
横浜副流煙事件の法廷で作田学医師(冒頭写真、当時、日本禁煙学会理事長)が行った証言の内容をめぐり、刑事告訴にエスカレートした事件が、検察審査会の議決により、2月27日に終了していたことが分かった。この刑事告訴は既報してきたように、作田医師が横浜副流煙事件の法廷で、数年前に外来を受診した患者を指して、「会計にも行っていないと思います」などと事実無根の証言をしたのが引き金である。
作田医師が言及した患者は、傍聴席で作田医師の証言を聞いた。怒り心頭に達し、その後、作田氏に内容証明で真意を問い合わせた。しかし、回答がなかったので、神奈川県警青葉警察署に刑事告訴したのである。
青葉警察署は告訴を受理して捜査した後、横浜地検に作田医師を書類送検した。しかし、横浜地検は不起訴とした。これに対して男性は、検察審査会に審査を申し立てたが、2月27日付けで、「不起訴処分相当」の結論が下された。
事件の経緯については、次の記事に詳しい。
【参考記事】患者が退出して3分後に煙草臭、偽証の疑い、作田学医師の証言、横浜副流煙裁判「反訴」
また、横浜副流煙事件の概要は次の通りである。

東京地裁は25日、統一教会に対して解散を命じた。このカルト集団が不正に集めた資金は、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、35年間で1237億円になる。しかし、それをもってして日本の司法制度が正常に機能しているとまでは言えない。と、いうのもおそらくは最高裁事務総局の指示で意図的に、介入を避けている事件が他にもあるからだ。
その代表格が「押し紙」問題である。霊感商法による1237億円に対して、「押し紙」が生む不正資金は、筆者の試算によると35年換算で3兆2620億円になる。「押し紙」商法は、その規模と悪質性では、統一教会のカルト商法と比較にならない。
3兆2620億円の裏付けについては、『新聞と公権力の暗部』(鹿砦社)に詳しいが、概要は次の通りである。2021年度の全国の朝刊発行部数は約2590万部だった。このうちの20%にあたる518万部が「押し紙」と仮定する。また、新聞1部の卸代金を月額1500円と仮定する。「押し紙」による販売収入は、次の計算式で導きだせる。
518万部×1500円×12カ月=年間932億円
霊感商法による35年間の被害額と比較するために、「押し紙」の不正金額・年間932億円を35倍すると、3兆2620億円になる。
ただし、「押し紙」20%の仮定は控え目に設定した数字である。最近の「押し紙」裁判では、多いケースになると40%から50%が「押し紙」になっている。また、新聞の卸価格1500円も過少に見積もっている。さらに「押し紙」によるABC部数のかさ上げにより、上昇する紙面広告の価格は考慮していない。
◆◆
戦前から戦中にかけての新聞は、新聞用紙の配給制度により、公権力の監視下におかれた。新聞用紙の配給を受けなければ、経営が成り立たないから、真実が報道できなかったのである。記者が無能だったから、とんでもない報道を続けたのではなく、用紙の配給制度という客観的な装置があっからそうせざるを得なかったのである。
戦後、この配給制度を代用したのが、「押し紙」制度である。仮に「押し紙」制度に公権力がメスを入れると、新聞社は大幅な減益となり、予算そのものを見直す必用に迫られる。公権力はこの点に着目して、新聞社の「押し紙」制度を保護しているのである。記者の職能が劣るから、真っ当なジャーナリズムを実戦できないのではない。「押し紙」制度という客観的な原因があるのだ。
とりわけ1999年の新聞特殊指定の改訂後は、公権力と新聞の癒着が露骨になった。この問題については、次の記事に詳しい。公正取引委員会と新聞協会が、「押し紙」をなくす方向で話を続けたはすが、逆に「押し紙」を容認する方向性で、特殊指定の改訂が行われたのだ。当時の公取委員長・根来泰周(冒頭写真)は、なぜか退任後にプロ野球のコミッショナーに就任している。
【参考記事】1999年の新聞特殊指定の改訂、「押し紙」容認への道を開く「策略」
写真出典:デーリスポーツ

Chatgptに、どの国が日本語教育に力を入れているかを質問したところ、次のような回答があった。他の検索でも、ほぼ同じような結果が出たので、Chatgptの回答はおおむね現実を反映しているのではないか?
1. インドネシア
• アジアで日本語学習者数が最も多い国の一つ。
• 日系企業が多数進出しており、ビジネス上の需要が高い。
• 日本のアニメやJ-POPの人気も影響しています。
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2. ベトナム
• 日本への技能実習生・留学生の数が非常に多く、日本語学習が重要視されています。
• 日本語を教える高校や大学も増加中。
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3. 中国
• 歴史的・経済的な関係から、日本語学習者が多い。
• 大学に日本語学科を設けているところも多く、ビジネス分野でも日本語人材の需要あり。
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4. 韓国
• 文化的に日本と近く、アニメやドラマの影響も大きい。
• 高校や大学の第2外国語として日本語を選ぶ学生が多い。
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5. タイ
• 観光業や日系企業の影響で、日本語を話せる人材が求められています。
• タイ教育省も日本語教育のカリキュラムに力を入れている。
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6. フィリピン
• 日本への就労や留学を希望する人が多く、日本語教育センターが多数存在。
• オンライン日本語教師の拠点としても注目されている。
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7. ブラジル
• 日系人が多く住んでおり、日本語が家庭や地域社会で継承されている。
• 日本との文化交流も盛ん。
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8. アメリカ
• 高校や大学で日本語を教えている学校が多い。
• アニメ・漫画ブームの影響で若者を中心に人気。
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言語に関して、もうひとつ興味深いデターを紹介しよう。TOEFL(Test of English as a Foreign Language =)のアジア・ランキングである。このテストは、米国の大学や大学院に留学する際の英語能力の証明書として採用されている。日本のランキングは、以下に示すように、30カ国中28位である。ちなみに中国は6位で、朝鮮は13位である。
日本の成績がおもわしくないのは、わたしの推測になるが、第2外国語の習得は、幼児は例外として、第一言語の基盤の上で成り立つにもかかわらず、第一言語である日本語と第2言語である英語の距離が遠いことである。類似性の欠落である。教育方法や学習者の心理的な原因が大きいという説が有力だが、文法・発音・文字などあらゆる面で共通性に乏しいことが、習得が難しい原因である。
それはともかくとして日本では、国際語となっている英語の普及が停滞している上に、海外での日本語の学習者が限定的であるわけだから、日本の孤立は免れない。
実際、海外にでると日本語で発信された情報がまったく届いていないことを実感する。日本国内でネットウヨが騒いでも、何も聞こえてこない。だれも知らない。メディア関係者を除いて、朝日新聞も読売新聞も知らない。知っているのは、日本の動向について専門的に情報収集している特殊な少数の人だけである。
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ジャーナリズムの世界でも国際化が進んでいる。たとえば、中国の公共放送CGTNは、英語、フランス語、スペイン語、アラビア語、ロシア語でニュースを発信している。国民もそれを視聴・共有できる。NHKの国際放送のように、報道内容を日本人が普通に視聴できない状況にはない。
日本のテレビ番組に登場するコメンテータは、99%が日本人だが、CGTNの場合はSKYPEを使って国境の壁を排除している。ケニアのナイロビ発の国際ニュースが放送されたりもする。
一方、日本はインターネットが普及しても、国境の壁を超えるには至っていない。政府が解決策に着手しても、成果があがるまでに少なくとも30年ぐらいは要する。ただ、政府は孤立を深めているという認識すらもっていない。
かつて故・志賀直哉(冒頭の写真)がフランス語を公用語にする案を公言して、顰蹙(ひんしゅく)をかったことがある。その話を知ったとき、わたしも、「志賀直哉は頭がおかしい」と思ったが、あながち間違いではないようだ。日本も日本語の外に公用語を持ったほうがいい。それ以外に解決策はない。

『報道しないメディア』(喜田村洋一著、岩波書店)は、英国BBCが点火したジャニー喜多川による性加害問題の背景を探った論考である。著者の喜田村氏は、弁護士で自由人権協会の代表理事の座にある。メディア問題への洞察が深く、出版関係者や大学の研究者からありがたがられる存在だ。
その喜田村弁護士が著した本書は、ジャニーズ問題がほとんど報じられなかった背景に、報道すれば返り血を浴びる構図があったと結論づけている。喜田村氏は、ジャニーズ問題を報じてきたマスコミが『週刊文春』と『週刊現代』の2媒体だけであった事実を指摘した上で、次のように述べている。
ジャニー喜多川氏の性加害だけでなく、マスメディアにジャニーズ事務所の気に入らない記事が掲載されたりすれば、ジャニーズ事務所は、当該メディアを出入り差し止めにしたり、そのメディアの発行会社の雑誌全部にジャニーズ事務所の所属タレントを出演させなかったり、さらにはそのメディアの上層部に直接不満を言いつけるということをやっていた。
報道に踏み切ることで、不利益を被る構図が存在したという説である。改めて言うまでもなく、そのような構図を構築したのは、報道対象であるジャニーズ事務所の側である。
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ワイセツ行為がらみの事件の裏付けを取る作業はそう簡単ではない。ジャニー喜多川から提訴された『週刊文春』の代理人を務めた喜田村弁護士は、法廷でそれを立証するための着目点として、被害の「訴えが10年以上も続けられている」点を上げている。「そんな告発が続けられるのは何か理由があるはずだ。私は、ジャニー喜多川に対する反対尋問で、この点を衝くことを決めた」という。
告発の数量と連続性という観点から言えば、ジャニー喜多川の事件の性質は、やはりほとんど報道されない「押し紙」問題の性質とも重なる。後者は、1960年代から内部告発が始まり、半世紀以上も告発が続いている。現在も、毎日新聞社に対する「押し紙」裁判が大阪地裁で進行している。時代をさかのぼり、今世紀に入るころには、福岡地裁・高裁で読売新聞社に対する「押し紙」裁判が多発した。
