1. 中央紙の年間の「押し紙」収入420億円から850億円──内閣支持率82%? マスコミ世論調査を疑う背景と根拠

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2025年11月12日 (水曜日)

中央紙の年間の「押し紙」収入420億円から850億円──内閣支持率82%? マスコミ世論調査を疑う背景と根拠

新聞社が抱える「押し紙」問題は、単なる業界の内部不正にとどまらない。発行部数を水増しして得る不正収入は年間約420億円から850億円に達し、マスコミが権力と癒着する構造を支えている。世論調査の信頼性を揺るがす背景には、この経済的依存関係があるのではないか。報道機関の「公正さ」を改めて問い直す必要がある。

 JNNが11月1日に実施した最新の世論調査によると、高市内閣の支持率は82%だった。一方、毎日新聞が10月25日・26日に行った調査では65%と報じられている。

 いずれの数字も筆者の感覚とは大きく乖離している。10人のうち8人、あるいは6人が新内閣を支持しているという報道には、強い違和感を覚える。

世論調査に客観的裏付けはあるのか

 マスコミが定期的に発表する世論調査に、果たしてどの程度の正確性があるのだろうか。この点について、興味深いデータがある。次に示す表がそれである。

これは、2024年10月27日に実施された衆議院選挙の比例代表における各政党の得票率と、2025年4月に朝日新聞が実施したとされる世論調査による各政党の支持率を比較したものである。

 国政選挙の比例代表での得票率は、各政党に対する国民の支持を示す客観的データといえる。小選挙区では当選者が1人のため、有権者は当選の可能性を考慮して投票先を絞る傾向があるが、比例代表では複数が当選するため、より純粋に支持政党に投票する傾向がある。

 したがって、政党支持率を推測するうえで、比例区の結果は最も客観性が高いといえる。

 ところが、上記の比較表が示すように、朝日新聞の調査による政党支持率は、比例区の得票率とかけ離れている。とりわけ公明党や立憲民主党、それに共産党などのの支持率が、実際の得票率よりも極端に低く設定され、自民党と国民民主党だけが高く設定されている点に着目してほしい。

もちろん朝日新聞の世論調査には、無党派の層も含まれるので、相対的に数字は小さくなるが、それにもかかわらず、自民党は大幅に数値が高くなっている。2つのデータの整合性が乏しい。

🛜マスコミと権力の構造的癒着

 筆者はかねてより、マスコミが発表する政党支持率は「世論誘導」の一環ではないかと考えている。新聞社は日本の権力構造の中に深く組み込まれており、政府や公正取引委員会は新聞社の「押し紙」問題を黙認したり、また、消費税の軽減税率を適用するなどする一方で、新聞社を「広報部」として利用してきた経緯もある。裁判所までもがそれを黙認してきたといえる。

🛜「押し紙」問題がもたらす歪み

 「押し紙」による新聞社の不正な販売収入は、想像以上に巨額である。2025年8月時点で、中央紙(朝日・毎日・読売・産経・日経)の発行部数は約1180万部とされている。

 このうち「押し紙」の割合を20%と仮定すると、約236万部になる。新聞1部あたりの卸価格を月額1500円(すべて朝刊単独版と仮定)とすれば、1か月あたりの「押し紙」販売収入は約35億4000万円、年間では約424億8000万円にのぼる。

 もし「押し紙」率が40%に達すれば、年間収入は約850億円にもなる。

 しかも、この試算は控えめな前提条件に基づく。「朝・夕刊」セット版の場合、卸価格が2000円程度に上がるため、収入はさらに増加する。

 また最近の中央紙に関する裁判では、「押し紙」率が40~50%に及ぶケースも報告されており、筆者の試算に誇張はないといえる。

🛜メディア改革の必要性

 筆者は、「押し紙」問題こそが、公権力と新聞社、さらには関連メディアとの癒着を生み出す最大の温床であると考えている。この問題に本格的に切り込まない限り、日本のメディアは真のジャーナリズムとして自立することはできない。

 しかし現実には、この構造的問題に踏み込もうとする者はほとんどいない。新聞の紙面を批判しても、この問題には絶対に踏み込まない。ここに日本の報道の最大の病巣があるのだが。

 高市内閣の支持率82%もかなり怪しい。