2022年06月29日 (水曜日)

2022年5月度のABC部数が明らかになった。それによると朝日新聞は、年間で約48万部の部数を失った。部数の急落傾向にまったく歯止めがかかっていない。年内に400万部の大台を割り込む可能性がある。

読売新聞も年間で約31万部を減らしており、急落の傾向は変わらない。産経新聞は、約18万部を減らした。もともとのABC部数が100万部規模の新聞社であるから、没落の度合いは朝日や読売よりも深刻だ。残紙を整理した結果である可能性もあるが、影響力のないメディアに近づいている。

中央紙のABC部数は次の通りである。

朝日新聞:4,235,509(-478,849)
毎日新聞:1,910,192(-93,642)
読売新聞:6,801,908(-309,635)
日経新聞:1,729,506(-130,480)
産経新聞:1,011,671(-179,961)

なお、読売の渡辺恒雄主筆は、今年1月の賀詞交換会で、「もう一遍、1000万部を取り戻したいと思っておりますので、頑張ってください」(『新聞情報』、1月19日)と挨拶している。依然として、「読売1000万部」にこだわっている。

ジャーナリズムは、中身がすべてという発想がないようだ。

※なおABC部数には残紙が含まれているので、実配部数を示すものではない

2022年06月27日 (月曜日)

新聞のCMに使われる場面のひとつに、新聞を満載したバイクが明け方の街へ繰り出すイメージがある。透明な空気。笑顔。闇がとけると、動き始めた街が浮かび上がってくる。しかし、記者の視点を持って現場に足を運ぶと、新聞販売店に積み上げられた「押し紙」が、日本の権力構造の闇として輪郭を現わしてくる。だれが注意しても、疑問を呈しても、新聞社はそれを黙殺し、「知らむ、ぞんぜぬ」で押し通してきた。時には司法の土俵を使って口封じを断行し、同じ夜と昼を延々と繰り返してきたのである。

が、今この社会問題を照らすための新しい視点が生まれ始めている。その先駆けとなったのは、2020年5月に佐賀地裁が下した判決である。この判決は、佐賀新聞社による「押し紙」を不法行為として断罪しただけではく、独禁法違反を認定したのである。その後、全国各地で元販売店主らが次々と「押し紙」裁判を起こすようになっている。

現在、わたしは3件の「押し紙」裁判を取材している。広島県の元読売新聞の店主が起こした裁判(大阪地裁)、長崎県の読売新聞の元店主が起こした裁判(福岡地裁)、それに長崎県の西日本新聞の元店主が起こした裁判である。取材はしていないが、埼玉県の元読売新聞の店主も裁判(東京地裁)を起こしている。

これらの裁判で浮上している2つの着目点を紹介しよう。それは、「押し紙」の定義の進化と、「定数主義」を柱とした新聞社の販売政策の暴露である。

◆◆

従来の「押し紙」の定義は、新聞社が販売店に「押し売り」した新聞というものだった。たとえば新聞購読者が1000人の販売店に対して、新聞社が1500部の新聞を搬入した場合、500部が残紙となる。この500部から若干の予備紙を引いた部数を「押し紙」と定義するのが一般的だった。

しかし、この定義を根拠に「押し紙」裁判を起こした場合、販売店は残紙が押し売りの産物であることを立証しなければならない。それは実は至難の技である。と、いうのも帳簿上は販売店が新聞の注文部数を決めたことになっているからだ。新聞社が高圧的な押し売りを行った証拠を示さない限り、注文部数は販売店が自主的に決めたものと見なされ、損害賠償は認められない。

佐賀地裁で販売店が勝訴した勝因のひとつに、原告側が進化した「押し紙」の定義を示したことである。とはいえ、それは我田引水にでっちあげた定義ではない。公正取引委員会がこれまで交付してきた新聞関連の公文書を過去に遡って調査し、独禁法の新聞特殊指定に基づいた忠実な定義を示したのである。

その定義は端的に言えば、「新聞購読者数に予備紙を加えた部数」を超える残紙は、理由のいかんを問わずに「押し紙」とするものである。「押し売り」があったかどうかが一次的な問題ではなく、「新聞購読者数に予備紙を加えた部数」を超えてるかどうかが、最大の着目点になる。

新聞特殊指定でいう新聞の注文部数とは、店主が「発注書」に記入した部数のことではない。1964年に公正取引委員会が交付した特殊指定の運用細目は、新聞の注文部数を次のように定義している。

【引用】「注文部数」とは、新聞販売業者が新聞社に注文する部数であって新聞購読部数(有代)に地区新聞公正取引協議会で定めた予備紙等(有代)を加えたものをいう。

※地区新聞公正取引協議会は、実質的に日本新聞協会の下部組織である。

 

公正取引委員会がこうした運用規則を定めたのは、「押し紙」を取り締まることが目的だと思われる。「注文部数」の特殊な定義を示すことで、一般の商取引でいう「注文数」から区別したのである。この発見が、「押し紙」裁判を変え始めている。

ただ、どの程度の予備紙部数が適正なのかという議論は依然としてある。新聞社は、残紙はすべて予備紙であるという主張を繰り返してきたが、大量の残紙が古紙業者により回収されている事実があり、予備紙としての実態はほとんどない。(下記動画を参照)【続きはデジタル鹿砦社通信】

2022年06月22日 (水曜日)

携帯基地局の設置に規制を求める運動を展開している市川市の住民グループの代表が、市議会に対して説明責任の条例化を求める請願書を提出した。請願書は、6月20日付けで受理された。同市のウエブサイトによると、請願の概要は次の通りである。

請願第4-1号 携帯電話基地局を設置又は改造する時には事業者はその計画を地域住民等に対して説明を行うこと及び設置済みの携帯電話基地局についてその事業者は地域住民等の求めに応じて説明を行うことの条例化を求める請願 (環境文教委員会付託)

今春、楽天モバイルが分譲マンションの屋上に基地局を設置する計画を、管理組合に打診してきた。管理組合は総会を開いて採決を取った。大半の住民が賛成票を投じた。マンションの戸数が少なく、管理費・修繕費の積み立てが住民らの負担になっている事情が背景にある。

