2013年08月19日 (月曜日)

ジャーナリストの田中稔(『社会新報副編集長』)氏が、白川司郎氏から6700万円の損害賠償を請求されていた「原発フィクサー」裁判は、原告の白川氏が8月12日、東京地裁に対し裁判の取り下げを申し立てたのを受け、田中氏がそれに合意したことで結審した。19日には、白川氏の本人尋問が開かれる予定になっていたが、裁判が終わったことでそれも中止になった。

発端は、『週刊金曜日』誌上に田中氏が執筆した「『最後の大物フィクサー』白川司郎氏 東電原発利権に食い込む」と題する記事。

記事の中で田中氏が使った「フィクサー」、「利権に食い込んだ」などの表現が、白川氏の名誉を毀損したというのが、原告の主張だった。  ちなみに白川氏がターゲットにしたのは田中氏だけで、記事を掲載した『週刊金曜日』は訴外とした。編集部サイドに対する訴訟行為は控えて、記事の制作にかかわった一個人だけに的を絞って高額な賠償金を請求したのである。 ? また、白川氏の代理人を務めたのは、第二東京弁護士会に所属する土屋東一弁護士(元検事)である。

◇小泉構造改革の中の司法制度改悪  

今世紀に入ってから大きな問題になっている社会現象のひとつに、スラップ(SLAPP)がある。スラップとは、端的に言えば、メディアや住民運動体に対して、訴訟を提起することで、言論や運動を委縮させる行為を言う。厳密に定義すると次のようになりる。

公に意見を表明したり、請願・陳情や提訴を起こしたり、政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ、威圧し、 苦痛を与えることを目的として起こされる 報復的な民事訴訟のこと。(スラップ情報センター)

SLAPPという言葉から推察できるように、この「戦略」は米国で生まれたものである。皮肉なことにその米国にはSLAPPを取り締まる法律があるが、日本の裁判官は、SLAPPという概念すら持ち合わせていない。その結果、今世紀に入るころから、メディアや住民運動に対するSLAPPが続発している。

以下、SLAPPの具体例を明記するが、法廷でSLAPPが認定された例は存在しないわけだから、第三者から見てSLAPPと判断できる訴訟である。(ただし、訴権の濫用が認定された例はある。)

1、武富士VS三宅勝久他

2、安部晋三の秘書VS山田厚史

3、R総連VS西岡研介

?4、オリコンVS烏賀陽弘道

5、読売VS黒薮哲哉

6、講談社の社員 VS MyNewsJapan

7、ユニクロVS文藝春秋

8、レコード会社31社VS穂口雄右

9、白川司郎VS田中稔

ここにあげたのは、メディア界でよく知られている裁判で、住民運動に対するSLAPPを含めると、かなりの件数にのぼる。意外に知られていないが、1990年代には、携帯電話会社が基地局を設置する際に、住民を工事妨害などで訴えた事例もある。

「1」から「9」の事例についていえば、極めて興味深い事実がある。「1」「5」「9」の裁判で、第2東京弁護士会や自由人権協会の弁護士が、原告の代理人として裁判かかわっている事実である。

具体的には、弘中惇一郎、喜田村洋一、土屋東一の各氏である。さらに、穂口雄右氏の代理人を務めているTMI総合法律事務所には、最高裁の元判事3名が退官後、再就職(広義の天下り)している。

こうした現象の背景に、小泉構造改革=新自由主義導入の枠組み中で、内閣が主導するかたちで着手された司法制度の改悪がある可能性が強い。(続)

◆参考記事:最高裁判事の半数が天下り 法律事務所に30人中10人が再就職、癒着の温床に

2013年08月16日 (金曜日)

ディベート(debate)とは、あるテーマについて対立する見解を公衆の前で戦わせるイベントのことである。よく知られている例としては、米国の大統領選挙で、民主党候補と共和党候補が、ディベートを開催する。有権者はそれを参考にして、投票する候補を選ぶ。

現在、環境問題に関心を持っている人々にとって、最も注目に値するテーマのひとつに携帯電磁波を長期間にわたって被爆した場合に生じる人体影響をめぐる議論がある。

日本政府は、携帯電磁波を浴び続けても人体影響は生じないという立場から、電波防護指針を1000μW/c?という高い数値に設定している。

これに対して、ヨーロッパ諸国は、携帯電磁波の長期間的影響が否定できないとする立場から、電波防護指針を極めて低い数値に設定している。たとえば次の通りである。

UEの提言値:0.1μW/c?

ザルツブルグ市の目標値:0.0001μW/c?

日本の電話会社が日本の規準(1000μW/c?)に基づいて基地局の操業を続けていることは周知の事実である。もっとも、実際には1000μW/c?といった値が測定されることはありえないが。

こうした状況の下で、携帯電磁波は安全か、否かという興味深いディベートが、日本を代表する電磁波問題の研究者・荻野晃也氏とソフトバンクの間で、実現する可能性が浮上してきた

◇「黒い雨」と「電磁波の雨」  

発端は、長野県北部に位置する坂城(さかき)町で勃発した基地局問題である。同町は人口1万5000人。千曲川の流れに沿う空気が澄んだ町である。  駅舎を出て、急勾配の道路を登っていくと、緑の樹木の間にかいま見えるふもとの集落が徐々に遠のいていく。

標高1000メートルの地点で、有機農業者・大内英憲さんをはじめ、数名の人々が住居をかまえ、農業を営んでいる。ここは開発の波をくぐりぬけてきた自然が豊富な入植地である。

ところがこの集落にソフトバンクが高さ30mの鉄塔式の携帯基地局を設置する計画が浮上した。大内さんをはじめとする周辺住民や隣地地権者、町内の支援者の反対で、計画は一旦、白紙化の可能性が濃厚になったと思われたが、7月になってソフトバンク側は、基地局の設置計画推進を宣言した。

山の上から下の町に向けて、携帯電磁波を放射しようというもくろみである。原爆の「黒い雨」ならぬ、「電磁波の雨」を下の町に降らせる可能性が浮上したのである。

基地局が稼働した場合、大内さんはじめ基地局の間近に住む住民が最も大きな影響をうけることになる。しかし、基地局設置場所の土地を所有する家族が、ソフトバンクの計画に理解を示したのだ。

電磁波の危険性について、長野県有機農業研究会を通じて知識を得ていた大内さんは、携帯基地局公害を発信し続けてきた、会員の竹内恵子さんに相談した。さらにわたしに対しても支援要請があった。

わたしと竹内さんの共通の知人である荻野氏に、坂城町の状況を説明したところ、「荻野晃也VSソフトバンク」のディベートを開催して、坂城町の人々に基地局の設置を認めるかどうかを判断してもらおうという案が浮上したのである。

そこで、先月7月28日、公開討論申入書をソフトバンクの孫社長らに送付した。ソフトバンクの回答期限は8月10日であるが、現在(8月16日)の時点で回答は届いていない。

仮に公開討論が実現すれば、インターネットで全国中継する意義がある。

ちなみにソフトバンクの孫社長は、原発には反対する姿勢を明確にしている。その一方では、全国各地に基地局を設置し、住民との間に多数のトラブルを引き起こしている。ソフトバンクが多国籍企業化する中で発生している事業拡張の影である。

(参考記事:馬奈木昭雄弁護士・講演要旨『人体実験を許すな。?携帯電磁波の危険性?』)

■基地局問題に対する情報提供は

電話:048?464?1413(黒薮まで) ? メール:xxmwg240@ybb.ne.jp

2013年08月15日 (木曜日)

なぜ携帯基地局の設置場所として、老人ホームの屋上が候補地になるのだろうか。推測になるが、それは高齢者の多くに電磁波と健康被害についての知識がないことが多いからだ。また、反対運動を組織する体力に欠ける人が大半であるからだ。つまり弱者が狙われているのだ。

