2014年09月23日 (火曜日)

読売新聞のウエブサイトにある「数字で見る読売新聞」によると、同社の発行部数は、2014年9月23日の時点で、10,007,440部となっている。そしてこの数字を誇り、他紙に対する競争心を露呈させて、次のように述べている。

読売新聞は、イギリスの「ギネスブック」が認定した世界一の発行部数を誇り、日本を代表する高級紙です。 発行部数監査機関である日本ABC協会の報告では、2013年11月の朝刊部数は全国で1000万7440部で、全国紙第2位の新聞に約247万部、第3位紙に約667万部という大差をつけています。

■出典:「数字で見る読売新聞」PDF

■出典:「数字で見る読売新聞」

読売自身が文中で記しているように、この「10,007,440部」という数字は、2013年11月時点のものである。つまり10カ月前の数字を現在も表示し続けているのだ。

◇読売の現在のABC部数

一方、同じ読売のウエブサイト「読売新聞広告ガイド」によると、2014年8月時点の数字は、9,233,844部である。

■「読売新聞広告ガイド」

読売がウエブサイトで表示している2つの数字の差異は、なんと約77万4000部にもなる。これはもはや些細な誤差のレベルではない。産経新聞・東京本社の発行部数が約71万部なのだが、ほぼこれに匹敵する。ゆうに新聞社1社分の誤差があるのだ。

あるいは、東京新聞の約52万部と神奈川新聞の20万部を合計した数字に等しい。

いずれにしても読売は、1年たらずの間に膨大な数の読者を失っているのである。朝日新聞の比ではない。

巨大な事業規模を誇る読売が、スタッフの不足が原因で、「10,007,440部」という数字を改める作業を行う余裕がないとは考えられない。いまだに「読売1000万部」の看板にこだわっている証ではないだろうか。

このようなインターネット上の表示で最も害毒を及ぼすのは、広告主が広告戦略の判断を誤るリスクが生まれることである。確かに「読売新聞広告ガイド」には、最新の部数を表示しているが、広告主のすべてが、この案内を見るとは限らない。「10,007,440部」という数字を鵜呑みにして、広告主が紙面広告や折込広告を発注した場合、表示された数字と実配(売)部数がかい離しているために、PR戦略を完全に誤る可能性もある。

改めて言うまでもなく、新聞ジャーナリズムの価値は、印刷部数の大小ではなくて、紙面の質で決まる。まして景品を使った新聞拡販は、紙面の評価と発行部数の関係をあいまいにする意味において、ジャーナリズムにはふさわしくない。紙面の質だけで勝負するのが高級紙の条件である。

【注】ABC部数には、「押し紙」が含まれており、必ずしも実配(売)部数を正しく反映しているとは限らない。新聞社が数字を自己申告して、ABC協会が抜き打ち的に、監査しているに過ぎない。

2014年09月22日 (月曜日)

「歴史は繰り返す」という格言がある。真理ともいえるし、事実を正しく捉えていないとも言える。同じことを繰り返しているように見えても、歴史は少しずつ異なったステージへ進んでいるからだ。

権力を掌握している層がメディアをコントロールする際に念頭に置いてきた原理は、一貫して変化していないが、それを取り巻く条件や狙(ねらい)は、徐々に変化している。

解釈改憲が閣議決定されたり、特定秘密保護法が審議を尽くさずに国会を通過した背景に、軍事大国化という日本の進路を決定的にかえてしまう国策に連動したメディアコントロールが進行していることは間違いない。

◇出版界が朝日を総攻撃した本当の理由

メディアをコントロールする最も効率的な方法は、メディア企業の経営上の弱点や既得権、それに「汚点」を把握して、この部分に対して「飴(あめ)と鞭(むち)」の政策で攻撃を加えることである。

現在、メディアコントロールの道具にされているのが、出版物に対する消費税率の軽減適用問題である。これは出版業界にとっては死活問題である。新聞社だけではなくて、出版社にとっても無視することができない。かりに出版物に対して10%の消費税を課されたら、壊滅的な打撃を受ける。

朝日新聞社に対する束になったバッシングもこのような脈絡で考えるとわかりやすい。日本の言論が、巧みな「飴(あめ)と鞭(むち)」の政策でコントロールされていく兆候にほかならない。「大本営ジャーナリズム」の始まりである。

◇経営上の弱点と汚点を逆手に

新聞社を含む出版業界には、次のような経営上の汚点や既得権益がからんでいる。

①再販制度(既得権益)

②「押し紙」問題(汚点)

③新聞の折り込みチラシの「水増し問題」(汚点)

④公共広告の出稿(既得権益)

内閣府からわたしが入手した資料によると、国の借金が増え続けるなかでも、2007~2010年の4年間で、朝日、読売、毎日、日経、産経の紙面広告に対して、計約50億円も支出されていた。最高額は、読売とその広告代理店に対する約21億円である。

■参考記事:
主要5紙への政府広告費支出、4年間で50億円 最高額は読売とその代理店に対する21億円

⑤消費税の軽減税率問題

◇小渕政権とメディアコントロール

国策とメディアコントロールの関係を示す典型例としては、たとえば再販制度の撤廃をほのめかしながら、軍事大国化を進める法案を次々と成立させていった同時代史がある。

再販制度の撤廃問題は、1990年代の中頃から浮上した。新聞業界はこれに猛反発して、反対運動を展開した。

公取委は1998年3月に、結論を先送りする決定を下した。ちなみに公取委の委員長は、内閣総理大臣によって指名されるので、政府の方針に反して公取委が動くことはありえない。