最上階の住民の中には、設置に強く反対したひともいたが、多数決の原理で押し切られてしまった。

しかし、マンションの近隣住民からも基地局からの電磁波による人体影響を懸念する声があがり、今回の請願書提出に至った。

5Gで使われる電磁波の評価はまだ確定していない。データそのものがそろっていない。そのためにヨーロッパでは、5Gをペンディングにする動きが顕著になっている。

しかし、日本の総務省は「見切り発車」のかたちで電話会社を支援してきた。マイクロ波の規制値を欧州評議会の1万倍に緩和して支援する異常ぶりだ。健康被害が出た場合、電話会社が規制値を守っていれば、電話会社の代わりに国が賠償する構図になっている。

請願書の全文は次の通りである。

 

■請願書全文

現在、携帯電話基地局の設置が急ピッチで進められています。市川市では地域住民等への説明は義務化されていないため、知らぬ間に近所に携帯電話基地局が設置されてしまいます。このことは、市民の誰にでも起こりうる事です。問題は、携帯電話基地局のそばで何年も生活し、基地局から発せられる高周波の電磁波を浴び続けることで体調不良が起こり、酷い場合には病気を発症してしまう可能性があるということです。特に影響が大きいと考えられるのは、妊婦や子ども達です。電磁波は細胞分裂が盛んなところほど影響を及ぼすと考えられています。

私の家の近くの建物には、既に大手3社の携帯電話基地局が設置されています。その建物とは別の私の家の前のマンションに、新たに楽天モバイルの携帯電話基地局の設置が決まりました。しかし、周辺に住む住民への説明がなかったので、総務省と楽天モバイル担当者に連絡をしました。この狭い場所に4社の携帯電話基地局が設置されることについて、安全性などを尋ねました。携帯電話基地局からの電磁波は、電波防護指針の安全基準を下回っており、安全だと言われました。

しかし、本当に安全なのでしょうか?携帯電話に比べると、携帯電話基地局からの電磁波は弱いようではありますが、周辺に住む住民は24時間365日被曝することになります。私の住むエリアでは4社の携帯電話基地局が設置されることとなり、1社設置の場合に比べて、4倍の被曝量になるのではないかと考えます。そして、微弱な電磁波でも長期間被曝すると、健康リスクが高まるとの調査結果があります。携帯電話基地局の周辺に住む住民が体調不良を訴えたり、病気を発症したりしたとの報告があります。これは電磁波の非熱作用が影響しているのではないかと言われていますが、因果関係は明らかになっていません。

今後、既設の携帯電話基地局は5Gに替わっていくものと思われます。5Gの電磁波は届く距離が短くなることから、これまでより多くの携帯電話基地局が必要になると言われています。5Gの携帯電話基地局が増えることは、周辺に住む住民の数が増えることであり、健康リスクを抱える人が増えるということでもあります。

このような健康リスクの可能性があるにも関わらず、携帯電話基地局からの影響を受ける地域住民等への説明がおろそかにされて良いのでしょうか?地域住民等に説明をせず携帯電話基地局を設置するということは、健康的な生活をする市民の権利が奪われるということなのではないでしょうか。

海外では5Gの導入に慎重な国もあるようです。ベルギーのブリュッセル首都圏地域では「市民はモルモットではない」として、5Gの導入を一旦中止にしているそうです。その他にも5G導入を規制する国や欧州の自治体が増えてきているそうです。それらの国や欧州の自治体では電磁波をリスクとして捉え、回避する姿勢を取っています(予防原則)。これは、電磁波の調査研究の結果が確実ではないと言われているからこそ、電磁波の被曝リスクを回避するという姿勢なのではないでしょうか。安全に備えようとする世論が反映されているのかもしれません。

現在、日本は電磁波への理解が進んでいません。だからこそ電磁波のリスクや不確実性を知り、備えることが必要です。そのためにも、事業者は地域住民等に向けた説明を行い、地域住民等は不測の事態に備えることが出来るようにしてほしいと思います。

よって、事業者による地域住民等への説明を義務化する条例を制定して下さいますようお願い申し上げます。尚、鎌倉市や宮崎県小林市などでは携帯電話基地局の設置時の条例が制定されています。

下に、条例化して頂きたい内容を記します。

1.携帯電話基地局の設置又は改造を行う時には地域住民(基地局の高さの2倍の距離に住んでいるか、土地建物を所有する者)及び周辺住民(地域住民の属する自治会の会員)に、事業者は説明を行う。

2.地域住民や周辺住民の中に学校や児童福祉施設などの施設の土地所有者等が含まれる時には、事業者は当該施設の管理者の意向を尊重するよう努めなければならない。

3.携帯電話基地局の設置又は改造を行う時には、工事に着手する日から起算して60日前までに、事業者は工事の計画書を市長に提出しなければならない。

4.携帯電話基地局の設置等又は改造をしようとする時には、事業者は地域住民や周辺住民の意見を聴き、紛争の防止に努めるとともに、良好な関係を損なわないように努めなければならない。

5.設置済みの携帯電話基地局についても、地域住民や周辺住民から求めがある時には、事業者は説明を行う。その際には設置の経緯や契約期間、電磁波(周波数を含む)の影響や安全への取り組みについて説明し、地域住民や周辺住民の理解を求めるよう努めなければならない。

6.地域住民や周辺住民に説明した時には、事業者は説明会実施報告書を市長に提出する。
以上

2022年06月21日 (火曜日)

横浜副流事件の弁論準備(法廷ではなく会議室で開く打ち合わせ)が、16日、テレビ会議の形で開かれた。原告の藤井敦子さんと古川健三弁護士は、横浜地裁へ出廷したが、被告(作田学医師、A家の3人)の片山律弁護士、山田義雄弁護士の両名はオンラインの形で出席した。被告の作田学医師とA家の3人は欠席した。

原告と被告の双方が準備書面と証拠を提出した。

◆約4500万円の金銭請求

この事件の発端は、既報してきたように2017年11月にさかのぼる。横浜市青葉区のマンモス団地に住む藤井将登さんが、同じ建物の斜め上に住むA家から、煙草をめぐる裁判を起こされたことである。将登さんが吸う煙草の副流煙で、「受動喫煙症」に罹患したというのが提訴理由だった。請求額は、約4500万円。A家は、将登さんに対して金銭請求だけではなく、自宅内での喫煙禁止も求めていた。

