2014年10月14日 (火曜日)

NTTドコモが茅ヶ崎市で、住民の反対を押し切って携帯基地局を稼働、隣接するマンション住民らの怒り心頭に

マンションやオフィースビルの屋上に携帯基地局が設置された場合、マイクロ波の影響を直に受けやすいのは、隣接するビルに住む人々である。

もっとも実際に電磁波密度を測定すると、基地局の真下で高い数値が測定されることもあり、厳密にはどの位置が高リスクであるかは一概に断定できないが、少なくとも理論上は、基地局があるビルの住民よりも、むしろ隣接するビルの住人の方が被害を受けやすい。マイクロ波に直撃されるからだ。

◇工事のペンディングを申し入れ

神奈川県茅ケ崎市は、人口24万人。湘南海岸に面した首都圏のベットダウンである。

茅ヶ崎市の○○地区で携帯基地局の設置をめぐる問題が勃発したのは、2012年の10月だった。住民の鈴木直人(仮名)さんが、自らが住むマンション群と境界を接する6階建てマンションの屋上に、工事用の足場が組まれているのを発見し、作業員に事情を尋ねたところ、NTTドコモが基地局を設置する計画が判明したのである。鈴木さんが言う。

「常識的に考えて強い電波を発するものを、住居のすぐ近くに設置するのは、危険ではないかと思い、工事を一旦ストップするようにお願いしました」

鈴木さんが住むマンションは、1棟を除いてすべて5階建てである。このうち基地局が設置されたマンションと通路や庭を挟んで向き合っている棟は、基地局からのマイクロ波を直射される可能性が高い。それにもかかわらずNTTドコモは、基地局設置についての何の通知もしなかったことに、鈴木さんらは納得できなかった。

続きを読む »

2014年10月13日 (月曜日)

公共事業は諸悪の根源⑰ デッチ上げまでした司法【その3】

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

 従軍慰安婦、原発報道をめぐる誤報問題で、朝日は今、バッシングの嵐を受けています。慰安婦記事を書いた元記者が在籍する大学には、嫌がらせとも取れる大量のメールが届き、ネット上には朝日記者の殺害予告らしきリストまで流されています。

「『報道の自由』を守れとは、朝日社員なら誰でも言います。しかし、『本気で言えば唇寒し』との空気がこの組織に流れて、もうどれほどの時間が経ったのでしょうか。このままにしておけば、やがて取り返しのつかない事態になります」。

私がこの手紙を当時の箱島信一社長に送ったのは、2005年。週刊朝日がサラ金会社から「編集協力費」名目で訳の分からないカネを受け取った武富士問題や若い記者による記事盗用など不祥事が相次ぐ直前のことでした。

今回もまた、朝日の紙面には「読者の声に謙虚に耳を傾けます」との幹部の言葉が朝日の紙面に載っています。しかし、私にはそれも白々しく響きます。ジャーナリズムなら、正すべき誤報は正し、謝罪すべきものは謝罪する。その上できちんとした論陣を張れる体制を整え、不当な批判があるなら、毅然と対抗すべきです。

でも、それが出来ず、朝日が何故、バッシング勢力につけ込まれる弱々しい体質になってしまったか。私は誰よりもよく分かっているつもりです。この欄の読者も、私の報告した具体論からとっくにお分かり戴けているのではないかと思います。

最初に慰安婦報道をし、バッシングを受けている記者に多くの責任はありません。「ダブルスタンダード」などと言うと難しく聞こえますが、外には厳しく高邁な論理で人や組織の在り方を説くのに、自分には甘く、発した言葉で自らを律しきれない二枚舌…。責任を取りたくない幹部の官僚体質が何一つ是正されていないのが、問題を大きくした原因です。

続きを読む »

2014年10月10日 (金曜日)

読売新聞の77万部減、本日(10日)発売の『週刊金曜日』で報道

本日(10月10日)発売の『週刊金曜日』が、読売新聞社の部数減について書いた記事(黒薮執筆)を掲載している。タイトルは、「昨年11月から77万部以上、部数減に歯止めなし」、「読売新聞が朝日叩きに熱心なわけ」。

参考:10月10日号の目次

この記事では、「押し紙」問題にも言及している。読売の「押し紙」については、司法判断が異なる2つの代表的な判例がある。

■読売の「押し紙」を認定した判例

読売と新聞販売店の間で起きた訴訟-真村訴訟で、2007年に福岡高裁(西理裁判長)は、読売の「押し紙」政策を認定した。判決の一部を引用してみよう。

 このように、一方で定数(黒薮注:新聞の搬入部数)と実配数が異なることを(黒薮注:読売は)知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎としているという態度が見られるのであり、これは、自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢であると評されても仕方のないところである。

そうであれば、一審原告真村の虚偽報告を一方的に厳しく非難することは、上記のような自らの利益優先の態度と比較して身勝手のそしりを免れないものというべきである。

判決は2007年12月に、最高裁が上告を棄却するかたちで確定した。

参考:福岡高裁判決の全文

■読売の「押し紙」を否認した判例

読売が新潮社(黒薮)に対して起こした裁判で、読売の「押し紙」が争点になった裁判(村上正敏裁判長)。東京地裁は読売に「押し紙」は存在しないと認定した。また、被告が証拠として提出した「押し紙」についての記述がある魚住昭氏の『メディアと権力』などの書籍には、記述の裏付けがないと認定した。

控訴審、上告審とも読売が勝訴した

続きを読む »

2014年10月09日 (木曜日)

日韓関係が悪化した原因は朝日の「誤報」ではなく、日本の軍事大国化と右傾化、朝日バッシングを検証する、

朝日新聞の慰安婦報道に対するバッシングは、ようやく峠を越えた感がする。わたしは、週刊誌や月刊誌の報道を自分なりに検証してきたが、誤った歴史認識が随所にみうけられた。

■吉田証言の評価

まず、多くの識者が吉田証言は「嘘」という共通認識を前提に、議論をしていることに違和感を覚えた。彼らが「嘘」と判断した根拠は、①朝日新聞が記事を取り消した事実、②吉田証言についての第3者証言が得られなかったことなどである。

かりに「第3者証言の不在=史実の否定」という論理がまかり通るのであれば、歴史の詳細を記録する作業は成立しない。吉田証言そのものがたとえ事実ではないにしても、それは枝葉末節の誤りであって、旧日本軍による戦争犯罪全体を否定するものではない。

当時、中国大陸では、日本軍による「強制連行」が行われていた事実は否定しようがなく、たとえば、731部隊による「強制連行」については、野田正彰氏の『戦争と罪責』(岩波書店)などにその実態が描かれている。

吉田証言だけを切り離して、当時の植民地政策がどのようなものであったのかを論じないのは、「木を見て森を見ない」論法の域をでない。この点を無視して、吉田証言の評価はできない。まして吉田氏は、発言権を持たない故人である。

