『新聞の危機と偽装部数』(花伝社)の書評紹介
昨年の11月に出版した『新聞の危機と偽装部数』(花伝社)の書評をいくつか紹介したい。『図書新聞』に掲載されたものと、『ジャーナリスト』に掲載されたものである。』
同書は全国の書店で発売中。
昨年の11月に出版した『新聞の危機と偽装部数』(花伝社)の書評をいくつか紹介したい。『図書新聞』に掲載されたものと、『ジャーナリスト』に掲載されたものである。』
同書は全国の書店で発売中。
今世紀に入って、YC(読売新聞販売店)でも、大規模な偽装部数が発覚している。その実態を紹介する前に、再度、新聞社が主張してきた狭義の「押し紙」と、日常の中で使われている広義の「押し紙」の違いを説明しておこう。新聞社がいかにこの問題を歪曲しているかを理解するために不可欠な部分であるからだ。
■広義の「押し紙」
新聞販売店で過剰になっている新聞(ただし若干の予備紙は除く)を指して「押し紙」と呼んでいる。週刊誌やネットの記事で使われている「押し紙」という言葉は、広義の過剰部数を意味している。?? たとえば、新聞の搬入部数が3000部で、実際に配達している実配部数が2000部とすれば、差異の1000部が「押し紙」である。?? 「A販売店の裏庭には『押し紙』が積み上げられている」と言う表現は、「A販売店には過剰な新聞」が放置されているという意味である。
■新聞社の「押し紙」
これに対して新聞社にとって、「押し紙」とは新聞社が販売店に強制的に買い取らせた新聞だけを意味する。従って、強制的に新聞を買い取らせたという証拠がない新聞は、たとえ店舗に余っていても、「押し紙」ではない。極めて次元の低い揚げ足取りの典型といえよう。
■偽装部数の目的
新聞社が偽装部数を設定してまで、ABC部数のかさ上げを図るのは、改めて言うまでもなく、紙面広告の媒体価値を上げる目的があるからだ。もちろん、偽装部数により販売収入を増やそうという意図もあるが、偽装部数の規模にスライドして、販売店に補助金を支払うので、偽装部数がそのまま販売収入になるわけではない。
◇YC久留米文化センター前の事件
2008年3月1日、江崎法務室長ら3人の読売新聞(渡邊恒雄会長)の会社員がYC久留米文化センター前にいきなり押しかけ、平山春男店主を前に改廃通告を読み上げた後、同店主を解任した。その理由のひとつは、平山氏が「積み紙」をしていた(厳密には部数の虚偽報告)というものだった。
産経新聞・四条畷販売所の「押し紙」裁判が進行していた同じ時期に、産経新聞の他の店主も「押し紙」裁判を起こしている。
高橋直樹さんの例を取り上げてみよう。高橋さんは、1995年6月に産経新聞・岡町西(大阪府)の経営を始めた。前店主との間で交わされた引継書によると、高橋さんが受け継いだ実配部数は673部(朝刊)だった。しかし、開業初日から産経新聞は1050部を搬入してきた。
差異の377部が「偽装部数」である。率にすると、36%である。
その後、高橋さんは、1997年から岡町東店の経営にも乗り出した。高橋さんが前店主から受け継いだ実配部数は、2064部(朝刊)だった。ところが1年後には3733部に、2年後には4271部になっていた。2年間で1000部以上も搬入部数が増えたのである。
新聞拡張団を動員して、景品やら商品券を洪水のようにばら撒いて、新聞の購読を強引に迫る戦略を取るだけの経済力がない産経の販売店が、2年間で1000部を拡販するのは難しい。
高橋さん経営の2店における「搬入部数」「実配部数」「押し紙」(偽装部数)を比較したのが次の表である。
(産経新聞・岡町東店、岡町西店における部数内訳=ここをクリック)
偽装部数の割合は、1999年が42%、2000年が40%、2001年が42%だった。
1980年代に繰り広げられた国会を舞台として新聞販売問題の追及が終わったのち、新たに深刻な偽装部数問題が浮上してくるのは、今世紀に入ってからである。1990年代に全国で破棄された新聞や折込広告の量は、おそらく天文学的な数字になる。「押し紙」専門の古紙回収業が一大産業として成立した事実がそれを如実に証拠ずけている。
これだけ異常な実態になっていながら、政府が新聞社の保護をやめなかったのは、彼らを政府の広報部として活用する価値があるとみなした結果だと思われる。「チンチンをする犬」でいる限り、新聞社は敵視する性質のものではなかった。と、言うもの現代の政治は、世論誘導なくして政策実現は難しいからだ。むしろメディアを自分たちの権力構造に引き込みたいというのが本音ではないか。
今世紀に入ったころ、わたしは栃木県の販売店(中央紙)で働いている青年から内部告発を受けた。自分の店では、毎朝、4000部の新聞が搬入されるが、そのうちの偽装部数2000部を捨てているというのだ。もちろんこの2000部にセットになっている折込チラシも、広告主に秘密で破棄している。
最初、事情を聞いたとき、わたしは話に誇張があるように感じた。取材もしなかった。4000部のうち2000部を破棄するような神経は、普通の人間ではもちえないと思ったのだ。カリスマ的な人物から洗脳でもされない限りは、ありえないと思った。
ところがその後、わたしの所へ、「うちの店では偽装部数の比率が4割に達している」とか、「5割に達している」といった情報が次々と入ってきた。このうち産経新聞四条畷販売所の今西龍二さんは、産経本社を相手に提訴に踏み切った。
今西さんに裁判資料を見せてもらったところ、確かに92年から02年の10年間における搬入部数は約5000部で、実配部数は2000部?3000部だった。常識を超える異常な数値だった。
今西さんは、販売店経営をはじめたころ、注文していない新聞がどんどん送られてくるのに戸惑ったという。
