1. 福岡県行橋市の小坪慎也議員が議会で「押し紙」問題を追及、地方議会では全国初、他の自治体へ飛び火する可能性も

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2017年03月09日 (木曜日)

福岡県行橋市の小坪慎也議員が議会で「押し紙」問題を追及、地方議会では全国初、他の自治体へ飛び火する可能性も

【押し紙についての質問は、53分20秒から】

福岡県行橋市の小坪慎也議員が、3月の定例本会議で「押し紙」問題を追及した。「押し紙」問題が地方議会で取り上げられるのは、筆者が知る限りでは全国ではじめてである。今後、他の自治体にも、「押し紙」問題が飛び火しそうだ。

行橋市は2015年度に2件、16年度に4件、新聞広告を出している。(折込広告か紙面広告かは不明)。メディア黒書で繰り返し報じてきたように、新聞のABC部数と実配部数には差異があり、折込広告の料金が必然的に水増し状態になっていることが、水面下で問題になってきた。

小坪議員が市に対して、広告出稿に先立ち、ABC部数と実配部数の差異を確認したかを質問したのに対して、市側は、

「実際に(部数を新聞社側から)提示をされたものが3件ございます。その3件につきましては、ABC協会のインターネットで公表(部数)を確認したところ差異はございませんでした」

と、返答した。

つまりABC部数を基準として発注部数を決めていたということだ。この中には、後述するように「押し紙」が含まれている。

実際に出稿した先の新聞社や広告代理店は次の通りである。

【2015年度】
西日本新聞:2件(黒薮注:2件は紙面広告と思われる)

【2016年度】
読売西部IS
西日本新聞社広告デイリーインフォメーション
西日本新聞広告社・九州
デイリーインフォメーション九州(黒薮:4件は折込広告と思われる)

小坪議員の質問により、今後、行橋市は新聞広告を出稿する際は、新聞販売店(市内に13店舗)に直接部数などを問い合わせるなどの措置を取ることになった。

◇西日本新聞の内部資料(佐賀県全域の押し紙)を公開

九州地区で最も有力な新聞は、西日本新聞である。西日本新聞の「押し紙」については、メディア黒書に同社の販売店から内部資料が送付されている。次のエクセルである。

■西日本新聞の佐賀県全域における「押し紙」

この内部資料は次のように読み解く。

1、表の最左の縦列は、佐賀県下の新聞販売店を示している。

2、最上段の列、左から4枠目にある「8/3数」は、新聞販売店が西日本新聞に注文した部数を意味する。たとえば鳥栖中央店では、1,802部を注文したことを意味する。

3、「8/3数」の右隣りの枠にある「8/6数」は、新聞社が実際に搬入した部数を示している。鳥栖中央店のケースでは、2,158部である。

つまり鳥栖中央店は、1802部を注文したにもかかわらず、新聞社は注文部数を超えた2,158部を搬入したことになる。

ちなみに「前年数」も「前月数」も、「8/3数」も同一の数字(鳥栖中央店のケースでは2,158部)になっているの事実から察すると、注文部数が固定化されている可能性が高い。

次のバックナンバー記事も参考にしてほしい。

■「押し紙」の決定的証拠、西日本新聞の内部資料を公開、佐賀県下の販売店ごとの「押し紙」部数が判明

念を押すが、データは行橋市がある福岡県ではなく、佐賀県のものである。しかし、ひとつの参考にはなるだろう。

なお、読売ISの親会社にあたる読売新聞は、「押し紙」は一度も行ったことがないと、法廷(対新潮社・黒薮裁判)で証言している。質問しているのは、読売の代理人弁護士で自由人権協会代表理事の喜田村洋一氏である。

■裁判の議事録(読売の宮本友丘専務・平成22年11月16日)

なお、真村訴訟の福岡高裁判決は、読売新聞の「押し紙」政策を認定している。次の判決である。

■真村訴訟の福岡高裁判決

◇なぜ、左派と右派が共闘か?

小坪議員は、右派系の地方議員として全国的に有名だ。筆者は、ラテンアメリカの左派のシンパである。既報したように、「NO残紙キャンペーン」は、思想信条を超えて残紙を排除する運動である。自由法曹団の弁護士らも参加している。

なぜ、右派と左派が共闘できるのかという問い合わせが時々来るが、答えはいたって簡単だ。右派も左派も、新聞社の「押し紙」政策は誤りだと考えているからにほかならない。

他人の言論を暴力などで封じない限り、こうした共同行動も可能になるのだ。何よりも大事なのは、言論表現の自由である。

筆者としては、今後、内閣府や省庁からの天下り問題や国家予算が湯水のように博報堂へ流れ込んでいる問題についても、共闘の道を探っていきたい。