2015年06月25日 (木曜日)

時代をさかのぼること半世紀、昭和30年代には、すでに「押し紙」が深刻な問題として浮上していた事実は、日販協(日本新聞販売協会)が発行してきた『日販協月報』にも記録されている。

1963年(昭和38年)11月25日付けの同紙は、日販協の全国理事会が「押し紙」排除を決議したことを伝えている。決議は次の通りである。

 新聞販売業界の安定と向上を阻害するものは「押し紙」「積み紙」である。われわれは「押し紙」「積み紙」を絶滅して明朗公正な取引の姿を実現するため発行本社および販売業者の自覚を強く要請する。

 右決議する。

 昭和三十八年十一月二十七日 

社団法人 日本新聞販売協会全国理事会

■出典:日販協月報PDF

この理事会には、大分県四日市で新聞販売店を経営する柚園要蔵さんという店主が上京して、飛び入りのかたちで理事会に参加している。柚園氏は、翌28日には、公正取引委員会を訪問して、「追起訴の打ち合わせを開始した」という。同氏は、これに先立ち、すでに公正取引委員会へ「押し紙」を告発していたのである。

◆「山梨時事」のボイコット

柚園氏が公取委に「押し紙」を告発した翌月には、山梨県で販売店主らが「押し紙」に抗議して、「山梨時事」の販売をボイコットする事件が起きた。ボイコットに参加した販売店は10店。

ちなみに「山梨時事」は、戦後まもなく創刊された地方紙で、1963年に廃刊に追い込まれた。発行部数は、約5万部。経営が苦しい新聞社ほど、「押し紙」を強要するなどでたらめな政策を徹底する傾向があるのは、昔も今も変わらないが、「山梨時事」はその典型だったようだ。

この事件についても、『日販協月報』(1963年12月25日)が報じている。ボイコットを決行した事情を説明するために、店主らが読者向けに作成したチラシは、「押し紙」の実態について次のように述べている。

 ところが最近、紙数の伸張にのみ狂弄し、理不尽な販売政策を推し進め、売れない新聞を一方的に押しつけ、 店を苦しめてまいりました。売れない新聞を泣く泣く受けて、売れない新聞代金まで払ってきたのです。それは改廃(店が新聞社から一片の通知で首を切られること)を恐ろしいばっかりに歯を食いしばって我慢してきたのです。

半世紀を超える歳月が過ぎても、「押し紙」問題がいっこうに解決しない背景には、やはりそれなりの理由がある。あくまでもわたしの推測になるが、新聞社の経営上の汚点を逆手に取って、新聞の論調をコントロールする戦略が、公権力の間で暗黙の了解になってきたからではないだろうか。

新聞を愚民政策の道具に変質させる意図があるのではないか?

「押し紙」問題を放置して、いくら紙面を批判しても、新聞ジャーナリズムの再生はありえない。

2015年06月24日 (水曜日)

共同通信社が20日と21日に行った世論調査は、安倍内閣の支持率47.4%(5月は49.9%)という数字を示した。また、朝日新聞がやはり20日と21日に行った調査によると、内閣支持率は39%(前回調査の5月16日、17日は、45%だった)だった。いずれも低落傾向が現れている。

もっともマスコミが権力構造に組み込まれている状況下で、メディア企業が実施している世論調査をどの程度まで信用してもいいのかという疑問は残るが。

これまで安倍内閣が高い支持率を維持してきた背景には、アベノミックスに対する幻想を抱いていた人々が多かった事情があるようだ。マスコミは、さかんに安倍政権下での景気回復をPRしているが、たとえそれが数字を裏付けとしたものであっても、それほど単純な評価ができるわけではない。

結論を先に言えば、アベノミックスにより富裕層の市場と庶民の市場が出現している。そして、これら2つの市場への分化が始まっている。マスコミが「好調」をPRしているのは、富裕層の市場であって、庶民の市場は、物価の高騰や消費税の影響などもあり、冷え込んでいるというのが実態のようだ。

◆2つの市場の出現

SankeiBiz に百貨店の好調ぶりを報じる次のような記事が掲載された。

 日本百貨店協会が19日発表した5月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比6.3%増と2カ月連続で前年を上回った。好天が続いたことで夏物衣料や化粧品などが好調だったほか、訪日外国人向けの売上高増も寄与した。増税の影響がなかった一昨年同月比でも1.8%増で、景気の回復基調を裏付ける結果となった。(6月20日)

この記事を読む限りでは、旅行者を含む不特定多数の客が百貨店に殺到して、売り上げが延びたような印象を受ける。経済は好調と言わんばかりである。しかし、経済に詳しいある上場企業の元役員は次のように話す。

「アベノミックスによる株高で、金持ちはさらに豊かになり、タクシーで百貨店へ行き、10万円、20万円といった高級なブランド品などを購入するようになっているんです。百貨店はそれだけで、採算があいます」

市場の2極化が典型的に進んでいるのが中国である。わたしはここ数年の間に、何度か中国を取材したが、百貨店に陳列されているブランド品は、日本の市場に出回っているものよりも高い傾向がある。その一方で、庶民が集まるマーケットにおける商品価格は、日本よりも格段に安い。

ちなみに日本を訪れる中国の富裕層のお金は、日本の百貨店にも流れ込んでいる。

さらに1980年代から90年代に新自由主義の実験場にされたラテンアメリカでも同じような実態-2つの市場の存在があった。高級な店が軒を連ねるライトに照らしだされた通りと、露天商がひしめく庶民の共同市場が共存していた。それはあたかも「繁栄」と「悲劇」の共存だった。

◆医療も2極化する

アベノミックスで富裕層の経済が活性化していることは紛れもない事実である。多国籍化した大企業は空前の利益を上げている。法人税を下げると同時に、成長産業に対しては、積極的な支援策を打ち出しているわけだから、ある意味では当たり前の結果である。

が、それによる富裕層の「繁栄」を理由に、国民全体の生活が相対的に向上したことにはならない。ジャーナリズムは、顕著になってきたこのような矛盾の構図をあぶりだすべきだが、アベノミックスにより景気が回復しているかのような幻想を振りまいている。

将来的には、医療や福祉の面でも、2極化が進む可能性が高い。「混合診療」の導入で、医療行為を市場化し、富裕層は最先端医療の恩恵にあずかり、それ以外の人は、普通の医療か、あるいは医療が受けられなくなる。

安倍内閣の支持率低下は、安保法制をめぐる国会運営に対する批判の声の反映だけではなく、水面下で進行している経済政策のトリックに多くの人々が気づき始めた結果ではないか。

2015年06月23日 (火曜日)

6月3日に実施された特定秘密保護法違憲訴訟の原告本人尋問で、林克明氏に続いて、警察取材のスペシャリスト・寺澤有氏が証言台に立った。林氏がおもに情報公開や官庁の直接取材を試みる際に受けた特定秘密保護法の悪影響について証言したのに対して、寺澤氏は、「潜入」を含む非公式なルートを使った取材の際に受けた悪影響について証言した。

その中で寺澤氏は、2009年、栃木県小山市で起こった強盗事件を例に特定秘密保護法の危険な一面を指摘した。これは、パチンコ店の経営者で朝鮮総連の幹部でもあった男性の豪邸に「強奪犯」が入ったものの、次々と警察に逮捕された事件である。主犯とされた人物から逮捕直後に手紙を受け取った寺澤氏は、独自の取材に着手した。

寺澤氏の証言によると逮捕された容疑者らは、ある人物から強奪の芝居をするように依頼されていたという。目的は、北朝鮮への送金がらみの税対策という理由だったらしい。

この「策略」をもちかけて来たのは、マツダと称する人物。ところがマツダは、「犯行現場」にはいたものの、姿をくらませてしまったという。寺澤氏は、証言の中でマツダについて次のように述べている。

「その方は公安警察官か,公安警察官OBか,少なくとも協力者,スパイであることは間違いないと。」

かりにマツダが本当に警察関係者であれば、ジャーナリストとして寺澤氏がマツダの行方や素性を調査する行為が特定秘密保護法に抵触する可能性が出てくる。取材活動に支障が生じるのである。

寺澤氏は、この事件に菅生事件の構図がある可能性を指摘した。菅生事件とは、1952年に日本共産党を弾圧するために公安警察が共産党員に扮して、駐在所を爆破させた自作自演の冤罪事件である。ジャーナリストの故斎藤茂男氏により明らかにされた。

寺澤氏に対する尋問の詳細は次の通りである。尋問調書中の小見出しは、編集段階で便宜上、挿入した。

 