「店舗の中もわたしの寝室も、そこら中が新聞だらけになってしまい、たまりかねて産経本社に部数を減らすように電話すると、『小屋を建てろ』と言われました」
安部公房の『砂の女』には、押し寄せてくる砂と戦う男が描かれているが、今西さんは、次々と搬入される新聞の山と格闘するようになったのである。断っても断っても紙の洪水が押しよせてくる。寝室も、店舗も、台所も新聞だらけになってしまったのである。
そして、ブリキ張りの「押し紙」小屋を建築して、ようやく一息ついたのだ。
今西さんから入手した「押し紙」回収業者・ウエダの伝票は、四条畷販売所から回収した偽装部数の量を示している。たとえば2001年8月の場合、回収回数が9回で、総計27トンを回収している。
1980年から85年までの間に、共産党、公明党、社会党の3党が計16回にわたって新聞販売に関する「闇」を国会で追及している。これらの質問では、「押し紙」問題は言うまでもなく、景品や恫喝による新聞拡販問題、補助金問題、販売店に対する差別問題などがクローズアップされた。
国会質問を組織した沢田治氏の『新聞幻想論』によると、国会の記者席は常に満員だったが、『潮』を除いて、質問内容を記事化したメディアはなかったという。(政党機関紙は別)。沢田氏は、次のように述べている。
新聞販売問題についての国会質問について奇妙なことに気付いた。6年間という長期にわたっているにもかかわらず、あれほど新聞のスキャンダル報道に熱心な、週刊誌はもちろん総合雑誌も、そしてマスコミ関係の雑誌も、私の知るかぎり一切話題にしていない。これはどういうことなのか。新聞業界紙には国会質問のたびに克明に派手に載せられていたことを考えれば、週刊誌、総合雑誌、それに新聞学者、研究者が知らない筈はない。
80年代前半の国会質問とは何だったのか?。この問題を考えるとき、日本の新聞人や新聞研究者の体質が輪郭を鮮明にしてくる。
国会で批判された事柄に対して、新聞関係者は一言の謝罪もしなかった。もちろん、販売政策を変更することもなかった。平然と同じことを続行したのである。こうした事実から、80年代前半の国会質問とは何だったのかという疑問が生まれてくるのである。
わたしはこれほど国会を馬鹿にした例を他に知らない。
公正取引委員会の前委員長・竹島一彦氏が退官後、日本の4大法律事務所のひとつである森・濱田松本法律事務所に、顧問として再就職(広義の天下り)していることが分かった。
竹島氏は2006年に公取委が新聞特殊指定の撤廃を打ち出した際に、新聞紙面で激しくバッシングされた。特殊指定撤廃は免れないというのが、大方の予想だったが、自民党の山本一太議員、高市早苗議員らが、特殊指定を扱う権限を公取委から取り上げるための議員立法を提出した結果、撤廃を断念した経緯がある。
実は公取委の関係者が、大手法律事務所へ再就職したケースはほかにもある。たとえば七つ森裁判、清武裁判、黒薮裁判と、次々と裁判を起こしてきた読売(渡邊恒夫会長)の代理人・TMI総合法律事務所へ、公取委の元事務総長・松山隆英氏が、やはり顧問として再就職している。
また、同事務所の顧問弁護士である三谷紘氏も、元公取委の委員である。
森・濱田松本法律事務所やTMI総合法律事務所は、主に企業法務の専門家の集まりである。特にグローバリゼーションの中で、バイリンガルの弁護士をそろえるなど、国際企業法務に力を入れている。
当然、独禁法を考慮に入れて活動しなければならない企業がクライアントになっている可能性が極めて強い。
こうした性質を持つ弁護士事務所が、公的機関の退官者と特別な関係を構築することは、民主主義を後退させる行為にほかならない。癒着の温床になる。ちなみにTMI総合法律事務所には、最高裁の元判事が3名も再就職している。
新聞の偽装部数の規模はどのように変化してきたのだろうか。日本ではじめて比較的まとまったデータが公になったのは、1982年3月8日のことだった。この日、共産党の瀬崎博儀議員が、衆議院予算委員会で「押し紙」問題を取り上げたのだ。
瀬崎議員が暴露したのは、北田資料と呼ばれる読売新聞鶴舞直売所(奈良県)における新聞の商取引の記録である。この記録は、同店の残紙(広義の「押し紙」、あるいは偽装部数)の実態を示すものだった。
瀬崎議員は、国会質問の中で鶴舞直売所における偽装部数の実態について次のように述べている。
これで見てわかりますように、(昭和)51年の1月、本社送り部数791、実際に配っている部数556、残紙235、残紙率29・7%、52年1月送り部数910に増えます。実配数629、残紙数281、残紙率30.9%に上がります。53年1月本社送り部数1030、実配数614、残紙416、残紙率は40・4%になります。(略)平均して大体3割から4割残っていくわけなんです。
2013年03月05日 (火曜日)
大阪地裁は2月13日、広告代理店「アルファトレンド」が広告主である医師から受注した産経新聞と毎日新聞に折り込む35万枚のチラシのうち、新聞販売店に搬入される前段階で5万部を「中抜き」していた事実を認定した。この5万部は、印刷の発注もせず経費を浮かせていた。折込チラシの水増しを疑った医師が折込手数料の支払いをペンディングしたのに対抗して、代理店が裁判を起こしたところ、逆に法廷で証拠を突きつけられ、代理店の不正行為が認定された。
代理店側は控訴したが、折り込み広告の偽装配達部数が確定したら、新聞業界全体に決定的なダメージを及ぼしかねない。医師はどうやって証拠を押さえ、偽装部数を暴いたのか。折り込みチラシ中抜きの実態を詳報する。(判決文はPDFダウンロード可)【続きはMNJ】
◇裁判官の優れた理解力 ?