神戸市、世田谷区、そして本サイトで報じている目黒区で同じような問題が発生している。

携帯基地局からは、マイクロ波と呼ばれる電磁波(電波)が放出される。マイクロ波は、原発のガンマ線や医療現場のエックス線と同様に放射線の仲間である。出力が同じであれば、周波数が高いほど、破壊力がある。ガンマ線が恐れられ、エックス線に注意が促されるゆえんにほかならない。

が、マイクロ波については、その危険性が認識されていない。確かに、ガンマ線やエックス線のように強い遺伝子毒性はないが、これを延々と浴び続ければ、人的影響は避けられないのではという懸念が広がっている。ドイツなど海外の疫学調査では、基地局周辺で癌の発症率が高いという結果が確認されている。

1ヶ月や2ヶ月で影響が現れなくても、5年、10年とマイクロ波に被爆した場合は話が違う。体に影響が現れても不思議はない。

言うまでもなく、老人ホームでは高齢者たちが生活している。年齢を重ねるにつれて、外出の機会も減るので、ますます被曝のリスクは増える。

一般論から言えば、電磁波の強度は、アンテナの直下よりも、周辺の方が強い。しかし、街中にはビルが林立しているので、電磁波が反射することが頻繁で、どの位置で電磁波が最も強くなるかは、実際に測定してみなければ分からない。

もちろん基地局が立ったマンションの住民が深刻な健康被害を受けた例は実際にある。沖縄の新城医師の例である。

(参考記事:携帯電話基地局について)

◇携帯基地局の設置に規制を

さて、目黒区のグランダ八雲のケースは、ビルの所有者とホームの経営者が異なるという特徴がある。

ビルのオーナー  :藤田商店(日本マクドナルドの創業者)

老人ホームの経営者:ベネッセ

電話会社:NTTドコモ

改めて言うまでもなく、基地局の設置を予定しているのは、NTTドコモである。この場合、法的に見れば、NTTドコモは藤田商店の承諾を得れば、基地局の設置が出来ることになるらしい。(厳密な事は不明)

実際、トラブルが発生した後、ベネッセは、住民の共同代表に対して、次のようにみずからの立場を説明している。内容証明を引用してみよう。

弊社は、藤田商店よりホーム建物を貸借している立場であり、本来、本計画に関する判断自体に関与できる立場にはないものの、ホーム運営者として本計画に反対する旨の意向を示してきたという状況でございます。

ホームの入居者に確認したところ、ベネッセの主張は真実である。実際、基地局が立ったところで、ベネッセには何のメリットもない。入居者の健康被害が発生すれば、対処しなければならないので、職員の仕事も増える。かりに入居者が施設から退去する事態に至れば、金銭の補償問題も浮上してくるだろう。

このような複雑なトラブルこそ、政治家が先頭に立って解決すべきことであるが、基地局問題についての認識が浸透していないのが現状だ。もっと国会議員の数を増やし、住民の参政権を広げていくことが解決への道だ。

携帯基地局の設置は、厳しく規制しなければならない。

2013年08月14日 (水曜日)

緊急のお知らせ

先日、本サイトで発生していた不具合(会員読者が会員限定画面にログインしようとすると、契約期間が切れた旨の表示が現れて、ログインできない)の修正を完了しました。その後、読者の方からKOKUSYO宛てに、再度、同じ不具合が発生したとの連絡がありました。

会員読者の方は、会員限定画面にログインできるか否かを確認するようにお願いします。不具合が発生している場合は、お手数をかけますが下記までご連絡ください。

メール:xxmwg240@ybb.ne.jp

電話 :048?464?1413

本サイトの「お問い合わせ」欄の使用は、しばらく控えるようにお願いします。先日、送付されたメールが届いていないことが判明しました。 情報提供と連絡は次のメールへお願いします。

メール:xxmwg240@ybb.ne.jp

KOKUSYOに対してカンパしていただいた皆様には、ジャーナリズム活動支援に対してこの場でお礼を申し上げます。ありがとうございました。

2013年08月13日 (火曜日)

ある朝、ベランダに通じる戸を開けると、向かいのマンションの屋上に立った見慣れない棒状の物体が視界に飛び込んでくる。グロテスクな印象があるが、それを何であるかは分からない。そのうち頭の中でセミが鳴いているような感覚に襲われ始める。頭痛がする。夜中に目が覚めるようになる。

近くの主治医に足を運び、血液検査をしたり心電図を取るが何の異常もない。結局、単なる体調不良だと思い、そのまま放置してしまう。

こんな体験がある読者は少なからずいるのではないか。ようやくグロテスクな物体の正体が携帯電話の基地局であることや、携帯電磁波の影響で健康被害が多発していることを知り、電話会社に抗議の電話をするが、「国が定めた電波防護指針の規準を守ってやっています」とそっけなく言われる。これもいまや当たり前の光景になっている。

携帯基地局が新たに設置された地区の人々に、

「基地局が設置される前は、携帯電話が通じなかったのですか」

と、尋ねてみると、たいていは「通じていた」という返事がある。

それにもかかわらずなぜ、次々と基地局が新設されたり、既存の基地局に、住民に通知することもなく新たな機能が加えられるのだろうか。推測になるが、スマートフォンやワイヤレス・ブロードバンドの爆発的な普及がその背景にあるようだ。

◇電話会社はリスクを知っている  

多くの住民は電話会社の対応テクニックにも感づいている。彼らは、携帯基地局の危険性を住民から指摘されても、「安全です」とか、「人体影響はありません」とはめったに言わない。その代わりに、「国の安全基準を順守しています」と答える。オウムのように何度も繰り返す。

それでも住民側が引き下がらなければ、

「それでは電磁波の測定をしましょう」

と、来る。そして実際に電話会社の社員が、高周波の測定器を持参して、係争の的になっている基地局にやってくる。数日後、測定結果がでる。

ちなみに安全基準の国際比較は次の通りである。

日本:1000μW/c? ?

?UEの提言値:0.1μW/c?

ザルツブルグ市の目標値:0.0001μW/c?

電話会社が測定した結果、たとえば1μW/c? という数値が出たとする。すると会社員は、誇らしげに、

「われわれは国の規制値の1000分の1で操業しています」

と、言う。が、日本の規制値そのものが異常なのだ。

(規制値がおかしい理由については、黒薮執筆の次の記事を参照=ここをクリック)??

◇株主には電磁波のリスクを通知

しかし、電話会社も株主に対しては、電磁波問題のリスクを開示せざるを得ないようだ。次に示すのは、NTTドコモの株主向け情報の一部である。

「研究や調査が進むなか、当社グループは積極的に無線通信の安全性を確認しようと努めておりますが、更なる調査や研究が、電波と健康問題に関連性がないことを示す保証はありません。」

(出典は、次のリンク先の【12】=ここをクリック)

本来、電磁波が健康被害をもたらするリスクがあるのなら、安全性が確認できるまでは、操業しないのが、公害防止の原則である。ところが日本の電話会社は、電磁波と健康被害の因果関係が科学的に立証されるまでは、基地局を操業してもいいと考えている。

しかし、それでは公害を防ぐことはできない。公害では、健康被害の事実を最優先しなければならない。

2013年08月12日 (月曜日)

2013年08月09日 (金曜日)

東京目黒区にあるベネッセが経営する老人ホーム「グランダ八雲」の屋上にNTTドコモが携帯基地局を設置する計画に反対する住民運動は、新しい段階に入った。住民側は、8月5日、公式に携帯基地局の設置に反対する運動体「携帯電話基地局設置に反対する八雲町住民の会」を立ち上げた。

NTTドコモがお盆明けに、基地局の設置工事に着手すると通告してきたことに対抗して、「住民の会」は、8日、NTTドコモの加藤薫社長などに内容証明郵便で説明会の開催や住民の合意を得ずに工事を強行しないように申し入れた。

「住民の会」が内容証明を送付した団体は、次の通りである。

NTTドコモ

藤田商店(地権者で日本マクドナルドの創業者)

ベネッセ(ホームの経営社)

