2025年08月21日 (木曜日)

東京高裁は20日、横浜副流煙裁判控訴審の「反訴」で、控訴人の控訴を棄却する判決を言い渡した。ただし、被控訴人である医師の医療行為については「医師法20条の規律に反すると言い得る」と認定した。さらに、この医師による診断書作成方法についても「被控訴人・藤井将登氏に喫煙をやめさせる目的で作成されたことは、診断書作成の経過や内容の妥当性とも関連し、診断書の趣旨・目的を逸脱する余地がある」と指摘した。

控訴人の請求自体は退けられた。

■判決全文

◆事件の発端

この事件は2017年11月にさかのぼる。ミュージシャンの藤井将登さんが吸う煙草の煙によって健康被害を受けたとして、隣人家族(A家、夫・妻・娘)が将登さんを相手取り、4518万円の損害賠償を請求したのが始まりである。

しかし審理が進むにつれて、作田学医師がA家の3人に交付した診断書に数々の疑問点があることが明らかになった。たとえば、

•娘については作田医師が実際には診察していなかった。

•夫の診断書には「受動喫煙症」との病名が記載されていたが、本人には約25年の喫煙歴があった。

•妻の診断書では、根拠もなく将登さんを煙の発生源と断定していた。

このように診断書作成の過程そのものが裁判の大きな争点となった。横浜地裁は、A家の請求を棄却し、さらに作田医師の医師法20条違反を認定した。

控訴審においても将登さんの勝訴は維持されたが、東京高裁は作田医師の医師法20条違反については、判決で言及しなかった。

◆その後の訴訟

将登さんは勝訴確定後、A家の訴訟は「訴権の濫用」に当たるとして、妻・敦子さんと共に「反スラップ訴訟」を提起した。A家が起こした裁判は、根拠に乏しい不当訴訟であると主張したのである。被告は、A家の3人と、診断書を交付した作田医師である。訴訟で「悪用」されることを予測しながら、根拠のない診断書を交付したというのが、作田医師を被告に加えた理由である。

第一審の横浜地裁は藤井夫妻の請求を棄却した。続く東京高裁も控訴を棄却したが、既に述べたように作田医師の診断書作成に重大な問題があったことについては事実認定したのである。

◆作田医師の診断書の問題点

作田医師の最大の問題は、患者の自己申告を重視して、十分な裏付けを取らずに診断書を交付した点である。実際、所見の中には「1年前から団地1階に住むミュージシャンが、デンマーク産のコルトやインド産のカラムなど甘く強い香りのタバコを四六時中吸うようになった」
といった、患者の訴えそのままの記述が含まれていた。

しかし、専門家によれば、「香害」を訴える人の中には思い込みが強いケースも少なくなく、医師は慎重な判断を求められる。作田医師はその点を考慮せず、患者の訴えを鵜呑みにして診断書を交付していたのである。

東京高裁がこの問題に踏み込んだことで、今後の「香害」問題の取り扱いに影響を及ぼす可能性が高い。また、労災認定を得るために患者の要望どおりに診断書の所見を作成するといった行為にも、歯止めがかかる可能性がある。診断書の所見の客観性が問い直されることになる。

2025年08月18日 (月曜日)

横浜副流煙裁判「反訴」の控訴審判決が、8月20日に言い渡される。日時と場所は次の通りである。

•8月20日(水)午後1時30分

•東京高裁 817号法廷

横浜副流煙裁判「反訴」控訴審、8月20日に判決、診断書の瑕疵が焦点に

この裁判は繰り返し報じてきたように、煙草の副流煙をめぐる事件である。煙草の煙によって健康を害されたとして、横浜市郊外の団地に住む3人家族が、隣人であるミュージシャン藤井将登さんに対し4518万円の損害賠償を請求し、敗訴したことに端を発する。その後、藤井さん夫妻は「提訴が訴権の濫用にあたる」として、約1000万円の損害賠償を求め「反訴」した。

■事件の概要

本件で最大の争点となったのは、日本禁煙学会の作田学理事長(当時)が原告のために作成した診断書である。作田医師は、原告の自己申告をもとに「受動喫煙症」と診断し、その診断書が提訴の根拠とされた。ところが審理の過程で、その診断書にさまざまな瑕疵があることが明らかになった。

つまり、不備のある診断書を根拠に、3人家族は藤井さんに対し4518万円を請求したのである。このため、反訴においては3人家族に加え、診断書を交付した作田医師も被告として法廷に立たされることとなった。

第1審(横浜地裁)は藤井さん夫妻の敗訴だった。第2審(東京高裁)では裁判所が双方に和解を提案したものの、成立には至らなかった。

新聞社や関連会社が公共機関と取引を行うことで、ジャーナリズム本来の役割が損なわれる構図は、これまでも『メディア黒書』が繰り返し指摘してきた。主な構図は以下の通りである。

1. 公共機関による「押し紙」の黙認によって得られる莫大な新聞販売収入

2. 新聞に対する軽減税率の適用

3. 再販制度による価格維持

4. 記者クラブを通じた情報入手の優遇

5. 公共広告の出稿

これらの便宜に加え、新聞社や系列の印刷会社が公共機関から受注する折込媒体の印刷収入も巨額に上る。

7月20日投票の参議院選挙において、選挙公報の印刷を新聞社が受注していた事実は、昨日の『メディア黒書』で報じた通りである。

参院選選挙公報、首都圏で新聞社系が印刷を独占,神奈川新聞は1億4000万円で落札

以下のリンクは、その証拠となる神奈川新聞の入札記録であり、同社がさまざまな公共機関から印刷業務を請け負っていることが分かる。

(株)神奈川新聞社の入札結果・落札情報

7月2o日に投票が行われた参議院選挙の選挙公報について、首都圏の一都三県(東京・神奈川・千葉・埼玉)を対象に印刷業者を調査した結果、いずれの自治体も新聞社系列の印刷会社に発注していたことが判明した。詳細は順次公表予定。