■寺澤尋問調書

原告ら代理人(山下):《甲第10号証を示す》これは寺澤さんの陳述書ですね。

・・・はい。

山下:ここに署名と印鑑がありますが,これは御自分で押されたものですね。

・・・はい,そうです。

山下:内容も御自分で作られたと。

・・・はい,そうです。

山下:経歴等はここに書いてあるとおりということですね。

・・・そのとおりです。

山下:今日は陳述書にないこともお聞きします。寺澤さんはこれまで自衛官に対する取材をしたことがありますか。

・・・はい。

山下:これまではどういう方に取材をしていたんでしょうか。

・・・いろんな自衛官あるいは防衛省職員の方に取材しました。

山下:その取材する中で,具体的に取材をした人から情報を頂いたり資料をもらって,それを記事にしたこともあったんでしょうか。

・・・はい,そういうことで何回かスクープの記事を書いて,そのうち何個かは国会でも取り土げられるような問題になりました。

山下:そのような場合,どういうふうな形で、取材を行ったんでしょうか。

・・・様々なケースがありますけれども,基本的には現職の自衛官,防衛省職員の中で,こちらの取材の趣旨,そういった公益性が高いことを防衛省や自衛隊が隠していることを表に出したほうが,結局は防衛省,自衛隊のためにもなりますよという,そういう取材の趣旨を理解してもらった上で協力してもらうと,そういうことです。

山下:具体的にどういう場所で,どういう方法で取材をしたことがありますか。

・・・それは様々ありますけれども,例えば防衛省や自衛隊の施設の中にそういったスクープの材料となる証拠物があるということであれば,その方に手引きしてもらって中に入って,その証拠物を写真撮影したりとか,そういうことをしたこともあります。

山下:最近,秘密保護法が施行された後ですけれども,最近自衛官を取材したことがありますか。

・・・5月14日に安保法制が閣議決定された直後に自衛官の方を取材しました。

◆自衛隊員の隊員家族連絡カード

山下:そこではどういうお話が出たんでしょうか。

・・・自衛隊員に隊員家族連絡カードというものが配付されて,それはこれまで自衛隊ではなかったそうなんですけれども,非常に細かく,何かあったときのために連絡先を書けということで,第三家族というところまで細かく,自分らの実家,親ですね,あるいは妻のほう,あるいは兄弟,知人,友人関係,そういったものの連絡先を,携帯のメールアドレスまで書かせるというようなことをやって,自衛隊の中で,なんでこんな安保法制の閣議決定のときにそういうものを書かせるんだ,何かあったときのためと,戦争をやったときのためでしょうということで,非常に内部で問題になっているという話を聞きました。

山下:具体的に寺澤さんはそのカードですね,隊員家族連絡カード,それ自体を見せてもらったり,又はその写しをもらったということがあるんでしょうか。

・・・口頭で説明を受けまして,で,口頭では幾ら詳しく説明されてもやっぱり現物を見てみないと,報道する上でできないので,現物のコピーを提供してくれというふうにお願いしました。

山下:それは提供されたんでしょうか。

・・・それは非常に,この秘密保護法の関係で,それはできないということで断られたのを,さんざん説得してということがありました。

山下:最終的に何らかのものが提供されたんですか。

・・・結局後日,記入例だけ,スマホの画像で、撮ったものをもらいました。

山下:それでもそれは公表してはならないという。

・・・ええ, しかもそれは絶対にこれをそのままどこかに掲載したりとか,とにかくどこかほかの人に見せるとか,それはやめてくれということで提供を受けました。

山下:これは先ほど,過去の自分の経験で,施設に入って資料を見せられたり,それで、写真を撮ったりしたことがあるという経験から照らすと,今回の対応は以前とは異なっていたということですか。

・・・その方はまさに2 0年, 3 0年,自衛官をやっている方で,その方の手引きで自衛隊の施設に入って証拠物の写真を撮ったことがありますし,そのときに,自衛隊の施設に入るんですから,いろいろ当然止める人がいるわけですよね,そちらさんどなたさんですかと,それをどうするのかなと思ったら,説得して,連れだからということで、入ったというようなことがありました。

山下:今,記入例1枚を後でスマホでもらったということですが,以前だったらどういうふうになったんですか。

・・・そのようなことまでこちらの取材意図を理解して協力してくれる人なのですから,以前だったら別に,記入例はもちろん,書類一式,どのような実施要綱なのかとか,指示文書なのかとか,一式コピーをくれていたと思います。

◆小山事件は菅生事件の再来か?

山下:次に警察官に対する取材についてお聞きしたいと思います。

《甲第106号証の1ないし3を示す》

山下:これは新聞記事ですけれども,これは何に関する記事ですか。

・・・それは2009年6月に,栃木県小山市で発生した強盗事件に関する新聞記事です。

山下:これは狂言強盗だということだったというんですか。

・・・それは2009年6月にパチンコ店のチェーン店を経営する資産家で,なおかつ朝鮮総連の幹部の豪邸に強盗が入ったという事件です。

山下:これを取材するきっかけは何だったんですか。

・・・これは, 1 0人くらい強盗で、入っているんですけれども,その主犯格とされる人が, 1 0人目の人,逮捕者が, 2 0 1 3年5月28日に逮捕されているんですが,その■■という主犯格の方から逮捕直後に手紙をもらって,取材を始めました。

山下:その方は,その取材をしてもらいたい趣旨といいますかね。

・・・つまりこれはですね,その朝鮮総連の元幹部で,パチンコ店経営の●●さんという人なんですけど,この●●さんのほうから,北朝鮮に送金しないといけないだとか,原資は脱税の金だとか,そういったものが,庭に30億円だかなんだかドラム缶に入って入っていると,これをとにかく強盗されたことにしたいんで,狂言強盗やってくれという話があったので,そういうことだから,出来レースだからと, しかも警察の家宅捜索を装ってそういうことをやってくれというふうな依頼があってそれをやったところ,実際にはお金がなかったというようなことだったんです。

山下:その後警察に捕まったということですか。

・・・ええ,その警察もですね,狂言強盗だからということで,本人たちは,その1 0人くらいの人たちは,全くそれはただ演技するだけだと思って入ったところ,庭に現金は埋まってなくて, しかも,なんかこれは話が違うなということで,二,三十分で退出するんですけれども,そのときにはもう覆面パトカーが外で何台も待っていたと,それでカーチェイスをやって逃げるというような事件です。

山下:それで何といいますかね,ここで問題になるのは,この事件が狂言強盗という話ですが,何が一番問題になっているんですか。

・・・その●●さんのほうの依頼だということで,その主犯格のほうに話を持ってきた人間がいます。その人間はマツダと名のっていたそうですけれども,その人間は現場にもいました。'ところが,その人間は,金属探知機を持ってきて,これは米軍が地雷を見付けるために使っている高性能な金属探知機だと。これを使って庭を探せばドラム缶が埋まっている場所が分かるから,これで掘り起こして,それを掘り出せという指示をして,本人もその現場に金属探知機を持ってきていたんですが,その人間はこっ然と消えてしまうわけですね。

山下:その人間はというか,いまだに。

・・・マツダなる人問。

山下:いまだにどこにいるか分からないと。

・・・ええ、その人間は金属探知機だけ持って,車もなぜか置いて,遺留品とかがたくさん積んであるのをわざわざ置いていって,警察のほうに証拠を残すような形で置いていって,それでいなくなっているわけです。

山下:それが,その方が実際はどういう人物だと考えられるわけですか。

・・・その方は公安警察官か,公安警察官OBか,少なくとも協力者,スパイであることは間違いないと。で,なおかつその,この新聞記事にもありますけれども,●●さんのおうちの隣は栃木県警の官舎ですから,その官舎に歩いていけばいいだけで。

山下:それで,過去に菅生事件というものがありますけれども,それと似たような構造ではないかということですか。

・・・はい,菅生事件,私も過去に取材してますけれども,市木春秋さんと名のる,本名戸高公徳さんという公安警察官が日本共産党に潜入して,日本共産党員を扇動して,自分でダイナマイトを持ってきて,派出所を,菅生村の派出所を爆破すると,そういう自作自演の事件です。

《甲第104号証を示す》

山下:だからこの事件と、 今の,先ほど言われた狂言強盗事件は似た構造ではないかと。

・・・非常に似ているというふうに思います。

山下:それは,取材に当たって障害になっているというのは,何が障害になっているんですか。

・・・つまり消えてしまったマツダなる人物を探さないといけないんですけれども,このマツダさんというのは,明らかに特定秘密に当たるような方であろうなというふうなことが容易に分かるわけですね。