興味深いのは、出版業界が再販問題「救済」してもらった後の動きである。3ヶ月後の7月に小渕恵三内閣が成立した。この小渕という人物、温厚そうにみえるが、したたか者である。公共事業に予算をつぎ込み、日本を借金大国にしただけではない。

当時、小渕氏は、自民党新聞販売懇話会の会長だった。同懇話会は、新聞業界の政界工作の窓口で、1987年中川秀直氏らによって結成された。懇話会の多くの議員が政治献金を受けてきた。

出版業界が「救済」された翌1999年、小渕内閣の下で日本の軍事大国化に扉を開くとんでもない法律が次々と成立している。具体的には、新ガイドライン、住民基本台帳法、通信傍受法、国旗・国歌法などである。

◇小泉内閣とメディアコントロール 

2001年3月、公取委は、再販問題に関する最終報告書を発表した。「著作物再販制度の取扱いについて」と題するその文書は、「著作物再販制度を廃止した場合の影響も含め引き続き検討し,一定期間経過後に制度自体の存廃について結論を得る旨」となっていた。

つまりいつでも再販制度を撤廃できる状態にして、再び出版業界に圧力をかけたのである。

公取委が最終報告書を発表した翌月に、小泉内閣が成立した。小泉内閣は、小渕・森内閣で足踏みした構造改革=新自由主義の導入と、軍事大国化をドラスチックに進めたことで特徴づけられる。

たとえば軍事大国化に関しては、周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法、さらに有事立法を成立させ、戦後、はじめて自衛隊を戦場(後方)へ送り込んだ。

さらに自衛隊法を「改正」することで、現在問題になっている特定秘密保護法の原型ともいえる特定秘密に関する条項を付け加えている。こうした動きは、メディアではほとんど報じられていない。政府に対する「恩返し」か、さもなければ、政治記者が仕事をしていなかった証である。

◇新井直之氏の『新聞戦後史』

新聞研究者の故新井直之氏は、『新聞戦後史』の中で、公権力が言論統制を行うときに、経営上の弱点を攻撃する原理を、次のように説明している。

1940年5月、内閣に新聞雑誌統制委員会が設けられ、用紙の統制、配給が一段と強化されることになったとき、用紙は単なる経済的意味だけではなく、用紙配給の実験を政府が掌握することによって言論界の死命を制しようとするものとなった。

歴史は繰り返す。しかし、現在は、少なくとも言論で対抗できる時代である。それが昔とは決定的に異なる点だ。と、すれば優等生かエリートのように弱気になって、安倍内閣の前にひれ伏すのではく、逆に安部内閣に対して言論の大攻勢をかけることである。

そうすればひと月もすれば、降参するだろう。それができないところに、「お受験」制度の弊害を感じる。

2014年09月19日 (金曜日)

日本の裁判所は、良心に誓って公正・中立な判決を下しているのだろうか?
隣人同士のささいな争いの仲裁であればともかくも、国策にかかわる問題をはらむ事件となれば、最高裁事務総局が審理の進行に目を光らせているのではないか?法廷を重ねるにつれて、そんな懸念を浮上させた裁判が9月5日に結審した。

舞台は、宮崎市にある福岡高裁宮崎支部である。3階建てアパートの屋上にKDDIが設置した携帯電話基地局の操業差し止めを求めて、延岡市大貫の住民30名が、宮崎地裁延岡支部へ提訴したのは2009年12月。敗訴。そして控訴。裁判は開始からまもなく5年になる。

延岡大貫訴訟は、基地局からのマイクロ波により、実際に発生した健康被害を理由に、基地局の操業停止を求めた全国ではじめての裁判だった。携帯電話の通信に使われるマイクロ波が将来的に人体に影響を及ぼすことを懸念して、予防原則の立場から裁判が提起された例は、それまでに数件起きていた。

しかし、延岡大貫訴訟は、マイクロ波による人体影響が世界的な共通認識になり始め、実際に被害が多発し始めた時期に起こされたのである。ちなみに2011年5月、WHO傘下の国際癌研究機関は、マイクロ波に発癌性がある可能性を認定している。

それだけに裁判は注目を集めた。NHKを除く多くのメディアが、新聞は地方版で、テレビはローカル放送で裁判の進行を報じてきた。本来は全国紙で報じなければならない大問題であるが、現場の記者の努力により、かろうじて地元では報じられてきたのである。

宮崎地裁延岡支部の太田敦司裁判長は、判決の中でKDDI基地局の周辺に住む人々の間に、耳鳴り、頭痛、不眠、鼻血などの症状が現れた事実を認定した。と、なれば当然、KDDIに対して操業の中止を命じる判決を下すのが道理である。

が、無線通信網の整備という利権がらみの国策が介在すると、そうはならなかった。住民たちが訴える種々の症状は、「ノセボ効果」が引き起こしたものであると認定したのだ。「ノセボ効果」とは、端的に言えば、「思い込み」のことである。地裁の太田氏は、判決の中で次のように述べている。

原告らその他の住民の中には、反対運動などを通じて電磁波の危険性についていの情報を得たことにより、電磁波の健康被害の不安を意識したことや、被告の対応に対して憤りを感じたことなどにより、もともとあった何らかの持病に基づく症状を明確に意識するようになったり、症状に関する意識が主観的に増幅されていき、重くとらえるようになった者がいる可能性がある。