しかし、将登さんは自宅ではほとんど煙草を吸っていなかった。防音構造になった2重窓の「音楽室」で1日に2、3本吸う程度だった。それにミュージシャンという仕事柄、自宅を不在にすることが多く、煙の発生源自体がない場合もあった。たとえ副流煙がA家に流れ込んでいても、その発生源が将登さんであるという根拠はなかった。

裁判は、提訴から1年後に合議制(3人の裁判官が担当)になった。重大事件という認識が横浜地裁に生まれた結果である。

◆過去に25年の喫煙歴がある被告

新しい裁判体制になったのち、原告にとって不都合な事実が次々と明らかになった。

まず、原告一家のA夫に約25年の喫煙歴があった事である。提訴の時点では、A夫は非喫煙者だったが、過去に長い喫煙歴があったのだ。癌が再発して煙草を断った経緯がある。

さらに提訴の有力な根拠となった診断書の1通が、原告本人を直接診察せずに交付されていた事実が判明した。それは、A娘の診断書だった。この診断書を作成したのは、禁煙学の権威として名あり、影響力のある日本赤十字医療センター(東京都渋谷区)の作田学医師だった。日本禁煙学会の理事長でもある。

診断書交付の経緯は単純だ。A娘が体調不良で外出できなかったので、両親が日本赤十字医療センターへ足を運び、作田医師と面談して診断書交付に至ったのである。

その際、両親はA娘が他の医療機関から交付してもらった診断書を持参した。作田医師は、それを参考にし、さらには両親からA娘の症状を聞き取り、病名を「受動喫煙症」などと付した診断書を交付したのである。

横浜地裁は、2019年11月、Aさん一家の訴えを棄却した。そして作田医師による診断書交付行為を医師法20条違反と認定した。実際、作田医師とA娘は、何の面識もなかった。インターネットを使った面談も実施していなかった。それにもかかわらず作田医師は、診断書に「団地の1階からのタバコ煙にさらされ……」とあたかも現場を確認したかのような記述をしたのである。

※医師法20条:「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。」

◆裁判の「戦後処理」

A家の3人は東京高裁へ控訴した。しかし、東京高裁は2020年10月、控訴を棄却した。問題の診断書については、診断書の域ではなく、意見書にすぎないと断じた。(前訴の原告による証拠説明書によると、公式には診断書である。)

前訴は、将登さんの勝訴で終結した。

その後、藤井夫妻と支援者らは、裁判の「戦後処理」に入った。訴訟の濫用や不当訴訟のほう助に対しては、関与した者の責任を追及するというのが支援者らの方針だった。前訴が進行したいた時から、「反訴」を予定していた。

前訴の判決が確定した後、作田医師に対して2つの法的措置を取る段取りに入った。まず、最初は刑事告発である。藤井夫妻を含む7名が作田医師とA家の3人を神奈川県警青葉署に告発した。青葉署は事件を捜査して、作田医師を横浜地検へ書類送検した。しかし、地検は作田医師を不起訴とした。これに対して藤井さんらは、検察審査会に審査を請求した。検察審査会は、「不起訴不当」の議決を下した。その後、検察は2度目の不起訴を決めた。

事件は、その数日後に時効となった。しかし、検察審査会の「不起訴不当」の議決は、刑事告発の正当性を裏付けている。

今年3月に、藤井さん夫妻は「戦後処理」の次段階に入った。前訴を提起されたことで生じた損害を賠償させるための民事訴訟の提起である。事実的根拠のない診断書を基に高額の金銭請求を迫られ、経済的にも精神的にも損害を受けたというのが、藤井夫妻の主張である。

日本では憲法により提訴権の尊重が重視されているが、事実ではないことを根拠に裁判を起こしたり、勝訴の可能性がないことを認識しながら提訴に及んだ場合は、訴権の濫用になる。件数こそ少ないが、そのような判例がある。たとえば武富士事件である。NHK党事件である。

この点、A娘の診断書は不正確で誤診の可能性もある。A娘の症状は、心因性の疾患か知れない。また、たとえA娘が化学物質過敏症であっても、その原因が副流煙とは限らない。たとえば化合物イソシアネートは、化学物質過敏症の有力な要因で、米国では使用が厳しく規制されている。しかし日本では野放しになり、日常生活に入り込んでいるので、病因として考え得る。

化学物質過敏症の診断は難解を極めている。それにもかかわらず作田医師は、A娘に対して問診すらしていない。

作田医師がA娘を直接診察していないわけだから、診断書が不正確なものになっても不思議はない。

作田医師は前訴の原告ではないが、事実的根拠のない診断書を作成して、A家の代理人である山田弁護士に送付したわけだから、責任を免れない。しかも、裁判が始まると、A家のために意見書を繰り返し提出するなど、裁判そのものにも深くかかわった。意見書のなかで藤井家に対して喫煙を控えるように警鐘も鳴らしている。現地取材で事実を確認することなく、藤井家を副流煙の発生源と摘示して忠告しているのである。

◆A夫の喫煙歴を家族も認識していた

裁判の争点は複数に及ぶが、わたしは2点に注目している。まず、第一にA夫に約25年の喫煙歴があった事実である。A妻もA娘もそれを知っていた可能性が高い。当然、A妻とA娘は、A夫による副流煙による人体影響を受けている可能性が高い。しかし、それを認識していながら、A家の3人は、将登さんに損害賠償を求めたのである。

改めて言うまでもなく、作田医師の支援がなければ、こうしたことはできない。

◆診察・処方箋と診断書交付行為は別

第2の注目点は、前訴の判決が認定した作田医師による医師法20条違反を、裁判所がどう再評価するのかという点である。

作田医師の代理人、片山律弁護士は、準備書面(1)の劈頭(へきとう)で、同医師の無診察の診断書交付行為は、医師法20条違反には該当しないという主張を展開している。片山弁護士がこの主張の根拠としているのは、たとえば加藤義夫氏の『実務医事法第2版』である。片山弁護士の引用部分を再引用してみよう。

「治療の目的は、患者の症状に対する的確な診断がなされることにより、治療が適切に行われるようにすることにある。したがって、『診察』がなされたといえるために医師がどの程度のことを行うべきかは、初診か再診か、前回の診療時からの時間的経過、症状の重さ、緊急性等の具体的事情によって異なるといわざるを得ず、形式的に当該治療の際に診察がおこなわれなかったというだけで、同条に違反したものとは解すべきではない」