■朝日報道が国益を損ねたという暴論

朝日による「誤報」が国益を損ねたとか、日韓の友好関係を割いたといった論調にも違和感を感じた。この種の発言は、右翼の媒体はいうまでもなく、リベラル派の『週刊現代』などにも見られる。たとえば、次の発言である。

「いずれにしても、アジアの融和を説く朝日の過失が、結果として日韓両国において偏狭なナショナリズムを増長させることになってしまった」(河内孝氏、『週刊現代』)

はたして朝日の「誤報」が日韓関係を悪くしたのだろうか?
わたしは本質論として、このような論理は完全に誤っていると思う。結論を先に言えば、日韓関係を悪くしたのは、日本の軍事大国化である。それが、韓国に警戒心を起こさせ、反日感情を煽っている根本的な原因だと思う。

続きを読む »

2014年10月08日 (水曜日)

LEDのリスクを提起する視点が欠落、ノーベル物理学賞をめぐるマスコミ報道の盲点

サバンナに生息するシマウマの先頭が銃声に反応し、地を蹴って東へ駆けだすと、群れ全体が東へ突進する。先頭が西へ急転回すると、後続の群れも西へ急転回する。これをスタンピード現象という。

10月8日付けの新聞各紙は、3人の日本人がノーベル物理学賞を受賞したことを伝えた。これに先立って、テレビやインターネットがこのニュースを報じたことは言うまでもない。メディアを通じて祝賀ムードが生まれた。

3人の日本人が、世界で最も権威がある賞を受賞したのであるから、メディアが祝賀ムードを煽るのも、やむを得ないが、ジャーナリズムとしての視点が完全に抜け落ちている。

それはLEDの安全性の検証である。科学技術の進歩には、たいてい負の側面も付随している。人間が人工的につくりだしたものが、生態系の中に侵入してきたときに、人体や環境に影響が現れないのかどうかに着眼するのは、科学ジャーナリズムの常識である。

が、今回のノーベル賞受賞に関する報道には、こうした視点がまったく見られない。単に歓喜に浸っているだけだ。そのうち日本人の優位性をPRする記事が登場するのではないか?

LEDが人体に及ぼす影響については、最近になって、ようやく指摘されるようになっている。たとえば岐阜薬科大学の原英彰教授の研究グループが LEDから発せれるブルーライト(青色光)が目に障害を及ぼすメカニズムを解明して、今年の6月に英国の学術誌Scientific Reportsに論文を掲載している。

続きを読む »

2014年10月07日 (火曜日)

『財界にいがた』が森裕子裁判の総括特集、旭化成で鍛えた志岐氏の調査手法

『財界にいがた』が、森裕子裁判の総括特集を組んでいる。13ページを割いた大掛かりな企画で、タイトルは、「総括・最高裁と検察審査会の闇」。次の3編の記事から構成されている。

■勝訴した被告担当弁護士が語る″名誉毀損裁判″で敗訴した原告・森裕子の大誤算

■正義の実現のために今こそ国民は最高裁に厳しい監視の目を

■福島原発事故の刑事責任追及でカギを握る″霞が関の検察審査会

同誌の読者が多い新潟県は、森裕子前参院議員の地元である。その意味では、政治家などの公人を監視するジャーナリズムの役割を果たす価値ある特集だ。

続きを読む »

2014年10月06日 (月曜日)

文科省の「全国学力・学習状況調査」、露呈した旧世代の教育観、新聞を読む中学生は8.2%

文科省が8月に発表した「平成26年度全国学力・学習状況調査」の調査項目のひとつに、「児童生徒のメディア・社会との関係」と題する項目がある。

この中に「新聞を読んでいますか」という質問項目がある。
回答は、次の通りである。

【小学校】

ほぼ毎日:10.1%
週に1~3回程度:17.2%
月に1~3回程度:22.3%
ほとんど・全く読まない:50.2%

【中学校】

ほぼ毎日:8.2%
週に1~3回程度:13.3%
月に1~3回程度:19.1%
ほとんど・全く読まない:59.1%

■「児童生徒のメディア・社会との関係」PDF

調査の結果を踏まえて、一部の新聞業界紙が「新聞を読む生徒ほど正答率高く」といったタイトルの記事を掲載している。しかし、調査結果を見る限りでは、新聞を読む行為と学力の向上の関係は読み取れない。

新聞を読んでいる生徒がたったの10%程度で、しかも多用なメディアが存在する状況下で、新聞を読む行為と学力の向上を調べること自体が難しい。第一、学力とは何かという問題もある。

ちなみに「小説やエッセイ、ルポを読んでいますか?」という設問はなく、新聞だけをことさらに質問項目としてクローズアップしている点も不自然だ。新聞を読んでいる生徒は、もともと文字に親しんでおり、新聞も読むが、書籍も読んでいる可能性が高いからだ。

かりに「活字を読むこと=学力の向上」であれば、どのような文字媒体が学力の向上につながったのかを突き止めなければ、調査の意味はない。

なぜ、児童を対象とした調査で新聞に関連した項目が入ってくるのだろうか。答えは簡単で、小学生のころから、「新聞=信頼できる情報」という先入観を植え付けることである。

続きを読む »

2014年10月03日 (金曜日)

新聞の発行部数、地方紙もブロック紙も低落傾向に、進む新聞ばなれ

読売新聞と朝日新聞のABC部数が激減している。特に読売は、昨年の11月を起点にすると、8月末までに約77万4000部も減らしている。

一方、地方紙やブロック紙のABC部数は、どのような実態になっているのだろうか。昨年の11月と今年の8月を比較してみよう。

まず、ブロック紙の部数変遷。

                     13年11月         14年8月        差異
北海道新聞 1,101,504    1,069,839   -31,665
中日新聞       2,633,677       2,531,163    -102,514
西日本新聞      727,008          710,365     -16,643

ブロック紙も同様にABC部数を減らしている。

続きを読む »

2014年10月02日 (木曜日)

最高裁事務総局は反論できますか? 「小沢一郎検審起訴議決を”架空議決”と結論付けた”7つの根拠”」!