太田氏がどの程度、「ノセボ効果」について理解しているのかは不明だが、少なくとも健康被害と「ノセボ効果」の因果関係を司法認定するのであれば、両者を論理的に関連づけなければならない。たとえば住民の間で見られる鼻血と「ノセボ効果」の関係である。医学的な論考が難しければ、鼻血と「ノセボ効果」の関係を示す疫学調査の事例を判決の中で提示すべきだろう。

が、判決を読む限りでは、そのような考察はどこにも見られない。こうした基本的な点を無視しているために、判決文は論理が極端に飛躍している印象をまぬがれない。結論先にありきの判決なのだ。

◇不自然な裁判長の交代

地裁で敗訴した延岡市の住民は控訴した。ところが福岡高裁宮崎支部で控訴審が始まってまもなく、ある「事件」が発生する。裁判長が交代したのだ。なぜ、人事異動が「事件」なのか?

結論を先に言えば、裁判長の交代が不自然きわまりなかったからだ。裁判官の人事権を握っているのは、最高裁事務総局である。

新たに裁判長席に着いたのは、福岡地裁から赴任してきたばかりに田中哲郎裁判官だった。この田中氏、実は過去に3度にわたり基地局の操業停止を求める裁判で裁判長を務め、いずれも住民敗訴の判決を下している。すべて九州で起こされた裁判である。ちなみに九州では、これまでに延岡大貫訴訟を含めて7件の基地局がらみの裁判が起きている。

田中氏が下した3件の判決のうち、特に不自然だったのは、福岡地裁で下された3件目の判決である。驚くべきことに、田中氏がこの裁判にかかわったのは、結審の直前からだった。つまり判決を書かせるために、最高裁事務総局が仕組んだ人事異動と解釈する余地があるのだ。

前置きが長くなったが、田中氏は、熊本地裁で2件、立て続けに住民を敗訴させた後、福岡地裁久留米支部に赴任したのである。さらにそこに在籍したまま、不自然にも福岡市の福岡地裁に乗り込み、裁判長の交代というかたちで、基地局裁判に介入してきたのである。

あまりにも不自然な裁判長の交代に原告住民が当惑したことはいうまでもない。

その田中氏が、2013年5月に福岡高裁宮崎支部へ赴任してきて、延岡大貫訴訟の裁判長に就任したのである。これで田中氏は、九州で起こされた7件の基地局裁判のうち、4件にかかわったことになる。人事異動そのものが不自然で、住民を救済する公正な判決が期待できないことは言うまでもない。

◇自宅が空き家になった悲劇

延岡大貫訴訟の原告団長・岡田澄太原告団長は、9月5日付け陳述書の中で、田中裁判長に対して、次のように要請している。

私たちが出した資料やKDDIが提出した膨大な資料を読み砕くよりも、確実に裁判長が控訴人とKDDIのどちらの主張が正しいのか判断する方法が一つあります。
 それは裁判長自ら、延岡市大貫町に来て一週間ほど泊まってみることです。
わたしの空き家にしている自宅兼事務所の通常の16万倍(22μW/cm2)の電磁波が流れる3階の部屋で一週間、過ごしてみてください。そうすれば必ず、私たちの訴えが真実であることが分かっていただけます。

岡田氏の自宅が空き家になっているのは、KDDIが基地局を設置した後、電磁波が強すぎて住めなくなり、引っ越しを余儀なくされたからである。

参考:朝日新聞の記事

参考:徳田康之弁護団長の意見陳述書

2014年09月18日 (木曜日)

 

ブラジルのベロオリゾンテ市は、ブラジル南東部、標高約 800 メートルに建設された計画都市である。人口は約240万人。

この市をモデルとして携帯電話の通信に使われるマイクロ波と癌の関係を調べる調査が行われたことがある。結果が公表されたのは、2011年5月。おりしもWHO傘下のIARC(国際がん研究機関)が、マイクロ波に発癌性(遺伝子毒性)がある可能性を認定した時期である。

調査は役所が保管している携帯基地局の位置を示すデータ、市当局が管理している癌による死亡データ、それに国勢調査のデータを横断的に解析したものである。対象データは、1996年から2006年のもの(一部に欠落がある)である。

結論を先に言えば、基地局から半径500メートルの円周内で、癌のリスクが高くなることが分かった。1万人あたりの癌による死亡数と、基地局からの距離は、次のようになっている。明らかな相関関係が浮上する。

距離 100mまで:43.42人
距離 200 mまで:40.22 人
距離 300 mまで:37.12 人
距離 400 mまで:35.80 人
距離 500 mまで:34.76 人
距離 600 mまで:33.83 人
距離 700 mまで:33.80 人
距離 800 mまで:33.49 人
距離 900 mまで:33.21人
距離 1000mまで: 32.78人
全市        :32.12 人

検証対象のエリアに複数の基地局がある場合は、最初に設置された基地局からの距離を採用した。そのために汚染源の基地局を厳密に特定できない弱点はあるが、大まかな傾向を把握していることはほぼ間違いない。

基地局から200メートル以内は極めて危険性が高い。

◇イスラエルとドイツの調査

また、この調査では区単位で携帯基地局の林立状況と癌による死亡数の関係を解析した。その結果、市全体にある基地局の39・6%(2006年)が集中している中央・南区で最も癌による死者数(1000人あたり5.83人)が多いことがわかった。