神奈川県では、神奈川新聞社が選挙公報の印刷を担当。入札情報によれば落札額は1億4,460万円(144,647,814円)。

配布方法は、朝日・読売・毎日・日経・産経・東京・神奈川の各紙に折り込み、市役所や公民館に積み置く形。新聞販売店にはABC部数に応じて公共折込媒体が割り当てられるため、販売店に「押し紙」が存在すれば、公報紙も水増しされた状態となり、未配布のまま廃棄された可能性が高い。

ちなみに埼玉県では、朝日新聞販売店で参院選公報紙の過剰在庫が発覚している。同様の事例が他県でも発生している可能性があり、公費の無駄や税金の不正利用につながる恐れがある。

 

【参考記事】《YouTube動画》動画で見る参院選・選挙公報の水増し現場、税金の騙し取りもお咎めなし、新聞人は「知らぬ、存ぜぬ」

 

2025年08月11日 (月曜日)

執筆者:ロベルト・トロバホ・エルナンデス

2025年8月8日、ホワイトハウスは、歴史的瞬間の舞台となった。アゼルバイジャン共和国のイルハム・アリエフ大統領とアルメニアのニコル・パシニャン首相が、約40年にわたる両国の紛争に終止符を打つ和平協定に署名したのだ。

アルメニアとアゼルバイジャンの紛争は、最も血なまぐさい紛争の一つだった。アゼルバイジャンのカラバフ地方は、アルメニア側に不法占拠され、多くの死者と避難民を生み出す戦争に苦しめられてきた。

米国のドナルド・トランプ大統領の仲介により行われた和平交渉は、恒久的な敵対行為の停止、外交・通商関係の樹立、アルメニアによるアゼルバイジャン領の承認、そしてアルメニア領内を通ってアゼルバイジャンのナヒチェバンに至る道路の設置で合意した。

この極めて重要な回路の設置は評価に値する。これは鉄道、パイプライン、光ファイバー回線を含む複合型インフラであり、米国企業の参入によって開発される予定だ。この回廊の開通は、ヨーロッパと中央アジアとの間の貿易と接続性を促進するだろう。

トランプ氏の仲介は、この交渉を成功に導く鍵となった。彼はこれまで他の仲介者が成しえなかった合意に至る能力を示したが、平和を持続させるには、地政学的な利益よりも地域協力を優先するアプローチが必要だ。

アゼルバイジャンとアルメニアの和平協定は、南カフカスの安定に向けた画期的な一歩であり、繁栄の象徴である。

筆者紹介
ロベルト・トロバホ・エルナンデス。
AL PRESS代表(CEO)、世界ジャーナリスト会議(WJC)ラテンアメリカ・カリブ地域ディレクター。

 

【出典】Se logró un imposible: ¡Paz en el Cáucaso!

Este 8 de agosto del 2025, la Casa Blanca fue escenario de un hito histórico: el presidente de la República de Azerbaiyán Ilham Aliyev y el primer ministro de Armenia Nikol Pashinyan, firmaron un acuerdo de paz que pone fin a unas cuatro décadas de conflicto entre ambos países.

El conflicto entre Armenia y Azerbaiyán ha sido uno de los más sangrientos. El Karabaj, una región de Azerbaiyán, que fue ocupada ilegalmente por los armenios, sufrió guerras que dejaron muchísimos muertos y desplazados azerbaiyanos.

La negociación de paz, con la mediación del presidente estadounidense Donald Trump, logró un acuerdo que promete el cese permanente de hostilidades, el establecimiento de relaciones diplomáticas y comerciales, el reconocimiento armenio a la integridad territorial azerbaiyana, además de la creación de un corredor que conectará Azerbaiyán con su territorio Najichevan a través de territorio armenio.

Loable este importantísimo corredor -multimodal, pues incluye ferrocarriles, oleoductos y líneas de fibra óptica- que será desarrollado con la participación de empresas norteamericanas. La apertura del corredor impulsará el comercio y la conectividad entre Europa y Asia Central

La mediación de Trump ha sido clave para el éxito de estas negociaciones; demostrando su capacidad para cerrar acuerdos donde otros han fallado, pero la sostenibilidad de esta paz requiere un enfoque que priorice la cooperación regional sobre los intereses geopolíticos

El acuerdo de paz entre Azerbaiyán y Armenia es un paso monumental hacia la estabilidad en el Cáucaso Sur, un símbolo de prosperidad.

2025年08月09日 (土曜日)

大阪市の都心から離れた住宅街に、2024年4月、前立腺がんの小線源治療を専門とするクリニックが開業した。院長は、異色の経歴を持つ岡本圭生医師である。

本書は、その岡本医師と患者たちが、前近代的な師弟関係に支配された大学病院と対峙した事件を詳細に記録したものである。著者の出河雅彦氏はこう述べる。

「医師の世界に限らず、自分が所属する組織や集団の中で、権威者や上位の者の意思に逆らってまで職業倫理や良心に忠実に行動しようとすれば、おのれの保身、利己的計算、事なかれ主義を克服しなければならず、それは口で言うほどたやすいことではない」

口で言うほどたやすくないことを実行したのが岡本医師だった。当時、朝日新聞記者だった出河氏は、この事件を取材するため東京から滋賀県大津市にある滋賀医科大学へ何度も足を運んだ。