後述するように『週刊新潮』も法廷に立たされた。これら一連の裁判における新聞人の主張は、「押し紙」は歴史的に見ても、一部たりとも存在しないというものである。とりわけ読売のK弁護士は、この点を宮本友丘専務(当時)に尋問の場でも証言させた事実もある。一貫して、「押し紙」行為の存在と連続性を否定してきたのである。
◆◆◆
筆者(黒薮)にとって、『報道しないメディア』は、「押し紙」問題や関係者の倫理観を考える上で参考になる。
なぜ、新聞業界の内部で公然の事実となってきた「押し紙」問題が、ほとんど報道されないのか? 答えは、本書で喜田村弁護士がジャニーズ問題を例に指摘した構図にある。「押し紙」行為を検証すれば、その連続性が明確であるにも関わらず、それを報じれば、マスコミが大変な不利益を被るリスクがあるからだ。その構図を構築したのも、ジャニー喜多川のケースと同様に報道対象にされる側である。つまり新聞社にほかならない。
具体的な不利益の中味については、たとえば自社の出版物の書評が新聞紙面から締め出されるリスクである。日本の新聞社が大量の「押し紙」を隠しているとはいえ、それにもかかわらず相対的に見れば部数は多く、書評の宣伝効果は高い。
新聞研究者やジャーナリストが「押し紙」にタッチしない点について言えば、新聞社問題の核心にふれると新聞紙上で自分の意見を表明する場を失うリスクが高くなるからだ。
しかし、誰もが最も恐れているのは、恐らく「押し紙」報道に対する高額訴訟である。読売による提訴件数は推論ではなく、具体的な事実が裁判記録として残っている。その記録は、今後も消えることはない。
◆◆◆◆
意外に知られていないが、実はマスコミが「押し紙」を大々的に報道した時期が一度だけある。それは2008年ごろである。
その発端は、福岡県の元販売店主が起こした地位保全裁判で、福岡高裁が、読売の「押し紙」行為を認定したことである。これが2007年12月で、その後、「押し紙」報道が本格化するのである。
司法が新聞社の「押し紙」行為を認定したのは初めてだった。本題からはそれるが、参考までに判決文から、「押し紙」を認定した箇所を紹介しておこう。
販売部数にこだわるのは一審被告(黒薮注:読売のこと)も例外ではなく、一審被告は極端に減紙を嫌う。一審被告は、発行部数の増加を図るために、新聞販売店に対して、増紙が実現するよう営業活動に励むことを強く求め、その一環として毎年増紙目標を定め、その達成を新聞販売店に求めている。このため、『目標達成は全YCの責務である。』『増やした者にのみ栄冠があり、減紙をした者は理由の如何を問わず敗残兵である、増紙こそ正義である。』などと記した文章(甲64)を配布し、定期的に販売会議を開いて、増紙のための努力を求めている。
米満部長ら一審被告関係者は、一審被告の新聞販売店で構成する読売会において、『読売新聞販売店には増紙という言葉はあっても、減紙という言葉はない。』とも述べている。
この福岡高裁判決の後、マスコミは「押し紙」問題を取り上げ始めた。『週刊ダイヤモンド』や『SAPIO』などが、新聞社特集を組み、その中で「押し紙」問題に言及するようになった。他のメディアも追随した。
しかし、同時に、読売による裁判攻勢が始まったのである。読売が裁判を連発して、言論機関が言論に対する審判を裁判所に委ねる異常な事態になったのだ。読売は、まず、最初に筆者に対して、2件の裁判を起こしてきた。メディア黒書に対する攻撃である。さらに『週刊新潮』が「押し紙」問題を連載すると、筆者と新潮社に対して約5500万円を請求する名誉毀損裁判を仕掛けてきた。この時点で、筆者に対する請求額は総額で約8000万円に膨れ上がった。3件の裁判の被告になった。
裁判を起こしていた元店主が、読売から「反訴」される事態も起きた。反訴で敗訴した元店主が、読売のK弁護士らによる法手続きにより、自宅を差し押さえられたこともある。提訴による委縮効果は計り知れない。
こうした状況の下で、極めて少数の例外を除いて、マスコミによる「押し紙」報道は沈黙したのである。喜田村弁護士が解析したジャニーズ問題の報道と同じ構図が、「押し紙」問題の報道でも表れたのである。
◆◆◆◆◆
幸いにジャニーズ問題の方はBBCの報道により、一応の解決を見た。しかし、「押し紙」問題は、解決の目途が立っていない。筆者の試算では、35年で少なくとも32兆6200万円の不正な資金が新聞社に流れ込んでいる。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、統一教会の霊感商法による被害額が35年間で1237億円であるから、比較にならない状況が生まれているのである。
ところで読者は、読売から委託を受けて、「押し紙」報道を抑制してきたK弁護士の実名をご存じだろうか?それは、『報道しないメディア』を著した喜田村洋一弁護士なのである。喜田村弁護士は、一方ではジャニーズ事務所を批判し、もう一方では読売新聞社を擁護する。著者の思想の方向性が、筆者には分からない。
【参考記事】読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由
【参考記事】国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発証数の推移」から不正な販売収入を試算、年間で259億円に

日本で定着している中国に関する情報には、誤ったものがかなり含まれている。たとえば宗教が禁止されているという情報である。社会主義の国では唯物論哲学が主流なので、その対極にある観念論哲学の典型である宗教が禁止されているという机上の論理が広がった結果ではないかと思うが、これは事実ではない。
昨年(2024年)の9月、筆者は中国遼寧省の広佑寺を訪れた。広佑寺は、漢代に建立された名刹(めいさつ)で、明の時代に仏教の聖地として繁栄した。
何層にも重なった屋根をもつ木像建築物で、奈良市にある大仏殿に形状が類似しているが、規模は遥かに大きかった。澄んだ空を背に聳えた建物に近づくと、暗褐色の恐竜に呑み込まれるような威圧感を感じた。
入場は無料。だれでも境内を散策することができる。バックグランド・ミュージックのようにお経が絶え間なく流れていた。本堂の床に跪いて祈りを捧げている人もいる。線香の煙も漂っていた。
日本の寺院でも目にする光景であるが、ひとつだけ違いがあった。立て看板が設置されていて、そこに「未成年の宗教活動(祈りなど)を禁止する」と書かれていた。つまり宗教を信仰するかどうかは、成人した後に、自分の頭で考えなさいとアドバイスしているのである。宗教2世の悲劇が問題になっている日本や韓国ではありえない対策である。「宗教を禁止している」というのは事実ではなく、成人してから決めるように奨励しているだけなのである。
情報の信憑性は、やはり現地へ足を運ばなければ確認できない。それが唯一の事実を確認する方法なのである。

USAIDとCIAの傘下にあるNED(全米民主主義基金)は、3月5日、米国議会が同基金に割り当てた予算が違法に保留されているとして、3月5日、行政機関と政府高官を相手に、米国連邦地方裁判所に裁判を提起した。ピーター・ロスカム会長によると、NEDの予算は、事前通告なしに凍結されたという。
ENDは、USAIDから資金提供を受け、CIAからは戦略上のノウハウを受けてきた。表向きは、他国の民主化を支援することを活動の柱としているが、実態としては、米国に敵対する国や地域の市民運動やメディアをてこ入れして、親米世論を拡散し、社会を混乱させたうえで、最後にクーデターなどの手段で「反米政権」の転覆をはかることをゴールとしている。
USAIDの活動分野は多岐にわたるが、世論誘導の役割を担っているのがNEDなのである。NEDの活動により混乱を招いた典型的な例としては、香港の「雨傘運動」がある。NEDから資金援助を受けてきたとされる日本の一部のマスコミも、周 庭 ( しゅう てい 、Agnes Chow Ting)を「民主主義の女神」として称え、NEDの方針に追随した。
ラテンアメリカの中でキューバ政府と最も親密な関係にあるニカラグアとベネズエラに対しても、NEDは侵入して、「民主化」の旗を掲げ、大混乱を引き起こした。しかし、ニカラグアでもベネズエラでも、クーデターは失敗した。
NEDの今後については、存続されるのではないかとする見方もある。筆者も存続の可能性が高いとみている。その意味でも、裁判の行方が注目される。
なお、NEDの活動については、中国外務省のファクトシートに詳細が記録されている。以下、AIによる翻訳を引用する。(■出典)
米国民主主義基金:その概要と活動内容(2024年8月)
はじめに
全米民主主義基金(NED)は、米国政府の「白手袋」として活動している。同基金は、長年にわたり、民主主義を推進するという名目のもと、他国の国家権力を転覆させ、他国の内政に干渉し、分裂と対立を煽り、世論を誤導し、イデオロギーの浸透を図ってきた。その数え切れないほどの悪行は深刻な被害をもたらし、国際社会から強い非難を招いています。
近年、NEDは戦術を次々と変え、平和、発展、ウィンウィンの協力という歴史的潮流に逆行する行為をさらに推し進めています。他国への浸透、破壊、妨害工作を試みる悪名高き存在となっています。NEDの正体を暴き、各国にその正体を看破し、その破壊・妨害工作を警戒・阻止し、自国の主権、安全、発展の利益を守り、世界平和と発展、国際的な公正と正義を維持する必要性を認識させることが急務です。
Ⅰ. NED—米国政府の「白手袋」
NEDは、海外の民主主義を支援するNGOであると主張している。しかし実際には、世界中で破壊活動、浸透工作、妨害工作を実行する米国政府の「白い手袋」として活動している。
1. NEDはCIA秘密工作の実行者である。冷戦初期、CIAは「民間ボランティア組織」を通じて東ヨーロッパの社会主義諸国における反対活動を支援し、「平和的進化」を推進した。このような活動が1960年代半ばから後半にかけて暴露された後、米国政府は市民社会組織と協力して同様の活動を行うことを検討し始めた。これが、このような組織を設立するという考えにつながった。米国の学者ウィリアム・ブルームは、「NEDは、CIAが数十年にわたって秘密裏に行ってきたことを、ある程度あからさまに行うという考えであった。そして、CIAの秘密活動に伴う汚名を晴らすことを期待していた」と書いている。Ⅰ
2. NEDは米国政府の後援により設立された。1981年、ロナルド・レーガン大統領は就任後、「民主主義プロジェクト」を海外で推進する意向を表明し、政府資金による民間運営の財団を提案し、「海外の民主化運動」を公然と支援することを提案した。1983年に設立されたNEDの目的の一つは、米国の国益の幅広い関心と、NEDの資金提供を受けたプログラムによって支援される他国の民主化グループの具体的な要求の両方に一致する方法で、民主化の確立と成長を促進することである。
3. NEDは米国政府から資金提供を受けている。1983年11月22日、米国議会はNED法を可決し、NEDの目的を繰り返し、議会による資金提供、政府による財務監査、議会および大統領への報告義務など、さまざまな問題を明確にした。NEDが設立された1983年には、議会はNEDに1800万米ドルを拠出した。過去40年以上にわたり、連邦議会からの予算は概ね増加傾向にある。USAspending.govのデータによると、2023年度のNEDへの予算は3億1500万ドルであった。カーネギー国際平和財団の報告書が明らかにしたように、「NEDの資金はほぼすべてが米国議会から拠出されている」。II