目黒区長

東京都知事

総務大臣

目黒区長の青木英二氏ら行政関係者に対しては、NTTドコモに対する指導を要請した。

このところ老人ホームの屋上に携帯基地局を設置しようとしてトラブルになるケースが相次いでいる。目黒区の他に、世田谷区や神戸市でも同じ問題が発生している。

老人ホームが狙われる背景には、基地局から得る賃貸料により、ホームの経営を効率化する方針があるようだ。また、高齢者が反対運動を組織することがなかなか難しい事情も、ターゲットにされる背景のようだ。

「住民の会」がNTTドコモ宛てに送った内容証明は次の通りである。

 

平成25年8月8日

東京都千代田区永田町2丁目11番1号

株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ 代表取締役社長 加藤 薫殿

 わたしたちは、東京都目黒区八雲2丁目および3丁目の住民でつくる「携帯電話基地局設置に反対する八雲町住民の会」の共同代表を務めている者です。

現在、貴社は同地区にある老人ホーム・グランダ八雲(目黒区八雲3丁目4番21号)の屋上にNTTドコモとベネッセと共同で携帯電話の基地局を設置する計画を進めておられ、入居者や周辺住民の間から、携帯電磁波による健康被害の発生を懸念する声が上がっています。つきましては両者間のトラブルを回避すべく、貴社に対して基地局設置に際しては、説明会を開催し、住民の了解を必ず得ていただくことを要請します。

携帯電話の基地局から放射させる携帯電磁波による人体影響は、近年、大きな問題になっており、2011年5月、世界保健機構(WHO)の傘下にあるIARC(国際がん研究機関)も、携帯電磁波を含む高周波電磁波に発癌性がある可能性を認定しました。

実際、携帯電磁波による健康被害は、遺伝子毒性が引き金と推測されている癌だけではなくて、多種多様な病的所見が問題になっています。たとえば宮崎県延岡市の大貫地区にあるKDDI基地局の周辺では、住民らの間に、耳鳴り、不眠、鼻血といった症状が現れ、このうち30名が原告団を結成して、基地局の操業を差し止める裁判を起こしています。地裁判決では、電磁波と健康被害を関連づける医学的な立証ができないことを理由に、住民側の訴えを棄却しましたが、体調の異変が広範囲で発生している深刻な事実は裁判所も認定せざるを得ませんでした。

なお、貴社も周知かと思いますが、電波の安全基準は、日本では1000μW/ cm2と極めて緩やかで、たとえばEUの提言値0.1μW/ cm2と比較すると、1万倍も緩やかなものに設定されています。これでは一方的に基地局を設置され、人体影響が現れた場合、住民が納得するはずがありません。

こうした状況の下で、日本弁護士連合会は2012年9月に、「電磁波問題に関する意見書」を取りまとめ、その中で「携帯電話中継基地局等の電磁波放出施設を新設する場合、当該基地局周辺の住民に対する説明を行った上、新設することの是非について住民との協議を行う制度の実現を図るべきである」と述べています。

 また、総務省の総合通信基盤局・長有冨寛一郎氏は、2005年4月26日、政府参考人とし国会で、「携帯電話用基地局の設置に際しては、地域住民の方の理解を得るべく最大限努力するように要請をしたところでございます。とりわけ、地域住民の電波の安全性に対する不安等を除くということが必要である」と答弁されています。

わたしたち目黒区八雲2丁目および3丁目の住民が携帯電磁波に不安を抱くのは当然の道理であります。一旦、基地局が設置されてしまうと、住民は365日、絶えず携帯電磁波のシャワーを浴びることになります。

 貴殿におかれましては、重ねて八雲2丁目および3丁目の住民に対してトラブルを回避すべく、説明会を開催すると同時に、住民の合意を得ずして工事を強行せぬよう強く要請します。

 

 

■参考記事(マイニュースジャパン:NTTドコモがベネッセ経営の高級老人ホームに携帯基地局設置を計画、生活破壊リスク負わされる入居者と周辺住民)

■基地局問題に関する情報提供は黒薮までお願いします。 ? (xxmwg@ybb.ne.jp??? TEL 048-464-1413)

2013年08月08日 (木曜日)

第2次真村裁判の高裁判決を検証する作業を続けよう。意外に見過ごされがちだが、この判決には、日本語文法の誤りもある。それが原因で意味が曖昧になり、「おそらく、・・・・の意味だろう」と推測した上で、他の記述との整合性を考え、意味を組み取らざるを得ない箇所があるのだ。改めて言うまでもなく、判決文がどうにでも解釈できるようでは、さまざまな不都合が生じてくる。特に敗訴した側はたまったものではない。

日本語文法の誤りは、赤字で表示した次の箇所である。

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もないかえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)??

そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。??

??? そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。?

「控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない」という箇所である。「おいて」の使い方が間違っているのだ。この部分は、おそらく次のような意味である。

・・・控訴人(真村)及び黒薮は、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由があると認められる証拠を示していない。

文法だけではなく、内容も間違っている。青字の部分に注目してほしい。

◇1次裁判は「押し紙」の存在を認定

「26区」というのは、「『押し紙』は一部も存在せず、販売店に搬入された新聞はすべて配達されている」という建前を法的に裏付けるために、真村さんがパソコン上に設けた架空の配達区である。もちろん「26区」には、架空の(「押し紙」)読者が登録されていた。

こうして販売店に搬入された新聞は、すべて配達され、1部の「押し紙」も存在しないという状況の法的根拠を打ち立てたのである。ただし、だれがこのような策を指導したかは不明だ。

真村さんは、裁判の中でこのような操作をしたことを第1次裁判の中で認めている。当然、読売に対して義務づけられていた部数内訳の報告も、「26区」の部数が反映されていた。しかし、1次裁判の裁判官は、

新聞販売店が虚偽報告をする背景には、ひたすら増紙を求め、減紙を極端に嫌う一審被告の方針があり、それは一審被告の体質にさえなっているといっても過言ではない程である。

と、認定したのである。さらに、

定数(黒薮注:搬入部数のこと)と実配数が異なることを知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎としているという態度が見られるのであり、これは、自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢であると評されても仕方のないところである。そうであれば、一審原告真村の虚偽報告を一方的に厳しく非難することは、上記のような自らの利益優先の態度と比較して身勝手のそしりを免れないものというべきである。

と、事実上、「押し紙」の存在と読売の責任を認定しているのだ。

つまり木村元昭裁判官が書いた「控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない」は、文法だけではなく、内容についても完全な誤りである。支離滅裂な判決文なのだ。

■参考:第1次真村裁判・福岡高裁判決??

2013年08月07日 (水曜日)

時事通信のニュースによると、福岡高裁の部総括判事で真村裁判や黒薮裁判など、読売関連の裁判を担当してきた木村元昭裁判官が、福岡家裁の所長に就任した。

福岡家裁所長(福岡高裁部総括判事)木村元昭▽福岡高裁部総括判事(那覇地裁所長)高野裕▽那覇地裁所長(那覇家裁所長)高麗邦彦▽那覇家裁所長(東京高裁判事)鶴岡稔彦(以上24日)定年退官(福岡家裁所長)榎下義康(23日)(了)

木村裁判官が、真村裁判でいかに物議をかもす判決を下してきたかは、本サイトで報じてきたとおりである。その裁判官が国費で運営されている福岡家裁のトップに座るとなれば、今後、福岡県民は家裁にトラブルの解決をゆだねることに躊躇(ちゅうちょ)を覚えるのではないか。この人事異動は、日本の司法制度の信用や尊厳にかかわる問題を孕んでいる。

繰り返しになるが、木村裁判官が真村裁判で下した判決で問題になっているのは、次の記述である。(熟知されている方は、スキップしてください。ただし赤字に注意

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない(かえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)

そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。

?? そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。??