 

■小沢一郎検察審起訴議決を"架空議決"と結論付けた"7つの根拠"

■添付資料:証拠書類

私達市民は、4年間、小沢検察審疑惑について調べ続けた。最高裁事務総局、検察審査会事務局、東京地方裁判所、会計検査院、東京地方検察庁などには何度も足を運んだ。そして、これらの役所への情報開示請求は60回以上に及んだ。開示資料も山のように集まった。

どの開示資料も怪しいものばかりで、審査員と審査会議の実在を示す証拠は一つとして存在しなかった。【続きを読む】

 

続きを読む »

2014年10月02日 (木曜日)

文科省と読売が読売新聞ビルの20階から24階を賃貸借契約、独立行政法人・日本医療研究開発機構の本部に、一般入札で読売が落札

独立行政法人・日本医療研究開発機構が東京大手町にある読売新聞ビル(地上33階建て、2013年11月に竣工)に入居することが分かった。業界紙の報道によると、8月29日に読売新聞東京本社と文部科学省が、「今年12月から来年3月までの定期建物賃貸借契約を締結」したという。

日本医療研究開発機構の設置は、安倍内閣が今年の7月22日に閣議決定で決めた。それからひと月あまりで、読売新聞ビルへの入居が決まった。

参考:平成26年7月22日 閣議決定

続きを読む »

2014年10月01日 (水曜日)

小渕&塩崎大臣の手腕に疑問を呈す

月間テーミス10月号の連載、「政官パトロール」で、編集人の横田が「小渕経産&塩崎厚労相に早くも黄信号」という記事を書いています。

塩崎大臣、またもや日銀から秘書官を・・GPIF対策なのでしょうが、その性質から言ってなかなか「モノ言う株主」にはなりにくいのではないかと思うのであります。【続きを読む】

続きを読む »

2014年10月01日 (水曜日)

出版物に対する消費税の軽減税率問題、適用は「確実」、既得権がメディアコントロールの道具に

新聞や書籍、それに雑誌などを対象とした消費税の軽減税率の適用問題が山場を迎えている。業界紙の報道によると、日本新聞協会と日本新聞販売(日販協)が協同で、「100万人署名」を展開している。

出版物に対する軽減税率の問題は、MEDIA KOKUSYOで繰り返し報じて来たように、適用される可能性が極めて高い。マスコミは「適用は難しい」という見方をしているが、わたしは99%適用されると考えている。

理由は以下の通りである。

【1】日販協を中心とした政界工作により、既に幅広い国会議員や官僚の支持を取り付けている。たとえば、日販協の政治連盟から、150人を超える議員に政治献金が支出されている。次に示すのは、高市早苗総務大臣に対する政治献金の証拠である。

参考:高市早苗総務大臣への政治献金(2009年度・奈良県選挙管理委員会)

高市氏への政治献金は、ほんの氷山の一角に過ぎない。

続きを読む »

2014年09月30日 (火曜日)

読売新聞に見る旧日本軍に関する記述の変化、過去に吉田清治氏も登場

新聞の編集方針は、時代によってころころと変化するようだ。このところ話題になっている強制連行(従軍慰安婦を含む)など旧日本軍の戦争犯罪を、読売新聞がどのように扱っていたかを調べてみた。

1985年9月27日の朝刊「顔」の欄(冒頭写真)には、吉田清治氏が登場している。改めていうまでもなく、吉田氏は、朝日の「誤報」問題の発端となった人である。吉田氏は、旧日本軍が従軍慰安婦を強制連行した旨の証言をしたが、第3者証言の不在を理由に、証言はウソだったと決めつけられてしまった人物である。

その吉田氏を読売新聞も、かつては肯定的に取り上げている。次のようなタッチである。

続きを読む »

2014年09月29日 (月曜日)

8月のABC部数、朝日も読売も微減、朝日の「誤報」と部数変動は無関係、前年同月比は読売が-61万部、朝日が-30万部

日本ABC協会が公表した8月のABC部数によると、朝日新聞と読売新聞の8月の新聞部数の変動は、ほとんど変わらないことが分かった。両者の部数比較は次の通りである。

【8月の朝刊】
朝日:7,252,277部
読売:9,233,844部

【対前月差】
朝日:-14,589部
読売:-14,602部

【対前年同月比】
朝日:-303,582部
読売:-612,990部

【8月の夕刊】
朝日:2,360,526部
読売:3,079,110部

【対前月比】
朝日:-78,710部(販売店:-78,014部)
読売:-22,104部(販売店:-20,583部)

【対前年同月比】
朝日:-370,948部
読売:-273,575部

■全国の新聞の部数変動PDF

これらの数字から、従軍慰安婦問題の「誤報」で、朝日が部数を減らしているという週刊誌や月刊誌の報道が間違いであることが分かる。以下、解説である。

続きを読む »

2014年09月26日 (金曜日)

「志岐VS八木」裁判の注目点は、「小沢検審」架空説と経理問題の根拠、志岐氏は新資料も入手、森裕子裁判の「戦後処理」②

『最高裁の罠』の著者・志岐武彦氏は、25日、歌手で作家の八木啓代氏を東京地裁へ提訴した。裁判は民事15部が担当する。

この裁判についてわたしは次のような見方をしている。名誉毀損裁判であるから、争点は当然、志岐氏が名誉毀損として指摘している八木氏による約200件のTwitterが名誉毀損に該当するか否かという点になる。しかし、客観的にみると、この裁判は個人の名誉よりも、もっと重大な問題をはらんでいる。

それは八木氏の一連のTwitterの引き金となっている最高裁事務総局が管轄していた東京第5検察審査会(俗に「小沢検審」)に関する数々の疑惑である。

日本の名誉毀損裁判では、名誉毀損を指摘された文章表現や発言に公益性があることや摘示内容が真実、あるいは真実に限りなく近いことを被告側が立証しなければならい。立証責任は八木氏の側にある。

◇新たな疑惑も浮上

「小沢検審」に関する疑惑は、MEDIA KOKUSYOでも繰り返し取り上げてきたが、志岐氏の一貫した主張は、小沢検審が架空であったと推測するに足りる十分すぎる証拠が存在する、というものである。

これは市民オンブズマンの石川克子氏の協力を得て、最高裁事務総局などに対して情報公開請求を繰り返し、膨大な量の資料を入手し、それを丹念に分析した結果、たどりついた根拠のある推論である。「妄想」ではない。

八木氏は、TWITTERなどを通じて、志岐氏の理論を「妄想」などと主張してきた。従って法廷では、志岐理論が妄想かどうかを検証せざるを得ない。すなわち法廷で志岐氏の理論が問われるのだ。

わたしは特に次の点に注目している。

検察審査のクジ引きソフトが、不正操作できる仕組みになっている疑惑の再検証。(これについては森裕子氏が議員の特権で調査し、『検察の罠』に詳しく記している)。

検察審査会が起訴相当の議決を下す前に、義務づけられる検察官による意見表明が行われていない疑惑の解明。志岐氏らが情報公開で得た検察官の出張記録によると、小沢検審の議決前に、担当検察官が小沢検審に出張した記録がない。

森議員の要請で、会計監査院が検察審査員(あるいは架空の検察審査員)に対する旅費支払いの有無などを調査したところ、肝心の「小沢検審」に関する調査は行っていなかった事実が判明した。(これは石川克子氏が膨大な資料を精読した結果判明した。ななめ読みしていれば、見落としていた可能性が高い)

検察審査員(あるいは架空の検察審査員)に対する旅費支払いの発議日が小沢検審ではばらばらになっている事実。これも情報公開で判明した。

だれが週刊朝日などに、検察の捏造報告書をリークしたのか。ルートは2つしかない。(窃盗のケースを除く)検察内部の者が捏造報告書を持ち出した可能性。小沢弁護団を介して何者かが、外部に持ち出した可能性。