この裁判を傍聴する中で、わたしは幾つかの特徴に気づいた。
まず、第1は判事の構成が「合議」になっていなかった点である。裁判官がひとりだったので、責任を持って公平な判断をしたようだ。
第2に高瀬裁判官の理解力が優れていた点である。これまでの「押し紙」に関連した裁判における最大の壁は、新聞の商取引のカラクリを裁判官にわかりやすく知らせることだった。よく理解できない判事が大半で、結局、新聞社の主張を鵜呑みにするパターンが多かった。それが最も無難であるからだ。
ところが大阪地裁の高瀬裁判官は、新聞の商取引を正しく理解していた。その証拠に判決の中でも、「押し紙」の定義を広義に使っている。
山陽新聞の「押し紙」で、販売店を勝訴させた岡山地裁の山口裁判長も、やはり理解力に優れ、判決の中で「押し紙」の定義を正しく使っていた。
3月1日は、YC久留米文化センター前の強制改廃事件の5周年である。2008年のこの日、読売新聞社の3人の社員が事前連絡もせずに同店に足を運び、改廃通告を読み上げてあっさりと平山春夫店主(故人)を首にした。
その後、読売関係者が翌日に折込予定になっていたチラシを店舗から持ち去った。この行為を指してわたしは「新聞販売黒書」で「これは窃盗に該当し、刑事告訴の対象になる」と評価した。平山店主に精神的な強打をあたえた後、チラシを搬出したから、比喩的に「窃盗に該当」と評価したのである。
これに対して読売西部本社と3人の社員は、名誉を毀損されたとして総計2230万円のお金を支払うように要求して裁判を起こした。さらに読売は、改廃に際して、平山氏が店主としての地位を保持していないことを確認する裁判を起こしている。
◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)
前回の本欄で、私は東北赴任の経験からこの国の古き祖先、縄文人のDNAから憲法9条が根付いた訳を考えました。
今回は、東京・政治部記者から理不尽な人事で愛知県・豊田市に赴任・幽閉された時の体験に基づいた話です。実はその時、縄文人が世界史的には類い稀な人類であったのと同様、戦後の日本人は、人類史の中で類い稀な一つの実証をしたことに気が付いたのです。つまり、資源もない小さなこの国を、領土の拡張なしに世界第2位のGNPを持つまでに成長させたことです。
戦時中、空襲でほとんど工場が狙い撃ちされ、戦後、働きたくても働く場所のない焼け野原の中で、人々は立ちすくみました。乏しい資金の中でやっと工場を建て、真面目に働き、技術力を磨いたことが、今の繁栄に繋がったのです。
戦争によって国土を拡げなくても、世界屈指になるまでに国力を伸ばせた……。その基盤が人類の理想とも言える「9条」を堅持する道を世界で初めて切り開いたとも、言えるのではないでしょうか。
ただ、欲に目がくらみ、おごり高ぶったことでバブル崩壊を招き、今ではGNPでも中国に抜かれ、この国は元気を失くしています。でも今は、9条を簡単に捨て去る時ではないと思います。もう一度この国の戦後の歩みを振り返り、人々が自信を取り戻して欲しいのです。
9条で可能になった「軽軍備」が、いかにこの国を支えて来たか。逆に9条によりもたらされた「侵略なき繁栄」が、9条を支える基盤をこの国に作り出したか。「自主独立」とは、何も軍備で独立することだけではないはずです。豊田で私が見たことをヒントに、この国の「戦後の繁栄」の原点は何だったのかを、冷静に見つめ直して戴ければ、いかがでしょうか。
販売局員のAは、店舗に入ると、2階の事務所へ向かって、
「おはようございます」
と、声をかけた。店主のBさんが階段を下りてくるとA担当は、
「Bさん、玄関先に積み上げてある新聞は何ですか?」
と、尋ねた。
「はあ?」
「これまでわたしに対しては、残紙があることを隠していたのですか?しかも、1000部ぐらいあるじゃないですか?嘘の報告をしていたということですか?こんなことが世間様に知れたら、わが社の新聞ジャーナリズムの信用が地に落ちるではないですか。」
これは新聞社が販売店をつぶすときに使う典型的ないいがかりである。「玄関先に積み上げてある新聞」とは、念を押すまでもなく、偽装部数(広義の「押し紙」)のことである。
既に説明したように、新聞社は、過剰になっている新聞を2つの種類に分けて定義している。「押し紙」と「積み紙」である。
「押し紙」:新聞社が販売店に強制的に買い取らせた新聞。従って、強制的に新聞を買い取らせたという証拠がない新聞は、たとえ店舗に余っていても、「押し紙」ではない。
「積み紙」:新聞販売店が折込チラシの受注枚数を増やすことを目論んで、自主的に購入した過剰な新聞を意味する。折込チラシの受注枚数は、新聞の搬入部数に準じる原則があるので、「積み紙」が発生する温床があるのだ。
「押し紙」と「積み紙」を総称して、偽装部数という。
新聞社が販売店をつぶしたいときには、販売店が「積み紙」をしていたことを理由として持ち出してくる場合が多い。偽装部数の中身が「積み紙」であることを法的に立証すれば、販売店の強制改廃を正当化できるからだ。
新聞社の弁護士が偽装部数の中身を「積み紙」と主張する根拠にはどのようなものがあるのだろうか。順を追って説明しよう。
まず、主張の大前提として彼らは、「押し紙」裁判になると、必ず「押し紙」と「積み紙」を明確に定義してくる。通常、言葉の定義というものは、実際の社会の中で、その言葉がどのようなニュアンスで使われているかが大前提になるはずだが、彼らは、辞書や特定の団体が机上で決めた言葉の定義を採用する傾向がある。従って、実社会から乖離していることが多い。
言葉の定義を我田引水に解釈した上で、偽装部数の中身が「積み紙」であるという主張を展開する。このような戦略は日本の司法界では極めて有効に作用する。
新聞販売店は、実配部数の卸代金はいうまでもなく、偽装部数で生じる卸代金をも新聞社に納金する。そうすると偽装部数が増えれば増えるほど、卸代金の負担もかさむ。
偽装部数の比率が全体の10%前後であればまだしも、40%、あるいは50%にもなった場合、大きな負担が店主の肩にのしかかる。改めて言うまでもなく、偽装部数は読者がいないので購読料を生まない。そこで卸代金はすべて販売店の自己負担になる。
そこで採用されている対策が2つある。 まず第1は、「連載の第3回」で言及したように、補助金の投入である。販売店は新聞社から支給された補助金を偽装部数の買い取り資金として転用するのだ。
しかし、読者は次のような疑問を呈するかも知れない。新聞社は補助金を支給して販売店に偽装部数を買い取らせる代わりに、偽装部数をなくす方が合理的ではないかと?無駄がないのではと?
