伝えてきた。その後も山田弁護士は同じ趣旨の書面を送付し続けた。警告を聞き入れない場合は、法的措置を取らざるを得ない旨も通報されていた。
◆◆◆
事態はさらに悪化する。2017年8月、今度は神奈川県警の刑事ら4人の警察関係者が藤井家を訪問して、自宅にいた敦子さんを取り調べたのだ。敦子さんが言う。
「結局、何も問題になるようなことは指摘されませんでした。取り調べの最後に刑事らは、夫の仕事部屋にも入って、写真を撮影し、『もう2度ときません』と言って帰っていきました」
ところが、それから約3カ月後の11月、池内家の一家3人は、藤井将登さんに対して4500万円の損害賠償を求めて裁判をおこした。
化学物質過敏症は、有害な化学物質が体内に入ることによって引き起こされる疾病の総称で、多様な症状を呈する。極めて微量の化学物質を被爆しても、重篤な症状が表れることもある。煙草の煙にも有害な化学物質が含まれており、化学物質過敏症の原因のひとつである。最近は、「香害」という言葉も独り歩きしている。
化学物質過敏症は、現在の公害として浮上しているので、池内家の3人が煙草の副流煙で化学物質過敏症などになったとする主張も、全く的が外れているわけではない。その原因は多様だ。米国などで原因物質として最近特に指摘されているのはイソシオネートである。こうした状況の下で、煙草の副流煙をふくむ化学物質過敏症による損害賠償を求める裁判は増加している。しかも、訴えた側が賠償を命じられるケースが増えている。
たとえば化学物質過敏症になった花王の元作業員が花王を訴えた裁判では、4000万円の請求に対して、2000万円の支払いが命じられた。その際に判決の重要な判断基準になったのは5人の医師が原告のために作成した5通の診断書と意見書の方向性が一致していたことである。医療は極めて専門的な分野なので、複数の診断書が原告の健康被害を認定していることが重要な要件になるのだ。
◆◆◆
藤井将登さんが被告にされた裁判でも、5人の医師による診断書が提出された。しかも、5通とも原告3人の受動喫煙症や化学物質過敏症を認定していた。ところが藤井さんの支援者のあいだから、作田医師が作成した診断書に対する疑問の声があがるようになった。診断書としては記述が不自然だというのだ。たとえば次の診断書の記述である。
1年前から団地の1階にミュージシャンが家にいてデンマーク産のコルトとインドネシアのガラムなど甘く強い香りのタバコを四六時中吸うようになり、徐々にタバコの煙に過敏になっていった。煙を感じるたびに喉に低温やけどのようなひりひりする感じが出始めた。このためマスクを外せなくなった。体調も悪くなり、体重が減少している。そのうちに、香水などの香りがすると同様の症状がおきるようになった。
これは化学物質過敏症が発症し、徐々に悪化している状況であり、深刻な事態である。
聞き書きの文体である。事実と著しく異なる記述もみうけられる。たとえば藤井将登さんが、「タバコを四六時中吸う」ことになっているが、ヘビースモーカーではないうえに仕事柄あまり自宅にはいない。また、「1年前から」外国の煙草を吸っていることになっているが、実際は30年ほど前から吸っている。
さらに支援者ひとりの医師が原告準備書面の次の記述を指摘した。原告の池内香織さんの診断書作成に言及した箇所である。
なお、当時原告香織は既に寝たきりで外出困難となっていたため、原告敏子が代わりに香織の委任状と香織直筆の自覚症状、くらた内科クリニック・そよ風クリニックの診断書を提出して、作田医師の診断で、診断書を作成していただいたものである。
池内香織さんの診断書は、作田医師が直接診察して作成したものではないと山田弁護士がみずから記述しているのだ。しかし、無診察による診断書作成は医師法20条に違反する。
その後、作田医師が作成した池内香織さんの診断書が2通存在し、それぞれ病名が異なっていることも分かった。原告は、単なるミスであると主張したが、不透明感は拭えない。
さらに診断書が作田医師から山田弁護士へメール電送されていたことも判明した。
ちなみに裁判が始まった当初、藤井さん夫妻は訴訟をM弁護士に委任していたが、途中で解任した。戦略が弱腰すぎたからだ。弁護士を解任したのち、藤井夫妻と支援者の意思で自由に裁判の方針を決めるようになった。
◆◆◆
こうした状況の下で、作田医師の診断書作成のプロセスを徹底調査するために、藤井敦子さんと支援者のひとりが初老の夫妻に扮して、日赤の「作田禁煙外来」に潜入する計画が浮上した。藤井敦子さんの夫役として、外来を受診する役を担ったのは、煙草の煙に軽度のアレルギー反応がある井坂泰三(仮名)さんだった。
