1. 自民党VS希望の党、烏合(うごう)の衆による権力争い、「反自民」よりも「反共」で結束・結党

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2017年09月28日 (木曜日)

自民党VS希望の党、烏合(うごう)の衆による権力争い、「反自民」よりも「反共」で結束・結党

テレビを筆頭にメディアが盛んに「希望の党」をめぐる動向を報じている。

今回の選挙は、自民党と「希望の党」の対決になる公算が強い。そして、「希望の党」が政権を取れば、日本に大きな変化が訪れると期待している人が多いようだ。しかし、筆者は自民党が政権を維持しても、小池新党が新たに政権の座に着いても、日本の政治はほとんど何も変わらないと予測している。

両党に基本的な政策の違いがないからだ。

基本的な政策とは、政策の大黒柱にあたるグローバリゼーションの中での経済政策と、それに連動した防衛政策である。

まず、経済政策についていえば、選択肢は2つしかない。それは構造改革=新自由主義の導入を推進するのか、それとも中止するのかの選択肢である。これ以外にはありえない。これが唯一の分岐点なのだ。そして構造改革=新自由主義の経済政策に反対しているのは、共産党と社民党だけで、他の政党は基本的には賛成している。

今回の政界再編は、構造改革=新自由主義の経済政策に賛成している政党間の権力抗争にすぎない。

このような構図と極めて類似していたのが、93年に成立した日本新党(後に新進党)を柱とする「政界再編」だった。表向きは、自民党と対峙する新党がスタートしたような印象があったが、タイムラグはあったが、両者とも構造改革=新自由主義の導入を目指す方向性を打ち出してきた。2大政党制により、いかにも両陣営が対立構造にあるかのようなプロパガンダに守られて、構造改革=新自由主義が導入されていったのである。それが諸悪の根元である。

民主党政権の時代も、構図としてはまったく同じだった。民進党の前原代表が、共産党との政権構想はありえないという意味の発言を繰り返してきたが、その真意を具体的に言えば、ひとつには経済政策が共産党とは根本的に異なるという意味である。もちろんこれだけではないが。

小池氏が構造改革=新自由主義の主義者であることは、豊洲市場への移転を機に、仲卸業を排除して、物流システムの規制緩和を図ろうとしていることなどによく現れている。

【参考記事】豊洲移転の背景に規制緩和=新自由主義の導入、豊洲の物流センター化で排除される仲卸業者ら

また、大阪都構想を持っている維新の会との連携を模索していることでも、それが明らかだ。都構想は、新自由主義が目指す「小さな政府」を実現するための最終ステージである。

「希望の党」の経済政策は、基本的には自民党と同じなのだ。

◇憲法・安保でも安倍政権に類似

「希望の党」の防衛政策は、経済政策以上に分かりやすい。小池氏はすでに、
入党条件として、憲法・安保についてのスタンスをあげている。

【参考記事】希望の党・小池代表 入党条件は憲法・安保

小池氏は第1次安倍内閣の下で防衛大臣を務めており、安全保障や憲法に関しては、安倍首相とスタンスが類似していることはだれもが認めている。

原発「ゼロ」を打ち出した背景も実に単純で、最近の各種試算で、原発の方が他の発電よりもコストが高くなることが分かってきたからである。世界的にそういう流れになりはじめているのだ。小泉純一郎氏の考えが斬新なわけでもない。単純にお金の損得計算なのだ。

◇小沢一郎氏による構造改革の誤り

自民党と「希望の党」の対決とは何か?それは単なる「烏合(うごう)の衆」による権力争いの域を出ない。

権力争いであるから、「希望の党」が政権を取れば、森友・加計事件にメスが入る可能性はある。しかし、その他の政策は、基本的には何も変わらない。いや、安倍政権よりも急進的に構造改革=新自由主義と軍事大国化を進めていくかも知れない。

2大政党によるこうした茶番劇を最も歓迎しているのは、おそらく財界である。どちらが政権を取っても、自分達が最も利益を得られるシステムが持続されるからだ。

ちなみに構造改革=新自由主義の導入と、軍事大国化は個々バラバラではない。関連している。グローバリゼーションにともなう構造改革=新自由主義の導入であるから、多国籍企業を防衛する「軍隊」、あるいは「警察」の国際化が不可欠になるのだ。1990年代からこれら2つの政策が、同時進行してきたゆえんにほかならない。

現在日本における本当の対立構造は、「自民党VS共産党」ということになる。これが客観的な構図なのである。が、メディアはこの点には言及しない。おそらく理解していないのではないかと思う。

今、われわれは再び1993年の政界再編と同じ誤りを繰り返そうとしている。当時の主役だった小沢一郎氏も、「希望の党」に合流するようだ。

「希望の党」は、反自民よりも、むしろ「反共」で特徴づけられる。

◇ニュース自体が「希望の党」のプロパガンダ

さて、メディアが盛んに「希望の党」の動きを報じている。ジャーナリズムは何をどのように報じても自由であるから、それ自体を批判するつもりはない。しかし、洪水のような報道が、「希望の党」のプロパガンダとして作用し、世論を誘導していることも認識しておく必要があるだろう。

さらに次のことも言える。筆者の憶測になるが、財界は2大政党制を希望しているわけだから、自民党と「対峙」する「希望の党」の出現を歓迎しているだろう。と、なれば個々の企業が、テレビ局や新聞社に対して、CMや広告を出稿することで、番組内容に影響力を発揮することもできる。

ワイドショーやニュースで、「希望の党」を取りあげるだけで、世論誘導ができる。今回の選挙は、自民党を選ぶか、「希望の党」を選ぶかの選択選挙であると勘違いさせることができるのだ。

今、日本で同時進行しているのは、このような大がかりで恐ろしいトリックなのだ。被害者は国民である。