ほかにも最近になって志岐氏が新たに入手した裏付け資料が存在する。たとえば検察審査会の経理を担当している東京地裁の経理書類を、何者かが修正液を使って偽造した疑惑が浮上している。また、原本のコピーとされる書類に記された金額の字体などが、原本と一致していない。この書類の原本は、会計監査院が保管している。

これに関して志岐氏は、東京地裁に説明を求めている。現在、東京地裁は総がかりで調査しているので、真相が分かり次第にMEDIA KOKUSYOでも報告したい。

(これに関しては実物のコピーがあるので、東京地裁の説明に道理がない場合、あるいは説明しない場合は、MEDIA KOKUSYOでも公開します。)

続きを読む »

2014年09月25日 (木曜日)

森裕子裁判の「戦後処理」、勝者の志岐武彦氏が25日に歌手の八木啓代氏を提訴、Twitterで「虚言癖」「早い内に病院か教会に行かれる方がよいと思います」

『最高裁の罠』の著者で、7月に判決が下された森裕子裁判に完全勝訴した志岐武彦氏が、歌手で作家の八木啓代氏に対して、200万円などを請求する名誉毀損裁判を起こすことが分かった。訴状は、25日に東京地裁に提出される予定。

八木氏は、ラテンアメリカと日本を往復しながら、歌手、作家、市民運動家として活動している。みずからのTWITTERのプロフィールは、自身の生き方について次のように述べている。

 立てば歌い手、座れば作家、歩く姿は放浪者。 座右の銘は「敵もできないような無難な人間になってはいけない」 Cantando se recrea esta mujer. この人何なの?と思われた場合は、とりあえず名前をググってください。Wikipediaなどに項目があります。

◇繰り返された「妄言癖」という表現

提訴の理由は、森裕子氏と志岐氏が、検察審査会の「闇」(東京第5検審が、2009年9月14日の民主党代表選の当日に、候補者だった小沢一郎氏に対して起訴相当の議決を下した事件)をめぐる解釈の違いから、ネット上で論争した際に、Twitterで執拗に志岐氏を誹謗中傷し続けたというものである。

参考記事:森裕子裁判が提起した最高裁事務総局の問題、だれが検察の捏造報告書をリークしたのか? ルートは2つしかない 

TWTTER攻撃は、2013年5月から始まり、2014年7月18日の「森裕子―志岐裁判」判決当日まで延々と続いた。ちなみに判決当日のツイートは次のようなものである。

卑劣な奴はとことん卑劣という好例ですね RT @moriyukogiin 裁判について小倉秀夫弁護士が説明文を RT ……

志岐氏が特に「許しがたい」としているのは、TWITTERの次のような表現である。一部を紹介しよう。

とにかく明らかなのは、志岐さんには、誰もかけていない電話が聞こえ、会ってもいないのに会った記憶が作られ、そこでは、志岐さんに都合の良い事実が曝露されるらしいことである。早急に病院に行かれた方がよろしいかと思う

ちなみに、どうせまともな人は信じないので改めて書く必要もないと思いますが、志岐氏が昨日付けブログに書いていることは、すべて妄想です。かなり症状が進んでいるなと思います。早い内に病院か教会に行かれる方がよいと思います

病的な虚言癖でなければそういうことになりますね

人格障害の可能性もありますね

病的な虚言癖」でなければそういうことに

自著を売るために、証拠もないのに妄言を並べているだけ。RT・・・

志岐さんは妄想の世界に入られました。私は私で独自の路線ですRT・・・

(注:太字は黒薮)

「早い内に病院か教会に行かれる方がよいと思います」といった精神障害者やキリスト教徒を、高慢な視点で蔑視した表現もある。

続きを読む »

2014年09月24日 (水曜日)

読売が朝日を批判するリーフレットとチラシをポスティング、朝日を上回る部数激減の歯止めになるか?

昨日(23日)、郵便ポストに『朝日「慰安婦」報道は何が問題なのか』と題するリーフレットと「読売新聞は真実を追求する公正な報道で信頼に応えます」と題するチラシがセットになって投函されていた。

読売の読者ではないわたしの自宅ポストにこれらのPR媒体が投函されたことから察して、全戸配布の結果ではないかと思われる。ただし、配布の範囲が一地方に限定したものなのか、全国的規模なのかは分からない。

『朝日「慰安婦」報道は何が問題なのか』は、サイズが「A4版」で19ページ。朝日報道を徹底批判した後、メディアが報道内容に責任を持つ重要性を訴えている。

一方、チラシも報道機関としての責任の重要性を強調し、次のように結んでいる。

今ほど、報道に誠実さが求められているときはありません。
 読売新聞も過去に重大な誤報をしています。2012年にはiPS細胞をめぐり「日本人研究者が世界ではじめて臨床応用を行った」と誤った報道を行い、報道2日後に誤報であったことを紙面でお伝えし、おわびを掲載しました。報道に誤りがあったとき、さらには誤りを指摘されたときの迅速な対応が何よりも大切だと考えています。読売新聞は事実に忠実であること、そして誤りに対して誠実であることを読者の皆様にお誓いします。

■チラシの全文

続きを読む »

2014年09月23日 (火曜日)

読売の部数が10カ月で約77万4000部減、「数字で見る読売新聞」には10,007,440部と表示、部数減は朝日の比ではない

読売新聞のウエブサイトにある「数字で見る読売新聞」によると、同社の発行部数は、2014年9月23日の時点で、10,007,440部となっている。そしてこの数字を誇り、他紙に対する競争心を露呈させて、次のように述べている。

読売新聞は、イギリスの「ギネスブック」が認定した世界一の発行部数を誇り、日本を代表する高級紙です。 発行部数監査機関である日本ABC協会の報告では、2013年11月の朝刊部数は全国で1000万7440部で、全国紙第2位の新聞に約247万部、第3位紙に約667万部という大差をつけています。

■出典:「数字で見る読売新聞」PDF

■出典:「数字で見る読売新聞」

読売自身が文中で記しているように、この「10,007,440部」という数字は、2013年11月時点のものである。つまり10カ月前の数字を現在も表示し続けているのだ。

続きを読む »

2014年09月22日 (月曜日)

新聞に対する軽減税率の適用問題の背景に大規模なメディアコントロール、連動した2つの政府戦略

「歴史は繰り返す」という格言がある。真理ともいえるし、事実を正しく捉えていないとも言える。同じことを繰り返しているように見えても、歴史は少しずつ異なったステージへ進んでいるからだ。

権力を掌握している層がメディアをコントロールする際に念頭に置いてきた原理は、一貫して変化していないが、それを取り巻く条件や狙(ねらい)は、徐々に変化している。

解釈改憲が閣議決定されたり、特定秘密保護法が審議を尽くさずに国会を通過した背景に、軍事大国化という日本の進路を決定的にかえてしまう国策に連動したメディアコントロールが進行していることは間違いない。

◇出版界が朝日を総攻撃した本当の理由

メディアをコントロールする最も効率的な方法は、メディア企業の経営上の弱点や既得権、それに「汚点」を把握して、この部分に対して「飴(あめ)と鞭(むち)」の政策で攻撃を加えることである。

現在、メディアコントロールの道具にされているのが、出版物に対する消費税率の軽減適用問題である。これは出版業界にとっては死活問題である。新聞社だけではなくて、出版社にとっても無視することができない。かりに出版物に対して10%の消費税を課されたら、壊滅的な打撃を受ける。

朝日新聞社に対する束になったバッシングもこのような脈絡で考えるとわかりやすい。日本の言論が、巧みな「飴(あめ)と鞭(むち)」の政策でコントロールされていく兆候にほかならない。「大本営ジャーナリズム」の始まりである。

続きを読む »

2014年09月19日 (金曜日)

携帯基地局のマイクロ波による健康被害を問う延岡大貫訴訟が結審、不自然な裁判長交代劇の背景に何が?

