新聞社が自社紙面で特別秘密保護法の反対キャンペーンを張れない背景に軽減税率問題と「押し紙」問題
特定秘密保護法が成立する公算が日増しに強くなっている。この法案については、メディア関係者の間から強い反対の声が上がっているが、新聞が自社の紙面でキャンペーンを張って法案の通過に抵抗する動きはみられない。
これはある意味では不思議な現象である。2006年に新聞特殊指定の撤廃案を公取委が持ち出したとき、新聞各紙は大キャンペーンを張ってこれに反対した。自分たちの既得権を守るために、自社メディアを使ったのである。
ところが特定秘密保護法については、法案に反対する立場を表明して、それにそった記事や社説を書くことはあっても、特殊指定問題のときのような熱烈な姿勢は見られない。
読売に至っては、19日付けの紙面で「特定秘密 みんな賛成へ」「自公、法案修正受け入れ」と題する次のような記事を掲載している。
機密情報を漏えいした公務員らの罰則を強化する特定秘密保護法案をめぐり、自民、公明両党は18日、特定秘密の指定などに首相の関与を強めるとしたみんなの党の要求をうけ入れることを決めた。
この書き出し部分を読む限りでは、特定秘密保護法案が「機密情報を漏えいした公務員らの罰則を強化する」法律としか解釈できず、多くの識者が問題にしている同法が秘める戦前の治安維持法的な性格にはまったく言及していない。政府広報とまったく同じ視点である。
なぜ、新聞は特殊指定問題のときのような大キャンペーンを張らないのだろうか。秘密保護法案が成立すれば、ジャーナリズム活動が骨抜きにされるにもかかわらず、自粛しながら同法を批判するのだろうか?