?判決内容を予約すると、次のようになる。 ? ? ?黒薮は、「押し紙」についての記事を執筆しているが、「押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由があると認めるに足りる証拠もない」。 ? ?それゆえに真村さんや真村さんの弁護団が黒薮の取材に協力したことは、黒薮の名誉毀損的なジャーナリズム活動を「幇助」したことになる。 ? ?それは読売の名誉と信用を害するものである。 ? ?従って真村さんを解任する理由として正当である。

多様な議論がある「押し紙」をどう評価するかは、まったく個人の自由である。肯定しようが、否定しようが個人の自由である。憲法21条でもそれを保証している。

ところが「押し紙」を批判する立場で、わたしの取材を受けたことを、黒薮に対する「幇助(ほうじょ)」と位置付け、読売が真村さんを解任する正当な理由として認めているのだ。これでは取材に応じる人がいなくなりかねない。読売の記者にとっても、憂慮すべき事態である。

引用文の赤で表示した部分は、読者には分かりにくいので、解説しておこう。真村さんの店には、若干の「押し紙」があった。しかし、新聞の商取引では、表向きは「押し紙」は1部も存在しないことになっている。その理由は簡単で、「押し紙」が独禁法に抵触するので、親会社である新聞社に迷惑がかかるからだ。

と、なれば店主は「押し紙」も帳簿上は、配達されている新聞として事務処理しなければならない。それが忠実な店主の普通の態度である。そこで真村さんは、PC上に「26区」という架空の配達区域と架空の読者を設定して「押し紙」の事務処理をしたのである。客観的に見れば、これは虚偽の処理である。

ただし、このような方法を誰が真村さんに「指導」したのかは不明だ。木村裁判官の下した判決では、

これを被控訴人(読売)も了解していたと認めるに足りる証拠はない。

と、述べている。だから、読売は「押し紙」の存在を認識していなかったという論理である。「押し紙」は存在しないとする見解の裏付けである。

◇根源的な別の問題が

さらに赤字の記述には、根源的な別の問題もある。    既報してきたように真村裁判は、1次裁判と2次裁判に分類できる。1次裁判は、2002年から2007年の期間である。真村さんが店主としての地位保全を求めて提訴した裁判である。

結果は、地裁、高裁、最高裁とも真村さんの勝訴だった。判決が確定したのは、厳密に言えば2007年12月25日である。本来であれば、この時点で真村さんの地位は完全に保全されたのである。

ところが7ケ月後の2008年7月31日、読売は一方的に真村さんを解任した。そこで真村さんが地位保全を求めて起こしたのが第2次裁判である。

つまり第2次裁判は、2007年12月26日から、2008年7月31日の期間に、真村さんが解任されるに値するような不祥事を起こしたか否かが争点になったのである。ところが、解任理由の理由づけとして、木村裁判官は、すでに第1次裁判で決着がついた「26区」の問題を持ち出しているのである。

ちなみに「26区」について、第1次裁判の高裁判決は、次のように読売を批判している。

聞販売店が虚偽報告をする背景には、ひたすら増紙を求め、減紙を極端に嫌う一審被告の方針があり、それは一審被告の体質にさえなっているといっても過言ではない程である。

この判例は最高裁も認定している。木村裁判官は、その判例を変えただけではなくて、審理の対象外の時期に問題となり、1次裁判で決着したことを、わざわざむし返して、解任理由にしているのだ。

◇870万円の支払いも取り消し

さらに2次裁判について、特筆しなければならない別の事実がある。2次裁判の進行期間に、真村さんは、読売に対する約1億円の損害賠償裁判を起こした。自店を「飼い殺し」にされたわけだから当然だ。

第2次裁判と、損害賠償裁判は、後に統合された。

地裁判決は真村さんの敗訴だった。しかし、損害賠償については、1部を認めた。読売に対して約870万円の支払いを命じたのである。

ところが控訴審で木村裁判官は、損害賠償金の870万円の支払いをも取り消したのである。第1次裁判で真村氏が完全勝訴して、読売に対して慰謝料の支払をも認めたにもかかわらず、損害賠償の必要はないと判断したのである。

木村裁判官が福岡高裁から福岡家裁へ異動したことで、現在進行している真村裁判??読売が真村さんを被告(後に真村さんの奥さんも被告に)に対して、間接強制金(制裁金)約3600万円の支払いなどを請求している裁判??の行方はどう変わるだろうか。成り行きを見守りたい。

裁判官は人を裁く特権を有している。それが濫用された時、国民はどう対処すべきなのだろうか?

2013年08月05日 (月曜日)

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

参院選で自民が圧勝しました。アベノミックス効果なのでしょう。でも、消費者物価が0.4%上がったとはいえ、中身は円安でエネルギー価格が上昇。電気・ガス料金に跳ね返っただけです。給料が上がらず、公共料金の高騰では、ますます家計はひっ迫します。

自民の選挙を支えたのは、既得権益を持つ強大な利権組織です。これから彼らは、大手を振って見返りを要求するでしょう。自民の多くの議員の言動を聞いても、これまで大借金を溜めてきたことや、原発を安全策を怠ったまま推進してきたことにも真摯な反省はありません。高市早苗政調会長の発言が、その典型です。

結果、消費税を上げても、また税収は既得権益層を潤す公共事業に注ぎ込まれます。家計が潤ってこそ、人々に買う意欲が芽生え、デフレ脱却の好循環が生まれます。でも、とてもそうなりそうにありません。来年の今頃、ますます物価は上がり、需要は落ち込む消費税不況に見舞われるのではないかと、私は恐れています。

そうならないためには、公共事業の大盤振る舞いをまず止めることです。官僚利権を排し、規制緩和で民間活力を強め、この国の経済を復活させる以外にないのです。

これまで3回にわたりこの欄で、多額の税金を注ぎ込み、官僚・政治家が利権目当てに進める大型公共事業の内実がいかなるものだったのか、私が解明しながら朝日が記事を止めたことで、読者・世間の皆さんに伝えることが出来なかった長良川河口堰事業の「真実」について書いてきました。今回はその4回目です。今回も、前回までのおさらいから始めます。

(参考:毎秒7500トンが流れた時のシミュレーション水位)

◆『河川砂防技術基準〈案〉』

建設省は水余りの中、1976年9月の長良川安八・墨俣水害を格好の理由づけに、「水害から住民の命を守る」として、長良川河口堰事業を推し進めました。

しかし、台風による大雨が4日間も降り続いて起きたこの水害でも、その間の最高水位は、堤防下2メートルに建設省が定めた安全ライン(計画高水位)より、さらに1メートル以上も下。堤防上からは3メートル以上下にしか水は来ていなかったのです。堤防に弱い箇所があって破堤したのであり、安八水害程度の水量、毎秒6400トンでは、長良川の堤防の高さ,河道容量には十分な余裕があり、治水上、堰の必要はなかったです。

ただ、治水のために長良川河口堰を建設する目的は、安八水害の毎秒6400トンの大水に備えるためではありません。90年に1度(90年確率)の毎秒7500トン(計画高水量)の大水でも水害が起きないようにするためです。

6400トンの大水なら安全に流せることは、安八水害のデータから証明出来ます。しかし、7500トンではどうなのか。1990年2月の記者会見で建設省は、「7500トンなら、安全ラインを1メートル弱、上回る。治水のために堰は不可欠」と答え、事業推進を明言しました。

どうもごまかしがあると思いました。「7500トンで安全ラインを上回るか、否か」。建設省はこんな時には、何とか水掛け論にして、逃げこもうとします。でも記者なら、「そうはさせじ」です。グーの音も出ない方法で、「ウソ」と立証する必要があります。その手法を探るうち、建設省自身が治水計画を進める手順を定めた行政マニュアル『河川砂防技術基準〈案〉』にたどり着きました。

◆『木曽三川?その流域と河川技術』

マニュアルでは、?河道容量を測量した『河床年報』を作成する?大水時に実測した水量と水位の相関関係から川底の摩擦の強さ、『粗度係数』の値を、『不等流計算式』を使い算出する?『粗度係数』と『河床年報』のデータから『不等流計算式』で逆算。最大大水時の水位をシミュレーションして、安全ラインを上回るか否かで、その川の治水対策の必要性の有無を判断する――と定めています。

