1. 「押し紙」の実態

「押し紙」の実態に関連する記事

2021年03月19日 (金曜日)

読売新聞の「押し紙」裁判、販売店との取引契約・第7条の問題、原告弁護団の主張、読売には新聞特殊指定を遵守する義務がある(3)

福山市の元YC店主が起こした「押し紙」裁判では、従来の「押し紙」裁判には無かった新しい争点がある。それは原告弁護団が打ち出したのひとつ争点で、販売店と読売新聞社の間で交わされた取引契約の第7条についての論考である。契約書の第7条は、次のように述べている。

「乙(注:販売店をさす)は,本件業務の遂行に関して,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律,不当景品類及び不当表示防止法,新聞業における特定の不公正な取引方法その他の公正取引委員会告示,新聞業における景品類提供の制限に関する公正競争規約等関係法令その他の諸法規を遵守しなければならない。」

この条項は、読売新聞社がYCに対して、新聞販売業務に関連した諸法規や規則を遵守するように求めた内容である。具体的には、独禁法の新聞特殊指定や景品表示法などの遵守である。

原告弁護団の主張は、第7條は形のうえでは、販売店に対する遵守義務として位置付けられているが、読売新聞社の側もやはりそれを遵守する義務があるという内容である。その理由について、原告弁護団は、準備書面(4)の中で次のように述べている。

「(筆者注:この条項は)新聞社である被告が法令を遵守することは当然の前提として,法令に疎い販売店に対し関係法令の遵守義務の存在を明確に認識させるために,条文上,名宛人として販売店だけを記載しているに過ぎない。」

周知のようにここで例題にあがっている新聞特殊指定は、「押し紙」行為を禁止している。従って読売が「押し紙」をしていれば、そは新聞特殊指定に抵触しており、販売店との商契約を忠実に履行していないことになるというのが、原告弁護団の主張である。

以下、準備書面(4)から、関連個所の全文を引用しておこう。

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2021年03月18日 (木曜日)

YC店主が「押し紙」を断った決定的な証拠、販売店主だけではなく販売局担当員にも強いプレッシャー(2)

読者は、以下に引用するショートメールが何を意味するのか推測できるだろうか。読売新聞大阪本社の担当員が、あるYC店主に送ったものである。店舗で過剰になっている残紙を整理して、正常な取引に改めないのであれば、残紙の減部数を求める内容証明を送付すると店主が申し入れた翌日に、担当員が店主に対して送付したショートメールである。

「元気やな!いきなり整理できないので、次回の訪店で話ししましょう。お互いの妥協策を考えましょう。俺をとばしたいなら、そうしますか。」(平成30年4月3日:9時54分)

「書面を出したら、昨日言ったとおり、全て担当員のせいになります」(4月3日、10時1分)

「俺をバックアップしてくれる気持ちがあるなら、何か妥協策を考えないかい?逃げてるんではなく、ほんまに体調悪いんで次回訪店で話しょ。考えさせて」(4月3日、10時14分)

「明日から会社でるので、部長と相談するな。少し大人しくしてな。おれに一任しておくれ。」

ここで紹介したショートメールはほんの一部だが、これだけでもYC店主が残紙を減らすように申し入れていた証拠である。

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2021年03月17日 (水曜日)

読売の「押し紙」裁判、第3回口頭弁論、読売、答弁書でYCがもつ注文部数の「自由増減」権の存在を認める、「押し紙」問題のスピード解決へ前進(1)

広島県福山市の元YC店主が大阪地裁へ起こした「押し紙」裁判の第3回口頭弁論が、16日、web会議によるかたちで行われた。原告弁護団は2通の準備書面と、原告の陳述書を提出した。

■原告準備書面(3)

■原告準備書面(4)

これに対して被告・読売弁護団は、5月19日までに反論書を提出することになった。次回の口頭弁論は、6月1日の午後1時半から、やはりweb会議のかたちで行われる。

原告弁護団が提出した準備書面(3)は、原告の元店主が「押し紙」により受けた被害の実態と「押し紙」の定義などについて述べている。同準備書面によると、原告はYCの経営を始めた時点から「押し紙」の買い取りを強制されていた。前経営者から、実配部数だけではなく、「押し紙」も引き継いだのである。スタートの時点で、すでに約760部が不要な部数だった。