当然の疑問である。が、補助金を廃止して偽装部数をなくせば、新聞の公称部数も減じて、紙面広告の媒体価値が低下する。それゆえに偽装部数を販売店へ送り込み、それによって生じる販売店の損害を補助金でサポートする制度を採用しているのだ。
つまりここには新聞社と販売店の共犯関係がある。
たとえば、毎日新聞豊中販売所における2007年1月の搬入部数は1790部だった。一方、実配部数は450部。差異の1340部が偽装部数だった。
毎日新聞社からの請求額は、総部数に対する約397万円である。しかし、毎日新聞社は46万円の補助金を支給した。この補助金により販売店の負担が46万円軽減されたが、それでも約351万円の赤字になる。
◆折込チラシの水増し
そこで登場するのが、折込チラシの水増しである。全店で折込チラシの水増しが行われているとは限らないが、わたしが取材した限り、かなりの店が折込チラシの水増しを行っている。同情的に見れば、偽装部数で生じる損害を相殺するための措置である。
既に述べたように、折込チラシは原則として、偽装部数に準じる。次の例に注目してほしい。
実配部数: 2000部
偽装部数: 1000部
折込チラシ:3000枚
この場合、1000枚分の折込チラシが水増し状態になっている。この1000枚で発生する不正な収益は、偽装部数による損害を相殺するために使われる。もちろんこのような行為は刑法上の詐欺にあたる。
次に紹介するYOUTUBEの画像は、住民が折込詐欺の現場を撮影したものである。
冒頭に次のようなクイズを設定する。
問題:新聞ジャーナリズムが厳しい批判を受け、新聞批判の本が次々と出版されているが、メディア業界の動向を伝えてきた雑誌『創』に以下の記事(座談会)が掲載されたのは何年度か?
【1】最近は新聞マスコミ批判の本を出版するとかなりの部数が売れるといわれています。これはそれだけ、新聞に対する読者の批判が潜在している証拠ともいえるのではあるまいかと思うんです。
最近の新聞批判には、組織として新聞社機構のあり方や、ジャーナリズムとしての新聞の本質というものが現れているように思うんです。
現在の新聞は、題字をかくしてしまえば何新聞か一般には区別はなくなる。読者のほうも、紙面内容によって新聞を選ぶ人は全体の2割しかいないといわれている。
ぼくは、フリーライターの怨念ということでなく記者クラブは危険だと思っています。たとえば最近は、地方の警察へ事件の取材へ行っても、次長クラスは、記者クラブに話すからと、われわれには情報を与えない。逆にいえば、警察などは、記者クラブだけを相手にしていれば、・・・
【2】新聞が本来やってきたのは、インフォメーション。フォームにする、形にする。つまりデータをもとに意味付けをし、判断を付け加えて形にするのが新聞の役割だとされてきた。 ところが今は、データをどう判断するかが非常に弱くなっている。僕はそこが今の新聞の一番問題な点だと思います。
新聞の一番の問題点は、上半身と下半身がこれまで切り離されていた。上半身でカッコいいことを言いながら、下半身では販売の問題も含めて無茶苦茶なことをやってきた。
? 例えば兜町のクラブの生態を観察している記者の話などを聞いてみると、我々が考えている以上に、感性が麻痺しているといった面はありそうですよ。実際、今度こういう株が売り出されるんですが、と誘いを受け、資金まで用意してもらい、買って儲けて、提灯記事も書く、という三位一体の記者活動をしている奴がいる、と証言する者がいる。
【3】国際社会に対して、日本はどう主張していくのか。新聞をいくら読んでもそういった視座や論点に皆目、お目にかかれません。この国のジャーナリズムはどうなっているのかと思います。
社会的な立場・身分として、今の記者は企業ジャーナリストであって、職業ジャーナリストになっていない。企業ジャーナリストとしてのマインドが、従順なジャーナリズム、政府と一体化するジャーナリズムを作ってしまったと思います。私はその事を問題視してきたのですが、突破口は見つけられませんでした。
回答は次の通りである。
偽装部数の程度は販売店によって千差万別で一概にはいえない。極端なケースでは、毎日新聞・蛍池販売所のように、7割を超えていた例もある。また、時代によっても偽装部数の規模は異なる。
従って偽装部数の全体像を把握する作業は後日とし、ここでは、具体的な例をひとつ取り上げると同時に、偽装部数で販売店が被る損害の相殺方法を説明する。
塩川茂生氏は1998年にYC小笹(読売・福岡市)の店主になった。2003年に廃業。その後、2006年に読売新聞社を相手に偽装部数による損害賠償裁判を起した。
結論を先に言えば、裁判は塩川氏の敗訴だった。裁判所は偽装部数の中身を「積み紙」と判断したのである。この裁判で特に問題になったのは、開業から半年の間に発生した偽装部数だった。裁判記録によると、朝刊の搬入部数と偽装部数(あるいは広義の「押し紙」)の数値は次のとおりだった。
さて、どの程度の偽装部数(「押し紙」、あるいは「積み紙」)が存在するかを時系列に沿って年代順に紹介する前に、新聞社が主張してきた「押し紙」と「積み紙」の違いを再度確認しておこう。この点を曖昧にしておくと、「押し紙」問題の本質が見えてこないからだ。
(黒薮注意:19日付け黒書で説明した「押し紙」と「積み紙」に関する内容は、PDF化したので、今後、参照にしてほしい。=「押し紙」とは何か?)