また、基地局の占有率が低い区ほど、癌の死者数も少ない傾向がみられた。

携帯基地局のマイクロ波と発癌の関係を裏付ける疫学調査は、イスラエル(2004年)とドイツ(1993年から2004年)でも実施されている。

このうちにイスラエルのネタニア市で行われた調査では、基地局から350メートルの円周内における発癌率が、隣接地区よりも約4.15倍高いという結果が出た。女性の発癌率はとくに高く、10.5倍だった。

また、ドイツで行われた疫学調査でも類似した傾向がみれらた。基地局の設置から最初の5年間については、癌の発症率に大きな差はなかったが、1999年から2004年の5年間で変化が現れた。基地局から半径400メートル円内における発癌率が、円外の隣接区に比べて3.38倍になったのだ。

◇特定秘密保護法

日本の総務省と電話会社は、マイクロ波のリスクを過小評価し、マスコミもそれを批判しない。企業と政府、それにマスコミの3者が、莫大な政治献金や公告費、それに既得権(再販制度、軽減税率、電波利権など)を通じて癒着しているために、生命にかかわる重要な情報の多くが遮断されている。

こうした悲劇に加えて、12月には、特定秘密保護法が施行される見込みになっている。これにより原発の情報も、携帯基地局に関連した情報も、テロ活動の防止と緊急時の通信網の防衛を口実に、完全に隠されてしまう恐れがある。同法は、懲役10年もあり得る悪法だ。

参考:孫正義様、あなたはここに住む勇気がありますか?

2014年09月17日 (水曜日)

新聞社の社内には、「異能分子」と呼ばれる人物がいる。記者としてよりも、取材活動などを通じて構築した人脈を生かして、利益を追求するメディア企業としての社に貢献する人物のことで、目的のためには、極めて公益性が高いスクープを平気で握りつぶしたりする。あげくの果てには、取材活動を展開していた記者を、「ぶら勤」にして、報道現場から退場させる。

公共事業による無駄使いの典型例として悪名を馳せたのが、長良川河口堰の工事である。そもそも河口堰を設けなくても水害の危険がなかったことが科学的に裏づけられていた長良川に、河口堰が設置された背景に何があったのか?官僚たちは、いかに国民を欺き、新聞社の幹部がいかにいびつな「いじめ」を繰り返したのか?元朝日新聞記者・吉竹幸則氏が当事者として受けた報道弾圧の実態を詳細に語る。

第1部

第2部・第3部

2014年09月16日 (火曜日)

携帯電話の通信などで使われる高周波電磁波の安全性についての研究に携わっている世界の科学者らが、カナダ保健省が定めている「安全コード6指針」に苦言を呈する声明を、今年の7月9日に、発表していたことが分かった。声明のタイトルは、「科学者は高周波数の放射曝露からの防護を求めます」。声明はカナダ保健省のずさんな方針を批判する内容となっている。

声明の内容は、そのまま日本にもあてはまる。

◇愚民政策と電磁波問題

携帯電話やスマートフォンの普及により高周波電磁波に被曝する機会が増えている。ところが電磁波が人体に及ぼす影響については、ほとんど認識されていない。そのために膝の上に抱きかかえた乳幼児の頭上で、スマートフォンを操作している女性の姿をみかけることも少なくない。

電磁波のリスクが常識として定着しない背景には、次のような事情が考え得る。

電話会社や電力会社の大口広告主になっている新聞とテレビが、電磁波問題をほとんど報じないこと。

無線通信網の整備が国策となっている関係で、国や地方自治体が電磁波の危険性を知らせる活動をしないこと。むしろ人体影響はないと「宣伝」している。

「②」の背景には、巨額の政治献金が電話会社の労組から政界へ流れている事情がある。また、電話会社などへの天下りの事実もある。

国民の側に、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の感覚があること。

電磁波が視覚できない上に、被曝の影響がただちに現れることが少ないこと。

ここにあげた①から⑤は、「愚民政策」の結果である。

7月に発表された科学者の声明は、高周波電磁波の被曝と疾患の関係について、次のように指摘している。

疫学研究によつて、このRF曝露と、ガン、神経疾患、ホルモン変化、電気的過敏症(electrical hypersensitivity EHS)その他の症候とのあいだに、関連があることが示されてゐます。研究室における研究でも、ガン増加、異常精子、学習・記憶障害、および心臓の不規則疾患があきらかにされてゐます。

◇声明の全文

声明の全訳は次の通りである。

なお、翻訳者のポリシーにより訳文は旧仮名遣いになっている部分がある。

声明: 科学者は高周波数の放射曝露からの防護を求めます

[注:これは無線周波数の放射装置、すなはち、携帯電話とコードレス電話およびその基地局、Wi-Fi、放送局アンテナ、スマート・メーター(smart meters)とベビー・モニター(baby monitors)をふくみますが、それに限定するものではありません]

わたしたちは、電磁場(electromagnetic fields EMF)高周波の放射(radiofrequency radiation RFR)による健康と安全性の研究に従事してきた科学者です。わたしたちはカナダ保健省の「安全コード6指針」について重大な関心をもつてゐます。

カナダの安全コード6指針には基本的な欠陥があります。

カナダ保健省の安全コード6は、RFR研究の時代おくれの説明や分析にもとづいてをり、最近の研究、たとへば、この安全コード6指針がしめすRFR強度以下で起こる、ガン、DNA損傷、タンパク質合成、ストレス反応、およびヒトの生物学的、健康にたいする有害な作用を、軽視または極小化してゐます。