日本の裁判所は、良心に誓って公正・中立な判決を下しているのだろうか?
隣人同士のささいな争いの仲裁であればともかくも、国策にかかわる問題をはらむ事件となれば、最高裁事務総局が審理の進行に目を光らせているのではないか?法廷を重ねるにつれて、そんな懸念を浮上させた裁判が9月5日に結審した。

舞台は、宮崎市にある福岡高裁宮崎支部である。3階建てアパートの屋上にKDDIが設置した携帯電話基地局の操業差し止めを求めて、延岡市大貫の住民30名が、宮崎地裁延岡支部へ提訴したのは2009年12月。敗訴。そして控訴。裁判は開始からまもなく5年になる。

延岡大貫訴訟は、基地局からのマイクロ波により、実際に発生した健康被害を理由に、基地局の操業停止を求めた全国ではじめての裁判だった。携帯電話の通信に使われるマイクロ波が将来的に人体に影響を及ぼすことを懸念して、予防原則の立場から裁判が提起された例は、それまでに数件起きていた。

しかし、延岡大貫訴訟は、マイクロ波による人体影響が世界的な共通認識になり始め、実際に被害が多発し始めた時期に起こされたのである。ちなみに2011年5月、WHO傘下の国際癌研究機関は、マイクロ波に発癌性がある可能性を認定している。

それだけに裁判は注目を集めた。NHKを除く多くのメディアが、新聞は地方版で、テレビはローカル放送で裁判の進行を報じてきた。本来は全国紙で報じなければならない大問題であるが、現場の記者の努力により、かろうじて地元では報じられてきたのである。

宮崎地裁延岡支部の太田敦司裁判長は、判決の中でKDDI基地局の周辺に住む人々の間に、耳鳴り、頭痛、不眠、鼻血などの症状が現れた事実を認定した。と、なれば当然、KDDIに対して操業の中止を命じる判決を下すのが道理である。

が、無線通信網の整備という利権がらみの国策が介在すると、そうはならなかった。住民たちが訴える種々の症状は、「ノセボ効果」が引き起こしたものであると認定したのだ。「ノセボ効果」とは、端的に言えば、「思い込み」のことである。地裁の太田氏は、判決の中で次のように述べている。

原告らその他の住民の中には、反対運動などを通じて電磁波の危険性についていの情報を得たことにより、電磁波の健康被害の不安を意識したことや、被告の対応に対して憤りを感じたことなどにより、もともとあった何らかの持病に基づく症状を明確に意識するようになったり、症状に関する意識が主観的に増幅されていき、重くとらえるようになった者がいる可能性がある。

太田氏がどの程度、「ノセボ効果」について理解しているのかは不明だが、少なくとも健康被害と「ノセボ効果」の因果関係を司法認定するのであれば、両者を論理的に関連づけなければならない。たとえば住民の間で見られる鼻血と「ノセボ効果」の関係である。医学的な論考が難しければ、鼻血と「ノセボ効果」の関係を示す疫学調査の事例を判決の中で提示すべきだろう。

が、判決を読む限りでは、そのような考察はどこにも見られない。こうした基本的な点を無視しているために、判決文は論理が極端に飛躍している印象をまぬがれない。結論先にありきの判決なのだ。

続きを読む »

2014年09月18日 (木曜日)

携帯基地局から200メートル以内、発癌リスクが極めて高い、ブラジルの調査でも判明、日本では秘密保護法の施行で情報ブロックも

ブラジルのベロオリゾンテ市は、ブラジル南東部、標高約 800 メートルに建設された計画都市である。人口は約240万人。

この市をモデルとして携帯電話の通信に使われるマイクロ波と癌の関係を調べる調査が行われたことがある。結果が公表されたのは、2011年5月。おりしもWHO傘下のIARC(国際がん研究機関)が、マイクロ波に発癌性(遺伝子毒性)がある可能性を認定した時期である。

調査は役所が保管している携帯基地局の位置を示すデータ、市当局が管理している癌による死亡データ、それに国勢調査のデータを横断的に解析したものである。対象データは、1996年から2006年のもの(一部に欠落がある)である。

結論を先に言えば、基地局から半径500メートルの円周内で、癌のリスクが高くなることが分かった。1万人あたりの癌による死亡数と、基地局からの距離は、次のようになっている。明らかな相関関係が浮上する。

距離 100mまで:43.42人
距離 200 mまで:40.22 人
距離 300 mまで:37.12 人
距離 400 mまで:35.80 人
距離 500 mまで:34.76 人
距離 600 mまで:33.83 人
距離 700 mまで:33.80 人
距離 800 mまで:33.49 人
距離 900 mまで:33.21人
距離 1000mまで: 32.78人
全市        :32.12 人

検証対象のエリアに複数の基地局がある場合は、最初に設置された基地局からの距離を採用した。そのために汚染源の基地局を厳密に特定できない弱点はあるが、大まかな傾向を把握していることはほぼ間違いない。

基地局から200メートル以内は極めて危険性が高い。

続きを読む »

2014年09月17日 (水曜日)

朝日新聞の元記者が受けた報道弾圧の実態、長良川河口堰の取材現場から退場

新聞社の社内には、「異能分子」と呼ばれる人物がいる。記者としてよりも、取材活動などを通じて構築した人脈を生かして、利益を追求するメディア企業としての社に貢献する人物のことで、目的のためには、極めて公益性が高いスクープを平気で握りつぶしたりする。あげくの果てには、取材活動を展開していた記者を、「ぶら勤」にして、報道現場から退場させる。

公共事業による無駄使いの典型例として悪名を馳せたのが、長良川河口堰の工事である。そもそも河口堰を設けなくても水害の危険がなかったことが科学的に裏づけられていた長良川に、河口堰が設置された背景に何があったのか?官僚たちは、いかに国民を欺き、新聞社の幹部がいかにいびつな「いじめ」を繰り返したのか?元朝日新聞記者・吉竹幸則氏が、当事者として受けた報道弾圧の実態を詳細に語る。

第1部

 

続きを読む »

2014年09月16日 (火曜日)