新聞社が「押し紙」は1部も存在しないと主張する場合の「押し紙」とは、彼らが定義している独自の「押し紙」の意味、すなわち「押し売りされた証拠が存在する新聞」を指している。たとえ販売店の店舗で、多量の新聞が配達されることなく余っていても、押し売りの確たる証拠が残っていなければ、「押し紙」ではない。
だから胸を張って、わが社には1部も「押し紙」はありませんと公言しているのだ。
具体的に「押し紙」裁判の場で、自社に「押し紙」は1部も存在しないと証言した例を紹介しよう。繰り返し紹介してきた例だが、新聞社が主張する「押し紙」の定義を明確に示した格好の事例なので、あえてもう一度取り上げたい。?? 読売が新潮社とわたしに対して5500万円のお金を支払うように求めた名誉毀損裁判の中で、読売の宮本友丘副社長(当時、専務)が喜田村洋一弁護士の質問に答えるかたちで証明した内容である。?? 赤字の箇所はわたしの解説である。
喜田村洋一弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所に御説明ください。
? 「30パーセントから40パーセント」の「押し紙」とは広義の「押し紙」のことである。しかし、次に示す宮本専務がいう「押し紙」とは新聞社の定義、すなわち押し売りの証拠がある新聞を指している。従って、宮本氏の立場からすれば、確かに「押し紙」は1部も存在しないという論法になる。
宮本専務:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。??
喜田村:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。??
宮本:はい。?
喜田村:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。??
宮本:はい。?? (略)
喜田村:被告の側では、押し紙というものがあるんだということの御主張なんですけれども、なぜその押し紙が出てくるのかということについて、読売新聞社が販売店に対してノルマを課すと。そうすると販売店はノルマを達成しないと改廃されてしまうと。そうすると販売店のほうでは読者がいない紙であっても注文をして、結局これが押し紙になっていくんだと、こんなような御主張になっているんですけれども、読売新聞社においてそのようなノルマの押しつけ、あるいはノルマが未達成だということによってお店が改廃されるということはあるんでしょうか。
?? 宮本:今まで1件もございません。
が、ここからが肝心な部分なのだが、新聞社が定義する「押し紙」が存在しないことが、必ずしも広義の「押し紙」、あるいは「積み紙」が存在しないということではない。事実、実配部数と搬入部数の間に大きな差異がある例が全国各地で報告されている。新聞社の立場からすれば、実配部数と搬入部数の差異は、「積み紙」ということになるようだ。??????? 参考までにYC久留米文化センター前の数値を引用しておこう。
YC久留米分化センタター前[07年11月]
搬入部数????????????????????????????????? :2010部
「押し紙」、あるいは「積み紙」 :? 997部
約50%が、「積み紙」、あるいは「押し紙」である。裁判所は「積み紙」であると判断した。広告主の立場からすれば、偽装部数である。広告主にとって、過剰になった部数が「積み紙」であろうと、「押し紙」であろうと関係ない。いずれにしても被害の温床になっている。
「押し紙」とは何か? 「押し紙」の定義を巡っては、2つの説がある。広義の「押し紙」と、新聞社が採用している「押し紙」の定義である。
まず、広義の「押し紙」から説明しよう。
■広義の「押し紙」
新聞販売店で過剰になっている新聞(ただし若干の予備紙は除く)を指して「押し紙」と呼んでいる。週刊誌やネットの記事で使われている「押し紙」という言葉は、広義の過剰部数を意味している。
たとえば、新聞の搬入部数が3000部で、実際に配達している実配部数が2000部とすれば、差異の1000部が「押し紙」である。
「A販売店の裏庭には『押し紙』が積み上げられている」と言う表現は、「A販売店には過剰な新聞」が放置されているという意味である。
■新聞社の「押し紙」
これに対して新聞社にとって、「押し紙」とは新聞社が販売店に強制的に買い取らせた新聞だけを意味する。従って、強制的に新聞を買い取らせたという証拠がない新聞は、たとえ店舗に余っていても、「押し紙」ではない。
そこで「押し紙」に連座して採用している言葉が、「積み紙」である。
「積み紙」とは、新聞販売店が折込チラシの受注枚数を増やすことを目論んで、自主的に購入した過剰な新聞を意味する。折込チラシの受注枚数は、新聞の搬入部数に準じる原則があるので、「積み紙」が発生する温床があるのだ。
たとえば次のケース
実配部数 2000部
積み紙(あるいは「押し紙」) 1000部
合計 ・・・・・・・・・・・・・3000部
この場合、折込チラシの受注枚数も、原則として3000枚になる。販売店は実配部数2000部の卸代金の他に、自腹を切って1000部の「積み紙」(あるいは「押し紙」)の卸代金も新聞社に支払うが、同時に3000枚の折込チラシ収入を得ることができる。改めて言うまでもなく、このうちの1000枚は、水増しされたものである。
チラシで得る収入が新聞の卸値を上回れば、販売店は損害を受けない。ここに「積み紙」政策が成立する根拠があるのだ。
ちなみに「残紙」とは、「押し紙」と「積み紙」の総称である。
一般の人々は、このような新聞の商取引きのカラクリを知らない。そこで過剰な残紙を指して、広義に「押し紙」と呼んでいるのだ。
読売の法務室長・江崎徹志氏がわたしに対して著作権裁判を提起してから、2月25日で5年になる。5周年を機に、裁判資料のPDF化と本格的な「押し紙」報道を再開することにした。報道の方針として、偽装部数に連動する広告詐欺の問題に焦点を当てることになる。
「押し紙」報道を再開する理由は、これまで15年に渡ってこの問題に取り組んできたにもかかわらず、新聞社のビジネスモデルが改善される気配がまったくないからだ。反省もなければ、改善策もない。
また、「押し紙」報道に対する圧力に対しては、ジャーナリズム活動を強化することで対抗するのが「黒書」の方針であるからだ。端的にいえば、今回の本格再開は、5年にわたるSLAPPに対する「回答」にほかならない。
