西日本新聞押し紙訴訟福岡高裁判決(敗訴)のお知らせ -モラル崩壊の元凶 押し紙-

執筆者:江上武幸(文責)、福岡・佐賀押し紙弁護団 2026年(令和8年)6月11日
去る5月28日(木)に西日本新聞販売店(佐賀県)の押し紙訴訟の福岡高裁判決が言い渡されました。地裁判決に続き販売店の敗訴でした。
*昨年7月3日に言い渡された西日本新聞販売店(長崎県)の押し紙訴訟の福岡高裁判決(敗訴)については2025年(令和7年)7月8日付で投稿した報告をご一読ください。
西日本新聞社は長崎県販売店に対して毎年4月と10月に前後の月より200部多い部数を供給してABC部数や折込部数の水増しを図っており、佐賀県販売店には社が決めた部数を供給していたことから販売店勝訴の可能性が十分あると判断して提訴しましたが結果は地裁・高裁とも全面敗訴判決でした。非常に残念です。
地裁では係属した部によって判断が異なることを見越して併合申立は行わず別々の裁判体で判決をうけるようにしました。しかし高裁では第3民事部で審理することになりましたので同じ結論になることは当初から予想されました。
長崎県販売店の判決を言い渡した裁判長は久留島群一裁判官で陪席は山下隼人・渡辺典子裁判官でしたが、久留島裁判長は令和8年2月6日付で定年退官されており、今回の佐賀県販売店の判決を言い渡した裁判長は大分地方・家庭裁判所長から転勤してこられた岡部純子裁判官でした(陪席裁判官2名は変更ありません。)
今回の裁判で特筆すべき出来事は岡部裁判長が結審当日、突如、西日本新聞社の代理人弁護士に対し和解の可能性を打診されたことです。
それに対し西日本新聞社側代理人弁護士は即座に和解の打診を拒否する旨を回答しました。通常の民事裁判の場合、裁判長から和解の打診を受けた代理人弁護士は依頼者の意向を確認したうえで回答するのが一般的ですが西日本新聞社側代理人弁護士は即座に拒否しました。西日本新聞社側が敗訴の可能性はみじんも感じていないことを示しています。
岡部裁判長も西日本新聞社側を敗訴させるつもりであればもっと強く和解をすすめるはずですがあっさりと引き下がられたことから販売店敗訴判決は既定の方針であったことが伺えます。
私どもが経験した押し紙裁判で新聞社側に和解を勧告した裁判長は佐賀新聞押し紙訴訟勝訴判決を言い渡した佐賀地裁の達野ゆき裁判長と今回の福岡高裁の岡部裁判長の二人だけです(注:佐賀新聞押し紙訴訟控訴審裁判官の和解の打診は販売店勝訴の一審判決を高裁で維持することを避けるためであったと考えています)。
お二人とも女性裁判長ですので、今後、裁判官・書記官・事務官の職種を問わず裁判所内で女性の活躍の場が増えていけば庶民感覚にフィットした国民に開かれた裁判所が期待できそうです。
昭和30年に制定された独禁法の押し紙禁止規定は平成11年(1999年)に当時の公正取引委員会委員長根来泰周氏(元東京高検検事長)と日本新聞協会長渡邊恒雄氏(読売新聞社主)の時代に現在のように改定され骨抜きにされました(注:黒藪さん投稿の2025年9月26日付「公取委、『押し紙』の謎、1999年『新聞特殊指定』改定をめぐる交渉記録の存在を認める」の記事参照)。今回の高裁判決も平成11年改正の押し紙禁止規定を形式的に適用したこれまでの押し紙裁判の判決と同じ論理構成で特に目新しい判断は示されていません。
押し紙は新聞社経営の財政基盤を支えていますので新聞社による自主解決ができないまま今日に至っています。そのため公正取引委員会や国会あるいは司法関係者ら外部の人間(販売店側代理人弁護士・新聞社側代理人弁護士・担当裁判官)の力によって解決すべきですがそれも出来ていません。我が国の法の支配の網の目のほころびは遺憾ともしがたいです。
今後もメディア黒書のアーカイブに残してもらうため引き続き投稿させていただきたいと考えていますのでご支援のほどよろしくお願いします。
(参考資料)
■西日本新聞社佐賀県販売店押し紙訴訟福岡高裁判決