しかし、この記述は、無診察の処方箋についての解説である。診断書の「交付行為」について言及したものではない。

また無診察で行われた診断書交付を合法とする広島高裁の判決(昭和27年う台43)を持ち出しているが、このケースも作田医師のケースとは整合性がない。広島のケースは、医師が診断書を交付する直前に診察をしなかったことをもって不法行為とはいえないというだけで、それ以前に診察歴があるケースである。また、患者の症状もすでに固定していたので、診断を変更する必要もなかった。判決文の重要部分を引用しておこう。

【原典】診断書交付の当日診察した事実がないとしても、その前の診察の結果を医学的知識経験に照らし、これらか察して変化の予想されない場合、いいかえれば、人の健康状態に関する判断の正確性を保証し得る場合には、その都度診察しなくとも、前の診察の結果にもとづいて診断書を交付しても敢えても違法とはいえない。

しかし、作田医師の場合、A娘と面識すらなかった。寛容に解釈すれば、他の医師がA娘のために作成した診断書を「前の診察」と拡大解釈することも一応はできるかも知れないが、しかし、作田医師はA娘の診断を「受動喫煙症」のレベル3から4へ、1段階格上しており、その根拠が分からない。しかも、本人を問診することなくレベル判定を変えたのである。

広島高裁の判決は、見ず知らずの人、面識のない人の診断書を交付してもかまわないとは言っていない。通院歴のある患者を前提に記述されているのである。

さらに片山弁護士は、無診察の状態で薬剤を処方したことが医師法20条違反には該当しないとする判例(千葉地裁平成12年6月20日)を持ち出して、作田医師の場合も、この判例が適用されるべきだと主張している。しかし、この判決は、無診察を前提に診断書の「交付行為」を合法としたものではない。処方箋を合法とした判例である。事実、判例の解説にも、「(なお、診断書の作成等については本件の判旨外であるから以後触れない)」と記されている。

これら3件の引用は原典の趣旨を歪曲して、みずからの主張展開に利用したものである。引用の基本的なルールすら無視しているのだ。

◆最大の問題は不正確な診断書の交付

仮に面識のない患者の診断書を「交付」する行為が、医師法20条に違反しないとすれば、医療界に大変な混乱が生じるのではないか。秩序は崩壊して、嘘の診断書が独り歩きすることになりかねない。患者本人が知らないうちに、自分の診断書が交付され公務所へ提出されていたという事態も起きかねない。

今後、裁判の中で解明されなければならないのは、作田氏は何が目的で医師法20条に違反してまで、A娘の診断書を交付したのかという点である。これについては次の客観的な事実が参考になる。

A娘の診断書が交付された同日に、山田弁護士は将登さんに内容証明を送付した。その後、警察の捜査がはじまった。さらに、将登さんに対する高額訴訟へと発展した。診断書がこれら一連の行為の根拠になっていたことが、時系列から読み取れる。作田医師がA娘の診断書を交付した後、A家らの対処が過激になっているのである。

作田医師は、前訴の原告だったわけではないが、自身が作成した診断書が、その後の係争の引き金になっているのは、重い事実である。

なお、前訴までの経緯は、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)に記録している。

 

【初出は、デジタル鹿砦社通信】

2022年06月16日 (木曜日)

滋賀県大津市は、大津市民病院の新理事長に、滋賀医科大泌尿器科長の河内明宏教授(63)を内定した。同病院では、今年の2月ごろから次々と医師が退職に追い込まれる事態が続いている。

『京都新聞』(6月6日)によると、「これまでに京都大から派遣された」「医師ら計22人が退職意向、またはすでに退職したことが明らかになっている」。自主退職なのか、退職強要なのかは不明だが、大津市民病院から京都大学人脈を排除する意図があるとする見方もある。

現理事長の北脇城氏は、「女性ホルモンの研究と手術にあこがれて産婦人科医を志した」経歴の持ち主である。京都府立医科大の出身で、新理事長の河内医師とは同門である。

わたしは大津市の地域医療政策課に、今回の理事長人選の経緯を問い合わせた。これに対して副参事の職員は、次のように回答した。

「選任の経緯を記録した文書は存在しません。選任にあたり会議は開いていません」

誰かが独断で、河内医師を新理事長に決めた公算が高い。

◆岡本メソッドをめぐる滋賀医科大の攻防

わたしは2019年の冬から秋にかけて、滋賀医科大病院を舞台とするある事件を取材した。河内医師の名前を知ったのは、事件の関係資料を読んでいるときだった。事件のキーパーソンとして何度も「河内」に赤マーカーを付けた。河内医師の部下である成田充弘医師にも、赤マーカーを付けた。この師弟は後日、大津地裁の民事法廷に立たされることになる。河内医師は、患者からの刑事告発で書類送検もされている。

事件は、2014年にさかのぼる。放射性医薬品の開発・販売会社であるNMP社は、滋賀医科大に、小線源治療の寄付講座を設置したいと打診した。小線源治療は、前立腺がんに対する治療法のひとつである。放射性物質を包み込んだシード線源と呼ばれるカプセルを前立腺に埋め込んで、そこから放出される放射線でがん細胞を死滅させる治療法だ。1970年代に米国で始まった。その後、改良を重ねて日本でも今世紀に入るころから実施されるようになった。さらに滋賀医科大の岡本圭生医師がそれを進化させ「岡本メソッド」と呼ばれる高度な小線源治療を確立した。NMP社は、岡本メソッドに着目したのである。

【参考記事】前立腺がん、手術後の非再発率99%の小線源治療、画期的な「岡本メソッド」確立(ビジネスジャーナル)

NMP社は、寄付講座を泌尿器科から完全に独立させた形で運営することを希望していた。と、言うのも河内医師を科長とする泌尿器科は、ダビンチ手術に重点を置いていたからだ。医療技術の開発という寄付講座の性質上、縦の人間関係はむしろ障害になる。

NMP社は、岡本医師をリーダーとする体制を希望していた。塩田浩平学長もそれを承諾していた。

ところがこの方向性に難色を示した人物がいた。それが泌尿器科長の河内医師だった。しかし、河内教授の意向は受け入れられず、2015年1月に岡本医師を最高責任者として寄付講座が動き始めた。岡本医師は、泌尿器科から除籍となり、寄付講座の特任教授に就任した。滋賀医科大は、日本における小線源治療の本拠地を目指す構想をスターさせたのである。