さらにTWITTERの読者に対し、参院選の時期までに、生活の党をはじめとする国会議員に対して、「押し紙」と広告詐欺に関する資料を提供することを約束した関係で、この問題を再検証する必要が生じたからだ。
偽装部数(残紙)の存在はすでに周知の事実になっている。ところが新聞社は、「押し紙」の定義を「押し付けられた新聞」と限定的に定義することで、「押し紙」は1部も存在しないという主張を展開してきた。
たとえば読売VS新潮社の裁判で、読売の宮本友丘副社長(当時、専務)は、2010年11月16日、代理人である喜田村洋一(自由人権協会代表理事)弁護士の質問に答えるかたちで、次のように証言している。
◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)
前回の本欄で、私は今の現実から憲法9条を持つ意義を考えました。今回はこの国の遠い昔から考えます。交戦権まで放棄する世界史的にも稀な憲法が、曲がりなりにもこの国に根付いたのは、なぜか。
私は、この国の半分の人々が「押し付けられた」と拒否反応を示さなかったのは、実は、1万年以上前からこの国に住んでいた縄文人のDNAを、私たちが受け継いでいることにあるのではないかと思うのです。世界の東の果てのこの国。その地に、まだマンモスが生きていた時代から育まれてきた縄文文化に思いをはせ、この国の民が「9条」を大事に育てていかねばならない人類史的意義を考えてみたいと思います。
2013年02月12日 (火曜日)
ベネッセが東京都目黒区で運営する高級老人ホーム『グランダ八雲・目黒』の屋上に、NTTドコモが携帯基地局を設置する計画を進めている。基地局は、耳鳴り、不眠、吐き気などの健康被害の原因とされ、また、入居者のなかには心臓ペースメーカーを使用する高齢者もいるとのことで、反発する住民らとの間で昨秋から睨み合いが続いている。
入居前に計画を知らされぬまま高額の一時金を払った入居者、および幼い子がいるため引っ越すほかなくなることを懸念する周辺住民に対し、ベネッセは「自分たちはビルの所有者ではない」と無責任な対応。
所有者である藤田商店は「(基地局設置を)検討している最中」という。ドコモ、ベネッセ、藤田商店という有名企業と住民らとの対立構造から浮き彫りになった、携帯基地局による“人生設計破壊リスク”の実態に迫る。
ソーシャルメディアがジャーナリズムの有力な道具として浮上するなか、株主訴訟を起こしている人々が東京地裁の民事8部を監視するためのサイトを2件、設置した。名称はいずれも東京地裁民事8部監視委員会。TWITTERのサイトとFacebookのサイトである。アドレスは次の通り。
■Twitterの東京地裁民事8部監視委員会
■Facebookの東京地裁民事8部監視委員会
http://www.facebook.com/minji8bu
民事8部は、商事を扱う部で、主に株主訴訟などを担当している。読売が清武利則氏に対して起している高額訴訟も民事8部で進行している。
ところがこれまで株主訴訟を起こした多くの人々が、民事8部の判事について「極めて企業より」との評価を下している。日本の裁判所がより強い権力を持つ側に有利な判決を下す傾向があることは、真村久三氏やわたしの対読売裁判で明白になったが、民事8部の場合、昔からこのような傾向があったという。
裁判の進行方法そのものに問題があるとの指摘もある。たとえば民事8部の元判事・?山崇彦氏がTMI法律事務所へ再就職し、今度は弁護士として民事8部の法廷に立つという珍事も発生している。この弁護士は民事8部に人脈があるわけだから、裁判そのものが公平性を欠いている。
2013年02月08日 (金曜日)
北海道のローカル紙・十勝毎日新聞社(以下、勝毎)と4店の新聞販売店の間で起きた折込チラシの手数料をめぐる係争が引き金となった改廃事件が、昨年の12月28日、釧路地裁・帯広支部で和解解決した。既に強制改廃され札幌高裁で逆転勝訴していたもう1店も合わせて和解することとなり,和解金は5店の総額で約1億1700万円だった。
さて、江崎氏が送りつけた催告書は、どのような内容だったのだろうか?端的に言えば、催告書は、次に引用した回答書(この文章をわたしは「黒書」に掲載した)の削除を求めたものである。その理由は、回答書が著作物であるからというものである。
前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。? 当社販売局として、通常の訪店です。
この回答書は、当時、読売との係争が原因で断絶状態にあったYC広川に対して、読売が同店の訪問再開を決めたのを受けて、YC広川の代理人・江上武幸弁護士が念のために真意を確かめようとして送付した内容証明に対する回答である。この回答書を、わたしが入手して「黒書」に掲載したところ、江崎法務室長が催告書を送付してきたのである。
削除を求める理由として、催告書は、次のように述べている。
第2東京弁護士会に対して、喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒を申し立ててから、1月31日で2年になった。通常は、半年程度で判断が下されるが、この事件に関しては、綿密な調査が続いているらしく、2年が経過しても結論を出すには至っていない。
この事件はわたしと読売・江崎徹志法務室長の著作権裁判に端を発した前代未聞の事件である。第2東京弁護士会は言うまでもなく、おそらく日弁連にも類似事件の前例がないのでは。そのために第2東京弁護士会・綱紀委員会の調査が長引いている可能性が高い。
時間をかけてでも完全に解明してほしいというのが、当事者の希望である。SLAPP防止のために。できれば中間報告をお願いしたいものだ。
この事件については、「黒書」で繰り返し報じてきた。読売の江崎法務室長がわたしに、催告書なるものを送付したのを受けて、わたしがそれを「黒書」に掲載したことが事件の発端である。掲載を決めたのは、催告書の内容が怪文書のきらいがあったからである。
これに対して江崎氏が削除を要求。仮処分命令の申し立てを経て、2008年2月に本裁判へと進んだ。原告が江崎、被告が黒薮である。
江崎氏が提訴の理由としたのは、催告書が自分で執筆した著作物であるという主張である。著作権法の著作者人格権を根拠にした提訴だった。
著作者人格権:著作者人格権は、著作者だけが持っている権利で、譲渡したり、相続したりすることはできません(一身専属権)。この権利は著作者の死亡によって消滅しますが、著作者の死後も一定の範囲で守られることになっています。(詳細=ここをクリック)??