世界保健機構(WHO)は、電磁場の極低周波(2001年)と高周波(2011年)のふたつの帯域について、ともに『グループ2B、ヒトへの発ガン・リスクの可能性ありGroup 2B, possibly carcinogenic to humans』と分類したうへで、低い強度放射域での生物学的な作用を報告する概説と研究結果を公表しました。

カナダ保健省の安全コード6指針は人々を守るものではありません。

現在、多くの国々(中国、ロシア、イタリア、スイス)の、生物学的作用にもとづいたRF曝露の許容指針は、カナダ保健省安全コード6に含まれる、もつぱら熱作用に依存した旧式のRFR理解にもとづいた指針よりも、100倍も厳しいのです。

この安全コード6についての最近のレビューによれば(カナダ王立協会の報告『安全コード6の概要(2013):無線周波電磁場による曝露についてのカナダ保健省の安全限界』“A Review of Safety Code 6 (2013): Health Canada’s Safety Limits for Exposure to Radiofrequency Fields”)、カナダ保健省は、現在の指針値を低減しない、また恣意的に6分平均曝露の1,000倍を最大曝露量とすると決定しました。

さらに、公衆または環境に重大なリスクがありながら科学的コンセンサスが得られないときに、各国で用ゐられる「予防原則(Precautionary Principle)」にも、カナダ保健省は忠実ではないのです。

【声明】

毎日の生活で接するRFの放射源が増え、反健康の作用を伝へる報告も多くなつたため、カナダ人のみならず世界中の人々が、リスクの認識をひろめ、深めつつあります。1990年代に「無線時代」が始つて以来、健康科学の研究があきらかにしたことは、電磁場と電磁放射にたいしての、おほくの人々の真逆の対応の仕方でした。

疫学研究によつて、このRF曝露と、ガン、神経疾患、ホルモン変化、電気的過敏症(electrical hypersensitivity EHS)その他の症候とのあいだに、関連があることが示されてゐます。研究室における研究でも、ガン増加、異常精子、学習・記憶障害、および心臓の不規則疾患があきらかにされてゐます。

RF曝露による機能損傷にくるしむ人々や、低EMF環境で生活し、働き、子どもを育てることを選んだ人は、ますます相応しい場所を見つけられなくなつてきました。労働者としての生産性や、生計を営む潜在能力さへも、落とされてきたのです。

ある人たちは、わづかな生活資源のもとでの、孤立した、放浪者のやうな生活スタイルを強ひられてゐるのです。北アメリカの医療社会は、だいたいにおいて、RF曝露にたいする生物学的反応について無自覚で、病気になつた人々をどう扱かふかを知らないのです。症状を軽減させ、治癒を促進する範例的な方法は、曝露の遍在が部分的理由とはせよ、有効に働いてゐないのです。

公衆衛生の防護を求める、緊急な要請。

RFを放出しつづけ、とどめなく成長する技術陣営(technologies)によつて、公衆衛生(public health)と環境の健全(health of the environment)は脅かされてゐます。潜在的にいままでに蓄積されてきた生物システムに対する衝撃(impacts)が、将来どうなるかについての全うな考察が欠落してゐます。

わたしたちは緊急にカナダ保健省に求めます...

i)あらたに出現した公衆衛生に対する危機とみなす、わたしたちの見解と協調すること。

ii)利用できる最良の科学データにもとづいた指針を策定すること。この科学データは、ガンとDNA損傷、ストレス反応、認知的・神経学的障害、損傷再生、発達作用、子どもと若者における学習的・行動学的な諸問題、ならびにEHSとして分類される広範囲の症候群です。そして;

iii)カナダの人々に、曝露を、とくに子供たちへの被曝を減らすやうアドバイスすること。

署名者
全員博士号をもつ52人の署名科学者の名前と所属は割愛(原文を参照されたし)。

国別では下の18ヶ国:

ドイツ、トルコ、イタリア、フランス、アメリカ、ベルギー、ブラジル、ギ
リシャ、ロシア、スペイン、スウェーデン、カナダ、日本、インド、フィンランド、オーストリア、イギリス、中国

発行日: 2014年7月9日

(翻訳・渡邉建)

PDF:声明「「科学者は高周波数の放射曝露からの防護を求めます」

原文:http://www.cellphonetaskforce.org/wp-content/uploads/2014/07/scientific-declaration-to-health-canada-english.pdf

2014年09月15日 (月曜日)

だれかを法廷に引き出す行為は慎重にやらなければならない。提訴は司法制度を利用したドラスチックな攻勢ではあるが、同時にそれは高いリスクを伴う。

敗訴した場合に「反訴」という「返り血」を浴びる恐れが生じるうえに、たとえそれを回避できても、認定された裁判記録が永久に残り、それを根拠としたジャーナリズムの検証対象にされることがあるからだ。

場合によっては、訴訟に荷担した弁護士が懲戒請求の対象にされることもある。『弁護士職務基本規定』によると、「弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない」(75条)ことになっている。この条項に抵触するケースがままある。

前参議院の森裕子氏が、『最高裁の罠』の著者・志岐武彦氏を訴えた裁判は、8月5日に判決が確定して、現在は検証の段階に入っている。この裁判は、既報したように森氏の敗訴だった。裁判所が、原告の本人尋問や証人尋問すらも認めない異例の裁判だった。