4. NEDのプログラムは、米国国務省および在外米国大使館の指導の下で運営されている。NEDの根拠法で義務付けられているように、NEDは外交政策の指針を得るために、そのプログラム計画について国務省と協議すべきである。米国国際開発庁(USAID)の報告書「米国政府による民主化推進プログラム」によると、NEDは、民主主義・人権・労働局を通じて国務省と、また、米国国際教育協会(USIA)および在外米国大使館と、プログラムに関する事項について継続的に協議を行っている。
5. NEDは、その業務について米国政府に報告し、政府による監査および監督を受け入れる。NED法によると、NEDは毎年12月31日までに、前年度の年次報告書を大統領に提出しなければならない。この報告書には、NEDの運営、活動、成果が記載される。NEDの監査は、米国政府会計検査院によって毎年実施される。各監査の報告書は議会に提出され、各報告書の写しは大統領に提出される。
6. 米国政府は、NEDが資金提供したすべてのプログラムに関する情報にアクセスできる。NED法によると、NEDまたは正式に権限を与えられたその代表者は、NEDを通じて提供された支援に関連する受領者の帳簿、書類、文書、記録にアクセスできる。米国会計検査院長または正式に権限を与えられたその代表者も、これにアクセスできる。
7. NEDの使命は米国政府によって承認されている。元CIA職員のフィリップ・エイジー氏は1995年のテレビ番組で、「現在では、CIAが裏で暗躍し、資金提供や指示などを通じて秘密裏にプロセスを操作しようとするのではなく、彼らには今、この国家民主主義基金(NED)という相棒がいる」と述べた。「民主主義のための国家基金:未来への賢明な投資」と題された報告書の中で、キム・ホームズ元国務次官補は、「友好的な民主主義者を支援する方が、敵対的な独裁政権から自国を守るよりもはるかに安上がりであるため、NEDへの資金提供は賢明な投資である」と主張している。
II. 他国の国家権力を転覆させるためのカラー革命の扇動
1. イラン政府転覆の試み。2022年9月、イランでヒジャブ規定に対する抗議運動が勃発した。ボイス・オブ・アメリカ・ペルシャ語放送のレポーターであるマシ・アリーネジャドは、検証されていない情報や画像を大量に公開し、国民感情を煽った。レバノンのニュースチャンネルAl Mayadeenによると、2015年から2022年の間に、マシ・アリネジャドはNEDやその他の米国機関から62万8000ドルの資金提供を受けていた。Iran Dailyは、イラン革命防衛隊の文書を引用し、NEDはヒジャブ抗議運動中にマシ・アリネジャドとのつながりを利用してイランの内政に干渉していたと報じた。その一方で、NEDは、偽ニュースの捏造を行なっていたイラン人権センター(CHRI)と人権活動家通信社(HRANA)を支援し、反政府組織やメディアと連携して中傷キャンペーンを展開する反体制派を支援していた。NEDは、人権運動を通じてイランの政権交代を求める論説を定期的に「Journal of Democracy(民主主義ジャーナル)」に掲載していた。イランのメディアは、NEDを「民主主義の国敵」や「NEDのトロイの木馬」と呼び、イランの秩序を乱し、不安を煽っていると非難している。
2. アラブ諸国への浸透を図るために、さまざまな戦術を用いる。アラブの春が始まって以来、NEDはソーシャルメディア・プラットフォームを大々的に利用し、NGOに資金を提供してマルチメディア・コンテンツを公開したり、オンライン研修を提供したりして、カラー革命を扇動しようとしてきた。また、NEDは、同地域における民主主義への移行のための人材予備プログラムを実施し、亡命中の「民主主義の支持者」、「人権活動家」、「反体制派」を支援するNGOに資金援助を行い、現地の労働組合に能力開発の強化を促し、さまざまな国々における「憲法改正」を画策する学者や活動家を支援してきました。
3. ウクライナの「カラー革命」への関与。2004年のオレンジ革命の際、NEDはウクライナの野党に6500万ドルを提供した。2007年から2015年の間、NEDはウクライナのNGOを支援し、「市民参加」を促進するために3000万ドル以上を拠出した。 2013年から2014年のユーロマイダンでは、NEDはマスメディア研究所に資金を提供し、扇動的な情報を広めました。また、NEDはフェイスブック、X(旧ツイッター)、インスタグラムなどのソーシャルメディアプラットフォームに数千万ドルを費やし、誤った情報を広め、ウクライナの民族間の緊張を高め、ウクライナ東部の民族間の対立を煽りました。
4. 北朝鮮政府の転覆を企てる。2002年7月、NEDのカール・ガースマン会長はメディアに対し、NEDは議会と協力して、複数のNGOを通じて北朝鮮に関する世論を動かす活動を行い、北朝鮮体制を弱体化させることを目指していると語った。 2021年7月、ガーシュマン氏はメディアに対して、NEDが資金提供する人権プログラムのおかげで、「北朝鮮の全体主義体制は徐々に弱体化し、最終的には体制崩壊につながるだろう」と語った。
Ⅲ. あらゆる勢力と結託し、他国の内政に干渉する
1. 対象国における親米勢力の育成
◆2021年年次報告書によると、NEDはアラブ諸国において親米メディアを支援し、「民主活動家」を育成し、「民主と自由」のための団体に資金援助を行っている。
◆2021年5月、NEDのカール・ガーシュマン会長は、ロシアで活動が禁止されているにもかかわらず、NEDはロシア国内の多数の団体の運営に資金を提供し、ロシア政府に対する闘争において、ロシアの亡命中の野党指導者を、国家院、大統領選挙、地方選挙などの重要な政治的節目において支援していると述べた。Ⅲ
◆NEDは長年にわたりヨーロッパに浸透し、EUの役人を買収してきた。EUの機関内で大西洋主義の声を奨励する一方で、戦略的自立の声を抑圧し、欧州の「独立系メディア」に資金を提供して、世論を米国寄りに傾けている。
メキシコを浸透工作の主要な対象国として、NEDはメキシコ汚職・不処罰反対委員会(MCCI)やメキシコ競争力研究所(IMCO)などの組織を支援し、メキシコの電力改革を妨害した。2021年、メキシコ政府は、NEDがメキシコの反政府組織に資金提供していることを「介入主義的行為」「クーデターを促進する行為」として非難する書簡を米国政府に送った。
◆2017年以降、NEDは54の反キューバ組織に資金援助を行っている。2018年、反政府組織であるキューバ民主化委員会は、米国から「民主化資金」を受け取り、キューバ国内の従業員、代理人、請
負業者に4万8000米ドルを支払ったと発表した。
◆長年にわたり、NEDはイランにおける「民主化改革」を推進し、イランに対する文化浸透を図るために、学者やジャーナリストに資金援助を行ってきた。
2. 他国の人権状況を歪曲する
◆NEDが後援する『Journal of Democracy(民主主義ジャーナル)』は、発展途上国をアメリカ式民主主義の基準に当てはめ、大統領選挙、経済政策、人権状況、民主主義への移行などを批判する。
◆2023年7月、『ジャーナル・オブ・デモクラシー』は「インドはまだ民主主義国なのか」というテーマでインドの民主主義に関する。
5本の記事を掲載し、ナレンドラ・モディ首相が政権を握って以来、同政権は民主的な制度、規範、慣行を全面的に解体していると主張した。 2024年4月、『Journal of Democracy』誌は「なぜこの選挙がインドで最も重要なのか」という記事を掲載し、モディ首相の2期目が始まって以来、インドの民主的統治は着実に衰退していると主張し、モディ首相とインド人民党が3期連続で勝利した場合、多様で世俗的な民主主義国家としてのインドの将来が危機に瀕する可能性があると論じた。
湾岸協力会議(GCC)加盟国を「独裁国家」と分類したNEDは、学術、文化、メディア活動を通じて、それらの国々に対して自らの価値観を輸出し続けています。NEDのウェブサイトやその他の情報によると、NEDは2021年にGCC諸国で11のプログラムを開始し、180万ドルを投じて「民主化活動家」を支援し、これらの国の人権記録を厳しく批判し、報道の自由を推進するという名目で社会的な緊張を煽った。
3. 他国の選挙への介入と干渉
2022年4月と2023年12月、セルビアでは大統領選挙、国民議会選挙、地方選挙が実施された。NEDは選挙プロセス全体に介入し、選挙の直前には親米派の野党候補者を全力で支援した。2023年5月、セルビアで2件の銃撃事件が連続して発生した後、NEDが支援する人権団体と親米派の野党組織は、セルビア政府の辞任を要求する大規模なデモを行った。
◆NEDは長年にわたり、フィリピンのニュースサイト「Rappler」に資金援助を行っている。NEDのウェブサイトに掲載された報告書によると、2017年から2021年の間に、RapplerはNEDから総額78万6000ドルの資金援助を受けている。2022年の総選挙の際には、ラップラーはフィリピンの選挙管理委員会に働きかけ、選挙の動向や候補者の選挙活動費などの内部情報へのアクセスを要求した。これにより、選挙の公平性と独立性について各方面から疑問が呈された。最終的には、激しい世論の圧力により、許可されたアクセスは取り消された。
◆NEDは、イラン民主化財団(FDI)などの反イラン組織に長年資金援助を行い、選挙を妨害してきた。これは、FDIの執行理事である米国の社会活動家ケネス・R・ティマーマン氏の記事で認められている。
◆2023年1月、NEDのダモン・ウィルソン会長は、ナイジェリアのテレビ番組とのインタビューで、ナイジェリアの総選挙の民主主義と公平性について懸念を表明した。
Ⅳ. 他国の安定を損なう分裂と対立を煽る
NED理事会のケネス・ウォラック(Kenneth Wollak)会長はかつて米国議会で、米国の敵対者に対抗する勢力を強化し、外国政府を転覆させる能力を培うためにNEDが長期的に取り組んできたことを語った。Ⅳ
1. 「台湾独立」分離独立勢力を支援。2022年、NEDは台湾民進党当局と共同で「世界民主運動大会」を開催し、欧州の議員やシンクタンクの代表を招待した。彼らは「民主勢力」を動員して「東方における民主闘争の最前線」を開拓し、「今日のウクライナ、明日の台湾」という虚偽の物語を誇張しようとした。2023年7月、NEDのデイモン・ウィルソン会長は台湾民主基金会の20周年記念式典に出席するため台湾を訪れ、蔡英文氏に「民主サービス勲章」を授与した。
2. 香港の反中不安定化勢力と結託する。NEDは長年にわたり、香港の不安定化を試みる勢力と結託し、資金と公的支援を提供してきた。2020年、NEDは香港関連プログラムの下で、香港の不安定化を試みる勢力に資金提供するための総額31万ドル以上の複数のプロジェクトを立ち上げた。2023年、NEDは香港監視機構やアムネスティ・インターナショナルなどの組織、および米国、英国、ドイツの反中派議員と結託し、香港の不安定化を企てる勢力の1人である黎智英(ジミー・ライ)氏を2023年のノーベル平和賞候補に推薦した。