2017年12月、滋賀医科大学は岡本医師を中心とする「前立腺癌小線源治療学講座」を2年後に閉鎖すると発表した。それは、この医療技術の中止を意味した。岡本医師が米国の医療から学び、独自に発展させた小線源治療は、日本国内はもとより海外でも高い評価を受けていた。そのため、北海道や沖縄など遠方からも、手術を求めて患者が滋賀医科大学を訪れた。

当然、講座閉鎖の発表は「生命を最優先する」という人道的・倫理的観点から強い批判を呼び起こした。とくに治療の順番を待っていたがん患者たちは大きな動揺に包まれた。

事件の発端は、2015年1月に前立腺癌小線源治療学講座が設置されたことにさかのぼる。講座の設置は医療メーカーの協力で実現したが、岡本医師の辣腕と名声を快く思わない泌尿器科の先輩教授らが妨害に乗り出した。岡本医師の外来を訪れた患者を、密かに別の窓口に誘導し、独自の小線源治療を始めたのである。結果として、一つの大学病院内に二つの小線源治療窓口が併存するという異常な事態が生じた。

しかし、泌尿器科の教授らには小線源治療の経験も実績もない。手術の高リスクは明らかだった。それでも教授は、部下の助教授を執刀者に指名し、半ば実践訓練を兼ねた手術計画が実施されることになった。手術の直前になって、岡本医師は塩田浩平学長に計画中止を進言した。この瞬間、岡本医師の大学病院追放は既定路線となった。

講座閉鎖の決定は、手術を待つ約100人の患者を不安に陥れた。患者たちは患者会を結成し、滋賀医科大学の正門やJR大津駅前などで街頭活動を展開。さらに2件の裁判も提起した。

本書は、これら一連の経過を丹念に記録している。行間から、前近代的な大学病院の構造が浮かび上がる。著者は岡本医師の言葉を引用する。

「私は医学界にいまだ存在する、踏んではいけない虎の尾を踏んでしまったのだと思います。それは戦前から医学部教授が手にしているとされる既得権──診療、研究の進め方は言うまでもなく、講座の構成員の生活や将来のすべてを決定する権力です」

岡本医師が滋賀医科大学を去ってから5年。クリニックを開業して小線源治療を再開してから1年が過ぎた。事件は、記録しておかなければ時の流れとともに砂城のように消えてしまう。その意味で、本書は極めて貴重な記録である。

 

タイトル:前立腺がん患者、最善の治療を求めて
著者:出河雅彦
出版社梨の木舎
発売日:2025年8月10日

2025年08月07日 (木曜日)

2025年6月度のABC部数が明らかになった。これは日本ABC協会が公表する最新の新聞発行部数であり、新聞業界の動向を示すひとつの指標である。

この1年間で、中央紙各社はいずれも大幅な減部数となった。最新のABC部数と、前年同月比(▲)は以下の通りである。

読売新聞:5,442,550部(▲413,770部)
朝日新聞:3,234,313部(▲156,690部)
毎日新聞:1,213,572部(▲285,999部)
日経新聞:1,288,439部(▲86,975部)
産経新聞:798,252部(▲51,539部)

なお、ABC部数は新聞社の公称発行部数であり、この中にはいわゆる「押し紙」(実際には配達されずに余る部数)も含まれている。そのため、部数の減少が必ずしも読者数の減少と一致するとは限らない。

実際には、新聞社が販売店に対する「押し紙」を調整・削減した結果、部数が減ったように見える場合もある。近年では、折込広告の激減により、販売店が「押し紙」を抱え続ける経営的な余裕がなくなってきている。こうした背景から、「押し紙」の削減は、新聞発行本社にとっても販売網維持のために不可避になっているのが現状だ。

 

2025年08月07日 (木曜日)

2025年6月度のABC部数が明らかになった。これは、新聞各社が公表する最新の発行部数であり、新聞業界の動向を示す重要な指標である。
この1年間で、中央紙各社はいずれも大幅な減部数となった。前年同月比での減少は以下の通りである。
•読売新聞:5,442,550部(▲413,770部)
•朝日新聞:3,234,313部(▲156,690部)
•毎日新聞:1,213,572部(▲285,999部)
•日経新聞:1,288,439部(▲86,975部)
•産経新聞:798,252部(▲51,539部)
なお、ABC部数は新聞社の公称発行部数であり、この中にはいわゆる「押し紙」(実際には配達されずに余る部数)も含まれている。そのため、部数の減少が必ずしも読者数の減少と一致するとは限らない。
実際には、新聞社が販売店に対する「押し紙」を調整・削減した結果、部数が減ったように見える場合もある。近年では、折込広告の激減により、販売店が「押し紙」を抱え続ける経営的な余裕がなくなってきている。こうした背景から、「押し紙」の削減は、販売網維持のためにも不可避となっているのが現状だ。

2025年08月05日 (火曜日)

執筆者:ロベルト・トロバホ・エルナンデス

想像してみてほしい。教室で生徒たちが学んでいるのは、数学や歴史だけではない。地域の財産を守る方法、公的資金の使い道をチェックする方法、そして幼いころから透明性の文化を育む方法だ。これは理想論ではない。実際にボゴタ市をはじめ、コロンビア各地で行われている取り組みなのだ。

「学生監査官」として活動することを通じて、倫理や反腐敗の精神を持った新しい世代がコロンビアの首都で育ちつつある。この教育の変革を推し進めているのが、ボゴタ市監査官のジュリアン・マウリシオ・ルイスだ。彼は若者を「公共の利益を守る担い手」として育成している。

◆学生監査官とは?