裁判所が尋問を実施しなかったこと自体には問題があるが、被告の志岐氏にしてみれば、裁判に膨大な労力を割く日々から解放されたわけだから、歓迎すべきことである。また、森氏の支援者らから、ネット上で変人あつかいされた屈辱から解放された。

一方、わたしのような取材者の立場からすれば、小沢一郎氏と弘中惇一郎弁護士に対する証人尋問を実施してほしかった。検察から外部に漏れるはずがない捏造報告書の流出ルートを解明する必要があるからだ。

森氏の訴えがあまりにも理不尽だったためなのか、それとも元国会議員が「一市民」を訴える異例の裁判だったためなのか、判決が確定したあと、裁判を検証する動きが現れている。『財界にいがた』(9月号)に続いて、『東京スポーツ』がウエブサイトで「前国会議員に提訴された一市民が勝訴」と題する連載を始めた。

リンク先は次の通りである。

■東京スポーツの連載=前国会議員に提訴された一市民が勝訴

ちなみに『財界にいがた』の記事は次の通りである。

■   森裕子・前参議院議員が痛恨の完全敗訴で控訴断念

 

2014年09月12日 (金曜日)

新聞に対する消費税の軽減税率は適用されるのだろうか?いまや明らかに生活必需品ではない新聞を特別扱いにすれば、世論の反発を招くのは必至なので、適用は難しいのではないかとの見方が有力になっているようだが、わたしは確実に適用されると予測している。

ここ30年を振り返ってみると、新聞業界と政界は、何度か業界権益をめぐる攻防を繰り返している。順を追って説明しよう。

【1】1984年、当時の中曽根内閣は、マスコミ関連の7業種を対象としていた事業税の非課税措置を廃止する方針を打ち出した。ただ、完全に廃止するのではなくて、所得額の50%を控除したうえで、税額を計算する経過措置を取ったのである。

経過措置の期間は3年。ところがこの経過措置は、延々と延長され、結局、廃止されたのは1998年4月だった。13年も先延ばしされたのである。

「廃止は避けられない」と言いながら、13年も延長されたのだ。

この間に中川秀直議員らが自民党新聞販売懇話会を結成して、日本新聞販売協会(日販協)から、政治献金を受けるようになった。

【2】1990年代の後半になって浮上した新聞業界と政界の攻防は、再販制度をめぐるものだった。決着がついたのは2006年。この間、「再販制度の撤廃は避けられない」という見方が有力視されていた。

ところが2006年に、自民党の高市早苗議員や山本一太議員が、独禁法を改正して再販(厳密には新聞特殊指定)問題を扱う権限を公取委から取り上げる法案を自民党の経済産業部会に提出し、公取委の方針を抑え込んでしまったのである。

山本議員は、5年間で3千万円を超える政治献金(群馬県の選管で確認)を受けていた。斡旋収賄罪に問われないのが不思議だ。

高市議員も、後年、政治献金を受けるようになった。
■参考記事:山本一太議員 新聞業界から3千万円献金、見返りに露骨な業界保護活動  http://www.mynewsjapan.com/reports/1163

【3】そして現在進行しているのが、新聞に対する軽減税率の適用問題である。過去の解決パタンーを見る限り、今回も新聞業界は最終場面で、「特権」を勝ち取る可能性が極めて高い。

その根拠のひとつが、政治献金である。150人を超える政治家に献金がばら撒かれている。

■参考記事:新聞発行本社と日販協が一体化した運動を展開、消費税の軽減税率適用問題で、150人を超える政治家に献金も支出 

また、日販協が組織する300委員会(全国に300ある小選挙区の政治家支援組織)が、活動している事実も見逃せない。本来、独立した立場にいなくてはならない新聞社の販売組織が、水面下では政界と完全に癒着した実態があるのだ。

◇紙面内容にまで圧力

メディアをコントロールする最も手っ取り早い方法は、経営上の弱点を握って、それをターゲットとした「飴と鞭」の政策を行うことだ。消費税が上がれば、「押し紙」に対しても税が課せられるので、新聞販売網が破たんしかねない。と、なれば新聞社は公権力の言いなりになる。

政府や公取委が「押し紙」を取り締まらないゆえんである。「押し紙」問題を逆手にとれば、新聞をコントロールできる構図があるのだ。場合によっては、紙面内容にまで圧力をかけることもできる。悪質このうえない策略といえよう。

わたしが「押し紙」問題を重大視してきた理由もここにある。

ちなみに安倍首相も、「押し紙」問題を熟知している。「押し紙」について、国会で次のように発言している。

■安倍首相の「押し紙」発言

 

【訂正】9月11日付け記事に、1973年にチリで大統領選挙が実施された旨の記述がありましたが、「総選挙」の誤りです。お詫びします。

2014年09月11日 (木曜日)

   1973年9月11日、ひとりの大統領がファシストの銃弾に倒れた。
   その時、彼は64歳、チリで最も情熱にあふれた青年だった。

「今も生き続ける2人の死者」とは、1982年のノーベル文学賞の受賞者で、『百年の孤独』(新潮社)などの作品で知られるガルシア=マルケスが『チリ潜入記』(邦訳・岩波新書)の中で、使った表現である。

1973年の9月11日から、41年の歳月が流れた。

今回紹介した動画『戒厳令下チリ潜入記』は、73年の軍事クーデターの後、国外へ亡命した映画監督、ミゲル・リィティンが、86年にチリに潜入してピノチエットによる軍事政権下の祖国を撮影したものである。日本語版は「上」「下」に分かれていて、よりインパクトが強い「下」をあえて冒頭で紹介した。

