新聞発行本社と日販協が一体化した運動を展開、消費税の軽減税率適用問題で、150人を超える政治家に献金も支出
新聞に対する消費税の軽減税率適用をめぐる運動がエスカレートしている。新聞発行本社と、政界に政治献金を行ってきたことで知られる日販協(日本新聞販売協会)が共同歩調を取っている。
業界紙『新聞情報』(6月18日付け)によると、日販協の中部地区本部が17日に名古屋市の朝日会館で開いた「平成26年総会」に、次の新聞発行本社の関係者が出席したという。
毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、岐阜新聞。
同紙によると、日販協の志村会長は、軽減税率について次のように述べている。
日販協は新聞協会とも消費税率10%時に軽減税率5%を適用するという旗を降ろしていない。世界にもまれな新聞の戸別配達システムは民主主義のインフラ。その旗を降ろすことはこの正当性、妥当性を損なう恐れがある。
新聞関係者は、「新聞を読む人=知的」とか、「戸別配達制度=民主主義のインフラ」とか、いささか論理が飛躍して失笑を誘いかねない主張を繰り返している。発達心理学の専門家でもない者が、軽々しく「新聞を読む人=知的」などと主観的な発言を繰り返している。
「戸別配達制度=民主主義のインフラ」という理論に至っては、我田引水に描き出した理想のイメージと事実の違いを認識する姿勢が欠落しているとしか言いようがない。少数の新聞社が巨大部数を支配すれば、新聞社の主筆の気分ひとつで世論が誘導される危険性があり、それがエスカレートすると新聞は、国策をPRする道具と化す。ちょうど国民を戦争に駆り立てた戦中の新聞のように。
少数新聞社による読者の独占は、危険極まりない。戦後、GHQはあえて、このような体制を残したのである。
◇ 再販制度の既得権の次は・・・
繰り返しになるが日販協は、昔から政界工作を行ってきた。新聞発行本社が公然と政界工作を行うのはさすがにはばかれるので、その代役を担ってきたと言っても過言ではない。
次に示すのは、日販協の政治団体である日販協政治連盟の政治資金収支報告書である。
1人当たりの献金額は5万円程度。決して高額ではないが、献金先の議員が優に150名を超えている。
政治献金を支出していながら、新聞社はこれらの議員が所属する政党の政策を冷静に評価できるのか、大きな疑問がある。しかも、すでに再販制度など新聞業界の既得権を政界が握っているのだ。それに加えて、軽減税率問題でも、同様の癒着の構造が生まれようとしている。
わたしは新聞関係者に対して、昔から政治献金の支出がジャーナリズムとは相容れないあるまじき行為であることを繰り返し指摘してきたが、まったく他人の批判に耳を傾け反省する気配はない。その意味では、「押し紙」の存在や折込チラシの水増し詐欺の事実を絶対に認めない態度とも共通している。
よくもこれだけ奇妙な論理を最上段に掲げ、みずからの立場を正当化し、反省を回避して、みずからの既得権を追求できるものだと思う。