コロンビアにおける「学生監査官」は名ばかりの役職ではない。公立・私立を問わず、生徒自身が公共機関の監視に積極的に関わる制度だ。2009年にボゴタで始まり、2022年に制定された法律2195号を根拠に、全国的に広がった。生徒たちは教育予算の使い道から、政府が運営する学校給食プログラム(SFPs)のチェックまで担っている。

とはいえ、これは単なる「監視活動」ではない。リーダーシップ、民主主義、社会的責任を実践的に学ぶ教育プログラムであり、生徒たちが自らの役割を実感できる画期的な仕組みなのだ。

毎年、学校では選挙で学生監査官を選出する。選ばれた生徒は、ボゴタ監査局、教育省、そしてIDPAC(地域コミュニティ参加・行動研究所)と協力して活動する。例えば2025年には、ボゴタ市の412人の若者が「学校に割り当てられた予算を正しく管理し、透明性や環境保護を推進する」と誓っている。

◆ユーモアを交えた学びと変革

この取り組みの大きな特徴は、「社会の中で楽しみながら関わる力」を育む点にある。倫理を説く退屈な授業ではなく、生徒たちは地域に密着した実践的で創造的な活動に取り組むのだ。

たとえば、ボゴタ市の各地区から代表が集まる「地区学生監査員ネットワーク」では、学校給食で使う水資源の節約やごみ削減など、幅広いテーマを扱う委員会が組織される。委員会は問題を分析するだけでなく、リサイクルキャンペーンの企画や薬物乱用防止のための戦略づくりなど、具体的な解決策まで提案している。

こうした活動を通じて生徒たちは、楽しみながら議論し、仲間とネットワークを築き、前向きな市民としての姿勢を育んでいく。学校の取り組みは、若者が自分の力で社会の変革に貢献できることを実感させるのだ。

これは単なる教育プログラムではない。「自分たちに社会を変える力がある」という自覚を若者に与えるための教育でもある。

◆ジュリアン・ルイス:若者を透明性の担い手に

この運動の中心にいるのが、ボゴタ市の監査官ジュリアン・マウリシオ・ルイスだ。彼の発想とリーダーシップは、この取り組みを推進するうえで欠かせない存在となっている。

ルイスは毎年数百人の学生監査官を任命するだけでなく、彼らを「より透明な都市を築くための大切なパートナー」と位置づけてきた。2024年、412人の新たな学生監査官に向けたスピーチで、彼はこう強調した。

「民主主義を強めるのは、あなたたちです。資金の使い道を見守り、公共のことに関心を持つことがあなたたちの使命です。」

さらにルイスは、学生監査官の活動を教室の外にも広げている。ボゴタ監査局は彼らから詳細な報告書を受け取り、学校のインフラや安全、環境問題といった重要課題の解決に役立てている。これらの報告書は単なる宿題ではなく、実際の監査に活用される有益な資料となっているのだ。つまり、若者たちの活動が公共の管理そのものに直結していることを示している。

ルイスはまた、学生たちに「学校の枠を超えて」取り組みを広げるよう呼びかける。

「私たちの役割は、家庭でも、地域でも、将来の職場でも、常に公共の事柄を見守る存在になることです。」

そのメッセージは明確だ。

「腐敗との闘いは大人だけの仕事ではない。それは若者が受け継ぎ、さらに進化させていく使命なのだ。」

◆ボゴタから世界へ

国境を越えて人や情報がつながる時代において、市民参加と市民教育は、さまざまな形の民主主義を支える柱となっている。そんな中、コロンビアの「学生監査官」の取り組みは、世界にとって刺激的な実例となり得るだろう。

コロンビアは歴史的に腐敗の問題に直面してきた国だ。しかしこの活動は、教育が人々の意識を変える強力な手段になり得ることを示している。単なる資金の監視にとどまらず、公的サービスの価値を子どものころから理解し、倫理観をもった市民を育てることが目的なのだ。

2024年には、学生監査官の地区ネットワークが、学校の安全対策や性教育といった幅広いテーマに取り組んだ。若者が複雑な社会課題にリーダーシップを発揮できることを証明してみせたのだ。実践的な活動に、ジュリアン・ルイス氏のようなリーダーの後押しが加わることで、学生たちは単なる批判者ではなく、提案し行動する「変革の担い手」へと成長している。

◆より透明な未来へ

学生監査官の活動は、未来への約束でもある。公共機関への信頼が揺らぐ世界の中で、コロンビアはボゴタの取り組みを通じて示している──次世代に倫理観と公共心を教える教育こそが、腐敗への有効な解決策になり得ると。

ジュリアン・マウリシオ・ルイス氏のリーダーシップと、数千人の若者の情熱によって、コロンビアの学校からは確かな民主主義の土台が築かれている。

もしあなたが「腐敗とどう向き合うか」を考える機会があれば、ぜひコロンビアの若者たちを思い出してほしい。彼らはノートとアイデア、そして少しの創造力だけで、社会を変えているのだから。これは私たち全員にとって、大切な教訓ではないだろうか。

 

筆者紹介
ロベルト・トロバホ・エルナンデス。
AL PRESS代表(CEO)、世界ジャーナリスト会議(WJC)ラテンアメリカ・カリブ地域ディレクター。

 

【原文】YOUNG PEOPLE IN COMMAND! ■INTERNATIONAL NEWS

Imagine a classroom full of students, not only learning math or history, but also how to protect their community’s resources, monitor the use of public funds, and build a culture of transparency from a young age. This isn’t a utopia; ¡it’s a reality in Bogotá and throughout Colombia!

Through the Student Comptrollers initiative, the seeds of a generation committed to ethics and the fight against corruption are being sown in the Colombian capital. And at the heart of this educational revolution is Julián Mauricio Ruiz, the Comptroller of Bogotá, a leader who has championed empowering young people as guardians of public affairs.

What are Student Comptrollers?