この点に関しては、原告陳述書も、克明にその実態を記録している。新聞の搬入部数(定数)を読売新聞社側が決める一方、原告には、その権利がない実態を綴っている。また、原告が新聞業界に入ってのち、自分の眼でみてきたYCの残紙の実態を報告している。読売新聞社が新聞の「注文部数」を決めている実態を浮き彫りにしている。

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2021年03月09日 (火曜日)

明らかな独禁法違反を示す朝日新聞の内部資料、ASA宮崎大塚の例、販売店の自己責任論の破綻(1)

はじめて「押し紙」問題が国会に持ち込まれたのは1981年3月だから、その年から数えて今年で40年になる。日本新聞販売協会の会報には、それよりもはるか以前から「押し紙」についての記述があるので、少なくとも「押し紙」が社会問題として浮上してから、かれこれ半世紀になる。さらに厳密に言えば、戦前にも「押し紙」が存在したとする証言もある。

わたしがこの問題の取材をはじめたのは、1997年である。以後、独禁法違反という観点から、最も理不尽に感じた「押し紙」裁判の判決のひとつは、2011年9月5日に下されたASA宮崎大塚の裁判である。ASA宮崎大塚の敗訴という結果に、今も納得していない。独禁法違反の明白な証拠を原告が提出したにもかかわらず、朝日新聞弁護団の詭弁の前に販売店が敗訴したからだ。

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【動画配信】新聞に折り込まれる広報紙の水増し問題、大野市議が厳しく追及、千葉県流山市の議会

既報したように、千葉県流山市の大野富生議員が2月26日の市議会で、新聞に折り込まれる市の広報紙が大幅に水増しされている疑惑を取り上げた。流山市は、新聞のABC部数が全市で36、836部(2020年4月時点)しかないのに、新聞販売店には55,238部の『広報ながれやま』が搬入されている。千葉日報の部数が若干あるとしても、約2万部が水増し状態になっている疑惑がある。

次に紹介するのは、大野議員の質問動画である。約50分に渡って、広報紙の水増し問題を追及している。

■2月26日の本会議(開始は1時間02分~)

 

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2021年03月04日 (木曜日)

最高裁事務総局に対して3件の情報公開請求、産経新聞「押し紙」事件の野村武範裁判長の職務に関する疑問、東京高裁在任が40日の謎

わたしは1月19日、最高裁事務総局(中村慎事務総長)に対して3件の情報公開請求を行った。その背景を説明する前に、まず実際の請求内容を紹介しておこう。

1、野村武範判事が東京高裁に在職中(令和2年4月1日から令和2年5月10日)に、担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

2、野村武範判事が令和2年5月11日に東京地裁に着任した後に担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

3、野村武範判事の人事異動に関連する全文書

■裏付け資料

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千葉県流山市の大野富生市議(NHK党)が広報紙の水増し問題を追及、市当局の見解、「不正があれば契約を破棄して、損害賠償を請求する」

千葉県流山市の大野富生市議(NHK党)は、26日に開かれた定例会で、広報紙『広報ながれやま』が水増しされている疑惑を取り上げた。メディア黒書でも既報したように、新聞のABC部数が全市で36、836部(2020年4月時点)しかないのに、新聞販売店には55,238部の『広報ながれやま』が搬入されている。千葉日報の部数が若干あるとしても、約2万部が水増し状態になっている。

配達されずに廃棄されている可能性が極めて高い。

■千葉県流山市で広報紙の大幅な水増し、約3万7000の新聞発行部数に対して約5万5000部を供給

また大野議員は、現在の折込定数55,238部(新聞に折り込む媒体の枚数)を固定した時期について質問した。これに対して、同市の総合政策部長は、2016年(平成28年)11月と回答した。つまり新聞のABC部数が大幅に減少しているにもかかわらず、約5年に渡って折込定数を固定していた事実が明らかになった。

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2021年02月26日 (金曜日)

2021年1月度のABC部数、政府よりの右派2紙・読売と産経は前月差でABC部数増加、

2021年1月度のABC部数が明らかになった。それによると朝日は、前年同月差でマイナス43万部、読売新聞はマイナス58万部、毎日新聞はマイナス28万部と大幅な部数減となった。

