1. バナナ虐殺という“誘導された自殺”

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2025年12月08日 (月曜日)

バナナ虐殺という“誘導された自殺”

執筆者: ロベルト・トロバホ・エルナンデス

ストライキに参加して命を落とした千人以上の人びとのことを思うと、胸が痛む。その虐殺事件の首謀者が、バナナ産業でボリシェヴィキ革命を起こそうと企んだ共産主義者のロシア人だったことを思えば、怒りを覚えて当然だ。

では、そのロシア人とは何者だったのか。コロンビアの共産主義者たちは彼を「啓示を受けた」同志だと持ち上げ、レーニン率いるボリシェビキから逃げてきた男であるとは決して言おうとしない。

スタニスラフ・サヴィンスキーはアメリカ大陸に到着すると、正体を隠すために“スタニスラフ”を捨て、“シルベストレ・サヴィンスキー”と名乗った。彼はソビエトの軍曹で、レーニンから中国に派遣され、困窮するロシア国民に送る食料の買い付けを任されていた。しかし、彼はその資金を持ち逃げし、北京には向かわず東京へ逃れ、さらにパナマを経てコロンビアに渡った。

ボゴタに着くと、不満を抱える若者たちの支持を得ようとボリシェヴィキ思想の宣伝を始めた。彼の周りには、ホセ・デル・マル、ガブリエル・トゥルバイ、ルイス・テハダといった著名な知識人が集まり、創設間もない革命社会党(Partido Socialista Revolucionario)の支持者となった。

1924年5月1日の社会党会議では、サヴィンスキーは発言の機会を得て、党をコミンテルンの綱領に沿わせる方向へと影響を及ぼした。

その後、シルベストレ・サヴィンスキーは社会党を瓦解させ、記録作家ルイス・テハダや詩人ルイス・ビダレスらを取り込み、コロンビア共産党を創設した。

しかし、サヴィンスキーの野望はさらに膨らんだ。彼はレーニンのように崇敬される存在になりたいと願い、そのためにはレーニンと同じ「成果」、すなわちコロンビアでボリシェヴィキ革命を起こすことが必要だと考えたのである。

レーニンを再現するには、武装蜂起を引き起こす事件を作り出さねばならない。1905年1月22日にサンクトペテルブルクで起きた出来事——20万人の丸腰の労働者が賃上げを求めて冬宮へ向かい、皇帝不在の中でウラジーミル大公が警備隊に発砲を命じ、200人が死亡、800人が負傷した惨劇——こそが、ボリシェヴィキ革命の引き金となり、ストライキや暴動、そしてウラジーミル・イリイチ・レーニンの台頭につながった。革命自体はこの時は失敗したが、1917年11月の共産主義樹立へ向かう前奏曲となったのである。

話をサヴィンスキーとその恐るべき野望に戻そう。彼は労働者たちとの関係を深め、当局、とりわけ多国籍企業ユナイテッド・フルーツ・カンパニーに立ち向かう思想を吹き込んだ。こうして彼は、バナナ労働者組合の指導者ラウル・エドゥアルド・マエチャ、ベルナルディノ・ゲレーロ、ニカノル・セラーノ、エラスモ・コロネルらに接触することに成功した。

だが、彼の前には厄介な人物がいた。マリア・カーノである。彼女は高圧的にリーダーシップを握ろうとする、このよそ者のロシア人に決して同調しなかった。しかし残念ながら、男性優位の風潮の中でマリア・カーノの警告は聞き入れられず、指導部は魅惑的なサヴィンスキーの言葉に屈してしまった。

そして1928年12月6日の悲劇の日。2万5000人の労働者が数百の兵士に包囲され、緊張が高まる中、サヴィンスキーはストライキ指導者たちに「もっと抵抗しろ、兵士を挑発しろ。軍に勝つための援軍を送る」とのメッセージを送った。このロシア人の嘘こそが妥協不能の衝突を招き、1800人の死者と100人の負傷者を出す虐殺へとつながったのである。

命令に盲従した軍人たちにも罪はある。だが、本当の、最大の責任者は、FARC(コロンビア革命軍)のゲリラたちを洗脳する講話の中でハコボ・アレーナスやマヌエル・マルランダが呼んだところの「コロンビア共産主義のロシアの父上さま(Padrecito Ruso)」だった。

バナナ虐殺の後、ルイス・テハダやサヴィンスキーの若き同志たちは彼から距離を置き、共産党を離れて自由党へ移った。

では、そのロシア人はどうしたのか。彼はメキシコへ渡り、そこでキューバの共産主義革命家フリオ・アントニオ・メジャと出会い、1929年1月10日にメジャが暗殺されるまで行動を共にした。さらにキューバに渡りしばらく滞在し、メジャの友人で後にフィデル・カストロの上司となるエドゥアルド・チバスと親交を結んだ。2年後、サヴィンスキーはコロンビアに戻り、複数の商売に手を出しつつ、進歩的普遍フリーメイソンリーに身を投じた。

シルベストレ・サヴィンスキーは生涯を通じて、コロンビアで武装闘争を引き起こす執念を捨てなかった。しかし、あの痛ましいバナナ虐殺とは——コロンビアに共産主義を押し進めるために仕組まれた、誘導された集団自殺にほかならなかったのである。

執筆者紹介:ロベルト・トロバホ・エルナンデス。

AL PRESS代表(CEO)、世界ジャーナリスト会議(WJC)ラテンアメリカ・カリブ地域ディレクター

出典: El Suicidio Asistido de la Masacre de las Bananeras

https://www.actualidadglobalinternacional.com/post/el-suicidio-asistido-de-la-masacre-de-las-bananeras