1. 新聞社の闇-「押し紙」問題の変遷②、新聞の商取引のカラクリ

「押し紙」の実態に関連する記事

2015年01月30日 (金曜日)

新聞社の闇-「押し紙」問題の変遷②、新聞の商取引のカラクリ

【29日付け記事の続】さて、「押し紙」の割合が搬入部数の60%にも、70%にもなった場合、新聞販売店の経営は成り立つのかという問題がある。「押し紙」にあたる部数に該当する卸代金が免除されるのであればまだしも、販売店の経理帳簿の上では、搬入される新聞はすべて販売店が注文した部数になっているので、支払い免除の対象にはならない。

言葉を変えると、配達していない「押し紙」の卸代金を強制的に支払わされるから、「押し売り」になぞらえて、「押し紙」と呼んでいるのである。

常識的に考えれば、「押し紙」が60%も、70%もあれば、販売店の経営は成り立たない。が、実は経営を成り立たせる知られざるカラクリがあるのだ。このカラクリこそが新聞社のビジネスモデルにほかならない。

◇新聞の商取引のカラクリ

結論を先に言えば、それは折込広告の水増しと補助金である。

まず、折込広告の水増しについて説明しよう。
新聞販売店に搬入する折込広告の適正枚数は、原則として、新聞販売店に搬入される新聞の搬入部数に一致させることになっている。たとえば搬入部数が3000部とすれば、折込広告の搬入枚数も、3000枚になる。つまり形式上は、「押し紙」にも、折込広告が折り込まれるのだ。

従って3000部の搬入部数に対して、「押し紙」が1000部あれば、折込広告も(一種類につき)1000枚余っていることになる。

そのために意外に知られていないが、「押し紙」と一緒に、折込広告も古紙回収業者の手で処分されているのである。

もちろんこうした「犯罪」は、水面下で行われているために、多くの広告主は、実態を感知していない。感知しないまま、広告代金だけは全額支払わされているのである。もちろん、これでは市場調査に基づいたPR戦略も狂ってしまう。

こうしたカラクリを前提に、折込広告で販売店が得る収入について考えてみよう。新聞1部が生み出す広告収入がかりに月額1800円とする。この1800円は、当然、「押し紙」からも発生する。

一方、新聞の卸代金が1部につき、月額2000円とする。そうすると販売店は、「押し紙」1部に付き、2000円の負担を強いられるが、同時に折込広告の代金として、1800円の収入を得る。

2000円を負担して、1800円の収入を得るわけだから、損害はたった200円だ。つまり折込広告の需要が多い新聞販売店では、「押し紙」はそれほど大きな負担ではないということになる。

◇補助金

新聞販売店に対する新聞社からの補助金は、新聞1部に付き○○円という形で行われる。補助金には、さまざまな名目があるが、新聞の商取引を説明するために、200円の補助金が1種類だけ支給されるものと想定してみよう。

補助金が200円であるから、折込広告の収入1800円と合わせると2000円になる。すなわちこのケースでは、「押し紙」による損害は、折込広告収入+補助金で完全に相殺されるのである。これらが「押し紙」制度の仕組みである。

従って、このケースで言えば、折込広告の収入が2000円を超えるような事態になると、販売店は、「押し紙」で損害を受けるどころか、より多くの収入を得る。

◇紙面広告との関係

新聞社が補助金を支給してまで、「押し紙」政策に固執する理由はなにか?

まず、第1は販売収入を増やすことである。

第2に、公称部数をあげて、紙面広告の媒体価値を高めることである。紙面広告の媒体価値は、公称部数が多ければ多いほど高くなる原則がある。

もっとも最近は、「押し紙」の存在が広告主の企業に知られるようになり、広告主が自主的に折込広告の発注枚数を減らすなど、従来の原則が通用しなくなっているが、政府広報など、公共広告に関しては、厳密に公称部数に準じた価格設定になっている。次のPDFは、最高裁がスポンサーになった裁判員制度に関する広告の新聞社別の価格である。

■裁判員制度広告の価格一覧PDF

公称部数が第1位の読売は、広告価格でも第1位になっている。

日本の新聞業界は、昔から、このような「押し紙」制度を販売政策の中に組み込んできた。その汚点を政府、公取、警察は把握している。その気になれば、いつでも摘発できる。新聞社が公権力の広報部としてしか機能できないゆえんにほかならない。