1. 通常の3倍に、送電線などの低周波電磁波による小児白血病の発症率、日常生活に入り込んだ電磁波のリスク

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2015年07月23日 (木曜日)

通常の3倍に、送電線などの低周波電磁波による小児白血病の発症率、日常生活に入り込んだ電磁波のリスク

【サマリー】 1995年、テレビ朝日の「ザ・スクープ」が「高圧線の電磁波 人体への影響は?」と題するドキュメントを報じた。しかし、その後、この種のテレビ報道が途絶えている。その一方で配電からもれる低周波電磁波に遺伝子毒性があるとする研究が相次ぎ、2001年にはWHOも低周波に発ガン性の可能性があることを認定した。

 低周波電磁波は配電線だけではなく家電製品からも放射されている。その意味では日常生活に深く浸透している電磁波で、ガンが増えている隠れた要因にもなっている。が、電磁波問題は電力会社・電話会社・電気メーカーの利権が絡んでいるので日本では報じられない。

1995年、テレビ朝日の「ザ・スクープ」が「高圧線の電磁波 人体への影響は?」と題するドキュメントを報じてのち、電磁波問題をテーマとした本格的な調査報道が途絶えている。地方のレベルでこの種の問題を単発的に報じることはあっても、中央のテレビ局が本腰を入れて取り組むことはなかった。すくなくともわたしが知る限り電磁波に関する報道は自粛されている。

電磁波問題といえば、携帯電話の基地局から放射されるマイクロ波が人体におよぼす影響が徐々に知られるようになって来たが、送電線から漏れる電磁波による人体影響については、「ザ・スクープ」を例外として、テレビではほとんど報じられていない。

携帯基地局と同様に送電線も簡単には撤去できないので、これらの設備から放射される電磁波が及ぶ範囲に住んでいる人々は、受動喫煙と同じ原理で電磁波の被害を受けることになるのだが。深刻な問題であるはずなのだが・・

「ザ・スクープ」の冒頭でキャスターの鳥越俊太郎氏は、次のように電磁波問題の中身を指摘している。

「高圧送電線から出されております電磁波を長期間浴びておりますとガンや白血病にかかりやすいのではないかという指摘が一部欧米でなされるようになりました」

番組では送電線の直近に住んでいる家族が次々と白血病になったイギリスの例や、学校のすぐそばを走る高圧線が原因で生徒や教員が白血病になったとして裁判を起こした米国の例などが紹介されている。

◇低周波電磁波からガンマ線まで

しかし、電磁波と言っても、厳密に言えば様々な種類のものがある。それを分類するひとつの基準が周波数の違いである。周波数が高ければ高いほどエネルギーが強い。その頂点として一般的によく知られているものとしては、原発のガンマ線がある。ガンマ線ほどのエネルギーはないが、レントゲンに使われるX線も電磁波の仲間である。

携帯電話・スマホ・電子レンジなどは、マイクロ波と呼ばれる電磁波の領域に入る。そして「ザ・スクープ」が取り上げた送電線からもれる電磁波は、低周波電磁波と呼ばれる。

家電製品などからも低周波電磁波は放射されているので、ある意味では数ある電磁波の中でも低周波電磁波はもっとも日常生活の中に入り込んでいるとも言える。それだけにガンなどの隠れた要因になっている。

1980年代ごろまでは、電磁波の仲間のうちで人体影響を及ぼすものは、紫外線・エックス線・ガンマ線などエネルギーが強い電磁波だけに限られ、マイクロ波や低周波電磁波は安全と考えられていた。しかし、現在ではすべての領域の電磁波に遺伝子毒性があると考えるのが定説になりつつある。

事実、WHOは低周波電磁波に発ガン性の可能性があることを2001年に認定している。また、2011年にはマイクロ波についても同じ認定をしている。

◇小児白血病のリスク

すべての領域の電磁波が危険とする見解が浮上する最初の事件は、米国のナンシー・ワルトハイマー博士による疫学調査だった。1979年に発表された論文で、配電線や変電所の近くに住む子供たちの間で、小児白血病や脳腫瘍にかかる割合が高いことを明らかにした。小児白血病の場合、発症率は通常の2.98倍という結果がでた。

この論文が引き金となって、従来は人体影響がないと考えられていた低周波電磁波の安全性を検証する作業がはじまったのである。そして1992年に世界でもっとも権威がある研究所のひとつであるスエーデンのカロリンスカ研究所が、衝撃的な調査結果を公表したのである。

それによると配電線や変電所の近くに住む子供の小児白血病発症率は通常の3.8倍(3ミリガウス以上の被爆)というものだった。「ザ・スクープ」が送電線から漏れる電磁波の問題を取り上げたのは、この発表が行われてから3年後である。

◇大阪府門真市の送電線問題

実は日本でも低周波電磁波による深刻な被害が発生している地域がある。大阪府門真市である。変電所に隣接するかたちで高圧電線の鉄塔が密集した地域があり、そこで白血病やガンが多発しているらしい。

約160世帯で70人以上がガンで亡くなっているとする情報もある。情報の正確な根拠はよく分からないが、2010年にわたしが現地を取材した際、それを裏付ける証言をたくさん得た。ガンか白血病になったひとが身の回りにいるか、という問いに対して複数の住民から「いる」という返答があった。

日本におけるガン発症件数は、携帯電話の普及がはじまった1990年代から急上昇しているが、もうひとつの要因に低周波電磁波による被爆も原因している可能性もある。ちなみに携帯電話には、マイクロ波と低周波を組み合わせた変調電磁波が使われている。

電磁波は新世代の公害である。危険が指摘されはじめたのが1980年代で、すべての領域の電磁波に毒性があるとする説が有力になったのはつい最近のことである。が、メディアはそれを報じない。IT産業の育成が国策になっているうえに、電力会社・電話会社・家電メーカーが大口の広告主である事情がその背景にあるからではないだろうか。

【補足】この記事を掲載した後、読者から次のような指摘があった。

「1995年以降の、少なくとも2000年以降は以下の3回ほど、テレビで、電磁波に関する報道が行われています。

*日本テレビの「電磁波」番組   
 2004年5月4日 ニュース番組「今日の出来事」の中の特集記事として、
電磁波過敏症・家庭内の低周波電磁波等に関する放映がありました。

*2002年10月28日 TBS TV ニュースの森 の特集「電磁波」

*日本テレビ WakeUPの電磁波報道 2003年3月3日

これ以外にもあるかもしれません。
ただし、この10年間はないのかもしれません。」