3. NEDは長年にわたり、反中組織「世界ウイグル会議(WUC)」を支援しており、その年間平均資金提供額は500万ドルから600万ドルに上る。2024年3月、NEDは「WUC」のリーダーをイベントに招待し、中国の民族政策と少数民族人口の多い地域の開発を中傷した。
NEDは「東トルキスタン教育連帯協会」のリーダーであるヒダヤット・オグズハンに資金援助を行い、ヒダヤット・オグズハンに反中集会を活発化させ、中国とトルコの間に不和を巻き起こすよう指示した。また、NEDは「東トルキスタン」組織のリーダーであるルシャン・アッバスにも資金援助を行い、彼女がトルコを頻繁に訪問し、「東トルキスタン」勢力と協力して問題を煽り立てることを可能にした。
4. 2023年3月、NEDのデイモン・ウィルソン会長はNED代表団を率いてインドのダラムサラを訪問し、「チベット独立」の指導者たちと会談し、「チベット独立」活動への支持を表明した。2023年11月、NEDは「チベット独立」活動家のジグメ・ギャッツォに「民主主義賞」を授与した。2024年4月、NEDは「亡命チベット政府」の「首相」ペンバ・ツェリンを本部に招待した。
5. NEDは21世紀初頭、グルジアの首都トビリシでデモを組織するために、グルジア国内の3つの地元NGOグループの設立に資金援助した。2024年5月、NEDはグルジアにおける外国代理人法案に対する抗議活動に賛同を集め、扇動した。
Ⅴ. 世論を欺くための虚偽情報の捏造
1. NEDのデイモン・ウィルソン総裁は朝日新聞のインタビューで、中国が技術的手段とAIを用いて国民を監視していると虚偽の主張をした。2023年11月30日、NEDのクリストファー・ウォーカー副総裁は、米中戦略競争に関する米下院特別委員会で証言する際に、中国共産党が思想を独占していると嘘をついた。Ⅴ
2. NEDが支援するセルビアのNGOは、CNNのセルビア支局と連携し、中国関連の偽ニュースをでっち上げ、中国側が実施するプロジェクトを中傷し、いわゆる環境保護、労働、汚職の問題を誇張した。
3. NEDは、国際共和党研究所(IRI)に資金を提供し、中国共産党の破壊工作戦術に対抗する欧州強化プロジェクトの第2段階を開始した。このプロジェクトは、中国共産党が民主的価値観と大西洋横断的連帯に脅威をもたらしているという、いわゆる脅威をでっちあげ、広めることを目的としている。
4. NEDは、「北朝鮮脱出者」に関する92のプロジェクトを実施するために1741万米ドルを投資した。韓国のNGOに資金を提供し、北朝鮮をテーマにしたラジオ局を運営させ、毎週「民主主義と人権」の観点から「北朝鮮脱出者」に関するストーリーを制作し放送した。また、北朝鮮に関する否定的なニュースを広めるために北朝鮮をテーマにしたオンライン出版物を創刊し、「脱北者」を記者として訓練し、オンライン投稿やビデオインタビューに参加させることで北朝鮮を中傷するよう促した。
5. NEDは、VOAのペルシャ語放送局であるイラン・インターナショナルやBBC、その他の反イランメディアと協力し、イランに対する情報マトリックスを形成した。NEDとその関連機関は、反イランメディアに否定的な情報を提供し、イランに対する集中的な報道を扇動した。
Ⅵ. 「学術活動」を隠れ蓑にした干渉と浸透
1. NEDはイラクのガバナンス・センター・フォー・パブリック・ポリシー(GCPP)に資金を提供し、同センターは6年連続で「イラクにおける民主主義変革のための国家指標」報告書を公表し、毎回イラクの民主主義に低い評価を与え、イラクを「部分的権威主義移行期」の国と分類した。イラクの行政、社会統治、民主主義、法制度における進歩を正しく反映していないとして、イラクの社会全体からこの報告書は非難されている。 低い評価を維持する目的は、イラクの内政への米国の干渉と軍の撤退延期を正当化するための口実を提供することにあると、彼らは考えている。
2. 2024年3月、NEDの主要助成先である国際民間企業センター(CIPE)は、フィリピン・マカティ・ビジネス・クラブやその他の団体と共同で、フィリピン初の「持続可能性報告書」を発行した。これは、フィリピンに不当に炭素排出基準を課し、米国やその他の西側諸国の先進国が負う義務を課すことで、フィリピン政府に圧力をかけ、同国の経済構造を変えさせようとするものだった。
3. NEDは、欧州価値安全保障政策センター(EVC)、グローバル・セキュリティ・センター(GSC)およびその他のシンクタンクに数十万ドルの資金を提供し、EUが米国の「小さな庭、高い塀」政策に追随するように仕向けるさまざまなセミナーや活動を組織した。
4. ウクライナ危機が始まって以来、NEDが資金提供しているベオグラード安全保障政策センターは、親西欧派のデモによる抗議を支援し、セルビアの外交政策を批判してきた。
5. 2022年1月から2023年1月にかけて、NEDはAtlas Networkを通じてトルコのデジタルメディア・プラットフォームdaktilo1984.comに資金を提供し、このプラットフォーム上で不満を広め、民族間の緊張、社会紛争、政治的相違を煽る活動を支援した。
6. NEDは長年にわたり、「コソボ」のNGOに資金を提供し、セルビア政府とプリシュティナの暫定自治機関との間の緊張を煽ってきた。2023年12月、NEDが資金提供するシンクタンクSbunkerは、「コソボ」はアメリカによる国家建設と民主主義推進の支援の比較的うまくいった事例であるとする報告書を発表した。これは、他国を侵略し分割するというアメリカの真の意図を正当化しようとする試みである。
7. NEDはソーシャルメディアを利用してイランに対する情報戦を展開した。 ヒジャブ着用義務に対する抗議運動の際には、多数のソーシャルメディア・ボットが現れ、個人アカウントや独立系メディアを装って、反イラン情報を拡散し、一般市民を欺いた。
8. NEDとUSAIDは、ウクライナのソーシャルメディアの「ファクト・チェッカー」となる複数のウクライナの組織に資金提供した。しかし、このような「ファクト・チェック」は、実際にはウクライナ国民を欺くために米国がウクライナのインターネット上に作成した情報フィルターである。
Ⅶ. NEDは米国および国際社会から暴露され、批判された
1. 米国人が暴いたNEDの真の姿
◆元連邦議会議員ロン・ポール氏はかつて、NEDが米国の好む外国の政治家や政党を支援するために米国の納税者の資金を大量に浪費しており、このような行為は明らかに米国の国内法に違反していると投稿した。NEDは外国の選挙に資金提供するために「ソフトマネー」を提供したが、このような選挙操作を「民主主義の促進」と表現していた。
◆元連邦議会議員のバーニー・フランク氏は1980年代にNEDへの資金提供の削減を要求した。彼は、公共交通機関や癌の研究に資金提供するのではなく、政治目的でフランス労働組合に資金提供することは妥当ではないと主張した。
◆ニューヨーク・タイムズ紙は2006年1月29日、「米国の矛盾したメッセージがハイチを混乱に導いた」という記事を掲載し、米国政府がNEDを通じてハイチの民主的に選出された政府を転覆させた経緯を明らかにした。
◆2021年9月、ニューヨーク・タイムズ紙の元記者スティーブン・キンザー氏は、ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスのウェブサイトに、NEDがCIAやUSAIDと協力し、米国が好まない政権を転覆させるために、他国の反政府勢力を支援していることを暴露する記事を掲載した。記事によると、NEDの初期の理事会メンバーの多くは好戦的な人物であり、現職の理事の中にはキューバやニカラグアの政権交代に熱心に取り組んだ元連邦議会議員もいる。NEDの使命は、非友好的な外国政府を転覆させ、米国の利益に沿った政権を樹立することである。
2. 国際社会が暴露し批判したNEDの悪行
◆2015年7月29日、ロシア外務省は公式声明を発表し、NEDを「望ましくない組織」として正式にリストアップし、ロシア領内での活動を禁止した。声明では、米国国務省がロシアの市民社会の運命について「深く憂慮している」と明らかに偽善的な声明を出したと述べた。NEDのプロジェクトのほとんどは、米国の指導に従うのではなく、自国の国益に沿った独自の政策を追求しようとする国の国内情勢を不安定化させることを目的としている。
◆2022年5月、ロシアの通信社タス通信は、ロシアの国家安全保障会議副長官ネイル・ムヒトフ氏が雑誌『ナショナル・ディフェンス』のインタビューで、NEDは主に若者に影響を与え、彼らの愛国心を損ない、現代の世界秩序におけるロシアの役割を軽視しようとしているとコメントしたと報じた。「人民解放」を口実に、西側諸国は自国民にロシアに対する否定的な見方を植え付けようとしている。
◆フランス人ジャーナリストのフレデリック・シャルピエ氏は、2008年に『CIA in France: 60 Years of Interference in French Affairs』(フランスにおけるCIA:60年にわたるフランス内政への干渉)を出版し、フランスにおけるNEDの活動を暴露し、NEDは米国務省、国務情報局、米国国際開発庁の3つの機関からの資金提供に依存しており、米国の外交および軍事政策に奉仕していると述べた。
◆2010年、フランスのウェブサイト「ヴォルテール・ネットワーク」は、創設者ティエリー・メイサンの記事「NED、CIAの合法的窓口」を掲載し、NEDのフランスのNGOへの直接関与、フランスの選挙への干渉、その他の悪事を暴露した。
◆2018年、ハンガリーのメディアFigyeloは、NEDから資金提供を受けている市民人権団体ハンガリー・ヘルシンキ委員会を「ジョージ・ソロスの傭兵」としてブラックリストに載せ、外国勢力と結託しハンガリーの安定を損なっていると非難した。
2023年4月、NEDは、人権と法の支配を守り、言論の自由を支援する超党派の独立系メディアを募集するための助成金申請を開始した。ニューヨーク・タイムズ紙の元記者スティーブン・キンザー氏は、NEDの唯一の目的は、ワシントンが承認しない政府を不安定化させる人材を育成することであると、世界の政府に警告した。
◆ロシアの世界経済国際関係研究所(IMEMO)は、記事「ナショナル・エンダウメント・フォー・デモクラシー(NED)40周年: 基本に立ち返るか?」という記事で、NEDは米国政府が現行の独裁政権と二段階の外交政策を同時に追求することを可能にしており、米国政府が関係を維持する一方で、NEDは長期的に国家の下部レベルで活動し、将来的にこれらの政府に取って代わる可能性のある必要な政治勢力を育成していると指摘した。NEDは、政府のプログラムが不都合な微妙な分野で役割を果たすことができる。
◆2023年6月、Agencia Brasilは、サンタ・カタリーナ連邦大学教授のCamila Feix Vidalの言葉を引用し、NEDは民主主義が利益追求の口実として、また他国への干渉の道徳的弁解として利用されていることを示す明白な証拠であると報じた。