建設省では、この計算をパソコンでやっていました。私が、?『河床年報』?『不等流計算式』?『粗度係数』の3点セット、つまり、3つのカギを入手してパソコンに入力すれば、建設省のウソを暴くウソ発見器が作れます。建設省がひた隠しにしている7500トン流れた時の行政マニュアル通りのシミュレーション水位を、パソコンは正確に計算するからです。

私が早速3つのカギの入手に動きました。??を入手、記事を書ける水準に達しても、社会部長の煮え切らない態度で時間が経つうち、建設省も私の取材に気付きました。1990年4月、私の取材対策として、?の『粗度係数』の改ざんに手を染めたのです。

私が取材に行くと、建設省は「待ってました」とばかり、「長良川の現況粗度係数」と書かれたペーパーを渡しました。なるほどこの係数値で計算すると、7500トン流れた時、安全ラインを60センチほど上回ります。しかし、建設省はその時、このペーハーを作成した日付け、「90・4・9」の数字を消し忘れて渡す決定的なミスをしていたのです。

「建設省が私への取材対策をごく最近完成させた」との情報は入っていました。これが対策の中身だとは、すぐにピンと来ました。私が本格的に取材を始め、2か月後にあわてて作られたこんな偽物のカギを掴まされて喜ぶほど、私は甘くはありません。本物のカギを探すうち、安八水害後の1988年9月、建設省中部地建発行の記念誌『木曽三川?その流域と河川技術』に、「長良川の現況粗度係数」が書かれているのを見つけました。本物のカギです。

ついに???の3つのカギが揃ったのです。記念誌記載の76年安八水害の本物の粗度係数の値と、私の取材対策で1990年4月に新しく作り上げた値との違いで、7500トン流れた時の水位がどう違うか。ウソ発見器のパソコンで描かせてみたものが、次の水位図です。(参考:毎秒7500ドン流れた時のシミュレーション水位=ここをクリック)

本物のカギを入れると、長良川河口から30.2キロまでの下流部、「堰を造らない限り、洪水の心配がある」と建設省が主張している全区間で、堤防下2メートルの安全ラインを下回り、危険個所は1ヶ所もありません。つまり、想定される最大の大水でも安全に流れ、行政マニュアルの判断基準に照らしても、治水上堰は不要と分かったのです。このことまで、前3回に書きました。今回はここからです。

◆社会部長から記事のストップが

前記の取材結果は、すべて建設省内部の極秘資料と行政マニュアルによる客観的事実です。記者や学者の主観の入る余地のないこともお分かり戴けたと思います。

ジャーナリズムとは何か。いろいろ難しい議論もあります。でも、何より人々の「知る権利」に応えることです。編集方針に基づく社説などの主張は、報道機関それぞれで違いがあって当たり前です。でも、記者がつかんだ客観的な事実報道で、報道機関上層部が恣意的に取捨選択してはならないことも、ジャーナズム倫理の基本です。

記者は何も個人的な興味、趣味で取材している訳ではないのです。「朝日記者」と名乗って取材した客観的事実は、少なくとも朝日の読者には、「知る権利」があります。

???のカギまで手に入れ、記事にしようとしたこの年、つまり1990年2月、社会部長が止めました。「では、どこまで詰めたら、記事にしてくれるのか」と、条件を問いました。

??4月になって「?もう少し学者の意見を聞き、実名で計算結果を発表してくれる学者を探す少なくとも,計算結果が,水理学的に正しいとのコメントを出してくれる学者を見つける

?建設省がどのような計算をし,記者発表をしたのか。これまでのルートを通じて、その手の内をさらに深く探る」の3条件が示され、このどれか1つでも条件を満たせば、記事にしてくれる約束だったことも、前回のこの欄で書いた通りです。

私のここまでの取材で??を満たしてあります。とりわけ?は、絶対的な条件です。?が分かれば、??は蛇足に過ぎません。?を解明した以上、もう、部長は記事を止める理由・筋合いはありません。

「建設省は、想定される最大大水の7500トン流れる時には、『堤防が崩れる恐れ、水害になる恐れがあるとして、河口堰を着工しようとしている。しかし、建設省がひた隠しにしている極秘資料『河床年報』を使い、行政マニュアル通りに計算すると、この大水でも安全ライン以下の水位で流れ、洪水の危険はない。露見を恐れた建設省は、ごく最近、『粗度係数』を改ざんし、長良川を治水上危険と見せかける隠ぺい工作を始めた」。こんな内容の原稿を書きあげた私は、当然のこととして、すぐに記事にするよう社会部長に求めました。

しかし、部長は東京・社会部長への栄転が内々定していました。「新部長が来てから、記事にして欲しい」と言って来ました。今から考えると、上層部の意向が働いていたようにも思えます。ただ、その時は「転勤前だから、いつもの慎重癖が出たのか」と、私は安易に考えていました。新部長の赴任まで2週間足らずです。待てない期間でもありません。

それに、私はまだ、やっと3つのカギを見つけたところです。部長のそもそもの指示は「建設省は役所だ。あまりに無茶なウソまではつかないだろう。記者会見で話した根拠は何か。その手の内を詰めて欲しい」です。私はこれまでの何十回もの調査報道経験から、「利権のためなら、官僚ほどぬけぬけとウソをつく集団はない」と思っていました。

時間があれば、完成したウソ発見器のパソコンを駆使出来ます。記者会見で建設省が堰の必要性を説明した内幕・根拠は何だったのか。建設省が言ってきたことを跡付ければ、その手の内、より多くのウソが発見出来ます。何とも消極的な朝日の態度に裏に何かあると、薄々感じるものもありました。その雰囲気を変え、新部長に記事化を求める説得材料になると思いました。

◆4回の出水ピーク

私は、『木曽三川』の粗度係数の記述を、もう一度落ち着いて、詳細に読み返すことから始めました。すると、「係数算出の『計算期間』を、安八大水の「9月9日1時から12日24時までの96時間」との重大な記述に気付きました。

大水は4日間で、4回の出水ピークがあったことは、前回書いた通りです。「9日から12日までの96時間」とは、この1波から4波の4回のピークをすべてカバーする時間帯です。つまり、建設省は少なくとも『木曽三川』執筆段階で、すでに1波から4波の4回のピーク水位と水量との関係データを十分承知し、係数の値を算出していたのです。その上で安八水害全体の粗度係数の値として妥当との判断で、『木曽三川』にその値を記載したことは、この記述から裏付けられます。

でも、前回のこの欄で書いたことをもう一度、想い出して下さい。私への取材対策のため、新たに作られた言い訳係数のペーパーを渡す時、担当者は「安八水害では4回の出水のピークがありました。しかし、下流部では1波目より、4波目の方が水位は高かったのに、それに気付かず、もっぱら1波目から係数値を算出していました。だから今回見直し、正しい値を算出しました」と、私に話しています。

もちろん「見直した」は真っ赤なウソ。私が取材を始めてから突然「見直した」係数値とは、明らかに私への取材対策とは思っていました。でも、それを証明する証拠が、それまでありませんでした。

しかし、この記載で、「長良川が治水上安全」との記事を私に書かれないようにする、言い訳のためのデッチ上げ係数であったことの何よりに証拠になります。

もちろん私は単なる推測でなく、当時の経緯を関係者に当たり、裏も取りました。「朝日さんへの取材にどう対処するか、実は困り果てたのです。そこで本庁の指示で、何とか今までの『長良川は危険』とする私たちの主張に都合のいい係数値を出せないかとの話になりました。建設省の言いなりになるコンサルタントに資料を段ボール2箱に詰めて送り、作り上げた値です」との証言も取りました。「4波目で計算していなかったと気付き……」などと、よくもぬけぬけと騙してくれたものです。