山下:それが取材の非常に障害になっているということでしょうか。

・・・はい。付け加えると,マツダさんというのが,新聞記事からも明らかですけれども,もう,現場にいなかったことになっちゃっているので,警察の捜査では。

山下:捜査対象になってないと。

・・・しかも,そういった狂言強盗だということを幾ら捕まった人たちが供述しても,警察は一切それは採用しないで,ただの強盗事件として処理したと。

山下:今それは刑事裁判になっているんですね。

・・・今その主犯格の人は無罪を主張して,宇都宮地裁の栃木支部で係争中です。

◆Nシステムの実態

《甲第103号証を示す》

山下:これは栃木県で起きた女児殺害事件についての新聞記事ですけれども,現在,寺澤さんはこの事件についても取材されていると。

・・・取材しています。

山下:この事件について,どういう点が取材の上で障害になっているんでしょうか。

・・・この今市事件は,発生のときもちょっと取材したことがあるんですが、これは昨年,●●さんという方が容疑者として逮捕されて,その後自供したということになっているんですが,物証が全然なくて,これは恐らく冤罪であろうというふうに思われる事です。

山下:今取材する上で何か障害になっていることがありますか。

・・・物証がないので,じゃあどうする,どう補うんだという話になっでいるんですけれども,この方が,●●,今被告ですが,この●●被告が死体を遺棄したということになっているんですけれども,この●●被告がじゃ死体を遺棄したというそのルートに, Nシステムというようなカメラが付いているわけです,公安警察官が使っているカメラがあるんですけれども,そのカメラを,記録を,履歴調べれば,本当にそこを通っているのか,あるいは本人が,車は通っているけれども,運転していたのは本人なのかとか,そういったことも分かるんですが,まさにこのNシステムというのは,公安警察が1980年代後半からずっと秘匿してきた機械なので,これに触れることは本当にできないという感じです。

《甲第102号証を示す》

山下:これは何でしょうか。

・・・これはそのNシステム,通称Nシステム,自動車ナンバー自動読み取り装置の,どういうふうにこれを運用するかということを定めた警察庁の文書ですね。

山下:情報公開で取ったんですね。

・・・はい。

山下:これの後ろのほうに第9という,後ろから2枚目,下から4行自にありますが,この最後のところは何を書いてあるんでしょうか。

・・・これは今まで,このNシステムというのはそもそもは盗難車両を見付けるために設置してますという大うそを警察庁はついていたんですが,これは公安警察が運用しているもので,今まで盗難車両含めて,いろんなこういう刑事の裁判に証拠で出たことが一切ありません。で,この警察庁の文書を見ても,これによって「判明した事項を,公判に証拠として提出してはならないものとする。」と明記されているんですね。

山下:そうすると,この,先ほどの今市事件の取材において,この点は結局全く裁判の証拠にも出ていないということで。

・・・裁判の証拠には出せない, 「公判に証拠として提出してはならないものとする。」というんだから,そもそも存在しないことにしろというデータなんですから,それをこちらは暴いて何とかしようとしているんですから,それは秘密保護法違反に当然なるんじゃないんですかね。

山下:ということで取材が大変困難になっているということですか。

・・・はい。

山下:先ほど自衛官のケースで施設のほうに入って資料を見せてもらったり,写真を撮ったことがあるということですが,警察官に対する取材においても同じようなことはあったんでしょうか。

・・・警察に関する取材でも,警察関係の人の手引きによって,警察関係の施設に入って,警察が不正な会計処理をしているという証拠書類をファイルの中から私が選んで,その部屋のコピー機でコピーして持ち出したということがあります。
山下:それで,この秘密保護法が施行された現在において,警察官に対する取材というのは,以前と比べて何か変わったんでしょうか。

・・・以前でしたら,今述べたような今市の事件でも小山の事件でも,取りあえず知っていそうな警察官を当たったりとかする,その他もろもろな手を使って何とか真相を明らかにしようとするんですが,今現在この法律があると,先ほどの自衛官の,長年付き合いがある自衛官の対応を見ても分かるように,ちょっと今,そういった特定秘密を扱っている人間に当たることは非常に危ないと,こちら側が危ないということなので,警察関係には当たらないように取りあえずしてます。

◆自由な民主主義国家という幻想

山下:寺澤さんは今回裁判を,本件訴訟を提起された中心の1人ですけれども,どうしてこの裁判を起こそうと思ったんですか。

・・・今菅生事件の話が出ましたけれども,菅生事件でも, 1952年発生の事件ですから,もう60年とか前の事件ですが,その60年前に公安警察あるいはこちらにいらっしゃるような内閣情報調査室の方たちとか,そういったところはそういう謀略をやっていたわけなんですが,今現在においてもそういった謀略,非合法な謀略とか陰謀とか言われるものを現実にこの日本で,この民主主義,自由な民主主義国家と言われる日本で、やっているということを明らかにしなきゃいけないんですが,この秘密保護法という法律は,今述べたように全くそれを許さないという法律であると,これはとにかく施行されたら取材ができなくなってしまうということで,あらかじめ差止めなどを求めて提訴していたんですが,実際施行されたらこんな有様だと,もう予想、どおりの展開ということです。

山下:それでは主尋問の最後に,これだけは言っておきたいということがあったら言ってください。

・・・私は今日3つくらい現在取材中の事例を挙げましたけれども,本当だったらこんなところで今私こんなの取材してますなんて,べらベらしゃべるのは本当におかしいことで,だけど裁判所のほうに,これぜひ違憲判決を書いていただきたいと,そのためにはかなり具体的な,詳細な材料を提供しなきゃいけないと思ったので,私,手持ちの札でいえばジャックとクイーンとキングとエースがあれば,クイーンとかキングくらいの札,これ3枚切っているわけですから,ぜひこれは違憲判決を書いていただきたいというふうに思います。

被告指定代理人(田原):ありません。

裁判官(平山):先ほど自衛官の協力者の方がいて取材をされているという例を挙げていただいたんですが,その自衛官の方に取材の目的をとくとくと説明をして協力を得られていたというお話があったと思うんですけれども,取材の目的というのはどういうようなことを説明されるんですか。

・・・それはいつの場合ですか。

裁判官(平山):過去の場合です。

・・・過去の場合,いろんなケースがありますから,自衛隊の中で,例えば,だから,やはり同じような予算の,税金の不正な使用というような事案があった場合に,そういったようなことが自衛隊内で続けられているのは良くないから、1回表に出せばそういう悪い慣行というか,そういうこともなくなるんじゃないですかと。

裁判官(平山):過去のは予算の不正使用の事例だったということですかね。

・・・いや,もう私も自衛隊のことかなり書いているので,今言ったようなことで,予算,税金の不正な使い方であればそういうふうな説明をしますし,天下りの問題であれば,防衛企業に対する天下りの問題でまた問題があれば,またそれに関して,こうやって天下りして便宜供与を受けてと,こういうようなのは良くないんじゃないかと説得して,それぞれ相手違いますよ,それぞれの人を説得して,協力してくれる人は協力してくれると,そういうことです。

裁判官(平山):今回妨げられた例というのは,どういった辺りの話についてということなんですか。

・・・どういった辺りって,隊員家族連絡カードですか。
裁判官(平山):隊員家族連絡カードについて,どういう点で取材に応じてもらったほうがいいんじゃないかというような説明をされるんですか。

・・・ですから,安保法制が閣議決定された前後に,何かあったときのためにこれ書きなさいと,さっきは言い忘れましたけれども,その隊員家族連絡カードって,実際スマホで、撮った画像を提供してもらったんですけど,見たところ,かなり詳細に連絡先以外にも書かせるんですね。で,健康状態とか特記事項があるんですよ。その特記事項に書かれている記入例が,本人,隊員のお兄さんが精神疾患,丸々病院精神科通院中とか書いてあるんです。だから,要するにそのカードを見たら,全自衛隊員に対して適性評価をやるということだなと,私は思ったんですよ。

裁判長(谷口):今の連絡カードなんですけれども,取材先の方の認識としては,それは一応特定秘密にまでに当たらないというお考えで,あなたのほうにスマホで写真を撮ったもので頂いたんでしょうか。

・・・いや,私はもうその,これが特定秘密に当たるかなんて,そんな話をし出したら,向こうは何もしてくれなくなってしまうので,とにかくどんなものか,現物のコピーをくれということを強く要求して,で,それでどうなのかと思ったら,スマホで、撮った画像の,記入例だけですけど,記入例だけもらったということです。

裁判長(谷口):特に特定秘密かどうかというような話は,することはできないというような。

・・・できないですし,さっきも言いましたけれども,それに関連する文書,絶対あるわけです。こういうふうに記入しろとか実施しろというのは。だけどそれは,とてもそれをもらえるところまではいかないと,いってないということですね。以前だったら一式まとめてコピーもらえたと思いますけど。