井坂さんはまず自宅近くのクリニックを受診した。作田医師への紹介状を作成してもらう必要があったからだ。しかし、MRI、CT、それにホルター心電図検査(24時間にわたって心電図を取る検査)など綿密な検査を受けたにもかかわらず受動喫煙症とは診断されなかった。高血圧症との診断されたのである。これでは作田医師への紹介状は作成してもらえない。そこで「作田医師のセカンドオピニオン」が聞きたいと申し出たところ、紹介状を作成してくれたのである。
2019年7月17日の午前、JR渋谷駅の東口に設けられたバス停から藤井敦子さんと井坂さんが都営バスに乗り込んだ。2人が向かう先は、広尾にある日本赤十字社の医療センターである。井坂さんは、この日のために真っ白な下着を新調していた。作田医師が診察時に体に触れることを想定した配慮だった。汚れた下着では、博士に申し訳ないと思ったからである。
作田医師の外来は、ロビーからエスカレーターを上がった病棟の2階にある。受け付けを終えると、井坂さんは問診票を記入した。薄暗い廊下に設置された椅子に腰を下ろして、しばらくすると名前を呼ばれた。診察室に入り、井坂さんは椅子に腰を下ろしながら、
「こんにちは」と言った。
「あ、どうも」
敦子さんは、
「失礼します」と言って咳払いをした。
「高血圧ってのはいつ頃から言われてるんですか?」
作田医師は、さっそく診察に入った。
「いや、あのね、紹介状書いてもらった先生とこに行って」
井坂さんは、作田医師の禁煙外来を受診した理由を次のように説明した。自分は、設備管理の仕事で定期的にP社(仮名)へ足を運ぶ。この会社の休憩室は分煙になっているものの、ビニールシートで遮断されているだけなので、喫煙室の煙が禁煙区域にもれる。そこで、診断書を会社へ提出して改善を求めたい。――。
診断時間は、20分程度だった。その中で井坂さんも藤井さんも不自然に感じた点があった。それは作田医師が井坂さんの訴える症状の原因をすべて煙草の煙と関連づけているように感じたことである。たとえば次の会話である。
「えっと、脳の検査はしたことは過去にある?」
「えっとこないだ、こないだやったんじゃなかったけな。あの、MRIってやつ」
「あー」
「それからCT、CTと」
井坂さんはCTとMRIのデータを持参していたが、それを確認しようともしない。そして早々と次の質問へ移る。
「んーー。不整脈がひどくなるってことはある? タバコの煙で」
話が不意に不整脈のことになり、その原因がタバコの煙であることの肯定を求めるような問いかけをした。煙草のことしか思量にないような印象を受けたという。
また、井坂さんが衣服の繊維を吸い込んでも咳き込むと繰り返し訴えても、原因として煙草の煙を持ち出している。次のくだりである。
「タバコの煙のないところではこの症状は出ないわけですね?」
「だから、その、洋服の、何、ユニクロみたいなああいうところ行くと、また別に起こんじゃん」
「ユニクロ?」
「ユニクロ 、洋服屋さん、洋服屋ありますよね? あそこのようなとこ行くと洋服の、何ていうの、カス、何ていうの、こう飛んで見えないんだけど、そこにいるだけで、行く時には完全にマスクして、マスク濡らしていかないと」
結局、診察を通じて作田医師が井坂さんの体に触れることは一度もなかった。井坂さんが自分の手首に指を当てて、脈を図るデスチャーをしながら不整脈を訴えたときも、聴診器すら使わなかった。
うして作成された診断書には次の病名が記されていた。
「受動喫煙症レベル3(筆者注:レベル1からレベル5で診断) 咳、淡、不整脈」
井坂さんが最初に受診したクリニックでは、受動喫煙症には該当しないとされたが、作田医師は受動喫煙症レベル3と診断したのである。井坂さんが熱心に訴えた繊維によるアレルギーはどこにも記されていなかった。
藤井さん夫妻は、控訴審になった場合に備えて潜入記録を裁判所に提出しなかったが、第3者から見るとこの記録と作田医師による医師法20条違反は整合している。受動喫煙症を前面に出した診断書く習慣が身についており、池内香織さんのケースでも無診療で診断書に化学物質過敏症などの病名を記したのである。
事実、判決は訴訟目的で作田医師らが診断書を作成したことも認定している。次のくだりである。
「その基準(注:日本禁煙学会による「受動喫煙症の分類と診断基準」)が受動喫煙自体についての客観的証拠がなくとも、患者の申告だけで受動喫煙と診断してかまわないとしているのは、早期治療に着手するためとか、法的手段をとるための布石とするといった一種の政策目的によるものと認められる」
日本禁煙学会が定めている診断基準そのものが、「法的手段をとるための布石」であり、「政策目的」で作成されていると認定したのである。
◆◆◆
これを受けて筆者は日本禁煙学会に、同学会と裁判の関係を問い合わせてみた。
黒薮:裁判を積極的に勧めているのですか?