世界の科学者が高周波電磁波をめぐるカナダ保健省の方針を批判する声明、ガン増加、異常精子、学習・記憶障害などを指摘

携帯電話の通信などで使われる高周波電磁波の安全性についての研究に携わっている世界の科学者らが、カナダ保健省が定めている「安全コード6指針」に苦言を呈する声明を、今年の7月9日に、発表していたことが分かった。声明のタイトルは、「科学者は高周波数の放射曝露からの防護を求めます」。声明はカナダ保健省のずさんな方針を批判する内容となっている。

声明の内容は、そのまま日本にもあてはまる。

◇愚民政策と電磁波問題

携帯電話やスマートフォンの普及により高周波電磁波に被曝する機会が増えている。ところが電磁波が人体に及ぼす影響については、ほとんど認識されていない。そのために膝の上に抱きかかえた乳幼児の頭上で、スマートフォンを操作している女性の姿をみかけることも少なくない。

電磁波のリスクが常識として定着しない背景には、次のような事情が考え得る。

電話会社や電力会社の大口広告主になっている新聞とテレビが、電磁波問題をほとんど報じないこと。

無線通信網の整備が国策となっている関係で、国や地方自治体が電磁波の危険性を知らせる活動をしないこと。むしろ人体影響はないと「宣伝」している。

「②」の背景には、巨額の政治献金が電話会社の労組から政界へ流れている事情がある。また、電話会社などへの天下りの事実もある。

国民の側に、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の感覚があること。

電磁波が視覚できない上に、被曝の影響がただちに現れることが少ないこと。

ここにあげた①から⑤は、「愚民政策」の結果である。

7月に発表された科学者の声明は、高周波電磁波の被曝と疾患の関係について、次のように指摘している。

疫学研究によつて、このRF曝露と、ガン、神経疾患、ホルモン変化、電気的過敏症(electrical hypersensitivity EHS)その他の症候とのあいだに、関連があることが示されてゐます。研究室における研究でも、ガン増加、異常精子、学習・記憶障害、および心臓の不規則疾患があきらかにされてゐます。

続きを読む »

2014年09月15日 (月曜日)

『東スポ』が森裕子裁判の検証記事、連載がスタート

だれかを法廷に引き出す行為は慎重にやらなければならない。提訴は司法制度を利用したドラスチックな攻勢ではあるが、同時にそれは高いリスクを伴う。

敗訴した場合に「反訴」という「返り血」を浴びる恐れが生じるうえに、たとえそれを回避できても、認定された裁判記録が永久に残り、それを根拠としたジャーナリズムの検証対象にされることがあるからだ。

場合によっては、訴訟に荷担した弁護士が懲戒請求の対象にされることもある。『弁護士職務基本規定』によると、「弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない」(75条)ことになっている。この条項に抵触するケースがままある。

前参議院の森裕子氏が、『最高裁の罠』の著者・志岐武彦氏を訴えた裁判は、8月5日に判決が確定して、現在は検証の段階に入っている。この裁判は、既報したように森氏の敗訴だった。裁判所が、原告の本人尋問や証人尋問すらも認めない異例の裁判だった。

裁判所が尋問を実施しなかったこと自体には問題があるが、被告の志岐氏にしてみれば、裁判に膨大な労力を割く日々から解放されたわけだから、歓迎すべきことである。また、森氏の支援者らから、ネット上で変人あつかいされた屈辱から解放された。

一方、わたしのような取材者の立場からすれば、小沢一郎氏と弘中惇一郎弁護士に対する証人尋問を実施してほしかった。検察から外部に漏れるはずがない捏造報告書の流出ルートを解明する必要があるからだ。

森氏の訴えがあまりにも理不尽だったためなのか、それとも元国会議員が「一市民」を訴える異例の裁判だったためなのか、判決が確定したあと、裁判を検証する動きが現れている。『財界にいがた』(9月号)に続いて、『東京スポーツ』がウエブサイトで「前国会議員に提訴された一市民が勝訴」と題する連載を始めた。

リンク先は次の通りである。

■東京スポーツの連載=前国会議員に提訴された一市民が勝訴

ちなみに『財界にいがた』の記事は次の通りである。

■   森裕子・前参議院議員が痛恨の完全敗訴で控訴断念

 

続きを読む »

2014年09月12日 (金曜日)

新聞に対する消費税の軽減税率問題、適用される可能性が極めて高い、メディアコントロールの道具に悪用か

新聞に対する消費税の軽減税率は適用されるのだろうか?いまや明らかに生活必需品ではない新聞を特別扱いにすれば、世論の反発を招くのは必至なので、適用は難しいのではないかとの見方が有力になっているようだが、わたしは確実に適用されると予測している。

ここ30年を振り返ってみると、新聞業界と政界は、何度か業界権益をめぐる攻防を繰り返している。順を追って説明しよう。

【1】1984年、当時の中曽根内閣は、マスコミ関連の7業種を対象としていた事業税の非課税措置を廃止する方針を打ち出した。ただ、完全に廃止するのではなくて、所得額の50%を控除したうえで、税額を計算する経過措置を取ったのである。

経過措置の期間は3年。ところがこの経過措置は、延々と延長され、結局、廃止されたのは1998年4月だった。13年も先延ばしされたのである。

「廃止は避けられない」と言いながら、13年も延長されたのだ。

この間に中川秀直議員らが自民党新聞販売懇話会を結成して、日本新聞販売協会(日販協)から、政治献金を受けるようになった。

続きを読む »

2014年09月11日 (木曜日)

今も生き続ける2人の死者-アジェンデとネルーダ、チリの軍事クーデターから41年

   1973年9月11日、ひとりの大統領がファシストの銃弾に倒れた。
   その時、彼は64歳、チリで最も情熱にあふれた青年だった。

「今も生き続ける2人の死者」とは、1982年のノーベル文学賞の受賞者で、『百年の孤独』(新潮社)などの作品で知られるガルシア=マルケスが『チリ潜入記』(邦訳・岩波新書)の中で、使った表現である。

1973年の9月11日から、41年の歳月が流れた。

今回紹介した動画『戒厳令下チリ潜入記』は、73年の軍事クーデターの後、国外へ亡命した映画監督、ミゲル・リィティンが、86年にチリに潜入してピノチエットによる軍事政権下の祖国を撮影したものである。日本語版は「上」「下」に分かれていて、よりインパクトが強い「下」をあえて冒頭で紹介した。

ちなみに潜入取材の方法は、CM撮影を口実にして、ヨーロッパの3つの撮影チームを合法的にチリに送り込む一方で、リィティン監督がパラグアイ籍のビジネスマンに変装し、偽のパスポートを使い、空港から堂々とチリに入国して、撮影を監督するという大胆なものだった。ジャーナリズムにおける「違法行為」の正当性を印象づける典型的な手法である。

『チリの記録』(下)は、おおむね3つの構成部分からなっている。

①故パブロ・ネルーダが詩を書いたイスラネグラの家(0:40~)

