西日本新聞押し紙訴訟福岡地裁(敗訴)判決のお知らせ -モラル崩壊の元凶 押し紙-
弁護士・江上武幸(文責)福岡佐賀押し紙弁護団
9月9日(火)午後1時10分、福岡地裁902号法廷において、西日本新聞佐賀販売店の押し紙訴訟判決が言い渡されました。残念ながら、懸念していたとおり敗訴判決でした。
長崎県販売店の地裁担当裁判官の交代については、2024年12月26日(木)投稿の「西日本新聞福岡地裁敗訴判決のお知らせ」で報告したとおりです。今回の佐賀県販売店の地裁担当裁判官の交代についても、2025年8月1日(金)投稿の「佐賀県西日本新聞店押し紙訴訟裁判官交代について」で疑念を表明していたところです。
今回の敗訴判決を言い渡した三井教匡裁判長は、既報のとおり福岡地裁久留米支部に在籍していた当時、読売新聞販売店の地位保全仮処分決定を下した裁判官であり、押し紙問題については十分理解している裁判官です。そのため、一縷の期待を寄せていましたが、結果は敗訴判決でした。判決文が届き次第、内容を精査し、詳細をご報告いたします。
原告のH氏とともに、判決言い渡し数分前に法廷へ入り、原告席に着席して裁判官の入廷を待ちました。傍聴席には、西日本新聞の社員がおよそ20名、ばらばらに座っていました。
やがて三井裁判長を含む3名の裁判官が裁判官席に着席しましたが、三井裁判長は正面を見据えたまま無言でした。静かな緊張感に包まれる中、しばらくしてから三井裁判長は、
「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」
と、原告敗訴の判決を言い渡しました。
裁判官も西日本新聞の社員たちも、言葉を発することなく席を立ち、法廷を後にしました。H氏からは、販売局長ら面識のある社員が多数来ていたと聞き、最後に二人で法廷を出ました。
これまでの敗訴判決の言い渡しとは異なり、何とも不思議な静かな雰囲気に包まれた判決言い渡しでした。
裁判所は、一般の民事事件で見られるような和解の勧試も勧告も行いませんでした。淡々と審理を進め、販売店敗訴の判決を言い渡して事件を終結させました。司法の力で押し紙をなくそうとする気概や気迫は、裁判官からは全く感じられませんでした。
押し紙が許されない社会悪であることは、新聞社の社員はもちろん、裁判官も十分認識しています。押し紙問題は司法の力によってしか解決できないことも、彼らは理解しているはずです。
私は、厳しい表情で敗訴判決を言い渡す三井裁判官と、勝訴にもかかわらず喜びを微塵も表さない西日本新聞の社員たちを見ながら、法廷にいた全員が「このような販売店敗訴判決が続くことが、日本の司法にとって本当に良いのだろうか」と複雑な思いにかられているのを感じました。
司法に絶望することなく、福岡高裁で押し紙問題の解決に向けて真摯に取り組んでくれる裁判官と出会えることを強く期待しています。