だだ、塩田学長は、河内医師の心情にも配慮して、同医師を寄付講座の兼任教授に任命した。円満な大学運営を希望した結果のようだ。

◆同じ病院で小線源治療の窓口が2つに

河内教授は、自分の手腕で寄付講座を主導できないことがはっきりすると、新たな動きに出た。寄付講座の「岡本外来」とは別に、泌尿器科に小線源治療の窓口を設置したのだ。その結果、同じ病院内に小線源治療の窓口が2つ存在する状況が生まれたのだ。病院が来院患者にそのことを説明した上で、患者が窓口を選択する制度であれば医療倫理上の問題はないが、病院はそのような措置を取らなかった。

そのために窓口が2つになってから1年の間に、23人の患者が、秘密裡に泌尿器科の小線源治療に誘導された。その中には、手術は岡本医師が担当すると勘違いしていた人も含まれていた。

しかし、泌尿器科には小線源治療の専門医がひとりもいない。そこで河内教授は、部下の成田准教授に患者を担当させた。成田医師の専門はダビンチ手術で、小線源治療の経験はなかった。

成田医師は、シード線源を「第1号患者」の前立腺に挿入する手術の直前になって、岡本医師に支援を求めてきた。河内医師も、岡本医師に向かって成田医師を補助するように命じた。岡本医師は、この命令には従わずに、手術そのものを中止するように強く進言した。未経験の成田医師の施術が医療事故につながるリスクがあったからだ。

さらに岡本医師は、塩田学長に泌尿器科の小線源治療で患者が手術訓練に使われかねない事態が起きていることをメールで知らせた。

翌日、岡本医師は塩田学長から2通の返信メールを受け取った。

「(9:15分)先生からいただいた内容は、松末院長、村田教授にも知らせてあります。先生にはストレスがかかっていると心配しますが、必要以上に悩まれないようにしてください。山田(注:仮名)先生からも、心配してメールをいただいています。」

「(18:45分)今日、私は外出していましたので、私の懸念を伝えて、松末病院長に河内教授と話してもらいました。その報告を先程うけましたが、「泌尿器科は小線源治療には関わらない」ことで話がついた、とのことです。寄付講座の位置付けをはっきりさせること、現在泌尿器科に予約している患者への説明をいつするか、などについて、年明けに詳しく相談します。」

◆モルモットにされかけた23人の患者

泌尿器科による小線源治療が中止になったあと、泌尿器科に誘導された患者を岡本医師が担当することになった。被害者は23人。岡本医師が診察したところ、すさんな医療措置を施されていた事例が浮上した。たとえばシード線源を前立腺に挿入する手術の前段で、不要なホルモン療法を受けさせられた患者が見つかった。ホルモン療法により前立腺が委縮し過ぎて、手術するためには、もとの状態に戻るのを待つ必要が生じたのだ。

また、直腸がんの病歴があったために、もともと手術の適用ができない患者を通院させていた事実も明らかになった。この患者は、片道3時間の距離を8か月間、通院した。

被害にあった患者らは、患者会を結成して病院に抗議した。病院は医療過誤をもみ消そうとしたが、被害者らは謝罪を求め続けた。岡本医師は病院と患者の板挟みになったが、患者に寄り添う姿勢を示した。病院当局に対して被害者らに謝罪するように進言したのである。

このころから岡本医師と大学病院の間で亀裂が生じ始めていたようだ。病院にとって、患者会と岡本医師は、威風になびかない目障りな存在となったのだろう。2017年12月末をもって、寄付講座を終了すると一方的に宣言した。それに伴い手術後の経過観察のために通院していた患者らは、診療予約が取れなくなった。手術の順番を待っていた待機患者は、行き場を失った。あまりにも混乱の広がりが大きかったので、病院は寄付講座の終了時期を2019年12月末までの2年間延長した。ただし、手術はその半年前で終了とした。

岡本医師は、寄付講座が終了すれば失職する。寄付講座が始まった時点から所属が滋賀医科大ではなく、NMP社の寄付講座になっていたので、寄付講座が閉鎖されれば、どの組織とも雇用関係がなくなる。「岡本メソッド」消滅の赤信号が点滅し始めたのである。

◆カルテの不正閲覧から私文書偽造まで汚点の山

大学病院の強硬な姿勢に対して岡本医師の患者らは、反発を強めた。泌尿器科に囲いこまれた4人の被害患者が、河内医師と成田医師に対して説明義務違反を理由に損害賠償を求める裁判を起こした。同時に、患者会は寄付講座の存続を求める運動を本格化させた。JR大津駅のロータリーや滋賀医科大病院前で幟を立て街宣活動や署名活動を展開するようになった。

マスコミも徐々にこの事件を報じるようになり、滋賀医大は医療事件の表舞台へ浮上してきたのである。

こうした情況の中で大学病院は、岡本メソッドを誹謗中傷する方向へ走る。それは同時に、患者らが起こした裁判の抗弁対策だった可能性もある。

たとえば岡本医師がこれまで治療した1000人を超える患者のカルテ(電子)を閲覧して、医療ミスを探そうと試みた。この策略が取られていること分かったのは、カルテに閲覧歴が残っていたからだ。そいう電子カルテはそういうシステムになっているのだ。

閲覧者の中には、河内教授や成田准教授の名前は言うまでなく、病院の事務スタッフの名前もあった。彼らは、深夜や休日にも閲覧作業を行っていた。

しかし、法的な観点から言えば、カルテ閲覧に際しては、患者本人の承諾を得なければなれない。主治医は別として、第三者が勝手にカルテを閲覧することは禁じられている。しかも、「疑惑」がありそうなカルテ何通かを、病院外の医療関係者に送付して意見を求めていたのである。

また、病院が患者に対する記入調査を実施した際に所定の手続を取っていなかったことも分かった。この記入調査は、米国のFACT協会が版権を持つ「FACT-P」と呼ばれる前立腺患者を対象としたものである。患者会によると、病院はこの記入調査を寄付講座が始まった直後から、約3年に渡って実施していた。