In Colombia, the position of Student Comptroller is not just an honorary title, but an active role that allows students from public and private schools to participate in the oversight of their institutions’ resources. Created in Bogotá in 2009 and reinforced nationally by Law 2195 of 2022, this initiative seeks to empower young people to oversee public goods, from their schools’ budgets to government-run school feeding programs (SFPs).

But it’s not just about oversight; it’s a pedagogical exercise that combines leadership, democracy, and social responsibility, all wrapped up in a dynamic that makes students feel part of something bigger.

Each year, schools democratically elect their student comptrollers, who work closely with the Bogotá Comptroller’s Office, the Ministry of Education, and the District Institute for Community Participation and Action (IDPAC). In 2025, for example, 412 young people in Bogotá took an oath, pledging to care for their schools’ resources and promote values such as transparency and environmental stewardship.

The Social Playfulness of Learning – Transforming

What makes this initiative special is its focus on social play. Instead of boring lectures on ethics, students participate in practical and creative activities that connect them with their community. For example, the District Network of Student Comptrollers, made up of a representative from each Bogotá district, organizes thematic committees that address everything from water conservation to waste prevention in the School Feeding Program. These committees not only analyze problems but also propose concrete solutions, such as recycling campaigns or strategies to prevent the use of psychoactive substances.

It’s an approach where students learn to be active citizens while having fun, debating, and networking. Through these exercises, students become empowered in educational institutions as actors who contribute to transformations in their contexts. This isn’t just a school exercise; it’s a way to teach young people that they have the power to change their environment.

Julián Ruiz: The Engine of Youth Transparency

At the center of this movement in Bogotá is Julián Mauricio Ruiz, the city’s comptroller, whose vision has been key to strengthening the initiative. Ruiz has not only promoted the inauguration of hundreds of student comptrollers each year, but has also insisted that these young people are fundamental allies in building a more transparent city. “You are the ones who will strengthen democracy,” he told the 412 new comptrollers in 2024, highlighting their role in overseeing resources and generating a culture of caring for public affairs.

Ruiz has taken this mission beyond the classroom. Under her leadership, the Bogotá Comptroller’s Office has received detailed reports from student comptrollers, addressing critical issues such as school infrastructure, safety, and the environment. These reports are not simple homework assignments; they are real input that guides the Comptroller’s Office’s audits, demonstrating that young people not only learn, but also directly impact public management.

Furthermore, Ruiz has called on students to extend their commitment beyond the schools. “Our invitation is to be significant by being observers of public affairs in all spheres: family, community, and professional,” he stated at a recent ceremony. His message is clear: the fight against corruption is not just for adults; it is a legacy that young people are inheriting and transforming.

From Bogotá to the world

For an international audience, where citizen participation and civic education are pillars of many democracies, the experience of student comptrollers in Colombia may sound inspiring.

In Colombia, a country that has faced historical challenges with corruption, this initiative demonstrates that education can be a powerful tool for changing mentalities. It’s not just about monitoring money, but about developing ethical citizens who understand the value of public services from an early age.

In 2024, the District Network of Student Comptrollers worked on committees addressing everything from school safety to sex education, demonstrating how young people can lead on complex social issues. This practical approach, combined with the guidance of leaders like Julián Ruiz, transforms students into agents of change who don’t just critique, but propose and act.

A more transparent future

The student comptrollers’ initiative is a commitment to the future. In a world where distrust in institutions is a global problem, Colombia—through Bogotá—is showing that educating new generations in ethical values and oversight of public affairs can be a powerful solution.

Thanks to leaders like Julián Mauricio Ruiz and the enthusiasm of thousands of students, Colombians are building a stronger democracy, one school at a time.

So, the next time you think about how to combat corruption, remember these young Colombians who, with notebooks, ideas, and a little creativity, are making a difference. Isn’t that a lesson we can all learn?

 

2025年08月01日 (金曜日)

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士江上武幸(文責)2025年7月31日

長崎県販売店の地裁裁判官の交代については、2024年12月26日(木)投稿の「西日本新聞福岡地裁敗訴判決のお知らせ」で報告したとおりです。

今回は、佐賀県販売店の押し紙訴訟の担当裁判官の交代について報告いたします。

佐賀県販売店の押し紙訴訟は、令和7年5月20日に原告本人尋問と販売部長の証人尋問が実施され、即日結審し、来る9月9日が判決言渡期日と定められました。

前回の4月15日の期日において日景聡裁判長は「裁判官変更の予定はありません。」と告げました。裁判官の異動は4月1日付で行われますので、日景裁判長がそのようなことを当事者双方の代理人に告げたのは、今の合議体で本件事案の審理を終え判決を作成することを宣言したに等しい出来事でした。

ところが、5月20日の人証調べの日に、廊下の掲示板に日景裁判長の名前が記載されていることを確認して、法廷で裁判官の入室を待っていたところ、裁判官席の後方の扉から入ってきた裁判長は日景裁判長ではなく、三井裁判官でした。三井裁判官の任官後最初の転勤は、福岡地方裁判所久留米支部であり、読売新聞YC久留米中央の荒木さんの販売店地位保全仮処分決定と間接強制金一日3万円の支払いを命じる裁判を下した裁判官です。この仮処分決定は異議申立がなされ3人の裁判官による合議体によって取り消されました。

その後、三井裁判官とは熊本地裁玉名支部や佐賀地裁本庁等の裁判で顔を合わせることがありましたので、その人柄はよくわかっているつもりです。

人証尋問が終り、9月9日に判決言い渡しと決まり閉廷しましたので、廊下に出てから他の弁護士に、三井裁判官は久留米支部配属時代にYC久留米中央の地位保全の仮処分決定を出してくれた裁判官であることを話しました。