◆マニュアル違反は明確

ちょっとましな調査報道記者なら、すべてお見通しでも、最初から全部をさらけ出し、一本の記事で済ますようなヘマはしません。単発では世間の認識も深まりません。相手も素直に謝らず、カエルの面に小便。間違った政策もそのまま継続されることが少なくありません。

そうさせないために、記者は集めたデータを小出しにし、記事を何本も繋いで行きます。その都度、相手は、言い訳。でも、大半は苦し紛れのウソです。その言質の矛盾を突いて袋小路に追い込みます。最後の最後に切り札になるデータを示し、相手を絶対絶命していくのが常套手段です。つまり、調査報道の成否は、続報の出来、不出来が握ります。相手に「参った」と言わせるには、続報の手数は、多ければ多い程いいのです。

続報でこの記載を紹介。「最初から建設省は安八水害の新た4回の出水ピークのデータをすべて承知の上で、妥当な値として『木曽三川』に記載した。朝日が取材を始めた直後の係数値の改ざんは、治水上安全な長良川を『危険』と見せかける隠ぺい工作」と書けば、続報一本ゲットです。

『三川』記載までの経過も探りました。係数値は、安八水害8年後の84年に建設省がコンサルタントに依頼して、計算してもらっていたものでした。学者の検証も経て、88年発行の『三川』に載せたのです。

建設省行政マニュアル『河川砂防基準』では、大水が出た時には、水位と流量を実測、速やかに粗度係数の値を出すことを定めています。安八水害8年後の算出自体遅過ぎます。でも、84年にこの値を算出したのなら、すぐにこの値でシミュレーションし、「長良川は治水上、安全」と公表しなければならなかったのです。この事実からも「マニュアル違反は明確」との記事に出来ます。もう1本、続報ゲットです。

◆岐阜県庁前の水位図

建設省が90年2月の記者会見で話したことの「手の内」を詳しく探れ、というのも部長の指示でした。

会見で建設省は「長良川は最大大水では、安全水位を1メートル弱上回る。あと川底から1500万トンを超える土砂浚渫が必要」と明言しています。その根拠は何かも探りました。

建設省は巨大な利権集団です。しかし、真面目な技術屋さんの集団と言う側面もあります。騙すにも、それなりの根拠がありますから、ウソは比較的見つけ易いのです。

何しろ私には、最強無敵のウソ発見器のパソコンがついてくれています。粗度係数を入れ替えたりすれば、会見でついたウソ程度なら、どう建設省がパソコンをいじり、こんなウソを導き出したか、手の内は比較的簡単に見つかると、タカをくくっていました。しかし、実は一筋縄では行きませんでした。

「最大大水では、安全ラインを大幅に上回る」とする水位図は、建設省はそれまでもパンフレットなどで公表してはいました。会見も説明もこの水位図を根拠にしているとは思いましたが、どの図も数値の入っていないイメージ図だけで、検証が難しかったのです。

私のパートナーの若い科学記者は、87年河床データの入ったウソ発見器のパソコンに、いろんな係数・数字を入れ直し、パンフレットにあるイメージ曲線を描くことが出来ないか、何度も何度も計算をし直しました。しかし、どんなにデータを入れ替えても、パンフレットのイメージ曲線の形とは、似ても似つかない曲線しか打ち出しません。このパソコンをもってしても根拠が見つからないのです。

こんな時には、足で取材するのに限ります。ある人から「『現況の長良川では水害の危険がある』として、岐阜県庁正面に大きく掲げられているパネルの水位図を良く見てみたら…。面白いことが分かる」とのヒントをもらいました。

この水位図は、堰反対運動の高まりの中、堰がなければ水害の危険があることをアピールしようと、建設省から提供された原図に基づき、岐阜県が拡大。パネルにして県庁正面に掲げていたものでした。当時、建設省出身知事をトップに頂く岐阜県には、役所同士という安心感がつい出たのでしょう。この図だけは数値が入っていました。

でも、岐阜県は、建設省の内情までは知りません。「格好の住民への説得材料」とばかり、そのまま県民の目によく触れる県庁正面に掲げたのです。この水位図、よく見ると、水位だけでなく河床の高さの数値も記載されていました。 コピーを岐阜県からもらい詳細に見てみました。すると、1972年当時の古い河床が使われていることが分かったのです。「72年」とは、河口堰事業が始まる直前です。ウソ発見器には、当時の最新の87年の河床データしか入っていなかったので、この曲線を打ち出せなかったのですが、72年の『河床年報』も入手、「計画粗度係数」の値を入れて計算してみました。

すると、パソコンから出てきた水位曲線は、県庁正面の水位図だけでなく、過去のパンフレットのイメージ曲線のカーブともピタッと一致しました。建設省は72年の古い河床に計画粗度で計算させた結果から、記者会見で「現況の長良川は危険」と説明していたのです。

会見は90年2月。取材対策として、新しい粗度係数を作り上げたのは、「90年4月9日前後」です。「治水上、長良川は危険」との建設省の主張・結論のウソ・偽りに変わりありません。でも、この日を境に前と後で、説明する根拠・水位図は全く違っていたのです。何が「新しい係数が出たら、大体これくらいになろうかと……」です。

◆『長良川河口堰調査報告書』

もちろん着工前の建設省と堰反対派との論争は、「現況の長良川で、堰がなければ治水上、危険か否か」です。当時の「現況の長良川」とは、1987年に測量された『河床年報』に記載された河道データであり、このデータから説明しなければならないのは、当然のことです。

わざわざ15年前の河床年報で計算した結果から、「長良川は危険」と印象付ける水位図をパネル展示。現況の長良川では、安全ラインを下回るのを承知しながら、「1メートル上回る」などと会見でも説明するのは、「悪どいウソ」と言うほかありません。建設省に「参った」と言わせる決め手となる続報に使えます。

しかし、ここまで来た時、私たちは新たな疑問に直面していました。土砂の浚渫量に関してです。疑問・矛盾を少しでも感じ取ったら、すべて解消する。調査報道記者としての私の信条でもありました。

何で疑問が出て来たかと言うと、若い記者がイメージ図の根拠が何かを探るため、何十、何百回もデータを変えてはパソコンで計算していたことからでした。パソコンではゲーム感覚で、浚渫量をいろいろ変えて水位がどう変化するか、シミュレーション出来ます。その結果、だいたい100万トン、長良川川底の土砂を浚渫すると、大水時10センチ、長良川の水位が下がることが分かって来ていました。

政府は1968年、「治水・利水のために3200万トンの土砂の浚渫が必要」として、堰建設の閣議決定をしています。「3200万トン」の浚渫が必要なら、100万トン10センチの水位低下効果で勘案すると、「3.2メートル」水位を下げない限り、大水時、安全ライン以下にならないことを意味します。

2月の記者会見で建設省は閣議決定以降、堰がなくても海水が遡上しない範囲で、「900万トン」の浚渫をしたとしています。別に「300万トン」は地盤沈下で、浚渫と同じ効果が現れていることも認めました。合わせて「1200万トン」です。パソコンゲームの結果と重ね合わせると、「1200万トン」浚渫しただけなら、大水時1.2メートル水位が下がるに過ぎません。 もちろん、浚渫による川底の摩擦の低減、つまり粗度係数値の低下の影響もあるのですが、それにしても1200万トンの浚渫をしただけで、3.2メートルも水位が下がるのでは、あまりにもケタが違い辻褄が合いません。

当初はウソ発見器のパソコンがウソをついているのではと、もう一度点検してみました。でも、どの角度から見直しても、パソコンに欠陥はありませんでした。

その時私は、閣議決定に先立つ1962年に建設省が作った極秘の『長良川河口堰調査報告書』という資料があるのを想い出しました。

この報告書は堰の計画当初に作られ、秘かに堰に反対する住民団体の手に渡り、堰差し止め訴訟の証拠の1つとして、裁判所にも出されていました。しかし、住民側も難しい資料は読みこなせず、建設省の主張を崩すために、裁判で十分活用されているとは言えなかったのです。 私も偉そうには言えません。「どんな資料でも、手に入るものは、入れておけ。そのうち役立つこともある」。昔、先輩から受けた教えに沿い、原告団からもらって一読。よく分からないまま、段ボール箱には入れていたのです。