しかし、実施に際しては、患者に対して事前説明を行い、同意を得なければならない。ところが患者らは、入院時と退院時に一種の義務のように記入を求められたという。

この点に関して患者のひとりが、河内医師に対して書面で問い合わせたところ回答があった。河内医師は、「記入していただいた調査票はカルテより削除させていただきます。以後、このようなことのないように各部署に徹底をいたします」と謝罪した。これを受けて、23名の患者が、病院に対して自分の調査票の開示を求めた。その結果、「退院時のものについては、23名全て、自署ではなく、他人が記名」(患者会のプレスリリース)していたことが分かった。また、「5名については、退院時調査票に、本人の考えとは異なることが記載されていた」ことが分かった。

このようなかたちで記入調査が実施された時期が、寄付講座が進んでいた時期と一致しているので、「患者は岡本医師の治療に満足していない」という証拠を集めることが目的だった可能性もある。

情報公開請求をした患者のうち5人が、この件を被疑者不詳で大津警察署に刑事告発した。罪名は私文書偽造だった。

大津警察署はこの事件を捜査した後、地検へ書類送検した。ところが不思議なことに地検から呼び出されて取り調べを受けたのは派遣会社の社員と非常勤の看護師だった。泌尿器科長の河内医師は何の責任も問われなかった。「被疑者不詳」で告訴したために、このような展開になった可能性が高い。

◆滋賀医科大から大津市民病院へ

大津市民病院の理事長に内定した河内医師は、滋賀医科大で起きた事件の中枢にいた。河内医師と成田医師を被告とした裁判は、原告患者の訴えが棄却されたが、判決は成田医師について「訴訟態度に影響された供述態度は、真摯に事実を述べる姿勢に欠けるものとして、その信用性全体を減殺する」と認定するなど、原告の主張をかなり認定した。岡本医師による「医療ミス」もまったく認定しなかった。

詳細には踏み込まないが、判決は河内医師が「岡本」の三文判を使って、文書を偽造したことも認定した。

原告の井戸謙一弁護士によると、原告敗訴の理由は、裁判所が「医師の説明義務の範囲を狭く限定」したことである。

岡本医師は2019年の12月末に滋賀医科大を離れた。その後、宇治病院(京都府宇治市)へ移籍し、1年半の準備期間を経て、2021年8月から小線源治療を再開した。岡本メソッドが蘇ったのである。

大津市は、河内医師が理事長に内定した経緯を調査すべきではないか。とりわけ滋賀医科大事件のグレーソーンは、再検証しなければならない。大津市民病院の理事長ポストをめぐる京都府立医科大の同門同士のタスキリレーも検証する必要がある。それはまたジャーナリズムの役割でもある。

※滋賀医科大事件については、拙著『名医の追放』に詳しい。

■初出;デジタル鹿砦社通信

2022年06月15日 (水曜日)

新聞業界と政界の癒着が表立って論じられることはあまりない。わたしは新聞社は、日本の権力構造の一部に組み込まれているという自論を持っている。新聞業界の業界紙『新聞之新聞』のバックナンバーを読んで、改めてそれを確信した。

次に紹介するのは、1998年1月6日付の記事である。タイトルは、「正念場 迎える新聞界」。全国紙3社の社長座談会である。この時期、公正取引委員会は加熱する新聞拡販競争や「押し紙」問題を理由に、新聞再販の撤廃を検討していた。

これに朝日、読売、毎日の社長が抗する構図があった。次に引用するのは、読売の渡邉恒雄社長の発言である。言葉の節々に新聞業界と政界の癒着が露呈している。日本が抱えてきた諸問題にメスが入らない原因と言っても過言ではない。日本にジャーナリズムが存在しない不幸を改めて痛感した。

渡邉氏の発言を読む限り、わたしの自論には根拠がある。以下、記事の引用である。

 

「政治家や日販協とスクラム組み運動」

97年中は再販は非常に危ないということで、我々は全力を挙げて闘ってきた。特に政界では新聞販売懇話会というのがあり、小渕恵三衆院議員が会長をしているが、小渕さんが外務大臣になったので、会長代行に中川秀直衆院議員、幹事長に山本一太参院議員がなってくれて、非常に応援してくれた。それから文部省が行政改革委員会・規制緩和小委員会の再販廃止論に対して強力な反論を展開してくれた。そういう応援があり、規制緩和小委員会の報告も「再販廃止」の文字を削らせた。あと公正取引委員会の規制研(政府規制等と競争政策に関する研究会)があるが、こちらも江藤淳さん、清水英夫さん、内橋克人さんらの文化人が、強力に新聞再販維持の発言をしてくれている。
 
 今年3月までに公取委としての結論を出すことになっており、どういう結論を出すか、まだ油断がならないが、自民党の方では政策的な実力者の山中貞則独占禁止法調査会会長が、私と松下さん(黒薮注:朝日新聞社長)、小池さん(黒薮注:毎日新聞社長)の3人が陳情した時に「絶対に再販は守る」と確約してくれている。再販を廃止するために独禁法の改正をしようとしても、自民党の独占禁止法調査会を通らなければ閣議にもでない。特に山中さんが反対している限り、大丈夫だという自信を持っている。

 しかし、そこまでこぎつけるのには、小池新聞協会会長を中心に我々が一生懸命、再販維持運動をやったんだが、そういうことにはほとんど無関心で、何も協力してくれなかったような県紙の社長さんたちが公取委へ行って、「朝日と読売が諸悪の根源である」と言うようなことを言った。それで私は腹を立てて、再販対策特別委員長を辞任したけれども、しかし会長を助けて再販を絶対に守るということに関して何らの変化はないので、一生懸命やってきた。私は、再販は少なくともこの2,3年は守れるという確信を持っているが、ちょっと手を抜けば危ないので、絶えず見守っていなければならない。

 それには日販協(日本新聞販売協会)を無視してはいけないと思う。新聞協会は編集を中心とする倫理向上、親睦(ぼく)のための団体である。ところが日販協は販売店主の組織ですから、自由な自営業者の団体であって、いろいろ政治運動もできる。日販協は東日本では相当組織力が高く、大会を開くと何十人という国会議員が集まってくれる。中部は、中日さんが日販協には加盟しないという、加藤(己一郎前会長)さん以来の社の方針だそうだし、いま大島(宏彦会長)さんを一生懸命くどいているところだけれども、加入していない。中国、四国、九州地域でも日販協の加盟店が非常に少ない。そんなことで再販は守れるのかと、私は言いたいね。