しかし、4月15日の期日に日景裁判長が双方代理人に対しわざわざ裁判官の交代はないと伝えていたことや、5月20日の期日の廊下の掲示板には日景裁判官が、裁判長として記載されており、三井裁判官の名前がなかったことから、なんとなく違和感を感じ、念のためネットで二人の裁判官の経歴を調べてみました。

今はネットで裁判官の氏名を検索するだけでその裁判官の経歴がわかるようになっており、便利な時代になったものです。

三井裁判官の経歴をみたところ、令和7年4月1日付で佐賀地裁民事部総括から福岡高裁第3民事部判事に移動し、5月20日に福岡地裁2部民事総括に配属されていることがわかりました。

日景裁判官の経歴をみたところ、5月20日に福岡地裁第2民事部総括から福岡地裁第4民事部総括(破産再生執行保全部)に配属されておりました。

廊下の掲示板には日景裁判長の名前が書かれており、三井裁判官の名前は書かれていませんでしたが、裁判所事務官あるいは裁判書書記官に対しては、裁判長の交代については当日朝までは伝えられていなかったのではないかという疑念が浮かんできました。

三井裁判官は、佐賀地裁から一旦、福岡高裁に転勤し、その後、すぐに福岡地裁の本件裁判の担当裁判長に配属になっています。福岡高裁に転勤になったのは昇進の関係で暫定的に処置したもので、実際は当初から本件事件の裁判長を担当させるための人事ではないのかという疑いです。

そうであれば、4月15日時点で裁判官の交代はありませんと話しておられた日景裁判長の他の部への配属替えも突然決まったと考えられるので、気の毒な気がします。

去る6月20日に井戸謙一元裁判官と樋口英明元裁判官の共著『司法が原発を止める』という本が旬報社から発行されました。裁判官経験者でなければ知りえない裁判所内部の様々な出来事について対話されており、大そう勉強になりました。

両裁判官の後輩裁判官に対する熱い期待が行間にあふれております。御一読をおすすめします。

押し紙裁判については、販売店敗訴判決の判決文の論理構成の類似性や同一性、あるいは担当裁判官の奇妙な人事異動などにより、かねてから最高裁事務総局より報告事件に指定されていることが疑念されてきました。先の西日本新聞長崎県販売店の裁判と本件佐賀県販売店の裁判についても、報告事件として最高裁事務局に逐次審理の進行状況が報告されていないか気になるところです。

本件佐賀県西日本販売店の押し紙裁判の裁判長の交代についても、上記のような気になる点が出てきましたので、判決前に投稿しておくことにしました。裁判長交代が9月9日の判決で吉と出るか凶とでるか、皆様と一緒に見守りたいと思います。

* 福岡地裁久留米支部配属当時の三井裁判官の販売店地位保全仮処分決定と間接強制金支払命令の判決文を参考資料として添付しておきます。ご参照ください。

 

■販売店地位保全仮処分決定

■間接強制金支払命令の判決

2025年07月31日 (木曜日)

 (写真:今崎幸彦・最高裁長官)

「報告事件」と呼ばれるペテン裁判は、果たして実在するのだろうか。そうした疑問を胸に、7月24日、東京・千代田区の連合会館で開かれたシンポジウムに参加した。この企画は、『司法が原発を止める』(旬報社)の出版に合わせて行われたものである。

「報告事件」とは、最高裁事務総局が裁判の行方を水面下でコントロールする仕組みを指す。たとえば、公権力にとって不都合なテーマが裁判の争点となった場合、最高裁事務総局は当該裁判所の書記官に審理内容を報告させる。そして、国家の意に沿わない判決が下される可能性が浮上すると、人事異動を口実に裁判官を交代させ、判決を誘導するというのだ。こうした「報告事件」の噂は、かねてから裁判所関係者の間で絶えない。

この日の登壇者は、現在は弁護士として活動する井戸謙一氏と、同じく元裁判官で原発訴訟を支援している樋口英明氏。聞き手はジャーナリストの後藤秀典氏と、反原発運動家の武藤類子氏であり、司会は本書の企画・編集を担った鹿野健一氏が務めた。

シンポジウム後半の質疑応答で、私は挙手して次のように質問した。

「最高裁事務総局による『報告事件』は本当に存在するのか。私はこの20年ほど新聞販売店と新聞社の裁判を取材してきたが、判決直前に裁判官が交代し、その結果、販売店が敗訴するケースが相次いでいる。たとえば、日経新聞の販売店が『押し紙』問題で日経新聞社を訴えた裁判では、販売店が10数回にわたり内容証明で『押し紙』を断ったにもかかわらず敗訴した。判決理由は、日経社が内容証明を受け取った後に両者が話し合いを行ったため、押し売り行為には当たらない、というものだった」

この問いに対し、井戸氏も樋口氏も明確に「報告事件は存在する」と答えた。不自然な裁判官の人事異動も少なくないと指摘した。

以前、元裁判官で現在は弁護士の生田暉雄氏にお会いした際にも、「報告事件」について意見を交わしたことがある。生田氏は著書『最高裁に「安保法」違憲判決を出させる方法』(三五館)の中で、「報告事件」の具体例を紹介している。

《参考記事》
司法官関係者のあいだで「報告事件」と呼ばれる不正裁判の存在を暴露、裁判所の裏金にも言及、生田暉雄・元大阪高裁判事が新刊『最高裁に「安保法」違憲判決を出させる方法』を出版

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「報告事件」の客観的裏付けを取るのは至難の業だが、私は情報公開請求によって一例を把握している。以下の記事である。