◆「利水」と「治水」は別

その時は、水位ばかりに関心が行き、浚渫量に無頓着だったこともあります。しかし、ここまで来ると、知識の集積があります。報告書には、何やら浚渫量について、詳しい記載があったことに気が付いたのです。

建設省は閣議決定以降、一貫して「3200万トンの浚渫が必要」と言って来ましたから、私も治水のための必要量と思い込んでいました。ところが、極秘報告書では計画時、「治水のための浚渫必要量」と「利水の浚渫量」が別々に検討されていたのです。

もともと、河口堰は、高度成長期、四日市コンビナートなど膨れ上がる工業用の水需要に対応するため、計画された背景があります。堰を造って海水の遡上を食い止める。背後を出来るだけ深く浚渫し、多くの真水を溜め、工業地帯に水を供給するのがそもそもの目的です。考えてみれば、「治水」と「利水」の必要量が同一であることの方が不自然です。

報告書よく読むと、「利水」のために「3200万トンの土砂を浚渫する必要がある」としているのであって、「治水」のためなら「1300万トン」と、明確に記載されていました。

私は建設省に騙され、「治水上、3200万トン」と思い込んでいました。だから、「1200万トン」の浚渫では水位は1.2メートルしか下がらないはずなのに、パソコンが安全水位以下のシミュレーションを描くことに疑問を持ったのです。

しかし、治水上は1300万トンの浚渫で済むなら、「1.2メートル分」は建設省も浚渫で終わっていることを認めています。あとの「0.1メートル分」が、河川改修による粗度係数低下効果を考えれば、すべての辻褄が合います。ウソ発見器のパソコンはやっぱり正しく、水位だけでなく、浚渫量に関しても、建設省のウソをも見抜いてくれていたのです。

「治水から浚渫必要量は、実は1300万トン。すでにこの分の浚渫はほぼ終了。治水上、河口堰建設の必要がないことは、極秘報告書からも明らかに」。続報でこう書けば、建設省は「参った」と言うほかないでしょう。これが最後の決め手となる続報記事です。

この結果は、『木曽三川』に記載されている本当の粗度係数の値で計算してこそ、すべてにおいて整合性があります。しかし、建設省が私への言い訳のためにデッチ上げた係数では、相互に様々な矛盾が生じ、辻褄が合わなくなります。つまり、この解明は建設省のデッチ上げ係数がいかにデタラメかの証明でもあったのです。

ここまで来るとトランプの終盤のように、パタパタとカードが揃って、ゲームは終わります。取材の過程で様々な疑問にぶつかり、謎解きのため、苦労しながら集めた数多くの資料・証拠・証言が1本の糸で有機的に繋がったのです。

外から難攻不落、強固に張り巡らされているかのように見えた建設省の秘密のバリアです。でも、一旦、風穴を開け、内部に入り込み裏から見てみれば、構造は丸見え。実はつぎはぎだらけのもろい物でした。出来のいい推理小説を読んで、すべての謎が1本の糸で繋がって解き明かされた時に似た、何とも言えない快感に私は包まれました。

ここまでお読み戴いた、読者の皆さん、有難う御座いました。数字のオンパレードで、さぞ頭も混乱していると思います。

ただ山登りでも、ふもとから見たのと、頂上に立ち、辿って来た道を上から見るのとでは、景色が違います。おさらいの意味で、建設省が河口堰推進のために、どんなに国民・住民を欺いて来たか、ウソの系譜を時系列・年代で整理、上から俯瞰してみましょう。いかに官僚が利権目的の公共工事のため、ウソで固め、国民の血税を無駄に捨てているかが、鮮明になり、皆さんも少しは頭の整理が出来ると思います。

 ◆長良川河口堰事件の年表

1962年 建設省は、治水ための必要浚渫量を「1300万トン」、利水からの必要量を「3200万トン」と算出。極秘の「長良川河口堰調査報告書」を作成。

1968年 建設省は「治水」、「利水」を区別することなく、「治水・利水に必要な浚渫量は3200万トン」として、閣議決定に持ち込む。

1972年 「河口堰建設事業」の一環の長良川川底の土砂を浚渫する事業開始(1990年までに900万トンの浚渫と地盤沈下で300万トンの同様効果)。

1976年 安八水害発生。建設省は水余りの中、「治水のために、堰建設は不可欠」と大宣伝を始める。

1984年 安八水害のデータから、コンサルタント会社に依頼して、長良川の最新の現況粗度係数を算出。マニュアルではこの値で直ちに治水計算しなければならない。しかし結果は、最大大水時の水位は完全に安全ラインを下回り、「治水のためには堰不要」との結論になる。公表せず、ひた隠しにした。

1988年 木曽三川の改修100年記念事業として『木曽三川?その流域と河川技術』を発刊。頭隠して、尻隠さずで、安八水害のデータで算出した本物の「長良川の現況粗度係数」を掲載。

1989年 岐阜県は、建設省から渡された72年の河床データと「計画粗度」で計算した水位シミューレーションをパネルにして県庁正面に掲げ、「堰を造らないと、洪水の心配がある」と、住民を説得。

1990年2月 建設省が記者会見。計算根拠を明らかにしないまま、「現況の長良川は最大大水時、水位は安全ラインを1メートル弱上回り、洪水の危険がある。治水のためにあと1500万トン以上の浚渫が必要で、堰は不可欠」と説明。

1990年3月 私たちが取材で、『河床年報』を要求。「不等流計算」され、結果が露見するのを恐れた建設省は、さらなる取材対策のために、新しい「粗度係数」の算出にとりかかる。

1990年4月 新しい「粗度係数」の値を作り上げる。「4.9」の日付でペーパーを作成。この係数で計算すると、安全ラインを上回り、「堰必要」との結論にひっくり返る。

1990年6月 私たちが取材。建設省は「待ってました」とばかり、新しく算出した「粗度係数」のペーパーを示し、「この係数が正しい」として、堰建設の論拠とする。  ――以上の通りです。

◆新しい社会部長が就任したが・・・

この通り、長良川では「1300万トン」がもともと治水上の必要浚渫量でした。高度成長期が終わり、水需要減退で利水からの建設必要性がなくなるなら、当然、「1300万トン」を起点に建設の是非を議論すべきだったのです。 ところが、建設中止に追い込まれるのを恐れた建設省は、あたかも「3200万トン」が治水からの必要浚渫量かのように偽って来たのが、そもそものウソの始まりです。この後は住民団体の追及や私の取材で、ウソが露見するのを恐れ、ウソにウソを積み重ねてきたことが、この時系列でお分かり戴けたのではないかと思います。

このすべての解明が終えたのは、1990年6月末のことでした。「建設省がどのような計算をし、記者発表をしたのか、これまでのルートを通じて、内情をさらに深く探れないか」。前記の事実は、部長が記事にする条件として私に求めた「建設省の手の内」の完全な解明でもあります。私はこの欄で書ききれなかった他のデータもありますから、10本ほどの続報記事も書き終え、新部長の赴任を首を長くして待ったのです。 でも、結論を先に言うと、新部長が到着しても、その記事が一切陽の目を見ることはありませんでした。 申し訳ありません。ここまで書いて来たところで、また紙数が尽きました。今回も大変、難解な内容で恐縮です。 ただ、腐り切っていたのは、官僚だけではなかったのです。古巣を悪く言うのは辛いことです。でも、官僚だけ悪者にするのでは公平性に欠けます。次回は朝日が、どう記事を止めたか、その経過を書こうと思います。これに懲りず、ぜひ次回もご愛読頂ければ幸いです。