学会:(少し間をおいてから)はい。
黒薮:どういうかたちで裁判を支援していますか?
学会:基本的には弁護士さんに相談したうえのことですが。
黒薮:そちらで弁護士さんを紹介されていますか?
学会:担当の弁護士はそんなに多くないものですから。 岡本(光樹)弁護士という受動喫煙のサイトを持っている人がいます。今、都議会議員ですが。 その方をご紹介して場所とか地域とかをみて近くの弁護士さんを紹介するとか、また何人かのチームを作ってやるなどしてきています。(筆者注:岡本弁護士は山田弁護士との関係を否定している。)
黒薮:作田先生も裁判するように勧められているのですか?
学会:裁判するように勧めるというよりも、普通に(禁煙を)お願いしてうまくいかなかった場合は、 最悪裁判になってしまうということです。
日本禁煙学会が藤井さんの裁判に関与していたか否かが、今後の解明点になりそうだ。

既報してきたようにA一家から裁判を起こされ4500万円を請求されている藤井さん一家の中で、煙草を吸っているのは藤井将登さんだけである。しかし、ヘビースモーカではない。自室でほんの少量を吸うにすぎない。ところがA一家は、藤井将登さんが次から次へ煙草を吸い、その煙が自宅まで入り込んでくると主張している。それ自体が不自然な主張だ。病的だ。
また、A夫妻は藤井敦子さんも喫煙者だと主張している。特にA妻がこの妄想に固執している。
さらに控訴人・A夫の日記によると、藤井夫妻の娘も煙草を吸っているという疑いをかけている。日記からは、藤井将登さんの行動を終始監視している様もうかがえる。〇〇時に「外出した」とか、「車がない」とか・・・。
激しい思い込みがあり、第3者から見れば、病的な印象を受ける。
この問題が勃発したころ、藤井夫妻とA夫妻が、同じ団地の住人の立会の下で、話し合いを持ったことがある。それに先立って、A夫妻が藤井夫妻に煙草についての苦情を言って来たので、藤井将登さんは煙草を控えていた。その時期に持たれた話し合いである。
話し合いの音声録音は、反訳で保存されている。次に紹介するのは、その音声と反訳である。
会話のはしばしにA夫妻の思い込みの激しさを想像させる言葉がある。藤井敦子さんが喫煙者であると繰り返している。ただし、会話の様子からして、A夫妻が嘘をついているとも思えない。両者とも真剣なのだ。なぜ、このような現象が起きるのか、原審で争点にならなかった病理学的な見地からの視点はなのだろうか。
メディア黒書で公開した控訴答弁書を読んだ読者のひとりから、A夫妻が「感応性妄想性障害」ではないかとの指摘があった。「感応性妄想性障害」とは、「強い影響力を持つ者(信者に対する教祖とか、子に対する親)の精神障害に反応して、子や信者に一時的に表れる精神の異常状態」である。
かりに精神の病が事件の背景にあるとすれば、この裁判提起を勧め支援した日本禁煙学会の関係者の責任は重い。止めるべきだったのだ。この点に関しても、控訴審で審理すべきだろう。
2020年04月23日 (木曜日)

新聞社の販売収入のうち、残紙よる収入はどの程度を占めるのかを試算してみよう。幸いにこの目的のために格好の内部資料がわたしの手元にある。2004年に毎日新聞東京本社の社長室から外部へ漏れた「朝刊 発証数の推移」と題する資料である。この資料は、『FLASH』や『財界展望』など多くのメディアで紹介された。
この資料によると2002年10月の段階で、全国の新聞販売店に搬入される毎日新聞の総部数は約395万部だった。
これに対して発証数(購読料を集金する際に読者に対して発行される領収書の枚数)は、約251万部だった。差異の144万部が領収書の発行対象とはならない残紙ということになる。144万部の中に残紙ではないものが含まれているとすれば、それは新聞を購読しているが、集金が未完了になっている読者である。こうした読者は極めて少数なので、144万部のほぼ全部が残紙と考えても大きな間違いない。
◆◆
この資料に明記されている数字でまとめると次のようになる。
新聞の搬入部数:約395万部
発証部数:約251万部