裁判長(谷口):特定秘密にそれが当たるかどうかは分からないけれども,当たらないとしてもなかなか取材が難しくなったことの例として今お話を頂いたと。

・・・そうです,だから,私,陳述書の中で,ほかの人もそうですけれども,取材を受けるほうは別にこれは特定秘密に関する取材かそれ以外かって峻別してやることはできないわけですから,それは取材一切受けないというふうになってしまうと,というようなことを述べているかと思いますが,つまりそういうような事態も起きていると,私はその附属している文書は特定秘密に触れるものがあると思うけれども,実際にはそういうような対応になっちゃっているということですね。

2015年06月22日 (月曜日)

フリーランスのジャーナリストや編集者、それに映像作家などが起こしている特定秘密保護法違憲訴訟の第6回口頭弁論が去る6月3日に行われ、原告に対する本人尋問が行われた。原告から林克明氏と、寺澤有氏が尋問に応じた。

このうち最初に証言台に立った林克明氏は、実際に取材をする際に、特定秘密保護法により、どのような負の影響を受けたかについて詳しく証言した。

たとえば林氏は、情報公開制度を利用して、外務省と内閣府に対し、後藤健二さんらの人質事件に関する文書類と、安倍首相が海外で表明したイスラム国絡みの人道援助に関する文書類の開示を請求した。

これに対して、内閣府からは、文書そのものが存在しないという答えが返ってきた。これについて林氏は次のように証言した。

・・・・これまでの私の経験では,不開示の場合はその部分を墨塗りにして一連の文書が出されるということになっていました。ただ,今回の場合は文書不存在という一言で,全く文書が存在しないということですから,これはあり得ないことだと思いました。

外務省からは、いまだに開示通知が届いていない。そこで外務省に対して質問状を送り、電話で回答を求めたところ、「内閣府に聞いてくださいと言われました。」という。つまり内閣府は、林氏に対して文書類の不存在を明言していながら、実際には、情報公開の請求対象文書を保有している可能性が高い。

常識的に考えても、広義のイスラム国関連の公文書が存在しないなどということなどありえない。

それにもかかわらず請求文書を開示しない背景には、イスラム国関係の公文書については、特定秘密保護法を根拠に情報開示を禁じている可能性が極めて高い。

林氏に対する尋問の詳細は次の通りである。尋問調書中の小見出しは、編集段階で便宜上、挿入した。(寺澤氏に対する尋問調書は、23日に紹介する予定。)

■林尋問調書

:原告ら代理人(堀)《甲第17号証を示す》。これは陳述書ですけれども,林さんが作られた陳述書ですね。

・・・はい,間違いないです。

:第1項というところで,申立人林克明の経歴ということが書いてありますけれども,ここに林さんの経歴それからフリージャーナリストになってからの仕事の内容等について書いてあるということですね。

・・・はい,そうです。

:内容的にはこのとおり間違いないということですか。

・・・間違いないです。

◆世界で日本のジャーナリズムはどう評価されているのか?

:それで,まず世界のジャーナリズムから本件の秘密保護法がどのように評価されているかについてお伺いしたいと思います。この秘密保護法というのは世界のジャーナリズムから見てどのように評価されているんでしょうか。

・・・例えばパリに本拠を置く国際ジャーナリスト組織で,国境なき記者団というのがあります。ここは毎年,世界の報道自由度ランキングというのを発表しておりまして, 日本は20 1 3年から今年にかけて,53位から61位に順位を下げています。ちなみに20 1 2年くらい,3年前はまだ12番とかなり高かったのが,急激に落ちています。

:随分順位が下がっているわけですけれども,その理由は何なんでしょうか。

・・・原告団からここの団体に問い合わせたところ,秘密保護法が施行されたと,それが61位に下がった理由だという説明を受けました。

《甲第81号証を示す》

:これが今言われた取材の結果を記載した書類だということですね。

・・・はい,そうです。

:この国境なき記者団というのはそのほかにどのような活動をされているんでしょう。

・・・100人の報道ヒーローというものを選んでおりまして,直近では原告団の1人である寺澤有さんが, 日本人としてはただ1人選ばれています。その受賞理由というのがまさに秘密保護法違憲訴訟,つまり本訴訟を提起した,これが受賞理由になってます。

◆日本外国特派員協会と特定秘密保護法

:国際的に秘密保護法が強く批判されていると,それを示すような事例としてほかに何かありますでしょうか。

・・・公益社団法人の日本外国特派員協会というものがありますけれども,ここが今年初めて,報道の自由賞という賞を創設して,このときにはですね,元通産官僚の古賀茂明さん,そしてイスラム国に殺害されたジャーナリストの後藤健二さんが受賞されています。

:今説明された報道の自由賞というのはどういう賞なんでしょうか。

・・・この賞は今年初めて創設されたもので, 日本外国特派員協会によりますと,安倍政権が発足してからメディアに対する圧力を強めてきたと。その最たるものが秘密保護法であると。この秘密保護法に抵抗するジャーナリストたちを日本外国特派員協会としては支援したいと,そういう強い意図の下にこの賞は創設されたと,そのように説明を受けています。

:受賞者の1人である古賀茂明さん,この方は本件訴訟で証人申請されておりますけれども,その点についてはいかがでしょうか。

・・・当裁判所において是非古賀茂明さんの証人採用をやってくださるように強〈求めたいと思います。

◆イスラム国問題と特定秘密保護法

:もう1人の受賞者である後藤健二さんですね,この方の事件,イスラム国による人質,それから殺害事件ですかね,これについてお伺いしたいと思います。この後藤さんの事件に関する真相あるいは政府の対応などらについて,少しは真相は解明されているんでしょうか。

・・・ほとんどと言っていいほどこの事件については解明されていません。
特に問題だと思ったのは岸田外務大臣,安倍首相,菅官房長官,これらの重要な人物が,この事件には特定秘密が含まれていると,それをいちいち開示することはとてもできないというようなことを述べて,そのとおりいまだに分かつていないわけです。

《甲第108号証を示す》

:今の3人の閣僚の発言に関する,これは議事録なんですかね,は,この内容はこのとおりということでよろしいわけですね。

・・・はい,そうです。

:詳細はこれを見ていただければ分かるということですね。

・・・はい。

:この3者の発言を見て林さんはどのように思われましたか。

・・・つまりこの人質事件について、深く追及したりすると,それはただじゃおかないぞというような,ジャーナリズムに対する威嚇だと私は感じました。

:要するに,取材に対する圧倒的な牽制といいますか,抑圧というか,そういうものだというふうに感じたということですか。

・・・そういうふうに感じました。

◆秘密保護法施行後は情報公開制度が機能せず

:このイスラム国の問題について,林さんとして独自に取材をされたようなことはございますでしょうか。

・・・はい,取材を試みました。ただ,今言ったように秘密保護法に絡められると非常に困ったことになりますので,誰が見ても正当であるというふうな方法を選びました。つまり,この事件に対して,まず行政文書を開示請求をしようと思って,そこから始めました。

:具体的にはどのような開示請求をされたんでしょうか。

・・・外務省と内閣府に対して2つの点を請求しました。1つは人質の解放に絡む一連の文書一式。2つ目は,安倍首相が海外で表明しました, イスラム国絡みで人道援助をするということを言っていますので,それに関する文書一式と,この2点を開示請求しました。

《甲第82号証, 甲第85号証, 甲第90号証, 甲第9 1号て証を示す》

:これは今言われた開示請求書で,甲第8 2号証と甲8 5号証,これはいわゆる外務省に対するものということですね。

・・・はい,そうです。

:それから甲90号証と甲91号証,これは内閣府関係に対するものと。

・・・はい,そのとおりです。

:内容的には同じということですね。

・・・はい。

:それで,この開示請求に対して開示はされたんでしょうか。

・・・まず外務省からですけれども,その文書の期限延長を知らせる通知が届いてまして,いまだに何も開示をされていないです。

:内閣府はどうですか。

・・・内閣府に対しては2点請求したんですが, 2点とも文書が不存在という理由で開示されませんでした。

《甲第9 9号証,甲第100号証を示す》

:これがその不開示決定通知書ですね。

・・・はい。

:この理由を見てみますと「本件文書について,作成及び取得をしておらず保有していないため」となっていて「(不存在) 」 ,要するに文書が存在じないという回答だったわけですね。

・・・はい。

:通常,不開示の場合にはいわゆる不開示事情が存在するとか,そういう形で開示しないというケースが多いんですけれども,通常これまでの林さんの経験で不開示になる場合にはどのような扱いがされていましたか。

・・・これまでの私の経験では,不開示の場合はその部分を墨塗りにして一連の文書が出されるということになっていました。ただ,今回の場合は文書不存在という一言で,全く文書が存在しないということですから,これはあり得ないことだと思いました。