≪参考記事≫
最高裁事務総局による「報告事件」の存在が判明、対象は国が被告か原告の裁判

裁判を起こす際には、多額の弁護士費用や印紙代を原告が負担するのが通常である。とすれば「報告事件」とは、原告に対するペテンに等しい。厳しく罰せられるべきであるが、残念ながら最高裁を断罪でする制度は存在しない。「報告事件は」国民を欺く、悪質な権力の濫用と言わざるを得ない。

 

■写真:今崎幸彦・最高裁長官(出典:裁判所ウエブサイト)

2025年07月28日 (月曜日)

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士 江上武幸(文責)2025年7月28日

衆議院に続き、参議院でも自民・公明の与党両党が過半数を割りました。一方、国民民主党や参政党が大きく議席を伸ばし、これに維新、れいわ新選組、日本保守党などを加えた新興勢力が、今後の政治の行方を大きく左右する存在となりそうです。

今回の選挙では、30年に及ぶ経済の停滞と、それに伴う社会全体の閉塞感に対する、若者世代の強い反発と怒りが背景にあると考えられます。

若者たちは、国民民主党の玉木代表の不倫問題、参政党・神谷氏の偏った女性観、元維新・橋本氏のハニートラップ疑惑など、SNSを賑わせた政治家のスキャンダルには目もくれず、変革への強い衝動に突き動かされているように見えます。財務省解体デモに象徴されるように、政治変革を求めるエネルギーは今後さらに拡大していくでしょう。

参政党が発表した「新日本国憲法構想案」により、この党の思想的傾向が明らかになり、既存メディアも批判的に報じ始めました。

新聞やテレビが新興政党に対し、党首や所属議員の女性問題、金銭スキャンダル、運営上の問題点などを積極的に報道するようになれば、これらの政党は、既存政党とは異なる立場から、新聞の「押し紙問題」を政治問題化し、メディアに対する強力な攻勢を仕掛けてくる可能性があります。

熊本日日新聞や新潟日報など一部の例外を除き、多くの新聞社は、押し紙による収入を前提に経営を続けているのが現状です。押し紙とは、新聞社が販売店に対し、実際に販売されない部数を強制的に仕入れさせる行為であり、これは独占禁止法に違反する不公正な取引方法で、資源の浪費であり、広告主に対する詐欺でもあります。

若者たちは新聞を購読していませんが、Google検索やSNSを通じて、押し紙の存在についてはよく知っています。新聞社がこの問題の存在を認めようとしない姿勢は、大人社会の「二面性」として受け取られ、若者から「正義を語る資格があるのか」と批判される原因になり得ます。

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黒薮哲哉氏は今回の参院選で、千葉県流山市の朝日新聞販売店前に、配達されずに放置された選挙公報の束を撮影(冒頭の写真参照)し、店主に取材しました。

黒薮氏の著書『新聞と公権力の暗部――押し紙問題とメディアコントロール』(鹿砦社)では、押し紙による新聞社の不正利益が年間約1,000億円にも上ると指摘されています。

これまでにも共産党・公明党・自民党の議員が押し紙問題を国会で取り上げ、公正取引委員会に是正を求めてきましたが、政府答弁を突き崩すには至っていません。裁判所でも多くの訴訟が提起されていますが、販売店に配達されない新聞が大量に残っている事実は認めつつも、新聞社の責任を明確に認めた判決は少数にとどまっています。

新聞社は第4の権力としての地位に安住し、自主的な是正の姿勢をほとんど示していません。

*押し紙裁判と裁判官の独立に関する問題については、別稿で詳述する予定です。

いつの時代も、若者は大人社会の不正・不条理・詭弁に鋭敏に反応し、強い憤りを抱きます。社会に出ても正規雇用に就けず、親の連帯保証で借りた奨学金の返済に追われ、結婚も子どもを持つことも諦めざるを得ない現実に、若者たちは自分の力ではどうにもできない閉塞感を感じています。

一方で、いわゆる“親ガチャ”に恵まれた二世・三世の政治家や高級官僚、大企業社員たちは、苦労もなくエリートとして迎えられ、人生を謳歌しているように見えるのです。

本来、日本が戦後に世界第2位の経済大国となった時期には、全ての若者に無償の高等教育や返済不要の奨学金を提供し、世界に羽ばたく人材に育てることも可能だったはずです。

*Googleで「親ガチャ」を検索したところ、次のような投稿が見つかりました。

「生きていくのに疲れました。親ガチャははずれ けどたくさんたくさん・・・努力してきました。努力しても親ガチャあたりの人には追い付けません。親のお陰で努力も苦労もしないでいい生活をしている人が羨ましい・・・。」

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日本は現在もアメリカの事実上の支配下にあり、名実ともに独立した国家とは言い難い状況です。この事実は学校教育では教えられませんでしたが、ネットやSNSの普及により、若者を中心に広まりつつあります。

報道によれば、今回の日米関税交渉において石破政権は、アメリカ経済に対して80兆円の投資を約束し、その利益の90%がアメリカ側に帰属するという信じ難い内容だったとされます。

一方で、日本国内では「子ども食堂」がボランティアによって辛うじて維持されていますが、その多くが資金不足で閉鎖に追い込まれています。

80兆円の投資が可能なのであれば、なぜ「子ども食堂」が国の政策として整備されないのか、なぜ奨学金返還を免除し、無償の奨学金制度を実現させないのか――。自公政権の「失われた30年」によって未来を奪われた若者の無念は、当事者でなければ想像もできないでしょう。

格差に怒り、現状打破を願う若者たちが、今回の選挙で変革への思いを投票という形で示したのだと思います。

新聞社やテレビ局の社員も、一般的に「エリート層」と見なされています。そのため、押し紙問題を棚に上げたまま、自分たちが支持する政党の立場から他党を批判する報道を行えば、理屈を超えた感情的な反発が生じる可能性があります。