残紙:約144万部
残紙率:36%
2002年10月のデータであるから、新聞社経営の情況は現在とは比較できないが、新聞社が残紙による収入に依存している状況は何も変わっていない。そしてそれは毎日新聞だけに限ったことでもない。残紙の発生を前提とした販売政策を徹底している新聞社では同じ構図がある。
そこで毎日新聞で記録された144万部の残紙により、どの程度の金額が販売店から新聞発行本社へ流入しているのかをシミュレーションしてみよう。それに際しては、次の条件を確認しておこう。
まず、「朝刊 発証数の推移」で明らかになった残紙144万部の中身である。周知のように新聞の購読形態は2つある。朝刊だけを購読する場合と、「朝刊・夕刊」のセット版を購読する場合である。当然、購読料も卸代金も、「朝刊・夕刊」のセット版の方が朝刊単体よりも高い。
ところが毎日新聞の残紙144万部を示すデータは、両者の区別がない。そこでシミュレーションの誇張を避けるために、144万部の全部が朝刊単体であるという設定にする。
毎日新聞の場合、朝刊単体の購読料は当時3007円だった。新聞の場合、卸代金は社によって異なるが、ほぼ購読料の50%である。そこでシミュレーションに採用する卸代金を、端数にして1500円と仮定する。
新聞1部に付き1500円の卸代金を144万部に対して徴収した場合の試算は、次の計算式で示される。
1500円×144万部=21億6000万円(月間)
毎日新聞は残紙により月々21億6000万円のグレーな収益を上げていたことになる。これに12カ月をかけると、残紙による年間の収益が導きだされる。次の計算式である。
21億6000万円×12ケ月=259億2000万円
残紙により年間で259億2000万円の収益を上げている試算になる。
◆◆◆
読者は次のような疑問を抱くかも知れない。配達しない新聞を仕入れ、その卸代金を負担する新聞販売店から不満の声は上がらないのだろうかと。結論を先に言えば、残紙で生じた販売店の損害(新聞の卸代金)は、
折込媒体の水増しによって得た折込手数料や補助金によって相殺されるので、折込定数が低い販売店や、補助金が少ない販売店を除いて、販売店経営を破綻させる程の打撃は被らない。
そこで次に残紙とセットになっている折込媒体からどの程度の折込手数料が上がっているのかを試算してみよう。ただし新聞1部が生み出す折込手数料を示す毎日新聞の資料はわたしの手元にはない。また、仮にあったとしても、折込媒体の需要は地域により、季節により、さらには
時代や景気によって大きく異なるので、残紙による販売収入のような単純な試算はできない。
それを前提に、あくまでもシミュレーションの条件を設定してみよう。わたしがこれまで販売店を取材した限りでは、最近の都市部における折込媒体の収入は、新聞1部に付き800円から1500円程度である。これは毎日新聞以外の系統の店主からの情報も含めた情報である。
具体例を出すと、たとえば次に示す金額は、千葉県内の産経新聞を扱っていた販売店における折込手数料である。いずれも新聞1部が生み出す1か月の折込手数料である。
2016年1月:850円
2016年2月:740円
2016年3月:926円
2016年4月:848円
2016年5月:721円
2016年6月:789円
平均: 812円
ただし、この販売店は「押し紙」が原因で経営が悪化して廃業に追い込まれた経緯があるので、経営状態が最悪だったと考えなければならない。また、この数字を2002年10月の時点における毎日新聞の情況と類似しているとみなすこともできない。当時はまだ相対的に折込媒体の需要も比較的高く、現在よりも遥かに経営が良好だった。
そこで毎日新聞の残紙が生み出していた折込媒体の水増し手数料の試算には、2件の数字を想定する。最も低く見積もった場合の数値としては、前出の産経新聞販売店における2016年度前期の折込手数料の平均・812円である。最も高く見積もった場合の数値としては、わたしが取材で得た推定値の最高額1500円である。
計算式は極めて単純だ。それぞれ次のようになる。