 あの地域の新聞社の社長さんたちが、一生懸命になって自分の選挙区出身の国会議員ぐらいはちゃんと説得してくれれば、再販維持運動も相当楽になる。そこにある意味では困難さが出てきている。

 日販協はかつて、再販維持のために500万人の請願署名を集めた団体ですから、あの力は大変なものですよ。新聞販売店は2万軒以上もあるが、主として東日本の店だけの組織になっている。この点は西日本の方の各県紙の販売店主の人たちにも反省してもらって、この戦いに加わってもらいたい。そうでないと、私は本当にバカバカしくなる心境ですね。

2022年06月13日 (月曜日)

ウクライナ戦争の客観的な構図を検証してみた。この紛争を検証する際の最も根本的な部分である。大前提である。

1991年にソ連が崩壊した後、NATO(北大西洋条約機構) の拡大は、急激に進んできた。ソ連が崩壊した際に、ソ連はワルシャワ条約機構を解体し、米国はNATOを拡大しないことを約束した。しかし、米国はこの取り決めを守らなかった。

ソ連の崩壊時点におけるNATO加盟国は、次の16カ国だった。

米国、カナダ、英国、アイスランド、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、ベルギー、ルクセンブルグ、ギリシャ、トルコ、

ソ連が崩壊した後、次の14カ国が加わった。

 ハンガリー、チェコ、ルーマニア、ブルガリア、ポーラインド、エストニア、スロバキア、スロベニア、ラトビア、リトアニア、モンテネグロ、アルバニア、クロアチア、北マケドニア

そして今またフィンランドとスェーデンの2か国が新たに加わろうとしている。米国がNATOを拡大したことは客観的な事実である。西側報道には、この肝心な部分が欠落している。

ウクライナ戦争の根本的な原因を作ったのは米国である。だからと言ってロシアがウクライナに対して軍事侵略してもいいことにはならないが、戦争を誘発したのはまぎれなく米国である。

西側報道には、プーチンの狂気が戦争の引き金になったとする論調が際立っている。しかし、これは歴史を動かす原動力が政治家個人の資質と考える観念論の歴史観である。ある種の英雄史観である。プーチン個人が失脚すれば、問題が解決するといった単純な発想がある。

しかし、プーチンが失脚しても、しなくてもNATOが拡大している客観的な事実に変わりはない。戦争の原因としては、むしろこちらの方が重い。ジャーナリズムは、政治家個人に対する記者の主観的な評価よりも、歴史上の客観的な事実をより重視すべだろう。

 

2022年06月11日 (土曜日)

予期せぬかたちで滋賀医科大事件の第2幕が始まった。

滋賀県大津市は、6月6日、滋賀医科大の泌尿器科長、河内明宏教授(63)を新しい理事長に内定したと発表した。同病院では、京都大学系列の医師らが次々と退職して混乱が広がり、前理事長が引責辞任した。空白になった椅子を河内教授が占めるかたちとなった。

この人事の背景に何があったのかを、わたしは現時点では把握していない。しかし、河内教授の履歴についてはかなり知っている。滋賀医科大事件を取材する中で、事件の核心的人物であることが分かった。

滋賀医科大事件というのは、前立腺がんの小線源治療で海外でも高く評価されている岡本圭生特任教授(当時)を、滋賀医科大から追放した事件である。

【参考記事】前立腺がん、手術後の非再発率99%の小線源治療、画期的な「岡本メソッド」確立

事件が進行する中で、河内教授が人事関係の公文書を偽造していた事実が判明した。起訴こそ免れたが、書類送検された。

私文書(患者に対する記入調査)も偽造していた。これについては患者に謝罪した。しかし、患者らは刑事告訴に踏み切った。

ところが、被告発人の欄を「被疑者不詳」にしていたために不測の事態となった。非正規職員の女性らが、容疑者として警察や検察の取り調べを受けたのだ。

河内教授が責任を非常勤職員らに押し付けた可能性が高い。

岡本特任教授の患者のカルテを無許可で大量に閲覧していたことも発覚した。小線源治療をバッシングすることが目的だったようだ。

大津市民は、河内教授の理事長就任をどう受け止めるのだろうか。

滋賀医科大事件は風化していない。『名医の追放』(緑風出版)に記録している。

※詳細は、来週に公開されるデジタル鹿砦社通信。

■滋賀医科大事件に関する全記事  

 

人命よりも経済を優先する電話会社の方針が露骨になっている。際限なく事業を拡大して、小学校の児童にまで電磁波による健康被害のリスクが及んでいる。

5月29日、わたしは朝霞第二小学校(埼玉県朝霞市)の正門前で、通信基地局から放射されているマイクロ波の測定を実施した。マイクロ波は、携帯電話の通信に使われる電磁波で、人体影響が懸念されている。特に幼児に対する影響が深刻とする見方があり、欧米では学校などで、年少者が携帯電話を使用することに一定の制限を設けている国もある。

そんなこともあって、わたしは自宅近くの朝霞第二小学校でマイクロ波を測定することにした。測定の結果、危険領域に入る数値が測定された。

マイクロ波の値は、μW/c㎡などで表示することになっている。数値が高ければ高いほど人体への影響が懸念される。そのことを念頭に以下、①日本の総務省が定めている規制値、②朝霞第二小学校の正門前の測定値、③欧州評議会の勧告値を紹介しよう。

①総務省の規制値:1000μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)

②朝霞第二小学校の測定値:7.35μW/c㎡

③欧州評議会の勧告値:0.1μW/c㎡

※測定に使ったのは、TM195という測定器である。この測定器でカバーできる電磁波の周波数領域は3GHzまでなので、5Gのマイクロ波やミリ波が使われていれば、測定値はさらに高くなる可能性がある。

※通信基地局から発せられる電磁波は、様々な周波数のものが混合されている。変調電磁波と呼ばれ、マイクロ波は言うまでもなく、厳密にいえば、低周波の電磁波も交じっている場合が多い。デジタルで瞬間的に高いエネルギーを放出する。それを延々と繰り返す。【続きはデジタル鹿砦社通信】

2022年06月04日 (土曜日)