②FPMR(マヌエル・ロドリゲス愛国戦線)との会見(3:00~)

③サルバドール・アジェンデの最後の数時間(6:55~)

続きを読む »

2014年09月10日 (水曜日)

朝日新聞がひと月で13万部減る、対前年比は朝日が-30万部、読売が-60万部、夕刊と少年少女新聞も不振

新聞の発行部数が大幅に減少する傾向に歯止めがかからない。7月のABC部数によると、朝日新聞がひと月で約13万部、読売が約3万1000部の減部数となった。これに対して毎日は約3000部増えている。

一方、「対前年同月差」は、読売が-約60万部、朝日が約-30万部などとなっている。少年少女新聞も部数を減らしている。

7月のABC部数「対前月差」は次の通りである。()内は販売部数。

朝日:-130,222部(7,266,866部)
毎日:  +3,014部(3,305,207部)
読売: -31,309部(9,248,446部)
日経:  +1,920部(2,772,945部)
産経:      -3部(1,607,593部)

「対前年同月差」は次のようになっている。

朝日:-301,843部
毎日:- 64,588部
読売:-603,341部
日経: -26,930部
産経:  -4,578部

続きを読む »

2014年09月09日 (火曜日)

見えぬ安倍首相の真意

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

集団的自衛権容認へと、この国の戦後の歴史の転換点となった今年。終戦記念日の8.15には各地で様々な集会が開かれ、多くの議論がなされました。しかし、安倍首相が何故、こうも閣議決定を急いだのか。

私には、今夏のどんよりした空のようにその真意が見えるようで、実は見えません。でも、真意はどうあれ安倍氏が、この国を取り巻く現実から見て、あまりにも荒唐無稽、危険な考えの持ち主であることだけは、はっきり見えるのです。

安倍首相は、軍事大国化を目指している…。確かに彼の言動を聞いていれば、そうとも取れます。集団的自衛権容認は一里塚。憲法9条を改正し、この国を「戦争の出来る国」にしようと考えていることも、ほぼ間違いないでしょう。【続きを読む】

続きを読む »

2014年09月09日 (火曜日)

森裕子裁判が提起した最高裁事務総局の問題、だれが検察の捏造報告書をリークしたのか? ルートは2つしかない

『財界にいがた』(9月号)が、7月18日に判決があった「森裕子VS志岐武彦」の裁判を総括する記事を掲載している。タイトルは、「一市民を名誉毀損で提訴した森裕子・前参院議員が痛恨の完全敗訴で控訴断念」。

通常、裁判が終了すると、法廷における被告と原告の攻防は、過去のでき事として、記憶の片隅に追いやられてしまうものだが、裁判の終わりは調査報道の終わりではない。5年、10年、あるいは20年の検証が必要だ。その意味で、『財界にいがた』の報道には意義がある。

この事件は、MEDIA KOKUSYOでも繰り返し報じたように、2009年9月14日に投票が行われた民主党の代表選に端を発している。菅直人氏と小沢一郎氏の対決だった。

ところが投票日と同じ14日に、小沢氏の身の上に政治生命にかかわる事件が勃発する。東京第5検察審査会が小沢氏に対して、起訴相当決議を下したのだ。これにより小沢氏は強制起訴されることになった。

小沢氏が菅氏を追い上げていただけに小沢落選で、支持者は落胆したと同時に、東京第5検察審査会を管轄する最高裁事務総局に対する疑念を抱いた。

あまりにも不自然だ。なにか裏工作が行われたのではないか?

この疑惑の解明に乗り出したのが森氏と志岐氏だった。そして調査の過程で東京第5検察審査会が、「幽霊審査会(架空の審査会)」だった疑惑が深まったのである。架空の審査会、つまり最高裁事務総局が小沢起訴を決めた公算が強くなったのだ。

それを裏付ける根拠が、情報公開制度で入手した膨大な資料を検証する中で、次から次へと浮上してきたのだ。さらに裁判が終了した後も、新疑惑が発見されている。これについては次の記事を参照にしてほしい。

■検察審査会法の41条の解釈変更、報道されないうちに変更されていた、だれもが簡単に刑事被告人になるリスクの到来

志岐氏は「幽霊審査会(架空の審査会)=最高裁事務総局のよる議決」説を一貫して主張した。これに対して、森氏はある時期から「幽霊審査会(架空の審査会)」を否定、「検察誘導説」(検察官が審査員を誘導して小沢氏を起訴させたとする説)を強調するようになった。そして論争に発展し、森氏が志岐氏を名誉毀損で提訴するに至ったのである。

続きを読む »

2014年09月08日 (月曜日)

特定秘密保護法、「自称」フリーランスが報道人とみなされず処罰対象になる危険性、17日に違憲訴訟の第2回口頭弁論

フリーランスのジャーナリストや編集者、それに写真家など43名が起こしている特定秘密保護法違憲訴訟の第2回口頭弁論が、9月17日11時から東京地裁第803号法廷で開かれる。わたしもこの訴訟の原告団に加わっている。

周知のように特定秘密保護法は、国会で十分な審議を重ねることなく、昨年の12月に成立した。

この法律は、行政機関の長が「特に秘匿することが必要である」と判断した事柄を、「特定秘密」として指定し、それを取り扱う者が適正に対処する資質を備えているかを評価したり、漏えいした場合の罰則などを定めたものである。「特定秘密」に指定された情報を入手しようと試みる行為も処罰の対象になる。報道関係者にとって特に脅威なのは、情報入手に関する法的規制である。

ちなみに具体的に何が特定秘密に指定されているかも、「秘密」である。知りようがない。それにもかかわらず特定秘密保護法に違反した場合は、法廷に立たされ、最高で、10年の「ブタ箱ぐらし」の判決を受ける。

フリーランスとしてジャーナリズム活動に従事している者にとっては、取材活動に対する「合法的」な言論妨害にほかならない。施行されると、フリーランスとしての活動そのものが出来なくなる。

続きを読む »

PICK UP

【YouTube版】レイバーネットTVが「押し紙」問題を特集

レイバーネットTVで「押し紙」問題について黒薮が解説した。出演者は次の通りである。 出演者:黒薮哲哉(...

元店主側が控訴準備書面(1)を提出、新聞特殊指定でいう「注文し...

西日本新聞社に対する「押し紙」裁判(原告:長崎県の元店主)で、元店主の弁護団は、5月12日、控訴準備書面(1...

【YouTube配信6】徹底検証 産経、読売の「押し紙」、新聞...

「配信6」では、産経新聞と読売新聞の「押し紙」の実態を紹介する。「押し紙」は1999年の新聞特殊指定の改定を...

1999年の新聞特殊指定の改訂、大量の「押し紙」を容認する方向...

「押し紙」が急激に増えたのは、1999年に新聞特殊指定の改訂で、「押し紙」の定義が変更されたのち。改訂前は、...

煙草の副流煙をめぐる極論、法律で集合住宅全体を禁煙にすべきだと...