(最低額による試算)残紙144万部×812円×12カ月=約140億
(最高額による試算)残紙144万部×1500円×12カ月=約259億
「最高額による試算」では、1年間の折込手数料は約259億円であり、この額は残紙によって毎日新聞が得た販売収入とはからずも一致する。これはシミュレーションであるから、推測の域を出ないが、少なくとも残紙で生じる損害を折込媒体の水増しで相殺する構図があることは間違いない。それが今の健在な新聞社のビジネスモデルなのである。
熊本日日新聞など、搬入部数を決める権利を販売店に委ねる制度(自由増減)を採用している若干の社を除き、日本の新聞社のビジネスモデルは、毎日新聞と基本的には同じである。
警察庁がまとめた2019年度における特殊詐欺による被害額は301億円だから、「折り込め詐欺」による被害は、その何十倍にもなるのだ。従って残紙問題は、公権力によるメディアコントロールのアキレス腱になりうるのである。
【写真説明】ビニール包装されている新聞が「押し紙」、新聞で包装されている包みは、廃棄される折込広告
2020年04月22日 (水曜日)

今月の『紙の爆弾』(5月号)で、東京23区の広報紙の水増し実態を取り上げた。23区のうち12区で明らかな水増し行為が行われているとする調査結果を公表した。
その後、追加の調査を実施したので、その一部を紹介しよう。豊島区のケースである。
豊島区は、23区の中でも、もっとも水増し率が高い区である。大量に廃棄されているのは『広報としま』である。同区のウェブサイトによると、発行状況は次の通りである。
「毎月1日は『特集版』と『情報版』を、毎月11・21日は『情報版』を発行」している。「また年に2回、「特別号(としまplus)」(A4冊子版)を全世帯に配布」する。
豊島区の場合は、基本的にはデジタルブック版で『広報としま』にアクセスする制度になっているが、「ほか、日刊紙(朝日・読売・毎日・東京・産経・日本経済)への折り込みや、区内各駅の広報スタンド、区内ファミリーマート、区内公衆浴場、区内郵便局、区施設の窓口にも置いてい」る。
「また、区内在住で、新聞を購読していない世帯(企業は除く)で、ご希望のかたに個別配布をしてい」る。個別配布の部数は、同区の広報課によると、月に4000部程度である。
『広報としま』の新聞販売店向けの卸部数の内訳は次の通りである。
全体:96、000
新聞折込:76、500
ABC部数:43,722
過剰になった広報紙の部数:32,778
水増し率:43%
ABC部数が約4万3700部しかなにのに、折込対象になっている『広報としま』の部数は、7万6500部である。約3万2700部が廃棄されている。「押し紙」が1部たりともなくても、約3万2700部が捨てられていることになる。
「押し紙」があれば廃棄量は、この比ではなくなる。
◆◆
新聞折込を目的として豊島区が広報紙を卸している販売店、あるいは代理店と、その卸部数は次の通りである。
朝日新聞池袋ステーション:20,150部
読売インフォメーション:26,950部
産経新聞池袋西口専売所:4,500部
東京新聞長崎専売所:11,050部
ニュースサービス日経 巣鴨:13,850部
合計:76,500
上記の販売店・広告代理店のうち、読売インフォメーションに問い合わせたところ、読売アイエスという広告代理店が対応した。同社には、次のような質問状を送付している。
読売アイエス様
わたしはフリーランス記者の黒薮哲哉です。
東京都の23区を対象に、広報紙の水増し実態を調査しています。
豊島区役所の広報部によると、豊島区の場合、新聞折り込み用に広報紙が7万6500部割り当てられています。これは在京の6紙です。
ところが在京6紙のABC部数は、4万3772部しかありません。(いずれも2019年6月のデータ)
差異の約3万3000部が水増しされている計算になりますが、過剰になった広報紙はどのように処理されているのでしょうか。
黒薮

新聞販売店の経営が相当に悪化している。販売店を廃業したいが、借金があるので廃業できないまま、雪だるま式に借金を増やしている店主さんもいるようだ。