江崎氏は、催告書は自分が執筆したものであるという前提に立ち、催告書の削除を求めて裁判を起したのだ。
ところが裁判の中で、催告書の執筆者は江崎氏ではないのではという疑惑が持ち上がった。そしてわたしの弁護団の追求により、裁判所は催告書の執筆者は別にいたと判断したのである。高裁も最高裁も、下級審の判決を認定した。
そして最高裁の決定を受けて、わたしは弁護士懲戒請求に踏み切ったのである。参考までに高裁判決を引用してみよう。
上記認定事実によれば、本件催告書には、読売新聞西部本社の法務室長の肩書きを付して原告の名前が表示されているものの、その実質的な作成者(本件催告書が著作物と認められる場合は、著作者)は原告とは認められず、原告代理人(又は同代理人事務所の者)の可能性が極めて高いものと認められる。
つまり江崎氏には、裁判を起こす権限はなかったのだ。 一方、弁護士活動を規定している『弁護士業務基本規程』の第75条に、次のような条文がある。
31日付けの「しんぶん赤旗」(電子版)が、ニューヨーク州議会の上院が29日、旧日本軍による従軍慰安婦問題を記憶にとどめるとする決議を全会一致で採択したニュースを報じている。おりしも日本の国会では、安倍首相が衆院本会議で平沼赳夫議員(日本維新の会)の質問に答弁するかたちで、憲法改正にふれ、「党派ごとに異なる 意見があるため、まずは多くの党派が主張している96条の改正に取り組む」と述べた。
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
憲法96条は、憲法改正のための「手続き法」である。 憲法改正の発議には、議員総数の三分の二を超える賛成を必要とするが、それを緩和して一気に9条の改正に突き進もうという意図らしい。
国会での答弁に先だって安倍首相は、1993年の河野洋平官房長官談話を見直すことを明言している。河野談話とは、当時の河野官房長官が、従軍慰安婦の客観的な存在を認めた談話である。
日本のメディアは、ニューヨーク州議会による決議に関するニュースと安倍首相が改憲に言及したニュースをどのように報じているのだろうか。
アルジェリアで人質事件が発生したのを機に、安倍内閣が自衛隊法改正を検討しはじめた。そして読売新聞がそれを煽る社説を掲載している。
正当防衛などに限定されている武器使用基準の緩和のほか、陸上自衛隊には警護任務の特殊な訓練が求められる。これらの課題について、しっかり論議することが大切だ。(26日)
自衛隊制服組の防衛駐在官は現在、世界全体で49人いるが、アフリカはエジプトとスーダンの2人だけだ。着実な増員が必要だ。紛争地域に進出した日本企業を守るには、各地域やテロ対策の専門家を育成し、情報収集・分析能力を高めることが急務である。(23日)
テロを口実にして自衛隊の海外派兵を押し進める手口は、自民党政権の常套手段である。典型例としては2001年9月11日の同時多発テロを機に、テロ対策特措法を成立させて、自衛隊をインド洋に送りだした例がある。
テロ対策特措法が成立する前は、周辺有事法が自衛隊の海外派兵の口実になっていたが、活動範囲が日本の周辺に限定されていたために、世界中の紛争地帯へ自衛隊を派兵するわけにはいかなかった。この壁を同時多発テロを機にテロ対策特措法を成立させることで突破したのである。
2013年01月29日 (火曜日)
新聞社が新聞に対する消費税の軽減税率適用を求めて紙面を使ったPRを展開している。その根拠として記事などに引用しているのが、日本新聞協会が実施したとされる世論調査の結果で、実に、国民の8割が生活必需品に対する軽減税率適用を求め、新聞・書籍に対しても、その4分の3が賛成している、というものだ。
ところが、実際にこの調査を行ったのは、中立な第三者どころか、新聞協会の監事・西澤豊氏が会長を務める中央調査社。しかも、実際に面接調査をしたのは、4000人の候補者のうち1210名だけで、新聞の定期購読率が極めて高いと思われる層のみに聞いた“イカサマ調査”といえる。
新聞と書籍をごちゃ混ぜにして質問するなど、質問内容にも結果を誘導した跡がある。新聞業界は「押し紙」分まで増税されてしまうことを極端に警戒し、世論調査・世論誘導すべくしゃかりきに走り出した。
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【Digest】
◇河内孝氏の試算
◇調査会社の会長が新聞協会の監事
◇中央調査社の数字をうのみ
◇回答率は約3割
◇偽装部数の存在を認めぬ新聞協会
◇高市政調会長らに政治献金
◇新聞業界の身勝手な姿勢
◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)
前回のこの欄、私は「憲法9条で掲げる平和外交を進めたことのない国が、いきなり9条の改憲を目指すことに無理がある」と指摘しました。その言葉が乾かぬうちに、アルジェリア人質事件です。
この国は、情報がまともに入らない程度の外交能力しか持っていないことを、多くの人々が改めて実感したはずです。憲法9条は理想論に過ぎない。そんな意見もあります。
しかし、憲法9条はこの程度の国ならばこそ、実はもっとも現実的な憲法でもあると私は思うのです。私は現実主義者です。今回は、この国が憲法9条を持つメリットを現実的な視点から考えてみたいと思います。