:結局文書不存在ということですから,情報はー切知らされないということになるわけですね。

・・・そうです。

:当然取材も不可能ということですか。

・・・もう,かなりのところが止まってしまいました。

◆実在するはずの文書について「不存在」と回答

:開示請求は,内閣府の関係では不開示ということで終わったわけですけれども,これ以外に,取材とかアプローチをされたようなことはございますか。

・・・その文書を請求した以外に,内閣府の担当部署に連絡して,是非いろんなことを教えてほしいということで、最初話をして,その後にファックスで1 1項目の質問状を送りました。

《甲第92号証を示す》

:これが内閣府宛ての質問書ということですね。

・・・はい,間違いないです。

:11項目を質問したと。

・・・はい。

:これに対する回答はどういうものでしたか。

・・今の質問項目の5番目にある政府関連の会合について教えてくれと,その部分についてはホームページを見てくださいと,それ以外のもの全ては外務省に聞いてくださいと,そういう答えでした。

:林さんとしては外務省のほうに問合せをされたんでしょうか。

・・・はい,問合せをしまして,全く同じものではないですが,独自に質問項目を書いたファックスを送って,その到達した直後に連絡をして,お話を聞きました。

《甲第9 3号証を示す》

:これがその外務省に対する質問事項ということですね。

・・・はい,そうです。

:具体的にこの質問事項を出して,担当者とやり取りのようなことはされたことはあるんでしょうか。

・・・はい,実際にやり取りはしましたけれども,例えば亡くなった後藤さんの家族の人たちとの接'触については,何回も面談したり電話をしたり,いろんな面で接触をとり,ケアもしていたと,そういう説明を受けたんですね。それに対して,例えば頻繁にといってもどのくらいなのか,せめて回数で教えてくれないかというようなアプローチをしたんですけれども,回数も教えることはできないという回答でした。

:それ以外にやり取りはありますか。

・・・それとですね,今回の検証委員会が出してしいる報告書というものが出ていますけれども,その有識者に対して出した情報というのが重要ですから,それのせめて一部でもいいから教えてくれないか,文書でも言葉の説明でもいいからお願いしますということを言いましたら,それは内閣府に聞いてくださいと言われました。

:そうすると,内閣府では,先ほどの開示請求では文書不存在ということでしたよね。

・・・はい。

:すごい回答に矛盾がありますね。

・・・はい,文書不存在って内閣府からは回答が来ているのに,外務省ではそれに関する一連のことは全て内閣府,いや,官房か,官房という言い方をしていましたけれども,に聞いてくださいと。これはやはり文書は不存在ではなく,存在はしているということだと私は理解しました。

:結局秘密保護法の関係で不存在と言わざるを得ないということなんでしょうか。

・・・はい,そういうことだと思います。

◆常岡浩介、中田考氏に対する出国妨害

:それでは今の話に出ました検証委員会の検証報告についてお伺いします。

《甲第97号証を示す》

:これは検証報告書ですね。

・・・はい。

:これは読まれましたか。

・・・はい,これは全て,最初から最後まで全部読みまじた。

:それを読まれて,この内容についてどういうふうに思われましたか。これでは詳しい内容が全然明らかにされていなくて,とても検証報告とは呼ぶに値しないものだということが言えます。例えばですね,イスラム国と接点を持つ数少ない日本人として,イスラム法学者の中田考さん,そしてジャーナリストの常岡浩介さんがいたわけで,このお二人が人質絡みで現地に行こうとしていた矢先に,警視庁の公安部外事第3課が強制捜査に入って,出国を妨害してしまったという事実がありますけれども,この事件については全く報告書では触れられていません。これはですね,秘密保護法とフリージャーナリストの関係を明らかにする上で非常に重要ですので,今,御本人がそちらのほうに傍聴に来ていらっしゃいますけれども,是非この当裁判所において,ジャーナリストの常岡浩介さんの在言を是非とも採用してほしいと思います。

《甲第72号証を示す》

:今の常岡さんの事件に関する準抗告とかされているわけですけれども,その関係の決定ということでよろしいですね。

・・・はい。

:今おっしゃった以外のジャーナリストあるいはフリージャーナリストの立場から見て,検証報告の内容で,林さんがこれはとても見過ごせないと思われ
た点はございますでしょうか。

・・・危険地域に渡航する邦人の動きを制限しようというような意図が,はっきり報告書の中に出ていると思いました。

《甲第9 7号証を示す》

:3 9ページを示します。この部分でしょうか。

・・・そうですね,ここでは今の渡航情報では法的な強制力はないから,今後そういったところに行く邦人に対しては法的措置も検討するというような意味のことも書かれています。

:これで見ますと, 3 9ページの下から2番目の丸のところに書かれているということですね。

・・・はい,そうですね,こういうことが気になりました。

:4 0ページを示します。これはいわゆる有識者の指摘によるんでしょうけれども,この点はいかがですか。

・・・ここの有識者の見解のところなんですけれども,大手報道機関とフリージャーナリストは同列に扱うことはできないということをまず1点言っておいて,その後に大手マスコミの社員が現地に行かないで,フリージャーナリストにアウトソーシングしているということが続けば,今後も同じことが起こりうるということなんですけれども,これは見方によれば大手とフリーと差別しているというようなことにも取れますし,後半の2点目の部分は幅広く,フリーだけでなくて,既成の大手メディアもこういった海外の取材を制限するような方向に動くんじゃないかというようなことを,この部分から見て取りました。

:その渡航制限ですけれども,具体的に最近そのような事例はあったんでしょうか。

・・・はい,新潟在住の杉本さんという写真家の方は,外務省からパスポート返納命令を受けて返さざるを得なかったということがあります。つい先月も鈴木さんという女性,若い女性ジャーナリストが現地に取材しようとして, トルコの空港から強制送還されてしまったと,そういう具体的な事件もありました。

:要するに,この検証報告書を見ると,今後ジャーナリスト,あるいはフリージャーナリストを含めてですけれども,その取材活動とか行動に対する制限をしていこうと,そういう方向性が見えているということでしょうか。

・・・はい, そういう方向が見えていると思います。

:この検証報告書全体を通して見えることは,林さんとしてはどういうふうに思われますか。

・・・一番の問題点は検証委員会が有識者に対して出している一連の情報,これが一切明らかにされていないということが問題であって,これがそのまま何も追及されないで、認められてしまうと,秘密保護法ということを通して,今後このような問題が起きたときに,本当のことは一切外部に出ない,そして取材もできなくなってしまうという心配があると思います。

堀:この検証報告書はそのことを示しているということですね。

・・・はい。

◆情報監視審査会への取材

:それから,林さんのほうでは国会の情報監視審査会についても取材されたということですけれども,具体的にはどういうことを取材されたんでしょうか。

・・・この審査会のメンバーで,もちろん国会議員の皆さんは公表されていますけれども,実際に細かなことをする事務方の方についての情報が余りにもなかったので,そこを知ろうとしました。特にそういうことに関わる人たちは適性評価を受けるわけですから,実際にこの適性評価がどのように運用され、やられているのか,これについて知ろうと思いました。

:具体的に担当職員の数とか実態とか,あるいは適性評価の実態、これは分かりましたか。

・・・・それが全然分からなくて,私も質問を5項目に絞ってファックスで送り,それから電話でも連絡していろいろ聞いたんですけれども,その回答というのは,全てにおいて回答は差し控えさせていただきたいという返事を頂きました。

《甲第94号証,甲第9 5号証を示す》

:甲94号証が先ほどおっしゃった質問事項ですね,それと甲9 5号証というのがそれに対する回答ということで,一切答えについては差し控えたいと。

・・・はい,全く回答がなかったです。

◆今日本のジャーナリズムは本当に危機的

:この間林さんは,内閣府,外務省,あるいは国会のほうの事務局に取材されたわけですけれども,これらの取材を通じて,どういうふうなことが分かり
ましたか。

・・・秘密保護法というものを使えば,何から何まで秘密になってしまって,本当のことが明らかにされないんだと,改めてこの秘密保護法は違憲であるということを確認してもらいたいと,改めて思いました。

:最後に,本件訴訟はフリーランスの表現者の方々が原告となって起こして,これまで裁判をやってきたわけですけれども,その思いとか理由について最後に述べていただきたい。よろしくお願いします。

・・・今日本のジャーナリズムというのは本当に危機的な状況を迎えていると思います。例えば昨年のいわゆる朝日新聞パッシングというのもありましたし,今年に入ってから,テレビ朝日の報道ステーションに対する官邸からの圧力,そういったことも問題になっています。また,NHKの報道は基本的に政府の意向に沿ったものになっている, こうしたことで本来のジャーナリズムの役割が果たせない状況になっています。