ちなみに潜入取材の方法は、CM撮影を口実にして、ヨーロッパの3つの撮影チームを合法的にチリに送り込む一方で、リィティン監督がパラグアイ籍のビジネスマンに変装し、偽のパスポートを使い、空港から堂々とチリに入国して、撮影を監督するという大胆なものだった。ジャーナリズムにおける「違法行為」の正当性を印象づける典型的な手法である。

『チリの記録』(下)は、おおむね3つの構成部分からなっている。

①故パブロ・ネルーダが詩を書いたイスラネグラの家(0:40~)

②FPMR(マヌエル・ロドリゲス愛国戦線)との会見(3:00~)

③サルバドール・アジェンデの最後の数時間(6:55~)

◇サルバドール・アジェンデ

圧巻は③である。
9月11日の朝、アジェンデは軍部から、命と引き替えに政権を明け渡して、海外へ亡命するように勧められる。アジェンデはこれを拒否。国民に向けてラジオで最後の演説をする。その後、空軍による大統領官邸への無差別爆撃で命を落とす。

『戒厳令下チリ潜入記』は、最後の数時間をアジェンデがどう生きたかを、当時、行動を共にした秘書、主治医、それに親交が深かったフィデル・カストロ、ガルシア=マルケスといった多様な人々の証言で再現している。

アジェンデの死については、自殺説が有力視されていた時期があったが、『戒厳令下チリ潜入記』の証言を聴く限りでは自殺ではない。

チリはイギリスの影響で、ラテンアメリカで最も議会制民主主義が発達した国だった。1970年に成立したアジェンデ政権は、世界ではじめて、選挙によって成立した左翼政権(社会党、共産党)である。それまでは、ロシア革命、中国革命、キューバ革命など、武力による革命が世界史のページを綴っていたのである。

チリの左傾化が進むと、米国CIAによる介入がはじまり、経済封鎖だけではなくて、「資本家によるストライキ」が勃発するなど経済が混乱に陥る。しかし、73年の総選挙で与党が勝利すると、合法的にアジェンデ政権を倒せないことが明白になり、CIAと軍部は軍事クーデターに走ったのである。

日米関係を考える時も、米国が海外でどのような殺戮(さつりく)を繰り返してきたかを考える必要がある。ぼんやりしていると民主主義や自由は簡単に崩壊してしまう。

◇パブロ・ネルーダ

パブロ・ネルーダは、ラテンアメリカ文学を代表する大詩人である。1970年度のノーベル文学賞受賞者。外交官としてスペインに赴任していた時期に、当時、詩人のガルシア・ロルカらと親交を深め、フランコに反旗を翻していたスペイン人民戦線を支援して解任された。

わたしが初めてパブロ・ネルーダの詩を読んだのは、高校を卒業した次の年、軍事クーデターから数年後だった。日本でも『ニクソンサイドの勧めとチリ革命への賛歌』(大島博光訳)が紹介され、たまたま図書館の新刊棚にあったのを借りて読んだのが最初だった。

読後、詩と詩人のイメージが覆ってしまった。それまで詩や詩人は、「ひ弱な世捨て人」という印象があった。典型例としては、たとえば、

閑さや岩にしみ入る蝉の声(松尾芭蕉)

ところがパブロ・ネルーダの詩は、こうした美観・芸術感とは対極にある。『ニクソンサイドの勧めとチリ革命への賛歌』の冒頭の詩は、

やむにやまれぬ わが祖国への 愛から
おれは きみに訴える 偉大な兄貴よ
指も灰色の ウォルト・ホイットマンよ

血まみれの 大統領 ニクソンを
詩の力で うちのめしてやる そのために
すばらしい きみの助力を かしてくれ

(略)

吟遊詩人よ やってきて はげましてくれ
おれは テロリストの 蛆虫(うじ)どもにたいして
十四行詩で武装した詩人の義務を 引きうけるのだ

(略)

詩人とは何か?
心の中に芽生えたこの自問は、その後、1987年にメキシコへ行ったときに再燃した。借りていたアパートの持ち主が、グアテマラから亡命してきた医者だった関係で、時々、この医者と話す機会があったのだが、当時、激化していたニカラグア内戦に話が及んだとき、医者は自分が受けたファシストによる迫害とニカラグアの人々の苦痛を重ねあわせて、こんなふうにつぶやいたのである。

「ニカラグアの人は、みんな詩人ですよ」

ラテンアメリカの人々にとって詩人とは、不当な事に対しては屈しない人のことを意味する。その意味では、サルバドール・アジェンデも詩人だった。

とはいえ、ネルーダは革命詩だけを書いたわけではない。ガルシア・マルケスの『チリ潜入記』によると、魔法使いのようにあらゆるものを詩に変えていったという。

ネルーダは、軍事クーデターの後、白血病が悪化して亡くなった。リィティン監督は、ネルーダがかつて詩を書いたイスラネグラの家を訪ねる。そこで目撃したものは・・・・

    そこには禁令と闇を突き破って、
  ネルーダに宛てた恋人たちのメッセージが書かれている。
  ひとつひとつの木片に情熱と政治的プロテストがとけあった無数の愛のメッセージが書き付けられてた。
    「君は自由を愛した、だから君を忘れない、パブロ」

◇FPMR(マヌエル・ロドリゲス愛国戦線)