私は前々回のこの欄「ブレーキ役不在のこの国」で、中曽根政権のブレーキ役だった当時の官房長官、故後藤田正晴氏のことを書きました。私は首相番の後に就いた自民党サブキャップ時代、後藤田氏と数回、直接話す機会にも恵まれました。
元警察庁長官、「カミソリ」と言われるほど近寄り難い雰囲気を漂わせる人でした。私が官房長官時代の発言を踏まえ、恐る恐る憲法問題を後藤田氏に聞くと、凛とした声で、「君、この国が軍隊という『暴力装置』を使いこなせるほど、成熟した国だと思うかね」と、逆に尋ねられました。
そこには戦前からの官僚として、軍部が暴走する時、止められない官僚の無力……。その中で国民の命・生活が奪われていくことを目の当たりにした後藤田氏の強い思いがあったような気がしています。現実論を踏まえない観念的な軍備増強論者の危うさ、その勇ましい言葉に踊らされる一部の国民・若者たちの成熟度に対する深い懸念も感じました。
23日付け東京新聞が「シリーズ日米同盟と原発」で、原発を導入した読売新聞の正力松太郎を取り上げている。「新聞王 原発の父に 豪腕で初の建設へ」と題するルポである。
ルポの中身は、米国が正力松太郎を利用して、原子力の「平和利用」を日本に持ち込もうとしたというものである。
名誉欲か、それとも政治的野心か、今となってはほとんど知るすべはない。が、マスコミ界から政界入りし、原子力の平和利用で旗振り役を務める正力は、米国にとって頼もしい存在だった。日本の反核世論封じ込めを狙う米国の対日戦略に沿うものだったからだ。
米国公文書館に保管されている文書によると、CIAは読売の正力を「ポダム」を呼び、朝日の緒方(竹虎)を「ポカポン」と呼んでいたという。米国がメディア戦略として新聞を利用していたことを示唆する事実である。
CIAの文書は、読売のポダムを高く評価している。
ポダムは協力的だ。親密になることで、彼が持つ新聞やテレビを利用できる。ポダムとの関係ができてきたので、メディアを使った反共工作を提案できる。
読売新聞や日本テレビを利用した反共宣伝の戦略が、CIAから提案された背景には、国際社会の中でソ連が影響力を強めていた事情もある。その結果、日本では、メディアを世論誘導に利用する戦略が、国民が知らないところで進行していたのである。その先兵となったのが、読売の正力である。
読売新聞社がわたしに対して提起した3件の裁判が「一連一体の言論弾圧」にあたるとして損害賠償を求めた裁判の控訴審が、23日、福岡高裁で結審した。 判決は、3月15日に言い渡される。
3件の裁判の概要は次の通りである。
■著作権裁判
わたしが新聞販売黒書に掲載した読売・江崎法務室長の催告書を巡る裁判。 江崎氏は、催告書はみずから執筆した著作物なので、わたしに公表権はないと主張した。
しかし、東京地裁は、催告書の執筆者は江崎氏ではなく、読売の代理人・喜田村洋一自由人権協会代表理事か、彼の事務所スタッフの可能性が極めて高いと認定し、江崎氏の訴えを退けた。高裁、最高裁も下級審の判決を認定して、わたしの勝訴が確定した。
2013年01月22日 (火曜日)
自民党と公明党は、軽減税率を2014年4月に導入することを見送ったようだ。
自民、公明両党は20日、消費増税に伴う低所得者対策として検討している、食料品など生活必需品の税率を低く抑える「軽減税率」について、消費税率が8%となる2014年4月からの導入を見送る方針を固めた。軽減税率の導入時期は13年度税制改正の大きな焦点だったが、8%時からの導入を強く求める公明党と「10%以降の検討課題」とする自民党で意見の隔たりが埋まらず、8%時は難しいと判断した。
公明党は14年からの導入を見送る場合は、15年10月に消費税率が10%に引き上げられる段階には導入するよう求めており、24日にまとめる与党税制改正大綱に盛り込むかどうか調整を続ける。(時事)
新聞業界も新聞に対する軽減税率の適用を求めていることから察して、これで当分の間は自社の紙面で政権党の批判を自粛せざるを得なくなるだろう。安倍内閣が改憲など、軍事大国化へと暴走しても、新聞ジャーナリズムが歯止めをかけることは期待できない。
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長崎県の元販売店主が2021年に起こした西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、7月2日の午後、福岡...
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『週刊金曜日』(6月7日付け)が、「報道の自由度、世界ランキング70位でいいのか」と題する記事を掲載している...
福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士・江上武幸(文責) 2024(令和6年)5月1日 長崎県佐世保...
読売新聞「押し紙」裁判の続報である。読売の代理人を務める自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士らが、大阪高裁...
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