こういう中で特に直接の規制を受けない私たちフリーランス表現者,ルポライター,フリーライター,ジャーナリスト,映画監督,報道写真家,あるいは編集者,こういう我々表現者が何とか果敢に取材しようとしでいるわけですが,そういう人たちに対しで秘密保護法を引っ掛けられていろんな規制を受けてしまうんじゃないかと,それは何としても避けたいという思いもあってこの訴訟を提起しました。

特に法が定める報道従事者という言葉がありますけれども,ここに今言った我々フリーランス表現者,ルポライターとかジャーナリストとか映画監督とか報道写真家,こういう人たちをきちんとした報道従事者だということを認めてもらうためにもこの裁判を提起しました。

最後に一言付け加えさせていただきますと,今日本は大変な危機に陥っていると思います。国会で審議されている戦争関連の法案もありますし,そのこととこの秘密保護法というのは非常に連動していると思います。ですからこの裁判所において,この秘密保護法が違憲であるというような,歴史的判決を下していただけるように,心から強くお願いしたいと思っています。

被告指定代理人(田原):反対尋問はありません。

裁判長:今尋問の中で,後藤さんの事件のことについて幾つか取材をされたということで,書証としては甲9 2号証,甲9 3号証左いうものが出ましたけれども,これはどちらかというと表立つた取材に対する応対ということのお話だったように思いますが,何かそれ以外でこの関連あるいはそれ以外でも結構ですけれども,御主張されているような,この法律ができたがためにより取材が困難になるというような事情がもしありましたら,更に何か付け加えていただけると有り難いですが。

・・・例えばこの人質事件に関しても,今日お話ししたのはいわゆる表の取材といいますか,オフィシャルな感じなんですけれども,遺族の方と,その遺族の方に接触しているような方にもちょっとお話を聞いたりとかはしましたけれども,あんまりそこを進めてしまうと,やはりちょっと問題かなとい.うような感じだったので,そこは途中でやめて,今日お話ししたような,正面からというか,文書開示請求であるとか広報を通して担当部局を紹介してもらって,そこの担当者から話を聞くということをやらざるを得ませんでした。

2015年06月21日 (日曜日)

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2015年06月19日 (金曜日)

ギネスブックに「押し紙」の項目があれば、「押し紙」世界一の認定を受けるのは、間違いなく日本の新聞社である。インターネットや週刊誌が、繰り返し「押し紙」問題を報じても、新聞社の経営陣は「押し紙」は存在しないと繰り返してきた。延々としらを切ってきたのである。

公取委も「押し紙」を取り締まる気がない。政治家は、「押し紙」という新聞社経営の一大汚点を把握し、故意にそれを放置することで恩を売り、新聞社を権力構造の歯車に巻き込んできた。それが自分たちにとってメリットのある世論を形成する手っ取り早い方法であるからだ。

こうした特殊な関係の中で、逆に新聞社の経営陣が政界に大きな影響力を発揮する異常事態が生まれて久しい。首相と新聞人の会食もあたりまえになっている。もちろんジャーナリズムが機能不全に陥っていることは論を待たない。経営上の汚点が招いた日本の悲劇である。

改めて言うまでもなく経営上の汚点とは、「押し紙」のことである。それゆえに「押し紙」問題を無視して、いくら新聞記者を罵倒しても、紙面を批判しても、ジャーナリズムの再生にはつながらない。

読者は「押し紙」制度がいつの時代に始まったかをご存じだろうか。厳密に言えば、昭和5年ごろにはすでに記録があるが、「押し紙」問題が頻繁に浮上するようになったのは、戦後、専売店制度が始まった後である。

◇『日販協月報』に記録された「押し紙」

日本新聞販売協会の会報、『日販協月報』を過去にさかのぼって調べてみると、「押し紙」問題の歴史がよく分かる。

たとえば1961年(昭和36年)6月15日付けの同紙は、第1面のトップ記事で、「押し紙」問題に言及している。次のタイトルである。

ABCの販売店調査

都内を終わり、地方は七月から

記事は、ABC部数の販売店調査の実態を報じたものである。記事の後半では、「Q&A」の形式を取っている。その中に「押し紙」に関する次のような記述がある。

A:(調査員は)どういう質問をしたか?

B:本社からの「押し紙」はないか?、増減率は何パーセントか?、ということをたずねられた。「どの社といわず各社とも五十歩百歩だ。販売店主は『押し紙』に屈することなく自主的に本社と取引すべきだ」と答えた。

また、同じく6月15日付けの第3面には、「寄稿」が掲載され、その中で執筆者が「押し紙」拒否を呼びかけている。次のくだりである。

(略)全国販売店は共同して「押し紙」の代金支払を拒否し例え帳尻に書加えてきても増減通知控を生かして帳尻残金の無効を叫ぶべきである。

「押し紙」問題は50年以上に渡って、未解決のまま放置されている。今世紀に入って、販売店への搬入部数に占める「押し紙」の割合が、販売店によっては50%を超えるなど、尋常ではない実態になっている。

「押し紙」が原因かどうかは別に、このところ販売店主の自殺も相次いでいる。

■日販協月報(出典)PDF       【続】

2015年06月18日 (木曜日)

6月18日、砂川事件の再審を求めている弁護士らが、国会の議員会館で記者会見を行う。

憲法学者らが安保法制案を違憲と解釈しているのに対して、安倍政権は依然として「合憲」を主張している。その根拠となっているのが、砂川事件の判例である。その砂川事件の再審を求める動きが活発になっている。

◇砂川事件とは?

砂川事件とは、1957年にアメリカ軍の立川基地を拡張する計画に反対する7人の住民が、立ち入り禁止の境界柵を突破して、基地内に侵入したとして起訴された事件である。

しかし、東京地裁の伊達秋雄裁判長は、1959年3月30日、「日本政府がアメリカ軍の駐留を許容した」こと自体が「憲法第9条2項前段によって禁止される戦力の保持にあたり違憲である」との解釈に基づき、7人全員に無罪を言い渡した。

ところが問題は、その後の経過である。日本は3審制の国であるから、地裁判決に不服があれば、高裁での審理を求めることができる。さらに高裁判決に不服があれば、最高裁での審理を求めることができる。

ところが砂川裁判で敗訴した検察は、高裁を飛び越えて最高裁へ上告した。これを受けて最高裁の田中耕太郎長官(写真)は、地裁判決を原審の裁判所へ差し戻した。判決の差し戻しは、判決を変更しなさいという指示に等しい。(わたしも、対読売裁判で最高裁が判決を差し戻して、読売に逆転敗訴したことがある)。

砂川事件で、最高裁が判決を差し戻した表向きの理由は、

「憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、同条が禁止する戦力とは日本国が指揮・管理できる戦力のことであるから、外国の軍隊は戦力にあたらない。したがって、アメリカ軍の駐留は憲法及び前文の趣旨に反しない。他方で、日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない。」

と、言うものだった。

地裁は審理をやり直した。そして1961年3月27日、7人を有罪にし、罰金2000円の支払いを命じる判決を言い渡したのである。被告側は上告したが、1963年12月7日、最高裁は上告を棄却し判決を確定した。

以上が砂川事件の経緯である。

◇特定の有力者が圧力

ところが2011年になって予期せぬことが起きる。米国で閲覧制限が解かれた公文書により、当時、砂川裁判の扱いについて、マッカーサーが田中長官に対して、伊達判決の誤りを主張し、判決を見直すように指示していたことが判明したのである。判事でもない特定の有力者が、田中長官に圧力をかけて、判決を変更させたのである。

元被告らが再審を請求するゆえんにほかならない。

再審が認められ、不正裁判に対する批判の世論の広がれば、判決が変更される可能性もある。

その時、安倍内閣による安保法制の根拠も崩壊する。

2015年06月17日 (水曜日)

「電磁波からいのちを守る全国ネット」が5月16日に主催したシンポジウム、「身近に潜む電磁波のリスクを考える」で行われた講演がYouTubeで公開された。今回、紹介するのは、荻野晃也氏による「電磁波とは何か?」と題する初心者向けの30分の講演。

荻野氏は、原子核物理学の専門家で、京都大学を退官した後、電磁波環境研究所を設立。著書に『汚染水はコントロールされていない―東電・規制委・政府の最新公表データを読み解く 』(第三書館)、『健康を脅かす電磁波』(緑風出版)などがある。

電磁波が人体に及ぼす影響は、巨大なIT利権がからんでいるために、日本のマスコミはほとんど報道しない。一方、欧米やインドなどでは、新世代の公害として警鐘が鳴らされ、携帯電話基地局などの設置を規制の動きが強まっている。

2015年06月16日 (火曜日)

最近、メディアを通じて頻繁に耳に入ってくる言葉に「イノベーション」がある。「イノベーション」とは、ウィキペディアによると、

物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。一般には新しい技術の発明を指すと誤解されているが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。つまり、それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことを指す。

