1. 特定秘密保護法、2007年の第1次安倍内閣の時代、すでにアーミテージ文書で米側が秘密保護の強化を提言

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2014年07月16日 (水曜日)

特定秘密保護法、2007年の第1次安倍内閣の時代、すでにアーミテージ文書で米側が秘密保護の強化を提言

昨年(2013年12月)に成立した特定秘密保護法の起源は、第1次安部内閣の時代にリチャード・アーミテージとジョセフ・ナイが作成した『日米同盟』と題するレポートの2007年度版にあるようだ。

このレポートの中で、改憲議論の奨励や、国防費の増額要求などとならんで、機密情報を守る必要が提唱されている。日本に対する提唱事項は、次の5点である。

◇5つの提唱事項

1.日本は、もっとも効果的な意思決定を可能にするように、国家安全保障の制度と官僚機構をひきつづき強化すべきである。現代の挑戦が日本に求めているのは、外交・安全保障政策を、とりわけ危機の時期にあたって、国内調整と機密情報・情報の安全性を維持しながら、迅速、機敏かつ柔軟に運営する能力を持つこである。

2.憲法について現在日本でおこなわれている議論は、地域および地球規模の安全保障問題への日本の関心の増大を反映するものであり、心強い動きである。この議論は、われわれの統合された能力を制限する、同盟協力にたいする現存の制約を認識している。この議論の結果が純粋に日本国民によって解決されるべき問題であることを、われわれは2000年当時と同様に認識しているが、米国は、われわれの共有する安全保障利益が影響を受けるかもしれない分野でより大きな自由をもった同盟パートナーを歓迎するだろう。

3.一定の条件下で本軍の海外配備の道を開く法律(それぞれの場合に特別措置法が必要とされる現行制度とは反対に)について現在進められている討論も、励まされる動きである米国は、情勢がそれを必要とする場合に、短い予告期間で部隊を配備できる、より大きな柔軟性をもった安全保障パートナーの存在を願っている。

4.CIAが公表した数字によると、日本は、国防支出総額で世界の上位5位にランクされているが、国防予算の対GDP比では世界134位である。われわれは、日本の国防支出の正しい額について特定の見解を持っていないが、日本の防衛省と自衛隊が現代化と改革を追求するにあたって十分な資源を与えられることがきわめて重要だと考えている。日本の財政状況を考えれば資源が限られているのは確かだが、日本の増大しつつある地域的・地球的な責任は、新しい能力およびそれに与えられるべき支援を必要としている。

5.自ら課した制約をめぐる日本での議論は、国連安保理常任理事国入りへの日本の願望と表裏一体である。常任理事国となれば、日本は、時には武力行使を含む決定を他国に順守させる責任を持った意思決定機関に加わることになる。ありうる対応のすべての分野に貢献することなく意思決定に参加するというその不平等性は、日本が常任理事国となろうとする際に対処すべき問題である。米国は、ひきつづき積極的にこの目標を支援すべきである。(注:青太字は黒薮)

出典:『日米同盟』オリジナル

出典:『日米同盟』翻訳

◇秘密保護の有識者会議は民主党政権が設置

『日米同盟』の2007年度版が出されたのは、同年の2月。この2ヶ月後にあたる4月26日、安部首相は当時のジョージ・ブッシュ大統領と米国で会談して、日米同盟の強化を確認している。

しかし、その後、安部首相は辞任。自民党は麻生政権、福田政権と迷走を続けたが、小泉構造改革で生じた国民の貧困化など社会的なひずみを是正できずに、政権を民主党に奪われてしまう。

民主党・鳩山政権は米国の要求とは裏腹に、消費増税を凍結したり、米軍基地の問題で沖縄県民の意志を重視したり、「子ども手当」の支給を決めるなど新自由主義=構造改革の路線から一定の距離を置く方針を採用した。

その結果、財界や米国の「猛反撃」にあい、個人資産の申告漏れも指摘され(注:後、検察審査会で不起訴になった。)、最終的に政権を投げ出す。

マスコミは解説を避けているが、鳩山退陣の後を受けて、登場した管首相は、急進的な米国よりの方針を打ち出す。鳩山首相が、「反米路線」のポーズを取って失脚したことを踏まえた結果である。こうした状況の中で、着手した法整備のひとつが秘密保護法だった。

折しも2010年11月に、「尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件」が起こる。この事件を逆手に取って、管内閣は守秘義務違反の罰則強化に乗り出し、秘密保(全)護法の制定へ本格的に動きはじめたのである。米国の要望に応えて、「信頼」を勝ち取ろうとしたのだ。

そして「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」を設置して、2011年1月に第1回目の会議を開いた。

有識者会議の構成員は次のとおりである。

委員長 内閣官房長官(仙谷 由人)

副委員長 内閣官房副長官

委員 内閣危機管理監

内閣官房副長官補(内政担当)

内閣官房副長官補(外政担当)

内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)

内閣情報官

警察庁警備局長

公安調査庁次長

外務省国際情報統括官

海上保安庁警備救難監

防衛省防衛政策局長

■出典 

◇二大政党制のカラクリ

特定秘密保護法の成立経緯をみるにつけ、保守による二大政党制のカラクリを再認識する。防衛政策の面でも経済政策の面でも、自民・公明政権と民主党はほとんど同じ政策を競い合っているのである。

こうした茶番劇の背景に、事実を報じないマスコミの存在があることは言うまでもない。