しかし、前月差でみると右派で政府よりの2紙、読売と産経は、12月から1月にかけてABC部数を増やしている。新聞離れの時代にもかかわらず好調だ。新聞販売店向けの部数の場合、読売は約1万部、産経は約1500部ほどABC部数を増やしている。

1月部数の詳細は次の通りである。

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2021年02月15日 (月曜日)

最初の国会質問から40年、いまだにメスが入らない残紙問題と拡販問題、絶対に自分の非を認めない新聞人の体質

景品を使った新聞拡販や「押し紙」の問題が、はじめて国会質問で取り上げられたのは、1980年3月5日である。共産党の瀬崎博義議員が、衆議院予算委員会で新聞販売の過当競争をテーマに質問したのが最初である。今年は、2021年だから、この3月で40年の歳月が流れたことになる。

この40年の歳月をどう評価すべきなのか。2007年に、読売新聞の真村訴訟で、福岡高裁が読売の「押し紙」政策を認定した後、徐々に残紙問題にメスが入るようになってきたものの、新聞人たちは、未だに「押し紙」の存在を認めていない。「積み紙」はあっても、「押し紙」は存在しないという詭弁を平気で貫いてきた。新聞人は絶対に自分の非を認めない。これは真理である。

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千葉県柏市の広報紙『広報かしわ』に水増し疑惑、折込部数が新聞の発行部数を上回る

新聞折込で配布されている千葉県柏市の広報紙『広報かしわ』が、水増しされて広告代理店に卸されている疑惑が浮上している。2020年4月時点での『広報かしわ』の部数内訳は次のとおりである。

総発行部数:143、860部
新聞折込部数:135,000部
宅配部数:6,600部 (※新聞の非購読者が対象)

問題なのは、新聞折込部数の135,000部である。と、いうのも新聞の発行部数を表すABC部数が、柏市全域で107,088部しかないからだ。新聞販売店に残紙が1部もなくても、水増し状態になっている。

【注】発行日の新聞(読売・朝日・毎日・産経・東京・日本経済・赤旗)の朝刊に、折り込みで配布しています。出典:柏市HP

ABC部数には、赤旗の発行部数が含まれていないが、同紙の規模は全国で20万部程度しかないので、柏市の部数は数千部に過ぎないと推測される。この数字を含めて、かりに柏市の新聞部数の総計が11万部と仮定した場合、『広報かしわ』は約25,000部水増しされている計算になる。

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2021年02月03日 (水曜日)

千葉県山武市が広報紙の新聞折込を中止、行政を動かした『山武ジャーナル』の追及

 千葉県山武市は、今年の4月から広報紙『広報さんむ』の配布方法を、新聞折込からポスティングに切り替えた。地元の『山武ジャーナル』(鈴木まさや代表)が残紙と広報紙の水増し問題を追及し続けた成果である。この問題についての最新記事が掲載されたので紹介する。

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山武市の広報誌「広報さんむ」の配布が、令和3年4月より新聞折込からシルバー人材センターによる全戸ポスティングに変更されることが、広報さんむ令和3年2月号で明らかとなった。

山武市市民自治支援課によると、配布方法変更の理由は、新聞購読率、自治会組織率がともに低下している中、新聞折込や回覧板ではなく、ポスティングによる配布が多くの市民に広報を届ける方法として最適と判断したとのこと。

これまで山武ジャーナルが指摘してきた、山武市新聞折込組合による申告数水増し疑惑については、配布方法を変更する切っ掛けの一つになっていることは認めた。

山武市内でポスティングを行う体制を持つ民間業者がないため、業務はシルバー人材センターが受け持つ。【続きは山武ジャーナル】

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広報紙の配布実態調査、石川県のケース、不自然に高い新聞購読世帯率87%

この記事は、都道府県が発行する広報紙の配布実態調査の続報である。今回、取り上げるのは石川県の広報紙『ほっと石川』である。石川県の場合、広告代理店を仲介せずに、地元紙である北國新聞に新聞折込とポスティング(個別配達)を依頼する仕組みになっている。

結論を先にいえば、広報紙の配布事業そのものには問題がないが、ABC部数の信憑性に疑惑がある。

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