と、いう概念である。

「イノベーション」が不要と考える人はまずいない。社会は進化の方向へ脱皮していかなければ、消滅するからだ。

安易に「イノベーション」を批判すれば、保守派、あるいは奇人・変人扱いされかねない。それだけに逆説的に考えれば洗脳の道具になりやすい。

最近のテレビの特徴として、「イノベーション」を発揮すれば、だれでも弱肉強食の世の中を幸福に生きられるという暗黙のメッセージが感じられる番組が急増していることだ。

たとえば農作物をブランド化することで、新しいビジネスを切り開こうとしている人々の姿。大学発のビジネスを立ち上げようとしている人々の姿。グルメで「町おこし」に挑戦する人々の姿。

あたかも丸太小屋から大統領へというアメリカン・ドリームのパターンの日本版を大々的にPRしているような印象がある。悪質な幻想である。

◇「イノベーション→お金→幸福」

こうした現象の背景に新自由主義=構造改革の政策があることは間違いない。国際競争に勝ち残るために企業が海外へ進出し、国内産業の空洞化が進んでいるわけだから、新しい分野のビジネスを育成しなければ、日本経済が破たんしてしまうことは理解できるが、たとえば農業やグルメをビジネス化したところで、それで巨大市場を形成できるとは思えない。

成功した少数の者がそれなりの収益を得るだけで、それが日本の主要産業になることはまずあり得ない。労働法制を改悪して、日本を企業にとっていちばんビジネスがしやすい国に変え、対日投資を増やしても、賃金そのものが、抑制されているわけだから、大半の人々の生活水準は低下する。

ところがテレビは、盛んに「イノベーション」とバラ色の未来をPRしている。まして新自由主義=構造改革のからくりなどにはまったくふれない。

日本には、「イノベーション→お金→幸福」という価値観が広がっている。支持政党を決める際にも、経済政策が重視される。つまり自分にとって「お金儲け」の「支援」をしてくれる政党を支持する人が多いのが実態だ。

お金よりも、人権や人間の尊厳を守ることを重視する政治を求める人は少数派だ。こうした傾向を生んでしまった背景にメディアの責任があることは言うまでもない。

2015年06月15日 (月曜日)

かつて自民党の幹部として、国政の先頭に立った4人の政治家が、12日、安保法制の改悪に反対する声明を発表し、日本記者クラブで記者会見した。

わたしはこれら4人の政治家の軌跡を詳しくは知らないが、一般的な常識の範囲で考えても、違和感を感じる。自民党議員=改憲派といった短絡的な解釈をしているわけではないが、歴代の自民党政権が基本的に米国に追随する路線の上を暴走してきたのは紛れもない事実である。

そして、最後に行き着こうとしているゴールが、米軍と共同で多国籍企業の権益を防衛するための派兵体制である。

もちろん政治家が路線変更することは自由だ。しかし、その場合、自分が過去に行った政治のどこが誤りだったのかを、明らかにするのが前提になるはずだ。政治家はただならぬ影響力を持っているからだ。ひとりの市民が支持政党を変えるのとはわけが違う。

その意味で4氏の行動は、政治家が踏むべき当然のプロセスを経ていないのではないか。また、それを抵抗なく受け入れる民意にも問題がある。

◆山崎氏とイラク特措法

山崎拓氏は、もともと改憲派である。2001年の5月3日(憲法記念日)には、『憲法改正―道義国家をめざして』という著書も出版している。
山崎氏はちょうどこの時期に、新自由主義=構造改革の急進的な導入を図った小泉内閣の幹事長に就任している。

護憲派のなかには、改憲には反対だが、新自由主義=構造改革の導入(小泉改革)には賛成というスタンスの人も少なくない。山崎氏の場合、このカテゴリーにも該当せず、新自由主義=構造改革の導入にも、改憲にも賛成という小泉内閣の方針とまったく同じスタンスに立っていたといえる。

事実、同氏が幹事長だった2003年、イラク特措法が成立して、自衛隊が海外へ派兵されている。

◆政治力学

新自由主義=構造改革の導入と、改憲、あるいは軍事大国化は、1990年代半ばから、日本の政治にみられる著しい特徴である。しかし、ふたつの国策が別々に存立しているわけではない。

新自由主義=構造改革の背景に、企業の多国籍化にともなう国際市場の出現があり、新市場の「秩序」を多国籍企業の側から守るために、海外派兵の体制を構築しようとする政治力学が働いているのである。マスコミは、完全にこの点を隠している。あるいはそれ以前に理解していない。

安倍内閣が新自由主義=構造改革を強引に進め、それと並行して改憲を目指していることに、何の不思議もない。

なお、山崎氏を除く3氏については、情報不足で評価のしようがない。

2015年06月12日 (金曜日)

安保法制や改憲をめぐる報道で常に隠蔽(いんぺい)されているのは、多国籍企業を政変から防衛するための海外派兵体制の構築という視点である。

わたしがこの視点の重要性に気づいたのは、1985年に中米紛争を取材した時期である。中米は、米国のフルーツ会社などの裏庭である。

豊富なフルーツが港から船で運びだされる光景を飢えた人々が見守っている地域である。そこで政変やゲリラ活動がはじまると、たちまち米国が軍事介入してきた。

このような構図が最も典型的に現れたのがニカラグア革命とその後の内戦である。79年のサンディニスタ革命の後、米国は「反政府ゲリラ」を組織し、ニカラグアと国境を接するホンジュラスを米軍基地の国に変えて、新生ニカラグアの転覆に乗り出した。

多国籍企業の防衛部隊としての海外派兵の性質が露呈したのである。

ソ連が崩壊した後、世界に巨大な新市場が開け、企業の多国籍化が進んだ。中国による市場開放もこれに拍車をかけた。

自衛隊を海外へ派兵する動きが生まれたのはこうした時期である。日本による海外派兵は、PKOから始まり、その後、周辺事態法、テロ特措法による派兵、有事法制へと進み、2014年には、解釈改憲が閣議決定された。さらにいま、安保法制の「改正」が国会で議論されている。

次に示すのは、今世紀に入ってから経済同友会が日本の軍事大国化について行った主な提言である。各提言から重要な箇所を抜粋した。全文はPDF。

こられの提言を読むと、多国籍企業の防衛戦略としての海外派兵が財界人の意中にあることがはっきりする。米軍と協力して、多国籍企業を防衛する体制を打ち立てようとしていることが明確に分かる。

◆経済同友会の軍事大国化に関する提言

 『平和と繁栄の21世紀を目指して−新時代にふさわしい積極的な外交と安全保障政策の展開を』(2001 年4 月25 日)

「緊急時に国家が必要な行動を取ることを法的に担保しうる有事法制の整備と運用体制の確立、及び周辺事態発生時における日米共同行動の実効性を確保するための体制整備が急務である。」

「わが国においては、憲法の制約の下その行使が否定されてきた集団的自衛権に関する政府見解を再検討する必要がある。この問題をいたずらに危険視することなく、今後国際社会において日本が同盟国や地域的パートナーとともに果
たそうとする責任・役割に照らして、改めて政治的判断を行うべきであろう。」

「昨年、国会に漸く憲法調査会が設置された。しかし、そこでの審議のペースは激動する世界の動きに比していかにも遅く、また必ずしも国民的論議の高まりにつながるものともなっていない。衆参両院における調査会の活動を、国民レベルでの活発な議論を促す方向に向けていっそう活性化し、加速することが必要である。

そのための具体的なステップとして、国民的合意が得られることを前提に、遅くとも2005 年までには憲法改正に必要な手続きがとられるよう、調査期間を現在の5年から3年程度に短縮することが望まれる。」

■全文PDF

 

『イラク問題研究会意見書』(2004年11月)

「自衛隊による国際貢献活動をより迅速、かつ有意義に行うための法的基盤を整えるために、イラク特措法に基づく自衛隊派遣の課題を踏まえ、恒久法の制定を求めたい。」

「憲法改正、安全保障基本法制定、集団的自衛権の行使に関わる政府解釈の変更、恒久法制定の4つは包括的に検討していくべきであり、その意味でも自衛隊法の改正が必要になる。」

■全文PDF

 

『新たな外交・安全保障政策の基本方針』2006 年9 月

「自衛力については、今後も抑止力を基本として強化すべきであるが、国際環境の変化に応じ、日本国民の安全が確保される自立した国家としての自衛隊のあり方を見直すべきである。

また、日本の自衛隊はこれまで、「国際平和協力法」「テロ対策特措法」「イラク人道復興支援特措法」に基づき、国際貢献活動を展開してきた。こうした自衛隊の活動をより迅速かつ効果的に行うための法的基盤の整備が急務である。

