1. 奈良地検が高市前総務大臣を不起訴に、政治献金のマネーロンダリング問題、政治判断により権力者は起訴されない日本の実態

「森裕子VS志岐武彦」の裁判に関連する記事

2018年08月31日 (金曜日)

奈良地検が高市前総務大臣を不起訴に、政治献金のマネーロンダリング問題、政治判断により権力者は起訴されない日本の実態

筆者と志岐武彦氏が奈良地検に対して提起した高市早苗元総務大臣に対する刑事告発が、28日付けで不起訴となった。高市氏に対しては、最初は詐欺容疑で、2度目は所得税法違反で刑事告訴をおこない2度とも受理された。しかし、1回目に続いて、2回目も不起訴となった。

事件の詳細については2回目の受理の際に掲載した次の記事を参考にしてほしい。

【参考記事】奈良地検が高市早苗・前総務大臣に対する刑事告発を受理、政治家によるマネーロンダリングにメスか?

 

【事件の構図と還付金制度】

議員が代表を務める地元の政党支部などへ有権者が政治献金を行った場合、税務署で所定の手続きをすれば、寄付した金額の30%が戻ってくる。たとえば1000万円を寄付すれば、300万円が戻ってくる。

 このような制度を設けることで、政治資金の支出を活発にしているのであるが、逆説的に考えると、寄付された金額の30%は税金から補填される構図になっている。当然、厳正に運用されなければならない。

 それゆえに、租税特別措置法の41条18・1は、還付金制度適用の例外事項を設けている。つまり、「寄付をした者に特別の利益が及ぶと認められるものを除く」と定めているのだ。

 「特別の利益が及ぶ」場合とは、具体的にどのようなケースなのだろうか。結論を先に言えば、議員が自らの政党支部に自分の金を寄付して、還付金を受ける場合である。

 たとえば議員が1000万円を自分の支部へ寄付して、それに準じた還付金を受けるケースである。この場合、献金が政党支部に1000万円入るほかに、議員個人にも還付金が約300万円入る。政党支部の長を議員が務めるわけだから、「1000万円+300万円」は議員の手持ち資金となる。金を移動させるたけで、金がふくらむのだ。これがマネーロンダリングである。

 税の騙し取り以外のなにものでもない。


◆2012年に約300万円の還付金、ほか


高市議員はこの制度を利用して2012年(平成24年)に、1000万円を自分の支部へ寄付して、約300万円の還付金を受けたのである。


他年度にも同じ手口を使っているが、すでに時効になっており、刑事告発の対象は、2012年度分だけになった。

「高市氏⇄支部」相互寄付・税還付・告発(予定も)の関係一覧

 

◆本来であれば牢獄に入る人々が・・・

筆者は、これら一連の不起訴は政治判断の結果である可能性が高いと見ている。秋に第5次安倍内閣が発足する前に、「汚点」をすべて払拭しておきたいというのが、日本を牛耳っている人々の思惑ではないか。高市氏が閣僚に復活する可能性もあるだろう。

森友事件、加刑事件で本来であれば牢獄に入る可能性が高い人々が軽々と法の網の目を潜り抜け、刑事責任を免れているのと同じ流れの中で、高市氏も起訴を免れたとみている。日本で3権分立が確立していれば、まず、あり得ない判断だ。奈良地検が公正であれば、少なくとも「起訴猶予」ぐらいの処分にはなっただろう。

マネーロンダリングが犯罪にならないのであれば、政治家は高市氏と同じようにペーパー数枚で、資金を大幅に増やすることが可能になる。たとえば1000万円を自分の支部に寄付して、還付金を300万円受けることが認められることになる。この300万円の財源は、改めていうまでもなく税金にほかならない。納税者が怒るのもあたりまえだ。

こうしたデタラメを禁止するのが司法の役割のはずだが、奈良地検は役割を果たしていない。。

◆裁判でも政治判断が多発

筆者は、裁判においては、政治判断が繰り返し行われてきたのを知っている。その典型的な例は、特定秘密保護法の違憲性を認定させる裁判である。誰がみても違憲だが、裁判所は政治判断で合憲としたのだ。

筆者が被告となった読売裁判もおかしかった。筆者が、地裁、高裁と勝ち進んでいるのに、極めて狭き門の最高裁がわざわざ口頭弁論を開いて、判決を高裁に差し戻し、筆者を逆転敗訴させたのだ。

【参考記事】自由人権協会代表理事の喜田村弁護士らが起こした2件目の裁判、「窃盗」という表現をめぐる攻防③

権力を持てば絶対に起訴されたり、裁判で敗訴しない日本の実態。誰も気づいていないだけで、すでに独裁国家への道を歩みはじめている。その実態は、想像以上に深刻だ。