そのような若者からの熱烈な支持を受けて登場した新興政党のリーダーたちは、自分たちへの批判報道に対し、これまでの政党には見られなかった強い姿勢で、押し紙問題を正面から政治課題として取り上げてくるかもしれません。

とはいえ、参政党の「新日本国憲法構想案」には、国民主権を否定するかのような、復古的・反動的な性格が色濃く見受けられます。そのような憲法草案を作成した人物や、それを無批判に支持する若者たちは、おそらく学校で日本国憲法について十分な教育を受けておらず、自主的な学習経験も乏しいのではないでしょうか。

かつて戦後すぐに使われていた文部省の副教材「あたらしい憲法のはなし」のように、小学校の段階から憲法三原則(国民主権・基本的人権の尊重・平和主義)を学ぶ教育が継続されていれば、現在とは異なる市民意識が育まれていたことでしょう。

冷戦構造の形成とともに、憲法第9条は「押し付け憲法」というレッテルを貼られ、徐々に無力化されていきました。憲法教育が意図的に軽視されてきたツケが、今になって表面化しているのです。

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失われた30年を取り戻すには、30年前の原点に立ち返る必要があります。それは決して不可能なことではありません。

かつては、社会党・共産党を中心に、アメリカの影響下から脱しようとする「革新政権」の誕生が現実味を帯びていた時期がありました。今のように少数政党が乱立する状況では、むしろ中選挙区制への回帰の方が、政権交代の可能性を高めると考えられます。

アメリカは日米安保条約の継続を望み、そのために日本に「二大政党制」を導入しました。これは、イギリス型の選挙制度を手本にしたもので、たとえ一方の政党が下野しても、もう一方が政権を担うことで、国の基本的支配構造には影響を与えないという設計です。

自民党は世襲政治家、官僚、タレントなどによって構成され、これに対抗する非自民勢力は、むしろ「非エリート」的な立場から政治家志望の若者を育成してきました。

しかし、小選挙区制の導入により、政党支部が全国津々浦々に設置され、地域社会が分断され、日本人の「和を重んじる心情」に反する状況が生まれました。

郵政や国鉄の民営化、労働組合の分断、そして社会党の瓦解など、中選挙区制時代に培われた野党連携の力はことごとく削がれました。その帰結が、今われわれが目の当たりにしている「失われた30年」なのです。

長崎県出身で元通産官僚の古賀茂明氏は、2011年に『日本中枢の崩壊』という衝撃的な著書を出版しました。それから14年が経ち、いまや中枢の崩壊は極限にまで達しています。

行政の崩壊は、財務省による森友学園問題での公文書改ざんに表れました。司法の崩壊は、黒川東京高検検事長の定年延長問題――検事総長に就任させるための異例の措置――に象徴されます。

立法府の崩壊は、憲法第9条の「解釈改憲」という脱法的手法によって具現化されました。

一体誰が、日本の中枢をここまで破壊したのでしょうか。崩壊した統治機構を立て直すには、これから数十年単位の努力と時間が必要です。

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昨年末、関東地方の読売新聞販売店の経営者らが「押し紙率は5割に達している」と訴え、その解消を求めました。また、毎日新聞は大手新聞社の中でも押し紙率が最も高いと指摘されています。

このような中で、もし新聞社やテレビ局が新興政党に対して批判的報道を強めた場合、若者たちは「自分たちの押し紙問題を棚上げにして、よくも他人を批判できるものだ」と感情的な反撃に出ることが予想されます。

そして、もし新聞社側がその反発を恐れて、「押し紙の追及を控える代わりに批判報道も控える」といった暗黙の取引を新興政党と行えば、それは民主主義の根幹を揺るがす自殺行為となるでしょう。

そのような取引が、まったくの杞憂とは言い切れません。これまでの新聞社の押し紙問題への消極的姿勢や、裁判での徹底した否認姿勢を見れば、その可能性を否定することはできません。

熊本日日新聞や新潟日報のように、押し紙問題をすでに解消した新聞社を除けば、今後、押し紙を抱えたままでは、自公政権との関係を見直すことも、新興政党に毅然とした取材姿勢を貫くことも困難です。

新聞社の経営陣は、「押し紙問題が日本の民主主義を左右する問題」であることを肝に銘じるべきです。そして、一線の記者たちが後ろめたさなく、自由闊達に取材活動を行える環境を整えるため、速やかに押し紙問題を解決するという決断を下すことが求められています。

 

先日、読売新聞と毎日新聞が「石破首相が退陣を決意」という誤報を一面トップで掲載しました。石破首相本人に直接取材もせず、なぜそのような重大な誤報が生まれたのか、非常に不可解です。昨年末には、関東地区の読売販売店が「押し紙率は50%に達する」と訴えており、毎日新聞の押し紙率が突出していることも広く知られています。

両紙がそろって「石破退陣」を報じた背景に、偶然とは思えない何らかの政治的意図があった可能性は否定できません。自民党内の特定グループが、読売・毎日に「石破おろし」の世論誘導を依頼し、その見返りとして押し紙問題の追及を見逃すよう働きかけたのではないかという推測も浮かびます。

もちろん、大手新聞社がそうした圧力に安易に屈すると考えるのは失礼ですが、仮に押し紙問題を材料に圧力をかけられた場合、果たして断固拒否できるのかという疑念は残ります。

逆に、新興政党が「押し紙問題を追及しない代わりに、批判的な報道を控えてほしい」と取引を持ちかけてきた場合、新聞社がその圧力に屈しないと断言できるでしょうか。

朝日新聞阪神支局襲撃事件は、今なお記憶に深く刻まれています。あの事件は、新聞・テレビのジャーナリズムが、時に命を懸ける尊い仕事であることを社会に強く印象づけました。