◆2016年、インド政府は、外国貢献規制法の規定に違反するNGOへの寄付を理由に、NEDを監視リストに追加した。
結論
米国は、民主主義、自由、人権を隠れ蓑にして、NEDを他国への浸透、干渉、破壊工作に利用してきた。これは他国の主権、安全、発展の利益を著しく侵害し、国際法と国際関係の基本原則を露骨に侵害し、世界の平和と安定を深刻に脅かしている。このような不人気で卑劣な行為は、国際社会から断固として反対されている。
世界は多極化に向かっており、国際関係にはより大きな民主主義が必要です。各国には、自国の国情や国民のニーズに適した発展の道を追求する権利があります。どの国も他国に対して民主主義や人権について説教する立場にはなく、ましてや民主主義や人権を口実に他国の主権を侵害したり、内政に干渉したり、イデオロギー対立を煽ったりする立場にはありません。 平和、発展、公平、正義、民主主義、自由といった人類共通の価値観に従い、国際社会のメンバーは相互尊重と平等を基礎として交流と対話を行い、人類の進歩に貢献するために協力すべきである。
注
Ⅰ.ウィリアム・ヘンリー・ブラム著『ならず者国家:世界唯一の超大国への手引き』Zed book、2006年
Ⅱ.トーマス・カロザース、ベンジャミン・フェルドマン著『米国の独裁国家との関係を検証する』カーネギー国際平和基金、2023年12月
Ⅲ.RT、アメリカの「体制転換」専門家NED、ベラルーシの抗議運動の功績を主張し、いたずら電話中にロシアの野党への資金提供を自慢、2021年5月17日
Ⅳ.エドワード・ハント、NED、長期戦略で体制転換を追求、カウンターパンチ、2018年7月6日
Ⅴ.米国下院文書リポジトリ:docs.house.gov

『創』の3月号(2025年)が「新聞社の徹底研究」と題する特集を組んでいる。これは、延々と続いてきた企画で定評もあるが、最近は内容の劣化が著しい。新聞社に配慮しているのか、「押し紙」問題へ言及を回避している。肝心の問題を隠蔽すると、誤った新聞業界のイメージが拡散する。世論の形成においては、むしろ有害な企画だ。
「押し紙」は、今や公然の事実になっているわけだから、メディア専門誌である『創』がその実態を把握していないはずがないが、「押し紙」は存在しないという偽りのリアリティーを前提に新聞を論じている。
以前は、消極的ながらも「押し紙」について言及することもあった。たとえば、2011年度の新聞特集(『創』4月号)は、鼎談の中で、共同通信編集主幹の原壽雄氏が「押し紙」に疑問を呈している。次の発言である。
部数の話が出るたびに思うのだけれど、元々、新聞協会が発表しているのは、本当の部数ではないわけですよね。いわゆる「押し紙」といって販売店に必要以上の部数が送られていた。それをなんとかしないといかんと思っている経営者は多いわけで、部数減のデータの中には、押し紙の調整も含まれているわけですね。
この鼎談の2年前、2009年には『創』の篠田博之編集長がわたしに「押し紙」問題についての記事の執筆を依頼してきたこともある。ただ、このときは、弁護士で自由人権協会・代表理事の喜田村洋一らが、読売新聞から委託を受けてメディア黒書に激しい裁判攻撃を加えていた時期で、しかも、3件目の裁判(約5500万円を請求)を起こされた直後だったこともあり、筆者の方から執筆の依頼を断った。
つまり『創』は、かつて「押し紙」問題を認識していたのである。
◆1999年の新聞特殊指定の改訂で「押し紙」が容易に
なお、「押し紙」というのは、新聞社が販売店に対して配達部数を超える部数を送り付ける結果、過剰になる部数を意味する。抗議に残紙とも言う。厳密な法律上の定義も複数ある。1999年の新聞特殊指定の改訂以前は、新聞販売店が実際に配達している部数に予備紙(2%)を加えた部数を「必要部数」と位置づけ、それを超えて供給された部数のことを意味した。
たとえば配達部数が1000部で、予備紙が20部(2%)のケースでは、1020部が「必要部数」で、それを超えた部数は理由のいかんを問わず、すべて「押し紙」と見なされた。
ところが、1999年に改訂が行われた。改訂後は、販売店が外形的に注文した部数を超えて供給された新聞と見なされるようになった。予備紙2%も削除された。その結果、たとえば注文部数が1500部になっていれば、1500部を超えて提供された新聞が「押し紙」と見なされる。
しかし、ここから先が肝心なのだが、改訂後の注文部数(厳密には「注文した部数」と表記)の中には、新聞社が販売店に対してノルマとして課した部数が含まれている場合が多い。そのために、たとえば注文部数1500部の中に、400部のノルマが含まれていても、この400部は販売店が自主的に注文した予備紙と解釈され、「押し紙」行為とは認定されなくなったのだ。つまり1999年の新聞特殊指定の改訂は、新聞社の「押し紙」政策をより容易にしたのである。この改訂時に活躍したのが、当時の日本新聞協会・会長の渡辺恒雄と、公取委員長で後に、プロ野球コミッショナーに天下りする根来泰周である。
1999年の新聞特殊指定の改訂と「押し紙」の経緯については、次の記事に詳しい。
【参考記事】1999年の新聞特殊指定の改訂、「押し紙」容認への道を開く「策略」
1999年の新聞特殊指定の改訂後、「押し紙」の規模が急激に拡大した。販売店が「押し紙」による損害賠償を求める裁判の中では、新聞社が送付した部数の30%から50%ぐらいが「押し紙」になっていたケースも少なくない。
◆「押し紙」問題がジャーナリズムの根源的な問題である理由
新聞社は「押し紙」により莫大な販売収入を得る。「押し紙」による部数のかさ上げにより経営規模を大きく見せ、紙面広告の価格を高く設定することもできる。さらに販売店に卸される折込広告の枚数が、ABC部数(広義の「押し紙」が含まれている)に一致させる基本的な原則があるので、不正な折込広告料金が広告代理店や新聞販売店にも流れ込む仕組みになっている。最近は、広告主がこうした裏面を知って、折込広告の発注枚数を自主的に減らす傾向があるが、公共広告に関しては、従来どおり水増しの状態になっている。
このようなビジネスモデルを構築したのは、新聞発行本社にほかならない。新聞発行本社の傘下にある販売店は、本社の「押し紙」政策に従う以外に選択肢はない。ほとんど責任はない。
ちなみに、「押し紙」で新聞社が得る不正な金額がどの程度になり、それが新聞ジャーナリズムにどう影響するのかについては、次の記事を参考にしてほしい。
【参考記事】 「押し紙」問題がジャーナリズムの根源的な問題である理由と構図、年間932億円の不正な販売収入、公権力によるメディアコントロールの温床に
◆誌面の劣化
『創』(2025年3月)の「新聞社の徹底研究」が、「押し紙」問題に言及しなくなった理由は分からない。 『創』誌上に新聞社の広告も見あたらないので、自粛の可能性が強いと推測する。
しかし、『創』サイトにも、新聞の部数が激減している実態については、深刻な問題だという認識があるらしく、特集の劈頭(へきとう)で、次のように述べている。
毎年、3月号の新聞特集のこの総論では新聞発行部数を示す日本新聞協会発表の数字を紹介している。(略)
それによると、昨年10月時点の協会加盟の日刊106紙の総発行部数は2661万6578部だった。
この数字に「押し紙」が含まれていることは隠蔽している。つまり議論の前提である客観的な事実を提示せず、新聞の発行部数の減少を論じているのである。議論の前提が間違っているわけだから、記事を読んでもなんの参考にならない。
「新聞社の徹底研究」が主眼としているのは、新聞各社のPRではないか?。特集の傾向を掴むために小見出しを拾ってみよう。
・「裏金問題」報道で新聞協会賞を受賞(朝日)
・インパクトのある写真をどうやって入手したのか(朝日)
・総合編集システム 共同開発で新聞技術賞(朝日)
・臓器移植めぐる医療部の調査報道が大きな反響(読売)
・読売中高生新聞 創刊10周年(読売)
・書籍・雑誌とも好調 中央公論新社(読売)
・デジタル先行の連載 「追跡 公安捜査」(毎日)
・書籍の重版が増えた毎日新聞出版(毎日)
筆者は、業界紙の誌面を連想するのだが。

横浜副流煙事件の「反訴」について筆者は、ニューソク通信の須田慎一郎氏から、インタビューを受けた。メディア黒書で繰り返し報じてきたように、この裁判は副流煙が原因で病気になったと主張するA家(A夫、A妻、A娘)が、ミュージシャンの藤井将登さんを訴えた事件で、請求が棄却されたのを受けて、逆に藤井さん夫妻がA家を提訴した案件である。A家による訴権の濫用が争われた。
A家3人の診断書を交付したり、A家のために5通もの意見書や報告書などを提出した作田学医師も、裁判を幇助したとして法廷に立たされた。
結論を先に言えば、藤井夫妻の「反訴」は棄却された。
須田氏によるインタビューでは、「反訴」の大きな争点だった作田医師が作成した3人の診断書がいかに根拠がなく、杜撰なものあったかを解説している。その診断書が、A家による提訴の根拠になった。しかし、判決は作田医師の診断書を詳細に検証することを避け、診断書を医師の主観で書いたとしても、なんら問題ないという見解を示した。事実の客観性を軽視したのである。根拠のない診断所をもとにA家が4518万円の高額訴訟を起こし、それを作田医師が熱心に幇助した行為を断罪しなかった。
インタビューで、筆者はこの恐るべき判決を批判した。

診断書がアクションを起こすための通行証になる現象は昔から続いてきた。たとえば大相撲の力士が本場所を休場するときには、診断書を提出する。労災認定の手続きにも診断書の提出が義務づけられている。医療裁判では、診断書の提出は義務ではないが、判決内容に決定的な影響をおよぼすことが多い。
こうした事情の下で、患者の希望に応じてこころよく診断書を交付してくれる医師は重宝がられている。当然、多くの人々が、診断書は、本当に患者の病状を客観的に検証した記録なのかという疑念を抱いている。不透明なものが付きまとっている。
現在、喫煙撲滅運動と診断書の連動が争点になっている裁判が横浜地裁で進行している。発端は、2017年の晩秋。ミュージシャンの藤井将登さんは、隣人の家族3人(A夫、A妻、A娘)から4518万円を請求する裁判を起こされた。将登さんが吸う煙草の副流煙が自宅に流入して、健康を害したというのが、3人の訴えだった。「受動喫煙症」による被害の救済を求める訴訟である。
この提訴の根拠になったのが、複数の医師が交付した診断書である。そこには、受動喫煙症や化学物質過敏症の病名が付されている。
とりわけ日本禁煙学会の理事長(当時)で禁煙学の権威である作田学博士が交付した診断書は、訴状と一緒に提出されており、3人の訴えを裏付ける有力な根拠となってきた。さらに作田医師は、原告家族のために5通もの意見書や報告書などを裁判所に提出している。
ところが審理が進むうちに、作田医師が作成した3通の診断書に後述する瑕疵(かし)があることが次々と判明したのである。
結論を先に言えば、横浜地裁は家族3人の訴えを棄却した。その後、東京高裁も原告の控訴を棄却し、藤井将登さんの勝訴が確定した。それを受けて、将登さんと妻の敦子さんは、根拠のない事実に基づいて高額訴訟を起こされたとして、逆に3人に対し約1000万円を請求する裁判を起こした。俗にいう反スラップ訴訟である。この裁判は現在は東京高裁で継続している。
◆診断書の何が問題なのか?