対策としては一刻も早く弁護士に相談することである。弁護士の中には、異常な高額請求する方もいるが、全員がそうではない。早めに相談して解決した例は数多くある。
「NO! 残紙キャンペーン」は無料の相談と弁護士窓口を設けている。
相談窓口は、次の通りである。
電話:048-464-1413 (黒薮まで)
メール:xxmwg240@ybb.ne.jp

滋賀医科大事件の裁判が、「報告事件」に指定されていたのではないかという疑惑があがっている。事実認定と結論の整合性がないからだ。
「報告事件」とは、裁判の書記官が裁判の進行を最高裁事務総局に報告し、それを受けて最高裁事務総局が判決の方向性を決めるペテン裁判のことである。公権力や大企業に不利な判決が下りそうな雲行きになると、裁判官を交代させて、最高裁事務総局のおもわく通りの判決へ誘導する事件のことである。
この問題を指摘しているのは、元裁判官で弁護士の生田暉雄氏(写真)である。
次に紹介する動画は、2016年2月28日に「最高裁をただす市民の会」で生田氏が行った講演である。この講演では、報告事件に関しては直接の言及はないが、裁判所の内幕を暴露している。創価学会の関係者が起こした訴訟と担当裁判官の関係についても言及している。また、理不尽な給与体系や人事異動についても言及している。容赦なく「闇」を暴いている。
滋賀医科大事件の判決を検証するに際し、その前段としてメディア黒書で紹介する。
◆小松美穂子裁判官と横浜副流煙裁判
なお、滋賀医科大事件を担当した3人の裁判官のうち小松美穂子裁判官は、大津地裁へ赴任する前に、横浜地裁で横浜副流煙事件を担当していた。裁判を1年以上にもわたって延々と長引かせ、事件を後任の裁判官に引き継ぎ大津地裁へ異動したのだ。
副流煙裁判の原告・藤井将登さんは昨年11月に勝訴判決を勝ち取ったが、小松裁判官が留任していれば、どんな結果になったか知れたものではない。

医師が患者に対する説明義務を怠ったとして4人の癌患者が滋賀医科大医学部付属病院の2人の医師に総額440万円の損害賠償を求めた裁判の判決が14日に大津地裁であった。堀部亮一裁判長は、患者側の請求を棄却した。
この事件の発端は、2015年1月に同病院に前立腺癌に対する小線源治療の寄付講座が開設されたことである。講座の特任教授に就任したのは、この分野のパイオニアとして知られる岡本圭生医師だった。滋賀医科大は岡本医師を中心に、小線源治療のセンター化へ向けてスタートを切ったのである。
ところが泌尿器科の河内教授と成田准教授が、岡本医師の講座とは別に小線源治療の窓口を設置して、一部の患者を泌尿器科へ誘導し、泌尿器科独自の小線源治療を計画したのだ。実際に20数名の患者が事情が分からないまま泌尿器科へ誘導された。
しかし、滋賀医科大には、小線源治療においては岡本医師という卓越した実績の持主がいる。当然、泌尿器科へ誘導された患者も岡本医師による岡本メソッドを受ける権利がある。4人の原告患者は成田氏らが、自分たちにも岡本医師による異次元の治療を受ける選択肢があることを説明しなかったことが、説明義務違反にあたるとして提訴したのである。
◆◆
判決は、成田医師らが患者に岡本メソッドという選択肢を示さなかった事実を認定したが、「意図的な隠ぺい」ではなかったとして不法行為には当たらないという趣旨である。また、最終的に患者らが岡本医師の治療によって救済されたことなどを理由に、不利益は被っていないと結論づけた。
審理のなかで被告側は、岡本メソッドは特別な治療法ではなく、針生検ができる医師であればだれでも実施可能だという趣旨の主張を展開したが、裁判所はその主張を認定しなかった。逆に岡本メソッドと他の小線源治療では、質的にまったく異なると認定した。
と、なれば成田医師らは患者に泌尿器科独自の小線源治療と岡本メソッドの質の違いを説明して、極めて優位性の高い選択肢があることを示すのが当り前だが、判決は次の理由でその必要性を認めなかった。