FPMRは軍事政権の下で、武装闘争を展開していた組織である。「愛国」という名前が付いているが、チリの伝統だった民主主義を取り戻すことが彼らにとっての「愛国」である。

参考:前編

2014年09月10日 (水曜日)

新聞の発行部数が大幅に減少する傾向に歯止めがかからない。7月のABC部数によると、朝日新聞がひと月で約13万部、読売が約3万1000部の減部数となった。これに対して毎日は約3000部増えている。

一方、「対前年同月差」は、読売が-約60万部、朝日が約-30万部などとなっている。少年少女新聞も部数を減らしている。

7月のABC部数「対前月差」は次の通りである。()内は販売部数。

朝日:-130,222部(7,266,866部)
毎日:  +3,014部(3,305,207部)
読売: -31,309部(9,248,446部)
日経:  +1,920部(2,772,945部)
産経:      -3部(1,607,593部)

「対前年同月差」は次のようになっている。

朝日:-301,843部
毎日:- 64,588部
読売:-603,341部
日経: -26,930部
産経:  -4,578部

◇子供新聞の減部数

少年少女向けの新聞も、軒並み減部数である。()内は販売部数。

朝日小学生:  -3,071部(94,678部)
読売KODOMO:-8,592(212,136部)
朝中W:         -2,874(51,087部)

夕刊も、軒並み減部数である。()内は販売部数。

朝日:-293,360(2,439,236)
毎日: -40,147(  970,459)
読売:-265,048(3,101,214)
日経: -21,073(1,388,420)
産経: -31,3668( 504,802)

■出典:7月のABC部数

■参考:「押し紙」&折込チラシ詐欺の専門サイト

【注1】なお、ABC部数は、「押し紙」を含んでおり、ここで示された数字が、実配部数(実際に配達されている新聞)を正しく反映しているとは限らない。また、これらの数字は、新聞社が自主的に申告した数字であり、監査(公査)の対象になるのは、ほんの一部であることも付け加えておきたい。

【注2】また、このところ朝日新聞が慰安婦報道が原因で、同業の新聞社、週刊誌、テレビなどから異常なバッシングを受けているが、ここで紹介した数字は7月のものなので、減部数の原因が慰安婦報道にあるとは限らない。

2014年09月09日 (火曜日)

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

集団的自衛権容認へと、この国の戦後の歴史の転換点となった今年。終戦記念日の8.15には各地で様々な集会が開かれ、多くの議論がなされました。しかし、安倍首相が何故、こうも閣議決定を急いだのか。

私には、今夏のどんよりした空のようにその真意が見えるようで、実は見えません。でも、真意はどうあれ安倍氏が、この国を取り巻く現実から見て、あまりにも荒唐無稽、危険な考えの持ち主であることだけは、はっきり見えるのです。

安倍首相は、軍事大国化を目指している…。確かに彼の言動を聞いていれば、そうとも取れます。集団的自衛権容認は一里塚。憲法9条を改正し、この国を「戦争の出来る国」にしようと考えていることも、ほぼ間違いないでしょう。【続きを読む】

2014年09月09日 (火曜日)

『財界にいがた』(9月号)が、7月18日に判決があった「森裕子VS志岐武彦」の裁判を総括する記事を掲載している。タイトルは、「一市民を名誉毀損で提訴した森裕子・前参院議員が痛恨の完全敗訴で控訴断念」。

通常、裁判が終了すると、法廷における被告と原告の攻防は、過去のでき事として、記憶の片隅に追いやられてしまうものだが、裁判の終わりは調査報道の終わりではない。5年、10年、あるいは20年の検証が必要だ。その意味で、『財界にいがた』の報道には意義がある。

この事件は、MEDIA KOKUSYOでも繰り返し報じたように、2009年9月14日に投票が行われた民主党の代表選に端を発している。菅直人氏と小沢一郎氏の対決だった。

ところが投票日と同じ14日に、小沢氏の身の上に政治生命にかかわる事件が勃発する。東京第5検察審査会が小沢氏に対して、起訴相当決議を下したのだ。これにより小沢氏は強制起訴されることになった。

小沢氏が菅氏を追い上げていただけに小沢落選で、支持者は落胆したと同時に、東京第5検察審査会を管轄する最高裁事務総局に対する疑念を抱いた。

あまりにも不自然だ。なにか裏工作が行われたのではないか?

この疑惑の解明に乗り出したのが森氏と志岐氏だった。そして調査の過程で東京第5検察審査会が、「幽霊審査会(架空の審査会)」だった疑惑が深まったのである。架空の審査会、つまり最高裁事務総局が小沢起訴を決めた公算が強くなったのだ。

それを裏付ける根拠が、情報公開制度で入手した膨大な資料を検証する中で、次から次へと浮上してきたのだ。さらに裁判が終了した後も、新疑惑が発見されている。これについては次の記事を参照にしてほしい。

■検察審査会法の41条の解釈変更、報道されないうちに変更されていた、だれもが簡単に刑事被告人になるリスクの到来

志岐氏は「幽霊審査会(架空の審査会)=最高裁事務総局のよる議決」説を一貫して主張した。これに対して、森氏はある時期から「幽霊審査会(架空の審査会)」を否定、「検察誘導説」(検察官が審査員を誘導して小沢氏を起訴させたとする説)を強調するようになった。そして論争に発展し、森氏が志岐氏を名誉毀損で提訴するに至ったのである。