作田医師が交付した家族3人の診断書には、次のような疑問点が浮上している。いずれも将登さんを被告とする最初の裁判が提起されて、1年が過ぎたころに判明した事実である。
■A娘の診断書
作田医師によるA娘に対する診断書交付は、医師法20条に違反していた。医師法20条は、無診察による診断書交付を禁じている。
しかし、作田医師は、A娘を診察していない。元々、面識もない。インターネットによる診察すらも実施していない。他の医師がA娘に交付した診断書や、A妻の話を聞いて、診断書を交付したのである。見ず知らずの「患者」に、診断書を交付したわけだから、明らかな医師法20条違反である。横浜地裁の判決も、この事実を認定している。さらに医師法20条違反は、虚偽文書作成罪・行使罪にも該当する。
■故A夫の診断書
A夫は、係争中に癌で他界した。その故A夫の診断書にも不可解な点がある。作田医師は、診断書に「受動喫煙症」の病名を付したのであるが、A夫は提訴の1年半前までへビースモーカーだった。喫煙歴は、およそ25年間。A夫本人も喫煙者だったことを認めている。もちろん喫煙者が煙草を絶った後に、別の喫煙者の副流煙で体調を崩すことはあるが、作田医師が喫煙歴を帳消しにするのはおかしい。
■A妻の診断書
さらにA妻の診断書に至っては、受動喫煙症の病名を付したうえに、副流煙の発生源を1階に住む「ミュージシャン」と事実摘示している。ミュージシャンとは、改めて言うまでもなく、藤井将登さんのことである。現場を取材して、そのような結論に至ったのではなく、「問診」の中で、本人から聞き取った内容をそのまま記述したか、あるいは勝手な想像で「犯人」を特定したのである。
◆診断書をワープロで作成か?
ちなみにいずれの診断書も、当時、作田医師が外来を開いていた日本赤十字センターの公式のフォーマットで作成されたものではない。また、「受動喫煙症」という病名は、日本禁煙学会が独自に命名したもので、WHOが認定している「病気」ではない。当然、日本でも保険請求の対象になっていない。受動喫煙という現象は、喫煙の現場で起こりうるが、その事と病状を呈することは別である。
さらに、日本禁煙学会の会員で、くらた内科クリニック院長の倉田文秋医師が交付した3人の診断書にも別の問題がある。倉田医師は診断書の交付を一旦断り、家族3人が副流煙裁判を提起するのであれば診断書を交付すると条件を付けた上で、最終的に交付したのである。もちろん、こうして交付された3人の診断書にも、受動喫煙症の病名が付されていた。診断書交付の条件として、訴訟の提起という条件を付けたことで、提訴を煽った可能性もある。
さらに付け加えるならば、日本禁煙学会は、自らのウエブサイトに受動喫煙症を認定するための診断書のひな型まで掲載している。これでは客観的な診断、客観的な医学を奨励しているとはとても思えない。
このように横浜副流煙裁判で使われた診断書は、さまざまな疑問を孕んでいるのだ。
◆禁煙撲滅運動の政策目的で交付された診断書
既に述べたように、横浜地裁は家族3人の訴えを棄却した。原告の主張がなにひとつ認められなかったばかりか、既に述べたように、裁判所は、作田医師による医師法20条違反を認定した。「診断は原告●●を直接診察することなく行われたものであって、医師法20条に違反する」と断罪したのである。
また裁判所は、作田医師らが作成した「受動喫煙症」の診断基準にも言及して判決の中で、診断基準が禁煙撲滅運動を進める上で、副流煙による被害を認定しやすくする方向性で作成されたと事実認定したのである。次の記述である。
【引用】その基準が受動喫煙自体についての客観的証拠がなくとも、患者の申告だけで受動喫煙症と診断してかまわないとしているのは、早期治療に着手するためとか、法的手段をとるための布石とするといった一種の政策目的によるものと認められる。
判決は、実質的に作田医師らによる喫煙撲滅運動を厳しく断罪したのである。当然、提訴の根拠となった診断書そのものが信用できないしろものということになる。
◆診断書の在り方を世に問う裁判
ある意味で、横浜副流煙裁判は、喫煙撲滅運動と医師が結託した不正な診断書をめぐる事件なのである。それが最高潮に達して、4518万円の高額な金銭を請求する裁判に至ったのだ。法廷に立たされた藤井将登さんと家族が怒り心頭に達したのはいうまでもない。
繰り返しになるが、東京高裁で判決が確定した後、藤井将登さんと妻の敦子さんは、原告家族3人と作田医師を逆に提訴した。しかし、横浜地裁は、喫煙撲滅運動や作田医師が交付した診断書の問題に踏み込むことなく、藤井さん夫妻の訴えを棄却した。診断書は医師が交付したものであるから信頼性が高いという先入観で判断を下したように見受けられる。
藤井さん夫妻は判決を不服として東京高裁へ控訴した。高裁が喫煙撲滅運動に連動した診断書の件にどこまで踏み込むのかが、今後の着目点である。ある意味では、診断書の在り方を世に問う裁判にほかならない。診断書の交付を依頼する患者も、それを引き受ける医師も、避けては通れない問題を孕んでいるのである。

階段を這うように登る4つ足のロボット。荒漠たる大地を矢のように進む時速450キロの新幹線。AI産業に彗星のように現れたDeepSeek-r1。宇宙ステーションから月面基地への構想。学術論文や特許の件数では、すでに米国を超えて世界の頂点に立った。中国の台頭は著しい。2024年度の貿易黒字は、9921億ドル(約155兆円)を記録した。貿易には相手国があるので、数字を偽装することはできない。
筆者は、2024年9月から、2025年1月までの5カ月のあいだ中国の遼寧省に滞在して、この国の日常を凝視した。
この町に住んで最初に筆者が感じたのは、豊饒な食である。日常の中で食生活にまつわる場面が展開している。団地のマンションは、ベランダを台所に割り当てたものが多く、冬には湯気で白く曇ったガラスの向うで動いている人々の姿が浮かび上がる。
市場では、大胆に食材が捌かれる。鮮魚売り場では、エプロンをした店員が、プラスチック製の塵取りで、エビや貝を掬い取って袋に詰める。日本のように少量のパック詰めにはしない。精肉店では店員がナタのような包丁を振り上げて、あばら骨が付いた豚肉を砕き、それをビニール袋に詰めて客に手渡す。大量に購入して、冷凍庫で保存したり、親戚に分けしたりする。少量では販売しない店もある。
果実店売場では、店員が手の平をがんじきのようにして、大きなビニール袋にミカンを掻き入れる。食品を販売するスケールが、日本に比べてはるかに大きい。
市場近辺の路地には、露天商らが店を設置している。屋台を構えた店だけではなく、歩道に段ボールや板を敷いて、その上に果実などを並べている所もある。街路樹と街路樹の間にロープを張って、そこに衣類をかけて露店販売をしている店もある。
露天商といえば日本では貧しいイメージがあるが、中国では一概にそうとも言えない。「農家ですから、われわれよりも金持ちですよ」と言う人もいる。露店で販売されている果実は、マーケットで販売されているものよりも品質が高い傾向がある。実際、味覚にほとんど外れがない。露店商が成り立つゆえんである。
インターネットを駆使した販売は露店でも定着している。電子マネーの決済はいうまでもなく、メールマガジンで客に、商品情報を送る店もある。外見は質素に見えても、路地裏にまで近代化の波が押し寄せている。もはやひと昔まえの中国ではない。
ちなみに現金も流通している。電磁マネーしか使えないという情報は正確ではない。
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入国からおよそひと月が過ぎた2024年10月、筆者は旅行会社のツアーで北京市を観光した。
万里の長城は北京市の中心から、登り口までがおよそ140キロに位置している。徒歩で山道を登るコースと、ロープウエイで頂上へ向かうコースがある。わたしはロープウエイを選んだ。ジェットコースターに類した乗り物が敷設されていて、係員が客を一人ずつ1ユニットに乗車させ、安全具の装着を確認する。スキー場のリフトのように回転が速いので、大量の客を効率よく送り出す。
ロープウエイが急斜面のトンネルの中を這うように登っていくと、やがて青空の下に緑の山腹が姿を現す。さらに登ると頂上の駅に到着する。
幾つにも重なる山々の稜線に沿って、城壁が遠方まで波のように続いている。その城壁上の路が空に向かって急こう配で伸びている。蟻の群れのように路上で動いている赤や青の点は、観光客のジャケットである。
しかし、観光客の波という点でいえば、北京市の中心にある故宮博物館(紫禁城)は、万里の長城とは比較にならない混雑ぶりだった。平日だというのに、初詣を迎えた日本の寺院のように、人であふれていた。正直なところ古代へのロマンに浸りながら、建造物を鑑賞する雰囲気ではなかった。
旅行案内書によると、故宮は東京ドーム8個分の広さである。その領域が人で込み合っている。ガイドに先導されて、故宮の出口にたどり着くまで、3時間ほどを要した。大通りの歩道にも人が溢れていた。観光産業の繁栄は、好調な経済の反映にほからない。
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ジェトロ(日本貿易振興機構)のデータによると、遼寧省の在職労働者平均月間給与は、7909元(16万6000円、2022年度)である。年収にするとおよそ200万円。夫婦が共働きしていれば、家計収入が400万円程度になる。為替レートで換算した日本の収入水準に比べると低いが、それをもって消費生活が日本よりも低迷しているということではない。
次に示すのは、買い物レシートから抜粋した物価である。()内は、円に換算した物価である。購入場所は、鞍山市のマーケットである。
500ミリリットルのペットボトル:1元(21円)
大サイズのリンゴ2.1キログラム(5個):23.5元(493円)
小粒のミカン1.9キログラム:15元(315円)
キャベツ1個(2.9元)(61円)
食品以外の物価も記録しておこう。滞在中にパソコンのマウスが故障して、家電専門店でマウスを購入した。ワイヤーが付いたタイプで、価格は16元(336円)だった。Cadeveというメーカーのもので、性能は日本で購入するものと変わらなかった。
遼寧省大連市で、地下鉄に乗った。乗車賃は一律2元(42円)。70歳から無料になる。地下鉄の運賃も、日本とは比較にならないほど安い。
ただ、スマートフォンやブランド品などはかなり高価な価格設定で、日本と変わらない。総括すると、中国では最低限の生活は保障されていると言える。実際、「子ども食堂」や「年末の炊き出し」といった日本ではホットな話題は聞いたことがない。スラム街も見あたらない。平日の午後に大きな公園へいくと、高齢者がダンスやカラオケを楽しむ光景に遭遇する。定年後もあくせくと働かなければならない状況ではないようだ。