煙草の副流煙が第3者に及ぼす影響についての議論が活発になっている。法律で集合住宅全体を禁煙にすべきだという考...

トランプ政権がUSAIA傘下の全米民主主義基金(NED)への資...

トランプ政権が凍結したはずのUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)向けの資金提供の一部が、3月から再開されて...

甲斐弦著『GHQ検閲官』の読後感-モラル崩壊の元凶「押し紙」-

福岡・佐賀押し紙弁護団 江上武幸(文責) 2025(令和7)年5月 1日 阿蘇の北外輪山に、カルデラの...

2025年2月度のABC部数、読売は前年同月比で-40万部、毎...

2025年2月度のABC部数が明らかになった。前年同月比で、最も減部数が多いのは読売新聞で、-40万部だった...

押し紙(その1)平成11年の新聞特殊指定「改正」の謎-モラル崩...

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士 江上武幸(文責)2025年(令和7年)4月15日 (年号は、西暦と和暦...

検察審査会が「不起訴処分相当」の結論、作田学医師の法廷での発言...

横浜副流煙事件の法廷で作田学医師(冒頭写真、当時、日本禁煙学会理事長)が行った証言の内容をめぐり、刑事告訴に...

統一教会の霊感商法による被害額は35年間で1237億円、「押し...

東京地裁は25日、統一教会に対して解散を命じた。このカルト集団が不正に集めた資金は、全国霊感商法対策弁護士連...

【書評】喜田村洋一の『報道しないメディア』、著者の思想の整合性...

『報道しないメディア』(喜田村洋一著、岩波書店)は、英国BBCが点火したジャニー喜多川による性加害問題の背景...

中国レポート②:遼寧省広佑寺、宗教が禁止されているというのは事...

日本で定着している中国に関する情報には、誤ったものがかなり含まれている。たとえば宗教が禁止されているという情...

雑誌『創』の新聞社特集、「押し紙」問題の隠蔽と誌面の劣化

『創』の3月号(2025年)が「新聞社の徹底研究」と題する特集を組んでいる。これは、延々と続いてきた企画で定...

ニューソク通信がインタビュー(youTube)、作田学医師が主...

横浜副流煙事件の「反訴」について筆者は、ニューソク通信の須田慎一郎氏から、インタビューを受けた。メディア黒書...

喫煙撲滅運動と専門医師の関係、客観的な事実が欠落した診断書、横...

診断書がアクションを起こすための通行証になる現象は昔から続いてきた。たとえば大相撲の力士が本場所を休場すると...

中国レポート:好調な経済、破綻はあり得ない、現実の世界と西側メ...

階段を這うように登る4つ足のロボット。荒漠たる大地を矢のように進む時速450キロの新幹線。AI産業に彗星のよ...

患者が退出して3分後に煙草臭、偽証の疑い、作田学医師の証言、横...

喫煙者の呼気が孕んでいる煙草臭が持続する時間はどの程度なのか?東京地裁で、ある著名な医師が興味深い証言をした...

PICK UP

横浜副流煙裁判、カウンター裁判で藤井敦子さんらが敗訴、検証が不...

横浜副流煙事件に関連した2つの裁判の判決が、それぞれ1月14日と22日に言い渡された。裁判所は、いずれも原告...

西日本新聞押し紙裁判 控訴のお知らせ―モラル崩壊の元凶 押し紙...

福岡・佐賀押し紙弁護団弁護士 江上武幸(文責)2025年(令和7年)1月15日 令和6年12月24日の西日...

1999年の新聞特殊指定の改訂、「押し紙」容認への道を開く「策...

渡邉恒雄氏の死に際して、次から次へと追悼記事が掲載されている。ここまで夥しく提灯記事が現れるとさすがに吐き気...

西日本新聞福岡地裁押し紙敗訴判決のお知らせ―モラル崩壊の元凶 ...

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士・江上武幸(文責)2024年(令和6年)12月25日 昨日(24...

西日本新聞押し紙訴訟判決とオスプレイ搭乗記事の掲載について―モ...

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士・ 江上武幸(文責)2024年(令和6年)12月20日 11月28日(木...

関東地区新聞労連役員会における意見発表について -モラル崩壊の...

福岡・佐賀押し紙弁護団・ 江 上 武 幸 (2024年「令和6年」12月19日) 去る11月29日(金...

動画で見る「押し紙」回収の現場

「押し紙」の回収現場を撮影した画像を紹介しよう。新聞社は、回収されている新聞は、「押し紙」ではないと主張して...

「押し紙」関連資料の閲覧制限、問われる弁護士の職業倫理、黒塗り...

「押し紙」裁判を取材するなかで、わたしは裁判書面に目を通す機会に接してきた。弁護士から直接書面を入手したり、...

「香害、すなわち化学物質過敏症」の誤り、1月に2つの判決、横浜...

別稿・事件の概要 来年2025年の1月に、横浜副流煙事件に関連した2つの裁判の判決が下される。詳細は次...

国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発...

インターネットのポータルサイトにニュースが溢れている。衆院選挙後の政界の動きから大谷翔平選手の活躍まで話題が...

モラル崩壊の元凶 ―押し紙― 西日本新聞押し紙訴訟判決期日決...

2024年10月15 (文責)福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士江上武幸 第1 はじめに  西日本新聞...

訴状を公開、毎日新聞の「押し紙」裁判、約1億2000万円を請求...

福岡・佐賀押し紙弁護団は、10月1日、毎日新聞の元店主Aさんが大阪地裁へ提起した「押し紙」裁判の訴状(9月2...

「押し紙」問題がジャーナリズムの根源的な問題である理由と構図、...

読売新聞社会部(大阪)が、情報提供を呼び掛けている。インターネット上の「あなたの情報が社会を動かします」とい...

モラル崩壊の元凶-押し紙- 毎日新聞押し紙裁判提訴のお知らせ

福岡・佐賀押し紙弁護団  弁護士 江上武幸(文責) 2024年(令和6年)9月20日 兵庫県で毎日新聞販...

「香害」をめぐる診断と議論、メディアに氾濫する誇張された被害の...

柔軟剤や煙草など、広義の「香害」をどう診断するかをめぐる議論が沸騰している。日本では、「香害」による体の不調...

―モラル崩壊の元凶、「押し紙」― 西日本新聞・押し紙訴訟の報...

福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士・江上武幸(文責) 去る7月2日、西日本新聞販売店を経営していたAさ...

西日本新聞「押し紙」裁判、証人尋問で残紙部数を把握した機密資料...

長崎県の元販売店主が2021年に起こした西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、7月2日の午後、福岡...

7月2日に尋問、西日本新聞の「押し紙」裁判、福岡地裁で、「4・...

西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、次のスケジュールで実施される。 場所;福岡地裁 903...

国境なき記者団の「報道の自由度ランキング」のでたらめ、スポンサ...

『週刊金曜日』(6月7日付け)が、「報道の自由度、世界ランキング70位でいいのか」と題する記事を掲載している...