 わたしが住んでいる集合住宅で、建設会社がウレタン樹脂を使った防水工事を実施している。窓を開けるとペンキのような臭いが入ってくる。

ウレタン樹脂には、イソシアネートという猛毒の化合物が入っている。化学物質過敏症を引き起こす化学物質の代表格で、米国では国の諸機関が使用に厳しい条件を付けている。(冒頭の図を参照)。これに対して日本政府は、野放しにしている。何の規制もしていない。

防水工事を見てわたしが驚いたのは、作業員が普通の布マスクしか使っていないことである。本来は毒ガス用のマスクが必要だ。作業員の中には外国人も多数交じっている。布マスクでは、作業員たちは、数年後に確実に病気を発症すると思った。

しかし、企業にすれば、現在の法律の下では、違法行為を働いているわけではない。将来、作業員が廃人になっても、何の責任もない。「労働者の使い捨て」とはこのことである。

◆◆

数年前、「バナナの逆襲」という映画が話題になった。米国の多国籍企業、ドール社がニカラグアで経営していたバナナ農園で働いていた労働者らが、雨のように除草剤を浴びた結果、無精子症になり、米国の辣腕弁護士の支援を得て裁判を起こすドキュメンタリーである。

農薬による被害は、グアテマラのコーヒー農園でも起きている。幼児が死亡するなどの事故が起きている。リゴベルタ・メンチュー著、『私の名はリゴベルタメンチュー』がそれを記録している。

化学物質をめぐるこれらの状況は、時空と地理を飛び越えて、まったく同じである。かつての軍事独裁政権の国も、現在の日本政府も人命を軽視している。大企業にとっては、企業天国である。人命が虫けらのように軽くなっている。

※イソシアネートについては、次の記事に詳しい。

2022年06月02日 (木曜日)

新聞の部数減に歯止めがかからない。新聞業界は急坂を転げ落ちている。

2022年4月度のABC部数が明らかになった。それによると、朝日新聞は、1年間で約45万部を失った。読売新聞は、1年間で約30万部を減らした。産経新聞と日経新聞も減部数が顕著で、それぞれ約18万部、12万部を失った。

中央紙のABC部数は次の通りである。

朝日新聞:4,287,575(-452,152)
毎日新聞:1,923,000(-88,012)
読売新聞:6,835,307(-304,364)
日経新聞:1,743,988(-120,671)
産経新聞:1,014,825(-179,321)

なお、ABC部数には、残紙(「押し紙」、あるいは「積み紙」)が含まれているので、実際に配達している部数はさらに少ない可能性が高い。新聞販売店からは、「夕刊配達は採算が取れない」との声も上がっている。それにもかかわらず新聞社からは、新聞拡販を強化するように指令が下されているという。

夕刊廃止も時間の問題ではないか。

なお、現在の新聞発行部数の世界一は、ニューヨークタイムスである。電子版で大幅に読者を増やしている。英語メディアの強みである。日本の新聞の発行部数が自己申告の信用ならぬものであることが、既に海外に伝わっていることを示す兆候も表れている。

 

新世代公害の代表格といえば、化学物質による汚染と電磁波による汚染である。両者とも汚染が自覚できるとは限らず、透明な牙が知らないうちに人々の体を蝕んでいく。医学的根拠は迷宮の中。電話会社はそれを逆手にとって、「危険という確証はない」との詭弁をかかげて、大規模な電話ビジネスを展開している。NHKなどのマスコミがそれを全面的にサポートする。が、その裏側では、健康被害が広がっている。

東京都目黒区中央町は、中層ビルと民家が広がる都市部の住宅街である。最寄り駅から都心の渋谷まで5分。利便性が高い静かな街である。その街で楽天モバイルの基地局をめぐる係争が起きている。事業拡大に走る楽天と、生活環境を守りたいある女性のトラブルである。

両者の攻防は、わたしの眼には、かつて海外でエコノミック・アニマルと呼ばれた日系企業と現地住民の対立のように映る。外部から侵入してきて、開発と文明化を口実に資源を収奪する「よそ者」と、被害者意識と憎悪を抱く住民の壁である。日本製品に対する不買運動も起きた。

楽天モバイルとと女性の対立にも同じような構図がある。

伊藤香さんは、自宅の一部を改造して「はなちゃんカフェ」を主宰している。「はなちゃんカフェ」とは、化学物質過敏症や電磁波過敏症に悩む人々を救済するための憩いのサロンである。

2017年12月19日、伊藤さんの愛猫、はなちゃんが息を引き取った。化学物質による複合汚染が引き金だった。とりわけ猛毒のイソシアネートがはなちゃんを直撃したようだ。米国では厳しく規制され、日本では野放しになっている化合物である。化学物質過敏症の代表的因子である。

◆化学物質の透明な牙

発端は、2012年10月だった。この日、伊藤さんの自宅には、朝から作業員らが入り、床のフロアマニュアル(保護コーテイング)の剥離作業をはじめた。その数日前から伊藤さんは体調を崩していて、自宅で療養していた。剥離作業で使う化学薬品の匂いが家中に充満していたが、特に気にかけることはなかった。しかし伊藤さんは、剥離剤に含まれている化学物質を大量に吸い込んでいたのである。

午後になって体調の異変を感じた。頭痛や吐き気、それにめまいを感じたので、自宅のはす向かいにある目黒病院で点滴を受けた。しかし、この時も自分の体内で恐ろしいことが起きているという自覚はなかった。

作業員らは、次の日も剥離作業を続けた。しかし、工事はうまくいかなかった。伊藤さんによると、床が浸水するほど大量の剥離剤を使っていたという。

それが伊藤さんの家族全員が化学物質過敏症を発症した原因だった。作業員らも被曝・発病した。はなちゃんは、餌を受け付けなくなった。下痢が続き喀血した。そしてほとんど動かなくなった。水俣病が輪郭を現わしてくる時期、狂った猫が現れたように、化学物質は最初に弱者を襲う。しかし、企業の論理は医学的な根拠が分かるまでは事業を続けるというものだった。それが後日、水俣病の被害を拡大した。

伊藤さんは、25日になってようやくホテルに避難した。東京都や地元の保健所などから、猫の症状に鑑みて、強く避難を勧められたからだ。工事を請け負った業者が、責任を自覚してホテルを手配した。【続きはデジタル鹿砦社通信】