生活の質は実際に現地で生活してみなくては見きわめが着かない。GDPや平均年収の世界ランキングと一致しているわけでもない。それは国の政策によって大きく左右される。中国にも格差は存在するが、それは社会主義の段階ではまだ想定内のことであって、後進国であるかのような捉えかたは、実態とかけ離れている。
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わたしが中国に滞在した5カ月に焦点を当ててみても、経済に関わる大きな出来事がいくつかあった。たとえば昨年の11月に、中国の支援でペルー政府が、首都リマの郊外に最新鋭の設備を備えた港を開港した。この港がラテンアメリカとアジアを結ぶ海の玄関となる。
さらにペルーからアンデス山脈を縦断してブラジルの大西洋へ通じる鉄道の敷設計画も明らかになった。ペルーから中国製品が南アメリカ全土へ行き渡り、南アメリカからおもに農作物や鉱物が中国へ入ってくる。中米ニカラグアの太平洋岸から、内陸の湖を経由してカリブ海へ通じる運河の建設計画もある。中国とラテンアメリカは年々距離を知締めている。
今後、中国から電気自動車など、最新のテクノロジーを取り入れた重工業製品が輸出されていく可能性が高い。それは「先進国」に特徴的な輸出の傾向である。
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日本のマスコミの大半は、中国経済が明日にでも崩壊するかのような報道を繰り返してきた。その予想の拠り所となってきたのが、不動産不況である。しかし、中国では、日本のバブル崩壊のような現象は起きなかった。
その要因として、中国研究の専門家・遠藤誉氏は、「六大国有銀行の自己資金率が非常に高く保たれている」ことを上げている。
また、「2022年末で、国有銀行が不動産事業に融資している貸出割合は6%に過ぎない」ことも別の要因である。(出典:「中国がGDP成長率発表 数値に疑問を呈した中国のエコノミストの正当性は?」)。究極のところ、中国経済を日本と同じ資本主義の国だという誤った前提で捉えていたということである。
しかし、中国はすでにITやグリーンエネルギーなど新しい産業分野の創出に成功している。しかも、今後、輸出がますます拡大していく。日本の経済誌が繰り返してきた経済破綻などは、まずありえない。
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5カ月の滞在日で、中国で最も印象に残っているのは北京市の夜である。渋滞した車列の傍らを、赤い尾灯を光らせたバイクと自転車が早瀬のように流れていく。頭上にはネオン。自転車に人民服を着た人がまたがって街を移動していた時代の面影はない。中国の変化は著しい。現実の世界と西側が描く空想の世界の乖離はますます広がっている。

喫煙者の呼気が孕んでいる煙草臭が持続する時間はどの程度なのか?東京地裁で、ある著名な医師が興味深い証言をした。患者が診察室を去ってから3分後に、突然、煙草の臭いが漂ってきたというのだ。とはいえ、患者が診察室で煙草を吸ったわけではない。診察に割いた約20分の間にも、この医師は匂いを感じなかった。患者が退室して3分後に初めて臭いを感じたのである。普通に考えると医師の発言は、偽証の疑いがある。
医師は患者のカルテに、「受動喫煙症」という病名を記したばかりだったが、煙草臭を知覚し、診断を誤ったと判断した。そこで事務職員の女性を呼び、念のために煙草臭の有無を問い、臭いの存在を確認してもらった上で、患者の後を追わせた。構内放送でこの患者に診察室へ戻るようにアナウンスしたという。
医師の尋問調書にも、このような筋書きで経緯が記録されており、後日、裁判所は判決文(後日、多発する裁判のうち2件目の裁判)の中で、これら一連の証言を事実として認定した。偽証とは判断しなかったのである。
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発端は2017年11月までさかのぼる。横浜市青葉区に住むミュージシャンの藤井将登さんは、隣人家族3人から、4518万円を請求する裁判を起こされた。将登さんが吸う煙草の煙が、連日住居に流れ込み、一家が健康を損なったというのが提訴理由だった。横浜副流煙裁判の始まりである。
しかし、裁判所は、一家3人の訴えを棄却した。原告と被告は隣人とはいえ、煙草の煙が闖入するような位置関係にはなかったうえに、たとえ将登さんが吸う煙草が外部へ漏れていても、その量も極めて少なかった。そのうえ将登さんの喫煙場所が、防音装置が施されて密封状態にある音楽室にほぼ限定されていた関係で、煙が外へ漏れる可能性はほとんどなかった。
しかし、提訴の根拠となったのは、複数の医師が作成した「受動喫煙症」の病名を付した診断書だった。副流煙が体調不良の原因だと断定したのである。
とりわけ日本禁煙学会の理事で日赤十字センターの作田学医師が作成した家族3人の診断書は、訴状と一緒に提出され、裁判の中で決定的に重要な位置を占めた。ひとつには作田医師が禁煙学の権威として、日本の津々浦々まで名を馳せているからだ。
ところが裁判の審理の中で、提訴の根拠になっている作田医師が作成した診断書に、次々と不審な点が浮上したのである。しかも、いずれも初歩的な「ミス」だった。
たとえば原告の3人家族のうち、娘の診断書は2通存在した。日赤の割り印がない診断書もあった。さらに診断書の書式そのものが日本赤十字センターのものではなく、ワープロで作成したようなしろものだった。
不信感を抱いた将登さんの妻・敦子さんは、作田医師による診断書交付を自分の眼で観察したい願望にかられるようになった。敦子さんは、作田医師が裁判に出してきたような杜撰な診断書を実際に書くのかどうかを自分の眼で確かめたいと思った。
そこで地域の友人である酒井久男さんに、作田医師の外来を受診してもらい、みずからも酒井さんに付き添って、診断書交付のプロセスを現場で検証することにしたのだ。酒井さんは、煙草の煙に弱く、副流煙を吸い込むと咳き込む。
この「日赤潜入」が、後に別の裁判で物議をかもすことになる。
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既に述べたように3人家族が起こした最初の裁判は、藤井将登さんの勝訴だった。勝訴の確定を受けて、将登さんと敦子さんは、「戦後処理」に入った。根拠のない裁判で高額な金銭を請求する行為を断罪しなければ、喫煙撲滅運動を進めている勢力による訴権の濫用が広がりかねないからだ。
藤井夫妻は、元原告の3人と作田医師に対して、訴権を濫用されて損害を受けたとして、約1000万円の損害賠償を求める裁判を起こしたのである。これが横浜副流煙事件の2件目の裁判である。
この裁判の中で被告である家族3人と作田医師は、敦子さんと酒井さんによる作田外来への「日赤潜入」を持ち出したのである。そして尋問の場で、酒井さんら退室してから3分後に、煙草の臭いが漂ったと発言した上で、酒井さんのことを「うさんくさい患者さんでした」とか、「当然、会計にも行っていないと思います」などと供述したのである。また、藤井さんに対しては、酒井さんが非喫煙者であるとすれば、藤井さんが喫煙者であると思うと証言したのである。これらの証言は、両人のいずれかが喫煙者であるという作田医師の判断を前提としているのだ。
酒井さんと敦子さんは、作田医師によるこれらの証言に対して、約200万円の支払を求める名誉毀損裁判を起こした。これが横浜副流煙事件の3件目の裁判である。
この裁判の中で重要な争点になっているのが、診察室を去った3分後に煙草に匂いがしたとする作田医師の証言である。完全な偽証であり、その嘘を前提として、藤井さんを喫煙者と決めつけたり、酒井さんをうさん臭い人間で会計にも行っていないと証言したのである。
しかし、そもそも3人の退出から3分後に煙草の臭いが漂ったという証言は、不自然きわまりない。二人とも非喫煙者である。たとえ喫煙者であっても、退室から3分後に匂ったのであれば、約20分の診察の間にも、煙草の臭いを感じていなくてはおかしい。
さらに作田医師は、煙草の臭いを感じたにもかかわらず酒井さんの診断書に記した「受動喫煙症」の病名を訂正しなかった。訂正しなかった事実は、酒井さんのために、作田医師への紹介状を作成したクリニックに、作田医師が送付した酒井さんの医療記録で確認できる。酒井さんが、医療記録を情報開示したところ、未訂正が判明したのである。
作田医師は、自分が酒井さんに対して「誤った診断書を出してしまったかもしれないと思って」(尋問調書)事務の女性に酒井さんの後を追わせたわけだから、酒井さんの診断記録から「受動喫煙症」の病名を削除しなければおかしい。まして未訂正の診療記録をクリニックに送付することなど、普通はあり得ない。
つまり3分後に煙草の臭いがしたとか、事務職の女性に酒井さんの後を追わせたとか、構内放送で呼び出しのアナウンスを行ったといった証言は、偽証である可能性が高い。なぜ、偽証する必要があったのか。それは、酒井さんを指して「うさんくさい患者さんでした」とか、「当然、会計にも行っていないと思います」と言ったとしても、また敦子さん指して喫煙者であると言っても、その根拠となる客観的で正当な事実があれば、暴言ではなく評論とみなされて、名誉毀損から免責される法理があるからだ。
実際、裁判所は作田医師の発言を、正当な証言だと認定して、賠償責任を免責した。無修正の診療記録をクリニックに送付するなど、診断書交付後の行動の矛盾点を指摘することはなかった。
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福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士 江上武幸(文責) 2025年(令和7年)2月27日
去る2月17日、長崎県にある西日本新聞・販売店の押し紙訴訟の控訴理由書を福岡高裁に提出しましたので、ご報告致します。
*西日本新聞長崎県販売店の押し紙訴訟については、「西日本新聞押し紙裁判控訴のお知らせ」(2025年〈令和7年〉1月18日付)、「西日本新聞福岡地裁押し紙敗訴判決のお知らせ」(2024年〈令和6年〉12月26日付)、「西日本新聞押し紙訴訟判決とオスプレイ搭乗記事の掲載について」(同年12月22日付)、「西日本新聞押し紙訴訟判決期日決定のご報告」(同年10月15日)を投稿しておりますので、ご一読いただければ幸いです。
