米国の海外戦略とNED――日本のメディアが触れない盲点

日本の国際報道、特に米国の海外戦略に関する報道には、完全に欠落している重要な視点がある。それは、全米民主主義基金(National Endowment for Democracy、以下NED)が演じている負の役割である。最近では、若干NNEDに言及した記事も見受けられるが、おそらくこの問題を本格的に取り上げている人物は、中国研究者として著名な遠藤誉氏くらいである。
海外の非西側メディア、たとえば米国の「グレイゾーン・ニュース」、ラテンアメリカではキューバの「プレンサ・ラティナ」やベネズエラの「テレスール」などが、断続的に取り上げてきた。また、中国共産党もNEDについて詳細なファクトシートを公開している。
NEDの性質を一言で言えば、草の根ファシズムやメディアに入り込んだ謀略団体である。米国の海外戦略についての評論からNEDを排除すれば、客観的な米国の戦略を見誤ることになる。真実が伝わらない。言い換えれば、それが西側メディア報道の限界である。
◆全米民主主義基金(NED)とは何か?
NEDは1983年に米国のレーガン大統領によって設立された政府系の基金である。NEDの活動資金は寄附金などを除き、すべて米国議会の承認を経て交付される。
もともとはUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)から資金を調達し、活動戦略についてはCIAの影響を受けて方針を決定する形を取っていたとされるが、2025年初頭に米国トランプ政権がUSAIDを閉鎖したことに伴い、NEDも一時的に閉鎖された。その後、数か月後に別組織として復活した。
活動内容について、NEDのウェブサイトは次のように述べている。
「全米民主主義基金(NED)は、世界中の民主主義制度の発展と強化に尽力する独立した非営利財団です。NEDは毎年、100カ国以上で民主主義の実現に向けて活動する海外の非政府組織のプロジェクトを支援するため、2,000件以上の助成金を提供しています。
1983年の設立以来、NEDは世界各地における民主主義の闘いの最前線に立ち続けると同時に、世界中の民主主義活動家、実務家、学者にとっての活動・資源・知的交流の拠点となる多面的な機関へと発展してきました。」■出典
◆NEDの資金、イランに3億円
2026年1月、米国はベネズエラに軍事侵攻した。また3月にはイランに対する空爆を断行し、その後も攻撃を継続してきた。これら2件の軍事行動に関して、トランプ大統領は「攻撃」の後、現地の住民が自らの手で新しい政府を樹立するとの見通しを語っていた。
ベネズエラやイランには「反政府運動」が存在し、軍事行動によって混乱状態を生み出せば、市民運動家たちが立ち上がると予測していたのである。
この「反政府運動」に資金を提供してきたのが、NEDにほかならない。実際、NEDのウェブサイトには、国別あるいは地域別に活動資金の額と支出目的が明記されている。2025年度の場合、イランには約3億円、ラテンアメリカには約60億円が支出されている。
このうちラテンアメリカへの支出については、次のような説明が付されている。
「ラテンアメリカおよびカリブ海地域全体で、権威主義が勢力を拡大しており、指導者たちは民主的な制度を弱体化させることで権力を固めようとしています。NEDは、キューバ、ニカラグア、ベネズエラなど、権威主義的な政治体制が根強い国々に焦点を当てています。これらの国々において、NEDは現地組織と連携し、政権の独裁的な性質について人々の認識を高め、市民に独立した情報を提供し、反民主的な主張に対抗する支援を行っています。厳しい弾圧に直面しても、活動家たちは平和的かつ民主的な改革を推進するという決意を揺るがすことなく堅持しています。」■出典:
◆ベネズエラのマドゥロ大統領をどう見るか?
米国の海外戦略を考える際、NEDの存在を考慮に入れるかどうかで、解釈の質には大きな差が生じる。たとえば西側メディアは、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領やニカラグアのダニエル・オルテガ大統領を暴君として描く傾向がある。「政治犯」を投獄しているといった報道もなされている。
ラテンアメリカのジャーナリストに問い合わせても、そのような評価は少なくない。しかし、「政治犯」の実態とは、実はNEDから資金提供を受けて活動している草の根ファシズムであるとする見方もある。
しかも、彼らの活動は過激であり、たとえば2018年にはニカラグアでクーデター未遂事件が発生し、死者も出ている。「政治犯」を正当な市民活動家と解釈すれば、それに対抗するマドゥロ大統領やオルテガ大統領は暴君と評価されることになる。
ちなみに、香港の雨傘運動の背景にもNEDの関与があったとされる。参考までに遠藤誉氏の次の記事を紹介する。