そのためには、我が国の防衛・安全保障に関する基本原則を示した「安全保障基本法」(仮称)と人間の安全保障の考え方を併せた「国際協力基本法」(仮称)を制定し、日本の外交・安全保障が平和主義を柱とした政策であることを世界に示すことで、国内並びに周辺諸国の理解と信頼を得ることが必要である。」

■全文PDF

 

『新たな日米関係の構築』(2009年1月)

「自衛力については、今後も抑止力を基本として強化すべきであるが、国際環境の変化に応じ、日本国民の安全が確保される自立した国家としての自衛隊のあり方を見直すべきである。

また、日本の自衛隊はこれまで、「国際平和協力法」「テロ対策特措法」「イラク人道復興支援特措法」に基づき、国際貢献活動を展開してきた。こうした自衛隊の活動をより迅速かつ効果的に行うための法的基盤の整備が急務である。

そのためには、我が国の防衛・安全保障に関する基本原則を示した「安全保障基本法」(仮称)と人間の安全保障の考え方を併せた「国際協力基本法」(仮称)を制定し、日本の外交・安全保障が平和主義を柱とした政策であることを世界に示すことで、国内並びに周辺諸国の理解と信頼を得ることが必要である」。

■全文PDF

 

『世界構造の変化と日本外交新次元への進化』(2011 年2月)

「安全保障問題とは、本来、軍事的手段のみならず、政治・経済的手段を組み合わせ、総合的に対処すべき課題である。そのためには内閣主導体制の強化を意図した「国家戦略本部」を創設し、その下に内閣官房の司令・調整機能をより強化した「国家安全保障会議」を新たに設置すべきである。

これは「日本版NSC」構想等と呼ばれることもあるが、政治主導体制を強化し、より迅速に安全保障上の危機に対応するためには必要なインフラ整備である。

また、国家安全保障会議は、日本の外交・安保戦略を策定する機能も備えるべきである。」

「日本の安全保障に対する脅威が多様化し、増大しつつある中、日本は自らの国防努力を強化していく必要がある。国防力とは、近隣各国との相対的な比較の中で意味をもつものであるとするならば、日本を取り巻く安全保障環境の現状に鑑み、少なくとも日本のみが一方的に防衛予算を削減してはならない。」

「日本は、同盟国である米国以外の信頼できる民主主義国・地域との武器技術の共同研究開発・生産体制に参加できるよう、第三国への移転について一定の歯止めを設けた上で、日本は武器輸出政策の弾力的な運用を認めるべきである。」

「日本人の国際進出を視野に入れたとき、有事における在外邦人保護に向け、日本が対処能力、法的基盤を整備していくことは不可欠である。既に政府専用機、自衛隊機、自衛隊艦船を在外邦人の輸送に用いるための道は開かれているが、さらに緊急時において空港・港湾施設までの在外邦人の避難、輸送までも自衛隊が担うことを可能にするべきである。

また、現在、輸送の安全の確保が認められる場合のみ、邦人救出に踏み切ることが法律上許される形となっているが、より現実的な対応を可能とするためにも安全確保の要件は外すべきである。」

「現在の日本政府の憲法解釈の下では、個別的自衛権を行使し、武力行使に至ることは認められているが、集団的自衛権の行使は、国防のための必要最小限度を超えるものであるとして認められていない。

しかし、集団的自衛権行使を容認しない現在の憲法解釈は、国際安全保障の確保のために日本が取り得る活動を著しく制約し、また有事における日米同盟の有効性を損ねる。今や東アジアのみならず、世界における安全保障の確保と日本の安全保障の確保は不可分である。

そして、米国は有事における日本防衛の義務を負うのに対して、日本は平時より米軍に対して基地提供を行うことをもって同盟を成立させるという関係は片務的であり、日本の国際的発言力の強化という観点からも、改善する必要がある。」

「平時、有事を問わず、情報の共有は同盟関係において非常に重要である。広く国際社会との関わりを持つ日本にとって、米国の情報収集力を活用できることは、同盟関係における大きな資産の一つである。今後、日本はより一層国際社会と一体となって、安定と繁栄への道を模索する必要がある。そのためにも、日米情報共有体制を強化する方策を探らなくてはならない。」
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『「実行可能」な安全保障の再構築』(2013 年4 月)

「第二次安倍政権の下で、外交・安全保障に関わる司令塔として、国家安全保障会議(National Security Council)4の設置が検討されていることを歓迎し、その早期実現を求める。」

「企業活動のグローバル化に代表されるように、国民の安全・財産は、日本の領域内のみにとどまるものではない。自ら選択して海外に出る以上、安全確保のための方策を自ら講じることは、個人・企業の別を問わず当然の責任であろう。その一方、非常事において、国民の安全や権利を守ることは、国家の究極的な責任であると考える。

国外での非常事態に際して、自国民の保護・退避に当たる上では、外交努力を
通じた当該国との連携、友好国との協力、自ら有する装備・能力の活用等、複数の選択肢の中から、個々の事態・情勢に応じて、迅速に最適な方策を選択することが求められる。

このような中、海外における自国民保護体制の強化を進める上では、緊急時に
おいて柔軟かつ迅速な選択が可能となるよう、まずは本質的な問題に真摯にき
合うことが不可欠と考える。

具体的には、自衛隊の活動の範囲に関する個別具体的な議論に先立って、まず、
日本の領域外における国民の保護を、国としての自衛の対象と見なすか否か、その姿勢を明確にすることを求めたい。6 その上で、そうした判断を起点に、国際的に共有される規範や外交手続きに則り、真に実効性ある対策が講じられるよう、体制整備が進められることを期待する。」

「政治的決断によって政府解釈を変更し、集団的自衛権行使を認めるべきである。」

「自衛隊の海外派遣基準や活動領域に関する原則を恒久法で定め、迅速な判断・派遣を可能にすべきである。加えて、自身の生命・安全の確保と、民間人や他国部隊の保護を目的に、国際平和維持・協力活動における武器使用基準も見直し、国連の規程に合わせる形で緩和すべきである。」

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2015年06月11日 (木曜日)

国境なき記者団が発表した2015年度の「世界報道自由度ランキング」で、日本は61位だった。

鳩山政権の時代には、11位になったこともある。

が、このランキングはまったく信用できない。第一、報道の自由という抽象的なものを序列化すること自体がナンセンスだ。ランキングを受け止める側には、「国境なき記者団=真のジャーナリズム」という先入観と幻想があり、序列化の愚に気づかない。

もちろん個々の記者やジャーナリストの中には、真摯に報道の役割を果たしている人も少なくない。しかし、メディア企業としての在り方には、国境を越えて克服しなければならない問題がある。

それは権力の中枢になっている人々の「広報部」の役割を引き受けているメディア企業が大半を占めている事実である。政府を筆頭とする公権力と情交関係を保ちながら、ニュースを制作する姿勢が慣行化しているのだ。

日本のマスコミだけが「×」で、海外は「○」という考えは間違っている。

中国のマスコミが、旅客船の転覆事故の際、政府に配慮して、遺族の不満を報じなかったらしいことは、日本のメディアが伝えた。それが事実であれば、中国における報道統制は、日本よりもよほど深刻だ。

中米ニカラグアで1970年代に革命戦争に参加したオマル・カベサスの手記、『山は果てしなき緑の草原ではなく』(現代企画室)には、当時のニカラグアのメディアについて、次のような記述がある。

ラジオというラジオは襲撃のことを報道し、国中が生々しい写真報道や情報の展開に釘付けになった。俺たち自身、現実とかけ離れた虚像を作り出す報道の影響の大きさに驚いた。

◇グアテマラは125位

わたしが「世界報道自由度ランキング」は、信用できないと感じたのは、インターネットで、グアテマラのリオス・モント裁判の中継録画を見たときだった。
リオス・モントとは、同国の軍部出身の元大統領で内戦の時代に先住民の大虐殺を指示した人物である。戦後、法廷に立たされ、2013年5月に虐殺と人道に対する罪で、禁固80年の判決を受けた。

この裁判の判決の様子を、プレンサ・リブレ紙がインターネット中継した。法廷にカメラが入ったのだ。ある意味では、日本よりも進んでいる。

翌年、グアテマラの「世界報道自由度ランキング」を見ると125位になっていた。わたしは苦笑せざるを得なかった。確かに前世紀までグアテマラは、「殺戮の荒野」で、弱者に寄り添った報道は命のリスクを伴った。が、今は状況が大きく変化しているのである。

なにを根拠にして、国境なき記者団が125位という序列にしたのか、わたしにはさっぱり分からない。ラテンアメリカ全体の左傾化に対する対抗意識の現れのような気もするのだが。

ちなみにニカラグアの2015年のランキングは74位。日本よりも報道の自由が制限されていると評価している。

■報道の自由度ランキング2015年