また、1999年(平成11年)新聞特殊指定の改定の背景に、当時の日本新聞協会長で讀賣新聞の渡邉恒雄氏と公正取引委員会委員長の根來泰周氏の存在があったことを指摘した黒薮さんの記事、「1999年(平成11年)の新聞特殊指定の改定、押し紙容認への道を開く『策略』」(2024年(令和6年)12月31日付)も是非ご覧ください。
西日本新聞社の押し紙裁判は、現在、2つの裁判が継続しています。長崎県の元販売店経営者を原告とする裁判と、佐賀県の元販売店経営者を原告とする裁判です。
2つの裁判は、ほぼ同時期に提訴しましたので併合審理の申立を行うことも検討しましたが、認められる可能性は薄いと考えたのと、同じ裁判体で審理した場合、勝訴か敗訴判決のいずれか一方しかありませんので、敗訴の危険を分散するために別々の裁判体で審理をすすめることにしました。
これまでも指摘しましたが、今回の敗訴判決を言い渡した裁判官は、2023年(令和5年)4月1日に、東京高裁・東京地裁・札幌地裁から福岡地裁に転勤してきた裁判官です。しかも、裁判長は元司法研修所教官、右陪席は元最高裁の局付裁判官であることから、敗訴判決は想定の範囲内であり、あまり違和感はなかったのですが、原告勝訴の条件がそろっている本件について、三人の裁判官達が如何なる論理構成によって原告敗訴の判決を書いたのかについて、控訴理由書でその問題点を指摘すると共に、新聞特殊指定の押し紙に該当しない場合、独禁法2条9項5号ハの法定優越的地位濫用の有無の判断を求める新たは主張を追加しました。
高裁が、どのような判断を示すかについて、引き続き関心を寄せていただくようお願いします。
西日本新聞社は、販売店の注文は電話で受け付けており、注文表記載の部数は単なる参考にすぎないと主張しています。電話は物的証拠が残らないので、注文表記載の注文部数は参考に過ぎないとの主張が可能となります。注文表記載の注文部数と実際の送り部数に違いがあっても、電話による注文が正式な注文であると主張しておけば、その矛盾を取り繕うことが出来ます。
西日本新聞の主張が欺瞞に満ちたものであることを証明するために、原告は佐賀県販売店主が録音した担当との電話の会話を反訳文を添付して証拠に提出し、原告ら販売店が電話で部数注文はしていない事実を立証しました。
ところが、西日本新聞社は、録音データーの最後の方で担当の言葉が聞きとれない箇所があり、そこで佐賀県販売店経営者が「はい」と答えているのをとらえて、その所で電話による注文がなされているという主張をしました。判決は採証法則に反し西日本新聞社の主張を認める不当な判断を示しました。
佐賀県販売店経営者が録音した会話は20回ありますので、私どもはその会話のすべてについて最後の30秒を一枚のCDに再録し高裁に提出しました。再録時間は全体で10分間ほどですので、高裁裁判官がCDを聴取すれば、電話での注文はしていないことを確認できると考えています。
(2)販売店の自由増減の権利について
西日本新聞社は、販売店に注文部数を自由に決定する権利(「自由増減の権利」)は認めていません。押し紙を抱えている新聞社は、西日本新聞社に限らず何処の新聞社も同じです。
この件についても、佐賀県販売店主は担当との面談で話題に取り上げ会話を録音しています。担当はその会話のなかで、販売店に注文部数自由増減の権利はないとの趣旨の発言をしています。
ところが、ここでも判決は、自由増減の権利を完全に否定したものではないとの西日本新聞社を救済する不当な判断を示しています。
(3)4・10増減について
西日本新聞の4・10増減の問題については、黒薮さんの2021年(令和3年)7月28日付の次の記事をご参照ください。
【参考記事】元店主が西日本新聞社を「押し紙」で提訴、3050万円の損害賠償、はじめて「4・10増減」(よんじゅうぞうげん)」問題が法廷へ、訴状を全面公開
西日本新聞社は郡部の販売店の折込広告主に対する販売店部数は4月と10月の部数を公表するようにしています。そのため、4月と10月の2ヶ月分の公表部数を他の月より増やしておけば、折込広告主は他の月もその部数を基準に折込広告枚数を決めることになります。西日本新聞社は、販売店の押し紙仕入代金の赤字を折込広告収入で補填するために、この仕組みを利用しています。原告販売店の場合、4月と10月の2ヶ月については、他の月より200部多い部数が供給されています。
これは、西日本新聞社主導による折込広告料の明らかな詐欺ですので、西日本新聞社はその事実が外部に知られないようするため、4月と10月の200部多い部数の供給も原告の注文によるものであるとの主張を行う必要があります。
原告の4月と10月の200部多い公表部数について、原告が折込広告収入を得るために西日本新聞社に他の月より多い部数を注文したものであるとの判断を示し、西日本新聞社の詐欺の責任を不問にしました。
判決は、30年前の平成7年に公正取引委員会事務局が刊行した「一般日刊新聞紙の流通実態等に関する調査報告書」に、「仮に、1部増紙するために新聞販売手数料を上回る経費を支出しても、折込広告収入だけで、増紙した部数あたりの利益は確保できるし、扱い部数がおおいほどより多くの広告主から折り込み広告を受注できる。」との記載があることを唯一の根拠に、原告が折込広告料を取得するために、4月と10月に前後の月より200部多い部数を注文したと判断して、西日本新聞社の責任を免責しました。採証法則に反する不当な判断であることは明らかです。
リーマンショックや東日本大震災、新型コロナウイルスの影響や、ネット社会の普及による広告媒体の多様化により折込広告収入の落ち込みが激しいことは裁判所に顕著な事実であるにもかかわらず、30年前の公正取引委員会事務局の調査報告書を唯一の証拠に、「折込広告収入だけで、増紙した部数の利益は確保できる」との判断をくだす裁判官には恐ろしさすら感じます。
裁判官は検察官と並んで司法官僚の中で最も忖度に長けた人種であるといっていいでしょう。そのことは、先ごろようやく再審裁判で無罪が確定した静岡県で発生した味噌工場社長一家の殺害・放火事件の袴田巌さんの死刑判決と再審棄却判決に、どれだけの人数の裁判官と検事が関わったかを想像するだけで十分ではないでしょうか。
黒薮さんの最新書『新聞と公権力の暗部』(2023年・鹿砦社)に、押し紙の売上金額が年間約932億円、過去35年間で32兆6200万円にも及ぶ試算結果が示されています。押し紙訴訟を担当する裁判官が、新聞業界に隠されたこのような巨額におよぶ利権構造を白日のもとに曝け出す販売店勝訴の判決をくだすには相当の勇気が必要でしょう。しかし、私はそのような勇気をもった裁判官が必ずいると信じています。
1991年(平成11年)にそれまでの新聞特殊指定が改定され、販売店が「注文した部数」を超える新聞を供給しないかぎり、新聞社には押し紙の責任はないとの解釈が、文言上は可能となりました。それまでの、1964年(昭和39年)新聞特殊指定では、購読部数の2%程度が適正予備紙の上限とされていました。
私どもは、平成11年の新聞特殊指定が押し紙を隠す隠れ蓑の役割しか果たせなくなっているのであれば、新聞特殊指定制定以前の独禁法第2条第9項第5号ハの法定優越的地位の濫用に基づいて「押し紙」の有無を判断するようにとの新しい主張を行いました。
福岡高裁がこの新しい主張について、どのような判断を示してくれるのか、大いに期待しているところです。
日本国憲法の施行前の1947年(昭和22年)4月14日に財閥解体を目的とする独禁法が制定されています。戦後、アメリカは帝国陸海軍を解体し、憲法9条に戦争放棄条項を定めました。財閥の解体は独禁法に規定し、二度と財閥が復活できないように法制度を整えました。
太平洋戦争によるアジア人の被害者数は2000万人、日本人の被害者数は300万人とも言われています。アメリカも5~6万人の若者の命を犠牲にしています。
戦後、米ソの冷戦構造が始まるとアメリカの占領政策の転換が図られ、反共の砦としての役割を日本に求めるようになりました。
アメリカの占領政策の転換の結果、A級戦犯指定の解除を受けた戦前の指導者達は、戦後日本の政治をアメリカの手先となって担いました。その事実は、ネット社会の普及によってひろく国民に知られています。A級戦犯指定の解除を受けた中には、大本営発表の報道で戦争熱を駆り立てた読売新聞の正力松太郎や朝日新聞の緒方竹虎らの新聞人もいます。
日本国憲法は、アメリカの押し付け憲法であるとして、学校教育で軽視され無視されてきた上に、改憲解釈によっていつしか戦争が出来る国に変化し、財閥の復活を許さないことを目指した独禁法も、持ち株会社を認める法律改正が行われ財閥と同様の株主集団が形成されるようになりました。新聞の押し紙禁止規定の制定とその後の骨抜きの経緯についても、もっと広い視点から検討する必要がありそうです。
長崎出身の通産官僚だった古賀茂明さんが、『日本中枢の崩壊』(2011年・講談社刊)という衝撃的な題名の本を出版されてから15年が過ぎました。その後も、失われた30年と言われるように、日本の政治・経済・社会のあらゆる分野で底なしのモラル崩壊が進行しています。日本社会の底はすでに抜けてしまったと評する向きもありますが、裁判官をはじめとする司法に携わるものに対して、民主主義の最後の砦としての司法の役割を今こそ発揮することが期待されていると考えます。
最近、再び若い世代の債務整理の相談が増えているように思います。数百万円に及ぶ奨学金の借金を抱えており、しかも、親が連帯保証人になっているという相談を受けると、政治の貧困さをつくづく感じます。
足元に目を向けると、非正規雇用の増大と貧困、結婚率の低下と少子化、高校生・大学生を親ともども借金製造工場のラインに乗せるような教育予算の貧困、はては子供食堂から災害ボランティア、インバウンドの観光客流入まで、かつての世界第二位の経済大国の面影はどこにも見当たりません。
佐賀県では1機200億円と言われるオスプレイが17機も配備される予定であり、沖縄の辺野古沖の飛行場埋め立て工事は、軟弱地盤のため天井知らずに工事費が増大し続けており、大阪万博会場跡地にはカジノを誘致する計画があると言われています。そんな金があるのなら、何故、北欧のように若者の教育費に使わないのでしょうか。
新聞業界の押し紙問題については、熊本日々新聞や新潟日報社などは昭和40年代後半に自主的解決をはかっていますので、新聞労連を中心とする新聞社で働く若い人たちが中心となって、ジャーナリスト精神にのっとり自社の「押し紙」を無くすことに尽力されることを願っております。