①岡本医師の治療のパートナーである放射線科医・高野医師が経験豊富なこと。②成田医師は岡本医師が手術に立ち会うことを想定していたこと。③成田医師自身が前立腺癌チームのリーダーであり、ロボット手術などで経験豊富な医師であること。
こうした事情を考慮すると、泌尿器科独自の小線源治療が「大学病院で想定される医療水準を満たさない小線源治療とは認められず、全ての患者に対して、一律に他の選択可能な治療方法として」岡本メソッドの優位性を「説明しなければ説明義務違反になるとまではいえず、あくまで、患者の意向、症状、適応等を踏まえ、個別に診療契約上の説明義務の存否を判断すれば足りる」と判断したのである。
◆◆◆
このような論理構成が判決の前提になっているのだ。たとえば患者Aさんのケースである。
Aさんは、成田医師による2例目の手術を受ける予定になっていた。しかし、インフォームドコンセントの際に、成田医師は自分の未経験を告げなかった。そこで状況を察した岡本医師が、まだ院内にいたAさんを探して直接事情を説明したのである。
その後、成田医師、河内医師、松末院長、それに岡本医師がAさんのケースについて話し合いの場を持つ。その席で岡本医師は、執刀医となる成田医師の未経験やインフォームドコンセントの内容を批判する。これを受けて成田医師は診療録にAさんに対して、1例目(最初の患者は、成田医師の未経験を知って、治療を断った)の手術であることを告げたと書き加えた。この後付け措置について、裁判所は次のように認定した。
「A及びその家族は、被告成田から1例目であるとの説明を受けなかったと認められる」
これが客観的な事実である。しかし、これをもって裁判所は不法行為とは認定しなかった。その理由は次の通りである。
「なお、このような診療録への書き加えの事実は、その直前に補助参加人(注:岡本医師)がAに1例目であることを説明しなかったことを問題として指摘したことへの防御的な反応にとどまり、このことをもって患者への説明回避・事実隠ぺいの意図の存在にまで結び付くわけではないから、前記オの判断を左右する事情とは認められない」
論理が飛躍している。「前記オ」とは、不法行為を認定しなかった①~③の理由である。つまり、本稿「◆◆」の内容である。
◆◆◆◆
なお、この判決で特筆しておかなければならないことがある。それはこの裁判を担当した裁判長と、判決を言い渡した裁判長が別の人物である点だ。人事異動ということらしいが不自然だ。

滋賀医科大医学部付属病院で起きた“人間モルモット”事件の判決が、4月14日の15時に大津地裁で言い渡される。この事件は既報してきたように、前立腺癌の小線源治療をめぐり、4人の患者が説明義務違反で、2人の医師に対して総額440万円の損害賠償を求めたものである。
同病院では、小線源治療のパイオニア・岡本圭生医師が独自の講座で、前立腺癌の患者に対する小線源治療を実施してきた。その治療成績は卓越していて、全国から患者が治療を希望して集まっていた。
【参考記事・ビジネスジャーナル】前立腺がん、手術後の非再発率99%の小線源治療、画期的な「岡本メソッド」確立
ところが泌尿器科の河内明宏教授と成田充弘准教授が、岡本医師とは別に自分たち独自で小線源治療を実施しようと計画した。そして20名あまりの癌患者を泌尿器科へ誘導した。
この裁判の原告となった4人の患者は、手術に至る前段の治療プロセスで、不適切な治療を半ば強要されたうえに、岡本医師による治療を選択する権利がある旨をインフォームドコンセントの際に知らされなかったとして、提訴に踏み切ったのである。
ただ、請求額がひとりに付き110万円に過ぎないので、肉体的・金銭的なダメージからの回復を求めることが請求の目的ではなく、責任の所在を明確にすることであると推測される。
争点は、河内医師と成田医師の行為が説明義務違反に該当するかどうかという点である。
この事件については関西の大手メディアが熱心に報道してきた。『週刊朝日』も繰り返し報じている。たとえば、次に紹介するのは、大阪毎日放送が制作したドキュメンタリー、「閉じた病棟 ~大学病院で何が起きたのか~」である。