≪筆者紹介≫ 吉竹幸則(よしたけ・ゆきのり) フリージャーナリスト。

元朝日新聞記者。名古屋本社社会部で、警察、司法、調査報道などを担当。東京本社政治部で、首相番、自民党サブキャップ、遊軍、内政キャップを歴任。無駄な公共事業・長良川河口堰のウソを暴く報道を朝日から止められ、記者の職を剥奪され、名古屋本社広報室長を経て、ブラ勤に至る。記者の「報道実現権」を主張、朝日相手の不当差別訴訟は、戦前同様の報道規制に道を開く裁判所のデッチ上げ判決で敗訴に至る。その経過を描き、国民の「知る権利」の危機を訴える「報道弾圧」(東京図書出版)著者。

2013年08月01日 (木曜日)

「最高裁判所における訴訟事件の状況」と題する最高裁による報告書によると、2010年度に受け付けた上告事件は2036件、上告受理事件は2485件である。

上告は、高裁の判決内容が日本国憲法の趣旨に合致していないと判断した時などに行うことができる。上告受理申立は、高裁の判決内容が既に存在する判例と乖離していると判断したときに行うことができる。

上告事件と上告受理申立の件数の総計は、2010年度の場合、4521件である。

周知のように最高裁には小法廷と大法廷があり、大半の事件は小法廷で処理される。小法廷は、第1から第3に分かれて、それぞれに4名から5名の判事が配属されている。

最高裁が1年間に受け付ける事件数が4000件を超え、小法廷の数はたったの3つ。読者はこれらの数字を前に、疑問を感じないだろうか。次の計算式で導きだされる数字は興味深い。

4000件÷3=1333件

単純に計算するとひとつの小法廷が年間に1000件を優に超える事件を処理することになる。それぞれの事件について膨大なファイルが存在し、しかも、裁判はひとの人生を左右するわけだから、「速読」するわけにもいかない。ひとつひとつの記述を慎重に検証していかなければならない。それが最高裁判事という公務員の役割である。

しかし、常識的に考えて、最高裁に上告(あるいは、上告受理)された事件が、綿密に検証されているとは思えない。第一に、物理的に不可能ではないか。大半の事件が、判事の「めくら印」で終結している可能性が高い。

◆明らかな憲法違反=第2次真村裁判の判決 ?

たとえば第2次真村裁判。この事件は、上告が棄却させたが、高裁判決は常識的な判断をすれば憲法21条(1.集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。)の趣旨に明らかに反している。下記の箇所である。

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない(かえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)???

そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。??

そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。

判決内容を予約すると、次のようになる。

?黒薮は、「押し紙」についての記事を執筆しているが、「押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由があると認めるに足りる証拠もない」。

?それゆえに真村さんや真村さんの弁護団が黒薮の取材に協力したことは、黒薮の名誉毀損的なジャーナリズム活動を「幇助」したことになる。

??それは読売の名誉と信用を害するものである。

??従って真村さんを解任する理由として正当である。

◆幅広い「押し紙」論と憲法21条

「押し紙」が存在するか否かを巡っては、昔から論争が交わされてきた。国会でも問題になった。「押し紙」に関する週刊誌の記事や書籍も多数ある。こうした言論状況は、周知の事実である。

と、すれば個々の人間がどのような見解に賛同しようと、それは個人の自由である。選択肢である。ところが福岡高裁の木村元昭裁判官は、真村さんがわたしの取材に応じ、「押し紙」の存在を肯定する立場で発言したことを、店主解任の理由として認めているのだ。

逆説的に言えば、真村さんが「押し紙」を否定する立場で取材に応じていれば、店主解任の理由として認められない、ということになる。

つまり木村裁判官は、個人がどのような思想、あるいは見解を表明するかで、ある地位を解任しても違法行為にはあたらないと判断しているのだ。が、憲法にはそんなことは書かれていない。言論の自由を認めているのである。まして、幅広い意見がある「押し紙」問題においては、なおさら憲法の精神を尊重しなければならない。

改憲を先取りした判決とは、このことである。

2013年07月31日 (水曜日)

最高裁に対する情報公開請求についての連載・第2回。下記の請求に対して、7月25日付で回答があったので紹介する。

請求内容は次の通りである。

告人・真村久三と読売新聞西部の裁判(平成24年(オ)1604号・平成24年(受)1987号)で、貴裁判所が2013年6月18日に、上告を棄却することで認定した福岡高裁判例(平成23年[ネ]第390号)について。 同判決の中に、上告人真村と彼の代理人弁護士らが「黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白」(33項)という記載がある。ここで言及している「情報」「資料」に該当する証拠をすべて公開せよ。

請求を申し立てた背景を説明する前に、最高裁からの回答を、下記に示す。

(最高裁からの回答=ここをクリック)

◆判決文で訴外者を誹謗中傷  

本サイトで頻繁に取り上げている真村裁判(第2次)の判決の中で、福岡高裁の木村元昭裁判官が、訴外の立場にあるわたしのジャーナリズム活動を誹謗中傷したことである。真村裁判は2008年7月、読売がYC広川の店主・真村久三さんを一方的に解任したのをうけて、真村さんが地位保全を求めた裁判である。木村裁判官は、真村さんの解任理由のひとつとして、わたしのジャーナリズム活動を「幇助」したことをあげた。

ちなみに裁判のプロセスの中で、わたし対する証人尋問は行われていない。尋問を行わずに訴外の立場にある者の行為に対して、実名で断定的な認定を行ったのである。

繰り返しになるが、問題となっている判決の記述を再度引用しておこう。(既に熟知されている読者は、スキップしてください)

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない(かえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)????

そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。

???? そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。

判決内容を予約すると、次のようになる。

? ?黒薮は、「押し紙」についての記事を執筆しているが、「押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由があると認めるに足りる証拠もない」。

?それゆえに真村さんや真村さんの弁護団が黒薮の取材に協力したことは、黒薮の名誉毀損的なジャーナリズム活動を「幇助」したことになる。

??それは読売の名誉と信用を害するものである。

?従って真村さんを解任する理由として正当である。

◆情報公開を請求した理由

木村裁判官が執筆した判決を最高裁が認定したことも既報の通りである。  わたしが情報公開を請求した理由は、真村さんと彼の弁護団がわたしに提供した資料や情報が具体的に何を指しているのか分からないからだ。

確かに情報提供を受けたことはあるが、それは第1次真村裁判(2002?2007)の時期である。第2次真村裁判で対象になった期間は、2008年の1月から7月である。この期間にどのような資料・情報をわたしが受け取ったのか、曖昧なので、情報公開請求の手続きを取ったのである。

わたしが、自分自身が真村さんらから、この時期に資料を受け取っていないと断言しているわけではない。メール記録などを基に調査しなくては分からない。たとえ受け取っていたとしても、それは真村さんらが裁判所に提出し、裁判所でだれでも閲覧できる公開資料であったはずだ。

何を根拠に木村裁判官が上記のような記述をしたのか、そして何を根拠に最高裁が木村裁判官執筆の判決を認定したのかを確かめるのは、当事者としては当然の欲求である。

◆「それは嘘だ、嘘だ」の論法  

名誉毀損裁判の原告代理人を引き受ける弁護士の中には、名誉毀損の対象として争点にした表現を指して、「これは嘘だ、!嘘だ!、事実ではない」と声を張り上げ、被告に真実性の立証責任を求める者がいるが、残念ながら、このような裁判制度が堂々とまかり通っているのが、現在日本の裁判である。改めていうまでもなく、それを容認しているのが、(全員ではないが)大半の裁判官である。

ちなみに米国では、逆に訴えた側(原告)が、真実性を立証するのが原則。

と、すればこの際、彼らが構築した司法制度にのっとり、木村裁判官と最高裁判事には、わたしが真村さんらから受け取った資料・情報が具体的に何であり、それらのうちのどの部分が読売の名誉を毀損しているのか、立証してほしいものだ。

判決文は、「幇助」という当事者からすれば、侮辱的な表現が使われている。「押し紙」報道が事実ではないとも断言している。本来、現場の取材すらしていない木村裁判官から、このような認定を受ける筋合いはないはずだが。